ギリシャ語:τρομάζω
読み方:トゥロマゾ・トゥロマーゾ
ラテン文字:tromazo
古代ギリシャ語の動詞 τρομέω(震える、怖がる)から派生した τρομάσσω(怖がる、怖がらせる)が、中世ギリシャ語で τρομάζω の形になった。
名詞は τρόμος(恐れ、震え)。
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ギリシャ語:τρομάζω
読み方:トゥロマゾ・トゥロマーゾ
ラテン文字:tromazo
古代ギリシャ語の動詞 τρομέω(震える、怖がる)から派生した τρομάσσω(怖がる、怖がらせる)が、中世ギリシャ語で τρομάζω の形になった。
名詞は τρόμος(恐れ、震え)。
ギリシャ語:δειλός
読み方:ディロス・ディロース
ラテン文字:deilos
古代ギリシャ語の δειλός(臆病な、気の弱い)に由来。人の性格にも、行動や態度の弱気さにも使う。
類義語に λιγόψυχος, λιπόψυχος(気の小さい)、φοβητσιάρης(怖がりの)、διστακτικός(ためらいがちな)、άτολμος(思い切りのない)など。対義語に γενναίος(勇敢な)、θαρραλέος(勇ましい)、τολμηρός(大胆な)など。
ギリシャ語:φόβος
読み方:フォヴォス・フォーヴォス
ラテン文字:fovos
ギリシャ語:τρόμος
読み方:トゥロモス・トゥローモス
ラテン文字:tromos
印欧祖語で「震える」を表した語根にさかのぼる動詞 τρέμω(震える)から派生した古代ギリシャ語の名詞 τρόμος(震え, 恐怖)を継承。もとは体が震える感覚を指した。
同じ τρέμω の語族に τρομάζω(ぎょっとする), τρομάρα(恐ろしい体験), τρομερός(恐ろしい), τρομακτικός(ぞっとさせる), 副詞 τρομερά, τρομακτικά, 合成語 έντρομος(おびえた), περίτρομος(震え上がった)。
英語 tremor(震え), tremendous(巨大な, 恐ろしい), tremulous(震える)もラテン語 tremere を経て同じ語根の子孫。一般の恐れを言う φόβος(恐怖)に対し, τρόμος は体が震えるほどの激しい戦慄を指し, πανικός(パニック)に近い状態を言う。慣用句 ισορροπία τρόμου(恐怖の均衡)は英語 balance of terror からの翻訳借用で冷戦期の外交語として入った。
ギリシャ語:φοβάμαι
読み方:フォヴァメ・フォヴァーメ
ラテン文字:fovamai
古代ギリシャ語の中受動相 φοβοῦμαι(恐れる、逃げ惑う、慌てる)の語形を、現代ギリシャ語の規則的な動詞活用 -ώ / -άμαι 型に整えなおして受け継いだ継承語(κληρονομιά)。古典的な書きことばでは古代形を保つ φοβούμαι も生き続けており、Tri は両形を併用形として認める。
源にある古代の φοβοῦμαι は、能動相動詞 φοβέω(怖がらせる、追い払う)の中受動相で、その φοβέω はさらに名詞 φόβος(属格 φόβου、恐怖、逃走、パニック)から派生したもの。古代の φόβος は印欧祖語の「逃げる、走る」を表す語根に由来する可能性があり、原義は「逃走、逃げ惑い」で、それが「逃げ出すほどの恐怖」へと意味が固まった。
英語 phobia(恐怖症、特定対象への病的な恐れ), hydrophobia(恐水症、← ὕδωρ「水」+ φόβος), claustrophobia(閉所恐怖症), agoraphobia(広場恐怖症), xenophobia(外国人嫌悪、← ξένος「外人」+ φόβος)など、近代医学・心理学の用語として古代の φόβος は深く浸透している。-phobic(〜恐怖症の), -phobe(〜嫌い)の接尾辞も同源。
派生・関連語族として φόβος(恐怖、名詞), φοβέρα(脅し、脅迫), φοβερός(恐ろしい、形容詞), φοβίζω(怖がらせる、能動), φοβισμένος(怖がっている、過去分詞形容詞), φόβητρο(脅し、見せしめ), φοβία(恐怖症、← φοβία は学術借用)。類義語に τρομάζω(怖がる、驚く、より突発的な恐怖), τρέμω(震える、ひどく恐れる), ανησυχώ(心配する、より穏やか), αγωνιώ(不安に苛まれる), δειλιάζω(怖気づく、← δειλός「臆病な」由来)。口語では「悪い予感がする」「懸念する」の用法も発達し、φοβάμαι ότι...(残念ながら…ようだ、…のおそれがある)が婉曲表現として広く使われる。
ギリシャ語:εφιάλτης
読み方:エフィアルティス・エフィアールティス
ラテン文字:efialtis
古代ギリシャ語の ἐφιάλτης(うなされること、夢魔)に由来。ἐπί(上へ)と ἅλλεσθαι(跳ぶ)の合成で、眠る人の上に飛び乗る怪物を指した。やがて怪物そのものではなく、それが引き起こす夢、すなわち悪夢を指す語に変わった。
テルモピュライの戦いでペルシア軍に抜け道を教えた裏切り者 Εφιάλτης(エピアルテス)の名でもあり、ここから「裏切り者」の代名詞としても使う。派生語に εφιαλτικός(悪夢のような)。類義語の βραχνάς(悪夢、息苦しい夢)も悪夢を指すが、εφιάλτης は脅威・耐えがたい状況の比喩にも広く使う。
ギリシャ語:πανικός
読み方:パニコス・パニコース
ラテン文字:panikos
古代ギリシャ語の形容詞 πανικός(牧神パンに関する、パンの)を、近代以降に書き言葉から再導入し、名詞化して「突然の制御不能な恐怖、パニック」の意味で使うようになった学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。
源にある古代の πανικός は、ギリシャ神話の Πάν(パン、半人半獣の牧神、山野・牧畜の神)の名前から派生した形容詞で、文字どおり「パンの、パンに関する」を意味した。古代ギリシャ・ローマでは、山や谷で聞こえる原因不明の物音、家畜が突然恐怖に駆られて逃げ惑う現象などを、パン神の仕業に帰す信仰があり、πανικὸς φόβος(パンの恐怖、原因のわからない突発的な恐怖)の表現が定着した。やがて形容詞 πανικός 単独で「パン神由来の恐怖、突発的・集団的な恐怖」を指す名詞として使われるようになり、近代以降の心理学・社会学・経済学の用語として国際的に広まった。
ラテン語 panicus を経て、英語 panic, panicky, フランス語 panique, ドイツ語 Panik, イタリア語 panico, スペイン語 pánico など、ヨーロッパ各語の「パニック」関連語彙の源となった。現代ではパニック障害(διαταραχή πανικού), パニック発作(κρίση πανικού), パニック・ボタン(μπουτόν πανικού), モラル・パニック(ηθικός πανικός)など、心理学・医学・社会学の専門用語として広く用いられる。
派生・関連語族として πανικοβάλλω(パニックに陥れる), πανικόβλητος(パニックに襲われた、慌てふためいた), πανικοβάλλομαι(パニックに陥る)。類義語に τρόμος(恐怖、より個人的・持続的), φρίκη(戦慄、おぞましさ), αγωνία(不安、苦悶)。πανικός は集団的・突発的・制御不能なニュアンスに焦点があり、原因が漠然としていて理性的な対処が困難な恐怖状態を指す中心語。