#男性名詞
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ギリシャ語:οίκτος
読み方:イクトス・イークトス
ラテン文字:oiktos
古代ギリシャ語の οἶκτος(憐れみ、哀れみ)に由来。さらに前の語源は確定していない。
οίκτος は、苦しんでいる人や非常に悪い状況にある人に対して抱く、悲しみと同情の感情を指す。ただし、単に温かい思いやりだけでなく、相手を下に見るような憐れみや、軽蔑の混じった同情を表すこともある。
類義語には λύπη(悲しみ、同情)、συμπάθεια(同情、好意)、συμπόνια(同情、憐れみ)、έλεος(慈悲、憐れみ)など。関連語には οικτίρω(憐れむ)、οικτρός(哀れな、惨めな)などの語がある。対照的に、他人の不幸ではなく成功や幸福に向かう否定的感情には φθόνος(妬み)が挙げられる。
ギリシャ語:κληρικός
読み方:クリリコス・クリリコース
ラテン文字:klirikos
ヘレニズム期ギリシャ語の κληρικός(聖職者に属する、聖職者)に由来。これは κλῆρος(くじ、割り当て、相続分、聖職者層)に、形容詞を作る接尾辞 -ικός が付いた語。
κλῆρος は、くじで割り当てられたものや相続分を指し、キリスト教の文脈では聖職者層も指すようになった。現代ギリシャ語の κλήρος にも「聖職者層」の意味がある。
英語 cleric は、後期ラテン語 clericus を経て古代ギリシャ語 κληρικός に由来する。英語 clergy や clerk も同じ語源につながる。
類義語には ιερέας(司祭、神父)、ιερωμένος(聖職者)、παπάς(神父、司祭)などがある。対義語は λαϊκός(平信徒、俗人)。関連語には ιεραρχία(聖職者階級、ヒエラルキー)、εκκλησία(教会)などがある。
ギリシャ語:αλχημιστής
読み方:アルヒミスティス・アルヒミスティース
ラテン文字:alchimistis
フランス語 alchimiste(錬金術師)に由来。alchimiste は alchimie(錬金術)に担い手を表す -iste が付いた語。現代ギリシャ語の αλχημιστής も、αλχημεία(錬金術)の語根に接尾辞 -ιστής を合わせた構成である。
英語 alchemist も、古フランス語 alquemiste や中世ラテン語 alchemista を経た同系統の語。女性形は αλχημίστρια(女性の錬金術師)、形容詞は αλχημικός(錬金術の)など。
近い領域の語に μάγος(魔法使い、魔術師)がある。αλχημιστής は魔術一般ではなく、金属変成や秘術としての αλχημεία に携わる人を指す。
ギリシャ語:χρησμός
読み方:フリズモス・フリズモース
ラテン文字:chrismos
古代ギリシャ語の χρησμός(神託、託宣)に由来。χρησμός は、神託を下す、宣告することを表す動詞 χράω と同じ語根から作られた名詞である。
χράω のこの用法は、χράομαι(必要とする、用いる、神託を求める)や χρή(〜する必要がある)とも関係づけられるが、さらに前の語根は不確かな点がある。
χρησμός は、神託所や神から与えられる答え、またその言葉そのものを指す。μαντεία(占い、神託、予知能力)が占いや神託の術・能力に重点を置くのに対し、χρησμός は与えられた答えや託宣の内容に重点がある。
英語の chresmology(神託研究、神託集)などに見られる chresm- は、古代ギリシャ語 χρησμός に由来する。一方、英語 oracle はラテン語 oraculum に由来し、χρησμός とは語源を共有しない。
関連語には μάντης(神意を解く人、占い師)、μαντεία(占い、神託)、μαντείο(神託所)、προφητεία(預言、予言)など。また σκοτεινός χρησμός は「解釈しにくい神託」を意味する。
ギリシャ語:μάντης
読み方:マンディス・マンディース
ラテン文字:mantis
古代ギリシャ語の μάντις(予言者、神意を解く人)に由来。中世ギリシャ語で語尾が -ης に改められ、現代ギリシャ語の μάντης につながった。
μάντις のさらに前の語源は確定的ではない。古代ギリシャ語の μαίνομαι(狂う、神がかりになる)と結びつける説明があり、さらに印欧祖語で「考える、感じ取る」ことを表す語根に遡る説がある。
女性形は μάντισσα(女性の予言者、占い師)。関連語には μαντεία(占い、神託)、μαντείο(神託所)、μαντικός(予言の、占いの)などがある。英語の mantic(予言的な)や -mancy(〜占い)もこの語族に属する。
近い語に προφήτης(預言者)がある。μάντης は古代宗教や占いで神意を読み解く人を指し、προφήτης は神意を人々に語る人、また一神教的な預言者を指す文脈でよく用いられる。
ギリシャ語:αρχάγγελος
読み方:アルハンゲロス・アルハーンゲロス
ラテン文字:archangelos
ヘレニズム期ギリシャ語の ἀρχάγγελος(大天使)に由来。ἀρχάγγελος は ἀρχι- / ἀρχ-(第一の、上位の、長の)と άγγελος(使者、天使)からなる。
ἀρχ- は古代ギリシャ語 ἀρχή(始まり、支配、権威)や動詞 ἄρχω(始める、支配する)と同じ語族に属する。英語の archangel も、ラテン語 archangelus を経て古代ギリシャ語 ἀρχάγγελος に遡る。
宗教的な文脈では、天使の階級や特定の大天使の称号として先頭大文字の Αρχάγγελος / Αρχάγγελοι が用いられる。関連語には άγγελος(天使、使者)、θεός(神)、ιερός(聖なる)などがある。
ギリシャ語:Χριστός
読み方:フリストス・フリストース
ラテン文字:christos
ヘレニズム期ギリシャ語の Χριστός(油を注がれた者、キリスト)を継承。
もとは古代ギリシャ語の形容詞 χριστός(油を塗られた、香油を塗られた)に由来する。これは動詞 χρίω(塗る、油を注ぐ)に、結果状態を表す形容詞を作る接尾辞 -τός が付いた語である。χρίω は、さらに印欧祖語で「こする、塗る」を表す語根に遡る。
キリスト教の文脈では、アラム語・ヘブライ語系の Μεσσίας(メシア、油を注がれた者)に対する翻訳借用として用いられた。すなわち、Μεσσίας の「油を注がれた者」という概念を、ギリシャ語の既存の語彙 Χριστός に当てはめた形である。
英語 Christ は、ラテン語 Christus を経て古代ギリシャ語 Χριστός に由来する。英語 Christian, Christianity, Christmas などの語も、この Χριστός を語源とする。
関連語には Ιησούς Χριστός(イエス・キリスト)、Μεσσίας(メシア)、θεός(神)、Υιός του Θεού(神の子)、σταυρός(十字架)、ευαγγέλιο(福音書、福音)など。指小辞を用いた形には Χριστούλης がある。
ギリシャ語:προφήτης
読み方:プロフィティス・プロフィーティス
ラテン文字:profitis
古代ギリシャ語の προφήτης(神意を語る者、神の代弁者)に由来。προφήτης は προ-(前に、公に)と φημί(言う、語る)に、行為者を表す接尾辞 -της が付いた語である。
φημί はさらに印欧祖語で「話す、言う」ことを表す語根に遡る。英語の fame(評判)、fable(寓話)、fate(運命)などはラテン語を経て同じ語根につながる。
もとは神の意志を人々に向けて語る人を指し、そこから未来を予言する人、また比喩的に将来を予測する人も指すようになった。現代の比喩的な「予測する人」の意味は、フランス語 prophète からの意味借用によって強まった。
英語 prophet も、ラテン語 propheta を介して古代ギリシャ語 προφήτης に遡る。
女性形は προφήτισσα(預言者、予言者(女性))。派生語には προφητεία(預言、予言)、προφητεύω(預言する、予言する)、προφητικός(預言的な、予言的な)などがある。
関連語に θεός(神)、θεία βούληση(神意)、νόμος(律法、法)、μάντης(神意を解く人、占い師)、φαντασία(想像)など。成句には ουδείς προφήτης στον τόπο του(故郷では預言者として認められない)、μετά Χριστόν προφήτης(後知恵の予言者)などがある。
ギリシャ語:σταυρός
読み方:スタヴロス・スタヴロース
ラテン文字:stavros
古代ギリシャ語 σταυρός(直立した杭、柱)を継承。さらに印欧祖語で「立つ」を表す語根に遡る。もとは地面に立てる杭や柱を指した語で、処刑具としての杭や十字架を指すようになった。
ヘレニズム期ギリシャ語では、イエス・キリストの磔刑に関わる「十字架」の意味がラテン語 crux と対応する形で定着した。英語 cross はラテン語 crux に由来。σταυρός とは語源を共有しないが、キリスト教の象徴としての意味領域で対応している。
英語の学術語要素 stauro-(十字、十字形の)は、古代ギリシャ語 σταυρός に由来。たとえば staurolite(十字石)などの語に見られる。
σταυρός の指し示す範囲は広く、キリスト教の十字架、十字架形のしるし、十字形の物体や飾り、勲章などのほか、投票用紙の印や星座名などにも用いられる。
関連語には σταυρώνω(十字を切る、磔にする)、σταυροφόρος(十字軍兵士、十字を帯びた)、σταυροφορία(十字軍、運動)、σταυρόλεξο(クロスワード)、σταυρουδάκι(小さな十字架、ペンダント)などがある。
信仰の文脈では σύμβολο(象徴、記号)、ιερός(聖なる)、Χριστός(キリスト)、μαρτύριο(殉教、苦難)などと結びつく。
また、造形としては σχήμα(形)、記号としては υπογραφή(署名)や σταυρός προτίμησης(選好の印、投票の印)などにも関わる。
ギリシャ語:μοναχός
読み方:モナホス・モナホース
ラテン文字:monachos
古代ギリシャ語 μόνος(一人の、唯一の)から作られたヘレニズム期ギリシャ語 μοναχός(単独の、孤独な)を継承。
名詞の ο μοναχός(修道士)は、この形容詞の男性形が名詞化したもの。女性形 η μοναχή(修道女)は、中世ギリシャ語で μοναχός に女性名詞語尾 -ή が付いて作られた。
形容詞・限定代名詞的には μοναχός -ή -ό の形で「一人の、一人で」「自分で」「自分から」などの意味を表す。強勢位置の異なる μονάχος -η -ο も、同じ意味領域で用いられる別形。
英語 monk は、後期ラテン語 monachus / monicus を経て、古代ギリシャ語 μοναχός に遡る借用語。英語 monastic も同根語である。
関連語には μόνος(一人の、唯一の)、μοναστήρι(修道院)、μοναστικός(修道の)、μοναχισμός(修道制)、καλόγερος(修道士)、ιερέας(司祭、神父)などがある。
ギリシャ語:πάγκος
読み方:パンゴス・パンゴース
ラテン文字:pangos
イタリア語 banco(台、腰掛け、商人の台)からの借用。現代ギリシャ語では πάγκος と μπάγκος の形がある。
banco の語根は、古高ドイツ語 bank などゲルマン系の「長い腰掛け、台」を表す語。英語 bench(ベンチ)も同じゲルマン系の語に属する。
英語 bank(銀行)も、もとは両替商や商人が使う台を表すイタリア語 banca / banco に由来。家具や台を表す語が、商取引の場を経て金融機関の意味へと発展した。
πάγκος は作業台、店のカウンターや陳列台、複数人が座る長い腰掛けなどを指す。指小形 παγκάκι は、公園などにある「ベンチ」を指す語として一般的。
海事の文脈では、船の航行を妨げる砂地や岩場の浅瀬を指すこともある。この意味もイタリア語 banco の「浅瀬、砂州」に対応している。
関連語は、τραπέζι(テーブル)、πάγκος κουζίνας(キッチンカウンター)、πάγκος εργασίας(作業台)、πάγκος πωλητή(売り手の台)、παγκάκι(ベンチ)など。
ギリシャ語:ναός
読み方:ナオス・ナオース
ラテン文字:naos
古代ギリシャ語の ναός(神殿、聖所)に由来。古代ギリシャ語では神の住まう場所や、神像を安置する神殿の内室を指した。
ναός は ναίω(住む)などと関係づける説がある一方、語形の揺れから前ギリシャ語由来と見る説もある。
ヘレニズム期ギリシャ語でも ναός は神殿を指し、キリスト教の文脈では神の神殿や聖堂を指す語としても使われた。
英語 naos は、建築史や古典建築の用語として、古代ギリシャ神殿の内室や神像を安置する部分を指す。これも古代ギリシャ語 ναός に由来する。
現代ギリシャ語では、古代ギリシャの神殿にも、キリスト教の聖堂・教会堂にも、他宗教の礼拝施設にも使う。キリスト教の建物を指す語としては εκκλησία(教会、教会組織)もあり、ναός は建物としての「聖堂、教会堂」をやや改まって指すときに使いやすい。
関連語には ιερός(聖なる)、ιερό(聖域、神殿、至聖所)、θεότητα(神性、神格)、λατρεία(礼拝、崇拝)などがある。指小形に ναΐσκος(小さな神殿、小聖堂)や ναΰδριο(小聖堂)がある。
ギリシャ語:προσανατολισμός
読み方:プロサナトリズモス・プロサナトリズモース
ラテン文字:prosanatolismos
動詞 προσανατολίζω(方位を定める、方向づける)に、動作や結果を表す名詞語尾 -μός が付いた語。προσανατολίζω は προς(〜へ)と ανατολή(東、日の出)をもとにした動詞で、東を基準に向きを定める発想から作られている。
「方位、見当、方向づけ」の意味は、フランス語 orientation からの翻訳借用。orientation は orient / orienter に由来し、ラテン語 oriens(昇るもの、東)に遡る。英語 orientation も同じ系統。ギリシャ語の ανατολή も「昇ること、東」を表し、語源は別だが意味の発想が対応している。
関連語に προσανατολίζω(方位を定める、方向づける)、αποπροσανατολισμός(方向感覚の喪失、攪乱)、κατεύθυνση(方向、方針)、ορίζοντας(地平線、水平線)、πυξίδα(方位磁針)などがある。
ギリシャ語:λαϊκός
読み方:ライコス・ライコース
ラテン文字:laikos
ヘレニズム期ギリシャ語の λαϊκός(民衆の、一般信徒の)を継承。λαός(民衆、国民)に形容詞を作る接尾辞 -ικός が付いた語。
基本は形容詞だが、性・数の形がそのまま名詞としても使われる。中性複数 τα λαϊκά は口語で「民衆歌謡、ライカ音楽」、男性形 ο λαϊκός は教会文脈で「平信徒、俗人」、女性形 η λαϊκή は λαϊκή αγορά の省略として「青空市、定期市」を指す。
現代の「民衆の、大衆的な、庶民的な」という意味は、フランス語 populaire からの意味借用によって輪郭が整えられた。
類義語には δημοτικός(民衆の、民俗の)、παραδοσιακός(伝統的な)などがある。対義語には文脈に応じて αριστοκρατικός(貴族的な)、λόγιος(学者的な、文語的な)などが並ぶ。
関連語に λαός(民衆、国民)、λαογραφία(民俗学)、λαϊκή αγορά(青空市、定期市)、λαϊκό τραγούδι(民衆歌謡、ライカ音楽)などがある。
ギリシャ語:πυρήνας
読み方:ピリナス・ピリーナス
ラテン文字:pyrinas
古代ギリシャ語の πυρήν(果実の種、核)に由来。πυρήν はさらに古代ギリシャ語 πῡρός(小麦の粒)に接尾辞が付いた形とされる。
もとは果実の中にある硬い種や核を指す語。そこから生物の細胞核、原子核、地球や天体の中心部、さらに物事や組織の中心という比喩的な意味へも広がった。
物理・化学の「原子核」の意味は、近代諸言語の nucleus という概念からの意味借用で定着。nucleus はラテン語 nucleus(核、種の中身、小さな木の実)に由来し、中心にある硬い部分という発想が πυρήνας と共通している。
派生語に πυρηνικός(核の、原子力の)、πυρηνοκίνητος(原子力で動く)、σκληροπυρηνικός(強硬派の、筋金入りの)など。
果実の種を指す語としては κουκούτσι(種、核)なども近い。物理では άτομο(原子)、πρωτόνιο(陽子)、νετρόνιο(中性子)、ηλεκτρόνιο(電子)など、生物では κύτταρο(細胞)などの語と結びついて用いられる。
ギリシャ語:ηλεκτρισμός
読み方:イレクトゥリズモス・イレクトゥリズモース
ラテン文字:ilektrismos
フランス語 électricité または英語 electricity からの借用。ギリシャ語では、フランス語 -ité、英語 -ity に対応する名詞語尾として -ισμός が使われ、ηλεκτρισμός の形になった。
électricité / electricity は新ラテン語 electricitas に由来。ラテン語 electrum(琥珀)を経て、古代ギリシャ語の ἤλεκτρον(琥珀)に遡る。
琥珀をこすると軽いものを引きつける性質がある。その観察から、電気をめぐる語彙が作られた。
関連語に ήλεκτρο(琥珀、エレクトラム)、κεχριμπάρι(琥珀)、ηλεκτρικός(電気の)、ηλεκτρο-(電気〜)、ηλεκτρόνιο(電子)など。
物理の文脈では ενέργεια(エネルギー)、ρεύμα(電流)、ηλεκτρικό φορτίο(電荷)、ηλεκτρικά φαινόμενα(電気現象)などが挙げられる。
ギリシャ語:κινητήρας
読み方:キニティラス・キニティーラス
ラテン文字:kinitiras
古代ギリシャ語の κινητήρ(動かすもの、始動させるもの)に由来。κινητήρ は動詞 κινέω(動かす、動き出させる)に、行為者や道具を表す接尾辞 -τήρ が付いた形。κινέω の語根は印欧祖語で「動き出させる、動く」を表す概念に遡る。
モーターやエンジンを指す意味は、フランス語 moteur と英語 motor からの意味借用で加わった。moteur と motor はラテン語 movere(動かす)に由来し、「動かすもの」という発想が κινητήρ と対応している。
関連語に κίνηση(動き、運動)、κινώ(動かす)、κινητικός(運動の)、κινητήριος(動かす、推進する)、κινητός(動く、携帯の)など。機械の文脈では μηχανή(機械、エンジン)、μηχάνημα(機械、装置)、γεννήτρια(発電機)などと並ぶ。
ギリシャ語:αγωγός
読み方:アゴゴス・アゴゴース
ラテン文字:agogos
古代ギリシャ語の ἀγωγός(導く人、案内する人)に由来。ἀγωγός は動詞 ἄγω(導く、連れて行く、進める)から作られた名詞で、ἄγω はさらに印欧祖語で「駆る、進める」を表す語根に遡る。
物理学における「導体」の意味は、フランス語 conducteur からの意味借用。conducteur もラテン語 conducere(導く、連れて行く、集める)に由来し、「導くもの」という発想が αγωγός と対応している。
関連語に αγωγή(教育、伝導)、οδηγός(運転手、案内者)、αγωγιμότητα(伝導性)、ημιαγωγός(半導体)などがある。管としての意味では σωλήνας(管、パイプ)が近く、物理では ηλεκτρικός αγωγός(電気導体、電線)、αγωγός της θερμότητας(熱の導体)など。
ギリシャ語:δίσκος
読み方:ディスコス・ディースコス
ラテン文字:diskos
古代ギリシャ語の δίσκος(投げ円盤、皿、円盤)を継承。さらに前の由来は判然とせず、ギリシャ語以前の言語を源流とする説がある。ラテン語 discus を経て、英語 disc, disk, discus の語源にもなった。
音楽の「レコード」はフランス語 disque、コンピュータの「ディスク」は英語 disc からの意味借用で入った。天文では ηλιακός δίσκος(太陽面)、γαλαξιακός δίσκος(銀河円盤)のように、丸く平たい見え方や構造を指す連語にも使う。
派生語に δισκάκι(小さいディスク、小皿)など。関連語に δισκοβολία(円盤投げ)、δισκοβόλος(円盤投げの選手)、δισκόφρενο(ディスクブレーキ)、σκληρός δίσκος(ハードディスク)、οπτικός δίσκος(光ディスク)などがある。音楽作品のまとまりは άλμπουμ(アルバム)とも言う。
ギリシャ語:πετριχώρας
読み方:ペトゥリホラス・ペトゥリホーラス
ラテン文字:petrichoras
ギリシャ語:πετριχώρος
読み方:ペトゥリホロス・ペトゥリホーロス
ラテン文字:petrichoros
ギリシャ語:φακός
読み方:ファコス・ファコース
ラテン文字:fakos
古代ギリシャ語の φακός(レンズ豆)を継承。
語源は古代から「レンズ豆」を表してきた語で、両凸の形がレンズ豆に似ていたことから、後にガラスや結晶を磨いた光学器具の名としても使われるようになった。
同じ発想はラテン語 lens(レンズ豆)にも見られ、ここから英語 lens、フランス語 lentille などが生まれた。古代ギリシャ語と古代ラテン語が、光学器具を別々にレンズ豆の形になぞらえたことになる。
現代ギリシャ語では、もとの「レンズ豆」の意味は φακή(女性形、複数 φακές)が引き継ぎ、男性形 φακός は光学レンズ・カメラ・懐中電灯の側に特化している。性の違いで意味が分かれた語の対の一つ。
カメラの意味はフランス語 lentille や英語 lens、また objectif などの近代光学・写真用語の流入を経て広がった。
「懐中電灯」の意味は、光を放つ道具の名としてさらに発展したもの。
派生語に ενδοφακός(眼内レンズ)、φακούλι(指小形、まれ)など。
光学・カメラ関連の語に κάμερα(カメラ)、φωτογραφική μηχανή(写真機)、αντικειμενικός(対物レンズ)、προσοφθάλμιος(接眼レンズ)など。
懐中電灯の文脈では φανός(ランタン、街灯)、φανάρι(ランプ)などが近い。
ギリシャ語:κώδικας
読み方:コディカス・コーディカス
ラテン文字:kodikas
ヘレニズム期ギリシャ語 κῶδιξ(写本、書字板)を継承。
語源はラテン語の codex(書字板、写本、法典)からの借用であり、ラテン語の codex はさらに caudex(木の幹、丸太)にさかのぼる。古代ローマでは木の板を綴じ合わせて書字板として使っており、それがやがて綴じた本(巻物に対する綴じ本)を指すようになった。その後、ローマ法の集成(codex)にもこの語が使われている。
古代ギリシャ語の対格 κώδικα が現代の主格形になった。
「法典」「写本」の意味はギリシャ・ビザンティン以来の用法を引き継いでいる。一方で、現代の「規範、規約」「記号体系、暗号、コード」の意味はフランス語 code から、「ソースコード、プログラミングのコード」の意味は英語 code からの意味借用によって広がった。
英語の code も同じラテン語 codex を語源として共有する。
派生語に κωδικός(コードの、暗号、パスワード)、κωδικοποιώ(コード化する、暗号化する)、αποκωδικοποιώ(解読する)、κωδικοποίηση(符号化)など。
「法典」の意味では類義語に νόμος(法律、法)、関連語に κανονισμός(規則、規約)など。
行動規範の文脈で並ぶのは κανόνας(規則)、ηθική(倫理)、δεοντολογία(職業倫理)あたり。
記号体系・暗号を扱うときの周辺語には κωδικός(コード、暗号番号)、κρυπτογράφημα(暗号文)、σύμβολο(記号)などがある。
ギリシャ語:φθόνος
読み方:フソノス・フソーノス・フトノス・フトーノス
ラテン文字:fthonos
古代ギリシャ語の φθόνος(妬み、悪意)を継承。古代では動詞 φθονέω(妬む、出し惜しむ)と密接に関連し、「他人の幸運を出し惜しむ」「自分は持っていても他人には渡したくない」という心の働きを核に持つ語だった。
印欧祖語までは確定的にたどれないが、古代ギリシャ語の動詞 φθίω / φθίνω(衰える、滅びる、消耗する)と同じ語族の可能性が指摘されており、「他人の繁栄を見て自分が衰える、損なわれる」という感情の捉え方が背景にあると考えられる。
古代ギリシャ神話には Φθόνος という嫉妬・妬みの擬人化神があり、ローマ神話の Invidia に対応する。古代ギリシャの宗教観では、φθόνος は神々が幸運な人間に対して抱く嫉妬として頻繁に現れ、人間の傲慢さ(ὕβρις)が神の φθόνος を招き、それが nemesis(懲罰、Νέμεσις)につながるという観念があった。
ζήλια / ζηλεία が「自分も同じものを得たいと願う感情」(憧憬を含む)を表すのに対し、φθόνος は「他者の優位や繁栄を妬み憎む否定的な感情」に重心がある。
キリスト教神学の七つの大罪(επτά θανάσιμα αμαρτήματα)のひとつとして、伝統的には φθόνος の名で挙げられる。教父文献やギリシャ正教の古典的なリストでは φθόνος が標準だが、現代の口語・近代訳では同じ「妬み」を ζηλοφθονία(ζήλια と φθόνος の合成語)と呼ぶこともある。
合成語の ζηλοφθονία(嫉妬とねたみ)は ζήλια と φθόνος を重ねた語で、両概念を融合した感情を表す。近い語に μοχθηρία(悪意)。

道具
住居
仕事
地形 
感情 
信仰・神話
職業 
魔術
神秘 

人 
形容詞
様態 
施設・建物 
空間
教育
哲学・思考
政治 
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言葉 
化学
生物
天文
地学 
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情報・メディア 
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身体・健康 
法 
怒り
七つの大罪 

家族