
形態論
形態論について
形態論
このカテゴリでは、語が性・数・格・人称・時制などに応じてどのような形に変化するか、そしてどのように新しい語がつくられるかを扱います。名詞と冠詞、形容詞と副詞、代名詞と限定詞、数詞、動詞のそれぞれの変化のしくみを順に見ていき、最後に語形成と応用トピックをまとめます。
- 名詞と冠詞:冠詞の変化、性別ごとの名詞の語形変化パターン、補足事項
- 形容詞と副詞:形容詞の語形変化と比較形、副詞の形態的な分類
- 代名詞と限定詞:代名詞・限定詞の分類と各種類の語形変化
- 数詞:基数詞・序数詞・倍数詞などの数の語形
- 動詞:活用の基礎、活用パターン、完結語幹まわり、古典的な形
- 語形成:派生語・複合語・頭字語のつくりかた
- 応用:日付の書き方・読み方
名詞と冠詞
ギリシャ語の名詞は、性(男性・女性・中性)、数(単数・複数)、格(主格・属格・対格・呼格)に応じて形が変わります。冠詞も名詞に合わせて変化し、定冠詞 ο, η, το は性・数・格の組み合わせで多様な形をとります。名詞の曲用パターンは性別ごとに複数あり、語末の形(男性名詞は -ας, -ης, -ος など、女性名詞は -α, -η など、中性名詞は -ο, -ί, -μα など)で細分されます。ストレスの位置も活用によって移動することがあり、特に属格複数はパターンが多くなります。冠詞で性を区別する通性名詞(職業名など)や複数形で性が変わる名詞などの補足事項、現代では消失したものの慣用句に残る古典的な与格(εντάξει, δόξα τω Θεώ)も扱います。
定冠詞・不定冠詞の語形変化
定冠詞・不定冠詞の語形変化について

男性名詞の語形変化
男性名詞の語形変化について

女性名詞の語形変化
女性名詞の語形変化について

中性名詞の語形変化
中性名詞の語形変化について

名詞の補足(通性・性の変化・不可算)
名詞の補足について

古典的な与格の語形
古典的な与格の語形について

形容詞と副詞
形容詞は修飾する名詞の性・数・格に合わせて語尾が変化します。語幹の末尾の音や由来によって -ος/-η/-ο, -ος/-α/-ο, -ός/-ιά/-ί, -ης/-ες などいくつかの型に分かれます。ストレスは通常すべての格で同じ音節にとどまりますが、属格複数では移動することがあります。比較級には原級に πιο を前置する形(πιο μεγάλος)と、接尾辞 -τερος を付ける合成形(μεγαλύτερος)の2通りがあり、絶対最上級 -τατος(極めて〜)もあります。副詞は、形容詞の中性複数と同形の -α で終わる形(ωραία「美しく」)、-ως で終わるやや文語的な形(ακριβώς「正確に」)、そのまま副詞として使うものなどに分かれ、-α 形と -ως 形で意味が分岐する副詞(άμεσα「直接に」 / αμέσως「すぐに」、τέλεια「完璧に」 / τελείως「完全に」)もあります。
形容詞の語形変化
形容詞の語形変化について

形容詞の比較形
形容詞の比較形について

副詞の形態的な分類
副詞の形態的な分類について(副詞の比較も含む)

代名詞と限定詞
代名詞は名詞(句)の代わりに単独で現れ、動詞の主語や目的語などとして働きます(εγώ「私」、αυτός「彼/それ」、κάποιος「誰か」など)。限定詞は名詞を修飾する語で、冠詞、指示詞、量化詞などを含みます。形容詞と紛らわしいですが、「大きい」「赤い」のように性質を表す形容詞に対し、限定詞は「この」「あの」「すべての」「ある」のように指し示しや範囲の限定を担います。多くの語は両方の機能を持ち、たとえば αυτός は単独で「彼/それ」を表す代名詞にも、αυτό το βιβλίο(この本)のように名詞を修飾する限定詞にもなります。逆に κάθε「各…」は、限定詞としてしか使えない唯一の語です。ここでは、人称代名詞の強形・弱形、指示詞・関係詞・疑問詞、不定代名詞・量化詞などの語形変化を扱います。
代名詞と限定詞の分類
代名詞と限定詞の分類について

人称代名詞の語形変化
人称代名詞(強形・弱形)と所有表現の語形変化について

指示詞・関係詞・疑問詞
指示詞、関係代名詞、疑問代名詞の語形変化について

不定詞・量化詞・その他
不定代名詞、量化詞、普遍代名詞の語形変化について

数詞
数を表す語の形を扱います。基数詞は 1, 3, 4 と200以上の百の位、1000 が性・数・格に応じて変化し(ένας/μία/ένα, τρεις/τρία, διακόσιοι/διακόσιες/διακόσια)、それ以外の 2 や 5 以上の一の位は変化しません。2000 以上では χιλιάδες「千」(女性名詞)を基に数え、百の位以下は数える対象の名詞に一致させるため、大きな数では一致先が途中で切り替わります。序数詞(πρώτος, δεύτερος, τρίτος…)はすべて -ος/-η/-ο 型形容詞として性・数・格で変化し、アラビア数字に語尾を付ける表記(20ός, 25η)もあります。倍数詞は構造的な重なりを表す -πλός(διπλός「二重の」)と、量の倍率を表す -πλάσιος(διπλάσιος「2倍の」)に分かれ、集合数詞は特定の数のまとまりを表す -άδα(δωδεκάδα「ダース」)と、おおよその数を表す -αριά(καμιά δεκαριά「約10」)に分かれます。ギリシャ文字を数字として使う表記(α΄=1, β΄=2…)も取り上げます。
基数詞
基数詞について

序数詞
序数詞について

倍数詞・集合数詞とギリシャ文字表記
倍数詞・集合数詞とギリシャ文字による数の表記について

動詞
動詞は、人称(1・2・3)、数(単数・複数)、時制(現在・過去・未来)、相(非完結・完結・完了)、法(直説法・接続法・命令法)、態(能動・受動)に応じて形が変わります。ギリシャ語では、同じ時制のなかで「動作を進行や継続として見る非完結相」と「ひとまとまりとして見る完結相」が動詞の形そのもので区別され、完了相は、英語の have done のように έχω「持つ」と別の語形を組み合わせた形で表します。相ごとに異なる語幹が存在し、非完結語幹から完結語幹を作る規則や、過去時制に現れる語頭の変化など、形成パターンが豊富なので、以下の節に分けて整理します。
活用の基礎
動詞の複雑な語形変化を見ていく前に、活用表の読み方と、動詞のどこがどう変わるのかを先にまとめます。語形変化表は「態(能動・受動)→相×時制の9マス→人称×数の6パターン」という入れ子になっていて、一つの動詞につき最大108通りの語形があります。未来は θα + 現在時制で、動詞自体の形は現在と同じです。完了相は έχω +「非定形」(三人称単数・現在時制・完結相と同形)という合成表現です。動詞の形は「語頭 + 語幹 + 語尾」から成り、語尾は時制・相・態・人称・数をまとめて示し、語幹は相と態に応じて最大3種類(非完結語幹・能動完結語幹・受動完結語幹)に変わり、語頭のオーグメント ε- は過去時制でストレスを後ろから3音節以内に収めるために付加されます。
動詞の語形変化表の見方
動詞の語形変化表の見方について

動詞の語形変化と語尾・語幹・語頭
動詞の語形変化と語尾・語幹・語頭について

活用パターン
動詞は、辞書形のストレスが語幹にある第一種(γράφω「書く」)、辞書形のストレスが語尾にあり αγαπάω / αγαπώ のような代替形を持つ第二種Aタイプ(αγαπώ「愛する」)、代替形を持たない第二種Bタイプ(θεωρώ「考える」)の3つに大別されます。これらに収まらない不規則動詞には、語尾の最初の母音が落ちる収縮形(λέω「言う」、ακούω「聞く」)、従属形が単音節になる動詞(βγαίνω → βγω)、受動形で能動的な意味を持つ異態動詞(φοβάμαι「恐れる」、θυμάμαι「覚えている」)などがあります。英語の be にあたる είμαι は現在形と過去形しか持たず完了形がないなど独特で、二人称複数 είστε は敬称としても使われます。
動詞の語形変化(第一種)
動詞の語形変化(第一種)について

動詞の語形変化(第二種Aタイプ)
動詞の語形変化(第二種Aタイプ)について

動詞の語形変化(第二種Bタイプ)
動詞の語形変化(第二種Bタイプ)について

不規則変化動詞
不規則変化動詞について

είμαιの語形変化
είμαιの語形変化について

完結語幹・過去形・分詞
継続(非完結)語幹から完結語幹を作るパターンを、第一種・第二種それぞれについて整理します。第一種は非完結語幹の末尾の音によって分かれ、唇音は -ψ-/-φτ-(γράφω → έγραψα)、軟口蓋音は -ξ-/-χτ-(ανοίγω → άνοιξα)、歯音や -ζ- は -σ-/-στ- になるなど、語幹末の子音のタイプで規則が決まります。第二種は大多数が -ησ-/-ηθ- を取ります。過去時制では語頭に現れるオーグメントを扱い、子音語幹への έ- の付加、ε-/α-/αι- が η- に変わるタイプ、前置詞接頭辞と語幹の間に入るタイプの3種類があります。受動完結語幹からは、-μένος で終わる受動完了分詞(γραμμένος「書かれた」、κουρασμένος「疲れた」)が作られ、形容詞として性・数・格で変化します。
完結語幹の形成(第一種活用)
第一種活用動詞の完結語幹の形成パターン

完結語幹の形成(第二種活用)
第二種活用動詞の完結語幹の形成パターンと受動完結語幹の音韻

オーグメント
オーグメントについて

受動完了分詞
受動完了分詞について

古典的な形
現代の標準的な活用から外れて、古代ギリシャ語やカサレヴサの語形が残っている動詞・分詞を扱います。従属形での -η 綴り、δικαιούμαι「〜する権利がある」のようにパラダイムの一部しか持たない動詞、-ιστώ 型(καθιστώ「設ける」など接頭辞の子音が有気音化するもの)、「〜できる」を表す δύναμαι などがあります。分詞では、今日も生きた形として使われる能動動名詞(-οντας)・受動現在分詞(-όμενος)・受動完了分詞(-μένος)のほかに、ο γράψας「書いた人」のような能動過去分詞や、το ανακοινωθέν「公式発表」、σήμα κατατεθέν「登録商標」のような受動過去分詞が、法律・公式文書・決まり文句に残っています。
古典的な動詞の語形
古典的な動詞の語形について

古典的な分詞
古典的な分詞について

語形成
新しい語がどのようにつくられるかを扱います。既存の語幹に接尾辞や接頭辞を付ける派生(άνθρωπος「人」→ ανθρώπινος「人間の」、κλέβω「盗む」→ κλέφτης「泥棒」)、2つ以上の語幹を組み合わせる複合、語句の頭文字を並べた頭字語(ΟΗΕ「国連」、ΔΕΗ「電力公社」)などのつくりかたを取り上げます。
語形成のプロセス(派生語・複合語・頭字語)
語形成のプロセスについて

応用
応用トピックとして、ギリシャ語での日付の書き方・読み方を扱います。日付は「曜日 → 日 → 月 → 年」の順(日本語とは逆)で並び、日は基数詞の女性形(1日のみ序数詞 πρώτη。ημέρα「日」が女性名詞のため)、月は月名の属格(Οκτωβρίου「10月の」)、年は基数詞の中性形(έτος「年」が中性名詞のため)となり、ここまでに扱った数詞・名詞・冠詞の変化が組み合わさる例です。
日付の書き方・読み方
日付の書き方・読み方について
