#紫系の色
該当語 14 件。単語の詳細は各ページで確認できます。
ギリシャ語:μπορντό
読み方:ボルド・ボルドー・ボルンド・ボルンドー
ラテン文字:bordo
フランス語 bordeaux(ボルドー色、ボルドーワインの色)からギリシャ語に入った学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)で、不変化中性名詞・形容詞として定着した。源にあるフランス語 bordeaux は、フランス南西部の都市 Bordeaux(ボルドー)の名前で、その地域で生産される赤ワイン(vin de Bordeaux、ボルドーワイン)の特徴的な深い赤紫色から、色名として近世以降に派生した。
源にあるフランスの地名 Bordeaux は、ガリア人の都市 Burdigala(ブルディガラ)を語源とし、ローマ帝国期にラテン語化、中世期にフランス語化を経て現代の Bordeaux になった。語源は印欧祖語にも、ガリア語固有の地名にも諸説あり、確定していない。ボルドーは紀元前 60 年代にローマ帝国アクィタニア州の主要都市となり、中世以降はフランスの主要なワイン生産地として知られ、特にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランの混醸赤ワインが「ボルドーワイン」として国際的な評価を確立した。
19 世紀のフランスのファッション・芸術文化の中で、ボルドーワインの色合い(深い赤に紫と茶が混じった色)が独特の色名として確立され、ヨーロッパ各地の色彩語彙に広まった:英語 burgundy(ブルゴーニュ色、← Burgundy「ブルゴーニュ」、フランスの別のワイン産地), スペイン語 burdeos, イタリア語 bordeaux, ドイツ語 Bordeauxrot, ロシア語 бордовый bordovyy が並ぶ。
ヨーロッパの「ワイン色」「ボルドー色」「ブルゴーニュ色」は、それぞれワイン産地の地名を冠した類似の深紅・深赤紫を指し、ファッション・装飾・口紅・家具・内装で 20 世紀以降に標準的な色名として確立された、近代の地名色彩語の典型例。同じパターンで作られた色名には、Bordeaux 系のほか、Magenta(マジェンタ、← 1859 年のマジェンタの戦いに由来), Sienna(シエナ、← イタリア・トスカーナの都市), Indigo(インディゴ、← インド由来の藍色)が並ぶ、地名・固有名から色名を作る近代の造語パターン。
派生・関連語族として μπορντό φόρεμα(ボルドー色のドレス), μπορντό κραγιόν(ボルドー色の口紅), μπορντό σακάκι(ボルドー色のジャケット), μπορντό τοίχος(ボルドー色の壁), σκούρο μπορντό(暗いボルドー色), ανοιχτό μπορντό(明るいボルドー色), βαθύ μπορντό(深いボルドー色)。
同じ赤系の色語の領域には、より広く明るい κόκκινος(赤、← 古代 κόκκινος < κόκκος「種子」、特にケルメスの実の赤色染料に由来), 暗赤色の βυσσινί(暗赤色、ボルドー寄り、← βύσσινο「サワーチェリー」), 赤茶のキャラメル色 κεραμιδί(瓦色), 赤ピンクの κερασί(サクランボ色), 紫寄りの μελιτζανί(ナス紺、茄子色), 紫の μοβ(紫、← 仏 mauve), ライラックの λιλά(ライラック色)が並び、明度・彩度・茶味・紫味で言い分けられる。
μπορντό はその中で、ワインを思わせる深く落ち着いた赤紫を指し、特にエレガントで成熟した色合いとして、フォーマルなドレス、口紅、革製品、家具、内装に使われる、上品で知的な印象を与える色語として位置づけられる。
ファッション・装飾の文脈では、秋冬の色(χρώμα φθινοπώρου / χειμώνα)として伝統的に好まれ、革製品(バッグ、靴、ベルト), 木製家具(チェアの張り、カーテン), 化粧品(マットなボルドー口紅), 葉巻・万年筆・革表紙の本などの伝統的な高級品の色合いとして、文化的・社会的な含意を持つ色語として機能する。
ギリシャ語:λιλά
読み方:リラ・リラー
ラテン文字:lila
フランス語 lilas(ライラック、ライラック色)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。Tri は λόγ. < γαλλ. lilas と記すが、現代ギリシャ語の日常語として浸透しており、μπλε(青), ροζ(ピンク), γκρι(グレー)と並ぶ汎用の不変化色語として機能する。
源にあるフランス語 lilas は、近世のフランスにおいて 16 世紀末にオスマン帝国経由で導入されたライラック(Syringa vulgaris)の植物名として、トルコ語 leylak(ライラック)から借用された。さらにさかのぼると、トルコ語 leylak はペルシア語 ليلك līlak / ليلج līlanj(藍、ライラック), アラビア語 ليلك līlak(ライラック)からの借用で、東地中海・西アジアの植物・染料語彙の系譜にある。さらに古層をさかのぼると、サンスクリット nila-(青、藍)に由来するとされ、インド・ペルシア・アラビア・トルコ・ヨーロッパへと、植物の名前と色彩語彙が東から西へ広がった文化伝播の歴史を反映する語。
植物としてのライラック(Syringa vulgaris、モクセイ科)は、バルカン半島・アナトリア・カルパティア山脈原産で、16 世紀末にオスマン帝国のスレイマン大帝の時代にウィーンから西欧に紹介され、観賞用低木として広まった経緯がある。ギリシャ語ではこの植物を πασχαλιά(ライラック、復活祭、← Πάσχα「復活祭」の頃に咲くため)と呼び、植物名と色名で語が分化している。
ヨーロッパ各語の「ライラック」語彙には、フランス語 lilas, スペイン語 lila, イタリア語 lillà, ドイツ語 Lila / Flieder, 英語 lilac, ロシア語 сирень siren'(別系統、ギリシャ語 σύριγξ「葦笛」由来)が並び、東地中海・トルコ語起源の系譜と、ロシア語のように別系統の系譜が共存する。
現代ギリシャ語の λιλά は不変化形容詞・中性名詞として、性・数・格で語形が変わらないまま使われる。同じパターンの不変化色語には、近い色の μοβ(紫、← 仏 mauve), βιολέ / βιολετί(バイオレット), μελιτζανί(茄子色), μενεξεδί(すみれ色)が並び、紫系の色合いの細かい違いを言い分ける。
派生・関連語族として λιλάκι(薄いライラック色、口語), λιλά-ροζ(ライラックピンク), λιλά απόχρωση(ライラックの色合い), λιλά σκιά(ライラックの陰影)。同じ植物起源の色名としては、ροζ(バラ色、← 仏 rose < ラ rosa), μενεξεδί(すみれ色、← 古代 μενεξές), καρότο(ニンジン色、橙色), καναρινί(カナリア色、黄色)が並ぶ、植物・動物の名前から色名を作る現代ギリシャ語の生産的な造語パターンの一翼を担う。
色彩文化の文脈では、ライラックは春の到来・新緑・希望・若さの象徴として詩や歌に登場し、ファッションでは 1990 年代以降にパステルカラーの一つとして流行した、ロマンティックで柔らかな色のイメージを担う。化粧品(アイシャドー、口紅、ネイル), 服飾(ドレス、ブラウス), インテリア(壁紙、寝具)の領域で、女性向けの優しい色合いとして広く使われる。
ギリシャ語:δαμασκηνί
読み方:ダマスキニ・ダマスキニー
ラテン文字:damaskini
形容詞 δαμασκηνής(プラム色の)の不変化形。性・数に関わらず使う不変化形容詞として、また中性名詞として色そのものを指す。口語では語尾変化する δαμασκηνής より広く使われる。
ギリシャ語:δαμασκηνής
読み方:ダマスキニス・ダマスキニース
ラテン文字:damaskinis
ギリシャ語:μενεξεδής
読み方:メネクセディス・メネクセディース
ラテン文字:menexedis
μενεξές(すみれ)に色の形容詞をつくる接尾辞 -εδής が付いた語。μενεξές はトルコ語 menekşe(すみれ)からの借用で、トルコ語はさらにペルシア語の بنفشه(banafše、すみれ)に由来する。別綴りに μενεξελής がある。
文語的な色彩語で、日常会話では μοβ(モーブ)や βιολετί(バイオレット、すみれ色)のほうが一般的に使われる。βιολετί に語尾変化を持たせた βιολετής という形もある。同義語に ιώδης(すみれ色の)もある。
いずれもすみれ色を指すが、語源の経路が異なる。μενεξεδής はペルシア語からトルコ語を経てギリシャ語に入った μενεξές が元になっている。βιολετής・βιολετί はラテン語 viola(すみれ)からイタリア語やフランス語を経た西欧経由の語。ιώδης は古代ギリシャ語の ίον(すみれ)から派生した、ギリシャ語固有の系統にあたる。μοβ はフランス語 mauve(ゼニアオイの花の色)からで、厳密にはやや異なる色合いだが、すみれ色と近い範囲で使われる。
すみれの花のもつ紫がかった色合いを表す。
中性形 μενεξεδί は名詞として、すみれ色そのものを指す。無変化名詞で、別綴りに μενεξελί がある。
ギリシャ語:μοβ
読み方:モヴ・モーヴ
ラテン文字:mov
フランス語 mauve(モーヴ、薄紫色)からの外来借用。性・数・格で語形が変化しない不変化形容詞として現代ギリシャ語に取り入れられ、同じくフランス語由来の色名 μπεζ(ベージュ)、γκρι(グレー)、μπλε(青)、ροζ(ピンク)などと共通の形で定着している。
フランス語 mauve はラテン語 malva(ゼニアオイ、アオイ科の植物)に由来。薄紫の花を咲かせるこの植物の名がそのまま色名となり、19世紀後半に化学者ウィリアム・パーキンが発見した世界初の合成染料の一つも mauve と呼ばれた。それ以降、ヨーロッパ各語で「薄紫」を指す現代の色名として定着した経緯がある。
同じ malva を語根として、英語 mallow(ゼニアオイ)、mauve(薄紫)、ドイツ語 Malve(ゼニアオイ)、イタリア語 malva、スペイン語 malva など、ヨーロッパ各語の植物名や色名が広まっている。
ギリシャ語では従来の綴り μωβ から現在の μοβ に整理された。指小形は μοβάκι(薄い紫、可愛らしい紫)。
紫系の色名はギリシャ語に豊富で、βιολετί(バイオレット)、μενεξεδί(スミレ色)、λιλά(ライラック色)、μελιτζανί(茄子色)、σικλαμέν(シクラメン色)、ιώδες(学術的なスミレ色)などが並ぶ。これらの中でも μοβ は特定の色合いに限定されず、紫色全般を表す語として用いられる。
中性形と同じ形で名詞としても機能し、「紫色という色」そのものを指す(το μοβ)。
ギリシャ語:πορφυρός
読み方:ポルフィロス・ポルフィロース
ラテン文字:porfiros
古代ギリシャ語の πορφυροῦς / πορφύρεος(貝紫色の。πορφύρα「貝紫染料、ムラサキガイ」由来)からの学術借用(διαχρονικό δάνειο)で、語末の屈折型を現代ギリシャ語の -ός 型形容詞に整えなおして πορφυρός の形に落ち着いた。πορφύρα 自体は動詞 πορφύρω(波が逆巻く、湧き立つ)に由来する古層の語で、ヘキサプレックス科の巻貝(ツロツブリガイ、シリアツブリガイ)から取れる紫染料と、その色をした貝そのものを指した。プリニウスが「凝固した血の色」と形容したように赤と紫の境界にあたる深い色で、古代から中世にかけて高貴さの象徴となり、ビザンツ帝国では皇帝の子が πορφυρογέννητος(紫室生まれの)と呼ばれた。古代の πορφύρα はラテン語 purpura を経て、英語 purple(紫), porphyry(斑岩), ロシア語 порфира(皇帝の紫衣), ルーマニア語 porfiră(紫染料)の源になった。
類義語に βαθυκόκκινος(深紅の。βαθύς「深い」+ κόκκινος の合成), μοβ(紫の。フランス語 mauve 由来の外来借用で、日常の「紫」を指す), κόκκινος(赤の。日常の赤の総称), βυσσινί(えんじ色の、サワーチェリー色)。πορφυρός は古代由来の文学的・格式高い語で、夕日や王衣のような赤と紫の境界にある深い色を指す書き言葉の形として使う。派生に πορφυρό(中性形を名詞化したもの。貝紫色そのものを指す)。関連語に πορφύρα(貝紫染料、紫衣、ムラサキガイ), πορφυρογέννητος(紫室生まれ、皇帝の血筋の。ビザンツ皇族の称号), καταπόρφυρος(全身紫色の。κατά- 強調の合成)。

形容詞
中性名詞
色 
赤系の色 

