
法
直説法・接続法・命令法について
法とは
- 法(mood)は、動詞の語形や小辞によって文法的に標示される範疇で、直説法・接続法・命令法の三つがある
- 法は意味の分類ではなく形式の分類であり、願望・命令・可能性などを含む広い意味領域である様相性(modality)とは区別される
- 三つの法は、動詞に先行する小辞と否定辞の組み合わせで区別できる
直説法
- 状態や出来事を過去・現在・未来のいずれかに位置づけ、事実として述べる
- δενで否定され、να・ασを伴わない
- 未来形はθαを伴い、通常は直説法の一部として扱われる
接続法
- να・ασを伴い、μηνで否定される
- 意味は一つに限定されず、命令・要求・願望・提案・目的・可能性など幅広い用法を持つ
- ασは直接話法でのみ現れ、勧告・同意・承認・無関心などを表す
- ναが省略されても、否定辞μηνの使用によって接続法であることが示される場合がある
命令法
- 固有の動詞語尾を持ち、二人称単数・複数にのみ存在する
- 受動態の命令法は完結相に限定される
- 命令法は否定できず、禁止には接続法を用いる
- 命令法および分詞形では弱形代名詞が動詞の後に置かれる
法とは
話し手がある内容を、事実として述べるのか、可能性として述べるのか、願い・命令・提案として述べるのか、といった意味上の違いを様相性(modality)と呼びます。様相性はかなり広い概念で、条件・願望・義務・可能性・推論などを含み、一つの文法形式だけで表されるものではありません。
この広い意味領域のうち、動詞の語形や動詞に先行する小辞によって文法的に標示される区別が法(mood)です。ギリシャ語には直説法・接続法・命令法の三つの法があります。
法はまず意味の分類というより、形式の分類として捉えるほうがわかりやすくなります。たとえば接続法は願望・目的・提案・可能性など幅広い意味と結びつくため、「願望を表す法」のように一つの意味で定義することはできません。逆に、非事実的な内容が常に接続法で表されるとも限りません。意味と形式はきれいに一対一で対応しているわけではないからです。
- 直説法:δενで否定され、να・ασを伴わない
- 接続法:να・ασを伴い、μηνで否定される
- 命令法:固有の動詞語形で表される
三つの法は、動詞に先行する小辞と否定辞の組み合わせによって区別できます。
- 直説法:(δεν) (θα) + 動詞
- 接続法:να / ας (μην) + 動詞
直説法
直説法は、状態や出来事を過去・現在・未来のいずれかに位置づけ、事実として(真偽を判断できる内容として)述べます。
- Γράφει συχνά στη μητέρα του.
- 彼はしばしばお母さんに手紙を書く。
- He writes often to his mother.
- Δεν γράφει συχνά στη μητέρα του.
- 彼はあまりお母さんに手紙を書かない。
- He does not write often to his mother.
- Το έγραψα για σένα.
- 私はあなたのためにそれを書いた。
- I wrote it for you.
- Δεν το έγραψα για σένα.
- 私はあなたのためにそれを書かなかった。
- I did not write it for you.
未来は発話時点では事実ではありませんが、実現可能性のある状態や出来事を主張するという意味で、通常は直説法の一部として扱われます。
- Θα γράψω το γράμμα απόψε.
- 私は今夜手紙を書くだろう。
- I will write the letter tonight.
- Δεν θα γράψω το γράμμα απόψε.
- 私は今夜手紙を書かないだろう。
- I will not write the letter tonight.
接続法
接続法は、小辞 να や ας を伴って標示される法です。事実の叙述とは異なる性質の内容、すなわち命令・要求・願望・提案・目的・可能性などと結びつくことが多いですが、意味は一つに限定されません。また、否定には μην が用いられ、直説法の否定 δεν とは系列が異なります。
- Να γράφει στη μητέρα του.
- 彼はお母さんに手紙を書くべきだ。
- He should write to his mother.
- Να μην γράφει στη μητέρα του.
- 彼はお母さんに手紙を書くべきではない。
- He should not write to his mother.
- Να μην γράψω το γράμμα απόψε;
- 今夜手紙を書かないほうがいいですか。
- Shouldn’t I write the letter tonight?
主節の να は、命令法より弱い命令、要求、願いなどを表します。
小辞 ας は直接話法でのみ現れ、勧告・同意・承認・無関心などを表します。また、ας が非完結過去形と組み合わされると、実現されない願望を表します。
- Ας τον ενοχλήσουμε τώρα.
- 今、彼の邪魔をしよう。
- Let us bother him now.
- Ας μην τον ενοχλήσουμε τώρα.
- 今は彼の邪魔をしないでおこう。
- Let us not bother him now.
- Να/ας του το έλεγες.
- 彼にそれを言えばよかったのに。
- You should have told him that.
- Να/ας μην του το έλεγες.
- 彼にそれを言わなければよかったのに。
- You should not have told him that.
- Ας μου δώσεις τα λεφτά.
- 私にお金を渡してもいいよ(どうでもいい)。
- Do give me the money [I don’t care].
- Ας μην μου δώσεις τα λεφτά.
- 私にお金を渡さなくてもいいよ(どうでもいい)。
- Do not give me the money [I don’t care].
ναの省略
接続法標識の να が省略されても、否定辞 μην の使用によって接続法であることが示される場合があります。これは主に禁止表現で見られます。
- (Να) μην του το δώσεις.
- 彼にそれを渡すな。
- Do not give it to him.
- (Να) μην του μιλάς έτσι.
- 彼にそんな話し方をするな。
- Do not speak to him like that.
- (Να) μην πιστεύεις ό,τι σου λένε.
- 言われることを何でも信じるな。
- Don’t believe what they tell you.
命令法
命令法は固有の動詞語尾を持ち、直説法・接続法と区別されます。
- Διάβαζε πιο δυνατά, σε παρακαλώ.(命令法)
- もっと大きな声で読んでください。
- Read louder, please.
- Διαβάζεις πολύ δυνατά και με ενοχλείς.(直説法)
- あなたは声が大きすぎて、私の邪魔になっている。
- You are reading too loud and you are disturbing me.
- Να διαβάζεις λίγο πιο δυνατά, σε παρακαλώ.(接続法)
- もう少し大きな声で読んでください。
- Read a little louder, please.
命令法は二人称単数・複数にのみ存在し、非過去形のみを持ちます。
受動態の命令法
受動態の命令法は完結相に限定されます。たとえば ντύνω「(誰かに)服を着せる」の受動態は ντύνομαι「服を着る」ですが、その命令法は完結形の ντύσου(単数)・ντυθείτε(複数)のみです。
受動態で反復的・継続的な行為を命じるには、接続法を用います。
- να ντύνεσαι「服を着なさい」(単数)
- να κοιμάστε「眠りなさい」(複数)
命令法の否定
命令法は否定できません。禁止を表すには接続法を用います。
- να μην γράφεις「書くな」(単数)
- να μην ντυθείς「服を着るな」(単数)
弱形代名詞の位置
命令法および分詞形では弱形代名詞が動詞の後に置かれます。直説法・接続法では動詞の前に置かれます。
- Γράψε τού το.(命令法)
- 彼にそれを書いてやれ。
- Write it to him.
- Γράφοντάς του το…(分詞形)
- 彼にそれを書きながら…
- While writing it to him…
- Του το έγραψα.(直説法)
- 私は彼にそれを書いた。
- I wrote it to him.
- Να του το γράψεις.(接続法)
- 彼にそれを書きなさい。
- You should write it to him.