#知覚
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ギリシャ語:μυρίζω
読み方:ミリゾ・ミリーゾ
ラテン文字:myrizo
名詞 μύρον(香油, 芳香油)に動詞化の -ίζω がついた古代ギリシャ語の動詞 μυρίζω(香油を塗る, 香りがする)を継承。古代は「香油を塗る」と「香りがする」の二つの意味があったが、現代では前者の意味は失われ、「においがする、においをかぐ」の意味に集約された。
同じ μύρον から派生した μυρωδιά(におい、香り)や μυρώνω(香油を塗る、聖別する)などは同族の語。μυρίζω との合成語には μοσχομυρίζω(とてもよい香りがする)などがある。
名詞 μυρωδιά は άρωμα(香水、芳香)より意味が広く、よい香りにも嫌なにおいにも使いやすいのが特徴。
元の μύρον はセム語からの借用とする見方が有力。英語 myrrh(没薬)も同じ源泉からラテン語経由の別ルートで入った親戚にあたる。
ギリシャ語:παρατηρώ
読み方:パラティロ・パラティロー
ラテン文字:paratiro
古代ギリシャ語の παρατηρῶ(傍らで見張る、監視する)を継承。
παρά(傍らに)と τηρέω(見守る、見張る)を合わせた動詞。現代の「観察する、気づく、指摘する」の意味は、フランス語の observer や remarquer からの意味借用で広がった。
派生語には παρατήρηση(観察、指摘)、παρατηρητής(観察者)、παρατηρητικός(観察力のある)などがある。
ギリシャ語:αντιλαμβάνομαι
読み方:アディラムヴァノメ・アディラムヴァーノメ・アンディラムヴァノメ・アンディラムヴァーノメ
ラテン文字:antilamvanomai
古代ギリシャ語の ἀντιλαμβάνομαι(受け取る、捉える、気づく)に由来。αντί(対して、応じて)と λαμβάνω(取る、受け取る)を合わせた中動相の動詞で、もとは「自分の側へ取り込む」の意味。そこから感覚や思考で対象を捉えることを表すようになった。書き言葉では三人称で αντελήφθη のような古風な形も現れる。
名詞形は αντίληψη(知覚、理解)。動詞 βλέπω(見る、見える)が視覚を広く担うのに対し、αντιλαμβάνομαι は気づく、事情をのみこむ、意図を読み取るところまで含む。
λαμβάνω は印欧祖語で「取る、つかむ」を意味する語根にさかのぼり、同じ動詞から συλλαμβάνω(ともに取る、捕える → 英語 syllable)、επιλαμβάνομαι(〜に取りかかる → 英語 epilepsy)など多くの合成語が作られた。
ギリシャ語:γεύση
読み方:イェフシ・イェーフシ・ゲフシ・ゲーフシ
ラテン文字:gefsi
動詞 γεύομαι(味わう)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γεῦσις(味わうこと, 味覚)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γεύση の形になった。
派生に γευστικός(味覚の, 味のある, おいしい), γευστικότητα(味の良さ)。同じ語族に άγευστος(味のない), αγευσία / αγευστία(味覚消失)。合成語に γευσιγνωσία(鑑味, テイスティング), γευσιγνώστης(鑑味家, テイスター)。
ギリシャ語:συνείδηση
読み方:シニディシ・シニーディシ
ラテン文字:syneidisi
古代ギリシャ語の συνείδησις(意識、良心)に由来。συν-(共に)と οἶδα(知っている)からなる σύνοιδα(共に知っている、内心で知っている)に関わる名詞で、文字どおりには「共に知っていること」を表す。
もとは自分の内で何かを知っていること、とくに自分の行為の善悪を知っている感覚を指した。現代ギリシャ語では、道徳的な良心だけでなく、意識、自覚、覚醒状態、職業的良心、歴史意識や階級意識、信条まで幅広く使われる。
近代にはフランス語 conscience(意識、良心)との対応も重なり、哲学・心理・社会の語としての範囲が拡大。英語 conscience もラテン語 conscientia を経た翻訳借用(calque)であり、「共に知る」という発想を共有している。
固定表現には καθαρή συνείδηση(清らかな良心)、κρίση συνειδήσεως(良心の葛藤)、επαγγελματική συνείδηση(職業的良心)、ιστορική συνείδηση(歴史意識)、αντιρρησίας συνείδησης(良心的兵役拒否者、良心的反対者)などがある。
ギリシャ語:μυρωδιά
読み方:ミロディア・ミロディアー
ラテン文字:myrodia
中世ギリシャ語 μυρωδία(におい、香り、← ヘレニズム期 μυρώδης「香りのよい、芳香のある」+ -ιά 抽象名詞接尾辞)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世期に母音連続 [ia] を避ける母音融合(συνίζηση)を経て、現代ギリシャ語の μυρωδιά の形に定着した。源にあるヘレニズム期 μυρώδης は、古代ギリシャ語 μύρον(香油、香料、没薬)に -ώδης(〜のような)を付けた形容詞で、もとは「香油のような香りのする」を意味した。
源にある古代の μύρον(香油、没薬、芳香)は、地中海地域で広く取引された樹脂系の香料を指す古い系譜の語で、新約聖書のマルコ伝 14:3 で女がイエスの頭に注いだ「ナルドの香油」の名前にもなっている。同じ語族からは μυρώνω(香油を塗る、聖体礼儀で使う), μύρωμα(香油塗り、聖油塗布), μυροφόρος(香油を運ぶ女、← 復活祭の伝承で墓に来たマリアたち)が出ており、宗教・典礼語彙の中核を成す。
ラテン語 myrrha(没薬、← 古代ギリシャ語 μύρρα < セム語起源、古代の香料貿易の中で広まった東地中海起源の語)は、近代の英 myrrh, 仏 myrrhe へと受け継がれ、聖書の「東方の三博士の贈り物」の没薬として知られる。古代ギリシャ語の μύρον とラテン語 myrrha は別系統だが、香料の語彙として並走してきた歴史を持つ。
派生・関連語族として μυρίζω(においをかぐ、においがする、動詞), μύρισμα(におい、嗅ぐ動作、口語), μυρωδάτος(香りのよい、形容詞), ξεμυρίζομαι(鼻がきく、嗅ぎつける、口語), ξανθο-μυρωδιά(爽やかな香り、複合語)。口語の異綴りとして μυρουδιά(におい、香り)も併存する。
同じ「におい・香り」の領域には、よい香りに寄った άρωμα(香り、風味、香水、← 古代 ἄρωμα「香料」), 書きことばの οσμή(におい、臭気、← 古代 ὀσμή), 強い悪臭の βρόμα(悪臭、← 中世 βρώμα), δυσοσμία(悪臭、書きことば), ひどい臭いの μπόχα(口語), 微かな匂いの απόπνοια(匂い、息)が並び、強さと評価で言い分ける体系になっている。μυρωδιά は最も中立的で、よい香りにも嫌な臭いにも広く使える基本語として機能し、複数形 μυρωδιές では「季節の香り」「料理の香り」のような集合的な香りも表す。比喩用法では「ほんの少し」「気配」の意味に広がる、感覚から数量・存在感への意味展開が活発な語。
ギリシャ語:νοημοσύνη
読み方:ノイモシニ・ノイモシーニ
ラテン文字:noimosyni
古代ギリシャ語の形容詞 νοήμων(知的な、分別のある、← νοῶ「考える、理解する」の現在分詞由来)の語幹に抽象名詞を作る接尾辞 -οσύνη(〜であること、〜さ)を付けた、近代以降の学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。19 世紀以降、心理学・教育学の発達とともに、英語 intelligence や仏語 intelligence にあたる学術概念を表すギリシャ語として作られた近代造語。
源にある古代の νοῶ / νοέω(考える、理解する、知覚する、心で捉える)は、ホメロス以来の知性語彙の中核を成す動詞で、印欧祖語の「気づく、心で捉える」を表す語根に由来する。同じ動詞からは νους / νοῦς(精神、心、理性、知性), νόημα(思い、考え、意味), νόηση(認知、知性作用、書きことば), νόημα(意味、思考の内容), νοητός(知的な、概念的な)が出ており、古代ギリシャ哲学(プラトン、アリストテレスら)の知識論・認識論の概念基盤を成した語族。
接尾辞 -οσύνη / -σύνη は、ヘレニズム期から書きことばで生産的な抽象名詞接尾辞で、形容詞や名詞の語幹に付いて「〜であること、〜の性質」を表す抽象名詞をつくる。同じパターンで作られた語族には、δικαιοσύνη(正義、← δίκαιος「公正な」), σωφροσύνη(節制、慎み、← σώφρων「節度のある」), μνημοσύνη(記憶、想起), καλοσύνη(善良さ), ελευθεριοσύνη(自由さ)が並び、古代以来の生産的な抽象概念造語の道具立てになっている。
派生・関連語族として τεστ νοημοσύνης(知能テスト、← 仏 test d'intelligence の翻訳借用), δείκτης νοημοσύνης(知能指数、IQ、← 英 intelligence quotient の翻訳借用), τεχνητή νοημοσύνη(人工知能、AI、← 英 artificial intelligence の翻訳借用), συναισθηματική νοημοσύνη(情動知能、EQ、← 英 emotional intelligence)。
同じ「知性・知能」の領域には、生まれつきの才気を言う ευφυΐα(聡明さ、機転、書きことば、← 古代 ευφυής「素質のよい」), 認知作用を言う νόηση(認知、書きことば), 精神・理性を言う νους(精神、心、理性), 思考力を言う διάνοια(知性、思考力), 口語的な μυαλό(脳、頭)が並び、抽象度・専門性で言い分けられている。νοημοσύνη は心理学・教育学の専門概念に対応する硬い言い方で、知能検査・IQ・人工知能のような測定可能・操作可能な「知的能力」を中心に表す近代的な語として位置づけられる。
ギリシャ語:νόηση
読み方:ノイシ・ノーイシ
ラテン文字:noisi
名詞 νόος(精神)から派生した動詞 νοέω / νοώ(考える, 理解する), さらにそこから派生した古代ギリシャ語の女性名詞 νόησις(理解, 知的把握)から。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の νόηση の形になった。
同じ語族に νους(精神, 理性, νόος の縮約形), νοώ(考える, 理解する), νόημα(意味, 意図), νοήμων(知的な, 理解のある), νοητικός(認知の, 知的な), νοητός(思念される)。合成語に διανόηση(思索), κατανόηση(理解), επινόηση(発明, 考案), παρανόηση(誤解)。
ギリシャ語:εντύπωση
読み方:エディポシ・エディーポシ・エンディポシ・エンディーポシ
ラテン文字:entyposi
古代ギリシャ語の ἐντύπωσις(刻印、刻み込むこと)から。ἐν-(中に)+ τύπος(型、刻印)からなる語で、もとは物理的に型を押しつけることを指した。τύπος は英語 type(型、活字)、typical(典型的な)、stereotype(ステレオタイプ)の語源で、ラテン語 typus を経て英語に入った。
現代の「心に受ける印象」の意味は、フランス語 impression(「押す」の意から)の訳語としてうつったもの。
派生語に εντυπωσιακός(印象的な)、εντυπωσιάζω(感銘を与える)、εντυπώνω(刻み込む)など。関連語に αίσθηση(感覚)、ιδέα(考え、観念)、άποψη(見解)、τύπος(型、新聞、活字)など。
ギリシャ語:θέα
読み方:セア・セーア・テア・テーア
ラテン文字:thea
古代ギリシャ語の θέα(見ること, 眺め, 光景)を継承。「見る, 観察する」を意味する動詞 θεάομαι の名詞形。同じ綴りでアクセント位置が異なる θεά(女神)は θεός(神)に由来する別の語で, 語源上のつながりはない。
同じ θέα の語族に θέαμα(見せ物, 光景), θέαση(観賞, 視聴), θεατής(観客), 合成語 θέατρο(劇場, もとは「観る場所」)。類義の語として άποψη(視点, パノラマ的な眺め), εικόνα(像, イメージ), κοίταγμα(見ること, 視線)がある。
英語 theater, theory はどちらも同じ θεάομαι の語族から入った語で, θέατρον(観る場所)→ラテン語 theatrum →英語 theater, θεωρία(観察, 考察)→ラテン語 theoria →英語 theory の経路で各言語に入った。仏語 théâtre, théorie も同じ経路。
ギリシャ語:βλέπω
読み方:ヴレポ・ヴレーポ
ラテン文字:vlepo
古代ギリシャ語の βλέπω(見る)を継承。ギリシャ語以前の何らかの言語からの借用とされ, 確かな語源はわかっていない。現在系列は βλέπω で残るが, 完結相(過去)は別語源の είδα が担う。είδα は古代ギリシャ語の完結相過去形 εἶδον に由来し, ラテン語 video(見る), 英語 wit(知恵), wise(賢い), ドイツ語 wissen(知る)と同じ印欧語根で「見る, 知る」を表した語の子孫。一つの動詞の現在と過去で別系統の語根が並んで残った形。
同じ βλέπω の語族に βλέμμα(視線, 眼差し), βλέψη(視覚), βλέφαρο(まぶた), βλεφαρίδα(まつ毛), 合成語 αναβλέπω(見上げる), αποβλέπω(目標にする), διαβλέπω(見抜く), επιβλέπω(監督する), παραβλέπω(見逃す), προβλέπω(予見する), ξαναβλέπω(再会する), πρωτοβλέπω(初めて見る)。
意識して「眺める」を言う κοιτάζω に対し, βλέπω は「見える」から「見守る」まで幅広い。抽象的な「知覚する」には αντιλαμβάνομαι, 「理解する」には κατανοώ が並ぶ。辞書や注記の略号 βλ. は βλέπε(参照せよ)の略。「薔薇色の目で見る(βλέπω τα πάντα ρόδινα)」のような成句はフランス語 voir tout en rose からの翻訳借用。

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