
カナ表記の方針
単語ページで使うギリシャ語のカナ表記と複数併記の考え方です。
単語ページのカナ表記は、ギリシャ語の音を日本語のカナで近似して読むための表記です。厳密な発音記号ではありません。
できるだけ実際の音に近い表記を示すようにしつつ、日本語のカナとして読みやすい形も残します。そのため、必要な語では複数のカナを併記します。
音そのものの詳しい説明は、音韻・表記カテゴリのページで扱っています。このページでは、単語ページでどのようなカナ表記を使うかだけをまとめます。
文字と音素の対応
文字と文字の組み合わせを単位として、表す音素・異音・条件・例を網羅する内部用の仮ページ

子音の音素
子音の発音について

母音の音素
母音の発音について

基本方針
- カナは発音の目安であり、厳密な音声記号ではありません。
- ギリシャ語の音に近い表記を優先します。
- カナだけでは写しにくい音では、聞こえ方に近い表記、綴りの見えやすい表記、音声説明に近い表記を併記することがあります。たとえば、口蓋化した [ʝ], [ç], [ɲ] などは、カナだけでは一通りに写しにくい音です。
- 複数表記を並べる場合は、原則として自然に聞こえる表記を先に、補足的な表記を後ろに置きます。
- 複数語の表現では、ギリシャ語の語間に対応するスペースをカナ表記にも入れます。
母音
| ギリシャ文字 | カナ |
|---|---|
| α | ア |
| ε | エ |
| η, ι, υ, ει, οι | イ |
| ο, ω | オ |
| ου | ウ |
| αι | エ |
ου は基本的に ウ とします。分音符がある場合は、母音字の組み合わせとしてではなく、分かれた母音として扱います。
ストレスと長音符
現代ギリシャ語では、母音の長さだけで意味を区別することはありません。ただし、ストレスのある母音は日本語話者にはやや長く、強く聞こえることがあります。
そのため、単語ページでは、ストレスのある母音に長音符を添えた読みを併記することがあります。
- θάλασσα: サラサ, サーラサ, タラサ, ターラサ
- θεός: セオス, セオース, テオス, テオース
同じ母音が続く語では、短く読む形と、長音符でまとめる形を併記することがあります。
- ζώο: ゾオ, ゾー
詳しくは、ストレスと長さの説明ページを参照してください。
ストレス(アクセント)
ストレス(アクセント)について

長さ
長さについて

θ と δ
θ は、日本語のサ行にもタ行にも完全には一致しません。本サイトでは、原則としてサ行を先にし、タ行を後ろに併記します。
- θεός: セオス, テオス
- θάλασσα: サラサ, タラサ
φθ, χθ, σθ, νθ, θρ, θλ, θν などの子音群の中でも、この方針を使います。
δ はダ行で表記します。ザ行の読みは基本的に併記しません。
- δώρο: ドロ
- παιδιά: ペディヤ
β・γ・χ など
β は、基本的に ヴァ, ヴィ, ヴ, ヴェ, ヴォ で表記します。
γ は、後ろに来る母音によって聞こえ方が変わります。α, ο, ου などの前ではガ行で表記します。ι, η, ε などの前では [ʝ] になり、イ, イェ に近い表記を使います。語によっては ギ, ゲ も併記します。
- γάλα: ガラ
- γόνατο: ゴナト
- γη: イ, ギ
- γε: イェ, ゲ
χ は ハ行に近い表記を使います。前寄りの母音の前や、アクセント記号のつかない ι と母音が続く場合には [ç] になり、ヒャ, ヒュ, ヒョ のように書くことがあります。
- χιόνι: ヒョニ, ヒオニ
- οχιά: オヒャ, オヒア
アクセント記号のつかない ι と母音が続く場合
アクセント記号のつかない ι が母音の前に来ると、前の子音と結びついて、カナでは表しにくい音になることがあります。音韻説明では、この ι を「非強勢の /i/」として説明しています。
このような変化は、口蓋化または硬口蓋音として説明されるもので、[c], [ɟ], [ʝ], [ç], [ɲ] などの音が関わります。
この場合、単語ページでは次のように複数表記を併記することがあります。
- σκιά: スキャ, スキア
- γκιόνης: ギョニス, ギオニス
- φωτιά: フォティヤ, フォティア, フォトゥヒャ
- βια: ヴィヤ, ヴィア, ヴヤ
- δια: ディヤ, ディア, ドゥヤ
- ζημιά: ジミャ, ジミア, ジンニャ
- μυαλό: ミャロ, ミアロ, ンニャロ
- λεμονιά: レモニャ, レモニア
- ελιά: エリャ, エリア
ここでは、ふつうに聞こえやすいカナを先に置き、綴りの ι が見えやすい表記や、音声説明に寄せた表記を後ろに置いています。すべての語で同じ数の読みを置くわけではありません。
文語・学術語由来の語などでは、同じような綴りでも ι が残って聞こえることがあります。その場合は、イを残した表記を使います。
- στάδιο: スタディオ
- επέτειος: エペティオス
- άδεια: アディア
詳しい音のしくみは、母音と子音の説明ページを参照してください。
母音の音素
母音の発音について

子音の音素
子音の発音について

γγ・γκ・γχ
γγ, γκ, γχ は、語の位置や後ろの音によって表記が変わります。
γγ は、通常は ンガ, ング, ンゴ, ンギ, ンゲ のように表記します。文語的な語では、ンイ, ンイェ のように表記する場合があります。
- άγγελος: アンゲロス
- εγγεγραμμένος: エンイェグラメノス
γκ は、語頭では ガ, ギ, グ, ゲ, ゴ とし、語中では鼻音を入れた表記も併記します。
- γκρι: グリ
- γκρίζος: グリゾス
- παγκάκι: パンガキ, パガキ
- συγκίνηση: シンギニシ, シギニシ
γχ は、ンハ, ンヒ, ンホ のように表記します。
- άγχος: アンホス
- αγχίνοια: アンヒニア
μπ・ντ
μπ は、語頭ではバ行で表記します。語中では、鼻音を入れた表記を併記します。
- μπανάνα: バナナ
- αμπέλι: アンベリ, アベリ
- λάμπα: ランバ, ラバ
ντ は、語頭ではダ行で表記します。語中では、鼻音を入れた表記を併記します。
- ντομάτα: ドマタ
- δόντι: ドンディ, ドディ
- αντίδραση: アンディドラシ, アディドラシ
外来語などでは、μπ が パ行、ντ が タ行に近く聞こえる語もあります。その場合は語ごとに表記を調整します。
αυ・ευ・ηυ
αυ, ευ, ηυ は、直後の綴りで フ と ヴ を分けます。
- κ, π, τ, φ, θ, χ, σ, ξ, ψ の前、または語末: フ
- 母音、または β, γ, δ, ζ, λ, μ, ν, ρ の前: ヴ
- τζ の前: ヴ
例:
- αυτός: アフトス
- αυλή: アヴリ
- εύκολος: エフコロス
- ευμενής: エヴメニス
σ の有声化
σ が有声音の前に来て濁って聞こえる場合は、ザ行やズの音で表記します。
- κόσμος: コズモス
- κόσμημα: コズミマ
- σμήνος: ズミノス
- σβήνω: ズヴィノ
- οργανισμός: オルガニズモ
語と語の境界でも、前の語末の ς が次の語の影響で濁って聞こえることがあります。その場合は、濁った読みと、各語をそのまま読んだ形を併記することがあります。
- πρώτες βοήθειες: プロテズ ヴォイシエス, プロテス ヴォイシエス
- μαλλί της γριάς: マリ ティズ グリアス, マリ ティス グリアス
σ 以外の子音どうしにも有声化・無声化が関わる場合がありますが、単語ページでは基本の綴りに沿った読みを中心にし、必要な語だけ併記します。
同化と脱落
同化と脱落について

τσ・τζ・ξ・ψ
τσ は、ツァ, ツィ, ツェ, ツォ のように表記します。
- τσάι: ツァイ
- τσιγάρο: ツィガロ
- κατσίκα: カツィカ
- σάλτσα: サルツァ
τζ は、ズァ, ズィ, ズェ, ズォ のように表記します。
- τζάκι: ズァキ
- μελιτζάνα: メリズァナ
- βιολιτζής: ヴィオリズィス
- τζίτζικας: ズィズィカス
ξ は ク + サ行、ψ は プ + サ行で表記します。
- ξένος: クセノス
- τάξη: タクシ
- ψωμί: プソミ
- ψυχή: プシヒ
同じ子音が続く場合
同じ子音字が連続する場合、現代ギリシャ語では1つの子音として発音されます。単語ページのカナ表記でも、1子音分だけ書きます。
- Σάββατο: サヴァト
- εκκλησία: エクリシア
- άλλος: アロス
- γράμμα: グラマ
- γέννηση: イェニシ, ゲニシ
- θάλασσα: サラサ, タラサ
鼻音同化
鼻音が後続子音に合わせて変化することがあります。ただし、カナ表記では基本的に ン で表します。
- συγχέω: シンヒェオ
異形・脱落・連語
同じ語に複数の綴りがある場合は、それぞれの見出し語として書かれている綴りに合わせて読みます。
- φθηνός は φθ として読みます。
- φτηνός は φτ として読みます。
- χθες は χθ として読みます。
- χτες は χτ として読みます。
- επτά は πτ として読みます。
- εφτά は φτ として読みます。
連語では、ギリシャ語の語間に対応するスペースをカナ表記にも入れます。
綴りに母音の脱落が書かれていない場合は、基本的に書かれている形に合わせて読みます。