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日本語五十音のギリシャ文字表記

日本語の五十音をギリシャ文字で表す方法

要点のまとめ

(検討中)

ヘボン式を基礎とする

ギリシャ語には、日本語をギリシャ文字で転写するための公式な規格はありません。慣習的にいくつかの書き方があり、たとえば「東京」は Τόκιο と Τόκυο のどちらも見られます。

広く使われる書き方は、日本語のローマ字表記として知られるヘボン式を基礎としており、母音は原則として ア→α、イ→ι、ウ→ου、エ→ε、オ→ο に対応します。ただし細部には揺れがあり、実際の表記を見ると大きく2通りの傾向が観察されます。

ふたつの書き方の傾向

拗音(「きゃ」「しゃ」など)の書き方と、撥音(「ん」)の扱いで、2通りの傾向が見られます。

ひとつめは、拗音を「子音 + ι + 母音」の形で書く傾向です。たとえば「きゃ」は κια、「しゃ」は σια になります。撥音「ん」は常に ν と書き、後続する音との区別はしません。綴りが一意になりやすく、書き方は体系的です。

ふたつめは、拗音を「子音 + υ + 母音」の形で書く傾向です。たとえば「きゃ」は κυα になります。ヘボン式で kya と書くことに対応し、元の発音により近い形です。ただし、「しゃ」のように σα 行と同じ綴りになる組み合わせが出てくるため、アポストロフィ「‘」を挟んで区別します。「さ」は σα、「しゃ」は σ’α です。同じ理由で、撥音「ん」も後続が母音のときは ν’α(例:かんい → καν’ι)、ντ のときは ν’τ(例:げんてい → γκεν’τει)のように「‘」を挟みます。

以下は、上で見たふたつの傾向を一覧にまとめた対応表です。2段になっている行は、上段がひとつめ、下段がふたつめの書き方を示しています。

基本五十音

αιουεο
κακικουκεκο
σασισουσεσο
τατσιτσουτετο
νανινουνενο
χαχιφουχεχο
μαμιμουμεμο
γιαγιουγιο
ραριρουρερο
βαβον

濁音・半濁音

γκαγκιγκουγκεγκο
ζατζιζουζεζο
ντατζι
τζ’ι
ζου
ζ’ου
ντεντο
μπαμπιμπουμπεμπο
παπιπουπεπο

ぢ・づ は、ふたつめの書き方では「‘」を付けて じ(τζι)・ず(ζου)と区別します。ひとつめでは区別しません。

拗音

きゃきゅきょ
κια
κυα
κιου
κυου
κιο
κυο
しゃしゅしょ
σια
σ’α
σιου
σ’ου
σιο
σ’ο
ちゃちゅちょ
τσατσου
τσ’ου
τσο
にゃにゅにょ
νια
νυα
νιου
νυου
νιο
νυο
ひゃひゅひょ
χια
χυα
χιου
χυου
χιο
χυο
みゃみゅみょ
μια
μυα
μιου
μυου
μιο
μυο
りゃりゅりょ
ρια
ρυα
ριου
ρυου
ριο
ρυο
ぎゃぎゅぎょ
γκια
γκυα
γκιου
γκυου
γκιο
γκυο
じゃじゅじょ
τζατζουτζο
ぢゃぢゅぢょ
τζα
τζ’α
τζου
τζ’ου
τζο
τζ’ο
びゃびゅびょ
μπια
μπυα
μπιου
μπυου
μπιο
μπυο
ぴゃぴゅぴょ
πια
πυα
πιου
πυου
πιο
πυο

拡張音

外来語などで使われる音節の表記です。2段になっているものは上がひとつめ、下がふたつめの書き方です。

てぃとぅ
τιτου
てゅ
τιου
τυου
でぃどぅ
ντιντου
でゅ
ντιου
ντυου
つぁつぇつぉ
τσατσε
τ’σε
τσο
τ’σο
ふぁふぃふぇふぉ
φαφιφεφο
ふゅ
φιου
φυου
しぇじぇちぇ
σε
σ’ε
τζετσε
いぇ
γε
うぃうぇうぉ
βιβεβο
ゔぁゔぃゔぇゔぉ
βαβιβουβεβο

日本語にはない子音

ギリシャ語には日本語の五十音にない子音もあります。β(v音)、ξ(ks音)、ψ(ps音)、θ(無声のth)、δ(有声のth)、γι/γε(「イ」と「ギ」の間のような音)などです。

以下は、これらの子音に日本語のカタカナ読みを当てたものです。

ゔぁゔぃゔぇゔぉ
βαβιβουβεβο
くさくしくすくせくそ
ξαξιξουξεξο
ぷさぷしぷすぷせぷそ
ψαψιψουψεψο
θαθιθουθεθο
ざ・だじ・でぃず・どぅぜ・でぞ・ど
δαδιδουδεδο
い・ぎいぇ
γιγε

ギリシャ文字で書かれた日本語の例

促音「っ」は子音を重ねる書き方も重ねない書き方も見られ、実際には重ねない表記のほうが多く見られます(さっぽろ → Σαπόρο / Σαππόρο)。

長音「ー」には統一された書き方がなく、母音を重ねる表記も1字にまとめる表記も見られます。

アクセントは、ギリシャ語ではふつう語のどこかの音節にストレスが置かれるため、日本語を転写するときもギリシャ語的に自然な音節に置かれる傾向が見られます。日本語のピッチアクセント(高く発音されるところ)とは必ずしも一致しません。

  • Τόκιο / Τόκυο(東京・とうきょう)
  • Σαπόρο / Σαππόρο(札幌・さっぽろ)
  • σούσι(寿司・すし)
  • ικεμπάνα(生け花・いけばな)
  • χαρουμάκι(春巻・はるまき)
  • νίν’τζα / νίντζα(忍者・にんじゃ)
  • ταν’ι / τανι(単位・たんい)
  • καν’ταν / κανταν(簡単・かんたん)
  • τεμπούρα(天ぷら・てんぷら、てんぶら, tempura)