中世ギリシャ語の είμαι を継承。さらに古代ギリシャ語 εἰμί(ある、いる、〜である)に遡る。
εἰμί は、印欧祖語 *h₁es-(ある、存在する)から作られた一人称単数形 *h₁és-mi(エスミ、私はある)に対応する。同じ *h₁es- から作られた三人称単数形 *h₁és-ti(エスティ、彼・それはある)は、古代ギリシャ語 ἐστί に対応する。英語では am が *h₁és-mi、is が *h₁és-ti に対応する。
現代形 είμαι は、古代形をそのまま残したものではなく、κείμαι(横たわる、ある)や στέκομαι(立つ、立っている)のような -μαι 動詞に引かれて作り替えられた形とされる。あるいは、ヘレニズム期ギリシャ語の接続法形に由来するとも説明される。
現在分詞にあたる形は όντας。過去形は ήμουν。未来や完了などは、意味に応じて γίνομαι(なる)、υπάρχω(存在する)、στέκομαι(立っている、位置している)などで補う。
口語や文学的な表記では、語頭が落ちて ΄σαι, ΄ναι, ΄μαστε, ΄μαι などの形で書かれることもある。
印欧祖語の *h₁es- は「ある、存在する」を表す語根である。h₁ は再建された喉音を表す記号で、ここでは細かい音価よりも、後の言語で母音 e と関係する古い要素として見ればよい。
この語根に人称語尾が付いて、現在形の各人称が作られた。読み方は便宜的な目安である。
- *h₁és-mi(エスミ): 私はある
- *h₁és-si(エスシ): あなたはある
- *h₁és-ti(エスティ): 彼・それはある
- *h₁s-més(スメス): 私たちはある
- *h₁s-té(ステ): あなたたちはある
- *h₁s-énti(センティ): 彼らはある
このうち、古代ギリシャ語 εἰμί に対応するのは一人称単数の *h₁és-mi である。三人称単数の *h₁és-ti は、古代ギリシャ語 ἐστί に対応する。つまり εἰμί と ἐστί は別語ではなく、同じ語根 *h₁es- から作られた同じ動詞の別人称形である。
英語の be 動詞のうち、am と is はこの *h₁es- 系に属する。
- *h₁és-mi → 古英語 eom → 英語 am
- *h₁és-ti → 古英語 is → 英語 is
一方、英語の be 動詞全体は、歴史的には複数の語根に由来する形が一つの活用体系に合流したものである。
- am, is: *h₁es-(ある、存在する)系
- be: 「生じる、成長する」を表す別語根に由来
- was, were: 「住む、とどまる」を表す別語根に由来
- are: 由来が複雑で、am / is ほど単純には *h₁es- 系として説明しにくい
そのため、現代英語の be という見出し語だけを見ると、現代ギリシャ語 είμαι とは形が離れている。しかし、英語 am / is と、古代ギリシャ語 εἰμί / ἐστί は、同じ *h₁es- 系の人称形として対応している。