#📗 女性名詞
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ギリシャ語:λακκούβα
読み方:ラクヴァ・ラクーヴァ
ラテン文字:lakkouva
スラヴ系の語からの借用。ギリシャ語にある λάκκος(穴、坑)との連想で、kk の重子音で綴られるようになった。
ギリシャ語:νεροποντή
読み方:ネロポディ・ネロポディー・ネロポンディ・ネロポンディー
ラテン文字:neroponti
νερό(水)と -ποντή からできた合成語で、-ποντή は ποντίζω(水に沈める、水没させる)からの逆形成。ποντίζω はさらに古代ギリシャ語の πόντος(海、深い水)に動詞化の -ίζω がついてできた語で、「水浸しにする、叩きつけるような水」のイメージがもとになっている。元の πόντος は「道、通り道」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、同じ語根からラテン語 pons(橋)と、その派生の英語 pontoon(浮橋)が生まれた。激しく落ちてくる雨という意味はここから来る。雨一般は βροχή、風まじりの雨は ανεμόβροχο と言う。
ギリシャ語:οδύνη
読み方:オディニ・オディーニ
ラテン文字:odyni
古代ギリシャ語の ὀδύνη(痛み、苦しみ)を継承。「噛む、刺す」を表す印欧祖語の語根から続き、痛みが体を食いさいなむ感覚をつかんだ名詞と言われる。同族に ὀδύρομαι(嘆く)や ὠδίς(産みの苦しみ)があり、他言語では古アイルランド語 idu(産みの苦しみ)やリトアニア語 úodas(蚊、刺す虫)などが仲間。派生に οδυνηρός(苦痛の、痛みをもたらす)、合成要素 -ώδυνος を含む語に ανώδυνος(痛みのない)、επώδυνος(苦しい、苦痛を伴う)がある。英語の医学用語 -odynia(coccydynia「尾骨痛」、pleurodynia「胸膜痛」など)も同じ語幹から。類義語 πόνος(痛み、苦痛)より重く、文学や法律の文脈でよく使う。法律では ψυχική οδύνη が精神的損害を指す。同じく重い語感の άλγος(痛み、苦悩)と近い。
ギリシャ語:επέτειος
読み方:エペティオス・エペーティオス
ラテン文字:epeteios
古代ギリシャ語の ἐπέτειος(毎年めぐる、年ごとの)に由来。ἐπί-(〜の上で、〜ごとに)と ἔτος(年)を合わせた形容詞で、もとは「毎年めぐる」という意味。現代の「記念日」の意味は、フランス語 anniversaire からの意味借用で定着した。
ἔτος は印欧祖語で「年」を表す語根から出た語で、ラテン語 vetus(古い、年を重ねた)と同系。英語 veteran(古参、経験豊かな人、もとは「年を重ねた」)、inveterate(根深い、ずっと続いた)もこの語族。
関連語に επετειακός(記念日の)、ετήσιος(年ごとの、毎年の)、έτος(年)。誕生日は γενέθλια で言うことが多い。
ギリシャ語:αφθονία
読み方:アフソニア・アフソニーア・アフトニア・アフトニーア
ラテン文字:afthonia
古代ギリシャ語の ἀφθονία(豊かにあること)に由来。否定の ἀ- と φθόνος(ねたみ、出し惜しみ)からできた語で、妬まず惜しまず与えることがもとにある。
ギリシャ語:ανυπαρξία
読み方:アニパルクシア・アニパルクシーア
ラテン文字:anyparxia
古代ギリシャ語の ἀνυπαρξία を継承。ύπαρξη(存在)に否定の αν- が付いてできた名詞。
ギリシャ語:παρουσία
読み方:パルシア・パルシーア
ラテン文字:parousia
古代ギリシャ語の παρουσία(居合わせること、存在)を継承。動詞 πάρειμι(居合わせる、παρά「傍らに」+ εἰμί「〜である」)から作られた名詞。現代の「存在、出席、臨席」の意味は、フランス語 présence、英語 presence からの意味借用で広がった。派生に παρουσιάζω(提示する、紹介する)、παρουσίαση(発表、プレゼンテーション)、παρουσιαστής、παρουσιάστρια(司会者、プレゼンター)。
ギリシャ語:στέρηση
読み方:ステリシ・ステーリシ
ラテン文字:sterisi
動詞 στερέω(奪う, 欠かせる)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 στέρησις(奪われていること, 欠けていること)に由来。対格 τὴν στέρησιν から主格が作り直されて現代ギリシャ語の στέρηση の形になった。現代の用法は, フランス語 privation, 英語 deprivation からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:ύπαρξη
読み方:イパルクシ・イーパルクシ
ラテン文字:yparxi
古代ギリシャ語 ὕπαρξις(実在、存在)を継承。動詞 ὑπάρχω(存在する、成り立つ)から行為名詞を作る -σις が付いた形で、古代から哲学で「実在すること」を指した。抽象概念としての「存在、実在」という現代の使い方は、フランス語 existence からの意味借用で定着した。
派生語・関連語に υπάρχω(存在する、成り立つ)、ανυπαρξία(非存在、欠如)、υπαρκτός(実在する、ある)、υπαρξιακός(実存の、実存主義の)、υπαρξισμός(実存主義)。
ギリシャ語:απορία
読み方:アポリア・アポリーア
ラテン文字:aporia
古代ギリシャ語の ἀπορία を継承。否定の ἀ- と πόρος(通り道、手立て)からできた名詞。形容詞 ἄπορος(手立てがない、行き場のない)とつながり、行き場のなさから当惑や疑問の意味に移った。動詞は απορώ(不思議に思う)。英語 aporia はラテン語経由で同じ語から。
ギリシャ語:δυσκολία
読み方:ディスコリア・ディスコリーア
ラテン文字:dyskolia
δύσκολος(難しい、厄介な)に、性質や状態を表す接尾辞 -ία を付けて作った抽象名詞。反対は ευκολία(簡単、楽さ)。
ギリシャ語:χημεία
読み方:ヒミア・ヒミーア
ラテン文字:chimeia
フランス語 chimie からの借用。chimie は中世ラテン語の alchemia(錬金術)が短くなった語で、その alchemia はアラビア語 al-kīmiyāʾ から。もとは古代ギリシャ語の χυμεία(金属を溶かし合わせる技法、χέω「注ぐ」の派生)で、ギリシャ語からいったん外に出てアラビア語、ラテン語、フランス語を渡り、姿を変えて戻ってきた語。
関連語に αλχημεία(錬金術、同じ経路で入った別形で、アラビア語の定冠詞 al- を残している)。化学の下位分野には βιοχημεία(生化学)、γεωχημεία(地球化学)がある。
ギリシャ語:επιστήμη
読み方:エピスティミ・エピスティーミ
ラテン文字:epistimi
古代ギリシャ語 ἐπιστήμη(知識、学知)に由来。動詞 ἐπίσταμαι(よく知っている、心得ている)に名詞を作る接尾辞 -μη を付けた語で、ἐπί-(〜の上に)と ἵσταμαι(立つ、身を置く)を合わせた動詞から作られている。「知の上に身を置く」感覚が出発点。現代の「科学、学問分野」の意味は、フランス語 science、英語 science からの意味借用で定着した。
ἵστημι(立つ、立てる)は印欧祖語で「立つ」を表す語根から出た語で、ラテン語 stāre(立つ)、status(状態)と同系。英語 stand、state、status、stable、system、stasis も同じ語族。
派生語に επιστήμονας(科学者、学者)、επιστημονικός(科学的な)、επιστημονισμός(科学主義)。複合語に πανεπιστήμιο(大学)、γεωεπιστήμη(地球科学)、νευροεπιστήμη(神経科学)、ψευδοεπιστήμη(疑似科学)。
ギリシャ語:φυσική
読み方:フィシキ・フィシキー
ラテン文字:fysiki
古代ギリシャ語の φυσική を継承。形容詞 φυσικός(自然の、生まれつきの)の女性形を単独で使って名詞にした語で、φύσις(自然、本性)からの派生。アリストテレスの著作 τὰ φυσικά(自然に関する書)で、自然界を扱う学問分野の意味が生まれた。現代の「物理学」の意味は、フランス語 physique、英語 physics からの意味借用で近代に定着した。
φύσις は動詞 φύω(生やす、生ずる)から出た語で、印欧祖語で「育つ、生まれる」を表す語根から生まれた。ラテン語 fui(〜であった)、futurus(未来の)と同系。英語 be、future、physical、physician も同じ語族。ギリシャ語の仲間に φυτό(植物)、φυτρώνω(芽を出す、生える)。
派生語に φυσικός(自然の、物理の)、φυσικά(もちろん、自然に)、φυσιολογία(生理学)、φυσιολογικός(生理的な、正常な)。複合語に πυρηνική φυσική(原子核物理学)、κβαντική φυσική(量子物理学)、αστροφυσική(天体物理学)。
ギリシャ語:γλωσσολογία
読み方:グロソロイア・グロソロイーア
ラテン文字:glossologia
フランス語 linguistique の訳として、近代ギリシャ語で γλώσσα(言語、舌)と -λογία(学、論)をもとに作られた語。中世ギリシャ語に同じ形の γλωσσολογία(おしゃべり、くだらない話)があったが、現代の「言語学」とは別もの。
関連語に γλωσσολόγος(言語学者), γλωσσολογικός(言語学の), κοινωνιογλωσσολογία(社会言語学), νευρογλωσσολογία(神経言語学)。
英語 linguistics もラテン語 lingua(舌、言語)をもとに作られた。
ギリシャ語:οθόνη
読み方:オソニ・オソーニ・オトニ・オトーニ
ラテン文字:othoni
古代ギリシャ語の ὀθόνη(麻布、帆、幕)を継承。現代の「画面、スクリーン」の意味は、英語 screen、フランス語 écran からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:επιφάνεια
読み方:エピファニア・エピファーニア
ラテン文字:epifaneia
古代ギリシャ語の ἐπιφάνεια(現れ、出現、姿)を継承。形容詞 ἐπιφανής(はっきり見える、名高い)に性質を表す接尾辞 -ια を付けた名詞で、もとの動詞は ἐπιφαίνω(現れる、姿を見せる)。ἐπί-(〜の上に、前に)と φαίνω(光る、姿を現す)を合わせた語。もとは「姿を見せること」を言い、現代の「表面、面」の意味は、英語 surface、フランス語 surface からの意味借用で定着した。
φαίνω は印欧祖語で「光る、現れる」を表す語根から出た語で、ギリシャ語 φως(光)、φαντασία(空想、想像)、φαινόμενο(現象)も同じ語族。英語 phenomenon、phase、phantom、fantasy、emphasis、epiphany(キリスト教の公現祭)も仲間。
派生語に επιφανειακός(表面の、表面的な)、関連語に εμφάνιση(現れ、外見)。
ギリシャ語:γέφυρα
読み方:イェフィラ・イェーフィラ・ゲフィラ・ゲーフィラ
ラテン文字:gefyra
古代ギリシャ語の γέφυρα(橋)を継承。起源は印欧系ではなく、ギリシャ以前からこの地で話されていた古い言語か、小アジアのアナトリア諸語からの借用とする説が有力。古代ギリシャ内にも方言差があり、ボイオティアでは βέφυρα、クレタでは δέφυρα、ラコニア(スパルタ周辺)では δίφουρα と呼んだ。古アルメニア語 kamurǰ(橋)、ハッティ語 ḫamuruwa(梁)とも比較される。
船の艦橋、歯科のブリッジ、ネットワーク機器のブリッジなどでの使い方は、フランス語 pont、英語 bridge からの意味借用で近代に加わった。
派生語に γεφυρώνω(橋を架ける、橋渡しする)、γεφύρι(小さな橋)。複合語に πεζογέφυρα(歩道橋)、αερογέφυρα(空輸)、σιδηροδρομική γέφυρα(鉄道橋)。
ギリシャ語:ώθηση
読み方:オシシ・オーシシ・オティシ・オーティシ
ラテン文字:othisi
古代ギリシャ語の ὤθησις(押すこと)に由来。ωθώ(押す、突き動かす)に名詞化の -ση(古代は -σις)がついた形。現代の「推進、押す力、後押し」の意味は、フランス語 impulsion、英語 impulsion からの意味借用で広がった。同じ ωθώ から πρόωση(推進)、συνωθώ(押し寄せる)、παρωθώ(そそのかす)が派生している。
ギリシャ語:ένωση
読み方:エノシ・エーノシ
ラテン文字:enosi
古代ギリシャ語の ἕνωσις(結合、一体化)を継承。動詞 ἑνόω(ひとつにする、結合する)に結果を表す接尾辞 -σις を付けて作った名詞。ἑνόω は εἷς / ἕν(一、一つ)から作られた語。
εἷς は印欧祖語で「一、同じ」を表す語根から出た語で、ラテン語 simul(同時に)、semper(いつも、常に)と同系。英語 simple、similar、simultaneous、same、single もすべてこの語根から。
団体や国の連合の意味はフランス語 union、化学の「化合物」の意味はドイツ語 Verbindung からの意味借用で定着した。
関連語に ενώνω(結びつける、一つにする)、ενωμένος(結合した)、ενωσιακός(連合の)。同じ語族の基本語は ένας(一、ある)。
ギリシャ語:ενέργεια
読み方:エネルイア・エネールイア・エネルギア・エネールギア
ラテン文字:energeia
古代ギリシャ語の ἐνέργεια(働き、活動)を継承。ἐν-(中で、〜の状態で)と ἔργον(仕事、働き)を合わせた形容詞 ἐνεργής(働いている、活動している)に性質を表す接尾辞 -ία を付けて作った名詞。物理の「エネルギー」の意味は、フランス語 énergie、英語 energy からの意味借用で定着した。
ἔργον は印欧祖語で「作る、働く」を表す語根から出た語で、英語 work、ドイツ語 Werk と同系。英語 energy、ergonomics(人間工学)、synergy(相乗作用)もこの語族。
派生語に ενεργώ(作用する、活動する)、ενεργός(活発な、働いている)、ενεργητικός(能動的な、活動的な)、ενεργειακός(エネルギーの)。複合語に ραδιενέργεια(放射能)、παρενέργεια(副作用)、αλληλενέργεια(相互作用)。
ギリシャ語:Αίγυπτος
読み方:エイプト・エーイプト・エギプト・エーギプト
ラテン文字:aigyptos
古代ギリシャ語の Αἴγυπτος を継承。この古代ギリシャ語自体は、古代エジプト語で首都メンフィスにあった神殿を指した Hut-ka-Ptah(プタハの魂の館)から来たとされる。ギリシャ人が都市名から国全体を指すようになり、古代ギリシャ語を経由して英語 Egypt、フランス語 Égypte、ドイツ語 Ägypten など各国語のエジプトの呼び名になった。
人は Αιγύπτιος・Αιγύπτια、形容詞は αιγυπτιακός(エジプトの)、学問は αιγυπτιολογία(エジプト学)、学者は αιγυπτιολόγος。
ギリシャ語:Ελλάδα
読み方:エラダ・エラーダ
ラテン文字:ellada
古代ギリシャ語 Ἑλλάς(ギリシャ)の対格形に由来。対格が主格として定着し、古い文体では主格 Ελλάς も使う。
Ἑλλάς は Ἕλλην(ギリシャ人)から作られた地名。Ἕλλην はもともと北部ギリシャ・テッサリアの一部族名で、神話では全ギリシャ人の祖とされる同名の人物の名でもある。それ以前の起源は不明で、ギリシャ語以前の基層に由来するという説もある。英語 Hellenic(ギリシャの)、Hellenistic(ヘレニズム的)、Panhellenic(汎ギリシャの)もギリシャ語 Ἕλλην から。
関連語に Έλληνας(ギリシャ人男性)、Ελληνίδα(ギリシャ人女性)、ελληνικός(ギリシャの)、ελληνικά(ギリシャ語)。地理・国家の文脈では ελλαδικός(ギリシャの、国家としての)も使う。
ギリシャ語:Γαλλία
読み方:ガリア・ガリーア
ラテン文字:gallia
ラテン語 Gallia からの借用。現代ギリシャ語では近代以降、フランスの正式な国名として定着した。Gallia は Gallus(ガリア人)に土地を表す -ia を付けた形で、古代のガリア、つまり現代のフランス、ベルギー、スイス北部、北イタリア一帯にまたがったケルト人の地域を指した。ローマ帝国が使ったこの名は、中世以降のヨーロッパでもラテン語文献で「フランス」を指す名として受け継がれた。
Gallus の起源はケルト諸語の語と結びつくとされ、印欧祖語で「呼ぶ、叫ぶ」を表す語根につなぐ説もあるが、確定していない。古代ギリシャ語では、ガリア人を Γαλάται、その土地を Γαλατία と呼んだ。小アジア中央部にも紀元前3世紀に移住したケルト人の一派が住んだ地域があり、そこも Γαλατία と呼ばれる(新約聖書「ガラテヤ人への手紙」のガラテヤはこちら)。
派生・関連語に Γάλλος(フランス人男性)、Γαλλίδα(フランス人女性)、γαλλικά(フランス語)、γαλλικός(フランスの)、γαλλοφιλία(フランス好き、親仏)。
ギリシャ語:Γερμανία
読み方:イェルマニア・イェルマニーア・ゲルマニア・ゲルマニーア
ラテン文字:germania
古代ギリシャ語の Γερμανία(ゲルマン人の地)に由来。元はラテン語 Germania からの借用で、古代ローマが中欧のゲルマン諸族の居住地を呼んだ地名。
派生語に Γερμανός(ドイツ人男性), Γερμανίδα(ドイツ人女性), γερμανικός(ドイツの), γερμανικά(ドイツ語)。元素の γερμάνιο(ゲルマニウム)は 19 世紀にこの国名から作られた名前。
英語 Germany も同じラテン Germania から。
ギリシャ語:αγκαλιά
読み方:アガリャ・アガリャー・アンガリャ・アンガリャー
ラテン文字:agkalia
中世ギリシャ語の ἀγκαλιά を継承。古代ギリシャ語の ἀγκάλη(腕の曲がるところ、抱きかかえるところ)に女性名詞の語尾 -ιά が付いて作られた形。
派生語に αγκαλιάζω(抱く、抱きしめる)、αγκάλιασμα(抱擁)、αγκαλίτσα(指小形、小さな抱っこ)。
ギリシャ語:μπουνάτσα
読み方:ブナツァ・ブナーツァ
ラテン文字:bounatsa
中世ギリシャ語の μπο(υ)νάτσα を継承。もとは北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 bonazza(海の凪)からの借用で、ラテン語の bonus(よい)をもとにした「よい天気」の意。
類義語に νηνεμία(無風、凪)。νηνεμία は風がないこと全般、μπουνάτσα はとくに海の穏やかさを言う。反対は φουρτούνα(時化)、θαλασσοταραχή(海のしけ)。
ギリシャ語:γαλήνη
読み方:ガリニ・ガリーニ
ラテン文字:galini
ギリシャ語:νηνεμία
読み方:ニネミア・ニネミーア
ラテン文字:ninemia
古代ギリシャ語の νηνεμία(無風、凪)に由来。否定の接頭辞 νη-(〜がない)と άνεμος(風)に名詞化の -ία がついてできた形で、字義は「風がないこと」。νη- は ἀ-/ἀν- と並ぶ古い否定辞で、英語の un-, in- にあたる。άνεμος は「息をする」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、同じ語根からラテン語 animus(心、精神), anima(息、魂)、英語 animate(生き生きとさせる)、animal(動物)が生まれた。関連語に νήνεμος(無風の、静かな)という形容詞がある。海の静けさでは μπουνάτσα(凪)や γαλήνη(静けさ、平穏)が近く、νηνεμία はまず風がない状態そのものを指し、海だけでなく空気が動かない静かな状態にも使う。
ギリシャ語:Κόμη της Βερενίκης
読み方:コミティスヴェレニキス・コーミティスヴェレニキス
ラテン文字:komi tis verenikis
κόμη(髪)と人名 Βερενίκη(ベレニケ)からなる連語で「ベレニケの髪」を言う。紀元前3世紀、プトレマイオス3世の王妃ベレニケ2世が、夫の無事を祈ってアフロディーテに髪を奉納したところ神殿から消えた。宮廷天文学者コノンがこれを「女神が空に上げた」と解して、一群の星に結びつけたとされる。ラテン語形は Coma Berenices で、英語名もそのまま入った。別形 Κόμη Βερενίκης(属格だけで並べた形)も使う。
ギリシャ語:Μεγάλη Άρκτος
読み方:メガリアルクトス・メガーリアルクトス
ラテン文字:megali arktos
μεγάλος(大きい)の女性形 μεγάλη と άρκτος(クマ)からなる連語で「大きなクマ」を言う。アルテミスに仕えたニンフのカリストが、ゼウスに愛されて子を宿したことから、嫉妬したヘラにクマの姿に変えられた。成長した息子アルカスが狩りの最中に母と知らずに射ようとしたので、ゼウスは二人を天に上げ、母を大きなクマとして空に置いたという神話。子のアルカスは Μικρή Άρκτος(こぐま座)、もしくはうしかい座になったとされる。ラテン語形は Ursa Major で、英語名もそのまま入った。日常の「クマ」は αρκούδα を使うことが多い。
ギリシャ語:Μικρή Άρκτος
読み方:ミクリアルクトス・ミクリーアルクトス
ラテン文字:mikri arktos
μικρός(小さい)の女性形 μικρή と άρκτος(クマ)からなる連語で「小さなクマ」を言う。神話では、アルテミスに仕えたニンフのキノスラが、幼いゼウスを隠して育てたお礼に天に上げられて、こぐま座になったという伝承がある。別説では、Μεγάλη Άρκτος(おおぐま座)となった母カリストの息子アルカスがこの姿になったともされる。北極星 Πολικός Αστέρας は、この星座の尾の先の星。ラテン語形は Ursa Minor で、英語名もそのまま入った。日常の「クマ」は αρκούδα を使うことが多い。
ギリシャ語:Κασσιόπη
読み方:カシオピ・カシオーピ
ラテン文字:kassiopi
ギリシャ語:Τρόπις
読み方:トゥロピス・トゥローピス
ラテン文字:tropis
ギリシャ語:Ύδρα
読み方:イドゥラ・イードゥラ
ラテン文字:ydra
ギリシャ語:Καμηλοπάρδαλις
読み方:カミロパルダリス・カミロパールダリス
ラテン文字:kamilopardalis
古代ギリシャ語の καμηλοπάρδαλις(キリン)を継承。κάμηλος(ラクダ)と πάρδαλις(ヒョウ)からなる語で、ラクダのような長い首とヒョウのようなまだら模様から、こう呼ばれた。現代ギリシャ語ではふつう καμηλοπάρδαλη(キリン)と言う。
17世紀にオランダの天文学者プランシウス(プランキウスとも)が設けた星座で、新しい星座なので神話はない。
ギリシャ語:Ανδρομέδα
読み方:アンドゥロメダ・アンドゥロメーダ
ラテン文字:andromeda
ギリシャ語:κάμινος
読み方:カミノス・カーミノス
ラテン文字:kaminos
古代ギリシャ語の κάμινος(炉、かまど)に由来。日常の炉、かまどには κάμινος の指小形 καμίνιον からきた καμίνι を使い、κάμινος は工業用の溶解炉や文語的な場面で使う。英語 chimney もラテン語 caminus を経て同じ語源。
先頭大文字の Κάμινος は南天の星座、ろ座を指す。1750年代にフランスの天文学者ラカイユが南天に設けた新しい星座で、ラテン語の Fornax Chemica(化学の炉)から名付けられた。
ギリシャ語:λύρα
読み方:リラ・リーラ
ラテン文字:lyra
古代ギリシャ語の λύρα(リラ)を継承。古代ギリシャ語より前の語源は定かでなく, 外来の借用語と見る説もある。古代の竪琴から, のちに弓で弾くギリシャ伝統の擦弦楽器にも同じ名が使われるようになった。先頭を大文字にした Λύρα(こと座)は, この楽器の形に見立てた星座名がそのまま継承された形。
派生に λυρικός(リラの, 叙情的な, 抒情詩の), λυρισμός(叙情性), λυράρης, λυριτζής(リラ奏者)。ラテン語 lyra を経由して英語 lyre, フランス語 lyre, 英語 lyric, lyricism もこの語族に連なる。
弓で弾くリラはクレタ(κρητική λύρα), ポントス(ποντιακή λύρα)などの地方伝統音楽で中心的な楽器として使われる。撥弦楽器の系統では κιθάρα(ギター, 古代のキタラ)が別にあり, λύρα とは別の系統に位置する。
ギリシャ語:πρύμνη
読み方:プリムニ・プリームニ
ラテン文字:prymni
古代ギリシャ語の πρύμνη / πρύμνα(船尾)に由来。古代の形容詞 πρυμνός(最後尾の, 奥の)が女性単数形で名詞化した語。現代ギリシャ語では πρύμνη が標準形, πρύμνα は文語的, πρύμη は別綴り。対義語は πλώρη(船首)。派生に πρυμνήσια(船尾綱)。
大文字の Πρύμνη(とも座)はラテン語 Puppis(船尾)を訳した星座名。18世紀にフランスの天文学者ラカイユが巨大な星座 Αργώ(アルゴ船)を三つに分けたときに生まれた, 船尾にあたる部分。元の Αργώ はイアーソーンが金羊毛を求めて航海した伝説の船。
ギリシャ語:τράπεζα
読み方:トゥラペザ・トゥラーペザ
ラテン文字:trapeza
古代ギリシャ語の τράπεζα(食卓, 両替台)を継承。τρι-(三)と πέζα(足, πούς「足」の語族)からなる合成語で, 「三本足の台」がもとの意味。両替商が台の上で金銭を扱ったことから「両替台」の意味が加わり, 現代の「銀行」の意味は英語 bank からの意味借用で整った。ミケーネ時代の線文字 B にも to-pe-za の形で現れる。
英語 trapeze(空中ブランコ), trapezoid(台形), trapezius(僧帽筋)はいずれも同じ τράπεζα から形の連想でできた語。
派生に τραπεζίτης(銀行家), τραπεζικός(銀行の), τραπέζι(テーブル。指小形からできた現代の語形)。
λογαριασμός(勘定, 口座, 請求書)が個別の口座や請求書を指すのに対し, τράπεζα は金融機関そのものを指す。κέρδος(利益, 儲け)は金融活動の結果として残るものを指す。
ギリシャ語:αντλία
読み方:アドゥリア・アドゥリーア・アンドゥリア・アンドゥリーア
ラテン文字:antlia
古代ギリシャ語の ἀντλία に由来。もとは ἄντλος(船底にたまった水)に -ία を付けた形で、船底水そのものや、それをかき出すこと、船倉などを指す海事用語だった。現代ギリシャ語で「ポンプ」の意味を持つのは、動詞 αντλώ(くむ、抽出する)に引きよせられて意味がずれたもの。
星座名の Αντλία(ポンプ座)は、18 世紀のフランスの天文学者ラカーユが南天を整理した際、当時発明された空気ポンプを表す la Machine Pneumatique と名づけ、ラテン語で Antlia Pneumatica と訳されたのが始まり。のちに一語に短縮されて Antlia として定着し、英語やギリシャ語に取り入れられた。
ギリシャ語:κόμη
読み方:コミ・コーミ
ラテン文字:komi
古代ギリシャ語の κόμη(頭髪、葉の茂み)に由来。起源は特定できず、ギリシャ先住の言語から来たとする説や、アッカド語 qimmatum(毛束、冠)などセム語族の系統とする説もある。日常語では μαλλιά(髪)を使い、κόμη は文語寄りに残る。
彗星の尾を流れる髪に見立てて、ἀστήρ κομήτης(髪の長い星)と呼ばれた。この ἀστήρ が省かれ、κομήτης だけで「彗星」を言うようになり、現代ギリシャ語 κομήτης にそのまま続く。ラテン語 cometa、英語 comet、フランス語 comète も同じ語源。天文学で彗星を取り巻くガス雲を κόμη と呼ぶのは、英語 coma、フランス語 chevelure からの意味借用で加わった用法。
派生語に κομήτης(彗星)、κομμωτής(美容師)。星座 Κόμη της Βερενίκης(かみのけ座)は、女王ベレニケーが夫の無事を願って捧げた髪が天に上げられた、という神話に由来する名。
ギリシャ語:παρθένος
読み方:パルセノス・パルセーノス・パルテノス・パルテーノス
ラテン文字:parthenos
古代ギリシャ語の παρθένος(乙女、処女)に由来。印欧祖語で「胸」を表す語根に続き、もとは母となる前の若い女性を指したとされる。転じて形容詞で「手つかずの、純粋な」の意味でも使う。
アテネのアクロポリスの神殿 Παρθενών(パルテノン)は、処女神 Αθηνά Παρθένος を祀ることから παρθένος をもとに名づけられた。星座名として使うときは先頭を大文字にした Παρθένος(おとめ座)と書き、一般名詞と区別する。英語には παρθένος を含む合成語として parthenogenesis(単為生殖、+ γένεσις「誕生」), parthenocarpy(単為結実、+ καρπός「果実」)がある。
派生に παρθενία, παρθενιά(純潔、処女性), παρθενικός(処女の), παρθενογένεση(単為生殖), εκπαρθενεύω(純潔を奪う)。女性形の παρθένα(乙女、処女)は中世ギリシャ語から続く形で、日常では παρθένα のほうをよく使う。
ギリシャ語:λαμπάδα
読み方:ラバダ・ラバーダ・ランバダ・ランバーダ
ラテン文字:lampada
λαμπάδα(ろうそく、細長い蝋燭)は、古代ギリシャ語の λαμπάς(松明、たいまつ) と同じ語群に属する。核にあるのは「燃えて光るもの」という発想で、むき出しの火を持つ松明から、長い蝋燭を表す語へと移ってきた。
λάμπα(ランプ、電球) は現代的な照明器具の語で、λαμπάς(松明、たいまつ) は古い火の光源を表す。λαμπάδα はその中間で、炎をともす細長い蝋燭を指す語として見やすい。
さらに、古いギリシャ語名 Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) も同じ語群に属する。
現代ギリシャ語では、教会や復活祭の文脈で λαμπάδα がとてもよく現れる。特に復活祭に手に持つ長い蝋燭は代表的な用法である。
主な意味はろうそく、細長い蝋燭。特に教会行事や復活祭で手に持つ長いキャンドルを指しやすい。
ギリシャ語:λαμπάς
読み方:ラバス・ラバース・ランバス・ランバース
ラテン文字:lampas
古代ギリシャ語の λαμπάς(松明, たいまつ)を継承。動詞 λάμπω(輝く, 光る)に -άς が付いた語で, 火を手に持って燃やす光源を指す古い語。ラテン語 lampas もここから入り, そこから Romance 経由で英語の lamp や現代ギリシャ語の λάμπα(ランプ, 電球)につながった。
同じ λάμπω の語族に λαμπάδα(ろうそく, 奉献用の長い蝋燭), 合成語 λαμπαδηδρομία(トーチリレー, たいまつ競走), λαμπαδηφόρος(たいまつを持つ者)。おうし座の明るい赤い星アルデバランの古名 Λαμπαδίας も, たいまつの火に見立てた呼び名でこの語族に連なる。
儀式や競技の場面では λαμπάς が手に持つたいまつを受け, ろうそくや奉献用の長い蝋燭は λαμπάδα, 家庭用のランプや電球は λάμπα と使い分ける。
ギリシャ語:Πλειάδες
読み方:プリアデス・プリアーデス
ラテン文字:Pleiades
古代ギリシャ語の Πλειάδες(プレアデス)に由来。πλέω(航海する)と結びつけて説明されることが多く, 出没が地中海世界の航海シーズンの目安だったことによるとされる。πέλεια(鳩)の複数形からとする別解もある。神話ではアトラスの娘たちの名としても知られるが, 娘たちより先に星団の名があったとする見方が多い。
英語 Pleiades はラテン語 Pleiades を経て同じ語源。Ταύρος(おうし座)の領域に見え, Αλντεμπαράν(アルデバラン)はその後を追うように昇ることから「従う者」と呼ばれる。同じおうし座の領域には Υάδες(ヒアデス星団)があり, アルデバランの古いギリシャ語名は Λαμπαδίας。
ギリシャ語:Υάδες
読み方:ヤデス・ヤーデス
ラテン文字:Yades
Υάδες(ヒアデス、ヒアデス星団)は、古代ギリシャ語の Ὑάδες(ヒアデス)に由来する古い星団名である。いまのギリシャ語でも学術的・伝統的な名としてそのまま用いられる。
Ταύρος(雄牛、おうし座、牡牛座) の顔のあたりに見える有名な星の集まりで、Πλειάδες(プレアデス星団、すばる) と並んで、おうし座の話題ではよく対で現れる。
Αλντεμπαράν(アルデバラン) はこの Υάδες(ヒアデス)の近くに見える明るい星で、古いギリシャ語名 Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) として触れられることもある。
単独の星ではなく、星が集まって見えるまとまりなので、一般語の σμήνος(群れ、群、編隊) を知っていると、星の群れとして理解しやすい。
主な意味はヒアデス星団。おうし座の近くに見える、よく知られた星の集まりを指す。
ギリシャ語:αίγα
読み方:エガ・エーガ
ラテン文字:aiga
ギリシャ語:συκιά
読み方:シキャ・シキャー
ラテン文字:sykia
συκιά(イチジクの木)は、古代ギリシャ語 συκῆ(イチジクの木)にさかのぼる語である。現代ギリシャ語では、実の σύκο(イチジク) に対して木の側を言う。
σύκο(イチジク) が果実を言うのに対して、συκιά はそれが実る木を言う。
意味はイチジクの木。野生の木にも栽培される木にも使える。
ギリシャ語:αλθαία
読み方:アルセア・アルセーア・アルテア・アルテーア
ラテン文字:althaia
古代ギリシャ語の ἀλθαία(ウスベニタチアオイ、キノマルバ、マンテマの一種)から。ἀλθαίνω(癒す)に由来し、薬用植物として知られたことにちなむ。
ギリシャ語:ελαιοκράμβη
読み方:エレオクラムヴィ・エレオクラームヴィ
ラテン文字:elaiokravmi
ελαιοκράμβη(セイヨウアブラナ、ナタネ、カノーラ)は、ελαιο-(油)と κράμβη(キャベツ、アブラナ科の草)からできた複合語である。現代ギリシャ語では、油をとるアブラナ科の作物を指し、春には黄色い花を広く見せる。
ελαιοκράμβη は花の名としても見えるが、現代では作物名として意識されやすい。黄色い花の群れよりも、油料作物としての側面が前に出やすい語である。
意味はセイヨウアブラナ、ナタネ、カノーラ。油をとるために栽培されるアブラナ科の植物をいう。
ギリシャ語:μαγνόλια
読み方:マグノリャ・マグノーリャ
ラテン文字:magnolia
μαγνόλια(マグノリア、モクレン)は、近代ヨーロッパ語 magnolia から入った借用語である。現代ギリシャ語では、大きな花をつける木の名として使われる。
μαγνόλια は草花ではなく、花を観賞する木として意識されやすい。庭木や街路樹として目に入ることが多い。
意味はマグノリア、モクレン。大ぶりの花をつける木をいう。
ギリシャ語:κατολίσθηση
読み方:カトリスシシ・カトリースシシ・カトリスティシ・カトリースティシ
ラテン文字:katolisthisi
κατολίσθηση(地すべり、土砂崩れ)は、κατά(下へ)と ολισθαίνω(滑る)系の語からできた名詞である。文字どおりには「下へ滑ること」で、現代ギリシャ語では斜面の土砂や岩が崩れ落ちる災害を言う。
σεισμός(地震、震動) や πλημμύρα(洪水、氾濫) のあとに引き起こされやすい災害として並ぶことがある。κατολίσθηση はとくに斜面の崩れに焦点がある。
意味は地すべり、土砂崩れ。山腹や斜面の土砂が崩れて滑り落ちる災害をいう。
ギリシャ語:λεβάντα
読み方:レヴァダ・レヴァーダ・レヴァンダ・レヴァーンダ
ラテン文字:levanta
λεβάντα(ラベンダー)は、ラテン語 lavanda 系の流れを後ろに持ち、イタリア語 lavanda に連なる語から入った借用語である。洗うことや香りづけに結びついた名として広がった。
英語 lavender も同じラテン語系の流れに属する。
λεβάντα は観賞用の花としても、香りのよいハーブとしても意識される。乾燥花を袋に入れて香りづけに使ったり、香りそのものを連想させたりしやすい。
意味はラベンダー。紫がかった花をつける植物で、香りのよいハーブとしても知られる。
ギリシャ語:πικραλίδα
読み方:ピクラリダ・ピクラリーダ
ラテン文字:pikralida
πικραλίδα(タンポポ)は、πικρός(苦い)に由来する形が続いた語である。現代ギリシャ語では、黄色い花をつけるタンポポを指し、名の中には葉や茎の苦みを思わせる感覚が残っている。
αγριοράδικο(野生のチコリー、野草のラディキ) は食べる野草として言われやすいのに対して、πικραλίδα は花の名として言う場面が立ちやすい。
意味はタンポポ。野原や道ばたに生える、黄色い花の草をいう。
ギリシャ語:συνοικία
読み方:シニキア・シニキーア
ラテン文字:synoikia
συνοικία(地区、町内、街区)は、συν-(共に)と οικία(家、住まい)に由来する語である。家が集まってできた場所という感覚から、現代ギリシャ語では町の一角や住宅地区を言う。
γειτονιά(近所、界隈) がもっと生活感のある近所を言いやすいのに対して、συνοικία は都市の地区、街区という少し広いまとまりに向きやすい。
意味は地区、町内、街区。都市の一部としての住宅地区や行政上の区画に使える。
ギリシャ語:κυβέρνηση
読み方:キヴェルニシ・キヴェールニシ
ラテン文字:kyvernisi
κυβέρνηση(政府、政権、統治)は、古代ギリシャ語 κυβερνάω / κυβερνώ(舵を取る、導く)に由来する語である。もともとの「舵取り」の感覚から、現代ギリシャ語では国家を導く政府や統治を表す。
英語の cybernetics は、この語族と同じ κυβερνήτης(舵手、統率者)にさかのぼる。
υπουργός(大臣、長官) が政府を構成する個々の役職を言うのに対して、κυβέρνηση はその全体としての政府や政権を言う。
意味は政府、政権、統治。組織としての政府にも、政治を運営する行為にも使える。
ギリシャ語:τιμή
読み方:ティミ・ティミー
ラテン文字:timi
古代ギリシャ語の τιμή(名誉, 評価, 値)を継承。印欧祖語で「価値づける, 敬う」を表す語根に続き, 動詞 τίω(敬う, 値をつける)から抽象名詞を作る -μή が付いてできた語。「名誉」「敬意」「値段」「料金」の現代の使い分けは, フランス語 honneur と valeur の意味配置と重なって整った。
派生に τίμιος(誠実な, 正直な, 価値ある), 動詞 τιμώ(敬う, 値段をつける), τιμητικός(名誉の)。合成語に ατιμία(不名誉。α- + τιμή + -ία), τιμοκατάλογος(価格表)。
κέρδος(利益, 利得)が売買の結果として残る儲けを指すのに対し, τιμή は売買の場でつく価格そのものを指す。人への敬意の意味では δόξα(栄光)と並び, 「τιμή και δόξα(名誉と栄光)」のように対で使う。
ギリシャ語:φούσκα
読み方:フスカ・フースカ
ラテン文字:fouska
古代ギリシャ語の φύσκη / φούσκα(詰めた腸、膀胱)を継承。薄い膜に空気や中身が入って丸くふくらんだ形を基本の感覚に、「泡、ふくらみ、水ぶくれ」へ続く。経済の「バブル」は英語 bubble からの意味借用。
派生語に φουσκώνω(ふくらむ、ふくらませる)、φούσκωμα(ふくらみ)、φουσκωμένος(ふくらんだ)、ξεφουσκώνω(しぼませる)、παραφουσκώνω(ふくらませすぎる)。合成語に σαπουνόφουσκα(シャボン玉)、τσιχλόφουσκα(ガムの泡)。玩具や飾りの風船は μπαλόνι(風船、バルーン)。
ギリシャ語:κούκλα
読み方:ククラ・クークラ
ラテン文字:koukla
κούκλα(人形、マリオネット、マネキン、美人、巻き玉)は、近代ヨーロッパ語の kukla 系の人形語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、まず遊ぶ人形や飾り人形を言い、そこから美しい人への呼びかけにも広がった。
中心の意味は人形。さらに、糸で操る人形、店頭のマネキン、美しい人へのくだけたほめ言葉、そして糸やひもを巻いた玉も表すことがある。
ギリシャ語:σβούρα
読み方:ズヴラ・ズヴーラ
ラテン文字:svoura
回転の音をまねた擬音起源とされる中世ギリシャ語 σβούρα をそのまま継承した語。指小形に σβουρίτσα、派生動詞 σβουρίζω(こま回しする), その名詞化 σβούρισμα(回転の動き)がある。休みなく動き回る人を比喩で言うほか、木工の回転刃機械も指す。
ギリシャ語:ώχρα
読み方:オフラ・オーフラ
ラテン文字:ochra
ギリシャ語:πρόταση
読み方:プロタシ・プロータシ
ラテン文字:protasi
πρόταση(文、提案)は、προτείνω(差し出す、提案する)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、文法上の文にも、会議などで出される提案にも使われる。
φράση(句、フレーズ、言い回し) が短い表現のまとまりを言うのに対して、πρόταση はより完結した文を言いやすい。仕事の場では συνάντηση(会議、打ち合わせ)で出される提案の意味にもなる。
意味は文、提案。言語の単位にも、差し出された案にも使える。
ギリシャ語:σύμβαση
読み方:シヴァシ・シーヴァシ・シムヴァシ・シームヴァシ
ラテン文字:symvasi
σύμβαση(協定、契約)は、συμβαίνω(合う、一致する、起こる)に関わる文語名詞 σύμβαση から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、当事者の合意や契約関係を指す。
συμβόλαιο(契約、契約書) が契約書そのものに寄ることがあるのに対して、σύμβαση は合意内容や契約関係を言いやすい。雇用なら εργοδότης(雇用主、使用者) と εργαζόμενος(働く人、被雇用者)のあいだの取り決めにもなる。
意味は協定、契約。法的な契約にも一般的な合意にも使える。
ギリシャ語:βάρδια
読み方:ヴァルディア・ヴァールディア
ラテン文字:vardia
βάρδια(勤務交代、シフト、当番)は、イタリア語 guardia(見張り、当番)系の借用語から入った語である。現代ギリシャ語では、勤務の時間帯や当番の順番を言うのに広く使われる。
νοσοκομείο(病院) の夜勤や、店や工場の交代勤務の文脈で使いやすい。仕事そのものを言う εργασία(労働、仕事、作業、論文) より、時間帯ごとの持ち場に重心がある。
意味は勤務交代、シフト、当番。日勤、夜勤、警備当番などに使える。
ギリシャ語:συνάντηση
読み方:シナディシ・シナーディシ・シナンディシ・シナーンディシ
ラテン文字:synantisi
συνάντηση(会合、打ち合わせ、出会い)は、συναντώ(出会う、会う)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、予定された会議にも、人との出会いにも使われる。
γραφείο(オフィス、事務所、机) が会う場所を言うことがあり、ομάδα(チーム、グループ) での打ち合わせなら συνάντηση がその会合になる。
意味は会合、打ち合わせ、出会い。仕事でも日常でも使える。
ギリシャ語:σοδειά
読み方:ソディア・ソディアー
ラテン文字:sodeia
σοδειά(収穫、収穫高)は、中世ギリシャ語の農耕語 σοδειά(収穫、取り分)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、畑や木から得られたその年の収穫や出来高を指す。
φυτεύω(植える、栽培する) が育てる行為を言うのに対して、σοδειά はその結果として得られる収穫を言う。対象としては αμπέλι(ブドウの木、ブドウ畑) や果樹園の文脈と結びつきやすい。
意味は収穫、収穫高。その年にどれだけ取れたかという量にも寄る。
ギリシャ語:μετάφραση
読み方:メタフラシ・メターフラシ
ラテン文字:metafrasi
μετάφραση(翻訳、訳文)は、古代ギリシャ語由来の文語的な μετάφρασις(翻訳)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、ある言語の内容を別の言語へ移し替えることにも、その結果できた訳文にも使う。
λέξη(単語、語) 一語の対応を考えることもあれば、φράση(句、フレーズ、言い回し) 全体をまとめて訳すこともある。どちらの場合でも、移す中心になるのは元の σημασία(意味、意義)である。
意味は翻訳、訳文。行為にも結果にも使える。
ギリシャ語:ταυτότητα
読み方:タフトティタ・タフトーティタ
ラテン文字:taftotita
ταυτότητα(身元、身分証明書)は、古代ギリシャ語由来の文語的な ταυτότης(同一性)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、本人であることという抽象的な身元にも、身分証明書そのものにも使われる。
αίτηση(申請、申込) を出すときや άδεια(許可、休暇) を受ける手続きでは、ταυτότητα が本人確認書類として求められやすい。
意味は身元、身分証明書。抽象的な同一性より、日常では ID カードの意味が前に出やすい。
ギリシャ語:υπογραφή
読み方:イポグラフィ・イポグラフィー
ラテン文字:ypografi
古代ギリシャ語の ὑπογραφή(下に書くこと, 署名)に由来。接頭辞 ὑπό-(下に)と動詞 γράφω(書く)からの動詞名詞で, もとは「下に書きつけること」を意味した。現代の「署名, サイン」の用法はフランス語 signature, 英語 signature からの意味借用で輪郭が整った。
同じ γράφω の語族に υπογράφω(署名する, 下書きする), υπογραφέας(署名者), συνυπογράφω(共同署名する), αντυπογραφή(副署)。合成語 ψηφιακή υπογραφή(電子署名)は英語 digital signature からの翻訳借用。書類や契約の場面で αίτηση(申請, 申込), συμβόλαιο(契約, 契約書)と組みになる。
ギリシャ語:διάλεκτος
読み方:ディアレクトス・ディアーレクトス
ラテン文字:dialektos
διάλεκτος(方言)は、ヘレニズム期の διάλεκτος(言語の型、話し方)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、共通語とは区別される地域的な言語変種を指す。
ομιλία(話しことば、スピーチ) が話すこと全体を言うのに対して、διάλεκτος は地域や共同体ごとの型を言う。より大きく言語全体を立てるときは γλώσσα(言語、ことば)が上位に来る。
意味は方言。地域差のある話し方や言語変種を指す。
ギリシャ語:φράση
読み方:フラシ・フラーシ
ラテン文字:frasi
動詞 φράζω(言う, 表現する)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 φράσις(言い表し, 表現)に由来。語尾 -ις が -η に変わって現代ギリシャ語の φράση の形になった。
同じ語族に動詞 φράζω(言う, 表現する), 形容詞 φραστικός(表現の)。合成語に έκφραση(表現, 言い方), μετάφραση(翻訳), παράφραση(言い換え, パラフレーズ), περίφραση(遠回しな表現), σύμφραση(前後の文脈)。
λέξη(単語, 語)は一語を指し, φράση は複数の語からなる短いまとまり, πρόταση(文, 提案)は完結した文を指す。
ギリシャ語:λέξη
読み方:レクシ・レークシ
ラテン文字:lexi
λέξη(単語、語)は、古代ギリシャ語 λέξις(言い方、語句)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、文の中で一つの語として数える単位を言う基本語として定着している。
φράση(句、フレーズ、言い回し) が複数の語のまとまりを言うのに対して、λέξη はその一つ一つの語を言う。σημασία(意味、意義) は、その語が何を表すかという側を受け持つ。
意味は単語、語。言語学の説明でも、日常の「この単語は難しい」のような言い方でも使える。
ギリシャ語:ομιλία
読み方:オミリア・オミリーア
ラテン文字:omilia
副詞 ὁμοῦ(共に)に -ιλος が付いた名詞 ὅμιλος(集団, 群れ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ὁμιλία(交際, 付き合い)に由来。のちに「講話, 語り」の意味が加わり, 現代の「話しことば, スピーチ」の用法は英語 speech やフランス語 parole からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὁμιλία の語族に ομιλώ(話す, 口語形は μιλάω), ομιλητής(話し手, 演説者), ομιλητικός(話し好きの), 合成語 συνομιλία(会話), συνομιλητής(対話者), συνομιλώ(会話する)。
関連語の διάλεκτος(方言)は地域ごとの話し方, φράση(句, フレーズ)は個々の言い回し, λόγος(言葉, 話, 理性)は言葉そのものの単位。英語 homily(説教, 講話)もラテン語 homilia を経て同じ語源。
ギリシャ語:σημασία
読み方:シマシア・シマシーア
ラテン文字:simasia
古代ギリシャ語の σημασία(しるし, 指し示し)に由来。σημαίνω(示す, 意味する)に抽象名詞を作る -ία が付いた語で, σημαίνω 自体は σῆμα(しるし)から作られた動詞。「語やしるしが表す内容」という用法はヘレニズム期にすでに見え, 英語 meaning の意味配置と重なって整った。「重要性, 意義」の用法は, 英語 significance からの意味借用で加わった。
英語 semasiology(意味論)はこの語から作られた学術語。派生に σημασιολογία(意味論), σημασιολογικός(意味論の)。σημαίνω(示す), σημαντικός(重要な, 意味のある), σῆμα(しるし)が同じ σημ- の語族の仲間。
λέξη(単語, 語)が語そのものを指すのに対し, σημασία はその語が表す内容を指す。μετάφραση(翻訳, 訳文)では, 元の語や文の σημασία を別の言語に移す。
ギリシャ語:νοσοκόμα
読み方:ノソコマ・ノソコーマ
ラテン文字:nosokoma
νοσοκόμα は、νόσος(病気)に関わる古い複合語形成に由来する。現代ギリシャ語では、病院や診療所で患者の世話や看護を担う職業を指す。
主な意味は「看護師」「ナース」。現代の職業名としては男女を問わず使われることもあるが、形そのものは女性形である。
ギリシャ語:φιλοξενία
読み方:フィロクセニア・フィロクセニーア
ラテン文字:filoxenia
φιλοξενία は、φίλος(愛する、親しい)と ξένος(よそから来た人、客、異邦人)からできた複合語である。現代ギリシャ語では、客を迎え入れて親切に扱うことを表す名詞として定着している。
ξένος(外国の、よその、異質な、異国風の) が外から来た人や異質なものを指すのに対して、φιλοξενία はそうした客人や訪問者を歓迎する側の態度や行為を言う。
主な意味は「もてなし」「歓待」「ホスピタリティ」。家庭での客あしらいにも、地域や業界の hospitality にも使える。
ギリシャ語:παρέα
読み方:パレア・パレーア
ラテン文字:parea
παρέα は中世ギリシャ語 παρέα(仲間、一緒にいること)に由来する。現代ギリシャ語では、気の合う仲間の集まりや、だれかと一緒に過ごすことを表す語として使われる。
主な意味は「仲間」「連れ」。そこから、一緒にいて寂しくないことや、付き添いとして同席することも表す。
ギリシャ語:παρέλαση
読み方:パレラシ・パレーラシ
ラテン文字:parelasi
παρέλαση は、動詞 παρελαύνω(行進して通る、閲兵する)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、祝祭や国民的記念日に行われるパレードや行進を指す。
τελετή(儀式、式典、セレモニー) が式典全般を言うのに対して、παρέλαση は人々が隊列を組んで進む行進形式の行事を指す。
主な意味は「パレード」「行進」。軍の閲兵式や学校の記念行進にも使う。
ギリシャ語:ασφάλεια
読み方:アスファリア・アスファーリア
ラテン文字:asfaleia
古代ギリシャ語の ἀσφάλεια(安全、確かさ)を継承。ἀσφαλής(揺るがない、確かな、安全な)に -εια を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と σφάλλω(倒す、つまずかせる)にさかのぼる。もとは「倒されないこと、崩れないこと」を表す語。
派生語に ασφαλής(安全な)、ασφαλίζω(保険をかける、確保する)、ασφαλιστικός(保険の)、ασφάλιση(保険)など。
「治安」「公的安全」「機械の安全装置」の用法はフランス語 sécurité / sûreté からの意味借用、「保険」の用法は英語 insurance とフランス語 assurance からの意味借用。
英語 asphalt(アスファルト)も同じ ἀ- + σφάλλω の組み合わせで、「崩れない、劣化しない」の意から天然の瀝青を指した古代ギリシャ語 ἄσφαλτος に由来し、ラテン語 asphaltum を経て入った。
ギリシャ語:καταστροφή
読み方:カタストゥロフィ・カタストゥロフィー
ラテン文字:katastrofi
ギリシャ語:πλημμύρα
読み方:プリミラ・プリミーラ
ラテン文字:plimmyra
古代ギリシャ語の πλήμυρα(満潮、洪水)を継承。動詞 πίμπλημι(満たす)と同じ語根から生まれた語で、印欧祖語で「満たす」を表す語根に由来する。のちに πλήν(除いて)と μύρομαι(流れる)の合成と見なされて -μμ- の綴りが定着し、アクセントも後ろに移って今の形になった。
派生語に πλημμυρίζω(洪水になる、あふれさせる)、πλημμυρίδα(満潮)。
ギリシャ語:βλάβη
読み方:ブラヴィ・ブラーヴィ・ヴラヴィ・ヴラーヴィ
ラテン文字:vlavi
古代ギリシャ語の βλάβη(害、損傷)を継承。動詞 βλάπτω(傷つける、害する)から作られた名詞。
派生語に βλαβερός(有害な), αβλαβής(無害な), επιβλαβής(有害な)。ζημιά(損失、損害)は損失・損害を広く言うのに対して、βλάβη は機械や身体の機能が停止した状態によく使う。法律用語の ηθική βλάβη(精神的損害), σωματική βλάβη(身体的損害)はフランス語 préjudice moral / préjudice corporel の翻訳借用。
ギリシャ語:ξηρασία
読み方:クシラシア・クシラシーア
ラテン文字:xirasia
古代ギリシャ語の ξηρασία(乾き、乾燥状態)を継承。形容詞 ξηρός(乾いた)から動詞 ξηραίνω(乾かす、乾く)を経て作られた名詞。現代の「干ばつ」の意味はフランス語 sécheresse からの意味借用で広がった。
派生語に ξηρός(乾いた), ξηραίνω(乾かす), ξηρότητα(乾燥度、素っ気なさ)。近い語に ανυδρία, αβροχιά, ανομβρία(どれも「雨・水の不足」)。反対は υγρασία(湿気、湿度)。ギリシャ語の ξηρός は英語の xero- にも入って、xerography(乾式複写、「Xerox」の語源), xerophyte(乾生植物)などを作る。
ギリシャ語:επίθεση
読み方:エピセシ・エピーセシ・エピテシ・エピーテシ
ラテン文字:epithesi
古代ギリシャ語の ἐπίθεσις(上に置くこと、付加、攻撃)に由来。
動詞 ἐπιτίθημι(上に置く、加える、攻撃する)に行為を表す接尾辞 -σις が付いた形で、構成要素は ἐπί-(上に)+ τίθημι(置く)。古代から物を上に載せる意味と、敵に仕掛ける意味の両方を持っていた。
現代ギリシャ語における軍事的な「攻撃、襲撃」としての使い方は、フランス語 attaque からの意味借用によって整理されたもの。
派生語に επιτίθεμαι(攻撃する)、επιθετικός(攻撃的な)、επιθετικότητα(攻撃性)、επίθετο(形容詞、文法)など。関連語に άμυνα(防衛)、ήττα(敗北)、προσβολή(攻撃、侵害)など。
ギリシャ語:δημοκρατία
読み方:ディモクラティア・ディモクラティーア
ラテン文字:dimokratia
古代ギリシャ語の δημοκρατία(民衆の支配)を継承。δῆμος(民衆)と κράτος(力、支配)の合成で、古代アテネの政治体制を指した語。近代西洋で政治体制として体系化された「民主主義、民主政」の使い方はフランス語 démocratie、英語 democracy、ドイツ語 Demokratie からの意味借用で整えられた。
派生語に δημοκράτης(民主主義者)、δημοκρατικός(民主的な)、σοσιαλδημοκρατία(社会民主主義)。関連語に κράτος(国家、国家権力)。英語 democracy もラテン語 democratia 経由で同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:εκλογή
読み方:エクロイ・エクロイー・エクロギ・エクロギー
ラテン文字:eklogi
古代ギリシャ語の ἐκλογή(選び出し、選抜)からの学術借用。動詞 ἐκλέγω(ἐκ-「外へ」+ λέγω)に名詞化接尾辞 -ή が付いた形で、直訳は「選り出すこと」。λέγω は古くは「集める、選ぶ」が基本の意味で、そこから「並べて話す、言う」の意味が生まれた。印欧祖語「集める、選ぶ」を表す根に由来し、ラテン語 legere(集める、読む、選ぶ)、英語 collect、lecture、legend も同じ根から生まれた語。
派生語に εκλογικός(選挙の)、εκλογέας(有権者、選挙人)、εκλέγω(選ぶ、選出する)、εκλεκτός(選ばれた、上等な)、εκλεκτικός(選り抜きの、折衷的な)、εκλεκτικισμός(折衷主義)、εκλόγιμος(当選資格のある)など。関連語に ψήφος(票、投票)、δικαίωμα(権利、資格)。
英語 eclectic(折衷的な)、eclecticism(折衷主義)は εκλεκτικός をもとにした学術語。詩の形式名 eclogue(牧歌)は ἐκλογή そのものがラテン語 ecloga を経て入った語で「選り抜きの短詩」の意から。英語 election、elect、select はラテン語 ēligere(ex- + legere)に由来し、ギリシャ語 ἐκλέγω と同じ語構成になっている。
ギリシャ語:κατηγορία
読み方:カティゴリア・カティゴリーア
ラテン文字:katigoria
古代ギリシャ語の κατηγορία(告発、公の言い立て、範疇)に由来。κατά(〜に対して)と ἀγορεύω(公の場で話す)から作られた κατήγορος(告発者)に -ία を付けた名詞。現代の「分類、カテゴリー」の用法はフランス語 catégorie、英語 category からの意味借用で定着した。英語 category もラテン語 catēgoria を経て同じ語源。
派生語に κατηγορώ(告発する、非難する), κατηγορούμενος(被告)。関連語に δικαστήριο(裁判所), ποινή(刑罰)。
ギリシャ語:ποινή
読み方:ピニ・ピニー
ラテン文字:poini
古代ギリシャ語の ποινή(賠償、罰、仕返し)に由来。古くは殺傷や加害に対する償い・賠償金を指していたが、のちに不利益を科すこと全般にも使われるようになり、現代ギリシャ語では法の刑罰・罰に用法が絞られた。派生語に ποινικός(刑事の、刑法の)。
英語 pain、penalty、punish はすべてラテン語 poena を経て同じ語源。
ギリシャ語:ψήφος
読み方:プシフォス・プシーフォス
ラテン文字:psifos
古代ギリシャ語の ψῆφος(小石)を継承。古代では民会や法廷などの投票に小石を使ったため早くから「票」の意味にも広がり、近代にはフランス語 vote/voix の影響で投票制度の用語として意味が整った。
派生語に ψηφίζω(投票する)、ψηφοφορία(投票、採決)、ψηφοδέλτιο(投票用紙)、δημοψήφισμα(国民投票)。
ギリシャ語:βουλή
読み方:ヴリ・ヴリー
ラテン文字:vouli
古代ギリシャ語の βουλή(評議, 意志, 決断)に由来。動詞 βούλομαι(望む, 決意する)に -ή が付いた動詞名詞で, 相談して決めることを指していた。現代の「議会」の用法はフランス語 Parlement, 英語 Parliament からの意味借用で輪郭が整った。
同じ βούλομαι の語族に βουλεύω(熟議する), βουλευτής(議員), βουλευτήριο(議場), βούλευμα(起訴状, 決定), βούληση(意志, 意向), 合成語 κοινοβούλιο(国会, κοινός「共通の」と合わせた語), κοινοβουλευτικός(議会制の), συμβουλή(助言), επιβουλή(陰謀, 策略)。
書き言葉に残る βουλές(意志, 決意)は άγνωστες οι βουλές του Θεού(神の御心は知れない)のような言い回しで使う。英語 voluntary, volition もラテン語 voluntas を介して, βούλομαι と同じ「望む」を表す語根に連なる。
ギリシャ語:υποχρέωση
読み方:イポフレオシ・イポフレーオシ
ラテン文字:ypochreosi
古代ギリシャ語の形容詞 ὑπόχρεος(借りのある、義務を負った)から作られた動詞 υποχρεώνω(義務づける)をもとに、抽象名詞を作る -ση を付けて作られた語。ὑπόχρεος は ὑπό(下に)と χρέος(借り、負い目)の合成。現代の「義務」の用法はフランス語 obligation の翻訳借用で広がった。
派生語に υποχρεώνω(義務づける), υπόχρεος(義務を負った、お世話になっている), υποχρεωτικός(義務の、強制の), υποχρεωτικά(必ず、強制的に)。対義語に δικαίωμα(権利)。
ギリシャ語:κοινωνία
読み方:キノニア・キノニーア
ラテン文字:koinonia
古代ギリシャ語の κοινωνία(共有、交わり、結びつき)に由来。
κοινός(共通の)から派生した κοινωνός(共に持つ者、仲間)を抽象化した名詞で、動詞 κοινωνέω(分かちあう、共にする)と対になる。
古代では財・祭祀・生活を共にする結びつきを広く表し、キリスト教では「聖体拝領、交わり」の専門語としても使われた。
現代ギリシャ語で「社会」の意味の基本語として使われるのは、フランス語 société からの意味借用で近代に整えられたもの。
派生語に κοινωνικός(社会的な、人付き合いのよい)、κοινωνιολογία(社会学)、κοινωνικοποίηση(社会化)。共通の語源を持つ関連語に κοινωνός(共にあずかる者)、κοινότητα(共同体)、κράτος(国家)。
ギリシャ語:κοινότητα
読み方:キノティタ・キノーティタ
ラテン文字:koinotita
古代ギリシャ語の κοινότης(共通性、共通のもの、共同体)に由来。
κοινός(共通の)に抽象名詞を作る接尾辞 -της を付けた語で、現代ギリシャ語では古代の対格形 κοινότητα がそのまま主格として使われている。古代では「共通であること」そのものや財の共有などを指した。
現代の「地域共同体、コミュニティ」の意味はフランス語 communauté から、学校や自治体の区画としての使い方はフランス語 commune からの意味借用によってそれぞれ整えられた。
派生語に κοινοτικός(共同体の、地域の)、κοινωφελής(公益の、共同体のためになる)など。共通の語源を持つ関連語に κοινωνία(社会)、κράτος(国家)がある。
ギリシャ語:κηδεία
読み方:キディア・キディーア
ラテン文字:kideia
古代ギリシャ語の κηδεία(世話、気づかい、弔い、葬儀)に由来。動詞 κηδεύω(世話をする、特に死者を弔う)の行為名詞で、κῆδος(心配、世話、とりわけ親族や死者への気づかい)にさかのぼる。古代には親族や友への広い「世話」をも言ったが、後古典期以降は「死者の世話」の方に意味が絞られ、現代ギリシャ語では葬儀・葬送の場そのものを指す語として定着した。
派生語・関連語に κηδεύω(葬る、弔う)、κηδεμόνας(保護者、後見人)、κηδεμονία(後見、保護)、νεκροθάφτης(墓掘り人)、νεκροταφείο(墓地)。
ギリシャ語:τελετή
読み方:テレティ・テレティー
ラテン文字:teleti
古代ギリシャ語の τελετή(入信儀礼, 秘儀)を継承。動詞 τελέω(成し遂げる, 実行する)から作られた名詞で, τέλος(終わり, 仕上げ, 料金)と同じ語根から出る。印欧祖語で「巡る, 動く」を表した語根の子孫。「式典, セレモニー」の広い意味は, フランス語 cérémonie からの意味借用で入った近代の用法。
同じ τελέω の語根から兄弟語に τέλεση(執行, 挙行), τέλος(終わり, 仕上げ, 料金)。τελετή 自体から作られた合成語には τελετουργία(儀式, 儀礼, τελετή に ἔργον を足した形), τελετουργικός(儀礼の, 典礼の)。
宗教儀礼に強い語は ιεροτελεστία(秘跡の挙行, 荘厳な儀式)で, 決まった手順を守って厳かに行う感じを前面に出す。比喩では料理やお茶の入れ方のように手順を守って厳かに行う行為にも使う。τελετή は世俗の式典(卒業式, 開会式, 結婚式)も含めて広く使える。英語 ceremony, フランス語 cérémonie, イタリア語 cerimonia はラテン語 caerimonia から経由した別系統の語で, 意味の上で τελετή と対応する。儀礼を担う ιερέας(司祭)がこの語の周辺で動く。
ギリシャ語:ιδέα
読み方:イデア・イデーア
ラテン文字:idea
「見る」を意味する古代ギリシャ語の動詞から派生した女性名詞 ἰδέα(形, 見え方, 観念)に由来。見た姿やそこから浮かぶ観念を古代から表し, プラトン哲学では本質や原型の意味で中心概念になった。日常的な「考え, 着想」としての使い方は, フランス語 idée, 英語 idea からの意味借用で定着した。
派生語に ιδεώδης(理想的な), ιδεαλισμός(理想主義、観念論), ιδεολογία(イデオロギー), ιδεατός(観念上の)など。類義語に σκέψη(思考)。英語 idea はラテン語 idea を経て同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:βόλτα
読み方:ヴォルタ・ヴォールタ
ラテン文字:volta
中世にイタリア語 volta(回転、ひと回り)から借用された語。volta はラテン語 volvo(回転する、巻く)の過去分詞 voluta から作られた名詞で、英語 revolve(回転する), evolve(展開する), volume(巻物、量)も同じ語根。
派生語に βολτάρω(散歩する), βολτούλα, βολτίτσα(ちょっとした散歩)。近い語に περίπατος(散策), γύρα(ひと回り), τσάρκα(ぶらつき)。複数形の βόλτες は回転の意から、ねじの山や機械の回し数を指すのにも使う。κόβω βόλτες(ぶらぶらする), παίρνει την κάτω βόλτα(下降線をたどる)のような慣用句も多い。
ギリシャ語:λεμονάδα
読み方:レモナダ・レモナーダ
ラテン文字:lemonada
北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 limonada(レモンの飲み物)からの直接借用。
イタリア語 limone(レモン)に「〜の飲み物」を表す -ada が付いた形で、近世のヴェネツィア交易圏を通じてギリシャ語に入った。
同様の構成を持つ πορτοκαλάδα(オレンジ飲料)などと並び、柑橘系の飲み物名の系列に属する。
共通の語源を持つ関連語に λεμόνι(レモン)、λεμονιά(レモンの木)、λεμονάτος(レモン風味の、レモン汁で調味した)、λεμονοστύφτης(レモン絞り器)などがある。
ギリシャ語:πορτοκαλάδα
読み方:ポルトカラダ・ポルトカラーダ
ラテン文字:portokalada
πορτοκάλι(オレンジ)に、ジュースや料理を表す接尾辞 -άδα が付いた語。
オレンジを使って作る飲み物を指し、瓶入りの清涼飲料や炭酸入りのオレンジソーダなどがこれに当たる。生搾りのオレンジジュースは χυμός πορτοκαλιού と呼んで区別される。
-άδα は λεμονάδα(レモネード)、βυσσινάδα(サワーチェリージュース)などの果汁飲料のほか、φασολάδα(豆スープ)、μακαρονάδα(パスタ料理)といった料理名にも付く。
ギリシャ語:μελιτζάνα
読み方:メリジャナ・メリジャーナ
ラテン文字:melitzana
中世ギリシャ語 μελιτζάνα を継承。
アラビア語 بَاذِنْجَان(bādinjān)からの借用で、さらにもとはペルシャ語 بادنگان(bâdengân)、サンスクリット由来にさかのぼる東方起源の食材名。ギリシャ語は中世期に入った古い形(μαντζιτζάνιν)が、中世イタリア語 melanzana の影響で現在の μελιτζάνα の形に整えられた。
地中海沿岸の食文化とともに各言語に広まった語で、西欧にもナスを表す近い形が多く残っている。
派生語に μελιτζανάκι(小ナス)、μελιτζανοσαλάτα(ナスのディップ)、μελιτζανί(ナス色、濃い紫)などがある。
ギリシャ語:ζάχαρη
読み方:ザハリ・ザーハリ
ラテン文字:zachari
古代ギリシャ語の σάκχαρις を継承。もとはサンスクリット शर्करा(シャルカラー、砂粒、砂糖)で、ヘレニズム期にギリシャ語に入り、中世に ζάχαρις, ζάχαρη の形となった。学術・化学では古代形に続く σάκχαρο が使われる。
派生語に ζαχαρένιος(砂糖の、甘い), ζαχαρωτό(キャンディー), ζαχαρώνω(砂糖漬けにする), ζαχαρίνη(サッカリン)。合成語に ζαχαροκάλαμο(サトウキビ), ζαχαροπλαστείο(洋菓子店), ζαχαροδιαβήτης(糖尿病)。英語 sugar はアラビア語 sukkar を経て同じサンスクリット語から来た語。英語 saccharin, saccharide はギリシャ語 σάκχαρον を経由した語。
ギリシャ語:ανακούφιση
読み方:アナクフィシ・アナクーフィシ
ラテン文字:anakoufisi
ギリシャ語:ελιά
読み方:エリャ・エリャー
ラテン文字:elia
中世ギリシャ語の ελιά を継承。古代ギリシャ語 ἐλαία(オリーブ、オリーブの木)の縮約形で、中世以降は木と実の両方を指す言葉として定着した。
派生語には ελαιόδεντρο(オリーブの木)、ελαιόλαδο(オリーブ油)、ελαιώνας(オリーブ畑)、ελαιοπαραγωγός(オリーブ生産者)など。
英語の olive やフランス語の olive はラテン語 olīva を経て、ελιά と同じ古代ギリシャ語 ἐλαίᾱ の語根に由来する。
ギリシャ語:μαργαρίτα
読み方:マルガリタ・マルガリータ
ラテン文字:margarita
イタリア語 margarita(真珠、デイジー)からの借用。
ヘレニズム期の古代ギリシャ語 μαργαρίτης(真珠)がラテン語 margarita を経て中世・近世のイタリア語に伝播し、白い花びらが真珠を思わせるヒナギクの名にもなった。
それが近世にギリシャ語へ戻り、花の名として μαργαρίτα が定着した。これは「再借用(αντιδάνειο)」の一例にあたる。
共通の語源を持つ関連語に μαργαρίτης(古代ギリシャ語の真珠)、μαργαριτάρι(真珠)などがある。英語 marguerite(マーガレット)、フランス語 marguerite、イタリア語 margherita も同じ系列。人名 Μαργαρίτα(マルガリータ、マルガレーテ)も語根を同じくする。
ギリシャ語:έκλειψη
読み方:エクリプシ・エークリプシ
ラテン文字:ekleipsi
古代ギリシャ語の ἔκλειψις(欠如、消失、食)を継承。動詞 ἐκλείπω(欠ける、途切れる、姿を消す)の名詞形で、ἐκ-(外へ)+ λείπω(残す、去る)からなる。λείπω はラテン語 linquō(置き去る)と同じ印欧祖語の語根から出ており、英語 relinquish(放棄する)にもこの根がつながる。
英語 eclipse(食)はラテン語を経てこの ἔκλειψις から。天文用語の ecliptic(黄道)も同じ語源。
関連語に έλλειψη(欠如、楕円)など。派生語に εκλειπτική(黄道)、εκλιπών(亡くなった、故人の)など。
ギリシャ語:νυφίτσα
読み方:ニフィツァ・ニフィーツァ
ラテン文字:nyfitsa
中世ギリシャ語 νυφίτσα を継承。
古代ギリシャ語 νύμφη(花嫁、若い女性、ニンフ)に指小辞 -ίτσα が付いた νυμφίτσα(小さな花嫁、娘)がもとの形で、中世に μ が落ちて νυφίτσα になった。
細身でしなやかに動くこの小動物に若い娘の優雅さを重ねた民俗的な命名で、ヨーロッパの他言語でもイタリア語 donnola(小さな貴婦人)のように「花嫁」「娘」のイメージでイタチを呼ぶ例が並行して見られる。
共通の語源を持つ関連語に νύφη(花嫁、嫁)、νυφικό(婚礼衣装)などがある。
ギリシャ語:απόχρωση
読み方:アポフロシ・アポーフロシ
ラテン文字:apochrosi
古代ギリシャ語の ἀπόχρωσις(色が変化する、弱められた色)を継承。
動詞 ἀποχρώννυμι(色を変化させる、弱める)の名詞形で、ἀπο-(離れて、減じて)と χρώννυμι(色をつける)の合成に由来する。
現代の「色合い、ニュアンス」の使い方はフランス語 coloration からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:λάσπη
読み方:ラスピ・ラースピ
ラテン文字:laspi
中世ギリシャ語の λάσπη を継承。
それ以前の語源は定かではなく、中世期から土と水が混じった泥を指す語として文献に現れる。
比喩で相手の評判を汚す「中傷、悪口」を表す使い方は、フランス語 boue(泥)からの意味借用とされる近代的な用法。λασπολογία(中傷合戦、誹謗中傷の応酬)のような合成語でもこの感覚が生きている。
派生語に λασπώδης(泥のような、ぬかるんだ)、λασπώνω(泥まみれにする、泥をはねる)、λασπωμένος(泥まみれの)、λασπολογία(中傷合戦)、λασποτόπι(ぬかるみの地)などがある。
ギリシャ語:βαφή
読み方:ヴァフィ・ヴァフィー
ラテン文字:vafi
古代ギリシャ語の βαφή(浸すこと、染色、焼入れ)を継承。動詞 βάπτω(浸す)から作られた名詞。
派生語に βάφω(染める、塗る), βάψιμο(染めること、塗ること), βαφέας(染物師、塗装工), βαφικός(染色の)。関連語は χρώμα(色), μπογιά(ペンキ、絵の具)。英語 baptism は動詞 βάπτω から教会ラテン語 baptismus を経て作られた語で、同じ語根。
ギリシャ語:άμμος
読み方:アモス・アーモス
ラテン文字:ammos
印欧祖語にさかのぼらない地中海圏の基層語からの借用とされる古代ギリシャ語の ἄμμος(砂)を継承。同じ「砂」を表す ψάμμος とは語形が混ざり合った可能性も指摘されている。
派生語に αμμώδης(砂地の)、αμμουδιά(砂浜)、αμμόλοφος(砂丘)、αμμόλιθος(砂岩)、αμμοθύελλα(砂嵐)、αμμοθεραπεία(砂療法)など。
英語の科学用語で「砂」を表す接頭辞 psamm(o)-(psammophile=好砂性生物、psammon=砂中生物群集など)は、同じ意味の古代ギリシャ語 ψάμμος をもとにした語。
ギリシャ語:ομίχλη
読み方:オミフリ・オミーフリ
ラテン文字:omichli
古代ギリシャ語 ὀμίχλη(霧、もや)を継承。
雲や霧を表す印欧祖語の語根にさかのぼる古い語で、サンスクリット megha(雲)、古スラヴ語 mьgla(霧)も同じ語根の系列に連なる。視界や頭の中のぼやけを言う比喩的な用法も古くから自然に見られた。
派生語に ομιχλώδης(霧の多い、ぼんやりした)、ομιχλομέτρης(視程計)などがある。
ギリシャ語:καταιγίδα
読み方:カテイダ・カテイーダ・カテギダ・カテギーダ
ラテン文字:kataigida
古代ギリシャ語 καταιγίς(嵐)に由来。κατά(下へ, 激しく)と αἰγίς(ゼウスの山羊皮の盾, アイギス)の合成で, 神話でゼウスがアイギスを振ると嵐が起こるとされたことによる。古代 -ίς が現代ギリシャ語で -ίδα に変わった形で受け継がれた。英語 aegis(庇護, 後ろ盾)は同じ αἰγίς にさかのぼる。
派生に καταιγιστικός(激しい, 嵐のような), καταιγισμός(激しい嵐, 集中砲火), καταιγιδοφόρος(嵐をもたらす)。合成語に ηλιοκαταιγίδα(太陽嵐), ιδεοκαταιγίδα(ブレインストーミング), χιονοκαταιγίδα(吹雪), φοροκαταιγίδα(増税の嵐)。
ギリシャ語:πλάτη
読み方:プラティ・プラーティ
ラテン文字:plati
ギリシャ語:υγρασία
読み方:イグラシア・イグラシーア
ラテン文字:ygrasia
古代ギリシャ語の ὑγρασία(湿り気)に由来。形容詞 ὑγρός(湿った、液状の → υγρός)に抽象名詞を作る -ασία を付けた形。
同じ語根の語に υγραίνω(湿らせる)、υγροποίηση(液化)、υγροσκοπικός(吸湿性の)。対義語は ξηρασία(乾燥)。
英語 hygrometer(湿度計)、hygroscopic(吸湿性の)、hygrograph(湿度記録計)は古代ギリシャ語 ὑγρός をもとにした学術造語で、同じ語源につながる。
ギリシャ語:ζέστη
読み方:ゼスティ・ゼースティ
ラテン文字:zesti
ギリシャ語:πρασινάδα
読み方:プラシナダ・プラシナーダ
ラテン文字:prasinada
ギリシャ語:εποχή
読み方:エポヒ・エポヒー
ラテン文字:epochi
古代ギリシャ語の ἐποχή(天体が止まって見える点、一定の時期)に由来。動詞 ἐπέχω(〜の上で止まる、保持する)から作られた語で、古代天文学で星が運行の頂点で止まって見える点を指したのが起点。そこから「時間の区切り」を表すようになり、近代に「季節」「歴史上の時代」の意味はフランス語 époque、période からの意味借用で加わった。英語 epoch も同じギリシャ語から。
派生語に εποχικός(季節の、時代の)。類義語の καιρός(天気、時、好機)が状況やタイミングを言うのに対し、εποχή はまとまった期間としての区切りを表す。μέρα(日)よりは長く、χειμώνας(冬)のような一つの季節は εποχή の下位区分にあたる。
ギリシャ語:έρημος
読み方:エリモス・エーリモス
ラテン文字:erimos
古代ギリシャ語の ἔρημος(人のいない、見捨てられた)を継承。もとは形容詞で、女性形を名詞として「砂漠、荒野」の意で使う用法が古代から定着している。
派生の古代 ἐρημίτης(荒野に住む人、隠者)が後期ラテン語 eremita を経て、英語 hermit(隠者)の元になった。
派生語に ερημιά(荒地、人けのない場所)、ερημία(孤独)、ερημίτης(隠者)、ερημώνω(荒廃させる)、ερημικός(人気のない、寂れた)など。
ギリシャ語:σιωπή
読み方:シオピ・シオピー
ラテン文字:siopi
古代ギリシャ語の σιωπή(沈黙)を継承。ギリシャ語以前の古い層の語と考えられていて, 印欧祖語の語根までは確かな形で立っていない。話さないこと, 音がないこと, 口を閉ざすことを古代から一貫して表してきた。「音のない静けさ」「話題に触れない黙殺」まで含む広がりは, 英語 silence, フランス語 silence の意味配置と重なって整った。
英語 silence, フランス語 silence はラテン語 silentium(黙ること)に由来する別系統の語。派生に σιωπηλός(無言の, 寡黙な), σιωπώ / σιωπάω(黙る), σιωπηρός(暗黙の)。
似た意味の σιγή(沈黙)は由来が異なる別の語。ふだんの「沈黙, 静けさ」には σιωπή を使う。νύχτα(夜)や βράδυ(晩)と結びつきやすく, 夜の静けさには σιωπή を使うことが多い。
ギリシャ語:σπηλιά
読み方:スピリャ・スピリャー
ラテン文字:spilia
ギリシャ語:κορυφή
読み方:コリフィ・コリフィー
ラテン文字:koryfi
ギリシャ語:στιγμή
読み方:スティグミ・スティグミー
ラテン文字:stigmi
古代ギリシャ語の στιγμή(点, しるし)に由来。動詞 στίζω(刺す, 点を打つ)に名詞を作る -μή が付いてできた語。「瞬間, 短い時間」と「その折, 時点」の使い分けはフランス語 moment の意味配置と重なって整い, 句点や活字のポイントといった技術的な用法は英語 point からの意味借用で加わった。
派生に στιγμιαίος(瞬時の), στιγμιαία(一瞬で), στιγμιότυπο(スナップショット)。同じ στιγ- の語族に στίζω(刺す, 点を打つ), στίγμα(しるし, 汚点), στίξη(句読点を打つこと)。英語 stigma はこの στίγμα から作られた学術借用語。
δευτερόλεπτο(秒)が時計で測れる単位なのに対し, στιγμή はもっと感覚的で「ちょっとのあいだ」「その瞬間」を指す。μεσημέρι(正午, 昼どき)のような時間帯より, はるかに小さい一点に焦点がある。
ギリシャ語:ακτή
読み方:アクティ・アクティー
ラテン文字:akti
古代ギリシャ語の ἀκτή(海岸)から。地形としての海岸線や沿岸部を指し、崖や岩場も含む。類義語の παραλία(海辺)は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:ρίζα
読み方:リザ・リーザ
ラテン文字:riza
古代ギリシャ語の ῥίζα(根)を継承。印欧祖語で「根」を表す語根に続く語で, 植物の地中部分を指すところから, 土台や出どころを指す比喩にも使う。語学の「語根」, 数学の「根」, 化学の「基」という専門用法は, フランス語 racine とドイツ語 Wurzel からの意味借用で加わった。
英語 root(古ノルド語 rót 経由), ラテン語 radix(→ radical, radish), ドイツ語 Wurzel は同じ印欧祖語の語族の仲間。英語の接頭辞 rhizo-(根の〜, rhizome 根茎, rhizosphere 根圏)はこの語からラテン語経由で英語に入った。派生に ριζικός(根源的な, 徹底的な), ριζώνω(根を張る), ξεριζώνω(根こそぎにする)。
χορτάρι(草)や κλήμα(ブドウの木)の地下部分を指す具体的な用法のほかに, 人の出自や文化のルーツなど, 目に見えない土台も指すことが多い。
ギリシャ語:στέγη
読み方:ステイ・ステーイ・ステギ・ステーギ
ラテン文字:stegi
古代ギリシャ語の στέγη(屋根)を継承。印欧祖語で「覆う」を表す語根に続く語で, 動詞 στέγω(覆う, 守る)に -η が付いた名詞。「住まい」「住宅」「宿」「保護の場」までの使い分けは, フランス語 toit(屋根), maison(家)の意味配置と重なって整った。
派生に στεγάζω(屋根をかける, 収容する), άστεγος(住む家のない)。στεγάζω からは στέγαση(住居の提供), στεγαστικός(住居に関する)。元の動詞 στέγω(覆う, 守る)とその派生 στεγανός(雨風を通さない)が同じ στεγ- の語族の仲間。
κάτω από την ίδια στέγη(同じ屋根の下で)は, 家族や共同生活の文脈でよく使う言い回し。
ギリシャ語:πασχαλιά
読み方:パスハリャ・パスハリャー
ラテン文字:paschalia
中世ギリシャ語の πασχαλία(復活祭の時期)に由来し、さらにさかのぼると πάσχα(復活祭)に関わる語群につながる。先頭大文字の Πασχαλιά(復活祭)は、この古い「復活祭の時期」という意味を口語的に受け継いだ形である。
植物名の πασχαλιά は、復活祭のころに咲く花木を指す語として定着した。現在は、おもに香りのよい花を咲かせる観賞用の低木、ムラサキハシドイ属のライラックを表す。
植物としては θάμνος(低木、灌木)に属する観賞用の花木で、花の色から連想される λιλά(ライラック色、薄紫色)とも結びつきやすい。復活祭を口語で言うときは Πασχαλιά とも呼び、同じく民間的な呼び名に Λαμπρή(復活祭、晴れの祝日)もある。
主な意味は、紫や白の香り高い花をつけるライラックと、先頭大文字で書かれる口語の「復活祭」。同じ形でも、小文字では植物名、大文字では祝祭名として使い分ける。
ギリシャ語:τουλίπα
読み方:トゥリパ・トゥリーパ
ラテン文字:toulipa
ペルシア語の dulband(ターバン)を後ろに持ち、オスマン語の tülbent / dülbent(ターバン、ターバン用の布)を経て、フランス語の tulipan、tulippe、tulipe を通り、現代ギリシャ語の τουλίπα に至った語。
この語源で興味深いのは、花そのものの本来の名前がペルシア語では lale(チューリップ)、トルコ語では lâle(チューリップ)だという点である。ヨーロッパ語の tulip / tulipe / tulipan 系は、16 世紀にオスマン帝国を訪れた外交官や植物愛好家の記録を通じて広がった形で、花をターバンに見立てた呼び方、あるいはその周辺で生じた呼称の取り違えが背景にあるとする説明が有力である。
英語の tulip も同じ流れに属し、イタリア語 tulipano やスペイン語 tulipán はより長い形を残している。植物学名の Tulipa もこの系統の語形を受け継いだもの。
主な意味はチューリップ。球根から育つ観賞用の λουλούδι(花)の一つで、長い茎と細長い葉を持ち、ふつうは鮮やかな色の杯形の花を一輪つける。
オランダは η χώρα της τουλίπας(チューリップの国)という言い方で呼ばれることがある。
ギリシャ語:πεταλούδα
読み方:ペタルダ・ペタルーダ
ラテン文字:petalouda
基本の「蝶」を表す πεταλούδα は、中世ギリシャ語 πεταλούδα の形で現れ、現代ギリシャ語でもそのまま日常語として使われている。さらに古い前史には揺れがあり、πέταλον(葉、花びら)に由来するという見方や、πετηλίς(バッタの一種)との関係をみる説がある。
競泳の「バタフライ」は、英語 butterfly の影響を受けて加わった意味である。カオス理論でいう φαινόμενο της πεταλούδας(バタフライ効果)も、英語 butterfly effect に対応する言い方として広がった。
羽を大きく開いた蝶の姿から、πεταλούδα は似た形のものにも広く使われる。競技では κολύμπι(水泳、泳ぎ、泳法)の泳法名になり、道具では μαχαίρι(ナイフ、包丁、メス、刃)の一種や自動車部品、釣り具を指すことがある。さらに、淡水の ψάρι(魚、騙されやすい人、新兵、無口な人)の一種の名にもなっている。
主な意味は「蝶」。そこから競泳のバタフライ、羽のように開く形のもの、医療用のバタフライ針、さらにフナ属の淡水魚まで指す。
ギリシャ語:μύγα
読み方:ミガ・ミーガ
ラテン文字:myga
μύγα は、古代ギリシャ語の μυῖα(ハエ)にさかのぼる語。さらに古い印欧語の「飛ぶ小虫」を表す語群につながり、ラテン語 musca(ハエ)とも同じ起源を持つ。中世・ビザンツ期の綴りの揺れを経て、現代ギリシャ語の μύγα になった。
指小語には μυγίτσα(小さなハエ、ハエちゃん)と μυγούλα(小さなハエ、ハエちゃん)があり、小さなハエや、うっとうしい小虫をややくだけて言うときに使える。複合語では、άλογο(馬)を含む αλογόμυγα(アブ)や κρεατόμυγα(ニクバエ)、φρούτο(果物)を含む μύγα των φρούτων / του ξιδιού(ショウジョウバエ)のような言い方がある。ισπανική μύγα(スペインバエ)は定着した呼び名だが、実際にはハエではなくカンタリスを指す。
主な意味は、家の中や食べ物のまわりに現れる身近なハエ。とくにイエバエが念頭に置かれやすいが、地中海ミバエやオリーブミバエのような種類名にも広がる。そこから、ボクシングのフライ級を表す言い方にもなり、成句では、べったり張りつくこと、暇を持て余すこと、ちょっとしたことを大げさにすること、大勢が群がることなどを表す。
ギリシャ語:πέστροφα
読み方:ペストゥロファ・ペーストゥロファ
ラテン文字:pestrofa
ギリシャ語:γάτα
読み方:ガタ・ガータ
ラテン文字:gata
中世ラテン語の gatta(猫、雌猫)がヴェネツィア語の gata(猫)を経て、中世ギリシャ語の γάτα(猫)や κάττα(猫)に入った借用語。現代ギリシャ語ではこの γάτα(猫)の形が定着し、日常語の「猫」を表す基本語になった。
文法上は女性名詞だが、日常語では雄猫も含めた猫全般を指す。雄を言い分けるときは γάτος(雄猫)という。くだけた近い呼び方として γαλή(猫を言う別の語)や ψιψίνα(猫を呼ぶ愛称のような語)も並べられる。
指小語の γατάκι(子猫、小さな猫)と γατούλα(かわいい猫、小さな猫)は、人について「甘え上手でかわいらしい女性」を言う比喩にも使われる。指大語の γατάρα(大きな猫、印象の強い猫)は猫を強調して言う形。
主な意味は猫。飼い猫、野良猫、品種名を伴う猫まで広く指し、喉を鳴らす、鳴く、忍び足で歩くといった猫らしい動作と結びついて使われる。比喩では、嫉妬深い女や甘え上手な女を猫に重ねる言い方があり、さらに頭の回転が速く、柔軟で、困難をうまく切り抜ける人を指して「切れ者」と言うこともある。
猫は成句や迷信にもよく現れる。黒猫が不吉だとする δεισιδαιμονία(迷信)が知られ、人についての γάτα は τσακάλι(ジャッカル、切れ者、やり手)に近い「抜け目のない切れ者」にもなる。σκύλος(犬、イヌ、雄犬)と並べて対照させる言い方も多い。
ギリシャ語:φώκια
読み方:フォキャ・フォーキャ
ラテン文字:fokia
φώκια は、古代ギリシャ語 φώκη(アザラシ)を土台にしつつ、フランス語 phoque(アザラシ)の影響も受けてできた現在の形とされる。古いギリシャ語の語を受け継ぎながら、近代語の接触の中で今の形に落ち着いた語である。
φώκια は海辺や沿岸で生きる ζώο(動物)を指す語で、日常的にも θάλασσα(海)と強く結びつく。水中と陸上の両方で生きる肉食の哺乳類として捉えられ、短くつやのある灰色がかった毛、ひれ状の四肢、体温を保つ皮下脂肪が特徴になる。
主な意味はアザラシ。とくに寒い海域で生きる海獣を指す基本語である。そこから転じて、口汚く女性の外見をけなす侮蔑語としても使われる。
複合表現では φώκια μονάχους(地中海モンクアザラシ)、μεσογειακή φώκια(地中海アザラシ)、まれに φώκια μοναχός(モンクアザラシ)が、Monachus monachus(地中海モンクアザラシ)を指す。希少で絶滅危惧の強い種として知られ、とくにギリシャの海で言及されやすい。
ギリシャ語:αρκούδα
読み方:アルクダ・アルクーダ
ラテン文字:arkouda
αρκούδα は古代ギリシャ語 ἄρκτος(熊)にさかのぼり、中世ギリシャ語 αρκούδα を経て現代ギリシャ語の αρκούδα になった。古代形に基づく文語形の άρκτος(熊)も現代ギリシャ語に学術的な語として残るが、日常語として普通に使うのは αρκούδα である。
文語的・学術的な文脈では άρκτος(熊)が現れる一方、日常語では αρκούδα が基本になる。指小語には αρκουδίτσα(小さなクマ)と αρκουδάκι(小さなクマ、テディベア)があり、後者は文字どおりには小さなクマだが、現代ではテディベアやクマの意匠を言うときにもよく使う。
主な意味はクマ、熊。とくに一般的なクマや、茶色のクマを念頭に置いた言い方として使われやすい。複合表現では πολική αρκούδα / λευκή αρκούδα(ホッキョクグマ、シロクマ)でホッキョクグマを指す。比喩では、太って大柄な人を荒っぽく言う語になり、口語では超大国としてのロシアを動物のイメージで呼ぶこともある。
ギリシャ語:γαζέλα
読み方:ガゼラ・ガゼーラ
ラテン文字:gazela
フランス語の gazelle(ガゼル)から入った借用語で、そのフランス語は古フランス語の gazel を経てアラビア語の غزال(ガゼル)にさかのぼる。現代ギリシャ語では、この国際的な動物名がそのまま定着した。
γαζέλα はガゼル類を指す語で、ελάφι(シカ)のようなシカ全般の基本語とは区別される。そこから、長い脚や軽やかな身のこなしを連想させて、すらりとした美しい女性やモデルをたとえる語にも広がった。
まれに γκαζέλα(同じ意味の別綴り)とも綴る。語頭の /g/ を二文字で書いた形で、意味の中心は変わらない。
経済の文脈では、アメリカ英語の gazelle company にならった言い方として、短期間で大きく成長する中小企業を指す。動物のすばやさや身軽さを重ねた比喩的な用法である。
主な意味は「ガゼル」。そこから、優雅で細身の美女をほめて言う比喩や、急成長する企業を指す経済用語にも使われる。
ギリシャ語:αντιλόπη
読み方:アンディロピ・アンディローピ・アンディロンピ・アンディローンピ・アンディロピ・アンディローピ
ラテン文字:antilopi
中世ギリシャ語の ἀνθόλοψ(アンテロープという伝説上の獣)という名が、中世ラテン語とフランス語を経て西欧語側へ広まり、近代にはフランス語 antilope や英語 antelope として定着した。現代ギリシャ語の αντιλόπη は、その西欧語形を背景にギリシャ語へ戻った借用語である。ἀνθόλοψ のさらに古い起源ははっきりしないが、現代ギリシャ語の形そのものは、ギリシャ語に由来する語が西欧語を回って戻ったものとして理解できる。
αντιλόπη は ζώο(動物)の中でも βοοειδή(牛類、家畜のウシ)に属する細身の草食獣をまとめていう語。近い語として γαζέλα(ガゼル)や γκνου(ヌー)があり、αντιλόπη はそれらより広いくくりで使われることがある。
主な意味は「レイヨウ、アンテロープ」。アジアやアフリカに生息する、細身で足が速く、群れで行動するウシ科の哺乳類を指す。動物学の説明や図鑑的な文脈だけでなく、野生動物の一般的な呼び名としても使われる。
ギリシャ語:βίδρα
読み方:ヴィドゥラ・ヴィードゥラ
ラテン文字:vidra
βίδρα は、カワウソを表すスラヴ系の vidra / vydra に由来する借用語。さらに遡ると、「水の動物」を表す古い印欧語系の語につながり、ギリシャ語の ύδρα(ヒュドラ、水蛇)や英語の otter とも遠いところで語源を共有する。
やや学術的な言い方には ενυδρίδα(カワウソ、より学術的な言い方)もあるが、ふつうの呼び名としては βίδρα が使われる。ギリシャ語圏の文脈では、とくにヨーロッパカワウソ(Lutra lutra)を念頭に置くことが多い。
主な意味はカワウソ。川や湖などの水辺で暮らす水生の食肉目哺乳類を指し、足の指に水かきがあること、保護対象の野生動物として扱われることが特徴として意識されやすい。
ギリシャ語:καμηλοπάρδαλη
読み方:カミロパルダリ・カミロパールダリ
ラテン文字:kamilopardali
καμηλοπάρδαλη は、古代ギリシャ語の複合語 καμηλοπάρδαλις(キリン)にさかのぼり、中世ギリシャ語の καμηλοπάρδαλις(キリン)を経て今の形になった。もとの語は κάμηλος(ラクダ)と πάρδαλις(ヒョウ、雌ヒョウ)を組み合わせたもので、長い首はラクダ、褐色の斑点模様はヒョウを思わせるという見立てから生まれた名である。現代ギリシャ語でも、その発想がほぼそのまま語形に残っている。
学名 Giraffa camelopardalis の camelopardalis も、この古い呼び名を引き継いだもの。
大きな分類では ζώο(動物)の一種で、反芻動物として理解される。自然につながる関連語としては、λεοπάρδαλη(ヒョウ)、οκάπι(オカピ)、σαβάνα(サバンナ)が挙がる。
主な意味は「キリン」。アフリカに生息する反芻動物で、非常に長い首と脚、短い角、黄褐色の地に褐色の斑点がある体表が特徴になる。
ギリシャ語:χήνα
読み方:ヒナ・ヒーナ
ラテン文字:china
古代ギリシャ語 χήν(ガチョウ, ガン)から。語尾に -α が加わって女性名詞の形になった。
派生に χηνάκι(子ガチョウ), χηνούλα(小さなガチョウ), χηνόπουλο(雛), χήνος(雄のガチョウ), χηνίσιος(ガチョウの)。合成語に αγριόχηνα(マガン, 野生のガン), χηνοβοσκός(ガチョウ飼い), χηνοτροφείο(ガチョウの飼育場), χηνοτροφία(ガチョウの飼育業)。
χήν は印欧祖語で「ガチョウ」を表す語根にさかのぼり, 英語 goose, ドイツ語 Gans, ラテン語 anser も同じ語族。
ギリシャ語:σαρδέλα
読み方:サルデラ・サルデーラ
ラテン文字:sardela
中世ギリシャ語 σαρδέλα を継承した語。イタリア語 sardella(sarda の指小形), フランス語 sardine と同じ流れで、ラテン語 sardus(サルデーニャの、サルデーニャの魚)に行き着く。英語 sardine もフランス語 sardine 経由の同源語。
指小形に σαρδελίτσα。近い小魚に γαύρος(アンチョビ), αντσούγια(塩蔵アンチョビ), παπαλίνα。軍の俗語では制服の階級章や線飾りを指し、σιρίτι(縁テープ)や γαλόνι(ガロン)と同じ文脈に出る。
ギリシャ語:εκκλησία
読み方:エクリシア・エクリシーア
ラテン文字:ekklisia
古代ギリシャ語の ἐκκλησία(民会、市民の集会)からの学術借用。ἐκ-(外へ)+ καλέω(呼ぶ)から作られた ἔκκλητος(呼び出された)に -ία を加えた形で、直訳は「呼び集められたもの」。古代アテネなどでは民主政の中核をなす市民の公的集会を指した。新約聖書の時代にキリスト教徒の共同体を表す語として取り入れられ(マタイ伝 16:18 が有名)、のちに建物としての教会、教会組織全体までを指すようになった。
派生語に εκκλησιαστικός(教会の)、εκκλησιαστής(伝道者、旧約「コヘレト」Ἐκκλησιαστής の称号)、口語形 εκκλησιά など。類義語に θρησκεία(宗教)、ιερό(聖域、神殿)。
ラテン語 ecclēsia を経由してロマンス諸語の「教会」として広く残る:フランス語 église、スペイン語 iglesia、イタリア語 chiesa、ポルトガル語 igreja。英語の church は別系統(古代ギリシャ語 κυριακόν「主の家」由来)だが、ecclesiastical(教会の)、ecclesiastic(聖職者)、ecclesiology(教会論)、旧約書名 Ecclesiastes(コヘレトの言葉)は同じ ἐκκλησία をもとにした学術語。
ギリシャ語:φωτογραφία
読み方:フォトグラフィア・フォトグラフィーア
ラテン文字:fotografia
φωτογραφία は、近代にフランス語 photographie と英語 photograph / photography を受けて現代ギリシャ語に定着した語である。語の組み立て自体は φως(光)に連なる φωτο-(光)と -γραφία(記すこと、描き出すこと)によってできており、西欧語で広まった形がギリシャ語にも戻ってきた。
είδωλο(像、偶像、神像)も「像」を表すが、こちらは光学的な像や偶像まで広く言える語である。φωτογραφία は、人や物や場所をカメラなどで記録した写真を指す点が中心になる。
主な意味は「写真」。人物、物体、場所などをカメラで撮って残した一枚や、その写真データ、写真作品を指す。まれに、そうした像を写し取る方法や技術、あるいは写真という表現分野そのものも表す。
ギリシャ語:βάση
読み方:ヴァシ・ヴァーシ
ラテン文字:vasi
βάση は古代ギリシャ語の βάσις(足取り、立つ位置、台座、土台)に由来する。さらにさかのぼると、βαίνω(歩く、踏む、進む)という動詞につながっており、もともとの核には「足を置く場所」「立つための位置」という感覚がある。
そこから現代ギリシャ語では、物が立つための台座や底部、議論や制度を支える基礎、軍事や仕事の拠点、成分のベース、化学の塩基まで広く表すようになった。英語の basis は同じ古代ギリシャ語 βάσις に由来する学術語で、base も近い系統の語として並ぶ。
抽象的な用法では、θεωρία(理論)や λογική(論理、考え方)を支える根拠として βάση が現れやすい。具体的な用法では、幾何の τρίγωνο(三角形)の底辺や、円錐・ピラミッドの底面を言うときにも使う。
中心にあるのは「何かがその上に成り立つ土台」という感覚である。物理的な台座や底部にも、抽象的な基礎や根拠にも使え、さらに基地、本拠地、支持基盤、主成分、下地、塩基などへ広がる。複数形 βάσεις(合格ライン、基礎)は、入試の合格ラインや「基礎がある」という意味でもよく使われる。
固定表現では、「〜に基づいて」「基本的には」「〜ベースで」「重視する、気にかける」といった意味を作る言い回しが多い。
ギリシャ語:μπάλα
読み方:バラ・バーラ
ラテン文字:bala
μπάλα は中世ギリシャ語の μπάλα(ボール)にさかのぼる語で、英語の ball やフランス語の balle と並ぶ同系の語として扱われる。古い綴りには μπάλλα(古い綴り)もある。
スポーツの文脈では、μπάλα は物としてのボールだけでなく、競技としてのサッカーそのものを指すこともある。比喩的な言い方では、στρογγυλή(丸い) θεά(女神)という表現でサッカーやサッカーボールを言うこともある。
中心にあるのは、遊びやスポーツで使う球体のボールという意味。そこから、ボールを使う競技としてのサッカー、丸めた生地やアイス、飾り玉のような球状のものへ意味が広がる。古い用法では、囚人につける鎖付きの鉄球や、大砲の砲弾も指した。
ギリシャ語:καρέκλα
読み方:カレクラ・カレークラ
ラテン文字:karekla
古代ギリシャ語の καθέδρα(座席、椅子)にさかのぼる語で、後期ラテン語やヴェネツィア語系の形を経たのち、中世ギリシャ語の καρέκλα(椅子)に現れ、現代ギリシャ語に定着したと考えられている。古いギリシャ語由来の語が外来形を経て戻った、再借用の例として扱われることもある。
制度的でやや改まった「席」「議席」には έδρα(本部、議席、本拠地、座席、面)が近く、もっと広く「位置、ポスト」を言うなら θέση(位置、場所、座席、姿勢、順位、地位、職、枠、状況、立場、役割)が使いやすい。これに対して καρέκλα は実際の椅子を表す日常語から出発しつつ、比喩では「その椅子にしがみつく」ような語感を帯びやすい。
家具として並べるなら、τραπέζι(テーブル)は食卓や机の側を指し、καρέκλα はそこに合わせる一人用の椅子を指す。もっとゆったりした肘掛け椅子なら πολυθρόνα(アームチェア、肘掛け椅子)、背もたれのない簡単な腰掛けなら σκαμπό(スツール、腰掛け)を使うことが多い。
主な意味は、背もたれのある一人用の椅子。そこから、車いすや診察用の椅子のような専用の座席も指す。比喩では、組織や政治の中で人が占める役職や権力の座も表し、競争や失脚の話でよく目立つ。
指小語の καρεκλάκι(小さな椅子、子ども用の椅子)と καρεκλίτσα(小さな椅子)は、家具としての小ぶりな椅子をやわらかく言う形。固定表現では η πολιτική της άδειας καρέκλας(空席戦術、不参加で妨害するやり方)や μουσικές καρέκλες(椅子取りゲーム)のように、席の不在や奪い合いを表す言い方にも現れる。
ギリシャ語:κουζίνα
読み方:クジナ・クジーナ・クズィナ・クズィーナ
ラテン文字:kouzina
κουζίνα は、意味ごとに別の借用経路が重なってできた語。家の中の「台所、キッチン」という意味はヴェネツィア語の cusina から入り、オーブンつきの「コンロ」という意味はフランス語の cuisinière から、国や地域の「料理、料理法」という意味はフランス語の cuisine から入った。現代ギリシャ語では、それらがひとつの形にまとまり、調理する場所、器具、料理の伝統をまとめて表せるようになっている。
器具の意味で近いのは φούρνος(オーブン、かまど、パン屋、工業炉)だが、φούρνος が焼くための炉やオーブンを中心に指すのに対し、κουζίνα は上部に火口があり下にオーブンが付いた一体型の調理器具を指しやすい。台所まわりでは μαχαίρι(ナイフ、包丁、メス、刃)のような語と結びついて μαχαίρι της κουζίνας(台所の包丁)と言い、器具の部位では μάτι(目、視線、穴、邪視)を使って μάτι της κουζίνας(コンロの火口)とも言う。料理の意味では φαγητό(食べ物、料理、食事)が皿の上の食べ物そのものを指しやすいのに対し、κουζίνα は料理様式や店・地域の持ち味を言う。業務用の調理場には μαγειρείο(調理場、まかない場)が近く、食文化全体をやや堅めに言うなら γαστρονομία(ガストロノミー、美食文化)のほうが向いている。
κουζινάκι(小さな台所、ミニキッチン)は小さな台所やミニキッチンを指す。κουζινέτο(小型コンロ、簡易調理台)は第2義の延長で、小型の調理台や簡易コンロを言うときに使いやすい。κουζινούλα(小さな台所、小さなコンロ)と κουζινίτσα(小さな台所、小さなコンロ)は、台所やコンロを小さくかわいらしく言う形で、どちらも第1義と第2義にかかる。
主な意味は、家や店の中で料理をする場所としての台所、火口とオーブンを備えた調理器具としてのコンロ、そして国・地域・店ごとの料理や料理法。ひとつの語で空間、器具、食のスタイルまでをまとめて言える。
ギリシャ語:φούστα
読み方:フスタ・フースタ
ラテン文字:fousta
φούστα はイタリア語 fusta から入った借用語。現代ギリシャ語では、女性が腰から下に身につけるスカートを指す基本語として定着している。
衣類全般をいう ρούχο(布製品、服、衣類)より意味が狭く、φόρεμα(ドレス、ワンピース、着用)は上下一体の服を指すのに対して、φούστα は腰から下だけを覆う。
指小語 φουστάκι(小さなスカート、子ども用のスカート)と φουστίτσα(小さなスカート、かわいらしいスカート)も使われる。
主な意味は「スカート」。丈、広がり、素材、ひだ、ポケット、裾の形などを添えて細かく言い分ける。舞台衣装としてバレリーナのスカートを指したり、スコットランドのキルトをいうのにも使う。
成句では、母親のそばから離れられず、後ろに隠れるような子どもや人を表す言い方にも現れる。
ギリシャ語:μπίρα
読み方:ビラ・ビーラ
ラテン文字:bira
イタリア語の birra に由来する外来語。穀類を発酵させて作る酒を指す語として定着し、現代ギリシャ語では日常的な「ビール」の呼び名になっている。
本来の綴りは μπίρα とされるが、現代では μπύρα(ビール)という綴りも広く使われる。発音と意味は同じで、表記の違いとして扱われる。
酒類全般は ποτό(飲み物、酒)と言い、κρασί(ワイン)はワインを指す。μπίρα はその中でもビールを表す語で、同義語として ζύθος(ビール)もある。
主な意味は、麦芽を中心とする穀類を発酵させ、ホップと水を加えて作るアルコール飲料としての「ビール」。そこから換喩的に、瓶や缶に入った一本分、一缶分のビールも指す。ノンアルコールのものにも使われる。
指小語には μπιρίτσα(ちょっとしたビール)があり、まれに μπιρούλα(ちょっとしたビール)という形も使われる。
ギリシャ語:μνήμη
読み方:ムニミ・ムニーミ
ラテン文字:mnimi
古代ギリシャ語の動詞 μνάομαι(思い出す、心に留める)から派生した μνήμη(記憶、追憶)に由来。英語 amnesia(記憶喪失)も同じ語源。
ギリシャ語:αμφιβολία
読み方:アムフィヴォリア・アムフィヴォリーア
ラテン文字:amfivolia
古代ギリシャ語の ἀμφιβολία(両義性、疑い)に由来。ἀμφίβολος(どちらとも取れる、疑わしい)に -ία を付けた名詞で、さらに ἀμφί(両側に)と βάλλω(投げる)にさかのぼる。動詞は αμφιβάλλω(疑う)、対義語は αναμφίβολος(疑う余地のない)。
英語 amphiboly(文法上の曖昧さ)の語源にもなった。
ギリシャ語:ερώτηση
読み方:エロティシ・エローティシ
ラテン文字:erotisi
古代ギリシャ語の ἐρώτησις(問い、質問)から。動詞 ἐρωτάω(尋ねる、問う)の名詞形で、古代から「問うこと」を表す基本語として使われていた。似た綴りの ἔρως(愛)や英語 erotic は別の語根から。
派生語に ερώτημα(質問、疑問。より抽象的な問い)、ερωτηματικός(疑問の)、ερωτηματολόγιο(アンケート、質問票)、ερωτώ(尋ねる)、διερωτώμαι(自問する)など。関連語に απορία(当惑、疑問)、απορώ(不思議に思う)など。
ギリシャ語:περηφάνια
読み方:ペリファニャ・ペリファーニャ
ラテン文字:perifania
περηφάνια は、古代ギリシャ語の ὑπερηφανία(高慢さ、誇り)に由来する。これは ὑπερήφανος(高慢な、誇り高い)からできた抽象名詞で、語の土台には ὑπέρ(上に、越えて)と φαίνω(現れる、見える、輝く)につながる要素がある。もともとの芯には「人より上に見える」「高く出る」という感覚があり、そこから高慢さと誇りの両方を言える語になった。現代ギリシャ語では、語頭が落ちた日常的な形として περηφάνια が定着している。
χαρά(喜び)が広くうれしさそのものを言うのに対し、περηφάνια は自分自身、家族、国、達成と結びついた誇らしさを表しやすい。ντροπή(羞恥心、恥)が自分を縮ませる感情だとすれば、περηφάνια は自分を立たせる側の感情で、そこから尊厳にも高慢にも傾きうる。
別綴りに περηφάνεια(旧綴り)と υπερηφάνεια(文語形)がある。意味の中心は同じで、日常語では περηφάνια が最もふつう。
主な意味は、自分や自分の側にあるものを誇らしく思う気持ち。そこから、失いたくない尊厳や自尊心も指し、さらに悪い意味では思い上がりや高慢にもなる。人や成果を「誇り」と呼ぶ言い方にも広がる。
ギリシャ語:διασκέδαση
読み方:ディアスケダシ・ディアスケーダシ
ラテン文字:diaskedasi
διασκεδάζω(楽しむ、気を晴らす)は、さらにさかのぼると古代ギリシャ語の διασκεδάννυμι(散らす)系の語に連なる。もともとは、物を散らすことや、気がかりを吹き払うことに近い語だった。名詞の系統には中世ギリシャ語の διασκέδασις(散逸、気晴らし)があり、現代ギリシャ語の διασκέδαση はこの流れを引き継ぐ。
今の「娯楽、楽しみ」の語義は、フランス語 dissipation や divertissement の意味的な影響を受けながら整った。もとの「気を散らす、気が晴れる」という感覚から、楽しい時間を過ごすこと、そのための娯楽を言う語になっている。
αναψυχή(気晴らし、レクリエーション)は、休みながら心身を立て直す感じが強い。ψυχαγωγία(娯楽、楽しみ)は、人を楽しませる活動や娯楽一般を言いやすい。
κέφι(上機嫌、陽気な気分、意欲)は内側から湧くノリや勢いを指しやすく、ευχαρίστηση(楽しみ、満足感)は快さや満足そのものに寄る。παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)は個々の遊びやゲームを言いやすい。διασκέδαση は、それらより広く、楽しんで過ごすことや、そのための娯楽をまとめて言える。
主な意味は、楽しい時間を過ごすこと、またそのための娯楽や気晴らし。夜遊び、案内、施設、好きな楽しみのように、楽しみ方やその手段まで含めて言える。まれに文語寄りでは、不安や印象が散って薄れることも表す。
定番の言い方に、για διασκέδαση(楽しみのために)、είναι διασκέδαση για μένα(私には楽しくて朝飯前だ)、καλή διασκέδαση(楽しんでね、よい時間を)! がある。
ギリシャ語:γιορτή
読み方:ヨルティ・ヨルティー
ラテン文字:giorti
古代ギリシャ語の ἑορτή(祭り、祝日)に由来する。中世ギリシャ語の段階で eo の連続が jo に寄る音変化を起こし、現代ギリシャ語では γιορτή(祭り、祝日)になった。文語では古い形を保った εορτή(祝日、祝祭)も並行して使われる。
複数形の οι γιορτές(祝祭期、ホリデーシーズン)は、クリスマスから新年にかけての祝祭期をまとめて言うときの定番表現。διακοπές(休暇、バカンス)は学校や仕事の休み、旅行や休暇そのものを言いやすく、γιορτή のような祝祭性は前面に出ない。
感情そのものとしての「喜び」は χαρά(喜び)が自然で、γιορτή は人が集まって祝う場、そのための日、その場に漂うお祭りらしさを表しやすい。
公開の催しとしての祭りや式典、記念日、教会暦の祝日や名の日を広く表す語。複数形では年末年始の祝祭期を指すことが多い。比喩的には、華やかさや喜びに満ちた状態も言える。
ギリシャ語:μέλισσα
読み方:メリサ・メーリサ
ラテン文字:melissa
ギリシャ語:χλόη
読み方:フロイ・フローイ
ラテン文字:chloi
古代ギリシャ語の χλόη(若い緑の芽、若草)を継承。古代ギリシャではデメテルの称号(Χλόη「若草のデメテル」)にも用いられた。印欧祖語の「緑、黄、生える」を表す根に由来し、近縁の χλωρός(青々とした、未熟な、生の)、χλοερός(青々と茂った)などと同系。
関連語に χορτάρι(草、牧草、芝生)、πόα(禾本科の草)、χλωρίδα(植物相)など。
英語の女性人名 Chloe(クロエ)は χλόη からそのまま入った語。化学・生物の chlorophyll(葉緑素)、chlorine(塩素)、chloride(塩化物)、chloroform(クロロホルム)は近縁の χλωρός をもとにした学術語で、いずれも「緑がかった、淡い黄緑」の色合いを核にしている。
ギリシャ語:σκόνη
読み方:スコニ・スコーニ
ラテン文字:skoni
古代ギリシャ語の κόνις(塵、粉)に由来し、中世ギリシャ語の σκόνη(埃、塵)を経て現在の形になった。細かな粒が舞い、積もるという核になるイメージは古くからほぼ変わっていない。
σκόνη は、空気中を舞ったり物の表面に積もったりする細かな粒子を言う語。χώμα(土、土壌、地面、土地)は地面や土壌そのものを指しやすく、乾いて細かく舞うときにだけ σκόνη に近づく。καπνός(煙、タバコ)とは καπνός και σκόνη(煙と塵)のように並びやすく、視界を曇らせたり息苦しさをもたらしたりする粒子状のものとして重なる。より強く舞い上がる粉塵や砂煙には κονιορτός(粉塵雲、砂煙)もある。
複合表現では αστρική / κοσμική / διαστημική σκόνη(宇宙塵)のように、宇宙空間を漂う微粒子にも使う。
最も基本の意味は「埃、塵」。そこから、食品、香辛料、薬、洗剤、消火剤のように粉状にしたもの全般も指す。
成句では、舞い上がった塵が視界を遮り、やがて収まって全体が見えるというイメージがよく使われる。κατακάθισε η σκόνη(塵が収まる)は「ひと騒動が収まる」、σηκώνω σκόνη(塵を巻き上げる)は文字どおり土ぼこりを立てるほか、比喩では意図的に騒ぎを起こすことも表す。
ギリシャ語:λάμψη
読み方:ラムプシ・ラームプシ
ラテン文字:lampsi
中世ギリシャ語の λάμψις(輝き、光の放射)を受け継ぐ語。現代ギリシャ語でもまず、光が放たれたり反射したりして見える輝きや閃光を表す。
近代にはフランス語の éclat や lueur と重なる意味領域でも使われ、物理的な光だけでなく、色の冴えや華やかさをいう語としても定着している。
φως(光)が光そのものや明かりを指すのに対し、λάμψη はその光が見せるきらめき、反射、ひらめきを指す。星や太陽、宝石のようなものが放つ輝きにも、一瞬だけ走る光にも使える。
対照的な側には σκοτάδι(暗闇)がある。暗い空間の中で見える閃光や、空に走る光の筋をいうときにも自然に用いられる。
主な意味は、光の輝きや表面のつや。そこから色の鮮やかさ、肌や髪の自然なつやにも広がる。さらに比喩的に、αλήθεια(真実)が明るみに出ること、希望のきらめき、祭りや都市が放つ栄華や華やかさも表す。
ギリシャ語:πισίνα
読み方:ピシナ・ピシーナ
ラテン文字:pisina
πισίνα はイタリア語 piscina から入った借用語。現代ギリシャ語でもほぼ同じ形のまま、水泳や飛び込みのための人工の水槽を指す語として使われている。
基本の意味は、水泳や飛び込みができるように造られた人工のプール。ホテルや別荘に付いた私用のものから、子ども用、屋内外のもの、競技用の大きなものまで広く言える。そこから、容器そのものではなく中に張られた水をまとめて指すこともある。
泳ぐ、水浴びするという日常表現では μπάνιο(風呂、入浴、水浴び、水泳)の文脈に入りやすく、κάνω μπάνιο στην πισίνα(プールで泳ぐ)と言う。また、プールに入っている νερό(水)をまとめて指して πισίνα と言うこともある。
指小語の πισινούλα(小さなプール)は、小さめのプールやかわいらしいプールをやわらかく言う形。
ギリシャ語:πηγή
読み方:ピイ・ピイー・ピギ・ピギー
ラテン文字:pigi
古代ギリシャ語の πηγή(泉, 湧き出る場所)に由来。現代の「光源」「情報源」「史料」などの用法はフランス語 source からの意味借用で整った。解剖学の「泉門」はフランス語 fontanelle に対応する用法。
派生に πηγαίος(もとからの, 自然に湧き出る), πηγάδι(井戸), πηγούλα(小さな泉)。合成に θερμοπηγή(温泉), θειοπηγή(硫黄泉), πετρελαιοπηγή(油井)。学術の文脈では複数形 πηγές が βιβλιογραφία(参考文献)と近い。
ギリシャ語:αστραπή
読み方:アストゥラピ・アストゥラピー
ラテン文字:astrapi
ギリシャ語:λάβα
読み方:ラヴァ・ラーヴァ
ラテン文字:lava
イタリア語 lava から入った借用語。現代ギリシャ語では、火山の噴火で火口から外へ流れ出る溶けた岩石を指す語として使われる。
火山の文脈では、έκρηξη(爆発、激発、急増)が噴火や爆発そのもの、στάχτη(灰、灰燼)が火山灰を指し、λάβα は噴出して流れ出た溶融岩そのものを指す。
流れのまとまりを強調するときは、ποταμός(河川、大量に流れるもの、非常に長いもの)の複数形を使って「溶岩の河」といった言い方をすることもある。
主な意味は溶岩。地質学では火山から噴出した高温の溶融岩を指し、文学的な比喩では、έρωτας(恋愛、恋人、セックス)や πάθος(情熱、激情)が抑えきれずあふれ出る勢いにも重ねられる。
ギリシャ語:διακοπή
読み方:ディアコピ・ディアコピー
ラテン文字:diakopi
διακοπή は διακόπτω(中断する、断ち切る)からできた名詞で、中断や停止の語義はヘレニズム期の διακοπή を文語的に受け継ぐ。古くは「裂け目、断裂」を表す感覚もあり、そこから、物事の流れや進行が途中で切れて止まる「中断、途絶」の意味に広がった。
複数形の διακοπές(休暇、休み)が「休暇」を表す意味は、フランス語 vacances の複数形にならった意味借用による。現代ギリシャ語では、単数形が中断や供給停止を言いやすく、複数形が休みやバカンスを言いやすい。
単数形の διακοπή は、εργασία(労働、仕事、作業、論文)や授業、交通、水や電気の供給が止まることを表すのに向く。複数形の διακοπές は、学校や議会などの制度的な休み、あるいは人が家を離れて過ごす休暇を表す。
似た場面で使う ταξίδι(旅、旅行、旅立ち、トリップ)が移動そのものを言いやすいのに対し、διακοπές は休む期間やその過ごし方に重心がある。άδεια(許可、休暇)は職場や制度の側から見た「休み」に寄り、有給休暇や病気休暇のように、与えられた休暇を言うときに自然。αργία(休日、休業日)は祝日や定休日のように、その日が休みであることを表しやすい。
αναψυχή(気晴らし、レクリエーション)は心身を休めるためのくつろぎやレジャーを表し、διακοπές の中身に近い。ψυχαγωγία(娯楽、楽しみ)は楽しませる活動や娯楽全般に寄り、休暇そのものを指す語ではない。ανάπαυση(休息)は休む行為や休養の状態に焦点があり、ελεύθερος χρόνος(自由時間、余暇)は働きや義務から離れた時間そのものを言う。
主な意味は、何かが途中で止まること。そこから、断水や停電のような供給停止、話の流れをさえぎること、さらに複数形で学校や議会の休み、人が楽しみや休養のために出かける休暇まで表す。
休暇の語義では、πάω για διακοπές(休暇に行く)、είμαι σε διακοπές(休暇中だ)、καλές διακοπές(よい休暇を)のような言い方が定番。制度としての休みも同じ複数形で表す。
ギリシャ語:ευχαρίστηση
読み方:エフハリスティシ・エフハリースティシ
ラテン文字:efcharistisi
ευχαρίστηση は中世ギリシャ語の ευχαρίστησις(喜び、満足)にさかのぼる語で、のちにフランス語 plaisir(喜び、楽しみ)の意味的な影響も受けながら、現代ギリシャ語では ευχαρίστηση の形に整った。「欲求や望みが満たされたときに生まれる喜びや満足感」を表す語として定着している。
日常会話でよく知られる ευχαριστώ(感謝する、ありがとうと言う)も同じ語族に属する語で、挨拶の「ありがとう」としての ευχαριστώ は、もともと動詞 ευχαριστώ の一人称単数がそのまま使われている形。
χαρά(喜び) が喜びそのものの高まりを言いやすいのに対し、ευχαρίστηση はもっと落ち着いた快さや満ち足りた感じに寄る。ευτυχία(幸福、幸せ) はさらに広く、持続的な幸せや幸福を指しやすい。
近い語には αγαλλίαση(歓喜)、απόλαυση(享受、楽しみ)、ευαρέσκεια(満足)、ευφροσύνη(晴れやかな喜び)、ικανοποίηση(満足)、τέρψη(楽しみ)があり、反対側には δυσαρέσκεια(不満、不快)がある。
中心にあるのは、何かが自分の望みや必要にかなったときの喜び、楽しみ、満足感。その感情そのものだけでなく、何かが楽しみになることや、丁寧なやり取りで「喜んで」「光栄です」に当たる言い方にも使われる。
ギリシャ語:θλίψη
読み方:スリプシ・スリープシ・トゥリプシ・トゥリープシ
ラテン文字:thlipsi
古代ギリシャ語の θλῖψις(圧迫、圧縮)から。古代ギリシャ語の名詞形が中世ギリシャ語から現代ギリシャ語へ受け継がれる過程で、現在の形になった。
この語からは二つの流れが出ている。ひとつは中世ギリシャ語を経て、動詞 θλίβω(圧迫する、心を痛める)に引かれる形で、「心が押しつぶされるような悲しみ」や「憂鬱さ」を表す日常語になった流れ。もうひとつは、もとの機械的な意味を保ったまま、技術語として「圧縮」を表す流れ。
主な意味は、つらい出来事に向き合ったときの深い悲しみ、長く重く沈む憂鬱さ、そして口語での「見ていて気が滅入るもの」。複数形では、人生の中で悲しみをもたらす出来事そのものを指すこともある。技術文脈では別の流れとして、物体を押し縮める圧縮を表す。
近い語には καημός(深い悲しみ、心痛、渇望)や δυστυχία(不幸、悲惨、災難)がある。καημός は胸を焼くような個人的な痛みや切なる願いに寄り、δυστυχία は不幸な状態や災難まで広く含む。それに対して θλίψη は、出来事に対する悲しみや、重く沈んだ気分そのものを表しやすい。
対義語は χαρά(喜び)。技術の意味では、引っ張る力を表す εφελκυσμός(引張)と対になる。
ギリシャ語:δημιουργία
読み方:ディミウルイア・ディミウルイーア・ディミウルギア・ディミウルギーア
ラテン文字:dimiourgia
δῆμος(人民)と ἔργον(仕事)が結びついた古代ギリシャ語の δήμια ἔργα(公共の仕事)にさかのぼる名詞 δημιουργός(職人, 創造者)から動詞 δημιουργώ(創造する)が派生し, その名詞形 δημιουργία を継承。表面的には δημιουργός は δήμιος(公の)と -ουργός(働く者, ἔργον「仕事」から派生した後接辞)の合成にあたる。
古代ギリシャ語の δημιουργός は、まず「職人、手工業者、技芸をもつ者」を指す語だった。ペロポネソス諸邦では「行政官、為政者」を表す用法もあった。さらに哲学の文脈では、プラトン『ティマイオス』で「世界の制作者(デミウルゴス)」として語られ、宇宙を形づくる存在を意味するようになった。このプラトン的な用法がヘレニズム期以降の神学に受け継がれ、キリスト教文化圏での「天地創造」「被造世界」の意味にもつながっている。
派生語に δημιουργός(創造者)、δημιουργώ(創造する)、δημιουργικός(創造的な)、δημιουργικότητα(創造性)、δημιούργημα(創作物)、αναδημιουργία(再創造)など。
ギリシャ語:υγεία
読み方:イイア・イイーア・イギア・イギーア
ラテン文字:ygeia
古代ギリシャ語の ὑγίεια(健康)が, ヘレニズム期に縮まった ὑγεία の形で現代ギリシャ語に入った学術借用。古典形 ὑγίεια は長く文語形として残ったが, 今は短い ὑγεία の形で日常にも公的な場にも現れる。動詞 ὑγιαίνω(健康である)と同じ語根から作られ, 形容詞 ὑγιής(健康な)と対をなす名詞。
同じ語根から出た兄弟語に動詞 υγιαίνω(健康である), 形容詞 υγιής(健康な, 健全な), 形容詞 υγιεινός(健康によい, 衛生的な), 名詞 υγιεινή(衛生学, 衛生)。υγεία を元にした合成語には υγειονομείο(衛生検査所), υγειονομικός(衛生の), υγειονόμος(衛生官), υγειολογία(健康学)が並ぶ。口語では短縮形 υγειά が並行して使われ, さらに縮めた γεια が挨拶の γεια σου / γεια σας(やあ, さようなら)に入っている。
対になる語は「病気」を表す ασθένεια(疾病)と αρρώστια(病気)。英語 hygiene, フランス語 hygiène, ドイツ語 Hygiene はどれも形容詞 ὑγιεινός(健康によい)から経由した語族。公的な場では Παγκόσμια Οργάνωση Υγείας(世界保健機関, WHO)や Εθνικό Σύστημα Υγείας(国民保健制度)のように制度名にそのまま入る。乾杯の Εις υγείαν や, 誕生日・祝日の Και του χρόνου με υγεία(来年も元気でこの日を迎えられますように)のような決まり文句もこの語を中心にしている。
ギリシャ語:στεναχώρια
読み方:ステナホリア・ステナホーリア
ラテン文字:stenachoria
στενοχώρια(悲しみ、心痛、悩みごと)の別綴り。στενάχωρος(窮屈な、気が重い)の影響でこの形も広く使われる。
悪い出来事や不快なことによる悲しみや心痛を指し、主に複数形では悩みごとやつらい出来事も表す。
ギリシャ語:στενοχώρια
読み方:ステノホリア・ステノホーリア
ラテン文字:stenochoria
ヘレニズム期の στενοχωρία(狭い場所、窮屈さ)に由来する。もとは「狭い場所」を表した語で、そこから身動きがとれないような圧迫感を比喩的に表すようになり、現代では悪い出来事や不快なことのために心が締めつけられるような悲しみや気詰まりを指す語になった。現代では στενοχώρια の綴りが基本だが、στενάχωρος(窮屈な、気が重い)の影響で στεναχώρια(別綴り)という形も使われる。
λύπη(悲しみ)や θλίψη(悲哀)に近い語だが、στενοχώρια は何か悪いことや気がかりのために心がふさぐ感じを言いやすい。反対側の感情には χαρά(喜び)がある。
主な意味は、悪い出来事や不快なことから生じる「悲しみ、心痛」。また、主に複数形で、人を悩ませる具体的な「悩みごと、つらい出来事」も指す。
ギリシャ語:συγκίνηση
読み方:シギニシ・シギーニシ・シンギニシ・シンギーニシ
ラテン文字:sygkinisi
古代ギリシャ語の συγκίνησις(動揺、かき乱し)から。現代ギリシャ語では名詞語尾が -ση(名詞語尾)の形に整えられている。
もともとの核は、心や状態が揺り動かされることにある。現代で「感動」や「感情の高ぶり」を広く表すようになったのは、フランス語 émotion の意味範囲の影響を受けたため。
素直な喜びを表す χαρά(喜び)よりも、συγκίνηση は何かに心を揺さぶられて胸が詰まる感じに寄る。έκπληξη(驚き)が不意を突かれた驚きを表しやすいのに対し、συγκίνηση は嬉しさでも悲しさでも起こりうる感情の高まりを言える。涙との結びつきも強く、δάκρυ(涙)が自然に連想される。
中心にあるのは、心が強く動かされること。美しいものや悲しい出来事に触れて深く胸を打たれる場合にも、刺激の強い体験で感情が高ぶる場合にも使える。単数では「感動」「感情の揺れ」、複数では「いろいろな感動体験」や「スリル」のようにも言う。
ギリシャ語:εργασία
読み方:エルガシア・エルガシーア
ラテン文字:ergasia
古代ギリシャ語の ἐργασία(労働、仕事、商売、作品など)に由来。古代の基本語 ἔργον(仕事、作品)から動詞 εργάζομαι(働く)が派生し、その名詞形としてできた語。ἔργον は英語 work と同じ語源。ενέργεια(エネルギー)も ἐν-(中に)+ ἔργον からなる語で、同じ語根をもつ。
日常で「仕事」を広く指す δουλειά に対し、εργασία はよりフォーマルで、雇用、労働市場、契約など制度的な文脈で使われる。
派生語に εργάτης(労働者)、εργαλείο(道具)、έργο(仕事、作品)、εργασιακός(労働の、雇用の)など。合成名詞も多く、συνεργασία(協力)、επεξεργασία(処理、加工)、διεργασία(過程)、τηλεργασία(テレワーク)など。
ギリシャ語:αλλαγή
読み方:アライ・アライー・アラギ・アラギー
ラテン文字:allagi
形容詞 ἄλλος(別の)をもとにした動詞 ἀλλάσσω(変える, 交換する, 現代 αλλάζω)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ἀλλαγή(変化, 交換)を継承。類義語は μεταβολή。合成語に ανταλλαγή(交換), εναλλαγή(交替), παραλλαγή(変異), συναλλαγή(取引)など。
ἄλλος は英語 else と同じ語源で、学術用語の接頭辞 allo-(他の、異なる)もここから。allophone(異音)、allograft(他家移植)など。
ギリシャ語:γέννηση
読み方:イェニシ・イェーニシ・ゲニシ・ゲーニシ
ラテン文字:gennisi
動詞 γεννώ / γεννάω(産む, 生む)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γέννησις(誕生, 出生)を経て, 中世ギリシャ語の γέννηση を継承。古代 -σις が -ση に変わった形が中世から定着した。
派生に γεννητικός(生殖の), γεννητούρια(出産祝い), γεννησιά(誕生の時, 生まれ)。同じ語族に γέννα(出産), γεννήτορες(両親), γενέθλια(誕生日), γενιά(世代, 一族), γένος(種族, 性)。
誕生日を指すときは γενέθλια を使う。
ギリシャ語:διαφορά
読み方:ディアフォラ・ディアフォラー
ラテン文字:diafora
古代ギリシャ語の διαφορά(違い、隔たり)を継承。「引き算の差」「差額」の用法にはフランス語 différence の意味借用が含まれる。
主な意味は「違い、差異」。人や物の性質、価格、年齢、時刻、意見などの隔たりを表し、そこから「はっきり良くなった違い」「引き算の差や差額」「意見や利害の不一致による争い」にも広がる。
近い語としては ομοιότητα(類似、共通性)があり、これは二つのもののあいだに見られる「似ている点」に目を向ける語。数量や条件がぴたりと等しいことを言うなら ισότητα(等しさ、平等)のほうが近く、διαφορά はそこから外れた「開き」や「ずれ」を表す。争いの意味では συμφωνία(合意、一致)が対立しやすく、立場の食い違いが解消された状態をいう。より抽象的、哲学的には ταυτότητα(同一性、アイデンティティ)が対立項になりうるが、日常語としての διαφορά にまず対応するのは「似ていること」や「一致していること」を表す語のほうである。
με τη διαφορά ότι(ただし...という条件で/...という違いを除けば)は、条件や留保を添える言い方。κάνει διαφορά(差が出る、違いを生む)は、結果の違いがはっきり表れることをいう。専門語では ειδοποιός διαφορά(種差、特質的差異)や διαφορά δυναμικού(電位差)のような言い方もある。
ギリシャ語:σταγόνα
読み方:スタゴナ・スタゴーナ
ラテン文字:stagona
古代ギリシャ語の σταγών(しずく、滴)が起源。古い語では主格が σταγών だが、対格の σταγόνα に見える形がそのまま現代ギリシャ語の σταγόνα につながっている。
指小語の σταγονίτσα(小さなしずく、小滴)は、小さなしずくやほんの少量、滴剤を言うときに使う形。文語寄りの σταγονίδιο(小滴)は、小さなしずくを指すほか、比喩的には 1974 年の民政移管後にも軍や治安機関に残った 1967 年 4 月 21 日独裁政権の支持者を、影響力の小ささをこめて呼ぶ言い方にもなった。
主な意味は、小さな液体の滴。βροχή(雨)の雨粒、葉の上の露、δάκρυ(涙)や αίμα(血)のしずくのように、液体が丸くまとまって落ちたり残ったりする場面に広く使う。そこから、表面に落ちてできた小さな跡や染みも指す。
しずくは量の小ささを強く感じさせるので、成句でもよく使われる。ωκεανός(大洋)を使った σταγόνα στον ωκεανό(大海の一滴)は、全体に比べてあまりに小さく取るに足らないことを表す。η σταγόνα που ξεχείλισε το ποτήρι(コップをあふれさせた一滴)は、ついに我慢の限界を超えさせた最後の一件を指す。
ギリシャ語:κόρη
読み方:コリ・コーリ
ラテン文字:kori
古代ギリシャ語の κόρη(少女、娘)を継承。古くは κούρη の語形もあり、ミュケナイ時代の線文字 B に ko-wa として記録が残る。印欧祖語で「養う、育てる」を表す語根につながり、同じ語根の動詞 κορέννυμι(満たす、充足させる)が古代ギリシャ語にあった。
瞳孔の意味は、μάτι(目)を覗きこんだときにそこに映る小さな人影を「娘」に見立てた古代の比喩から。近代に入って、西洋考古学で英語 kore、フランス語 korê、ドイツ語 Kore として使われた学術用語の意味借用で、古拙期の女性立像を κόρη と呼ぶ用法も加わった。対になる男性像は κούρος。
ギリシャ語:βιβλιογραφία
読み方:ヴィヴリョグラフィア・ヴィヴリョグラフィーア
ラテン文字:vivliografia
βιβλιογραφία はフランス語 bibliographie の文語借用。前半の βιβλιο-(本を表す接頭辞)と、後半の -γραφία(書くこと、記録すること)からなる。-γραφία は γράφω(書く)と同じ語族にあたり、全体としては英語 bibliography とも同系の語になる。
なお、ヘレニズム期の βιβλιογραφία は「本を書くこと」という意味で、現代ギリシャ語の βιβλιογραφία とは指す内容が異なる。
主な意味は、ある主題について本・雑誌・論文などを体系的に並べた文献一覧、またはその主題についてすでに書かれている文献群そのもの。個々の本ではなく、資料を整理して見渡す視点で使われる語である。
ギリシャ語:κιθάρα
読み方:キサラ・キサーラ・キタラ・キターラ
ラテン文字:kithara
古代ギリシャ語の κιθάρα(竪琴に似た弦楽器)に由来。形はそのままで、現代の「ギター」の意味はイタリア語 chitarra からの意味借用で加わった。
古代の κιθάρα はギリシャ先住の言語から来たとされ、さらに古い起源としてフルリ・ウラルトゥ語の kinnar(竪琴、ハープ)につながるとする説もある。この語形はラテン語 cithara、中世アラビア語 qītāra、イタリア語 chitarra へと渡り、その過程で楽器そのものが今のギターに近い形へと変わっていった。現代ギリシャ語はこの新しい意味だけをイタリア語から取り込み、形は古代のまま残した往復借用の語。英語 guitar もスペイン語 guitarra を経て同じ系統から来ている。
派生語に κιθαρίστας(ギター奏者)、指小形の κιθαρούλα。関連語に μουσική(音楽)、動詞 παίζω(演奏する)。
ギリシャ語:γεύση
読み方:イェフシ・イェーフシ・ゲフシ・ゲーフシ
ラテン文字:gefsi
動詞 γεύομαι(味わう)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γεῦσις(味わうこと, 味覚)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γεύση の形になった。
派生に γευστικός(味覚の, 味のある, おいしい), γευστικότητα(味の良さ)。同じ語族に άγευστος(味のない), αγευσία / αγευστία(味覚消失)。合成語に γευσιγνωσία(鑑味, テイスティング), γευσιγνώστης(鑑味家, テイスター)。
ギリシャ語:γλυκόριζα
読み方:グリコリザ・グリコーリザ
ラテン文字:glykoriza
中世ギリシャ語の γλυκύρριζα(甘い根)に由来する。前半の γλυκό-(甘い)は γλυκός(甘い)とつながり、後半の ρίζα(根)がこの植物の根を指す。現代ギリシャ語では γλυκόριζα と γλυκόρριζα(別綴り)の両方の綴りが使われる。
主な意味はリコリス、甘草。学名は Glycyrrhiza glabra。草本植物そのものを指し、その根はやわらげたり落ち着かせたりする性質があるものとして、主に薬用や菓子づくりに使われる。
ギリシャ語:εβδομάδα
読み方:エヴドマダ・エヴドマーダ
ラテン文字:evdomada
中世ギリシャ語の εβδομάδα(週)がそのまま受け継がれた語。現代ギリシャ語でも基本形は εβδομάδα で、日常会話では語頭を落とした口語形 βδομάδα(週)もよく使われる。属格は通常 εβδομάδας(週の)で、やや文語では εβδομάδος(週の)という形も現れる。
主な意味は「週」。七つの μέρα(日)から成る時間のまとまりを指し、週の始まりは文脈によって日曜始まりにも月曜始まりにもなる。さらに、催し・授業・広報などで区切った「週間」や、休暇・調整などの七日間のまとまりにも使う。
固定した呼び名として、εργάσιμη εβδομάδα(労働週)、εβδομάδα επικοινωνίας / εισαγωγική εβδομάδα(学期冒頭の導入週間)、η Μεγάλη Εβδομάδα / η Εβδομάδα των Αγίων Παθών(聖週間)のような表現がある。
ギリシャ語:νόσος
読み方:ノソス・ノーソス
ラテン文字:nosos
ギリシャ語:ασθένεια
読み方:アスセニア・アスセーニア・アステニア・アステーニア
ラテン文字:astheneia
古代ギリシャ語の ἀσθένεια(弱さ、病気)に由来。ἀσθενής(弱い、病気の)に -εια を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と σθένος(力、強さ)にさかのぼる。もとは「力がないこと」を表す語。σθένος は Δημοσθένης(デモステネス)、Ἐρατοσθένης(エラトステネス)のようなギリシャ人名にも含まれる語根。
類義語に αρρώστια(病気、病)、νόσος(疾病、病)、νόσημα(疾患)、πάθηση(病変)など。
英語 asthenia(無力症)は古代ギリシャ語 ἀσθένεια からそのまま入った医学用語。σθένος を含む英語の医学用語には myasthenia(筋無力症)、neurasthenia(神経衰弱)、psychasthenia(精神衰弱)、asthenosphere(岩流圏)などがあり、いずれも ἀ- + σθένος の組み合わせをもとにしている。
ギリシャ語:φωνή
読み方:フォニ・フォニー
ラテン文字:foni
古代ギリシャ語の φωνή(声、音)を継承。現代の社会的な抗議の声や世論の意味には、フランス語 voix、英語 voice からの意味借用も加わる。
派生語に指小形の φωνούλα, φωνίτσα(小さな声、かわいらしい声)、増大形の φωνάρα(よく通る立派な声)。英語 phone, telephone, symphony, phonetics など、phono-/phone- を使う語はいずれも同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:αρρώστια
読み方:アロスティア・アロースティア
ラテン文字:arrostia
ギリシャ語:τραγουδίστρια
読み方:トゥラグディストゥリア・トゥラグディーストゥリア
ラテン文字:tragoudistria
τραγουδιστής(歌手、歌い手、詩歌でたたえる人)の女性形。
歌を仕事にする女性歌手や、歌う女性を指す。文語的・比喩的には、詩や歌で誰かや何かをたたえる女性についても使える。
ギリシャ語:θεατρολογία
読み方:セアトゥロロギア・セアトゥロロギーア・テアトゥロロギア・テアトゥロロギーア
ラテン文字:theatrologia
θεατρολογία は、θεατρολόγος(演劇研究者、演劇学者)に -λογία(学問分野を表す要素)が加わった形で、学問名として使われる。中心にあるのは θέατρο(演劇、劇場)で、それを研究対象として扱う分野を表す。
-λογία は、学問分野や体系的な研究を表す語を作るときによく使われる形で、英語の -logy に対応する。θεατρολογία も同じ作りの学術語である。
人を表す語には θεατρολόγος(演劇研究者、演劇学者)があり、分野名と対になる。内容の面では θέατρο(演劇、劇場)の研究を中心に、作品、上演、演劇史、舞台表現などを扱う語として使われる。
主な意味は「演劇学」。大学の学科名、研究分野名、肩書きとして使われることが多い。
ギリシャ語:μουσική
読み方:ムシキ・ムシキー
ラテン文字:mousiki
古代ギリシャ語の μουσική(ムーサたちに属する芸術)に由来。ムーサ(Μούσα)は音楽や詩、学芸をつかさどる女神たちで、古代では歌われる詩や学芸を広く含む語だったが、現代ギリシャ語では「音楽」が中心の意味に。英語 music もラテン語 musica を経て同じ語源にさかのぼる。
ギリシャ語:αγελάδα
読み方:アイェラダ・アイェラーダ・アゲラダ・アゲラーダ
ラテン文字:agelada
αγελάδα(雌牛、乳牛)は、中世ギリシャ語の αγελάδα(雌牛)に由来する。現代ギリシャ語ではこの形が標準的で、民間的・口語的な形として γελάδα(雌牛)もある。
牛をまとめて言う総称には βοοειδή(牛類、家畜のウシ)がある。その中で αγελάδα は雌の成獣を指し、去勢された雄は βόδι(去勢牛)、繁殖用の雄は ταύρος(雄牛)、子は μοσχάρι(子牛)と言う。近い語の δαμάλα(若い雌牛)は、まだ若い雌や未成熟な段階を意識するときに使い分けられる。
主な意味は雌牛、乳牛。とくに一度子を産んだあとの雌牛を指し、搾乳、飼育、放牧、肉用・乳用の区別など、畜産や農場の文脈で広く使う。
複合表現では νόσος των τρελών αγελάδων(狂牛病)があり、比喩では ιερή αγελάδα(神聖視されて手を出せないもの)もよく知られている。ことわざや言い回しでは、搾取しやすい相手を見つけたことを言う表現や、παχιές / ισχνές αγελάδες(豊かな時期 / 苦しい時期)のような表現がある。
ギリシャ語:συνείδηση
読み方:シニディシ・シニーディシ
ラテン文字:syneidisi
古代ギリシャ語の συνείδησις(意識、良心)から。近代にはフランス語 conscience(良心、意識)の意味の影響も重なり、現代ギリシャ語では語尾が -ση(抽象名詞を作る現代的な語尾)の形に整えられた語として、古くからの「良心」に加えて「意識」「自覚」「職業的良心」「信条」といった周辺の用法も広く担うようになった。
哲学的な「意識」の意味はヘレニズム期の用法にさかのぼる。一方で、日常的な「自覚」や、社会的な文脈での「歴史意識」「階級意識」のような広がりは、近代以後の意味の押し広げ方を反映している。
主な意味は、心の働きとしての「意識」「自覚」と、道徳的な判断を支える「良心」。そこからさらに、意識のある状態、哲学用語としての意識、仕事への責任感、集団への帰属意識、個人の信条まで幅広く表す。
συνείδηση は固定表現の多い語でもある。たとえば καθαρή συνείδηση(清らかな良心)、κρίση συνειδήσεως(良心の葛藤)、επαγγελματική συνείδηση(職業的良心)、ιστορική συνείδηση(歴史意識)、αντιρρησίας συνείδησης(良心的兵役拒否者、良心的反対者)のように、個人の内面から社会的立場までを一語でまとめて言える。
ギリシャ語:σάρκα
読み方:サルカ・サールカ
ラテン文字:sarka
ギリシャ語:μυρωδιά
読み方:ミロディア・ミロディアー
ラテン文字:myrodia
中世ギリシャ語の μυρωδία(におい、香り)に由来する。現代ギリシャ語では、鼻で感じる「におい」全般を広く指す日常語として使われている。
同じ「香り」でも、άρωμα(香り、風味、香水)は、よい香りや風味、香水を言うときに使いやすい。これに対して μυρωδιά(におい、匂い、香り)は、心地よい香りにも嫌な臭いにも広く使える、ふつうの「におい」の語である。
やや硬めの οσμή(におい、臭気)という語もある。強い悪臭には βρόμα(悪臭、臭み)、δυσοσμία(悪臭)、μπόχα(ひどい臭い)といった言い方が使われる。口語では μυρουδιά(におい、香り)という綴りも見られる。
主な意味は、物や場所から漂うにおい、匂い、香り。よい香りにも嫌な臭いにも使え、複数形 μυρωδιές(さまざまなにおい、香り)では、さまざまなにおいや季節の香りをまとめて言うことも多い。比喩では、その場や季節の気配を表し、口語では「ほんの少し」の意味にも広がる。
ギリシャ語:μυρουδιά
読み方:ミルディア・ミルディアー
ラテン文字:myroudia
μυρωδιά(におい、匂い、香り、少量)の口語的な綴り。
μυρωδιά と同じく、日常的なにおい全般から、比喩的な気配、口語での「ほんの少し」まで幅広く使われる。
ギリシャ語:έλλειψη
読み方:エルリプシ・エールリプシ
ラテン文字:elleipsi
古代ギリシャ語の ἔλλειψις(不足、欠け)から。ἐν-(中に)+ λείπω(残す、欠ける)からなる語で、λείπω は英語 leave と同じ語根から。
英語 ellipse(楕円)、ellipsis(省略)はこの ἔλλειψις から。幾何の意味は古代の数学者アポロニオスが円錐曲線の一つに名づけたもので、文体論の意味も古代の修辞学用語に由来する。
派生語に ελλειπτικός(楕円の、省略の、不完全な)、ελλιπής(不十分な、欠けた)など。関連語に έκλειψη(食、消失、同じ λείπω から)、ανυπαρξία(不在)、ένδεια(欠乏、窮乏)、έλλειμμα(赤字、不足分)など。
ギリシャ語:παίχτρια
読み方:ペフトゥリア・ペーフトゥリア
ラテン文字:pextria
παίκτρια(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:ευθεία
読み方:エフシア・エフシーア・エフティア・エフティーア
ラテン文字:eftheia
古代ギリシャ語の εὐθεῖα(直線, まっすぐなもの)を継承。形容詞 εὐθύς(まっすぐな, 直接の)の女性形から名詞化した語で, 「まっすぐな線」がもとの意味。印欧祖語で「向きをまっすぐに定める」を表す語根に続く。
同じ εὐθύς の語族に現代の ευθύς(まっすぐな, 直接の), κατευθείαν(まっすぐに, 直接に), ευθύτητα(正直さ), 合成語 ευθύγραμμος(直線の)。
γραμμή(線)が曲線や折れ線を含む線一般を指すのに対し, ευθεία は曲がらないまっすぐな線に限って使う。対になる語は καμπύλη(曲線)で, 形容詞 καμπύλος(曲がった, 湾曲した)と名詞 καμπύλωση(湾曲, 屈曲)も同じ語族。
ギリシャ語:ευφυΐα
読み方:エフィア・エフィーア
ラテン文字:efyia
古代ギリシャ語の εὐφυΐα(優れた資質、生まれつきの才能)からの学術借用。形容詞 εὐφυής(生まれつき優れた、εὖ「よく」+ φυή「生まれつきの性質、体格」+ -ής)から作られた抽象名詞。φυή は動詞 φύω(生える、生まれる)の派生名詞で、印欧祖語「現れる、生まれる、育つ」の根に由来する。英語 be はこの根から生まれた代表的な語で、ラテン語 fuī(あった)/ fiō(なる)、サンスクリット bhávati(なる、ある)なども同じ根から来ている。
派生・関連語に ευφυής(聡明な、才気ある)、ευφυώς(聡明に)、ευφυολόγημα(気の利いた言葉、ウィット)、ευφυολογία(機知)、ευφυολόγος(ウィットに富んだ人)、δυσφυΐα(愚鈍)など。類義語に νοημοσύνη(知能、知性)、διάνοια(知性、思考力)、μυαλό(脳、頭、知恵)。
英語 physical(身体の、物理の)、physics(物理学)、physique(体格)、physiology(生理学)は、同じ φύω の根から生まれた φύσις(自然、性質)や φυτόν(植物)をもとにした学術語。
ギリシャ語:νοημοσύνη
読み方:ノイモシニ・ノイモシーニ
ラテン文字:noimosyni
νοημοσύνη(知能、知性)は文語的に、νοήμων(知的な、分別のある)に抽象名詞を作る接尾辞 -οσύνη(〜であること、〜さを表す接尾辞)が付いてできた語。現代ギリシャ語では、人の頭の働きや知的能力をやや硬い言い方でまとめて表す。
近い語では、ευφυΐα(聡明さ、機転のよさ)が生まれつきの才気やひらめきの鋭さを言いやすい。日常会話で「頭のよさ」を言うなら、μυαλό(脳、頭)のほうがくだけた言い方として出やすい。
同じ語族に νόηση(認知、知性作用)や νους(精神、心、理性)がある。νόηση が理解や認知の働きそのものを指しやすいのに対し、νοημοσύνη はそうした働きを支える能力や頭のよさを言うときに使いやすい。
主な意味は「知能」「知性」。心理学では、知覚、記憶、連想、想像、注意、思考といった認知能力の総体を指し、とくに新しい状況への適応や、類似・差異・関係を見分ける力を含めていう。知能検査、知能指数、人工知能のような硬い表現でもよく使われる。
ギリシャ語:κατσίκα
読み方:カツィカ・カツィーカ
ラテン文字:katsika
中世ギリシャ語の κατσίκα(ヤギ)に由来する語で、その前の形として κατσίκι(子ヤギ)がある。現代ギリシャ語では、ヤギを表す基本語として使われる。
κατσίκα はヤギ全般を言う基本語だが、とくに雌を指しやすい。同義語に γίδα(ヤギ)があり、雄ヤギは τράγος(雄ヤギ)、子ヤギは κατσίκι(子ヤギ)と言い分ける。近い語として αίγα(雌のヤギ、ヤギ)、野生のヤギに関わる αίγαγρος(野生ヤギ)、クレタの野生ヤギを指す κρι-κρι(クリクリ)、年老いた雌ヤギをいう γκιόσα(年老いた雌ヤギ)もある。
主な意味はヤギ、とくに雌ヤギ。家畜として飼われる反芻動物を指し、乳、糞、毛の話でもよく出る。そこからヤギ肉やヤギ料理を指すこともあり、罵倒では気難しい女を言う。
ギリシャ語:φράουλα
読み方:フラウラ・フラーウラ
ラテン文字:fraoula
俗ラテン語の fragula(イチゴ)がイタリア語の fragola(イチゴ)になり、それが中世ギリシャ語の φράγουλα(イチゴ)を経て、現代ギリシャ語の φράουλα(イチゴ)になった。
果実がなる植物は φραουλιά(イチゴの株、イチゴの植物)と呼ばれる。指小語の φραουλίτσα(小さなイチゴ)は、小ぶりのイチゴや、親しみを込めた言い方に使う。関連語として αγριοφράουλα(野イチゴ)もある。
主な意味は、小さな赤い食用果実としてのイチゴ。表面に小さな粒が並び、上に緑のへたが付く。食品名ではイチゴ入りの菓子や飲み物を広く表し、植物学では、大粒で黄赤色の実をつける σταφύλι(ブドウ)の一品種も指す。
ギリシャ語:φραουλιά
読み方:フラウリャ・フラウリャー
ラテン文字:fraoulia
ギリシャ語:λάμπα
読み方:ラバ・ラーバ・ランバ・ラーンバ
ラテン文字:lampa
λαμπάς(松明、たいまつ) にさかのぼる語群が、ラテン語 lampas、フランス語 lampe、イタリア語 lampa を経て現代ギリシャ語に入った借用語。現代ギリシャ語では、油や灯油を燃やす古いランプから、電気で光る電球やランプまで、人工の光源を広く指す。
灯りそのものは φως(光、明かり)と言うことが多く、λάμπα は光を出す器具や球そのものを指しやすい。スイッチを入れて点灯させるときは ανάβω(火をつける、つける、点火する)を使い、電球が切れたと言うときには καίω(燃やす、焼く、焦がす)から来た Κάηκε η λάμπα(電球が切れた)のような言い方もする。
指小語には λαμπίτσα(小さなランプ、小さな電球)がある。小さな表示灯や豆電球のようなものには λαμπάκι(小さなランプ、表示灯)も使われる。
主な意味はランプや電球。燃料で灯す昔ながらのランプにも、電気で光る電球やランプにも使える。また、器具全体を指して卓上ランプやフロアランプのように言うこともある。照明以外にも、加熱用ランプ、紫外線ランプ、日焼け用ランプのような使い方がある。
ギリシャ語:μπανάνα
読み方:バナナ・バナーナ
ラテン文字:banana
果物、バナナ味のもの、バナナボートの意味では、イタリア語と英語の banana(バナナ)を通って現代ギリシャ語に入った。ウエストポーチ、電気部品、髪型の意味では、フランス語の banane(バナナ)を経た形で使われている。
果実がなる植物は μπανανιά(バナナの木、バナナの株)と呼ばれる。指小語には μπανανίτσα(小さなバナナ)と μπανανούλα(小さなバナナ)があり、小さなバナナや親しみを込めた言い方に使う。
主な意味はトロピカルフルーツのバナナ。そこから、バナナで作ったものやバナナ味の食品を表す形容的な使い方が生まれ、さらに細長い形や黄色い見た目の連想から、海上で遊ぶバナナボート、腰に巻くポーチ、バナナプラグや小型ワイヤレスマイク、巻き上げた髪型も指すようになった。
複合語では、見かけだけ民主的で実質的には不安定な国家を指す δημοκρατία της μπανανίας(バナナ共和国)がよく知られる。別形の δημοκρατία της μπανάνας(バナナ共和国)も使われる。食品名では μπανάνα σπλιτ(バナナスプリット)や μπανάνα τσιπς(バナナチップス)も定着している。
ギリシャ語:φέτα
読み方:フェタ・フェータ
ラテン文字:feta
イタリア語の fetta(一切れ、薄切り)から入った語で、現代ギリシャ語では食べ物を切り分けた一片を表す日常語として定着している。
この語は、パンや果物、τυρί などの「一切れ」を表すほか、塩水に漬けて保存する白チーズの名称としても使われるようになった。
主な意味は食べ物の「一切れ、薄切り」。そこから、オレンジやマンダリンの房、ラジエーターの板状の部分、さらに大きなまとまりから切り取られた一部を指すのにも使われる。
τυρί はチーズ全般を指すふつうの語で、φέτα はその中でも塩水に漬けて保存する白チーズの種類名として使われる。
κόβω κάποιον φέτες、κάνω κάποιον φέτες は、相手をずたずたにする、ひどく痛めつけるという強い言い方。
ギリシャ語:μαχαιριά
読み方:マヘリア・マヘリアー
ラテン文字:maxairia
μαχαίρι から作られた派生語。語尾の -ιά が付いて、刃物による一撃や傷を表す名詞になった。発音の上では母音が続くのを避ける形が定着している。
主な意味は「ナイフによる一撃」「ナイフによる傷」。そこから比喩的に、胸を刺すような辛い言葉や出来事も表す。
ギリシャ語:διάνοια
読み方:ディアニア・ディアーニア
ラテン文字:dianoia
διάνοια は古代ギリシャ語から文語で入った語で、古代ギリシャ語では心の働きや思考を表す語として使われていた。古典語からほぼ同じ形のまま現代ギリシャ語に受け継がれている。
現代ギリシャ語でもその延長で、知性を表すほか、法律では知的創作物を指し、人については非常に聡明な人物をいうのにも使われる。
近い語に νους(精神、心、理性)がある。διάνοια はその中でも、考える力や知的な働き、創造的な才覚を強調したい場面で使いやすい。
主な意味は「知性」。そこから法律での「知的創作物」や、並外れて知的な人物を表す用法もある。
ギリシャ語:νόηση
読み方:ノイシ・ノーイシ
ラテン文字:noisi
名詞 νόος(精神)から派生した動詞 νοέω / νοώ(考える, 理解する), さらにそこから派生した古代ギリシャ語の女性名詞 νόησις(理解, 知的把握)から。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の νόηση の形になった。
同じ語族に νους(精神, 理性, νόος の縮約形), νοώ(考える, 理解する), νόημα(意味, 意図), νοήμων(知的な, 理解のある), νοητικός(認知の, 知的な), νοητός(思念される)。合成語に διανόηση(思索), κατανόηση(理解), επινόηση(発明, 考案), παρανόηση(誤解)。
ギリシャ語:ενσυναίσθηση
読み方:エンシネスシシ・エンシネースシシ・エンシネスティシ・エンシネースティシ・エンシネスシシ・エンシネースシシ
ラテン文字:ensynaisthisi
ενσυναίσθηση は εν(中に)、συν(共に)、αίσθηση(感覚)の合成語で、英語 empathy やフランス語 empathie が表す「相手の内面に入り込んで共に感じる」という概念を、ギリシャ語の要素で訳した語。稀に中性名詞の ενσυναίσθημα も使われる。
同じ概念を表しそうな εμπάθεια は εν(中に)+ πάθος(感情)で構造上は empathy にぴったりだが、現代ギリシャ語では「悪意、敵意」と正反対の意味を持っている。この混乱を避ける形で、ενσυναίσθηση が empathy の受け皿になった。
ギリシャ語:ιδιοσυγκρασία
読み方:イディオシグラシア・イディオシグラシーア・イディオシングラシア・イディオシングラシーア
ラテン文字:idiosygkrasia
古代ギリシャ語の ἰδιοσυγκρασία(体質, 固有の配合)に由来。ἴδιος(自分の, 固有の)と σύγκρασις(混合)の合成語で, σύγκρασις は σύν(ともに)と κρᾶσις(混ぜること。動詞 κεράννυμι「混ぜる」から)からなる。古代ギリシャの医学で体液の配合が気質を決めるとされ, その人固有の配合を呼ぶためにこの合成語が作られた。近代にフランス語 idiosyncrasie, 英語 idiosyncrasy からの意味借用で現代の「気質, 特異体質」の用法が整った。
派生に ιδιοσυγκρασιακός(気質の, 特異体質の)。類義語の κράση(体格, 気質)は構成要素 κρᾶσις の現代形で, ιδιοσυγκρασία が個人の「固有の」配合を強調するのに対し, κράση はより一般的に体格や気質を指す。ταμπεραμέντο(気質, テンペラメント)はラテン語 temperamentum からの借用語。
英語 idiosyncrasy, idiosyncratic も同じ語源。
ギリシャ語:εμπάθεια
読み方:エバシア・エバーシア・エバティア・エバーティア・エンバシア・エンバーシア・エンバティア・エンバーティア
ラテン文字:empatheia
εμπάθεια は εν(中に)と πάθος(感情、受苦)の合成語で、古代ギリシャ語では「激しい感情」「苦痛」を意味していた。現代ギリシャ語ではこの語の意味は否定的な方向に固まり、「強い敵意」や「悪意ある偏見」を指すようになった。
英語の empathy はこの語を土台にして作られたが、εν(中に)+ πάθος(感情)という語の構造通りに、「相手の中に入り込んで感じる」という意味で使われている。ギリシャ語で「悪意」を表す語が、英語では「共感」を意味するという逆転が起きている。
この混乱を避けるため、現代ギリシャ語では英語の empathy にあたる概念に εμπάθεια を使わず、ενσυναίσθηση(共感)という別の語を充てている。
激しい嫌悪や、偏見に基づいた敵対心を指す。同じ πάθος から接頭辞を変えて作られた συμπάθεια(好感、同情)とは対照的で、類義語には έχθρα(敵意)や κακία(悪意)がある。
ギリシャ語:σκουλαρικιά
読み方:スクラリキャ・スクラリキャー
ラテン文字:skoularikia
ギリシャ語で「イヤリング」を意味する σκουλαρίκι に、植物を表す接尾辞 -ιά が結合してできた語。花の形が垂れ下がるイヤリングのように見えることから、ギリシャ語ではこの名が定着した。英語では一般に fuchsia(フクシア)と呼ばれる。
観賞用植物の一種。
ギリシャ語:συνεργασία
読み方:シネルガシア・シネルガシーア
ラテン文字:synergasia
古代ギリシャ語の σύν(共に)と ἔργον(仕事、活動)から成る合成語。ヘレニズム期のギリシャ語では職能組合やギルドを意味していたが、近代になってフランス語の collaboration(共同作業)や coopération(協力)の影響を受け、現在の「共同作業、協力」の意味が定着した。
英語の synergy(シナジー)は同じ σύν と ἔργον を語源に持つ。
類義語の σύμπραξη(共同行動)が一時的な行動を指すのに対し、συνεργασία は継続的な作業や体制を指す傾向がある。
主な意味は「共同作業」や「協力関係」。同じ分野で二人以上が共に働くことや、学術・報道における共同制作、寄稿、国家間や組織間の提携や協調も表す。
ギリシャ語:νίκη
読み方:ニキ・ニーキ
ラテン文字:niki
古代ギリシャ語の νίκη(勝利)を継承。
古代ギリシャでは勝利の女神 Νίκη の名でもあり、翼を持つ姿で描かれた。ルーヴル美術館のサモトラケのニケ像(Η Νίκη της Σαμοθράκης)や、アテネのアクロポリスに立っていたアプテロス・ニケ神殿(Ναός της Απτέρου Νίκης、「翼なきニケの神殿」)がこの女神と結びつく。スポーツブランド Nike もこの女神の名から。
人名 Nicholas は古代ギリシャ語の Νικόλαος から。νίκη(勝利)と λαός(民衆)の合成で、「民衆の勝利」の意。Nicole, Nicola も同じ系統。女性名 Βερενίκη(Berenice)は φέρω(運ぶ)+ νίκη で「勝利をもたらす者」。都市名 Θεσσαλονίκη は「テッサリアの勝利」の意で、マケドニア王フィリッポス2世の娘の名に由来する。
派生語に νικώ(勝つ), νικητής(勝者), νικηφόρος(勝利をもたらす), ανίκητος(不敗の), επινίκιος(祝勝の)。対義語に ήττα(敗北), ηττημένος(敗者、敗れた)。
ギリシャ語:φιλοσοφία
読み方:フィロソフィア・フィロソフィーア
ラテン文字:filosofia
古代ギリシャ語の φιλεῖν(愛する)と σοφία(知恵)からなる φιλοσοφία(知を愛すること)に由来。英語 philosophy をはじめ、ヨーロッパ諸言語の「哲学」の語源でもある。
派生語に φιλόσοφος(哲学者)、φιλοσοφικός(哲学的な)、φιλοσοφώ(思索する、哲学する)がある。
主な意味は真理や知識の探究としての哲学だが、学問体系としての哲学、特定の原理や考え方、日常的な深い思考や人生観にも用いられる。
ギリシャ語:συμπόνια
読み方:シボニャ・シボーニャ・シンボニャ・シンボーニャ
ラテン文字:symponia
συμπόνια は συν(共に)と πόνος(痛み)の合成語で、英語の compassion(ラテン語 com+pati=共に苦しむ)と構造を同じくする。
ただし現代ギリシャ語の συμπόνια は、名詞が直接作られたのではなく、動詞 συμπονώ(同情する、共感する)からの逆形成で今の意味が生まれた。中世ギリシャ語にも συμπονία という語はあったが、そちらは「協力」を意味しており、現代の「同情」とは直接つながらない。
συμπόνια と近い意味を持つ語はいくつかあるが、それぞれ感情の方向や深さが異なる。
συμπάθεια(好感、同情)は相手に対するポジティブな好意にも使える広い語で、日常的な「いいな」という気持ちから苦境への寄り添いまでをカバーする。それに対し、συμπόνια は苦痛の共有に限定される。相手の苦しみを感じるだけでなく、それを和らげたいという動機を伴う点が特徴。
同じ「同情」の周辺にも、宗教的・法的な文脈で使われる έλεος(慈悲)や、体の奥底から湧く深い情を表す ευσπλαχνία(慈愛)がある。
他者の苦しみや不幸に対し、共に痛みを感じ寄り添う感情を指す。単なる「可哀想」という反応ではなく、相手の痛みを自分のこととして引き受けるニュアンスがある。
ギリシャ語:μεγαλούπολη
読み方:メガルポリ・メガルーポリ
ラテン文字:megaloupoli
英語の megalopolis(メガロポリス)に由来する借用語で、学術的な文脈で用いられる。連結形 megalo-(巨大な)と古代ギリシャ語の πόλις(都市)を組み合わせた語で、現代ギリシャ語では πόλη の派生形 -ούπολη(〜の街)の形に整えられた。megalo- も pólis もギリシャ語の要素だが、英語で合成された megalopolis が現代ギリシャ語に取り入れられた。
英語の metropolis(メトロポリス)と重なる概念で、特に現代社会における巨大な都市集積を指す。
ギリシャ語:μητρόπολη
読み方:ミトゥロポリ・ミトゥローポリ
ラテン文字:mitropoli
古代ギリシャ語の μήτηρ(母)と πόλις(都市)の合成語 μητρόπολις から。もとは「母都市」で、古代ギリシャ世界において植民都市の母体となった都市国家を指した。
中世には正教会の組織用語として取り入れられ、府主教が管轄する管区を意味するようになった。管区の拠点となる大聖堂や、府主教の官邸もこの語で呼ばれる。現代ギリシャ語ではフランス語 métropole の影響を受け、植民地に対する宗主国や巨大都市を指す用法も加わった。英語 metropolis も同じ語源。
ギリシャ語:αινιγματικότητα
読み方:エニグマティコティタ・エニグマティコーティタ
ラテン文字:ainigmatikotita
αίνιγμα(謎) から派生した形容詞 αινιγματικός(謎めいた) に、抽象名詞を作る接尾辞 -ότητα が付いたもの。英語の enigmatic と語源を共有する。
謎めいている性質、あるいは正体のつかめない雰囲気を表す。
ギリシャ語:φύση
読み方:フィシ・フィーシ
ラテン文字:fysi
古代ギリシャ語 φύσις(フィシス、成長、本質)から。動詞 φύω(生じる、育つ)に由来し、もともとは「成長」や「生まれつきの性質」を意味していた。現代ギリシャ語では φύση の形で使われる。近代以降の「自然環境」という語義には、ラテン語 natura(自然)を経由したフランス語 nature の影響もある。
φύση のもとになった φύσις は、英語の physics(物理学)や physician(医師)、接頭辞 physio-(生理的な、自然の)の語源でもある。
類義語に χαρακτήρας(性格、性質)があるが、φύση はより根源的で先天的な「本性」を指す傾向がある。
主な意味は「自然界」と「本性」。自然環境や自然の力を指すほか、人間や事物が持つ根本的な性質や特徴も表す。
ギリシャ語:τύχη
読み方:ティヒ・ティーヒ
ラテン文字:tychi
古代ギリシャ語の τύχη(偶然、運、神の意志)を継承。動詞 τυγχάνω(巡り合わせる、出会う、手に入れる)からできた名詞。「物事のその後、行方」を問う現代ギリシャ語の使い方は、フランス語 sort からの意味借用で広がった。
派生語に τυχαίος(偶然の)。合成語に ευ-(よい)を付けた ευτυχία(幸福)、δυσ-(悪い)を付けた δυστυχία(不幸)、ατυχία(不運)、τυχοδιώκτης(投機家、山師)。
類義語に μοίρα。μοίρα はもともと「分け前、取り分」を指し、定められて動かせない宿命を言う。τύχη は偶然の巡り合わせを指すことが多い。古代ギリシャの運命の女神テュケーは豊穣の角と舵を持つ姿で表され、英語でも Tyche の名で神話の文脈に残る。
ギリシャ語:ντροπή
読み方:ドゥロピ・ドゥロピー
ラテン文字:dropi
古代ギリシャ語の ἐντροπή(内へ向くこと、尊敬)が起源。ἐν(内へ)と τροπή(向きを変えること)からなり、もとは他者への敬意を含む語だったが、やがて「恥じらい」の意味が中心になった。中世ギリシャ語で語頭の母音が消失し、現在の ντροπή の形になった。
英語の entropy(エントロピー)も同じ ἐντροπή に由来する。ただし19世紀に熱力学の用語として「内的変化」の意味で再導入されたもので、「恥」の意味とは無関係。
ντροπή には類義語として αιδώς(畏敬の念を伴う恥じらい)があるが、ντροπή のほうが日常的な語で、社会的不名誉や決まりの悪さにも使う。
主な意味は「羞恥心」。自分の過ちを恥じる気持ちから、屈辱、汚名、恥さらしの対象、そして人目をはばかる内気さまで、さまざまな「恥」の感覚を表す。
ギリシャ語:οργή
読み方:オルイ・オルイー・オルギ・オルギー
ラテン文字:orgi
印欧祖語で「働く, 動く」を表す語根の子孫で, ἔργον(仕事)や ἐνέργεια(働くこと)と同じ語族にあたる古代ギリシャ語の女性名詞 ὀργή(気質, 衝動, 怒り)を継承。現代では「激しい怒り」に絞り込まれた。
英語 orgasm は ὀργή から派生した動詞 ὀργάω の名詞形 ὀργασμός に由来。orgy も同じ語族の ὄργια(ディオニュソスの秘儀)から。同じ語根に英語 energy, organ, work も連なる。
類義語に θυμός, 文語で μήνις(神々の怒り)。派生語に οργίζομαι(怒る), οργισμένος(怒った)。
ギリシャ語:μοίρα
読み方:ミラ・ミーラ
ラテン文字:moira
古代ギリシャ語の μοῖρα(分前、運命)を継承。動詞 μείρομαι(分配を受ける)から作られた語で、「割り当てられたもの」がもとの意味。印欧祖語で分配・割り当てを表す語根から続き、英語 merit(功績)もラテン語 mereō(値する)を経て同じ語源。
ギリシャ神話では Μοίρες(運命の三女神)が人の生死や境遇を定める存在として語られる。
軍の部隊名(大隊、飛行隊)と角度の「度」には、それぞれフランス語 escadron と degré からの意味借用が入って定着した。
派生語に μοιράζω(分ける、配る), μοιραίος(運命的な、致命的な), μοιρασιά(分け前、取り分)。合成語に κακόμοιρος(不幸な、かわいそうな), μεμψίμοιρος(文句の多い、不平を言う)。
類義語に τύχη(運命、幸運)。τύχη は偶然や巡り合わせを指し、μοίρα はあらかじめ定められた運命を指す。
ギリシャ語:τρίχα
読み方:トゥリハ・トゥリーハ
ラテン文字:tricha
古代ギリシャ語 θρίξ(thríx、毛)の対格 τρίχα(trícha)に由来する。この対格形が一般化し、中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の τρίχα として定着した。なお、英語の trichology(毛髪学)などに見られる接頭辞 tricho- も、θρίξ の語幹 τριχ- から来ている。
τρίχα は個別の「毛」を指すのが基本で、頭髪全体を指す μαλλιά とは区別される。ただし、髪の毛一本一本の質や状態に言及する際には τρίχα を使う。
動物やヒトの皮膚に生える毛のほか、植物の微細な繊維やブラシの毛のような毛状のものも指す。
ギリシャ語:σειρά
読み方:シラ・シラー
ラテン文字:seira
古代ギリシャ語の σειρά(紐, 鎖, 列)に由来。もとは「紐, 鎖」の意味が中心で, 後に「列, 配列」にも使われるようになった。現代の「順序, シリーズ, 連続番組」の用法はフランス語 série, ordre, 英語 serial からの意味借用で輪郭が整った。
同じ σειρά の語族に σειριακός / σειραϊκός(連続の, 連番の), σειρούλα(小さな列), παλιοσειρά(古いシリーズ), 合成語 συμβολοσειρά(文字列), στοιχειοσειρά(文字組版)。軍隊では同期入隊の兵士集団を σειρά と呼び, くだけた呼びかけ「おい同期」としても使う(正式名称 ΕΣΣΟ: Εκπαιδευτική Σειρά Στρατευσίμων Οπλιτών)。
英語 series, serial, serialize もラテン語 serere(つなぐ, 編む)から生まれた語で, σειρά と共通の印欧語根に連なる。トルコ語 sıra(順番, 列)は中世ギリシャ語 σειρά からの借用。
ギリシャ語:συμπάθεια
読み方:シバシア・シバーシア・シバティア・シバーティア・シンバシア・シンバーシア・シンバティア・シンバーティア
ラテン文字:sympatheia
古代ギリシャ語の συμπάθεια(共に感じること, 感情の共有)に由来。σύν(共に)と πάθος(受けた感情, 経験)からなる合成語で, 元の形容詞 συμπαθής(共に感じる)の抽象名詞。「好感」「好意」「お気に入り」「同情」までの現代の使い分けは, フランス語 sympathie, 英語 sympathy の意味配置と重なって整った。
同じ語族に, 語源になった形容詞 συμπαθής(愛すべき, 好ましい), そこから作られた動詞 συμπαθώ(好む, 同情する)と形容詞 συμπαθητικός(感じのよい)。対義の αντιπάθεια(反感)は αντί-(反する)を前に付けて作られた並行合成語。英語 sympathy, フランス語 sympathie はラテン語 sympathia を経て同じ語源で, 日本語「シンパシー」も同源。
同じ πάθος から作られた語は接頭辞でまったく違う意味に分かれる。απάθεια は α-(〜なし)と πάθεια で「無関心, 無感動」を指し, 英語 apathy の語源。εμπάθεια は εν-(中に)と πάθεια で, 古代には「強い情動」を指したが, 現代ギリシャ語では「悪意, 敵意」の意味が中心になった。英語 empathy はこの εμπάθεια をもとに作られた語で「相手の立場に入って感じる共感」を指すため, ギリシャ語と英語で意味が逆転している。この行き違いを避けるため, 英語 empathy の意味には, ギリシャ語では ενσυναίσθηση(共感)を充てる。英語の pathology(病理学), passion(情熱), pathos(悲壮感)も πάθος を素材にした語。
日本語の「共感」は広い場面で使うが, 心理学的な用法で見ると συμπάθεια に対応するのは「同情」のほうで, 相手の感情に寄り添いながらも自分は外側から見ている態度。英語 empathy とギリシャ語 ενσυναίσθηση は, 相手の立場に入り込んで同じ感情を自分のこととして感じる態度を指す。日本語では「同情」に哀れみの響きが強いため「共感」が sympathy の範囲まで吸収してしまっているが, ギリシャ語ではこの二つは別の語として分かれている。
συμπόνια(同情, 憐れみ)は σύν と πόνος(痛み)を合わせた語で, 英語 compassion(ラテン語 com + pati「共に苦しむ」)と構造が同じ。苦しみの共有に焦点があり, 相手の痛みを和らげたいという動機を伴う。συμπάθεια が好意にも同情にも使える広い範囲を持つのに対し, συμπόνια は苦痛の共有に限られる。
οίκτος(哀れみ)は相手の不幸に対して気の毒に思う感情で, 距離感を伴い哀れみや憐憫が前に出やすい。日本語の「同情」が持つ消極的な語感は οίκτος に近い。έλεος(慈悲)は宗教や司法で使うことが多く, 神の慈悲や裁判での温情のように「赦す」「大目に見る」側面が前に出る。ευσπλαχνία(深い慈しみ)は εὖ(良い)と σπλάχνα(内臓)からなる語で, 感情が体の奥底から湧き上がる発想。日本語の「はらわたが痛む」「断腸の思い」と通じる。κατανόηση(理解)は感情の共有ではなく, 相手の状況を知的に把握する態度を表す。
ギリシャ語:ομορφιά
読み方:オモルフィア・オモルフィアー
ラテン文字:omorfia
古代ギリシャ語の εὐμορφία(形の良さ)が起源。εὐ-(良い)と μορφή(形)から成る語で、中世ギリシャ語では εμορφία(形の良さ)となった。そこから、形容詞 όμορφος(美しい)の影響で語頭の e が o へ変わり、ομορφία(形の良さ)を経て、母音の連続を避ける音節短縮によって現代ギリシャ語の ομορφιά に至った。
この過程で [vm] が [mm] へと同化し、さらに単一の [m] へと簡略化された。
英語で使われる接頭辞 eu-(良い)や morph-(形)も、ομορφιά のもとになったギリシャ語の要素と同じ語源から来ている。
類義語には、より文語的な ωραιότητα(美しさ、麗しさ)がある。対義語は ασχήμια(醜さ)で、肉体的なものについては δυσμορφία(異形、醜形)が用いられる。
主な意味は「美しさ」。視覚的な美しさだけでなく、内面的な美徳や、風景の素晴らしさを指すのにも使われる。複数形 ομορφιές は、美しさによって際立っている場所や風景も表す。
ギリシャ語:αποκάλυψη
読み方:アポカリプシ・アポカーリプシ
ラテン文字:apokalypsi
古代ギリシャ語の動詞 ἀποκαλύπτω(覆いを取る)から派生した ἀποκάλυψις(覆いを取ること)に由来。ἀποκαλύπτω は接頭辞 ἀπο-(離れて, 取り除く)と動詞 καλύπτω(覆う)から成る。
同じ語族に動詞 αποκαλύπτω(暴く, 明かす), 形容詞 αποκαλυπτικός(黙示的な, 啓示的な), αποκαλυπτήρια(除幕式)。対義語に συγκάλυψη(隠蔽)。
英語 apocalypse(黙示)は ἀποκάλυψις をラテン語経由で借用したもの。
ギリシャ語:πρωτεύουσα
読み方:プロテヴサ・プロテーヴサ
ラテン文字:protevousa
動詞 πρωτεύω(第一位である、主導する)の現在分詞の女性形に由来する。πρωτεύω は古代ギリシャ語の πρῶτος(第一の、最初の)から派生した動詞で、πρωτεύουσα は「第一位にある」を意味する分詞として使われていた。女性形をとるのは πόλις(都市)が女性名詞であるためで、もとは πρωτεύουσα πόλις(第一の都市)のように用いられていたものから πόλις が落ち、πρωτεύουσα だけで「首都」を意味するようになった。
フランス語の ville capitale(首都)やドイツ語の Hauptstadt(首都)の意味借用によって、行政の中心地を指す用法が定着した。
もとの πρῶτος(第一の)は、英語の principal(主要な)や prototype(原型)と共通する語源で、いずれも「第一の」から派生している。
行政上の中心都市としての「首都」を指すほか、特定の分野で中心的な役割を果たす都市を指すのにも使われる。
ギリシャ語:τελετουργία
読み方:テレトゥルイア・テレトゥルイーア・テレトゥルギア・テレトゥルギーア
ラテン文字:teletourgia
古代ギリシャ語の τελετή(儀式、秘儀)と ἔργον(仕事、行い)の合成語に由来。もとは「儀式を執り行うこと」で、ヘレニズム期から用いられ、現代ギリシャ語へと引き継がれた。同じ ἔργον に由来する接尾辞 -ουργία を含む語に λειτουργία(典礼、機能)があり、英語 liturgy も λειτουργία から来ている。形容詞は τελετουργικός(儀式的な、儀礼的な)、副詞は τελετουργικά(儀式に則って)。
語源に含む τελετή(式典、儀式)は卒業式や開会式のような世俗的な行事にも広く使えるのに対し、τελετουργία は宗教的な文脈に限られやすい。近い語に ιεροτελεστία(宗教的で厳かな儀式)、μυσταγωγία(秘儀への入門、秘跡)、έθιμο(慣習、しきたり)など。
ギリシャ語:βίβλος
読み方:ヴィヴロス・ヴィーヴロス
ラテン文字:vivlos
古代ギリシャ語の βίβλος(パピルス, 巻物, 書物)から。フェニキアの港町 Βύβλος(現レバノンのジュベイル)がパピルスの交易地だったことから, そこで扱われた素材の名がギリシャ語に入った。指小形 βιβλίον の複数 τὰ βιβλία はヘレニズム期以降のキリスト教でギリシャ語訳聖書を指すようになり, ラテン語 biblia を経て英語 Bible になった。
同じ βίβλος の語族に βιβλίο(本), βιβλιάριο(小冊子, 通帳), βιβλιοθήκη(図書館, 本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιογραφία(書誌学, 参考文献目録), βιβλικός(聖書の), βιβλιόφιλος(愛書家), βιβλιοδεσία(製本)。ふつうの「本」には βιβλίο を使い, βίβλος は先頭大文字 Βίβλος の聖書と, λευκή βίβλος「白書」のような硬い公文書名に限られる。
λευκή βίβλος「白書」, κυανή βίβλος「青書」, μαύρη βίβλος「黒書」のような色+βίβλος の公文書名は英語 White Paper, Blue Paper, フランス語 Livre Noir からの翻訳借用。英語 Bible, bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)もこの βιβλίον・βίβλος の語族。
ギリシャ語:νηστεία
読み方:ニスティア・ニスティーア
ラテン文字:nisteia
古代ギリシャ語の νηστεία(断食)に由来。形容詞 νῆστις(食べていない)から作られた抽象名詞で、νῆστις は否定の νη- と動詞 ἐσθίω(食べる)の語根からなる。ἐσθίω は英語 eat、ラテン語 edere(食べる)と同じ印欧祖語の語根に続く。
動詞は νηστεύω(断食する), 形容詞に νηστίσιμος(断食中でも食べられる)。近い語に αφαγία(絶食)= α-(否定)+ φαγεῖν(食べる)の合成。関連する行為に προσευχή(祈り)。
ギリシャ語:δέηση
読み方:デイシ・デーイシ
ラテン文字:deisi
古代ギリシャ語で「乞う、必要とする」を意味する動詞 δέομαι から派生した名詞 δέησις(請い、祈り)が起源。中世ギリシャ語を経て語末が -σις から -ση に変化し、現代ギリシャ語の δέηση となった。キリスト教の祈祷で中心的に使われる語のひとつで、επιμνημόσυνη δέηση(追悼祈祷)のような複合語にも用いられる。
同じ「祈り」を表す προσευχή が礼拝、感謝、神との対話を含む広い意味での祈りを指すのに対し、δέηση は「乞う」ニュアンスが強く、神への切実な願いや公的な祈祷に用いられる。ικεσία(嘆願)や παράκληση(哀願)と比べても、より儀礼的・教会的な響きがある。
ひとつめの意味は神に対する祈りの行為や公的な祈祷で、特に教会における儀式的な祈りを指す。また、美術用語として、キリストを中心に聖母マリアと洗礼者ヨハネが執り成しの祈りを捧げる図像「デーシス」の意味もある。
ギリシャ語:βρισιά
読み方:ヴリシア・ヴリシアー
ラテン文字:vrisia
βρισιά は古代ギリシャ語の ὕβρις(傲慢、侮辱)に由来する。中世ギリシャ語で υβρισία の形を経て、現代ギリシャ語の βρισιά に至った。英語の hubris(過度な自信、傲慢)も同じ ὕβρις を語源に持つ。
βλαστήμια(冒涜、罵言) が宗教的・神聖な対象を汚す不敬な言葉を指すのに対し、βρισιά は相手の名誉を傷つける侮辱的な言葉を広く指す。
相手を不快にさせたり名誉を傷つけたりする目的で放たれる、下品で無礼な言葉を指す。
ギリシャ語:δεισιδαιμονία
読み方:ディシデモニア・ディシデモニーア
ラテン文字:deisidaimonia
古代ギリシャ語から引き継がれた語で、δείδω(恐れる)と δαίμων(神霊、超自然的存在)の合成語。もとは「神々への恐れ」を意味した。δαίμων は古代ギリシャ語では善悪を問わない超自然的存在を広く指し、ラテン語の daemon を経て英語の demon(悪魔)の語源にもなった。古代には敬虔さの意味合いも持っていたが、ヘレニズム期を経て否定的なニュアンスが強まり、現代ギリシャ語では非科学的な恐怖に基づく迷信を指すようになった。英語の superstition に相当する。
類義語の πρόληψη(縁起担ぎ、予断)と混同されることが多いが、δεισιδαιμονία はより非合理的で超自然的な力に対する恐れのニュアンスが強い。
δεισιδαίμονας は「迷信深い人」や「迷信深い」を意味し、名詞としても形容詞としても使われる。
偶然の出来事や特定の行為、物体に対して非合理的に超自然的な性質を認め、それらが運命や人生に悪影響を及ぼすと信じること。
ギリシャ語:προσευχή
読み方:プロセフヒ・プロセフヒー
ラテン文字:prosefchi
古代ギリシャ語で「願う、祈る」を意味する動詞 εὔχομαι に、方向を示す接頭辞 πρός(〜に向かって)が付き、「神に祈る」を意味する動詞 προσεύχομαι が生まれた。その名詞形が προσευχή で、新約聖書が書かれたコイネーの時代から現代に至るまで、一貫して「神への祈り」を意味している。
類義語の δέηση(請願、祈願)が何かを「乞う」ニュアンスが強いのに対し、προσευχή は礼拝、感謝、神との対話を含む、より広い意味での「祈り」を指す。
祈りの行為そのもの、つまり人間が神に対して崇拝や感謝を表し何かを願うコミュニケーションを指すほか、祈祷文や祈りの特定のテキストを指すのにも使われる。
ギリシャ語:πίστη
読み方:ピスティ・ピースティ
ラテン文字:pisti
古代ギリシャ語の動詞 πείθω(説得する)から派生した名詞 πίστις(信頼、確信)が起源。もとは「説得されて信じること」で、現代ギリシャ語で πίστη となった。
英語 faith(信仰)はラテン語 fidēs(信頼)から古フランス語を経て入った語で、fidelity(忠実さ)や fealty(忠誠)、スペイン語 fe(信仰)も同じ fidēs から。ギリシャ語 πίστις とこれらは「信じる」を意味する同じ印欧語根を共有する。
ギリシャ語:θρησκεία
読み方:スリスキア・スリスキーア・トゥリスキア・トゥリスキーア
ラテン文字:thriskeia
後古典期ギリシャ語の θρησκεία(神への崇拝, 儀式)に由来。動詞 θρησκεύω(宗教儀礼を行う)から抽象名詞を作る -εία が付いてできた語で, もとは個人の信念ではなく神への儀礼的な奉仕を指した。近代に入り教義や組織を含む体系としての「宗教」全般を指す意味が加わった。
同じ θρησκεύω の語族に形容詞 θρησκευτικός(宗教的な), 名詞 θρήσκος(信心深い人)。
πίστη(信仰)が個人の内面的な信じる行為に, λατρεία(崇拝, 礼拝)が神に対する儀礼的な崇拝行為に焦点があるのに対し, θρησκεία はそれらを含む体系全体を指す。
ギリシャ語:βλαστήμια
読み方:ヴラスティミア・ヴラスティーミア
ラテン文字:vlastimia
βλαστήμια は古代ギリシャ語の βλασφημία(誹謗、不敬な言葉)に由来する。英語の blasphemy(冒涜)の語源でもある。
類義語の βρισιά(罵倒) と比べると、βλαστήμια は宗教的・神聖な対象を汚すニュアンスがより強い。ただし現代ギリシャ語では、口汚い罵り言葉全般を指すこともある。
不敬な言葉や卑俗な罵り言葉を総称する語で、神への冒涜から日常的な罵言まで幅広く使われる。
ギリシャ語:ευσέβεια
読み方:エフセヴィア・エフセーヴィア
ラテン文字:efseveia
古代ギリシャ語の εὐσέβεια(敬虔、信仰心)からの学術借用。形容詞 εὐσεβής(敬虔な、εὖ「よく」+ σέβομαι「畏れ敬う」+ -ής)から作られた抽象名詞で、直訳は「よく畏れ敬うこと」。σέβομαι は印欧祖語で「避ける、離れる」を表す根に由来し、神聖なものから身を退いて敬うという感覚がもとにある。サンスクリット tyaj-(離れる、捨てる)が同源。
派生・関連語に ευσεβής(敬虔な)、ευσεβώς(敬虔に)、ευσεβισμός(敬虔主義)、ευσεβιστής(敬虔主義者)、ασέβεια(不敬、不遜)、σέβας(畏敬、尊崇)、σέβομαι(敬う)、σεβασμός(敬意、尊敬)、σεβαστός(尊敬すべき)など。
固有名 Ευσέβιος(エウセビオス、「敬虔な者」)は古代からの男性名で、4世紀の教会史家カイサリアのエウセビオスで広く知られる。英語 Eusebius も同じ名。
ギリシャ語:κόλαση
読み方:コラシ・コーラシ
ラテン文字:kolasi
動詞 κολάζω(罰する)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 κόλασις(罰, 懲戒)から。ヘレニズム以降キリスト教の文脈で死後の罰を受ける場所を表すようになり, そこから「地獄」の意味が定着した。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の κόλαση の形になった。
同じ語族に κολάζω(罰する), κολαστήριο(拷問室, 責め苦の場), κολασμένος(呪われた, 地獄に落ちた)。
ギリシャ語:αίρεση
読み方:エレシ・エーレシ
ラテン文字:airesi
動詞 αἱρέω(取る, 選ぶ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 αἵρεσις(選択, 傾向, 学派)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の αίρεση の形になった。
派生に αιρετικός(異端の, 選挙の), αιρεσιάρχης(異端の指導者), εξαίρεση(例外)。
英語 heresy(異端)もラテン語 haeresis を経て同じ語源。
ギリシャ語:βιασύνη
読み方:ヴィアシニ・ヴィアシーニ
ラテン文字:viasyni
古代ギリシャ語の βία(力、暴力)から派生した動詞 βιάζω(強いる、急がせる)に由来する。中世ギリシャ語以降、時間のなさに追われる「急ぎ」の状態を指す名詞として定着した。
意味の背景としては、英語で言えば force(力)や violence(暴力)に近い「力、強制」の領域から、現代ギリシャ語では主に「時間的な焦り」を意味する語へ広がっている。
類義語の βιάση はより文語的で、πρεμούρα や φούρια はより口語的で切迫したニュアンスを持つ。関連する形容詞に βιαστικός(急いでいる、性急な)と βίαιος(暴力的な、強制的な)がある。
主な意味は「急ぐこと」「焦り」。時間に追われ、物事を素早く行わなければならない状態を指す。そこから、急ぐあまり丁寧さを欠いた雑な仕事や、複数形 βιασύνες で慎重さを欠いた性急な行動も表す。
ギリシャ語:καθυστέρηση
読み方:カシステリシ・カシステーリシ・カティステリシ・カティステーリシ
ラテン文字:kathysterisi
καθυστέρηση は、動詞 καθυστερώ(遅れる、遅らせる)から派生した女性名詞。動詞の動作や結果を名詞化し、「遅れること」「遅らせること」を表す。
近い語には αργοπορία(遅刻)、επιβράδυνση(減速)、χρονοτριβή(時間の浪費)などがある。対義語には επιτάχυνση(加速) や επίσπευση(促進)がある。
時間的な遅延や遅刻を表すのが中心で、列車や船の遅れ、納期の遅れ、返事の遅れなどに広く使われる。口語では、女性について生理が遅れていることを指すこともある。
社会、経済、文化、技術などの発展が遅れていることや、音楽で和音の構成音を次の和音まで引き伸ばすことを指すのにも使われる。
サッカーなどでは複数形 καθυστερήσεις が、試合の規定時間に加えられるアディショナルタイムを指す。発達に関する表現では、καθυστέρηση του λόγου や καθυστέρηση της ομιλίας が、子供の言語習得が平均より遅れることを表す。
ギリシャ語:ηλικία
読み方:イリキア・イリキーア
ラテン文字:ilikia
古代ギリシャ語の ἡλικία(同じ年齢、成熟した年齢)を継承。ἧλιξ(同い年の)からの派生語。派生語に ηλικιωμένος(年配の)、συνομήλικος(同い年の)。
ギリシャ語:παιδιά
読み方:ペディア・ペディアー
ラテン文字:paidia
動詞 παίζω(遊ぶ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 παιδιά(遊び, 楽しみ)に由来。背景には παιδί の古い形 παῖς(子供)がある。現代ギリシャ語では書き言葉やスポーツ用語として残り, 話し言葉では παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ)がふつうに使われる。
同じ παῖς の語族に παιδί(子供), παίζω(遊ぶ, プレーする), παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ), παιδικός(子供の, 子供じみた), 合成語 αθλοπαιδιά(球技, スポーツ), γυμνοπαιδίες(古代スパルタの少年競技)。
παιχνίδι が「遊び, ゲーム, おもちゃ」までまとめて受けるのに対し, παιδιά は εντός παιδιάς(プレー中), εκτός παιδιάς(プレー外)のような定型表現や, 組織的な競技を言うときに使うことが多い。英語 pedagogy, pediatric も παῖς を含むギリシャ語合成語から入った。
ギリシャ語:έφηβος
読み方:エフィヴォス・エーフィヴォス
ラテン文字:efivos
ギリシャ語:γενιά
読み方:イェニャ・イェニャー・ゲニャ・ゲニャー
ラテン文字:genia
古代ギリシャ語の γενεά(ゲネアー、生まれ、血筋、世代)を起源とし、中世ギリシャ語の γενιά(世代)を経て現在の形に至る。英語の generation やフランス語の génération と同じ語源から生まれた語で、「生む」を意味する印欧語の語根に行き着く。
なお、綴りは同じだがストレスの位置が異なる γένια(イェニャ/ゲニャ:ひげ)という語があり、こちらは γένι(あごひげ)の複数形でまったく別の語。
同義語に σοΐ(家系・一族)や、より口語的な φάρα(一族・徒党)がある。特定の世代を表す表現として、μπιτ γενιά(ビート・ジェネレーション)や χαμένη γενιά(失われた世代)もよく知られている。
同時期に生きる人々の集団、共通の家系、約30年の時間単位、技術の進歩段階など、さまざまな場面で用いられる。日本語でもおなじみの「ジェネレーション」にあたる語で、日常会話から生物学まで幅広い。
ギリシャ語:δύση
読み方:ディシ・ディーシ
ラテン文字:dysi
古代ギリシャ語 δύσις(沈むこと、日没)に由来し、中世ギリシャ語の δύση(日没)を経て現在の形になった。動詞 δύω(沈む)から派生した語で、天体が沈むことから、その方角である西、さらに終わりや衰退の意味へ広がった。対義語は ανατολή(日の出、東)。
「西洋・西側諸国」の意味では、フランス語 ouest や英語 west の影響も受けている。
形容詞形は δυτικός(西の、西からの)。その中性複数形 δυτικά は、副詞として「西へ、西に」を表すほか、方向ラベルとして「西方向」の意味でも使われる。
西から吹く風の名には πουνέντες や ζέφυρος がある。
主な意味は天体が沈むこと。そこから西という方角、西洋や西側諸国、比喩的な衰退や終わりを指すのにも使われる。
ギリシャ語:ανατολή
読み方:アナトリ・アナトリー
ラテン文字:anatoli
ἀνά(上へ)と τέλλω(昇る, 生じる)の合成からなる動詞 ανατέλλω(昇る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ἀνατολή(昇ること, 日の出, 東)を継承。対義語は δύση(日没, 西)。「東方, アジア諸国」や比喩の「始まり」の用法は, フランス語 Orient / Est と動詞 ανατέλλω の比喩用法からの意味借用。
形容詞形は ανατολικός(東の、東からの)。その中性複数形 ανατολικά は、副詞として「東へ、東に」を表すほか、方向ラベルとして「東方向」の意味でも使われる。東から吹く風の名には λεβάντες や απηλιώτης がある。
英語 Anatolia(アナトリア、小アジア)はギリシャの東に位置する土地を指して Ἀνατολή が地域名として使われた中世ギリシャ語の用法から、中世ラテン語を経て入った。フランス語 Anatole、ロシア語 Анатолий は同じ語を男性名にしたもの。
ギリシャ語:έκπληξη
読み方:エクプリクシ・エークプリクシ
ラテン文字:ekplixi
古代ギリシャ語の ἔκπληξις(衝撃、驚愕)から。ἐκ-(外へ)+ πλήσσω(打つ)からなる語で、もとは衝撃に打たれて我を失う状態を指した。
πλήσσω は英語 apoplexy(脳卒中、ギリシャ語 ἀποπληξία から)や paraplegia(対麻痺)の語源。「打つ」という核が、感情では驚き、身体では発作や麻痺として残る。
派生語に εκπλήσσω(驚かせる)、εκπληκτικός(驚くべき、素晴らしい)など。関連語に κατάπληξη(仰天)、ξάφνιασμα(不意)など。
ギリシャ語:δύναμη
読み方:ディナミ・ディーナミ
ラテン文字:dynami
古代ギリシャ語の δύναμις(能力、力)に由来する。δύναμις は「できる」を意味する動詞 δύναμαι から派生した名詞で、もともと「何かをする能力」を表した。中世ギリシャ語を経て語末の -ις が -η に変化し、現代ギリシャ語の δύναμη となった。
英語の dynamic(動的な)、dynamite(ダイナマイト)、dynamo(発電機)は、いずれもこの δύναμις を語源とする。
類義語に ισχύς(効力、威力)や σθένος(強健さ、気概)がある。対義語は αδυναμία(弱さ、無力)で、否定の接頭辞 α- が付いた形。
δύναμη は多くの定型表現に用いられる。軍事では Ένοπλες Δυνάμεις(軍隊)、Ειδικές Δυνάμεις(特殊部隊)、αεροπορική δύναμη(空軍力)、δύναμη πυρός(火力)、政治・経済では δημόσια δύναμη(公権力)、Μεγάλες Δυνάμεις(列強)、αγοραστική δύναμη(購買力)などがある。
ήρεμη δύναμη は「静かなる強さ」を意味し、実力をひけらかさないが能力のある人を指す比喩表現。
日本語の「力」と同様に、身体的・精神的な能力から、物の作用や効能、政治・経済的な勢力、軍事力、物理学の力、数学の累乗、超自然的な存在まで非常に幅広い意味を持つ。
ギリシャ語:εντύπωση
読み方:エディポシ・エディーポシ・エンディポシ・エンディーポシ
ラテン文字:entyposi
古代ギリシャ語の ἐντύπωσις(刻印、刻み込むこと)から。ἐν-(中に)+ τύπος(型、刻印)からなる語で、もとは物理的に型を押しつけることを指した。τύπος は英語 type(型、活字)、typical(典型的な)、stereotype(ステレオタイプ)の語源で、ラテン語 typus を経て英語に入った。
現代の「心に受ける印象」の意味は、フランス語 impression(「押す」の意から)の訳語としてうつったもの。
派生語に εντυπωσιακός(印象的な)、εντυπωσιάζω(感銘を与える)、εντυπώνω(刻み込む)など。関連語に αίσθηση(感覚)、ιδέα(考え、観念)、άποψη(見解)、τύπος(型、新聞、活字)など。
ギリシャ語:πυξίδα
読み方:ピクシダ・ピクシーダ
ラテン文字:pyxida
古代ギリシャ語でツゲの木を意味する πύξος に由来する。ツゲで作られた小箱は πυξίς と呼ばれ、中世以降に磁針を収める箱としてこの名が用いられるようになった。現代ギリシャ語では主に方位磁石を指すが、考古学用語としてもその名を留めている。
英語の box や pyxis(ピクシス:星座の羅針盤座や解剖学・考古学用語)と語源を共有する。
類義語に μπούσουλας があり、イタリア語 bussola(羅針盤)に由来する口語的な表現。合成語としては ραδιοπυξίδα(無線方位測定機)がある。
主な意味は方位磁石・コンパス。比喩的に人生や行動の指針を表すのにも使われる。古代の小箱を指す考古学用語としても残る。なお、日本語で同じく「コンパス」と呼ばれる製図用の円を描く道具は、ギリシャ語では διαβήτης という別の語になる。
ギリシャ語:κίνηση
読み方:キニシ・キーニシ
ラテン文字:kinisi
動詞 κινώ / κινέω(動かす)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 κίνησις(動き)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の κίνηση の形になった。現代の用法の一部はフランス語 mouvement からの意味借用。英語 kinetic(運動の)や cinema(元は κίνημα と γράφω を組み合わせた cinematograph の略)も同じ κινώ にさかのぼる。
同じ語族に κίνημα(動き, 映画作品), κίνητρο(動機), κινητήρας(エンジン), κινητός(動く, 携帯の), κινηματογράφος(映画, 映画館), ακινησία(不動, 静止)。合成語に ανακίνηση(撹拌, 蒸し返し), διακίνηση(流通), εκκίνηση(出発, 起動), επανεκκίνηση(再起動), μετακίνηση(移動), παρακίνηση(動機づけ), συγκίνηση(感動), υποκίνηση(扇動), ηλεκτροκίνηση(電動), πετρελαιοκίνηση(ディーゼル駆動)。
ギリシャ語:τριβή
読み方:トゥリヴィ・トゥリヴィー
ラテン文字:trivi
古代ギリシャ語の τριβή(摩耗, 経験, 猶予, 従事)に由来。動詞 τρίβω(こする, 摩耗させる)から抽象名詞を作る -ή が付いてできた語で, もとは「こすること」。印欧祖語で「こする」を表す語根に続き, ラテン語 tero(こする, すり減らす)も同じ語族。物理の「摩擦」の意味はフランス語 friction と frottement からの意味借用で整った。「経験, 習熟」の用法は, こすり続けるうちに身につく技という発想から育った。
同じ τρίβω の語族に名詞 τρίψιμο(こすり, 摩擦), διατριβή(論文。δια-「通して」+ τρίβω から)。英語 tribology(摩擦学), diatribe(辛辣な批判。もとの意味は「時間をすり減らす議論」)も同じ τρίβω の語族。
合成語に ανεργία τριβής(摩擦的失業。転職や求職活動の過渡期に生じる一時的な失業)。
ギリシャ語:ταχύτητα
読み方:タヒティタ・タヒーティタ
ラテン文字:tachytita
古代ギリシャ語の ταχύτης(速さ)から。現代ギリシャ語では語尾が -τητα に変わり、今の形になった。
ταχύς は英語の tachometer(タコメーター、回転速度計)の語源であり、接頭辞 tachy- として tachycardia(頻脈)などの医学用語にも使われている。
ギアの意味は、フランス語の vitesse(速度)がギアの意味でも使われることの影響で、ギリシャ語にも加わった。
類義語に γρηγοράδα(素早さ)、σβελτάδα(機敏さ)がある。対義語は βραδύτητα(遅さ)。
物理的な速度や、物事が進む速さ・ペースを表す。自動車や自転車の変速ギアの意味もある。
χύτρα ταχύτητας(直訳は「速さの鍋」)は圧力鍋のこと。短時間で調理できることからこの名がついた。
ギリシャ語:έδρα
読み方:エドゥラ・エードゥラ
ラテン文字:edra
古代ギリシャ語の ἕδρα(座席、座る場所)からの学術借用。印欧祖語で「座る」を表す根に由来し、ἕζομαι(座る)と同根。ラテン語 sedēre(座る)、サンスクリット sad-(座る)、英語 sit / seat も同じ根から来た語。
古代ギリシャ語から続く合成語が多く、現代語でもそのまま使う:καθέδρα(椅子、教授職。κατά- + ἕδρα)、εξέδρα(演壇、桟敷。ἐξ- + ἕδρα)、ενέδρα(待ち伏せ。ἐν- + ἕδρα)、συνέδριο(会議。σύν- + ἕδρα)、πρόεδρος(議長、大統領。πρό- + ἕδρα)、πάρεδρος(陪席、助手。παρά- + ἕδρα)、πολύεδρο(多面体)、τετράεδρο(四面体)など。動詞形 εδρεύω は「本部を置く」。
英語 cathedral(大聖堂)、chair(椅子)は καθέδρα がラテン語 cathedra を経て入った語で、「司教座・教師が座る椅子」のイメージから分かれた。幾何学の polyhedron(多面体)、tetrahedron(四面体)、dihedral(二面の)、建築の exedra(壁龕、半円形のベンチ)、薬用植物 ephedra(マオウ)/ephedrine(エフェドリン)は ἕδρα の合成語から取った学術語。「座る」の根からは、ラテン語を経て英語 sedentary(座りがちの)、session(会期)も生まれている。
ギリシャ語:πίεση
読み方:ピエシ・ピーエシ
ラテン文字:piesi
古代ギリシャ語の動詞 πιέζω(押す、圧迫する)から派生した名詞 πίεσις(圧縮、圧力)が起源。古代ギリシャ語の名詞語尾 -σις(-シス)が -ση(-シ)に変化する一般的な流れを経て、現代ギリシャ語の πίεση になった。類義語に ζούληγμα(強く握ること、つぶすこと)がある。
英語の piezoelectric(圧電)に含まれる接頭辞 piezo- は、この πιέζω に由来する。フランス語の pression や英語の pressure も同じ「押す力」という概念を表すが、こちらはラテン語 pressūra からの語で、ギリシャ語とは別の系統になる。
物理的に押す力から、物理学上の圧力、精神的なプレッシャー、医学的な血圧まで、何かが力を及ぼしている状態を広く指す。ατμοσφαιρική πίεση(大気圧)、ονομαστική πίεση(公称圧力)、πίεση σφυγμού(脈圧)のように、科学や工学、医学の専門用語にも使われる。
ギリシャ語:ισορροπία
読み方:イソロピア・イソロピーア
ラテン文字:isorropia
古代ギリシャ語の ἰσορροπία(釣り合い、等しく傾くこと)に由来。ἴσος(等しい)と ῥοπή(傾き、重さ)からなる合成語で、天秤の両側が等しく傾く、すなわち釣り合いの取れた状態を古代から表した。現代の物理・化学や社会的な「平衡、均衡」の意味は、フランス語 équilibre、英語 equilibrium からの意味借用で広がった。
対義語に ανισορροπία(不均衡、不安定)。派生語に ισορροπώ(バランスを取る), εξισορρόπηση(均衡の回復)。英語の iso- はこの ἴσος を受け継いだ接頭辞で、isosceles(二等辺三角形), isotope(同位体)などに使う。
ギリシャ語:θέση
読み方:セシ・セーシ・テシ・テーシ
ラテン文字:thesi
古代ギリシャ語の θέσις(置くこと、設置)に由来する。θέσις は「置く」を意味する動詞 τίθημι から派生した名詞で、もともとは「置くこと」「置かれた状態」を表した。中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の θέση となり、基本義である「置かれた場所」から、物理的な位置、座席、姿勢、社会的な地位、意見の立場まで幅広く指すようになった。
フランス語 place(場所、地位)や position(位置、立場)の語義の影響も受けている。
英語の thesis(テーゼ、命題)も、古代ギリシャ語の θέσις(置くこと、設置)と同じ語源から来ている。「置くこと」から「提示された考え」「主張」へ意味が広がった語で、現代ギリシャ語の θέση が「見解、立場」も指すこととつながりがある。
類義語には μέρος(場所、部分)、χώρος(空間、場所)、στάση(姿勢、態度)、πόστο(役職、持ち場)がある。μέρος は部分や場所、χώρος は広がりのある空間、στάση は体の姿勢や態度、πόστο は職場での持ち場やポストを指す。
主な意味は「位置、場所」。人や物が置かれた場所から、座席、体や物の姿勢、順位、社会的な地位や職務、募集枠、置かれた状況、見解や立場、社会や人生における役割や重要性まで、広い範囲で使われる。
指小語の θεσούλα は、皮肉を込めて公務員の安定したポストを指すことがあるほか、ちょっとした席や小さなスペースも指す。複合表現には χάρτης θέσης(位置図、所在マップ)や φώτα θέσης(車幅灯)がある。
ギリシャ語:απόσταση
読み方:アポスタシ・アポースタシ
ラテン文字:apostasi
古代ギリシャ語の動詞 ἀφίστημι(離れて立つ, 離れる)から派生した ἀπόστασις(離れること, 距離)に由来。ἀφίστημι は接頭辞 ἀπό-(離れて)と動詞 ἵστημι(立つ)から成る。
同じ語族に動詞 αφίσταμαι(離れる, 距離を置く), αποστασιοποίηση(距離を置くこと)。
類義語の διαδρομή は「行程」, διάστημα は「空間的・時間的間隔」に重心があり, απόσταση は二点間の隔たりそのものを指す。
ギリシャ語:πλευρά
読み方:プレヴラ・プレヴラー
ラテン文字:plevra
古代ギリシャ語の πλευρά(脇, 脇腹, 肋骨)に由来。形も意味も古代からほとんど変わらないが, 現代の「側面」「陣営」「観点」などの比喩的な用法はフランス語 côté, 英語 side からの意味借用で輪郭が整った。英語 pleura(胸膜)もラテン語経由でこの語から入った医学用語。
派生に πλευρικός(側の, 肋骨の), πλευρίτιδα(胸膜炎), πλευρίτσα, πλευρούλα(指小形)。合成語に δίπλευρος(二辺の), ισόπλευρος(等辺の), τρίπλευρος(三辺の), πολύπλευρος(多面的な), αμφίπλευρος(両面の)。中性並行形 πλευρό も同じ語族で, 肋骨を言うときによく使う。
話し言葉で「側, 面」と言うときは μεριά もよく使う。πλευρά は幾何学や形式的な場面, 身体の部位(肋骨), 抽象的な「側面」や議論の「陣営」で選ばれる。立方体のような立体の面を πλευρές と呼ぶこともあるが, 幾何学の厳密な用語では面は έδρα にあたる。
ギリシャ語:πιπεριά
読み方:ピペリア・ピペリアー
ラテン文字:piperia
サンスクリット語 pippalī(長胡椒)を源とする古代ギリシャ語 πέπερι(コショウ)から、中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の πιπέρι(コショウ)へと変化した。そこに、植物やその実を指す接尾辞 -ιά が付いて πιπεριά が成立した。
現代ギリシャ語で「コショウ」を指す πιπέρι とは明確に区別される。πιπέρι はコショウなどの香辛料を指し、πιπεριά はナス科トウガラシ属の植物やその果実を指す。
主な意味は、食用となる果実としての「ピーマン、パプリカ、トウガラシ」。同じ果実を実らせる植物の総称としても使われる。
指小語 πιπερίτσα は、小さなピーマンや、可愛らしいトウガラシを指す。
ギリシャ語:χελώνα
読み方:ヘロナ・ヘローナ
ラテン文字:chelona
古代ギリシャ語 χελώνη(カメ)から。語尾 -η が -α に変わった。改まった形では χελώνη も残る。
派生に χελωνάκι(子ガメ, 小さなカメ), χελωνίτσα(子ガメ), χελωνίσιος(カメの)。合成語に θαλασσοχελώνα(ウミガメ), νεροχελώνα(ミズガメ, 淡水ガメ), χελωνοειδής(カメのような), χελωνόστρακο(カメの甲羅)。
英語 chelonia(カメ目), chelonian(カメの)も同じ古代ギリシャ語にさかのぼる。
ギリシャ語:οχιά
読み方:オヒャ・オヒャー
ラテン文字:ochia
古代ギリシャ語の ἔχις(エキス:蛇、クサリヘビ)に由来する。現代ギリシャ語では οχιά の形で定着した。
ἔχις からは ἐχίδνα(エキドナ:毒蛇)も派生した。ギリシャ神話に登場する半人半蛇の怪物エキドナの名はこの語から来ており、英語の echidna(ハリモグラ)もこの神話上の怪物にちなんで名づけられた。
一般に「ヘビ」を指す φίδι に対し、οχιά はクサリヘビ科の毒蛇に限定される。類義語に、より学術的・文語的な έχειδνα(エキドナ)や、地域的な呼び名の όχεντρα がある。
οχιά διμούτσουνη(両頭のクサリヘビ)は、二枚舌の人間、つまり表裏のある卑怯者を指す表現。
主な意味はクサリヘビ科の毒蛇。比喩的に、陰険で悪意に満ちた人物を指すのにも使われる。
ギリシャ語:βανίλια
読み方:ヴァニリャ・ヴァニーリャ
ラテン文字:vanilia
スペイン語の vainilla(小さな鞘)に由来し、イタリア語の vaniglia やフランス語の vanille を経て現代ギリシャ語に入った。バニラの果実が細長い鞘の形をしていることから「小さな鞘」と名づけられた。英語の vanilla や日本語のバニラも同じ語源から来ている。
中南米原産のラン科の蔓性植物と、その種子鞘から抽出される香料成分(バニリン)を指す。ギリシャの食文化では伝統菓子 υποβρύχιο(直訳「潜水艦」)のことを βανίλια とも呼ぶほか、プラムの一品種も指す。
ギリシャ語:επιτάχυνση
読み方:エピタヒンシ・エピターヒンシ
ラテン文字:epitachynsi
古代ギリシャ語の ἐπιταχύνω(速める)から。ἐπί-(さらに)+ ταχύνω(速くする)からなり、語根 ταχύς(速い)は英語 tachy-(tachometer「回転速度計」、tachycardia「頻脈」、tachyon「タキオン」など)の語源でもある。
派生語に επιταχυντής(加速器、粒子加速器)、επιταχύνω(加速する、促進する)など。関連語に ταχύτητα(速度)、τάχυνση(同義の、接頭辞のない形)、επιβράδυνση(減速)など。
ギリシャ語:πιτσιλιά
読み方:ピツィリャ・ピツィリャー
ラテン文字:pitsilia
古代ギリシャ語の πίτυλος(水の跳ね、櫂が水を打つ音)に由来する。ヘレニズム期のコイネーを経て綴りが変化し、動詞 πιτσιλίζω(はねかける、まだらにする)が成立した。この動詞に女性名詞をつくる接尾辞 -ιά がついて πιτσιλιά となった。もとは水しぶきの痕を意味し、そこから染みや斑点全般を指すようになった。
口語では πιτσίλα と短くした形もよく使われる。
πιτσιλιά は λεκές(染み)や κηλίδα(しみ)と同義だが、液体が跳ねた痕や小さく散った斑点のニュアンスがある。肌のしみの文脈では φακίδες(そばかす)や πανάδες(日焼けのしみ)と並ぶ。πιτσιλιά から派生した形容詞 πιτσιλωτός(まだらの)は、動物の毛色などの描写に使う。
液体の跡やよごれの染みのほか、日光による肌のしみや動物の毛の斑点も指す。
ギリシャ語:βροχή
読み方:ヴロヒ・ヴロヒー
ラテン文字:vrochi
動詞 βρέχω(濡らす, 雨が降る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 βροχή(濡れ, 降り注ぐこと)を継承。古代では「雨」を言う中心語は ὑετός や ὄμβρος で, βροχή は副次的な語だったが, ヘレニズム期以降はこの βροχή が「雨」そのものを指す語として主流になった。非人称の βρέχει(雨が降っている)は今もよく使う言い方。
同じ βρέχω の語族に指小形 βροχούλα(小雨), 増大形 βροχάρα(大雨), 形容詞 βροχερός(雨の多い), βρόχινος(雨の), 名詞 βροχόπτωση(降水量), 合成語 ανεμοβρόχι(風雨), χιονόβροχο(みぞれ), ψιλόβροχο(霧雨), βροχόμετρο(雨量計), αδιάβροχο(レインコート, 防水の)。νερό(水)と組み合わせた νεροποντή(豪雨)も同じ圏にある。
δάσος βροχής(熱帯雨林)は英語 rain forest からの翻訳借用, τεχνητή βροχή(人工降雨)も英語 artificial rain と対応する形で取り入れられた。現代の気象用語は仏英からの訳語経路で整ったものが多い。
ギリシャ語:κτιριολογία
読み方:クティリオロイア・クティリオロイーア・クティリオロギア・クティリオロギーア
ラテン文字:ktiriologia
κτίριο(建物)の古い形 κτίριον に、体系的な学問や論理を意味する接尾辞 -λογία(英語 -logy の語源)が組み合わさった語で、学術的な表現として用いられる。κτίριον は古代ギリシャ語の οἰκητήριον(住む場所)が縮まった形で、中世にかけて κτίζω(建てる)と結びつけて理解されるようになった。英語の building science や building technology に相当する。
κτίσμα(建造物)は κτίζω から直接派生した語で、κτίριο とは成り立ちが異なるが、現代では意味の近い語として並んでいる。建築関連の学問には、意匠や設計に重点を置く αρχιτεκτονική(建築学)と、施工や技術に重点を置く οικοδομική(建築工学、建築術)がある。κτιριολογία はこの οικοδομική の一分野にあたる。
主に建築工学の一分野を指す。
ギリシャ語:ψαλμωδία
読み方:プサルモディア・プサルモディーア
ラテン文字:psalmodia
古代ギリシャ語の ψαλμῳδία(竪琴の伴奏に合わせた歌)に由来。ψαλμός(竪琴の伴奏付きの歌, 賛美歌)と ᾠδή(歌)からできた語で, 聖書翻訳とキリスト教典礼を通じて詩篇や聖歌の詠唱を指すようになった。現代ギリシャ語の用法は, フランス語 psalmodie, 英語 psalmody の意味配置と重なって整った。
英語 psalmody, フランス語 psalmodie はラテン語 psalmodia を経て同じ語源。ψαλμός と ᾠδός(歌い手)からできた並行する合成語 ψαλμωδός(詩篇歌い, 詠唱者)も同じ語族。派生に ψαλμωδικός(詠唱の), ψαλμωδώ(詠唱する)。
ύμνος(賛美歌, 賛歌)や άσμα(歌)は世俗の歌も指すのに対し, ψαλμωδία は教会の典礼で歌う場面に使うことが多い。
ギリシャ語:γητειά
読み方:イティア・イティアー・ギティア・ギティアー
ラテン文字:giteia
ギリシャ語:μαγγανεία
読み方:マガニア・マガニーア・マンガニア・マンガニーア
ラテン文字:magganeia
ギリシャ語:μάγια
読み方:マヤ・マーヤ
ラテン文字:magia
綴りは同じだが語源の異なる二つの語がある。
魔法の意味の τα μάγια(中性・複数のみ)は、中世ギリシャ語でヘレニズム期の形容詞 μάγιος(魔術の)が名詞化したもの。語源は μάγος(魔法使い)で、μαγεία(魔法、魔術)と同じ語根を持つ。μαγεία が概念としての魔法を表すのに対して、τα μάγια は具体的な魔術行為やまじないの手段、それによってもたらされる効果を指す。
レオタードの意味の η μάγια(女性・単数)は、フランス語の maillot(網目、編み物)に由来すると推測される。
なお、ストレス位置が異なる μαγιά(女性)はトルコ語 maya に由来するまったく別の語で、酵母を意味する。
主な意味は、魔術行為やまじないの手段、およびそれによる効果としての「魔法」。比喩的に、人を惹きつける魅力も表す。まったく別の語として、レオタードの意味もある。
ギリシャ語:μαγιά
読み方:マヤ・マヤー
ラテン文字:magia
トルコ語の maya(酵母)に由来する。パンや酒類を膨らませたり発酵させたりする物質を指すほか、チーズやヨーグルトを固める凝乳酵素なども含む。比喩的には、何かが始まるための核や元手を意味する。
綴りが同じでストレス位置が異なる μάγια は、魔法やレオタードを意味するまったく別の語。
主な意味は、パンやビール、乳製品の発酵や凝固を引き起こす物質としての「酵母、発酵の種」。比喩的には、物事の核や素地、初期資本も指す。
ギリシャ語:κανέλα
読み方:カネラ・カネーラ
ラテン文字:kanela
イタリア語 cannella(小さな管)を中世ギリシャ語が借り入れた語。cannella はラテン語 canna(葦)の指小形で、canna は古代ギリシャ語 κάννα(葦)がラテン語に入ったもの。乾燥したシナモン樹皮が丸まって筒状になる形からこの「小さな管」の名が付いた。
派生の形容詞 κανελής、指小形 κανελί(いずれもシナモン色)。同じ香辛料の別名に κιννάμωμο があり、こちらは古代ギリシャ語 κιννάμωμον からの語で、英語 cinnamon も同じ κιννάμωμον 経由の語。
ギリシャ語:μαγεία
読み方:マイア・マイーア・マギア・マギーア
ラテン文字:mageia
古代ペルシア語 magu-(祭司階級の呼び名)からギリシャ語に入った μάγος(魔術師)に接尾辞 -εία(〜の業)が付いた古代ギリシャ語の女性名詞 μαγεία(魔術)を継承。ラテン語 magia を経て, 英語 magic もここから。現代の「魅力, 魅惑」の意味は, フランス語 magie(魔法, 魅惑)からの意味借用で広がった。
派生語に動詞 μαγεύω(魅了する、魔法をかける)、形容詞 μαγικός(魔法の、不思議な)、中性複数 τα μάγια(具体的な魔術行為やまじない)など。μάγος の女性形は μάγισσα(魔女)。
近い語に μαγγανεία(害意のあるまじない、いかがわしい術策)があり、古代ギリシャ語の別語 μάγγανον(まじないの仕掛け)から派生した語。呪文の文句は επωδή や ξόρκι、民間のまじないは γητειά、害意のある呪いは κατάρα、悪霊祓いの儀式は εξορκισμός。
ギリシャ語:πορτοκαλιά
読み方:ポルトカリャ・ポルトカリャー
ラテン文字:portokalia
πορτοκάλι(オレンジ)に果樹を表す接尾辞 -ιά を付けた女性名詞。
オレンジの木を指す。
ギリシャ語:καρυδιά
読み方:カリディア・カリディアー
ラテン文字:karydia
καρύδι(クルミ)に接尾辞 -ιά がついた女性名詞で、クルミの木を指す。
クルミの木を指す。
ギリシャ語:λεμονιά
読み方:レモニャ・レモニャー
ラテン文字:lemonia
λεμόνι(レモン)に果樹を表す接尾辞 -ιά を付けた女性名詞。
レモンの木を指す。
ギリシャ語:κρύσταλλος
読み方:クリスタロス・クリースタロス
ラテン文字:krystallos
古代ギリシャ語の κρύσταλλος(澄んだ氷、水晶)に由来。現代の「結晶」「ガラス製品」の意味はフランス語 cristal、英語 crystal からの意味借用で広がった。英語 crystal もラテン語 crystallus を経て同じ語源。
現代ギリシャ語では主に男性名詞で、まれに女性名詞としても使う。同じ意味の中性名詞 κρύσταλλο の形もある。
ギリシャ語:στάχτη
読み方:スタフティ・スターフティ
ラテン文字:stachti
ヘレニズム時代の形容詞 στακτή(「滴下された」を意味する στακτός の女性形)に由来する。もとは灰を濾した液、つまり灰汁を指した語で、中世ギリシャ語の στάκτη(灰)を経て、調音の変化により kt が xt に変わり、現代ギリシャ語の στάχτη となった。この過程で意味も「灰汁」から「灰」そのものへ移った。
英語の static(静止した)や stay(留まる)と同じ、「立つ」を意味する印欧語の語根につながるとされ、もとは「沈殿したもの」というニュアンスを持つ。
類義語に τέφρα(灰)と σποδός(遺灰、遺骸)がある。τέφρα は学術的・文語的な語で、日常語としては στάχτη が一般的に使われる。
στάχτη からは色の形容詞 σταχτής(灰色の)が派生し、その中性形 σταχτί は名詞として灰色そのものを指す。
燃焼後に残る灰が基本の意味で、火山灰や遺灰にも使われる。さらに、火災や戦争で完全に破壊された状態を表す比喩にも使われ、「灰にする」「灰になる」の形で灰燼(かいじん)に帰すことを表す。「灰の中から」のように、壊滅からの再生を言う表現もある。
ギリシャ語:φεγγαρόπετρα
読み方:フェンガロペトゥラ・フェンガローペトゥラ
ラテン文字:feggaropetra
ギリシャ語:σκιά
読み方:スキャ・スキャー
ラテン文字:skia
古代ギリシャ語の σκιά(影, 日陰)を継承。印欧祖語で「影」を表す語根に続く語で, サンスクリット語 chāyā(光, 影)と同じ語族の仲間。「影絵芝居」「亡霊」「アイシャドウ」「比喩的な暗さ」など広い意味の使い分けは, フランス語 ombre, 英語 shadow, shade の意味配置と重なって整った。
派生に σκιερός(影の多い, 涼しい), σκιάζω(影をつくる, 怯えさせる), σκιάδιο(日よけ, バイザー)。合成語に σκιαγραφία(影絵, 素描), σκιαμαχία(影との戦い, 無意味な論争), σκιόφιλος(日陰を好む)。
日常の「影, 日陰」には同じ σκι- 語族の ίσκιος(男性名詞, 中世ギリシャ語 ἴσκιος 由来)のほうをよく使う。σκιά は一般的・抽象的な文脈に加え, 医学のレントゲン影やアイシャドウといった専門用語にも使う。光の一部が遮られてできる部分的な暗さを指し, 光が完全に遮断された σκοτάδι(暗闇)やその形容詞 σκοτεινός(暗い)とは焦点が異なる。反対概念は φως(光)で, 「φως και σκιά(光と影)」のように対で使うことも多い。
ギリシャ語:ευφορία
読み方:エフォリア・エフォリーア
ラテン文字:euforia
ευφορία は古代ギリシャ語の εὖ(よく)と φέρω(運ぶ、耐える)から成る語。古代ギリシャ語では「耐え忍ぶ力」を意味していたが、ヘレニズム期に「土壌が豊かであること(多産)」や「病気の際の安らぎ・快感」へと意味が変化した。
現代ギリシャ語で「精神的な幸福感」を指すようになったのは、フランス語 euphorie(ギリシャ語源からの借用語)から逆輸入される形で定着したことによる。英語の euphoria(多幸感、幸福感)とも語源を共有している。対義語には δυσφορία(不快感、不機嫌)がある。
主な意味は、心身の多幸感・高揚感と、土地が豊作をもたらす肥沃さの二つ。比喩的に、何かが満ち足りている状態を指すこともある。
ギリシャ語:θεωρία
読み方:セオリア・セオリーア・テオリア・テオリーア
ラテン文字:theoria
古代ギリシャ語の θεωρία(見ること, 観察, 熟考)に由来。θεωρός(使節, 観覧者)に抽象名詞の接尾辞 -ία が付いてできた語で, θέα(見ること, 眺め)を根にもつ語族の一員。「理論」「空論」「学説」の現代の使い分けは, フランス語 théorie, ドイツ語 Theorie, 英語 theory の意味配置と重なって整った。
派生に形容詞 θεωρητικός(理論的な)。「美しい外見」の古い意味からは民衆語の θωριά(風貌, 外見)が生まれた。
同じ θέα の語族に動詞 θεωρώ(見なす, 考える), θέατρο(劇場, 観る場所), θεώρημα(定理, 観察されたもの)。英語 theory(理論), theater(劇場), theorem(定理)はすべてこの語族からの学術借用。対になる πράξη(実践, 実行)とは「理論と実践」の対で対比される。類義の άποψη(意見, 見解), υπόθεση(仮説)は広く日常で使う。
ギリシャ語:υφήλιος
読み方:イフィリョス・イフィーリョス
ラテン文字:yfilios
古代ギリシャ語の ὑπό(〜の下)と ἥλιος(太陽 → ήλιος)からなる ὑφήλιος(太陽の下のもの)に由来。もとは γη(大地)を修飾する形容詞だったが、修飾先の γη が省かれて名詞として独立し、-ος の語尾でも γη に合わせた女性形のまま残ったので冠詞は η が付く。
類義語に κόσμος(世界、宇宙)、γη(地球、大地)。κόσμος は秩序・宇宙・世界観を、γη は大地・地球そのものを、υφήλιος は「太陽の下のすべて」の発想で地球上・世界全土を言う。ミス・ユニバースのギリシャ語名 Μις Υφήλιος にもこの語が使われる。
英語の接頭辞 hypo-(下、過少)は ὑπό、元素名 helium(ヘリウム)は ἥλιος と同じ語源につながる。
ギリシャ語:μάχη
読み方:マヒ・マーヒ
ラテン文字:machi
μάχη は古代ギリシャ語から受け継がれた語で、「戦う」を意味する印欧祖語の語根に由来する。この語根から英語の接尾辞 -machy(〜戦、〜闘争)が生まれ、logomachy(言葉の争い)などに使われている。ギリシャ神話の人名 Andromache(アンドロマケー)も、ἀνήρ(男)と μάχη を組み合わせた「男と戦う者」を意味する名前である。
派生語には μάχομαι(戦う)、μαχητής(戦士)、μαχητικός(戦闘的な)などがある。
類義語として πόλεμος(戦争)があるが、πόλεμος が国家間の長期にわたる武力紛争全体を指すのに対し、μάχη はより限定的な場所や時間で行われる具体的な戦闘や衝突を指す。また、αγώνας(競技、闘争、努力)とも近い意味を持つが、μάχη はより激しい対立や、勝敗がはっきり分かれる局面に重きが置かれる。
主な意味は、軍隊間の戦闘。そこから転じて、スポーツや政治などの競争・対決や、病気や困難に立ち向かう懸命な努力を指す。
ギリシャ語:θέα
読み方:セア・セーア・テア・テーア
ラテン文字:thea
古代ギリシャ語の θέα(見ること, 眺め, 光景)を継承。「見る, 観察する」を意味する動詞 θεάομαι の名詞形。同じ綴りでアクセント位置が異なる θεά(女神)は θεός(神)に由来する別の語で, 語源上のつながりはない。
同じ θέα の語族に θέαμα(見せ物, 光景), θέαση(観賞, 視聴), θεατής(観客), 合成語 θέατρο(劇場, もとは「観る場所」)。類義の語として άποψη(視点, パノラマ的な眺め), εικόνα(像, イメージ), κοίταγμα(見ること, 視線)がある。
英語 theater, theory はどちらも同じ θεάομαι の語族から入った語で, θέατρον(観る場所)→ラテン語 theatrum →英語 theater, θεωρία(観察, 考察)→ラテン語 theoria →英語 theory の経路で各言語に入った。仏語 théâtre, théorie も同じ経路。
ギリシャ語:πέτρα
読み方:ペトゥラ・ペートゥラ
ラテン文字:petra
古代ギリシャ語の πέτρα(岩, 岩盤)を継承。「大きな岩」から「石」全般へ意味が広がった。
英語の人名 Peter, ペテロ は同根の Πέτρος(男性形, 岩)から。新約聖書マタイ 16:18 でイエスが弟子シモンをそう呼んだことに由来する。英語 petroleum(石油)は πέτρα とラテン語 oleum(油)からの合成で「石の油」, petrify(石にする, 恐怖で固まらせる)も同じ系統。
指小形に πετρούλα, πετραδάκι(小石)。派生に πέτρινος(石の), πετρώνω(石化する)。合成に πετρέλαιο(石油), πετρογραφία(岩石学)。λίθος も同じ「石」を指す古代由来の語で, 現代ギリシャ語では鉱物学, 医学, 合成語に残る。ふつうの「石」には πέτρα を使う。
ギリシャ語:πυγολαμπίδα
読み方:ピゴラビダ・ピゴラビーダ・ピゴランビダ・ピゴランビーダ
ラテン文字:pygolampida
ギリシャ語:λίθος
読み方:リソス・リーソス・リトス・リートス
ラテン文字:lithos
古代ギリシャ語の λίθος(石)に由来。起源はよくわかっていない。英語の接尾辞 -lith, -lite(〜石)や litho-(lithography「石版画」、lithosphere「岩石圏」、monolith「一枚岩」など)、元素名 lithium(リチウム)はこの語から。
現代ギリシャ語は文語的な語で、ふつうは πέτρα を使う。λίθος は地質学や医学、建築の文脈、歴史的な慣用句に残る。男性名詞のほか、λυδία λίθος(試金石)や φιλοσοφική λίθος(賢者の石)のような固定表現では女性名詞として使う。派生語に形容詞 λίθινος(石の)、合成語の ασβεστόλιθος(石灰岩)、λιθόσφαιρα(岩石圏)など。
ギリシャ語:θεά
読み方:セア・セアー・テア・テアー
ラテン文字:thea
古代ギリシャ語の θεά(女神)に由来。男性名詞 θεός(神)の女性形で, 印欧祖語で「神聖な, 宗教的な」を表す語根に続く語。
派生に増大形 θεάρα(美女を強めて言うときの言い方)。成句 στρογγυλή θεά(丸い女神)はサッカーやサッカーボール自体を指す言い方。
同じ綴りでアクセント位置が異なる θέα(眺め, 景色)は別の語で, 動詞 θεάομαι(見つめる)に由来する。英語 theology(神学), enthusiasm(熱狂)の接頭辞 theo- はこの θεός / θεά と同じ語根から。
καλλονή(絶世の美女), κούκλα(人形のような美貌)は姿かたちの美しさを言うが, θεά は「神々しい, 圧倒的な」美しさの形容として使う。
ギリシャ語:αναλήθεια
読み方:アナリシア・アナリーシア・アナリティア・アナリーティア
ラテン文字:analitheia
ギリシャ語:τρέλα
読み方:トゥレラ・トゥレーラ
ラテン文字:trela
τρέλα は、動詞 τρελαίνω(狂わせる、正気を失わせる)から逆成で生まれた名詞。
医学的な「精神疾患」を指すときは ψυχοπάθεια や ψυχική διαταραχή も使われるが、τρέλα は日常会話でずっと広い範囲をカバーする。文字どおりの「狂気」だけでなく、無鉄砲な行動、何かへの強い熱中、口語で「最高だ」と褒める言い方まで含む。
主な意味は「狂気」。そこから、一時の気の迷いや無分別な振る舞い、何かへの強いこだわり、精神的に追い込まれて気が変になりそうな感覚も表す。複数形 τρέλες では若気の至りやふざけた振る舞いを言い、指小語 τρελίτσα や拡大語 τρελάρα の形でも使われる。
ギリシャ語:ποίηση
読み方:ピイシ・ピーイシ
ラテン文字:poiisi
古代ギリシャ語の ποίησις(作ること、創造すること)から。もともとは広く「何かを作り出すこと」を意味したが、しだいに韻文や文学的な創作を指す語として使われるようになり、現代ギリシャ語の ποίηση に至った。
ラテン語の poesis、フランス語の poésie、英語の poetry や poesy も同じ語源から来ている。ποίηση は、ギリシャ語の中で受け継がれてきた語であると同時に、西欧語の「詩」という語ともそのままつながっている。
近い語に ποίημα(個別の詩作品、詩)がある。ποίημα が一つひとつの作品を指しやすいのに対し、ποίηση は「詩という芸術」「詩作」という抽象的な意味でも、作品群全体をまとめて言う意味でも広く使われる。
派生語には ποιώ(作る)、ποιητής(詩人)、ποιητικός(詩的な)がある。ποίησις がもともと「作ること」を意味したため、詩だけでなく創作一般につながる語族が周辺に残っている。
主な意味は「詩」「詩作」。散文の πεζογραφία(散文文学)と対比される文学芸術の一分野を指すほか、個別の詩作品、特定の時代や作者による詩作品群、さらには風景や感情に宿る「詩情」「情趣」を表すのにも使われる。
ギリシャ語:αλήθεια
読み方:アリシア・アリーシア・アリティア・アリーティア
ラテン文字:alitheia
ギリシャ語:κατάρα
読み方:カタラ・カターラ
ラテン文字:katara
古代ギリシャ語の κατά-(〜に対して)と ἀρά(祈り)からなる κατάρα(呪い)を継承。
対義語は ευχή(願い、祝福)と ευλογία(祝福)。同じ祈りでも、相手の幸いを願うのが ευχή、災いを願うのが κατάρα。
ギリシャ語:αλχημεία
読み方:アルヒミア・アルヒミーア
ラテン文字:alchimeia
フランス語の alchimie(錬金術)からの外来借用で、中世ラテン語 alchemia、アラビア語 al-kīmiyāʾ(الكيمياء)を経て、もとは古代ギリシャ語の χυμεία(金属を溶かして合金を作る術)にさかのぼる再借用(αντιδάνειο)にあたる。χυμεία は動詞 χέω(注ぐ、流し込む)の派生語で、金属の溶融・合金作り・薬剤調合の技術を指した。アラビア圏に伝わるとき定冠詞 al- を伴って al-kīmiyāʾ となり、卑金属を金に変える秘術として中世イスラム世界で大きく発展、さらに中世ラテン語 alchemia、フランス語 alchimie を経て近代に元の言語へ αλχημεία の形で戻った。同じ古代 χυμεία からは、アラビアの al- を経ない学術的な再導入経路で、現代の χημεία(化学)も生まれた。英語 alchemy(仏 alchimie 経由), chemistry(中世ラテン chymia 経由)も同じ流れの語族。
類義語に χημεία(化学。同じ古代 χυμεία をもう一つの経路で取り戻した語で、近代以降に実証科学の用語として分化、αλχημεία と対をなす形), μυσταγωγία(秘儀、神秘的儀式), μαγεία(魔術、呪術)。αλχημεία は中世の錬金術、ならびに比喩的に不透明・疑わしい手段や裏工作を指す形として広く使い、比喩義は通常複数形 αλχημείες で現れる。派生に αλχημικός(錬金術の), αλχημιστής(錬金術師), αλχημίστρια(女性の錬金術師), αλχημιστικός(錬金術師の)。
ギリシャ語:πανάκεια
読み方:パナキア・パナーキア
ラテン文字:panakeia
古代ギリシャ語の παν-(すべて)と ἄκος(治療, 救済)からなる πανάκεια(万病を治す薬)を継承。神話ではパナケイア(Πανάκεια)が医神アスクレピオスの娘として万病を治す女神の名にもなる。現代の「万能の解決策」の比喩的用法はフランス語 panacée, 英語 panacea からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ἄκος の語族に ακέομαι(癒す), ακεσώδυνος(鎮痛の)。現代の日常で「治す, 治療する」は θεραπεύω が担い, ἄκος 語族は文語や古い医術文献に残る。
英語 panacea もラテン語 panacea を経て同じ語源。パナケイアの姉妹にはヒギエイア(Ὑγίεια, 健康の女神, 英語 hygiene の語源)もおり, アスクレピオスの娘たちは医術の各側面を司るとされる。
ギリシャ語:αθανασία
読み方:アサナシア・アサナシーア・アタナシア・アタナシーア
ラテン文字:athanasia
古代ギリシャ語の ἀθανασία(不死)に由来。αθάνατος に相当する古代形 ἀθάνατος(不死の、死なない)に -ία を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と θάνατος(死)にさかのぼる。
類義語に αιωνιότητα(永遠)、αφθαρσία(不滅、不朽)など。
英語 athanasy(不死、不朽)は古代ギリシャ語 ἀθανασία がそのまま入った語で、現代では古語として文学的な文脈に限られる。人名の Athanasius / Athanasia(アタナシオス、アタナシア)は同じ語から「不死の者」を表す名で、4世紀のアレクサンドリアの教父アタナシオスにちなむ Athanasian Creed(アタナシオス信条)も広く知られる。ギリシャ神話の死神 Θάνατος(Thanatos)、英語 euthanasia(安楽死、eu- + θάνατος)も同じ語根 θάνατος を含む。
ギリシャ語:τροχιά
読み方:トゥロヒャ・トゥロヒャー
ラテン文字:trochia
τροχιά は、古代ギリシャ語の τροχός(車輪、円)を起源とし、もともとは回転する輪や円のイメージをもつ語だった。ヘレニズム時代には「車輪の輪」を意味する語として使われたが、現代ギリシャ語で一般的な「車輪」は ρόδα という。近代に入ると、フランス語の orbite(軌道)の訳語として用いられて、現在の科学的な「軌道」の意味が定着した。
起源にある τροχός(車輪、円)は、英語の trochlea(滑車)や trochoid(トロコイド)とも同じ語源につながる。いずれも回転や円運動を思わせる語群で、τροχιά にもその名残がある。
近い語に πορεία があるが、こちらは「進路、過程、歩み」といった一般的な動きを指すことが多い。τροχιά はそれに対して、数学的・物理学的に描かれる軌道やカーブというニュアンスが強い。
主な意味は、天体や物体が移動するときに描く曲線である「軌道」。天体の公転軌道、発射体の弾道、数学で動点が描く軌跡を指すほか、比喩的に「歩み」「足跡」を表すこともある。さらに、鉄道のレールを指す用法もある。
ギリシャ語:ατμόσφαιρα
読み方:アトゥモスフェラ・アトゥモースフェラ
ラテン文字:atmosfaira
古代ギリシャ語の ἀτμός(蒸気、湯気)と σφαῖρα(球、球体)からなる ἀτμόσφαιρα に由来する学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。構成要素はともに古代ギリシャ語由来だが、合成語としての ἀτμόσφαιρα はもともと古代ギリシャ語にはなく、17世紀の自然学者ジョン・ウィルキンスがラテン語 atmosphaera を新造したのが始まりで、これがフランス語 atmosphère, 英語 atmosphere として国際的に広まり、現代ギリシャ語にも入った。元の構成要素がギリシャ語由来であるため、再借用(αντιδάνειο)の側面も持つ。「雰囲気・ムード」の比喩義はフランス語・英語経由で広がった意味借用。古代の σφαῖρα は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、Beekes は先ギリシャ語基層からの語と位置づけている。同じ古代 σφαῖρα から英語 sphere(球), hemisphere(半球), 独 Sphäre が、また ἀτμός から英語 atomizer(噴霧器)など蒸気・霧化に関する語族が広まっている。
類義語に αέρας(空気、風。日常の空気、室内・身近な雰囲気), κλίμα(気候、風土、世論。場の雰囲気・空気感も指す), διάθεση(気分、ムード。個人の心の状態)。ατμόσφαιρα は地球や天体を取り囲む大気そのもの、物理学の気圧単位、場の雰囲気、文学・映画作品の独特の情緒を指す形として広く使う。派生に ατμοσφαιρικός(大気の、雰囲気のある), ατμοσφαιρικότητα(雰囲気のあるさま)。関連語に ατμός(蒸気), σφαίρα(球), ατμο-(蒸気・大気を表す結合辞)。成句に περιρρέουσα ατμόσφαιρα(社会を取り巻く空気、情勢)。
ギリシャ語:γλώσσα
読み方:グロサ・グローサ
ラテン文字:glossa
古代ギリシャ語の γλῶσσα(舌、言語)を継承。μητέρα γλώσσα(母語), νεκρή γλώσσα(死語), ξύλινη γλώσσα(官僚的で空疎な言葉づかい)など、言語にまつわる現代の言い回しはフランス語・英語からの意味借用で入っているものが多い。
派生語に γλωσσικός(言語の), γλωσσολογία(言語学), πολύγλωσσος(多言語の、多言語話者), γλωσσομαθής(外国語に通じた)。関連語に διάλεκτος(方言), ιδίωμα(土地言葉、言い回し)。英語 glossary, glottis, polyglot も同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:μάνα
読み方:マナ・マーナ
ラテン文字:mana
μάνα は古代ギリシャ語の μάμμα(乳房、お母さん)にさかのぼる。そこから子音異化によって m-m が m-n となって μάνα となり、中世ギリシャ語では μάννα(お母さん)の形が見られる。そこを経て現在の μάνα に至った。
同じ「母親」を表す μητέρα は、よりフォーマルで書き言葉寄りの語。これに対して μάνα は、感情のこもった日常的な響きを持つ。
指小辞には μανούλα(お母ちゃん)、μανουλίτσα(大好きなお母さん)、μανίτσα(お母ちゃん)がある。いずれも親しみや愛情を込めた言い方で、μανίτσα は口語的で民俗的な響きを持つ。
最も基本的には「母親」を表す。そこから比喩的に、他人の面倒を見る人、あることの名人、書類の原本、遊びや賭け事での親・陣地・胴元・開始地点の駒なども指す。民俗的、詩的には豊かな水の湧く場所という意味でも用いられる。
ギリシャ語:αξία
読み方:アクシア・アクシーア
ラテン文字:axia
古代ギリシャ語の形容詞 ἄξιος(ふさわしい、価値がある)の女性名詞形 ἀξία を継承。英語の axiology(価値論)や axiom(公理)の axio- も同じ起源。現代の「価格」「重要性」などの用法にはフランス語 valeur、「音価」などの専門用法にはドイツ語 Wert の意味借用が含まれる。
類義語の τιμή は市場での「値段」や、名誉としての「誉れ」を指すのに対し、αξία はより本質的な「価値」や「値打ち」を表す。σπουδαιότητα は物事の重要性に焦点を当てた語である。
派生語には、άξιος(価値のある、有能な)、αξιολογία(価値論、評価)、πολύτιμος(貴重な)、απαξία(無価値、軽蔑)がある。
主な意味は「価値」。人間の美徳や能力、物事の重要性、芸術的な質、社会的な価値観、経済的な価格や有価証券、音楽の音価、文法上の用法まで、きわめて広い範囲で使われる。
ギリシャ語:σύγκρουση
読み方:シググルシ・シーググルシ・シングルシ・シーングルシ
ラテン文字:sygkrousi
古代ギリシャ語の σύγκρουσις(互いにぶつかり合うこと)から。「共に」を意味する接頭辞 συν- と「打つ、叩く」を意味する動詞 κρούω が組み合わさったもので、もともとは物理的なぶつかり合いを表していた。
中世を経て現代ギリシャ語に至り、物理的な衝突だけでなく、意見や利益の対立、武力紛争、心理的な葛藤まで幅広く使われるようになった。動詞形は συγκρούομαι(衝突する、対立する)。
σύγκρουση と近い意味を持つ語もあるが、それぞれ用法の幅が異なる。πρόσκρουση は物体が固定物にぶつかる「衝撃」に重点を置く。τρακάρισμα は車の衝突事故を指す口語。αντιπαράθεση や διαμάχη は意見や立場の「対立・論争」に使われ、肉体的な衝突を含まないことが多い。
主な意味は、物体同士の物理的な衝突、意見や利益の対立、武力による紛争、そして心理的な葛藤。武力紛争については、πόλεμος(戦争)が組織的・長期的な紛争を指すのに対し、σύγκρουση は個々の衝突や散発的な小競り合いにも使われる。
σύγκρουση は σύγκρουση συμφερόντων(利益相反)や σύγκρουση των πολιτισμών(文明の衝突)のように、法律、政治学、心理学でも定着した複合表現に使われる。
ギリシャ語:ειρήνη
読み方:イリニ・イリーニ
ラテン文字:eirini
古代ギリシャ語の εἰρήνη(平和、静寂)を継承。さらなる起源は確かでなく、ギリシャ語以前の基層語とする見方が有力。ギリシャ神話の平和の女神 Εἰρήνη(エイレネ、ホーライ「季節の女神たち」の一柱)もこの語そのもので、英語の女性名 Irene(アイリーン)も同じ名の系譜。フランス語 Irène、ロシア語 Ирина などヨーロッパ各国の女性名として残る。
派生語に ειρηνικός(平和な;太平洋の、Ειρηνικός Ωκεανός「太平洋」)、ειρηνεύω(平和にする、和解する)、ειρηνιστής(平和主義者)、ειρηνισμός(平和主義)など。類義語に γαλήνη(平穏、静穏)、ηρεμία(落ち着き)。対義語は πόλεμος(戦争)。
英語 irenic(平和的な、宥和的な)、irenology(平和学)は同じ εἰρήνη をもとにした学術語。
ギリシャ語:λευτεριά
読み方:レフテリア・レフテリアー
ラテン文字:lefteria
古代ギリシャ語 ἐλευθερία(自由)から3つの音変化を経て生まれた口語形。まず語末の -ερία が -εριά に縮約して母音の連続を避け、アクセントが最終音節に移った。次に ευθ の発音 [fθ] で摩擦音が2つ続くのを嫌い、θ が破裂音の τ に変わった。最後に語頭のアクセントのない ε- が脱落して、現在の λευτεριά の形になった。
ελευθερία(自由)の口語的な形であり、民衆語(ディモティキ)や文学的な文脈で用いられる。より感情的、情熱的な響きを持つ。
ギリシャ語:ελευθερία
読み方:エレフセリア・エレフセリーア・エレフテリア・エレフテリーア
ラテン文字:eleftheria
古代ギリシャ語の ἐλευθερία(自由、自由身分)に由来。古代ギリシャでは人の身分が ἐλεύθεροι(自由民)と δοῦλοι(奴隷)に法律上分かれており、形容詞 ἐλεύθερος は「自由民の」「奴隷ではない」という身分を指す語だった。抽象名詞 ἐλευθερία もまずは「自由民であること、奴隷でない法的身分」を意味し、そこから国家の独立、行動・言論の自由、哲学的な自由意志まで、抽象的な「自由」一般に意味が広がった。印欧祖語まで遡ると「人々の仲間に属する者」を意味する語根にたどりつき、自由民とはもともと共同体に属する人のことだった。
派生語に ελευθερώνω(自由にする、解放する)、ελευθερωτής(解放者)、ελευθερωτικός(解放の)。口語的な λευτεριά は民衆歌や文学で使われ、感情のこもった響きを持つ。複数形 ελευθερίες は「個々の自由、諸権利」を指す。対義語に ανελευθερία(不自由)、δουλεία(隷属)、σκλαβιά(奴隷状態)。
ギリシャ語:σκλαβιά
読み方:スクラヴィア・スクラヴィアー
ラテン文字:sklavia
中世ギリシャ語の σκλαβιά に由来する。もとは「スラブ人」を指す Σκλάβος から派生した語で、中世から近世にかけて「奴隷状態」を意味するようになった。英語の slave(奴隷)も、同じ Σκλάβος がラテン語を経て変化したもの。
σκλαβιά は状態を表す抽象名詞で、奴隷そのものを指す場合は σκλάβος(男性形)、σκλάβα(女性形)を用いる。
類義語に δουλεία(奴隷制度) があるが、δουλεία がより概念的・法的な用語であるのに対し、σκλαβιά は「残酷な」「耐え難い」といった感情的なニュアンスを伴うことが多い。歴史的な隷属を語る文脈で好まれる。対義語は ελευθερία(自由)。
主な意味は「奴隷の身分」「隷属状態」。民族や国家の支配について語る際に用いられるほか、比喩的に社会・経済的な「縛り」についても使われる。
ギリシャ語:δουλεία
読み方:ドゥリア・ドゥリーア
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλεία(奴隷状態、隷属、隷属の身分)に由来する学術借用(διαχρονικό δάνειο)。動詞 δουλεύω(仕える、奴隷として働く)+ 行為・状態を表す名詞語尾 -εία の合成で、δοῦλος(奴隷)にさかのぼる。法律用語の「地役権」の用法はフランス語 servitude(隷属、地役権)からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)で近代に加わった。古代の δοῦλος 自体は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、ミケーネ・ギリシャ語にすでに do-e-ro の形で現れているため、エーゲ系基層からの語とする説が有力。同じ古代 δοῦλος から、キリスト教神学のラテン語化を経て、ラテン語 dulia(聖人崇敬。神への崇拝 latria と区別される下位の敬礼)が生まれた。同じ綴りで強勢位置だけが異なる δουλειά(仕事)は同じ δοῦλος 由来だが、中世ギリシャ語で「奴隷の作業」から「労働一般」へと意味が動いた継承語で、δουλεία とは経路が異なる。
類義語に σκλαβιά(奴隷の身分、隷属。中世のスラブ系民族 Σκλάβοι に由来する継承語で、感情的・歴史的な文脈、とくにオスマン帝国支配下のギリシャを指すときに使う), υποτέλεια(属国状態、貢納義務。古代由来の書き言葉の硬い形), υποδούλωση(隷属化、奴隷化)。δουλεία は概念的・法的な用語として奴隷制度・隷属を指し、また法律用語として地役権を指す形として広く使う。派生に δουλικός(奴隷の、卑屈な), δουλικότητα(卑屈さ、屈従)。関連語に δοῦλος(奴隷。古代由来の元の語), δουλειά(仕事。同源で強勢位置の異なる継承語), δουλεύω(働く、仕える。動詞), υπόδουλος(隷属した), δουλοσύνη(隷属、奴隷状態。詩歌的・古風な形)。合成語に δουλοκτησία(奴隷所有制), δουλεμπόριο(奴隷貿易), δουλοπάροικος(農奴)。
ギリシャ語:παραλία
読み方:パラリア・パラリーア
ラテン文字:paralia
古代ギリシャ語の παράλιος(海岸の、海辺の)から。παρά(〜のそば)と ἅλς(海)からなる形容詞で、もとは παραλία χώρα(海岸地方)のように名詞を伴っていたが、παραλία 単独で名詞として定着した。派生語に παραλιακός(海岸の、沿岸の)。
類義語の ακτή は地形としての海岸線を指し、崖や岩場も含む。παραλία は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:δουλειά
読み方:ドゥリア・ドゥリアー
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλειά を継承。もとは δοῦλος(奴隷)から作られた δουλεία(奴隷状態、隷属)で、母音連続を避ける音変化で δουλειά の形になり、意味も「仕事、労働」全般に移った。同じ綴りでストレス位置だけ異なる δουλεία(ドゥリーア)は「奴隷制度、隷属」を保ったまま別の語として残る。
派生語に動詞 δουλεύω(働く)、δουλευτής(働き者)、指小語 δουλίτσα(ちょっとした仕事)。類義語の εργασία(労働、業務)は ώρες εργασίας(労働時間)、σύμβαση εργασίας(雇用契約)など雇用・労働制度の定型語や複合語で使い、論文・レポート・作品といった「成果物としての仕事」も指す。δουλειά はふだんの「仕事」に使う。επάγγελμα(職業)は具体的な職種、κάματο は苦労を伴う重労働を指す。
ギリシャ語:λογική
読み方:ロイキ・ロイキー・ロギキ・ロギキー
ラテン文字:logiki
古代ギリシャ語の λογική(論理, 論理学)に由来。形容詞 λογικός(言葉に関する, 理にかなった)の女性形が名詞化した語で, 背景には λόγος(言葉, 理性, 理論)がある。もとは λογική τέχνη(論理の技法)として古代の哲学や修辞で使われた。現代の「論理, ロジック, 常識」の用法はフランス語 logique, 英語 logic からの意味借用で輪郭が整った。
同じ λόγος の語族に λογικός(理にかなった, 論理的な), λογικά(論理的に, 合理的に), λογικότητα(合理性), λογισμός(計算, 勘定), ορθολογισμός(合理主義), παραλογισμός(不合理)。
類義語 μυαλό(頭, 頭脳)や νους(精神, 知性)が思考する主体や能力を指すのに対し, λογική は筋道立った考え方や推論の枠を指す。対義的な語は παράλογο(不条理, 不合理), παραλογισμός(不合理)。英語 logic, logical, logician もこの λογικός の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:μοναξιά
読み方:モナクシア・モナクシアー
ラテン文字:monaxia
古代ギリシャ語の μόνος(ただ一つの, 独りの)から派生した μοναξία(独りでいること)を継承。母音の衝突を避ける音変化を経て今の形になり現代に至る。
同じ μόνος の語族に μοναχός(修道士, 孤独な), μοναχικός(孤独の, 独り好きの), μοναχικότητα(独居の性質), μονήρης(独居の), 合成語 μοναστήρι(修道院), μονάζω(独居する)。英語 mono-, monk, monastery もラテン語を経由してこの μόνος の語族に連なる。
類義語 ερημιά は場所の荒涼や人けのなさが前に出るのに対し, μοναξιά は独りでいる人の状態や内面の寂しさを指すことが多い。
ギリシャ語:σοκολάτα
読み方:ソコラタ・ソコラータ
ラテン文字:sokolata
ギリシャ語:ταινία
読み方:テニア・テニーア
ラテン文字:tainia
古代ギリシャ語の ταινία(帯, リボン, 鉢巻き)に由来。印欧祖語で「張る, 伸ばす」を表す語根に続く語で, 同じ語族に動詞 τείνω(張る, 伸ばす)。「映画フィルム」「磁気テープ」「映画作品」の意味は近代にフランス語 bande(帯, フィルム, テープ)の意味配置と重なって加わり, 「サナダムシ」の医学的な意味はすでにヘレニズム期にあり, ラテン語 taenia, フランス語 ténια, 英語 taenia の医学用語の語源にもなった。
派生に指小形 ταινιούλα(小さなリボン, 軽蔑的に「つまらない映画」), 形容詞 ταινιακός(テープ状の)。合成語に βιντεοταινία(ビデオテープ), μαγνητοταινία(磁気テープ), τηλεταινία(テレビ映画)。
映画作品を指すときにもっとも使われるのは ταινία。σινεμά はフランス語 cinéma 由来の借用で, 映画館のほか映画(芸術・産業全体)も指す。κινηματογράφος は κίνημα(動き)と γράφω(記録する)を合わせた語で, 映画館のほか映画という分野そのものも指す。単なる紐やリボンには κορδέλα(紐, リボン)を使い, 幅のある帯や鉢巻き, テープ類には ταινία。
ギリシャ語:γνώση
読み方:グノシ・グノーシ
ラテン文字:gnosi
印欧祖語で「知る」を表す語根にさかのぼる動詞 γιγνώσκω(知る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γνῶσις(知識)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γνώση の形になった。英語の gno- を含む gnostic, diagnosis, prognosis, recognize も同じ語族。
同じ語族に動詞 γνωρίζω(知る, 知らせる), γνωστός(知られている, 知人), γνωστικός(認識の, 知的な), γνώμη(意見, 判断), γνώμων(指標), άγνοια(無知), αναγνώριση(認識)。合成語に επίγνωση(自覚), διάγνωση(診断), πρόγνωση(予後, 予測), γνωσιολογία(認識論)。
μάθηση(学習)は学ぶ過程, παιδεία(教育, 教養)は全人格的形成, σοφία(知恵)は知を正しく使う洞察を指す。
ギリシャ語:αχλαδομηλιά
読み方:アフラドミリャ・アフラドミリャー
ラテン文字:achladomilia
和梨(αχλαδόμηλο)の果実がなる木。
ギリシャ語:σταφυλιά
読み方:スタフィリャ・スタフィリャー
ラテン文字:stafylia
σταφύλι(ブドウ)に接尾辞 -ιά がついた形。
ブドウの棚、またはブドウの木そのものを指す。
ギリシャ語:μοκέτα
読み方:モケタ・モケータ
ラテン文字:moketa
フランス語の moquette(厚みのあるパイル織りの織物、敷き詰めカーペット)からの外来借用。19世紀以降、フランスのパイル織り技術が広まる中で住宅・劇場・列車内装材としての敷き詰めカーペットを指す国際語となり、ギリシャ語にもこの語形のまま入った。フランス語 moquette 自体は毛足の長いパイル織物を指す古い職人言葉に由来し、明確な近縁の同族語は他言語に残っていない。同じフランス語からイタリア語 mochetta, スペイン語 moqueta, 英語 moquette も入っている。
類義語に χαλί(絨毯、敷物。トルコ語 halı 由来の外来借用で、床に置く取り外し自在な絨毯全般を指す), τάπητας(絨毯、織物。古代ギリシャ語 τάπης 由来で、行政・公式・装飾文化の硬い文脈で使う), κιλίμι(キリム。トルコ語 kilim 由来の外来借用で、毛足のない平織り絨毯)。μοκέτα は壁から壁まで床面に固定して敷き詰めるロール状のカーペットを指す形として広く使い、車のフロアマットも指す。
ギリシャ語:κάρτα
読み方:カルタ・カールタ
ラテン文字:karta
イタリア語の carta(紙、カード)からの外来借用で、carta はラテン語 charta(パピルス紙)を経て、もとは古代ギリシャ語の χάρτης(パピルスの巻物、紙)にさかのぼる。古代ギリシャ語からラテン・イタリアと西欧諸語を巡って戻ってきた再借用(αντιδάνειο)にあたる。同じ χάρτης 由来で継承形のままギリシャ語に残った χαρτί(紙、書類)と、再借用として戻った κάρτα は、語源を共有する別形の対をなす。英語 card(仏 carte 経由), chart(地図), charter(憲章), cartoon(漫画), cartography(地図学)も同じ χάρτης 系譜の借用で、日本語のカルタ(ポルトガル語 carta 経由)も同根。
類義語に χαρτί(紙、トランプの札。同じ χάρτης 由来の継承形), δελτίο(カード、整理券、票。古代ギリシャ語 δέλτος「板、書字板」の指小形 δελτίον 由来で、行政・公式の硬い文脈で使う)。κάρτα はハガキ、身分証、決済カード、回路基板などプラスチック製や厚紙製の小さなカード状のものを指す形として広く使う。派生に καρτούλα, καρτάκι(小さなカード。指小形)。関連語に χάρτης(地図、海図、憲章。同じ古代の χάρτης の素形を保った形), καρτ-ποστάλ(ポストカード。フランス語 carte postale 由来の外来借用)。
ギリシャ語:γραμμή
読み方:グラミ・グラミー
ラテン文字:grammi
ギリシャ語:σάλτσα
読み方:サルツァ・サールツァ
ラテン文字:saltsa
イタリア語の salsa(塩味のついたもの、調味された汁)からの外来借用。中世以降にギリシャ語に入り、写本には σάρτσα のつづりも現れたが、子音連続を発音しやすくした σάλτσα の形が定着した。イタリア語 salsa はラテン語 salsus(塩で味付けされた)の女性形 salsa に由来し、ラテン語 sal(塩)にさかのぼる。「塩」を表す印欧祖語の語根を共有し、古代ギリシャ語の ἁλς, ἁλός(塩、海)も同じ語根からの継承で同根。ラテン語 sal からは英語 sauce(仏 sauce 経由), salad(仏 salade 経由), salsa(西 salsa), sausage(古仏 saussiche 経由), salt など料理関連の語が世界中に広まった。
類義語に σως(ソース。フランス語・英語 sauce 由来の外来借用で、西洋料理レストランや洋食メニューの硬い文脈で使う), άρτυμα(調味料、薬味。古代ギリシャ語由来で、調理に使う風味付けの素材一般を指す書き言葉の硬い形), έμβαμμα(つけだれ、ディップ。古代ギリシャ語の ἐμβάπτω「浸す」由来), ζωμός(煮汁、出汁。古代ギリシャ語由来)。σάλτσα はパスタ・肉料理・サラダなどに添える液状またはとろみのある調味された調理物全般を指す形として広く使う。派生に σαλτσούλα(小さなソース、ちょっとしたソース。指小形), σαλτσιέρα(ソース入れ、グレービーボート)。
ギリシャ語:πόλη
読み方:ポリ・ポーリ
ラテン文字:poli
古代ギリシャ語の πόλις(都市、都市国家)を継承。古典の主格 πόλις、属格 πόλεως の形が、中世ギリシャ語以降に主格 πόλη として整えなおされ、属格 πόλης / πόλεως, 複数 πόλεις, πόλεων と古典の屈折を一部残した形で日常語として今に至る。古代の πόλις は「要塞、城砦」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、サンスクリット語 pur, pura(城砦、町), リトアニア語 pilis(城)と同根。英語 politics(政治), policy(政策), metropolis(首都、大都市), acropolis(アクロポリス), necropolis(墓地), cosmopolitan(世界市民の)はいずれも πόλις からラテン語経由で入った学術借用。
類義語に άστυ(街、市街地。古代ギリシャ語由来で書き言葉の硬い形、住居や街並みの物理的側面を指す), πολιτεία(国家、政体、市民社会。同じ πόλις 系で政治的なまとまりを指す), δήμος(自治体、市。行政単位としての市を指す), χωριό(村), κωμόπολη(町、小都市)。πόλη は人口や建物が集まった居住地を指すふつうの形として広く使い、固有名的に大文字 Πόλη だけでコンスタンティノープルを指す用法が中世から続く。関連語に πολίτης(市民、住民), πολιτική(政治), πολιτικός(政治の、政治家), πολιτισμός(文明、文化), πολίτευμα(政体), πολεοδομία(都市計画), πολιούχος(町の守護神、守護聖人), πόλισμα(小集落、町)。合成語に μητρόπολη(首都、大都市、府主教座), ακρόπολη(アクロポリス、上の街), μεγαλούπολη(巨大都市), κωμόπολη(小都市、町), νεκρόπολη(墓地、死者の町), υπερπόλη(超巨大都市)。
ギリシャ語:ψυχή
読み方:プシヒ・プシヒー
ラテン文字:psychi
古代ギリシャ語の ψυχή(息, 呼吸)を継承。印欧祖語で「吹く」を表す語根に続く ψύχω(吹く, 冷やす)から結果を表す -η を付けて作られた語で, 息をすること = 生きていることから「生命, 魂」へと意味が移った。弦楽器の魂柱や鉄骨の芯を指す技術用語としての用法は, ドイツ語 Seele からの意味借用で加わった。
英語 psycho-(心理), psychology(心理学), psychiatry(精神医学)はこの語をもとにした語。派生に ψυχικός(魂の, 精神の), ψυχούλα(愛しい人), ψυχάκι(親しい人)。
心を扱う語では, 感情は καρδιά(心臓, 心), 思考や理性は νους(精神, 理性), 理念や霊性は πνεύμα(精神, 霊)。ψυχή は魂や生命全体としての「心」を扱う。
ギリシャ語:τούρτα
読み方:トゥルタ・トゥールタ
ラテン文字:tourta
中世のヴェネツィア・イタリアとの交易を通じて入った外来借用で、イタリア語の torta(円形のパン菓子、菓子)またはフランス語の tourte(パイ、円い菓子)が直接の借用元。これらはラテン語 torta(panis)(ねじったパン、円形のパン)にさかのぼり、もとは「ねじる」を意味する動詞 torqueō の語幹を持つ。古代ギリシャ語にもラテン語からヘレニズム期に入った τοῦρτα(焼き菓子の一種)があり、同じ系譜の早い借用として下地を作っていた。中世以降の伊仏のケーキ文化と結び付き、現代の τούρτα は祝事の華やかな飾り菓子を担う形に落ち着いた。英語 tart(タルト), torte(トルテ)はいずれも同じラテン語 torta から経由して入った借用で、τούρτα と語根を共有する。
類義語に κέικ(ケーキ。英語 cake からの外来借用で、パウンドケーキ等の素朴な焼き菓子を指す), πάστα(個別のショートケーキ、ペイストリー。イタリア語 pasta 由来), γλύκισμα(菓子全般を指す総称)。τούρτα はクリームや果物で飾った華やかなデコレーションケーキを指す形として広く使う。派生に τουρτίτσα(小さなケーキ。指小形)。
ギリシャ語:καρπουζιά
読み方:カルプジア・カルプジアー・カルプズィア・カルプズィアー
ラテン文字:karpouzia
καρπούζι(スイカの果実)に、植物の名称を作る接尾辞 -ιά を付けた語。
スイカの植物体を指す。
ギリシャ語:ντομάτα
読み方:ドマタ・ドマータ
ラテン文字:domata
ナワトル語の tomātl(トマト)がスペイン語 tomate、フランス語 tomate を経てギリシャ語に入った外来借用で、女性名詞を作る -α を付けて 1818 年ごろから使われるようになった。書き言葉では τομάτα という形も併用される。英語 tomato も同じ Nahuatl tomātl からスペイン語 tomate 経由で入った借用で、ギリシャ語 ντομάτα と語源を共有する。
ντομάτα は食用果実としてのトマトをふつうに指す形として広く使う。派生に ντοματάκι(ミニトマト、小さなトマト。指小形), ντοματίνι(ミニトマト。指小形), ντοματούλα(小さなトマト、かわいらしいトマト), ντοματιά(トマトの株、トマトの木)。合成語に ντοματοσαλάτα(トマトサラダ), ντοματοσάλτσα(トマトソース), ντοματόσουπα(トマトスープ), ντοματοχυμός(トマトジュース), ντοματόζουμο(トマトジュース), ντοματοπελτές(トマトペースト)。
ギリシャ語:σημαία
読み方:シメア・シメーア
ラテン文字:simaia
古代ギリシャ語の σῆμα(印、信号、目印)から派生したヘレニズム期ギリシャ語 σημαία(軍旗、信号旗)を中世ギリシャ語が公式・軍事の文脈で書き継ぎ、現代ギリシャ語に学術借用として戻って「旗」全般を指す形に落ち着いた。英語 semantic(意味論の), semaphore(手旗信号), semiotics(記号論)はいずれも同じ σῆμα からラテン語・フランス語を経由して入った学術借用で、σημαία と語根を共有する。
類義語に λάβαρο(幟。ローマ帝政期の軍旗 labarum 由来で、宗教儀式や式典の旗を指す硬い語), παντιέρα(旗。イタリア語 bandiera 由来の外来借用で、出帆や戦闘の場面で使うやや古風な語), μπαϊράκι(旗。トルコ語 bayrak 由来の外来借用で、くだけた俗な響き)。σημαία は国家・組織・思想の象徴としての旗を指すふつうの形として広く使う。派生に σημαιάκι, σημαιούλα(小さな旗。指小形)。合成語に σημαιοφόρος(旗手), σημαιοστολισμός(旗での飾り付け), σημαιοστολισμένος(旗で飾られた)。関連語に σήμα(印、信号、標章), σημείο(点、徴候、場所), σημαίνω(意味する、合図する), σημείωση(メモ、注記)。
ギリシャ語:παλάμη
読み方:パラミ・パラーミ
ラテン文字:palami
古代ギリシャ語の παλάμη(手のひら)を継承。ホメロスにすでに現れ、印欧祖語で「平たい、広い」を表す語根に続く。ラテン語 palma(手のひら、棕櫚)と語源を共有し、英語 palm, フランス語 paume はラテン語を経由して同じ語根に連なる。
同じ語根からギリシャ語内に πλατύς(広い), πλάγιος(斜めの), πλάξ(平板), πέλαγος(広い海原、外海)が派生。古英語 folm(手), 古アイルランド語 lám(手)も同じ語根に続く。
別形に απαλάμη(手のひら)。派生に παλαμάκια(拍手), παλαμίζω(手で触る、撫でる), παλαμοειδής(掌状の)。手全体は χέρι で、παλάμη は手首から指の付け根までの内側にかぎって使う。
ギリシャ語:ματιά
読み方:マティア・マティアー
ラテン文字:matia
ギリシャ語:ημέρα
読み方:イメラ・イメーラ
ラテン文字:imera
古代ギリシャ語の ἡμέρα(日)を継承。フォーマルな文章や καλημέρα のような挨拶では古代の形のまま、日常会話では中世以降に語頭の母音が落ちた μέρα が一般的。
派生語に ημερήσιος(日ごとの), ημερίδα(一日の研究会), σήμερα(今日), καθημερινός(日々の), εφημερίδα(新聞、もとは「日刊のもの」), ενημερώνω(知らせる)など。英語 ephemeral(はかない、短命の)は古代ギリシャ語の ἐφήμερος(一日かぎりの)を経て同じ ἡμέρα をもとにした語。
ギリシャ語:μέρα
読み方:メラ・メーラ
ラテン文字:mera
古代ギリシャ語の ἡμέρα(日、昼間。ἦμαρ「日」の長母音形)を継承。冠詞つきの την ημέρα, της ημέρας などで語頭の無アクセント η- が脱落し、中世ギリシャ語を経て今の μέρα の形に落ち着いた。古形 ημέρα もそのまま ημέρα として学術借用で残り、書き言葉や公式の文脈で用いられる。英語 ephemeral(短命な、一日限りの)は古代ギリシャ語 ἐπί(〜の上に)と ἡμέρα から成る ἐφήμερος(一日限りの)をラテン語経由で受け継いだ学術借用で、μέρα と語根を共有する。
類義語に ημέρα(日。古形を保った硬い形で、書き言葉や公式の文脈で使う), εικοσιτετράωρο(24 時間、一日)。μέρα は日・昼間を指すふつうの形として広く使う。派生に μερούλα(短い一日、愛称。指小形), ημερήσιος(一日の、日次の), καθημερινός(日常の、毎日の), μεροκάματο(日当、日給), μεροδούλι(日雇い仕事)。合成語に καλημέρα(おはよう、こんにちは), σήμερα(今日), ολημέρα(一日中), μεσημέρι(正午), ξημέρωμα(夜明け)。
ギリシャ語:μύτη
読み方:ミティ・ミーティ
ラテン文字:myti
古代ギリシャ語の μύτις(吻、鼻先。もとはタコ・イカの肝や墨袋を指した語)を継承。中世ギリシャ語の μύτη を経て、人や動物の「鼻」を指す形として今に落ち着いた。鼻にまつわる古い同根の語族には鼻水を表す μύξα や鼻孔を表す μυκτήρ もあり、μύτη はこの語族のなかで日常の「鼻」を担う形として広まった。古代のもう一つの「鼻」 ῥίς は今は接頭辞 ρινο- としてのみ生き、ρινίτιδα(鼻炎), ρινοπλαστική(鼻形成術)など医学・解剖の硬い形に残る。英語 rhinoceros(サイ)の rhino- もこの ῥίς からラテン語経由で入った学術借用で、μύτη とは別系統。
類義語に ῥίς(鼻。古代ギリシャ語由来で、今は単独では用いず接頭辞 ρινο- としてのみ医学・解剖の文脈に残る)。μύτη は鼻を指すふつうの形として広く使う。派生に μυτίτσα, μυτούλα(小さな鼻、可愛らしい鼻。指小形), μυτάρα(大きな鼻。増大形), μυτιά(鼻でひと突き、ひと嗅ぎ), μυτερός(先の尖った), μυτίζω(先を尖らせる), ξεμυτίζω(外に顔を出す)。合成語に κουτσομύτης(鼻の欠けた人), σουβλομύτης(とがり鼻の人), στραβομύτης(鼻の曲がった人), ψηλομύτης(お高くとまった人), πλατσομύτης(鼻ぺちゃの人), μυτοτσίμπιδο(鼻先用ピンセット)。
ギリシャ語:άνοιξη
読み方:アニクシ・アーニクシ
ラテン文字:anoiksi
古代ギリシャ語の ἄνοιξις(開くこと、開扉)を継承。ανοίγω(開く)の動詞語幹 ἀνοιγ- に行為・状態を表す接尾辞 -ση を付けた形で、「(自然や花が)開く時期」の意で冬と夏の間の季節を指すようになり、中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた。古代ギリシャ語で春は ἔαρ と呼ばれていたが、やがて ἄνοιξις が春を指す語として定着し、古典語の ἔαρ は今では学術借用 έαρ として詩歌や文芸の中に残るのみ。
類義語に έαρ(春。古代ギリシャ語由来で詩歌や公式・文芸の文脈で使う硬い形)。άνοιξη は春を指すふつうの形として広く使う。派生に ανοιξιάτικος(春の〜、春らしい)。関連語に動詞 ανοίγω(開く), 名詞 άνοιγμα(開き、開口部)。
ギリシャ語:νύχτα
読み方:ニフタ・ニーフタ
ラテン文字:nychta
印欧祖語で「夜」を表す語根にさかのぼり, 古代ギリシャ語の νύξ(夜。属格 νυκτός, 対格 νύκτα)を継承。中世ギリシャ語で対格 τὴν νύκτα が主格として再分析され, 子音連続 [kt] が [xt] に変化して今の νύχτα の形に落ち着いた。ラテン語 nox(夜), 英語 night, ドイツ語 Nacht, フランス語 nuit と語根を共有する。
類義語に βράδυ(晩。日没から就寝までの時間帯を指し、夜全体よりも前半に重心がある), βραδιά(一晩。特定の晩の出来事や雰囲気に焦点を当てた言い方)。νύχτα は日没から日の出までの暗い時間全体を指すふつうの形として広く使い、より深い時間帯のニュアンスを含む。派生に νυχτώνω(日が暮れる), νυχτιά(一晩、夜分)。関連語に νυχτερινός(夜の、夜間の。古代 νυκτερινός 由来), νυχτερίδα(コウモリ。古代 νυκτερίς 由来), νυχτερεύω(夜更かしする、徹夜する)。合成語に μεσάνυχτα(真夜中), καληνύχτα(おやすみ), ολονύχτιος(一晩中の), ημερονύχτιο(24時間、昼夜), νυχτοπούλι(夜行性の鳥、夜型の人), νυχτοκάματο(夜なべ仕事、夜勤手当), νυχτοφύλακας(夜警), ξενύχτι(夜更かし)。
ギリシャ語:χαρά
読み方:ハラ・ハラー
ラテン文字:chara
古代ギリシャ語の動詞 χαίρω(喜ぶ)から派生した χαρά(喜び)を継承。同じ χαίρω から古代ギリシャ語で χάρις(恵み)、さらに χάρισμα(恵みの賜物)が生まれた。χάρισμα は現代ギリシャ語にも残り、英語 charisma の語源にもなった。
類義語の ευχαρίστηση は満足感や楽しみを指し、χαρά よりも一時的な感情に近い。ενθουσιασμός は熱狂や熱意、ευτυχία はより持続的で深い幸福を表す。
対義語には θλίψη(悲哀)、λύπη(悲しみ)、στενοχώρια(悩み)がある。
主な意味は喜びという強い肯定的な感情。また、喜びをもたらす出来事や慶事も指す。複合語の παιδική χαρά は「子供の遊び場」を意味し、μια χαρά は「とても良い、順調」という副詞的な使い方もされる。指小辞の χαρούλα は「小さな喜び」。
ギリシャ語:γη
読み方:イ・イー・ギ・ギー
ラテン文字:gi
ギリシャ語:ώρα
読み方:オラ・オーラ
ラテン文字:ora
古代ギリシャ語の ὥρα(季節、時期、適切な時)を継承。印欧祖語で「年、季節」を表す語根に続き、ラテン語 hōra, 英語 hour と同じ語源。英語 year と古語 yore は、ラテン語を経由せずこの語根から直接続く。現代の「60分、時刻」の意味はフランス語 heure, 英語 time からの意味借用で整った。
派生語 ωραίος(美しい)は「その時にかなった」→「盛り」→「美しい」の流れ。ώριμος(熟した), ωρίμανση(熟成), ωράριο(スケジュール)も同じ語根から。英語 horoscope(星占い)は ὥρα + σκοπέω(観察する)で「時を観る者」, horology(時計学)は ὥρα + -λογία の造語。
ギリシャ語:καρδιά
読み方:カルディア・カルディアー
ラテン文字:kardia
古代ギリシャ語の καρδία(心臓、心)を継承。中世ギリシャ語で母音の連続を避けて今の形になった。印欧祖語の「心臓」を表す語根から続き、英語 heart も同じ語源。英語 cardiac はギリシャ語 καρδιακός からラテン語を経て入った語で、医学接頭辞 cardio- も同じ系統。
感情や人柄としての「心」は καρδιά、思考や知性としての「心」は νους、魂としての「心」は ψυχή や πνεύμα と使い分ける。類義語の στήθος(胸)も感情の座としての心を指すことがある。
指小形の καρδούλα は小さなハートのほか、καρδούλα μου(愛しい人)のように親しみを込めた呼びかけにも使う。
ギリシャ語:δυστυχία
読み方:ディスティヒア・ディスティヒーア
ラテン文字:dystychia
古代ギリシャ語の δυστυχία(不運、不幸)に由来。接頭辞 δυσ-(悪い、困難な)と τύχη(運)の組み合わせで、「運に恵まれない状態」を表す語。英語 dystopia(ディストピア)、dysfunction(機能障害)、dyslexia(失読症)などの接頭辞 dys- もこの δυσ- から。
対義語は ευτυχία(幸福)で、εὖ(良い)+ τύχη の構成で対をなす。類義語に ατυχία(不運)、κακοτυχία(悪運)、απελπισία(絶望)、κακομοιριά(不運)など。派生語に δυστυχής(不幸な)、δυστυχισμένος(不幸な)、δυστύχημα(災難、事故)など。
ギリシャ語:θάλασσα
読み方:サラサ・サーラサ・タラサ・ターラサ
ラテン文字:thalassa
古代ギリシャ語の θάλασσα(海)を継承。印欧語族に属さないギリシャ語以前の基層から入った語で, 確かな親族関係のある言語は立っていない。
派生に形容詞 θαλασσινός(海の, 海産物の), θαλάσσιος(海の, 海洋の), 色を表す θαλασσής, θαλασσί(海色の, 青緑の), 動詞 θαλασσώνω(台無しにする), 指小形 θαλασσάκι(小さな海, 穏やかな海)。合成語に θαλασσοκράτωρ(海を支配する者), θαλασσόλυκος(海の狼, 老練な船乗り)。英語 thalassic(海洋の), thalassemia(地中海性貧血)はここから作られた学術借用語。
πέλαγος(外海, 大海)が陸から離れた広い海面を指すのに対し, θάλασσα は海そのもの全体を言う。πόντος(海)は詩的・文学的な言い方, ωκεανός(大洋)は太平洋や大西洋のような巨大な海洋を指す。淡水の λίμνη(湖)や ποταμός(川)とは別の語。
:::vocab
- ανοιχτή θάλασσα(公海、沖合)
- νεκρή θάλασσα(生物のいない海。νεκρός:死んだ)
- αγγούρι της θάλασσας(ナマコ)
- αλογάκι της θάλασσας(タツノオトシゴ)
- αυτί της θάλασσας(アワビ)
- φρούτα της θάλασσας(シーフード)
- θαλάσσιο σκι(水上スキー)
- θαλάσσιο ταξί(水上タクシー)
- επτά θάλασσες(七つの海)
- χωρικά ύδατα(領海)
:::
主な意味は「海」で、陸地を取り囲む塩水の塊を指す。比喩的に「大量のもの」を表すのにも使われる。
θάλασσα や派生形 θαλάσσιος(海の)を含む合成語が多く、海の生き物の通称にも使われる。αγγούρι της θάλασσας(ナマコ、直訳「海のきゅうり」)、αλογάκι της θάλασσας(タツノオトシゴ、直訳「海の子馬」)、αυτί της θάλασσας(アワビ、直訳「海の耳」)のように、見た目や特徴から名付けられたものが多い。
ギリシャ語:γυναίκα
読み方:イネカ・イネーカ・ギネカ・ギネーカ
ラテン文字:gynaika
印欧祖語で「女性」を表す語根にさかのぼり, 英語 queen(古英語 cwēn から)と同じ語根を共有する古代ギリシャ語 γυνή(女性, 対格 γυναῖκα)を継承。もとの対格形 γυναῖκα が主格として定着し, 中世ギリシャ語を経て今に至る。英語の接頭辞 gyn(o)-(gynecology「婦人科学」, gynoecium「雌蕊」)はこの γυνή から新ラテン語を経て入った学術借用。
類義語に κυρία(〜様、貴婦人。丁寧な言い方), κοπέλα(娘、若い女性), θήλυ(生物学的な雌)。γυναίκα は年齢や立場を問わず成人女性を広く指す。派生に γυναικάρα(強意形。魅力的で堂々とした女性), γυναικάκι(小柄な女性、妻の愛称。また取るに足らない女性を指すこともある), γυναικούλα(愛しい妻、また器の小さい女), γυναικείος(女性の、女性らしい), γυναικίσιος(女性の〜), γυναικίστικος(女性らしい、女々しい), γυναικωνίτης(女性の部屋、ハーレム)。合成語に αντρογυναίκα(男勝りの女性), αντρόγυνο(夫婦), μισογύνης(女性嫌い), βρομογύναικο(ひどい女。蔑称), παλιογύναικο(どうしようもない女。蔑称)。
ギリシャ語:κυρία
読み方:キリア・キリーア
ラテン文字:kyria
ヘレニズム期ギリシャ語の κυρία を継いだ学術借用(διαχρονικό δάνειο)。もとは古代ギリシャ語の形容詞 κύριος(主権を持つ、権威のある)の女性形。女性への敬称として使う今の用法は、フランス語 madame やイタリア語 signora の呼称を写した意味借用(σημασιολογικό δάνειο)が重なって定着した。もとの κύριος は古代ギリシャ語 κυριακόν(主の家)を経由して、英語 church(教会。ラテン語 ecclesia とは別にゲルマン語系統を経て入った借用)にも連なる。
類義語に κυρά(おかみさん。親しみのある呼びかけ), νοικοκυρά(主婦、家の女主人), λαίδη(レディ。英語 lady からの借用), δεσποινίς(~嬢。未婚女性の敬称)。関連語に男性形 κύριος(〜氏、紳士), κυριακή(日曜日。「主の日」から)。
ギリシャ語:αγάπη
読み方:アガピ・アガーピ
ラテン文字:agapi
古代ギリシャ語の動詞 ἀγαπάω(愛する)から派生した ἀγάπη(親愛、神の愛)を継承。古代では ἔρως(性的な愛)や φιλία(友愛)とは区別され、おもに親愛や兄弟愛を指した。新約聖書の時代にキリスト教的な無償の愛を表す語として定着し、現代ギリシャ語では「愛」全般を指す最も一般的な語になった。
英語の agape(アガペー)の語源でもある。
類義語にはそれぞれ守備範囲の異なるものがある。έρως(恋愛、性的な情熱)は情欲を含む愛、στοργή(家族愛、親子の慈しみ)は血縁的な絆、φιλία(友情)は対等な親しみを指す。αδυναμία(弱さ)は比喩的に「目がない、溺愛している」の意味でも使われる。
派生語には αγαπάω(愛する)、αγαπημένος(愛されている、お気に入りの)、αγαπητός(親愛なる)がある。対義語は μίσος(憎しみ)や απέχθεια(嫌悪)。
主な意味は、共感や献身による深い愛情。恋愛やその対象となる人を指すほか、物事への関心や情熱も表す。複数形の Αγάπες は、初期キリスト教徒の間で行われていた共食(愛餐)を指す。
ギリシャ語:ευτυχία
読み方:エフティヒア・エフティヒーア
ラテン文字:eftychia
古代ギリシャ語の εὖ(良く)と τύχη(運、偶然 → τύχη)からなる εὐτυχία(成功、幸運)に由来。現代ギリシャ語では「幸福、幸せ」が中心の意味で、「幸運、好機」の用法にはフランス語 bonheur の意味借用が含まれる。
対義語の δυστυχία(不幸)は δυσ-(悪い)と τύχη の構成で、ちょうど対をなす。派生語には ευτυχισμένος(幸せな)がある。
類義語の ευδαιμονία(持続的な幸福、至福)は、より精神的・哲学的な充足感を指す。ευτυχία が出来事や感情の昂ぶりによる幸せを表すのに対し、ευδαιμονία は内面的な充足に重きを置く。出来事としての「幸運」には ευτύχημα(幸運な出来事)や καλοτυχία(幸運)もある。
主な意味は、ポジティブな出来事や喜びによる幸福、幸せ。また、幸運や好都合な巡り合わせも指す。祝辞では「κάθε ευτυχία(あらゆる幸福を)」のように用いられることも多い。
ギリシャ語:ζωή
読み方:ゾイ・ゾイー
ラテン文字:zoi
古代ギリシャ語の ζωή(生きること、生命)を継承。動詞 ζω(生きる)に名詞を作る -η を付けた形で、印欧祖語で「生きる」を表した語根の子孫。ラテン語 vivus(生きている)、サンスクリット語 jīvati(生きる)はすべて同じ語根から出る。
派生語に ζωηρός(活発な、生き生きとした)。同じ語根の身近な語に ζώο(動物、古代 ζῷον「生き物」から)。
類義語に βίος。伝統的に ζωή は生物としての生命、βίος は生きざまや経歴を指して使い分ける。英語 zoology(動物学)、zoo(動物園)、protozoa(原生動物)は古代ギリシャ語 ζῷον をもとにした学術造語で、同じ語根につながる。
ギリシャ語:σελήνη
読み方:セリニ・セリーニ
ラテン文字:selini
古代ギリシャ語の σελήνη(月)に由来。σέλας(輝き, 光)と同じ語族で, 印欧祖語で「輝く」を表す語根から作られた語。「明るく輝くもの」という見方から, 夜空で光る天体の月を指すようになった。ギリシャ神話では月の女神セレーネー(Σελήνη)の名でもある。
英語 seleno-(月の〜, selenology 月学, selenography 月面図)は σελήνη からの学術的な連結形。化学元素の σελήνιο(セレン, 原子番号34)は, 地球の随伴天体という意味合いで, 先に命名された τελλούριο(テルル, ラテン tellus「大地」)と対になるように, スウェーデンの化学者ベルセリウスが月の名から名づけた。派生に σεληνιακός(月の), πανσέληνος(満月), ημισέληνος(半月), σεληνοφώτιστος(月光に照らされた), σεληνιάζομαι(てんかん発作を起こす, 月憑きになる)。
日常会話で「月」を指すときは φεγγάρι が一般的で, σελήνη は天文用語や公式の場面に使うことが多い。
ギリシャ語:έκρηξη
読み方:エクリクシ・エークリクシ
ラテン文字:ekrixi
古代ギリシャ語の ἔκρηξις(破裂)から。ἐκ-(外へ)+ ῥήγνυμι(壊す、破裂させる)からなり、内部の圧力が外へ弾ける動きを表す。
ῥήγνυμι は英語 hemorrhage(出血、αἷμα「血」+ ῥήγνυμι から)の語根でもある。
動詞形は εκρήγνυμαι(爆発する)。派生語に εκρηκτικός(爆発的な、火薬の)、εκρηκτικότητα(爆発性)など。関連語に ανάφλεξη(着火、点火)、ρωγμή(亀裂)、διάρρηξη(破壊、侵入)、σκάσιμο(破裂、パンク)など。
ギリシャ語:καύση
読み方:カフシ・カーフシ
ラテン文字:kafsi
動詞 καίω(燃やす)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 καῦσις(焼くこと, 焼却)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の καύση の形になり, 近代にフランス語 combustion の訳語としても取り入れられ化学や工学の「燃焼」の意味が定着した。英語 caustic(腐食性の), cauterize(焼灼する), holocaust(ホロコースト, 焼き尽くし)も同じ καίω にさかのぼる。
同じ語族に καύσιμο(燃料), καυστικός(腐食性の, 辛辣な), καυστήρας(バーナー), καυτός(熱い)。合成語に καυσαέριο(排気ガス), καυσόξυλα(薪)。
ギリシャ語:ανάφλεξη
読み方:アナフレクシ・アナーフレクシ
ラテン文字:anaflexi
古代ギリシャ語の名詞 ἀνάφλεξις(発火)に由来。動詞 αναφλέγω(発火させる)の名詞形で、ἀνά-(上に、再び)と φλέγω(燃やす、焼く)の合成に名詞化接尾辞が付いた形。
化学の発火・引火が中心義。戦争や緊張の勃発・再燃に使う比喩用法はフランス語 conflagration(大火、動乱)からの意味借用。機械工学の点火(ガソリンエンジンの点火装置)はフランス語 allumage(点火)からの意味借用。
類義語に λαμπάδιασμα(ぱっと燃え上がること), έναυση(点火、着火), αναζωπύρωση(再燃), πυροδότηση(起爆、誘発)。派生に αυτανάφλεξη(自然発火), προανάφλεξη(早期点火、ノッキング)。英語 phlogiston(燃素), phlegm(粘液)も φλέγω を起源とする。
ギリシャ語:πόρτα
読み方:ポルタ・ポールタ
ラテン文字:porta
印欧祖語で「通り抜ける」を表す語根にさかのぼるラテン語 porta(門, 通路)からヘレニズム期ギリシャ語の πόρτα に入り, 中世ギリシャ語を経て今に至る継承。古代ギリシャ語の θύρα(扉, 門)に代わって, 中世以降は扉や門を指す語として定着した。
英語の portal(ポータル、入り口)はラテン語 porta から中世ラテン語 portāle、古フランス語を経由して入った同源語。port の「舷門、コンピュータのポート」の意味も同じ porta から。「港」の port は姉妹語のラテン語 portus にさかのぼり、同じ印欧祖語の語根を共有する。
類義語に θύρα(扉、公式の場や書き言葉で使うことが多い), πύλη(より大きな門や、比喩的な入り口)。派生に πορτιέρης(ドアマン、ボーイ)。指小語に πορτάκι, πορτέλο, πορτίτσα, πορτούλα。合成語に αυλόπορτα(中庭の門), γκαραζόπορτα(ガレージの扉), εξώπορτα(玄関の扉), καγκελόπορτα(鉄格子の門), μπαλκονόπορτα(バルコニーへの扉), τζαμόπορτα(ガラスの扉)。
ギリシャ語:θερμότητα
読み方:セルモティタ・セルモーティタ・テルモティタ・テルモーティタ
ラテン文字:thermotita
古代ギリシャ語の θερμότης(熱さ)から。のちには情熱や激情の意味でも使われるようになった。語根の θερμ- は、英語の thermal や thermometer の語源でもある。
日常的、体感的な暑さを言うときは ζέστη(暑さ、熱さ)が使われやすい。対義語には、物理的な冷たさを表す κρύο(寒い)や ψύχος(極寒)、比喩的な冷たさを表す ψυχρότητα(冷淡)がある。
:::vocab
- γηγενής θερμότητα(地殻熱)
- λανθάνουσα θερμότητα(潜熱)
- ανάκτηση θερμότητας(熱回収)
- αντλία θερμότητας(ヒートポンプ)
- εναλλάκτης θερμότητας(熱交換器) :::
主な意味は物理学の熱エネルギーだが、そこから物体の温度や熱量、人や態度の温かみ、情熱といった比喩的な意味にも広がる。
ギリシャ語:φλόγα
読み方:フロガ・フローガ
ラテン文字:floga
古代ギリシャ語の φλόξ(炎、対格 τὴν φλόγα)を継承。中世ギリシャ語 φλόγα を経て今に至る。印欧祖語で「燃える、光る」を表す語根から、英語の flame(ラテン語 flamma 経由)も同系。植物名の英語 phlox はこの φλόξ をそのまま借りた語で、花の色が炎のように鮮やかなことによる命名。
類義語 φωτιά(火、火災)に対し、φλόγα はとくに目に見える個々の炎や火の粉を指す。複数形 φλόγες では激しく燃え上がる火炎や火災そのものも表す。派生の指小形に φλογίτσα(小さな炎、かわいらしい火)。
ギリシャ語:σπίθα
読み方:スピサ・スピーサ・スピタ・スピータ
ラテン文字:spitha
動詞 σπιθίζω(火花を散らす、きらめく)から作られた名詞で、中世ギリシャ語の σπίθα を経て今に至る継承。
類義語に σπινθήρας(火花)。σπινθήρας は電気工学や物理の火花を指すのに使うことが多く、σπίθα は日常の火花のほか、きっかけ、残り火、頭の切れる人のような比喩でよく出る。
ギリシャ語:οικογένεια
読み方:イコイェニア・イコイェーニア・イコゲニア・イコゲーニア
ラテン文字:oikogeneia
コイネーの οἰκογενής(家で生まれた奴隷。οἶκος「家」+ γένος「生まれ」の形容詞)に抽象名詞化の接尾辞 -εια が付いた οἰκογένεια に由来。古代から中世にかけては「家で生まれた奴隷」を指し、購入奴隷と区別する証明書などに用いられた。
現代の「家族」の意はイタリア語 famiglia / フランス語 famille からの意味借用で、生物分類の「科」の意はラテン語 familia の意味借用。英語 economy(ギリシャ語 οικονομία「家の管理」経由)や ecology の eco- も同じ οἶκος を起源とする。
類義語に φαμίλια(家族、くだけた言い方), νοικοκυριό(世帯), οίκος(家名、王家), γένος(一族、門地)。派生に οικογενειακός(家族の、家庭的な), οικογενειάρχης(一家の長), υποοικογένεια(亜科), ενδοοικογενειακός(家庭内の), οικογενειακώς(家族ぐるみで)。
ギリシャ語:στρακαστρούκα
読み方:ストゥラカストゥルカ・ストゥラカストゥルーカ
ラテン文字:strakastrouka
στρακαστρούκα は、τρακατρούκα(爆竹) を土台に、strak のような擬音的な響きや、ぶつかることを表す τρακάρω、イタリア語の scrocchio(パチパチという音)などの音感が重なって生まれた形と考えられる。
別表記に τρακατρούκα(爆竹) がある。複数形を冠詞と続けて発音するうちに、冠詞末尾の σ が語の一部として受け取られ、στρακαστρούκα という形が広まったと考えられる。
類義語には βαρελότο(より威力の強い爆竹) や κροτίδα(一般的な爆竹、クラッカー) がある。関連語としては βεγγαλικό(花火、手持ち花火) がある。
主な意味は、点火すると連続して破裂音を出す爆竹やかんしゃく玉。古代ギリシャ語に直接さかのぼる語ではなく、音の響きから生まれた名称でもある。日常的には複数形の στρακαστρούκες で使われることが多い。
ギリシャ語:κροτίδα
読み方:クロティダ・クロティーダ
ラテン文字:krotida
カサレヴサの κροτίς(対格 κροτίδα)に由来。古代ギリシャ語 κρότος(破裂音、轟音)に指小接尾辞 -ίς を付けた形で、対格形が主格形として定着して今に至る。
類義語に βαρελότο(大型の爆竹), στρακαστρούκα(クラッカー、かんしゃく玉)。関連語に βεγγαλικό(手持ち花火、ベンガル花火), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾)。
ギリシャ語:φωτοβολίδα
読み方:フォトヴォリダ・フォトヴォリーダ
ラテン文字:fotovolida
カサレヴサの φωτοβολίς に由来。古代ギリシャ語 φῶς(光)の接頭辞形 φωτο- と、コイネー βολίς(投げられたもの、矢、弾丸)の合成で、強い光を放って飛ぶものを指す。英語 photography や photon の photo- も同じ φῶς を起源とする。
観賞用の花火を指す πυροτέχνημα に対し、φωτοβολίδα は光を放つ信号弾・照明弾を指す。
ギリシャ語:ιπομέα
読み方:イポメア・イポメーア
ラテン文字:ipomea
学名 Ipomoea のギリシャ文字転記。ιπομοία, ιπόμαια とも表記する。ヒルガオ科(Convolvulaceae)イポメア属の観賞用つる植物を指し、とくにマルバアサガオ(Ipomoea purpurea)が代表的。
同じ植物を χωνάκι(円錐形の容器の意), πρωινή χαρά(朝の喜び), πρωινή δόξα(朝の栄光)とも呼ぶ。後二者は英語 morning glory の意訳。
学名 Ipomoea は古代ギリシャ語 ἴψ(属格 ἰπός、虫)と ὅμοιος(似た)からの合成で、「虫に似た」の意。フランス語 ipomée を経て現代ギリシャ語に入った。
ギリシャ語:σελόσια
読み方:セロシア・セローシア
ラテン文字:selosia
学名 Celosia のギリシャ文字転記。σελόζια とも表記する。ケイトウ属(Celosia)の植物を指し、とくに Celosia argentea の各品種が栽培される。
トサカケイトウ(とさか状の花序をもつ cristata 品種)は λειρί του κόκορα(オンドリのとさか), 羽毛ケイトウ(羽毛状の花序をもつ plumosa 品種)は αλεποουρά(キツネの尻尾)とも呼ばれる。
学名 Celosia は古代ギリシャ語 κήλεος(燃える)に由来し、花の炎のような外見にちなむ命名。
ギリシャ語:αλεποουρά
読み方:アレポウラ・アレポウラー
ラテン文字:alepooura
αλεπού(キツネ)と ουρά(尻尾)を合わせた合成語で、文字どおり「キツネの尻尾」。片手鋸の用法はドイツ語 Fuchsschwanz(キツネの尻尾、片手鋸)からの翻訳借用で、細長い鋸身をキツネの尾に見立てた名。園芸では、花序がキツネの尾に似た羽毛ケイトウ(Celosia plumosa)の通称にもなる。
別形に αλεπονουρά。同じケイトウ属全体は σελόσια、トサカケイトウは λειρί του κόκορα(オンドリのとさか)。
ギリシャ語:αλεπού
読み方:アレプ・アレプー
ラテン文字:alepou
古代ギリシャ語の ἀλώπηξ(キツネ、属格 ἀλώπεκος)を継承。中世ギリシャ語 ἀλεπού を経て今の形になった。
派生の指小形に αλεπουδάκι, αλεπουδίτσα、子ギツネを αλεπόπουλο とも。合成語に αλεποουρά(キツネの尻尾、引目鋸、ケイトウ), αλεποφωλιά(キツネの巣穴)。
英語 alopecia(脱毛症)もラテン語を経て同じ語源。古代ギリシャ語ではキツネの疥癬による脱毛を ἀλωπεκία と呼び、これがラテン語経由で英語に入った。毛皮の文脈ではフランス語 renard を借りた ρενάρ も使う。
ギリシャ語:ουρά
読み方:ウラ・ウラー
ラテン文字:oura
古代ギリシャ語の οὐρά(尻尾)を継承。印欧祖語で「尾、尻」を表す語根に続く。現代の「列、キュー」の意味は英語 tail, queue からの意味借用で整った。
英語 squirrel はラテン語 sciurus 経由で古代ギリシャ語 σκίουρος から。σκίουρος は σκιά(影)+ οὐρά の合成として「尾で影を作るもの」と伝統的に解釈されている。動物分類の Anura(無尾目、カエル類)は ἀ-(無)+ οὐρά の合成。
派生語に ουρίτσα(小さい尻尾), ουραγός(しんがり、最後尾を行く人)。合成に πιάνο με ουρά(グランドピアノ、尻尾のあるピアノ)。「順番待ちの列」には γραμμή も使う。
ギリシャ語:κότα
読み方:コタ・コータ
ラテン文字:kota
ギリシャ語:όρνιθα
読み方:オルニサ・オールニサ・オルニタ・オールニタ
ラテン文字:ornitha
古代ギリシャ語の ὄρνις(鳥、雌鶏、属格 ὄρνιθος)を継承。古代の対格 ὄρνιθα が中世以降に主格として定着して今の形になった。
派生に ορνιθολογία(鳥類学), ορνιθοτροφείο(鶏舎、養鶏場)。英語 ornithology の ornitho- も同じ ὄρνις から。
日常で雌鶏を指すのは κότα、όρνιθα は生物学や文学、神話(Στυμφαλίδες όρνιθες=ステュムパーロスの鳥)などの場面に出る。

女性名詞
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空間 
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身体・健康 
行事 
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問題・課題 


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哲学・思考 
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信仰・神話 








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イヌ亜目 

形容詞 
光と闇 

ウシ亜目 




スパイス・ハーブ 


事故 
玩具 

色
黄系の色
物質
教育 

仕事
書類 








職業 
家族 










生と死 
魔術 

衣類 
余暇 
飲み物 

食べ物
野菜 






虫
季節 




温度 




夜 



スポーツ 
性格 






情報・メディア 
評価 



嗜好品 






動作 




様態 









果物 
副詞 









怒り 






年齢 
















宝石・鉱物 





































