#春
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ギリシャ語:Πάσχα
読み方:パスハ・パースハ
ラテン文字:pascha
ヘレニズム期ギリシャ語 Πάσχα(過越祭、← ヘブライ語 פֶּסַח pesah「過越、過越祭」, アラム語 פִּסְחָא pisḥā)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。紀元前 3 世紀の七十人訳聖書(Septuagint)でユダヤ教の過越祭の名前として翻訳・取り入れられて以来、ギリシャ語のキリスト教文化の中核を成す宗教用語として現代まで継承されている。
源にあるヘブライ語 pesah は、動詞 פָּסַח pasaḥ(過ぎ越す、跳び越える)の派生で、出エジプト記 12 章のエジプトの初子皆殺しの夜に、ユダヤ人の家を「過ぎ越した」(pasaḥ)出来事に由来する祭の名。ユダヤ教の最重要祭の一つで、エジプトからの解放と神との契約を記念する春の祭りとして、現在もユダヤ教徒によって祝われている。
新約聖書のギリシャ語では Πάσχα が、最初はユダヤ教の過越祭を指していたが、キリスト教の発展とともに「キリストの受難と復活」と過越祭の象徴的な結びつきが強調され、4 世紀のニカイア公会議(325 年)でキリスト教の復活祭の名前として正式に採用された。「キリストは我らの過越」(Παντὶ καιρῷ καὶ πάσῃ ὥρᾳ Πάσχα Χριστὸς ἡμῶν, パウロ、コリント前書 5:7)の神学的解釈が、この語の意味の中心移動の根拠となった。
ヨーロッパ各語の「復活祭」語彙では、ラテン語 Pascha(イースター)が、フランス語 Pâques, スペイン語 Pascua, イタリア語 Pasqua, ポルトガル語 Páscoa, ドイツ語 Ostern(別系統、ゲルマンの春の女神 Ēostre 由来), 英語 Easter(同じくゲルマン語起源)として広まり、ロマンス諸語と東方教会・正教会では Pascha 系、ゲルマン諸語では Ostern / Easter 系という二つの系譜が並走する。
派生・関連語族として πασχάζω(過越祭・復活祭を祝う、書きことば), πασχαλιά(復活祭、口語、← μσν. πασχαλία), πασχαλινός(復活祭の、形容詞), πασχαλιάτικος(復活祭向きの、復活祭の時期の、口語), πασχάλιος(復活祭の、書きことば), πασχαλίτσα(てんとう虫、口語、← パスハに飛ぶ虫の意), Λαμπρή(復活祭の口語形、← λαμπρός「輝かしい」、復活祭の祝いの「輝き」を強調)。
ギリシャの東方正教会では、復活祭は最大の宗教行事で、独特の慣習と祝祭文化を持つ:聖週間(Μεγάλη Εβδομάδα), 聖金曜日(Μεγάλη Παρασκευή)の Επιτάφιος 行列, 復活の夜(土曜深夜から日曜未明)の Ανάσταση 礼拝、復活の蝋燭(λαμπάδα), 赤い卵(κόκκινα αβγά), 子羊の丸焼き(αρνί στη σούβλα), 復活祭のパン(τσουρέκι)など、宗教・食・家族・地域共同体が一体となった祭典として祝われる。
挨拶では、復活祭前後に Καλό Πάσχα(よい復活祭を), Χριστός Ανέστη!(キリストは復活された!), Αληθώς ανέστη!(まことに復活された!)が交わされ、宗教文化と日常生活が密接に結びついた語として機能する。
ギリシャ語:πρασινάδα
読み方:プラシナダ・プラシナーダ
ラテン文字:prasinada
形容詞 πράσινος(緑の)の語幹に、抽象名詞・物質名詞をつくる接尾辞 -άδα(〜であること、〜の塊・量)を付けたギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)で、中世ギリシャ語期に形成されて現代まで使われる継承語(κληρονομιά)。「緑であること」「緑の広がり」を物量的に捉える名詞化の典型例。
源にある πράσινος(緑の)は、古代ギリシャ語 πράσινος(ニラ色の、緑色の)の継承形で、語源は名詞 πράσον(ニラ、ポロネギ)に -ινος 形容詞接尾辞を付けた形。古代ギリシャ語のニラの色彩が「緑」の典型として捉えられ、色名として確立されたという経緯を持つ。同じ語族からは πράσο(ポロネギ、← 古代 πράσον), πράσινο(緑色、中性形が名詞化), πρασινίζω(緑色になる、動詞), πρασινωπός(緑がかった、形容詞)が並ぶ。
接尾辞 -άδα は、形容詞・名詞の語幹に付いて「〜であること、〜の量・塊・性質」を表す抽象・物質名詞をつくる現代ギリシャ語の生産的な造語要素。同じパターンで作られた語族には、ασπράδα(白さ、← άσπρος「白い」), μαυρίλα / μαυράδα(黒さ、← μαύρος「黒い」), κιτρινάδα(黄色っぽさ、← κίτρινος「黄色い」), μπλάδα(青さ、← μπλε「青い」、口語), γλυκάδα(甘さ、← γλυκός「甘い」), κρυάδα(冷たさ), ζεστάδα(暖かさ), ξεραΐδα(乾燥), μαλακάδα(柔らかさ)が並ぶ、口語の感覚・性質名詞の中核を成す。
派生・関連語族として πρασινίλα(緑色の輝き、緑色の汚れ、口語), πρασινάκι(淡い緑、口語の指小形), πρασινωπός(緑がかった), πρασινάδα τοπίου(風景の緑、書きことば寄り), πράσινη πρασινάδα(鮮やかな緑、強調表現), πρασινίζω(緑色になる), ξεπρασίνισμα(緑が抜けること)。
意味の領域は、植物の緑(草・葉・木の緑)から、葉物野菜・青菜(食卓の青物), 物体に帯びた緑色の感じ(金属の緑青、写真の緑がかり)まで連続的に展開する。最も活発な使い方は風景・自然描写の文脈で、ανοιξιάτικη πρασινάδα(春の緑), η πρασινάδα του κήπου(庭の緑), ξάπλωσα στην πρασινάδα(草の上に寝転んだ)のように、春・初夏の景色や、休息・癒しのイメージとともに使われる。
同じ「緑・植物」の領域には、色そのものの πράσινο(緑色、中性形), 形容詞の πράσινος(緑の), 抽象的な πρασινίλα(緑の汚れ、緑のしたたり), 学術的な χλωροφύλλη(葉緑素、← χλωρός「緑、新鮮」+ φύλλον「葉」), 自然全般の χλωρίδα(植物相、フローラ), 葉物野菜の χόρτα(青菜類、口語)が並び、自然・食材・色彩の語彙体系の中で位置づけられる。
慣用表現としては、η πρασινάδα του χωραφιού(畑の青さ、← 春に芽吹いた緑の畑), βγάζω πρασινάδες(青菜を収穫する、口語), χάρηκα την πρασινάδα(緑を満喫した、心和ませた)が頻出する、自然と心の状態を結ぶ慣用句の語彙。
ギリシャ語:πασχαλιά
読み方:パスハリャ・パスハリャー
ラテン文字:paschalia
ギリシャ語:έαρ
読み方:エアル・エーアル
ラテン文字:ear
古代ギリシャ語の ἔαρ(春)をそのまま受け継いだ学術借用で、文語・雅語として用いられる。日常的に「春」を指すのは άνοιξη。
印欧祖語で「春」を表す根に由来し、ラテン語 vēr、サンスクリット vasantá-、古ノルド語 vár、古アルメニア語 garun、古代教会スラヴ語 vesna、ペルシャ語 bahâr など、印欧諸語で「春」を表す語と同源。
派生語に εαρινός(春の、古代 ἐαρινός)、εαρινή ισημερία(春分)など。英語 vernal(春の)、vernal equinox(春分)はラテン語 vēr から vernālis を経由した同源語。
ギリシャ語:άνοιξη
読み方:アニクシ・アーニクシ
ラテン文字:anoiksi
古代ギリシャ語の ἄνοιξις(開くこと、開扉)を継承。ανοίγω(開く)の動詞語幹 ἀνοιγ- に行為・状態を表す接尾辞 -ση を付けた形で、「(自然や花が)開く時期」の意で冬と夏の間の季節を指すようになり、中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた。古代ギリシャ語で春は ἔαρ と呼ばれていたが、やがて ἄνοιξις が春を指す語として定着し、古典語の ἔαρ は今では学術借用 έαρ として詩歌や文芸の中に残るのみ。
類義語に έαρ(春。古代ギリシャ語由来で詩歌や公式・文芸の文脈で使う硬い形)。άνοιξη は春を指すふつうの形として広く使う。派生に ανοιξιάτικος(春の〜、春らしい)。関連語に動詞 ανοίγω(開く), 名詞 άνοιγμα(開き、開口部)。
女性名詞
季節 
信仰・神話 
植物
形容詞
時 