#赤系の色
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ギリシャ語:κεραμιδί
読み方:ケラミディ・ケラミディー
ラテン文字:keramidi
中世ギリシャ語 κεραμίδι(瓦、屋根瓦、← κεραμίδιον「小さな瓦」, ← 古代 κεραμίς「瓦」+ -ίδιον 指小接尾辞)の語幹に、不変化色語をつくる接尾辞 -ί を付けたギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)で、中世期に形成されて現代まで使われる継承の流れに乗った色語。果物・物質名から色名を作る現代ギリシャ語の生産的な造語パターンに乗っている。
源にある古代の κεραμίς(属格 κεραμίδος、瓦、← 古代 κέραμος「粘土、陶土、陶器」+ -ίς 名詞接尾辞)は、印欧祖語の「混ぜる、こねる」を表す語根に由来し、ラテン語 cremāre(焼く、← 英 cremate「火葬する」), cera(蝋、別系統)と関連する説、地中海・前ギリシャ語基層の語とする説が並走する。古代ギリシャ語の κέραμος は、陶土・陶器・粘土製品全般を意味し、地中海陶器文化の中核語。アテネのケラメイコス(Κεραμεικός)地区は、古代から陶器職人の集まる地区として知られ、語源的に「粘土の場所」「陶器の場所」を意味する。
古代ギリシャ語の κέραμος から派生した語族は、極めて広範に展開し、現代まで継承される:κεραμικός(陶器の、セラミックの、形容詞), κεραμική(陶芸、セラミックス、女性形が名詞化), κεραμίδι(瓦、屋根瓦), κεραμιδάκι(小さな瓦、口語の指小形), κεραμιστής(陶工、書きことば), κεραμικά είδη(陶器類), κεραμοποιείο(陶器工場), αρχαιολογία της κεραμικής(陶器考古学)。同じ語族の国際語化したセラミック(ceramic)は、英・仏・独・伊などすべてラテン語経由でギリシャ語の κεραμικός に発する系譜。
不変化色語をつくる接尾辞 -ί は、現代ギリシャ語の生産的な造語要素で、果物・物質・物の名から色名を作る:πορτοκαλί(オレンジ色、← πορτοκάλι「オレンジ」), λεμονί(レモンイエロー、← λεμόνι「レモン」), κερασί(サクランボ色、← κεράσι「サクランボ」), βυσσινί(暗赤色、← βύσσινο「サワーチェリー」), τριανταφυλλί(バラ色、← τριαντάφυλλο「バラ」), καφέ(茶色、← καφές「コーヒー」), σταχτί(灰色、← στάχτη「灰」)が並ぶ、現代ギリシャ語の色彩語彙の中核を成す造語パターン。
派生・関連語族として κεραμιδί(瓦色、不変化形容詞・中性名詞), κεραμιδής(瓦色の、形容詞、書きことば), κεραμιδόχρωμος(瓦色の、書きことば), κεραμιδί στέγη(瓦色の屋根、地中海の伝統建築の象徴), κεραμιδί τοίχος(赤茶色の壁), κεραμιδί φόρεμα(瓦色のドレス), κεραμιδί τόνος(瓦色の色合い)。
地中海建築では、伝統的な瓦屋根(κεραμοσκεπή, κεραμιδέ στέγη)が、白い壁(άσπροι τοίχοι), 青い空(μπλε ουρανός), 青い海(γαλάζια θάλασσα)と並んで、地中海・エーゲ海・サントリーニ・ミコノス・ロドスのような島々の風景の象徴的な要素として、観光・写真・絵画・建築の語彙の中で頻出する。
同じ赤茶系の色語の領域には、近い概念として μπορντό(ボルドー色、紫みの深紅), σοκολατί(チョコレート色、濃い茶色), καφέ(茶色、コーヒー色), ώχρα(黄土色), σιενά(シエナ色、← Sienna), ορτεκίνο(赤褐色、書きことば)が並び、明度・彩度・茶味・赤味で言い分けられる。κεραμιδί はその中で、焼いた粘土・テラコッタの暖かみのある赤茶色を指し、地中海建築・伝統工芸の色彩文化の中核を成す色語として位置づけられる。
ギリシャ語:μπορντό
読み方:ボルド・ボルドー・ボルンド・ボルンドー
ラテン文字:bordo
フランス語 bordeaux(ボルドー色、ボルドーワインの色)からギリシャ語に入った学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)で、不変化中性名詞・形容詞として定着した。源にあるフランス語 bordeaux は、フランス南西部の都市 Bordeaux(ボルドー)の名前で、その地域で生産される赤ワイン(vin de Bordeaux、ボルドーワイン)の特徴的な深い赤紫色から、色名として近世以降に派生した。
源にあるフランスの地名 Bordeaux は、ガリア人の都市 Burdigala(ブルディガラ)を語源とし、ローマ帝国期にラテン語化、中世期にフランス語化を経て現代の Bordeaux になった。語源は印欧祖語にも、ガリア語固有の地名にも諸説あり、確定していない。ボルドーは紀元前 60 年代にローマ帝国アクィタニア州の主要都市となり、中世以降はフランスの主要なワイン生産地として知られ、特にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランの混醸赤ワインが「ボルドーワイン」として国際的な評価を確立した。
19 世紀のフランスのファッション・芸術文化の中で、ボルドーワインの色合い(深い赤に紫と茶が混じった色)が独特の色名として確立され、ヨーロッパ各地の色彩語彙に広まった:英語 burgundy(ブルゴーニュ色、← Burgundy「ブルゴーニュ」、フランスの別のワイン産地), スペイン語 burdeos, イタリア語 bordeaux, ドイツ語 Bordeauxrot, ロシア語 бордовый bordovyy が並ぶ。
ヨーロッパの「ワイン色」「ボルドー色」「ブルゴーニュ色」は、それぞれワイン産地の地名を冠した類似の深紅・深赤紫を指し、ファッション・装飾・口紅・家具・内装で 20 世紀以降に標準的な色名として確立された、近代の地名色彩語の典型例。同じパターンで作られた色名には、Bordeaux 系のほか、Magenta(マジェンタ、← 1859 年のマジェンタの戦いに由来), Sienna(シエナ、← イタリア・トスカーナの都市), Indigo(インディゴ、← インド由来の藍色)が並ぶ、地名・固有名から色名を作る近代の造語パターン。
派生・関連語族として μπορντό φόρεμα(ボルドー色のドレス), μπορντό κραγιόν(ボルドー色の口紅), μπορντό σακάκι(ボルドー色のジャケット), μπορντό τοίχος(ボルドー色の壁), σκούρο μπορντό(暗いボルドー色), ανοιχτό μπορντό(明るいボルドー色), βαθύ μπορντό(深いボルドー色)。
同じ赤系の色語の領域には、より広く明るい κόκκινος(赤、← 古代 κόκκινος < κόκκος「種子」、特にケルメスの実の赤色染料に由来), 暗赤色の βυσσινί(暗赤色、ボルドー寄り、← βύσσινο「サワーチェリー」), 赤茶のキャラメル色 κεραμιδί(瓦色), 赤ピンクの κερασί(サクランボ色), 紫寄りの μελιτζανί(ナス紺、茄子色), 紫の μοβ(紫、← 仏 mauve), ライラックの λιλά(ライラック色)が並び、明度・彩度・茶味・紫味で言い分けられる。
μπορντό はその中で、ワインを思わせる深く落ち着いた赤紫を指し、特にエレガントで成熟した色合いとして、フォーマルなドレス、口紅、革製品、家具、内装に使われる、上品で知的な印象を与える色語として位置づけられる。
ファッション・装飾の文脈では、秋冬の色(χρώμα φθινοπώρου / χειμώνα)として伝統的に好まれ、革製品(バッグ、靴、ベルト), 木製家具(チェアの張り、カーテン), 化粧品(マットなボルドー口紅), 葉巻・万年筆・革表紙の本などの伝統的な高級品の色合いとして、文化的・社会的な含意を持つ色語として機能する。
ギリシャ語:κοκκινωπός
読み方:コキノポス・コキノポース
ラテン文字:kokkinopos
κόκκινος(赤い、赤色の)に、古代ギリシャ語 ὤψ(目、顔、見た目)に由来する接尾辞 -ωπός が付いた形。-ωπός は色を表す語に付いて、「その色を少し帯びた」「その色がかった」を表す。
κόκκινος が基本の「赤い」を表すのに対し、κοκκινωπός は空、肌、光、液体などの色合いに赤みがあることをいう。同じ接尾辞を用いた形に κιτρινωπός(黄色がかった)、πρασινωπός(緑がかった)などがある。
ギリシャ語:ροδαλός
読み方:ロダロス・ロダロース
ラテン文字:rodalos
ヘレニズム期ギリシャ語 ῥοδαλός(バラ色の、← 古代 ῥόδον「バラ」+ -αλός 形容詞接尾辞)を、近代以降に書きことばから再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。古代ギリシャ語の文学・詩語に源を持つ書きことば寄りの形容詞で、現代ギリシャ語ではやわらかい赤みを表す詩語的・文学的な色彩語として機能する。
源にある古代の ῥόδον(バラ)は、印欧祖語に確実な対応が見出されない地中海・前ギリシャ語基層の語とされる。古代ギリシャ語の文学・神話の中核的な花の名前で、ホメロスの叙事詩の「バラの指の暁」(ῥοδοδάκτυλος Ἠώς、暁の女神エオスの伝統的な形容詞), サッフォーの恋愛詩、アナクレオンの享楽詩、ピンダロスのオデなど、古代ギリシャ詩・抒情詩の中核モチーフとして頻出する。
源にある古代の ῥόδον からの派生語族は、現代まで広範に継承される:ρόδο(バラ、現代の継承形、書きことば寄り), ροδαλός(バラ色の、書きことば), ροδιά(バラの花壇、書きことば), ροδάκινο(モモ、← 「バラのような実」, 別系譜の借用), ροδάμι(バラの花弁、書きことば), ροδίτης(ロディテス、ギリシャの白ワインのぶどう品種、← ロドス島産), τριαντάφυλλο(バラ、口語、← 古代 τριάκοντα + φύλλον「30 枚の花びら」)。
地名 Ρόδος(ロドス島、エーゲ海南東の主要な島)も同じ語源で、ロドスは古代から「バラの島」と呼ばれ、ロドス出身の詩人ピンダロスのオリンピア祝勝歌でその関連が記される。古代の七不思議の一つ「ロドスの巨像」(Κολοσσός της Ρόδου)の建造地として知られる、地中海・古代世界の中核的な島。
ラテン語経由の系譜では、ラテン語 rosa(バラ、← 古代ギリシャ語 ῥόδον からの古い借用)が、ヨーロッパ各語の「バラ」語彙の共通祖となった:英語 rose, フランス語 rose, スペイン語 rosa, イタリア語 rosa, ポルトガル語 rosa, ドイツ語 Rose。同じ ῥόδον / rosa 系の系譜から、ピンク色の ροζ(ピンク、← 仏 rose), ロザリオの ροζάριο(ロザリオ、← 伊 rosario), バラ色の ροδαλός / ροζέ も派生する、極めて生産的な国際語族。
接尾辞 -αλός は、古代ギリシャ語以来の生産的な形容詞接尾辞で、形容詞・名詞の語幹に付いて「〜のような、〜の性質を持つ」を表す形容詞をつくる。同じパターンで作られた語族には、γαλανός(青い、← γαλήν「静かな海」+ -αλός), μεγαλός(大きい、書きことば), σκιερός / σκιαλός(陰のある)が並ぶ、書きことば寄りの形容詞造語要素。
派生・関連語族として ροδαλός(男性形), ροδαλή(女性形), ροδαλό(中性形), ροδαλά μάγουλα(ほんのり赤い頬、健康的な顔色の象徴), ροδαλό πρόσωπο(血色のよい顔、子供や若い女性の描写), ροδαλό φως(赤みを帯びた光、朝焼け・夕焼けの描写), ροδαλά χείλη(バラ色の唇、美の描写), ροδαλή αυγή(バラ色の暁、← 古代詩のモチーフ「バラの指の暁」), ροδαλό σύννεφο(バラ色の雲、夕焼け・朝焼け)。
文学・詩・芸術の語彙としては、ροδαλός は古代ギリシャ詩の伝統を継ぐ詩語的・文学的な色彩語として、ホメロスの「バラ色の指の暁」のような叙事詩の伝統表現を、現代詩・歌・小説の中で再活性化する役割を担う。コスタス・カリオタキス、ヤニス・リッツォス、ミルトス・サフロロス、コスタス・モンティスなど、20 世紀ギリシャ詩人の作品にも頻出する繊細な色彩語。
同じ「ピンク・バラ系の色」の領域には、近い概念として ροζ(ピンク、口語の中心語), ροδακινί(桃色、桃のような), κοκκινωπός(赤みがかった), κερασί(サクランボ色), τριανταφυλλί(バラ色、← τριαντάφυλλο), κοραλί(コーラル色、サンゴ色)が並び、明度・彩度・赤味・甘さで言い分けられる、現代ギリシャ語の繊細な色彩語彙体系の中核を担う形容詞。
ギリシャ語:ολοκόκκινος
読み方:オロコキノス・オロコーキノス
ラテン文字:olokokkinos
κόκκινος(赤い)に、全体性・包括性を表す接頭辞 ολο-(全部、すっかり、← 古代 ὅλος「全体の、全部の」)を付けたギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)。中世ギリシャ語期から現代までの生産的な造語パターンに乗った形容詞で、色形容詞に「全体・全面」の意味を加える系列の語族の一員。
源にある古代の ὅλος(全体の、完全な、全部の)は、印欧祖語の「全体、完全」を表す語根に由来し、サンスクリット sárva-(全体), ラテン語 sollus(全体の、← 英 solid, solidarity)と関連する古層語。古代ギリシャ語の ὅλος からは、現代まで広範な派生語族が継承される:όλος(全体の、全部の、現代の継承形), ολοκληρος(完全な、無傷の、← ὅλος + κλῆρος「分け前」), ολοκλήρωση(完成、完了、積分、← 数学用語 integration の翻訳借用), ολοκαύτωμα(焼尽の供物、ホロコースト、← ὅλος + καίω「焼く」, 英 holocaust), ολόσωμος(全身の), ολονυκτία(徹夜), ολομερής(全体的な、書きことば), ολοταχώς(全速力で、書きことば)が並ぶ、極めて生産的な造語要素。
接頭辞 ολο- の使用パターンは色形容詞だけでなく広範で、ολοζώντανος(生き生きとした), ολόκληρος(完全な), ολόλευκος(一面真っ白), ολόμαυρος(一面真っ黒), ολοκόκκινος(一面真っ赤), ολοπράσινος(一面真っ緑), ολοκίτρινος(一面真っ黄色)など、全体性を強調する形容詞の系列を形成する。
近い強調パターンには、別系統の κατα- 系(強度・徹底を強調)が並走する:κατακόκκινος(真っ赤な、強い赤), κατάλευκος(真っ白な、強い白), κατάμαυρος(真っ黒な、強い黒)。ολο- は色の覆う範囲・全体性を強調し、κατα- は色そのものの強度・鮮やかさを強調する、という棲み分けがある。
派生・関連語族として ολοκόκκινος(男性形), ολοκόκκινη(女性形), ολοκόκκινο(中性形), ολοκόκκινος ουρανός(一面赤い空、夕焼け), ολοκόκκινα δέντρα(真っ赤な木々、紅葉), ολοκόκκινα μήλα(一面赤いリンゴ), ολοκόκκινο φόρεμα(赤一色のドレス)。
紅葉・夕焼け・赤いリンゴの収穫・全身赤の服装など、自然と生活の場面で「全面が赤」になる状態を描写する典型的な形容詞として、季節描写・風景描写・ファッション・食文化の語彙の中で頻出する、視覚的に豊かな表現の中核を担う。
ギリシャ語:κατακόκκινος
読み方:カタコキノス・カタコーキノス
ラテン文字:katakokkinos
中世ギリシャ語 κατακόκκινος(真っ赤な、← 強調の接頭辞 κατα- + κόκκινος「赤い」)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。κατα- + 色形容詞 で「徹底的に、すっかり」の意味を強調する造語パターンの典型例で、現代ギリシャ語の生産的な造語要素として広く使われる。
源にある κόκκινος(赤い、赤色の)は、古代ギリシャ語 κόκκινος(緋色の、深紅の)の継承形で、語源は名詞 κόκκος(種子、粒、特にケルメスカイガラムシ Kermes vermilio の実)。古代地中海では、ケルメスカイガラムシの乾燥した雌虫から取れる赤色染料が、極めて高価な高級染料として珍重され、古代ローマの皇帝の紫衣の代替、ビザンツの聖職者の祭服、中世ヨーロッパの貴族の衣装の染料として使われてきた。κόκκος から派生した「赤」の語族は、英語 cochineal(コチニール、別系統だが同じ昆虫染料の概念), scarlet(緋色、← ペルシア語 saqilāṭ < 中世ラテン scarlatum < 古代の κόκκος 由来の染料の名)と関連する、地中海の赤色染料文化の中核を成す語族。
接頭辞 κατα- は、古代ギリシャ語以来の極めて生産的な造語要素で、形容詞・名詞・動詞の語幹に付いて「徹底的に、すっかり、下に」の意味を加える。色形容詞に付いた強調表現の κατα- 系の語族には、κατάλευκος(真っ白な), κατάμαυρος(真っ黒な), καταπράσινος(真っ緑な), κατακίτρινος(真っ黄色な), καταγάλανος(真っ青な)が並び、現代ギリシャ語の色彩表現を強調する形容詞の系列を成す。
同じ強調パターンには、別系統の ολο- 系(全体性を強調)が並走する:ολοκόκκινος(全体が真っ赤), ολόμαυρος(全体が真っ黒), ολόασπρος(全体が真っ白), ολοπράσινος(全体が緑一色)など。κατα- は色そのものの強度・鮮やかさを強調し、ολο- は色の覆う範囲・全体性を強調する、という棲み分けがある。
派生・関連語族として κατακοκκινίζω(真っ赤になる、動詞), κατακοκκινίσμα(真っ赤になること、口語), κατακόκκινο(真っ赤な、中性形), κατακόκκινη(真っ赤な、女性形)。
慣用的な使用では、γίνομαι κατακόκκινος(真っ赤になる)が、感情の高ぶり(恥ずかしさ・怒り・興奮)の身体反応を表す慣用句として頻出する。έγινε κατακόκκινος από ντροπή(恥ずかしさで真っ赤になった), έγινε κατακόκκινη από οργή(怒りで真っ赤になった), κατακόκκινο τριαντάφυλλο(真っ赤なバラ、愛・情熱の象徴), κατακόκκινα χείλη(真っ赤な唇、化粧の表現)が、感情・自然・美容の語彙の中で活発に展開する、現代ギリシャ語の表現の中核。
ギリシャ語:ρόδινος
読み方:ロディノス・ローディノス
ラテン文字:rodinos
古代ギリシャ語の ῥόδινος(バラ色の)に由来。ῥόδον(バラ)に形容詞を作る -ινος が付いた語で, バラの花びらを思わせるやわらかな赤みを表す。色から, 物事が好都合に進むことや先行きが明るいことを表す比喩にも使う。
英語 roseate(バラ色の), ラテン語 roseus(バラの, バラ色の)は ῥόδον の語族の仲間。元の名詞は ρόδο(バラ)で, 中性名詞化した ρόδινο(バラ色そのもの)が ρόδινος の派生。近い色名に ροδής(淡いバラ色の), τριανταφυλλής(バラ色の), τριανταφυλλένιος(バラのような色の), ροδαλός(血色のよい, バラ色の), ροδοκόκκινος(バラがかった赤の)。
ふだん「バラ」と言うときは τριαντάφυλλο が一般的で, ρόδινος はバラからの連想色を表す形容詞として文語や色名に使うことが多い。色味としては κόκκινος(赤い)より淡くやわらかい赤みで, 比喩の「順調な」は ευνοϊκός(好都合な)に近い。
ギリシャ語:ροζ
読み方:ロズ・ローズ
ラテン文字:roz
フランス語 rose(バラ、ピンク色)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)で、不変化中性名詞・形容詞として定着した。Tri は λόγ. < γαλλ. rose と記すが、現代ギリシャ語の日常語として浸透しており、μπλε(青), γκρι(グレー)と並ぶ汎用の色語として機能する。
源にあるフランス語 rose は、ラテン語 rosa(バラ)からの継承で、「バラの花の色」から「ピンク色」へと意味の中心が広がった近代の色名語。フランス語 rose は 17–18 世紀に色名としての用法が確立し、ヨーロッパ各語の「ピンク」語彙に影響を与えた。英語 pink(< ヨーロッパで栽培されたナデシコの花の名)はラテン語 rosa とは別系統だが、フランス語 rose と意味的に並走する位置にある。
源にあるラテン語 rosa(バラ)は、古代ギリシャ語 ῥόδον(バラ)からの借用とする説が伝統的(おそらくギリシャ・小アジア地域の前ギリシャ語基層を共有する古層の語)。現代ギリシャ語の ρόδο(バラ、書きことば寄り)と τριαντάφυλλο(バラ、口語)はその継承形で、ραντί / ροζ は同じバラの語族の遠い親戚にあたる。
ヨーロッパ語の「ピンク・バラ」関連語彙は ラテン語 rosa を共通祖として広く広まり、フランス語 rose, スペイン語 rosa, イタリア語 rosa, ポルトガル語 rosa, ドイツ語 rosa(色名), 英語 rose(バラ), rosé(ロゼワイン)が同系の語族を形成する。ギリシャ語の ροζ, ροζέ(ロゼワイン), ροζάριο(ロザリオ、← 伊 rosario), ροζέτα(ロゼット、← 伊 rosetta)も同じラテン語 rosa からの異なる経路の借用が並走している。
派生・関連語族として ροζάκι(小さめのピンク、指小形、口語), ροζουλί(やわらかいピンク、口語), ροζέ(ロゼ色、ロゼワイン、← 仏 rosé), ροζάριο(ロザリオ), ροζέτα(ロゼット、花型の装飾)。同じ赤系の色語の領域には、κόκκινο(赤), μοβ(紫), κερασί(サクランボ色), βυσσινί(暗赤色), σομόν(サーモンピンク), φούξια(フューシャ)が並び、明度・彩度で言い分けられる。
近代以降の比喩用法では、ピンク色がもつ女性性・甘美さの連想から、性的でいかがわしい内容を「ροζ」と呼ぶ俗語用法が定着した(ροζ βίντεο「ポルノ動画」, ροζ ξενοδοχείο「ラブホテル」, ροζ τηλέφωνα「テレホンセックス回線」)。理想化や夢見心地を指す ροζ σύννεφο(ピンクの雲)も、ピンク色のもつ甘美なイメージからの比喩展開。
ギリシャ語:κερασί
読み方:ケラシ・ケラシー
ラテン文字:kerasi
κεράσι(サクランボ)に色語をつくる接尾辞 -ί を付け、不変化形容詞・中性名詞として使う色語をつくった、ギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)。果実の色をそのまま色名に転用した命名で、現代ギリシャ語の生産的な造語パターンに乗っている。
不変化語尾 -ί で果物・素材・物の名から色名をつくる造語は現代ギリシャ語で広く使われ、同じパターンで πορτοκαλί(オレンジ色、← πορτοκάλι「オレンジ」), λεμονί(レモンイエロー、← λεμόνι「レモン」), βυσσινί(暗赤色、← βύσσινο「サワーチェリー」), κεραμιδί(瓦色、← κεραμίδι「瓦」), καφέ(茶色、← καφές「コーヒー」、不変化)が並ぶ。物の名前から「その色」をすぐ作れるしくみで、料理や服飾の場面で活躍する。
派生・関連語族として κερασένιος(サクランボ色の、語尾変化する書きことば寄りの形容詞、← κεράσι + -ένιος「素材・色を表す接尾辞」)。κερασί は不変化で形容詞・名詞兼用、κερασένιος は語尾変化する形容詞専用、と棲み分けがある。
近い赤系の色語としては、βυσσινί(暗赤色、ボルドー寄りのサワーチェリー色), κεραμιδί(瓦色、赤茶寄り), μπορντό(ボルドー、← 仏 bordeaux), κόκκινο(赤、一般語), σκούρο κόκκινο(濃い赤), βαθύ κόκκινο(深紅)が並び、赤の色相のなかで明度・彩度・茶味の違いで言い分ける。
ギリシャ語:κερασένιο
読み方:ケラセニョ・ケラセーニョ
ラテン文字:kerasenio
形容詞 κερασένιος(サクランボ色の、サクランボ風味の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。サクランボ色という色そのものを指す。
ギリシャ語:άλικο
読み方:アリコ・アーリコ
ラテン文字:aliko
形容詞 άλικος(鮮紅色の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。
鮮紅色そのものを指す。
ギリシャ語:άλικος
読み方:アリコス・アーリコス
ラテン文字:alikos
トルコ語の al(赤)に、ギリシャ語の形容詞語尾 -ικος を付けた外来借用。al は古くからテュルク諸語にある赤を表す語で、オスマン期にギリシャ語化され、宝石や絹織物、刺繍などの赤を指す日常の語として定着した。
類義語に κόκκινος(赤の。赤全般を指す総称), σκαρλάτος(緋色の。中世ラテン語 scarlatum 経由イタリア語 scarlatto 由来の外来借用), κατακόκκινος(真っ赤な。κατά- 強調+κόκκινος の合成), βαθυκόκκινος(深紅の), πορφυρός(貝紫色の、紫紅色の。古代ギリシャ語由来), φλογάτος(炎のような赤)。άλικος は鮮やかで深みのある赤、緋色から深紅までの生き生きとした赤を指す形として、文学的・比喩的な文脈でよく使う。派生に άλικο(中性形を名詞化したもの。鮮紅色そのものを指す)。
ギリシャ語:βυσσινής
読み方:ヴィシニス・ヴィシニース
ラテン文字:vyssinis
古代ギリシャ語の βύσσινος(亜麻布の)から。βύσσινος は中世にサワーチェリーを指す βύσσινο へ転じ、その形容詞形が βυσσινής。熟したサワーチェリーのような暗く濃い赤色を表す。ふつうのさくらんぼ色は κερασένιος。
形容詞形には語尾変化する βυσσινής(-ιά, -ί)と、不変化の βυσσινί がある。口語では βυσσινί が広く使われ、名詞としても用いられる。
類義語に κόκκινος(赤)や μπορντό(ボルドー)など。πορφυρός(貝紫色の)より赤みが強く紫みは少ない。
ギリシャ語:πορφυρός
読み方:ポルフィロス・ポルフィロース
ラテン文字:porfiros
古代ギリシャ語の πορφυροῦς / πορφύρεος(貝紫色の。πορφύρα「貝紫染料、ムラサキガイ」由来)からの学術借用(διαχρονικό δάνειο)で、語末の屈折型を現代ギリシャ語の -ός 型形容詞に整えなおして πορφυρός の形に落ち着いた。πορφύρα 自体は動詞 πορφύρω(波が逆巻く、湧き立つ)に由来する古層の語で、ヘキサプレックス科の巻貝(ツロツブリガイ、シリアツブリガイ)から取れる紫染料と、その色をした貝そのものを指した。プリニウスが「凝固した血の色」と形容したように赤と紫の境界にあたる深い色で、古代から中世にかけて高貴さの象徴となり、ビザンツ帝国では皇帝の子が πορφυρογέννητος(紫室生まれの)と呼ばれた。古代の πορφύρα はラテン語 purpura を経て、英語 purple(紫), porphyry(斑岩), ロシア語 порфира(皇帝の紫衣), ルーマニア語 porfiră(紫染料)の源になった。
類義語に βαθυκόκκινος(深紅の。βαθύς「深い」+ κόκκινος の合成), μοβ(紫の。フランス語 mauve 由来の外来借用で、日常の「紫」を指す), κόκκινος(赤の。日常の赤の総称), βυσσινί(えんじ色の、サワーチェリー色)。πορφυρός は古代由来の文学的・格式高い語で、夕日や王衣のような赤と紫の境界にある深い色を指す書き言葉の形として使う。派生に πορφυρό(中性形を名詞化したもの。貝紫色そのものを指す)。関連語に πορφύρα(貝紫染料、紫衣、ムラサキガイ), πορφυρογέννητος(紫室生まれ、皇帝の血筋の。ビザンツ皇族の称号), καταπόρφυρος(全身紫色の。κατά- 強調の合成)。
ギリシャ語:ερυθρός
読み方:エリスロス・エリスロース・エリトゥロス・エリトゥロース
ラテン文字:erithros
ギリシャ語:κόκκινος
読み方:コキノス・コーキノス
ラテン文字:kokkinos
ヘレニズム期ギリシャ語の κόκκινος(赤い、深紅の)を継承。古代ギリシャ語の κόκκος(粒、種、ケルメス=赤い染料をとる虫)に形容詞を作る接尾辞 -ινος を付けた形で、もとは κόκκος で染めた深紅を指した。英語 coccus(球菌。球形の細菌)は、この κόκκος からラテン語を経て入った学術借用。
類義語に ερυθρός(赤の、紅の。公式・学術や文芸の文脈で使う硬い形), πορφυρός(深紅、王侯の赤紫), άλικος(鮮やかな赤)。派生に κοκκινάδα(赤み、赤らみ), κοκκινάδι(頬紅、口紅), κοκκινέλι(コキネリ。薄口の赤ワイン), κοκκινάκι(赤色。指小形), κοκκινίζω(赤くなる、赤くする), κοκκινιστός(トマトソースで煮込んだ), κοκκινωπός(赤みがかった)。合成語に σκουροκόκκινος(暗赤色の), βαθυκόκκινος(深紅の), ροδοκόκκινος(バラのように赤い), κοκκινοπίπερο(赤ピーマン、パプリカ), κοκκινοφάσουλο(赤インゲン), κοκκινολαίμης(ヨーロッパコマドリ), Κοκκινοσκουφίτσα(赤ずきん)。関連語に中性形 κόκκινο(赤色、赤信号)。

形容詞
中性名詞 

茶系の色 
紫系の色 


黄系の色 

食べ物 



