イタリア語 lavanda / levanda(ラベンダー)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。源にあるイタリア語 lavanda は、中世ラテン語 lavandula(ラベンダー、← ラ lavandus「洗うべき」, ← lavō「洗う」)の継承で、古代ローマ時代から香水や入浴用に使われていた習慣に由来する命名。「洗うときに使うもの」「衣服や身体を洗うときに香りづけに加えるハーブ」が原義で、ヨーロッパの風呂・洗濯文化と密接に結びついた語。
源にあるラテン語 lavō(洗う、入浴する)は、印欧祖語の「洗う、流れる」を表す語根に由来し、ギリシャ語 λούω(洗う), 英語 lather(泡), ロシア語 лить liti(注ぐ)と同族。古代ローマの公衆浴場(thermae), 中世ヨーロッパの修道院の washhouse, 近代の lavatory(洗面所)など、清潔・衛生の文化と密接に結びついた極めて生産的な語族。同じラテン語 lavō からは、ヨーロッパ各語の「洗う・浴びる」語彙が広く派生:仏 laver, 西 lavar, 伊 lavare, 英 lavatory, lavender, lava (溶岩、別系統だが近い概念で結びつく)。
ヨーロッパ各語の「ラベンダー」語彙は、ラテン語 lavandula 起源の系譜:英語 lavender, フランス語 lavande, スペイン語 lavanda, ポルトガル語 lavanda, ドイツ語 Lavendel, 中世ラテン語の系統が共通祖。地中海原産のラベンダー(Lavandula 属、シソ科)は、古代から香料・薬用・装飾用に栽培されてきた歴史を持ち、特にプロヴァンス(フランス南東部), スペインのアンダルシア, ブルガリアのバラの谷の隣接地域、トスカーナ(イタリア)が代表的な栽培地として知られる。
植物学的には Lavandula 属の常緑低木で、L. angustifolia(イングリッシュラベンダー、コモンラベンダー), L. stoechas(フレンチラベンダー), L. dentata(フリンジラベンダー)など多様な種類を含む。地中海性気候(暑く乾燥した夏、温和な冬、石灰質の土壌)を好む植物で、ギリシャの自然・園芸文化にも深く根付いている。
派生・関連語族として λεβαντάκι(小さなラベンダー、口語の指小形), λεβαντινός(ラベンダー色の、ラベンダーの香りの), λεβαντόλαδο(ラベンダー油), λεβάντα Provence(プロヴァンスのラベンダー), αποξηραμένη λεβάντα(乾燥ラベンダー、ポプリやサシェ用), αρωματικό λεβάντας(ラベンダーの香水), σαπούνι λεβάντας(ラベンダー石鹸), αιθέριο έλαιο λεβάντας(ラベンダー精油、アロマセラピー)。
香りの文化として、ラベンダーは古代ローマ時代から入浴・洗濯・衣類の香りづけに使われ、中世ヨーロッパの修道院では薬草・香料・蒸留水(lavender water)の原料として重要な役割を担い、近代以降は香水(特にイギリスの伝統的なオーデコロン), アロマセラピー(リラックス・睡眠促進・抗不安効果), 化粧品・洗剤の香りづけに広く使われる、世界中で親しまれた香りの代表格。
ラベンダーの香りは、文化的に「リラックス、清潔、上品、女性的、夏の地中海」のイメージを担い、現代の精神生活・癒し文化の中核を成すハーブとして位置づけられる。色名としては λιλά(ライラック)と並ぶ淡紫の系譜の中に位置し、ファッション・装飾・建築の色彩語彙の一翼を担う。