🔊

子音の音素

子音の発音について

要点のまとめ

ギリシャ語の子音と音素

  • 子音の音素は15種類(p, t, k, f, θ, x, v, ð, γ, s, z, l, r, m, n)
  • 隣り合う音によって異音が生じる

/p/の発音

  • 基本は [p]、鼻音の後で [b] に変化

/t/の発音

  • 基本は [t]、鼻音の後で [d] に変化

/k/の発音

  • 基本は [k]、前母音の前で [c]、鼻音の後で [g] または [ɟ]

/f/の発音

  • [f] のみで異音なし

/θ/の発音

  • [θ] のみで異音なし

/x/の発音

  • 基本は [x]、前母音の前で [ç]

/v/の発音

  • 基本は [v]、無声音の前で [f] に同化

/ð/の発音

  • [ð] のみで異音なし

/ɣ/の発音

  • 基本は [ɣ](後母音の前)、前母音の前で [ʝ]

/s/の発音

  • 基本は [s]、有声音の前で [z]

/z/の発音

  • [z] のみで異音なし

/l/の発音

  • 基本は [l]、非強勢の /i/ + 母音の前で [ʎ]

/r/の発音

  • [r] のみ、舌先を震わせる巻き舌

/m/の発音

  • 基本は [m]、唇歯音の前で [ɱ]

/n/の発音

  • 基本は [n]、後続子音に応じて [ɲ], [ŋ], [m], [ɱ] に同化

[ts]と[dz]の発音

  • 無声・有声の破擦音で、独立した音素かどうかは議論がある

二字綴りの発音

  • 同じ文字の重なり(ββ, κκ…)は対応する単独字と同じ音
  • αυ/ευ/ηυ は後続音の有無声によって [f] 系/[v] 系に分かれる
  • γγ, γκ, γχ, μπ, ντ は有声閉鎖音または鼻音+閉鎖音
  • τζ [dz], τσ [ts] は破擦音

ξ・ψ

  • 1文字で2音素(ξ [ks], ψ [ps])を表す

ギリシャ語の子音一覧・調音部位と調音方法による分類

  • IPA 形式の表で、調音部位と調音方法により分類

補足

  • 鼻音+破裂音の発音は話し手の世代・地域により異なる
  • 外来語では鼻音+無声破裂音がそのまま保たれることがある

ギリシャ語の子音と音素

ギリシャ語の子音の音素は15種類あります。音素は隣り合う音によって発音が変わることがあり、これを異音といいます。

子音の音素: p, t, k, f, θ, x, v, ð, γ, s, z, l, r, m, n

  • 音素:/p/ のようにスラッシュで表記
  • 異音:[p], [b] のように角括弧で表記

/p/の発音

  • 基本は[p]
  • 鼻音の後 → [b]
    • 語頭では鼻音なしの[b]:μπότα [bóta・ボータ]
    • 語中では鼻音の有無は話し手による(後述):καμπάνα [ka(m)bána・カンバーナ/カバーナ]、συμπονώ [si(m)bonó・シンボノー/シボノー]

/t/の発音

  • 基本は[t]
  • 鼻音の後 → [d]
    • 語頭では鼻音なしの[d]:ντάμα [dáma・ダーマ]
    • 語中では鼻音の有無は話し手による(後述):πέντε [pé(n)de・ペンデ/ペデ]

/k/の発音

  • 基本は[k]
  • 前母音(i, e)の前 → [c]
    • [c]は「キ」に近い音だが、舌先ではなく舌の中央部分を上あごに近づけて出す
    • κήπος [cípos・キーポス]
  • 鼻音の後 → [g](後母音の前)または[ɟ](前母音の前)
    • [ɟ]は[c]の有声版(濁った音)
    • 語頭では鼻音なし:γκρίνια [gríɲa・グリーニャ]、γκιόνης [ɟónis・ギオニス]
    • 語中では鼻音の有無は話し手による(後述):αγγούρι [a(ŋ)gúri・アングーリ/アグーリ]
  • 「k + 非強勢の/i/ + 母音」→ [c]:κιόλας [ciólas・キオラス]

/f/の発音

  • [f]のみ(異音なし)

/θ/の発音

  • [θ]のみ(異音なし)
  • 英語の “think” の th の音

/x/の発音

  • 基本は[x](喉の奥を狭めて出す「ハ」に近い音)
  • 前母音(i, e)の前 → [ç]
    • [ç]は日本語の「ヒ」の子音、ドイツ語 ich の ch に近い音
    • χιόνι [çóni・ヒオニ]
  • 「x + 非強勢の/i/ + 母音」→ [ç]

/v/の発音

  • 基本は[v]
  • 無声音の前 → [f]に同化:ευτυχία [eftiçía・エフティヒーア]

/ð/の発音

  • [ð]のみ(異音なし)
  • 英語の “the” の th の音

/ɣ/の発音

  • 基本は[ɣ](喉の奥を狭めて出す有声音)
    • 後母音(a, u, o)の前でのみ現れる
  • 前母音(i, e)の前 → [ʝ]
    • [ʝ]は日本語の「ヤ行」に近い音
    • γέρος [ʝéros・イェロス]
  • 「ɣ + 非強勢の/i/ + 母音」→ [ʝ]:κουράγιο [kuráʝo・クラーヨ]

/s/の発音

  • 基本は[s]
  • 有声音の前 → [z]:κόσμος [kózmos・コーズモス]

/z/の発音

  • [z]のみ(異音なし)
  • ζ(ゼータ)で表される独立した音素

/l/の発音

  • 基本は[l]
  • 「l + 非強勢の/i/ + 母音」→ [ʎ]
    • [ʎ]はイタリア語の gli、スペイン語の ll に近い音(「リャ」のような音)
    • ελιά [eʎá・エリャー]

/r/の発音

  • [r]のみ(異音なし)
  • 舌先を震わせる巻き舌の音

/m/の発音

  • 基本は[m]
  • 唇歯音(f, v)の前 → [ɱ]
    • [ɱ]は上の歯と下唇を近づけた状態で鼻に抜ける音
    • αμφιβολία [aɱfivolía・アンフィヴォリーア]

/n/の発音

  • 基本は[n]
  • 「n + 非強勢の/i/ + 母音」→ [ɲ]
    • [ɲ]は日本語の「ニャ」の子音に近い音
    • νιάζομαι [ɲázome・ニャーゾメ]
  • 子音の前では、後続の子音に同化:
    • 両唇子音(p, b)の前 → [m]:συμπαθώ [si(m)baθó・シ(ム)バソー]
    • 唇歯子音(f, v)の前 → [ɱ]:συμφωνία [siɱfonía・シンフォニーア]
    • 硬口蓋子音の前 → [ɲ]:συγχέω [siɲçéo・シニヒェーオ]
    • 軟口蓋子音(k, g, x, ɣ)の前 → [ŋ]
      • [ŋ]は日本語の「案外」の「ん」に近い音
      • άγχος [áŋxos・アーンホス]

[ts]と[dz]の発音

  • [ts]は無声、[dz]は有声の破擦音
  • 独立した音素か「t+s」「d+z」の組み合わせかは議論がある
  • τσέπη [tsépi・ツェーピ]、τζάμι [dzámi・ヅァーミ]

二字綴りの発音

子音の文字が重なったもの、および2文字で1音または連続する音を表す綴りの発音を扱います。

同じ文字の重なり

ββ, κκ, λλ, μμ, νν, ππ, ρρ, σσ, ττ は通常、単一の音を表し、対応する単独字と同じ発音になります。

  • Σάββατο [sávato・サーヴァト]
  • εκκλησία [eklisía・エクリシーア]
  • άλλος [álos・アーロス]
  • γράμμα [ɣráma・グラーマ]
  • γέννηση [ʝénisi・イェーニシ]
  • ιππότης [ipótis・イポーティス]
  • θάλασσα [θálasa・サーラサ]
  • αττικός [atikós・アティコース]

αυ・ευ・ηυ

αυ, ευ, ηυ は、後続の音が無声か有声かによって、それぞれ [af]/[av]、[ef]/[ev]、[if]/[iv] に分かれます。υ の部分が子音 [f] または [v] に変わります。

  • 無声音の前・語末 → [af], [ef], [if]

  • 有声音の前 → [av], [ev], [iv]

  • αυτός [aftós・アフトス]、αυλή [avlí・アヴリ]

  • εύκολος [éfkolos・エフコロス]、ευμενής [evmenís・エヴメニス]

  • διηύθυνα [ðiífθina・ディイフシナ]

γγ・γκ・γχ・μπ・ντ

有声閉鎖音、または鼻音+閉鎖音を表します。語頭か語中か、後続母音が前母音(/i/, /e/)か後母音(/a/, /u/, /o/)かで発音が変わります。

γγ:語中のみ。通常は [ŋg] / [ŋɟ]。古典・文語由来の語では [ŋɣ] / [ŋʝ]。

  • αγγούρι [aŋgúri・アングーリ](後母音)
  • άγγελος [áŋɟelos・アンゲロス](前母音)
  • εγγράμματος [eŋɣrámatos・エングラマトス](古典・文語由来、後母音)
  • εγγεγραμμένος [eŋʝeɣraménos・エンイェグラメノス](古典・文語由来、前母音)

γκ:語頭は鼻音なしの [g] / [ɟ]、語中は [ŋg] / [ŋɟ]。

  • γκρίζος [grízos・グリーゾス](語頭、後母音)
  • γκιόνης [ɟónis・ギオニス](語頭、前母音)
  • αγκώνας [aŋgónas・アンゴーナス](語中、後母音)
  • ανάγκη [anáŋɟi・アナンギ](語中、前母音)

γχ:語中のみ。[ŋx] / [ŋç]。

  • άγχος [áŋxos・アーンホス](後母音)
  • αγχίνοια [aŋçínia・アンヒーニア](前母音)

μπ:語頭は [b]、語中は [(m)b](話者により鼻音の有無に揺れ)。外来語の一部では [(m)p] のまま。

  • μπότα [bóta・ボータ](語頭)
  • καμπάνα [ka(m)bána・カンバーナ/カバーナ](語中)
  • κομπιούτερ [ko(m)pjúter・コンピューテル](外来語)

ντ:語頭は [d]、語中は [(n)d](話者により鼻音の有無に揺れ)。外来語の一部では [(n)t] のまま。

  • ντουλάπα [dulápa・ドゥラーパ](語頭)
  • κοντά [ko(n)dá・コンダ/コダ](語中)
  • αντένα [a(n)téna・アンテナ](外来語)

τζ・τσ

破擦音を表します。独立した音素か、t+s/d+z の組み合わせかは議論があります。

  • τζ [dz](有声歯茎破擦音):τζάμι [dzámi・ヅァーミ]
  • τσ [ts](無声歯茎破擦音):τσέπη [tsépi・ツェーピ]

ξ・ψ

1文字で2つの音を表します。

  • ξ [ks](無声軟口蓋破裂音+無声歯茎摩擦音):ξένος [ksénos・クセノス]
  • ψ [ps](無声両唇破裂音+無声歯茎摩擦音):ψωμί [psomí・プソミ]

ギリシャ語の子音一覧・調音部位と調音方法による分類

下表では、国際音声記号(IPA)の一覧表の形式で、横軸に調音部位、縦軸に調音方法を配置した表で異音を示します。

各セルの左が無声音、右が有声音です。

両唇
Bilabial
唇歯
Labiodental

Dental
歯茎
Alveolar
硬口蓋
Palatal
軟口蓋
Velar
破裂
Plosive
pbtdcɟkg

Nasal
mɱnɲŋ
ふるえ
Trill
r
摩擦
Fricative
fvθðszçʝxɣ
接近
Approximant
(w)j
側面
Lateral
lʎ
破擦
Affricate
tsdz

補足

  1. 鼻音 + 破裂音の発音バリエーション
    • μπ, ντ, γκ/γγ の発音において、鼻音部分の有無は話し手によって異なる
    • 位置による傾向:
      • 語頭:鼻音なし([b], [d], [g]/[ɟ])
      • 語中:鼻音あり/なし両方([mb]/[b], [nd]/[d], [ŋg]/[g])
    • 話者による傾向:
      • 若い世代・アテネ:鼻音を省略する傾向
      • 年配の世代:フォーマルな場面では鼻音を残すことが多い
      • 地域差・個人差も大きく、一概にルール化しにくい
  2. 外来語の例外
    • 完全に同化していない外来語では、鼻音 + 無声破裂音がそのまま保たれることがある
    • σαμπάνια [sampánia・サンパーニア]([mb] にならない)
    • κομπιούτερ [kompjúter・コンピューテル]([mb] にならない)