ギリシャ語:πετριχώρ
読み方:ペトゥリホル・ペトゥリホール
ラテン文字:petrichor
英語 petrichor からの借用。1964年にオーストラリアの科学者ベアとトーマスが古代ギリシャ語の πέτρα(石)と ἰχώρ(神々の体液)を合わせて名づけた語で、ギリシャ語には再借用として入った。
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ギリシャ語:πετριχώρ
読み方:ペトゥリホル・ペトゥリホール
ラテン文字:petrichor
英語 petrichor からの借用。1964年にオーストラリアの科学者ベアとトーマスが古代ギリシャ語の πέτρα(石)と ἰχώρ(神々の体液)を合わせて名づけた語で、ギリシャ語には再借用として入った。
ギリシャ語:μέτριος
読み方:メトゥリオ・メートゥリオ
ラテン文字:metrios
古代ギリシャ語の μέτριος(ほどよい、度を越さない)に由来。名詞 μέτρον(μέτρο, 尺度)からできた形容詞で、「尺度に合った」が本来の意味。
ギリシャ語:εξώστης
読み方:エクソスティス・エクソースティス
ラテン文字:exostis
ギリシャ語:σταθμός
読み方:スタスモス・スタスモース・スタトゥモス・スタトゥモース・スタスモス・スタスモース
ラテン文字:stathmos
古代ギリシャ語の σταθμός(宿場、停留所、兵や旅人が立ち止まる場所)に由来。動詞 ἵστημι(立つ、立たせる)と同じ語族の名詞。現代の「駅、放送局、観測所」のような拠点の意味は、フランス語 station、英語 station からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:ναρκισσισμός
読み方:ナルキシズモス・ナルキシズモース
ラテン文字:narkissismos
フランス語 narcissisme からの借用。素材は古代ギリシャ語の人名 Νάρκισσος(ナルキッソス)に「〜であること、〜主義」を作る接尾辞 -ισμός を付けた形で、ドイツの精神科医ネッケが1899年に造語し、フロイトが精神分析に取り込んで各国に広まった。神話のナルキッソスは水面に映った自分の姿に恋して花になった若者で、この神話にちなんで過度の自己愛を言う語として定着した。Νάρκισσος 自体は花の名にもなっており、語源は印欧語族より古い先ギリシャ層に遡ると見られる。英語 narcissism、ドイツ語 Narzissismus も同じ造語の流れで生まれた語。
ギリシャ語:κυκλώνας
読み方:キクロナス・キクローナス
ラテン文字:kyklonas
英語 cyclone から入った語。cyclone は19世紀半ばに気象学者ヘンリー・ピディントンが古代ギリシャ語の κυκλῶν(回転する)をもとに作った語。ギリシャ語から英語を経て再びギリシャ語に戻ってきた語にあたる。もとは κύκλος(円、車輪)。関連語に気象分野の τυφώνας(台風)。
ギリシャ語:σίφουνας
読み方:シフナス・シーフナス
ラテン文字:sifounas
古代ギリシャ語の σίφων(管、くだ、水を吸い上げる器具)を継承。対格 τὸν σίφωνα から主格が作り直されたうえ、[f] と [n] の影響で [o] が [u] に移って今の形になった。英語 siphon も同じ語源。近い語に ανεμοστρόβιλος(つむじ風、竜巻)。
ギリシャ語:Ιχθύς Νότιος
読み方:イフシスノティオス・イフシースノティオス・イフティスノティオス・イフティースノティオス
ラテン文字:ichthys notios
ιχθύς(魚)と νότιος(南の)からできた連語で、「南の魚」の意味。2世紀のトレミーが挙げた 48 星座の一つで、南天に位置する。
水瓶座から流れる水を、大きな魚が飲んでいる姿で描かれる。シリアの神話では女神デルケトが水に落ちたときにこの魚が救い、そこから星空にあげられたとされ、うお座の2匹の魚はこの魚の子と伝わる。
α星は「魚の口」を意味するアラビア語由来の Fomalhaut(フォーマルハウト)。秋の南の空で孤立して輝く1等星で、「孤独な星」とも呼ばれる。
ギリシャ語:ινδός
読み方:インドス・インドース
ラテン文字:indos
古代ギリシャ語の Ἰνδός(インドの人、インダス川)を継承。古代ペルシャ語 hindūš(インド)からの借用で、そこからインド・イラン祖語で「川」を表す語根につながる。もとはインダス川の名で、そこから川のほとりに住む人やその地方、インド全体の呼び名にも移った。
国名は Ινδία(インド)の形で言う。英語 Indian, Indus も同じ系統。
星座のインディアン座は、16世紀末にオランダの航海者カイザーとデ・ハウトマンが観測した南天の星をもとに、オランダの天文学者プランシウス(プランキウスとも)が考案した星座。新しい星座なので神話はない。
ギリシャ語:Κύνες Θηρευτικοί
読み方:キネスシレフティキ・キーネスシレフティキ・キネスティレフティキ・キーネスティレフティキ
ラテン文字:kynes thireftikoi
κύων(犬)の複数形 κύνες と θηρευτικός(狩りの)の複数形 θηρευτικοί からなる連語で「狩りの犬たち」を言う。17世紀にポーランドの天文学者ヘヴェリウスが設定した星座で、新しい星座なので神話はない。もとは中世アラビア語・ラテン語の翻訳過程で「こん棒」が「犬」と取り違えられた流れを、ヘヴェリウスがそのまま星座名に取り入れたとされる。二匹の犬には Αστερίων(北)と Χαρά(南)の名がついている。ラテン語形は Canes Venatici で、英語名もそのまま入った。
ギリシャ語:Σταυρός του Νότου
読み方:スタヴロストゥノトゥ・スターヴロストゥノトゥ
ラテン文字:stavros tou notou
ギリシャ語:Στέφανος Νότιος
読み方:ステファノスノティオス・ステーファノスノティオス
ラテン文字:stefanos notios
στέφανος(冠、花輪)と νότιος(南の)を組み合わせた連語で、「南の冠」の意味。ラテン語の Corona Australis も「南の冠」を指す。プトレマイオスの48星座のひとつで、古代から知られる。古代ギリシャでは冠というより花輪とみなされ、τοξότης(いて座)の弓から落ちた環、あるいは Κένταυρος(ケンタウルス座)の冠という伝承が残る。北半球に対になる Στέφανος Βόρειος(かんむり座)がある。
ギリシャ語:Μέγας Κύων
読み方:メガスキオン・メーガスキオン
ラテン文字:megas kyon
μέγας(大きい)と κύων(犬)からなる連語で「大きな犬」を言う。古代ギリシャでは狩人オリオンの猟犬のひとつと見なされ、天ではオリオンのあとに続いて隣のうさぎ座を追う姿に読まれた。別の伝承では、ゼウスがエウロペに贈った猟犬ライラプス(獲物を逃さない犬)が天に上げられたものともされる。星座でいちばん明るい恒星 Σείριος(シリウス)は「焼きつく」の意味の語から来た名。ラテン語形は Canis Major で、英語名もそのまま入った。近くに Μικρός Κύων(こいぬ座)。日常の「犬」は σκύλος を使うことが多い。
ギリシャ語:Μικρός Κύων
読み方:ミクロスキオン・ミクロースキオン
ラテン文字:mikros kyon
古代ギリシャ語の μικρός(小さい)と κύων(犬)からなる連語「小さな犬」に由来。古代から狩人オリオンに従う二匹の犬の小さな方と見なされ、おおいぬ座とともにオリオンのそばに配された。星座でいちばん明るい恒星 Προκύων(プロキオン)は προ-(〜の前に)と κύων(犬)からなる名で、シリウスより先に昇ることから「犬に先んじて昇る」と名づけられた。ラテン語形は Canis Minor で、英語名もそのまま入った。近くに Μέγας Κύων(おおいぬ座)。日常の「犬」は σκύλος を使うことが多い。
ギリシャ語:Φοίνιξ
読み方:フィニクス・フィーニクス
ラテン文字:foinix
古代ギリシャ語の φοῖνιξ を継承。古代ギリシャ語の段階ですでに「紫紅色」「ナツメヤシ」「ナツメの実」「不死鳥」「フェニキア製の弦楽器」と複数の意味を持ち、どれが先かは確定していない。ミケーネ期(紀元前13世紀ごろ)の線文字Bにすでに po-ni-ke の形が現れ、ナツメヤシを指すとされる。
有力な説では、西セム語で赤い染料(アカネ)を表す語からの借用で、「紫紅色」が出発点。フェニキアから運ばれた赤紫の染料が語義の中心にあり、フェニキア人(Φοίνικες)も「赤い染料を扱う人々」の意味から呼ばれたとされる。不死鳥の名も「紫紅色の鳥」「フェニキアの鳥」の感覚から生まれた可能性がある。
鳥とナツメヤシの結びつきには、木の名が鳥に付いたとする説と、鳥の名が木に付いたとする説の両方があり、決着していない。手がかりのひとつがエジプト語 bnw で、この語もまた聖鳥とナツメヤシの実の両方を表していた。
古代ギリシャ語ではナツメヤシの木もその実も同じく φοῖνιξ で言ったが、現代ギリシャ語では木は φοίνικας、φοινικιά、φοινικόδεντρο、実はアラビア語から入った χουρμάς と使い分ける。
星座「ほうおう座」は17世紀はじめに南天に新しく設けられた星座で、ラテン語 Phoenix、フランス語 phénix を経て古代ギリシャ語の Φοίνιξ が星座名として定着した。
関連語に φοίνικας(ナツメヤシ、フェニキア人)、φοινικιά、φοινικόδεντρο(ナツメヤシの木)、φοινικικός(フェニキアの)。英語 phoenix、Phoenician も同じ語族。
ギリシャ語:Ωρίων
読み方:オリオン・オリーオン
ラテン文字:orion
古代ギリシャ語の Ὠρίων(オリオン)に由来。ギリシャ神話の巨人の狩人で、アルテミスに愛されたが、サソリに刺されて死んだと伝えられる。天に上げられ、Σκορπιός(さそり座)と追いかけあう対角の位置に置かれたという神話。名前の語源ははっきりせず、アッカド語の Uru-anna「天の光」からという見方がある。近くの星座に Μέγας Κύων(おおいぬ座)と Μικρός Κύων(こいぬ座)があり、オリオンに従う猟犬とされる。
ギリシャ語:Ύδρος
読み方:イドゥロス・イードゥロス
ラテン文字:ydros
ギリシャ語:Λαγωός
読み方:ラゴオス・ラゴオース
ラテン文字:lagoos
古代ギリシャ語の λαγωός(野ウサギ)に由来。ホメロスなど叙事詩で使われる形で、同じ古代ギリシャ語でもふつうは λαγώς、現代ギリシャ語では λαγός と言う。
プトレマイオスの48星座にも含まれる古い星座。北の Ωρίων(オリオン座)とその猟犬の Μέγας Κύων(おおいぬ座), Μικρός Κύων(こいぬ座)に追われる野ウサギの姿、という見立てがある。
ギリシャ語:Περσεύς
読み方:ペルセフス・ペルセーフス
ラテン文字:persefs
ギリシャ語:Βοώτης
読み方:ヴォオティス・ヴォオーティス
ラテン文字:vootis
古代ギリシャ語の Βοώτης(牛飼い、牛追い)を継承。βοῦς(牛)からできた語。英語 Boötes もラテン語 Boōtēs を経て同じ語源。
プトレマイオスの48星座に含まれる古い星座。古代の人は Μεγάλη Άρκτος(おおぐま座)の星並びを牛の引く車に見立て、それを追う人の姿として空に描いたという。別名 Αρκτοφύλαξ(熊の番人)もあり、主星 Αρκτούρος(アルクトゥルス)はこの別名にちなむ。神話では、ゼウスとカリストの子アルカスとされ、熊に変えられた母を追って空に昇ったという伝承もある。
ギリシャ語:Δράκων
読み方:ドゥラコン・ドゥラーコン
ラテン文字:drakon
古代ギリシャ語の Δράκων に由来。普通名詞 δράκων(龍、大蛇)から固有名に転じた語で、δράκων はさらに動詞 δέρκομαι(注意深く見る、睨む)に由来し、「鋭い目をしたもの」がもとの意味だった。現代ギリシャ語では、龍・ドラゴンを表す普通名詞は δράκος として残り、固有名としては古代形のまま Δράκων が立法者名と星座名に使われている。
男性名 Δράκων は、古代アテネで前7世紀に成文法を制定した立法者の名として特によく知られる。死刑を多用するきわめて厳しい刑罰で名を残し、英語 draconian(苛酷な、厳格な)もこの人物名からラテン語 Dracō を経て入った。英語 Draco(星座名、立法者名)、dragon なども同じ語源。
ギリシャ語:Ηνίοχος
読み方:イニオホス・イニーオホス
ラテン文字:iniochos
古代ギリシャ語の ἡνίοχος(御者)から。ἡνία(手綱)と ἔχω(持つ)からなる合成語で、「手綱を持つ者」の意味。
ギリシャ語:κένταυρος
読み方:ケダヴロス・ケーダヴロス・ケンダヴロス・ケーンダヴロス
ラテン文字:kentavros
古代ギリシャ語の κένταυρος(ケンタウロス)を継承。語源は不明。英語 centaur もラテン語 centaurus を経て同じ語源。
先頭大文字の Κένταυρος は南天のケンタウルス座を指す。隣の Λύκος(おおかみ座)はケンタウロスが狙う獣の姿という伝承があり、現在の Σταυρός του Νότου(みなみじゅうじ座)の星々もかつてはケンタウルス座の後ろ足の一部とされていた。
ギリシャ語:όφις
読み方:オフィス・オーフィス
ラテン文字:ofis
印欧祖語で「ヘビ」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の ὄφις(ヘビ)に由来。サンスクリット語 áhi(ヘビ)と同じ語源。
ふつうのヘビは φίδι。όφις は文語的な語。隣の星座 Ὀφιοῦχος(へびつかい座)は「ヘビを持つ者」の意で、ὄφις + ἔχω(持つ)からなる合成名。
派生語・合成語に οφιόδηκτος(ヘビに噛まれた), οφιολάτρης(ヘビ崇拝者), οφιοειδής(ヘビ形の、波打つ)。英語の動物学用語 ophidian(ヘビ類の), ophiology(蛇類学)も ὄφις をもとにした造語。
ギリシャ語:βωμός
読み方:ヴォモス・ヴォモース
ラテン文字:vomos
印欧祖語で「歩む, 踏み出す」を表した語根にさかのぼる動詞 βαίνω(歩む, 上る)から派生した古代ギリシャ語の名詞 βωμός(段, 台, 祭壇)を継承。一段高くなった場所を指し, そこから神に供物を捧げる台の意味に移った。
同じ βαίνω の語族に βάση(基盤, 土台), βήμα(一歩, 演壇), βάθρο(基壇, 台座), βατός(通行可能な), 合成語 εμβαίνω(入る), διαβαίνω(渡る), αναβαίνω(上る), καταβαίνω(下る)。祭壇まわりの語には θυσία(犠牲, 供物), σπονδή(献酒), ναός(神殿, 教会), ιερό(聖域)が並ぶ。
類義の θυσιαστήριο(犠牲を捧げる場所)は θυσιάζω(犠牲を捧げる)から作られた語で, キリスト教の祭壇 Αγία Τράπεζα(聖卓)を言うのに使うことが多い。βωμός は古代の異教の祭壇に結びつくが, 正教会では聖卓の同義語にもなる。先頭大文字の Βωμός は南天の星座さいだん座を指し, ラテン語 Ara, 英語 Ara, フランス語 l'Autel と同じ「祭壇」の意で, どれも古代の観測者が天に見立てた祭壇。
ギリシャ語:γλύπτης
読み方:グリプティス・グリープティス
ラテン文字:glyptis
古代ギリシャ語の動詞 γλύφω(彫る、刻む)から派生した γλύπτης(彫刻家)に由来。先頭大文字の Γλύπτης はちょうこくしつ座(南天の星座)を表す。
ギリシャ語:λύκος
読み方:リコス・リーコス
ラテン文字:lykos
古代ギリシャ語の λύκος(狼)を継承。印欧祖語の「狼」を表す語根から続き、ラテン語 lupus、英語 wolf、サンスクリット vṛka、スラヴ祖語 vьlkъ と共通する。英語 lycanthrope(狼男)もラテン語 lycanthrōpus を経て同じ語源で、古代ギリシャ語の合成語 λυκάνθρωπος(λύκος と ἄνθρωπος)から。
派生語に λύκαινα(雌狼)、指小形に λυκάκι、λυκόπουλο(いずれも子狼)、合成語に λυκόφως(薄暮、「狼の光」)など。σκύλος(犬)、αλεπού(狐)、πρόβατο(羊)、αρνί(子羊)と並んで成句や寓話によく登場する。
旧式銃の撃鉄を指すのは、ヘレニズム期ギリシャ語の λύκος にあった「打ち金、てこ」の用法に、フランス語で銃の部品を chien(犬)と呼ぶ慣用が重なったため。同じ用法の類義語に κόκορας(雄鶏)。先頭大文字の Λύκος は南天のおおかみ座で、Κένταυρος(ケンタウルス座)が狙う獣とされる。
ギリシャ語:Δίδυμοι
読み方:ディディミ・ディーディミ
ラテン文字:didymoi
古代ギリシャ語の δίδυμος(二重の、双子の)に由来。δύο(二)の重複からできた形容詞で、印欧祖語で「二」を表す語根につながり、サンスクリット語 dvis(二つ)やラテン語 duplus(二重の)とも系統を同じくする。
男性複数形の Δίδυμοι は、ギリシャ神話のカストルとポルックスの双子兄弟にちなんだ星座名。一方は不死、一方は死すべき定めだったが、死別を悼んで兄弟が願い、二人で夜空にのぼるようになったという神話。ふたご座の主星 α と β もそれぞれ Castor、Pollux と呼ばれる。占星術では黄道十二宮の第三宮の名にも使われる。現代ギリシャ語で一般に「双子」を表すのは中性複数形の δίδυμα で、Δίδυμοι は天文・占星の固有名詞としてのみ用いる。
ギリシャ語:ιχθύς
読み方:イフシス・イフシース・イフティス・イフティース
ラテン文字:ichthys
古代ギリシャ語の ἰχθύς(魚)に由来。中世以降、魚を表す一般的な単語として使われるようになったのは ψάρι(ὀψάριον から)で、ιχθύς は書き言葉や学術的な文脈、οστεϊχθύες(硬骨魚類)、χονδριχθύες(軟骨魚類)のような分類名で残っている。英語 ichthyology(魚類学)、ichthyosaur(魚竜)の ichthyo- も同じ起源。先頭大文字の Ιχθύς は星座名、全大文字の ΙΧΘΥΣ はキリスト教で Ιησούς Χριστός Θεού Υιός Σωτήρ(イエス・キリスト、神の子、救世主)の頭字語として用いられる。
ギリシャ語:Καρκίνος
読み方:カルキノス・カルキーノス
ラテン文字:karkinos
古代ギリシャ語の καρκίνος(カニ)を継承。カニの姿に見立てて同じ語が星座名にも使われ, その用法が現代ギリシャ語の Καρκίνος(かに座, 蟹座)に至る。ラテン語 cancer(カニ, 腫瘍)と同語源とみられ, 英語 Cancer(かに座, がん)はラテン語 cancer から入った。
ギリシャ神話では, Ηρακλής がレルネのヒュドラと戦ったときに足元を挟もうとした大ガニが星座になったとされる。ヘラがヘラクレスを妨害するために送った使いで, 同じ神話に由来する Ύδρα(うみへび座)と近い空域に置かれた。
同じ καρκίνος の語族に καρκίνος(カニ, がん), καρκινικός(がんの), καρκινοπαθής(がん患者), καρκίνωμα(がん腫)。「がん」の意味は, 古代の医学書で腫瘍の形をカニになぞらえたところから始まり, ラテン語 cancer を経て近代の各語に引き継がれた。
ギリシャ語:κριός
読み方:クリオス・クリオース
ラテン文字:krios
古代ギリシャ語の κριός(雄羊)を継承。ふつうは κριάρι(雄羊)を使う。攻城用の破城槌の用法は、雄羊が角で突き当たる姿から。
先頭大文字の Κριός(おひつじ座、牡羊座)は、金毛の雄羊クリソマロス(Χρυσόμαλλος)にちなむ。継母に命を狙われたプリクソスとヘレを背に乗せて空を飛び、コルキスまで運んだ雄羊。プリクソスが到着後に犠牲として捧げた毛皮が「金羊毛」となり、アルゴー船の英雄たちが求めに行ったという話。ゼウスが雄羊を星にした姿。
ギリシャ語:λέων
読み方:レオン・レーオン
ラテン文字:leon
ギリシャ語:σκορπιός
読み方:スコルピオス・スコルピオース
ラテン文字:skorpios
古代ギリシャ語の σκορπίος(サソリ)を継承。母音の衝突を避ける音節の合体(シニゼーシス)で現代の σκορπιός の発音と形になった。先頭大文字の Σκορπιός は星座と占星術でさそり座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ σκορπίος の語族に σκορπίνα(カサゴ), σκορπαινίδης(カサゴ科), σκορπιώδης(サソリに似た形の)。魚の名として使うときの σκορπιός は σκορπίνα より小型で, 大きな頭部と鰓蓋の棘を持つ近縁種を指す。
英語 scorpion はこの語がラテン語 scorpius / scorpio を経て入ったもの。scorpionfish(カサゴ類の総称)も同じ語源で, 英語でもギリシャ語同様「サソリ」の語が魚の名にも使われている。
ギリシャ語:ταύρος
読み方:タヴロス・ターヴロス
ラテン文字:tavros
古代ギリシャ語の ταῦρος(雄牛)を継承。印欧祖語で「雄牛」を表した語と共通の語源を持ち, ラテン語 taurus(雄牛)も同じ語根から出ている。先頭大文字の Ταύρος は星座と占星術でおうし座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ ταῦρος の語族に指小形 ταυράκι(小さな雄牛), 形容詞 ταύρειος(雄牛の), 合成語 ταυρομαχία(闘牛), ταυρομάχος(闘牛士), ταυροκαθάψια(古代の牛跳び儀式), ταυροειδής(雄牛のような形の), ταυρόμορφος(雄牛の形をした)。
英語 Taurus(おうし座)はラテン語 taurus を経て入り, tauromachy(闘牛)は ταυρομαχία から。牛の語彙では βόδι(去勢牛)が去勢された使役・食用の牛を指すのに対し, ταύρος は繁殖用の去勢されていない雄牛を指す。
ギリシャ語:τοξότης
読み方:トクソティス・トクソーティス
ラテン文字:toxotis
古代ギリシャ語の τοξότης(弓使い, 射手)を継承。τόξον(弓)に動作主を作る -της が付いてできた語で, 弓を扱う人を言う。
同じ τόξον の語族に τοξοβόλος(弓兵), τοξικός(弓術の, 毒性の), τοξικό(毒), 動詞 τοξεύω(弓を射る)。英語 toxic, toxin も, 古代ギリシャ語 τοξικόν(弓の矢に塗る毒)から入った語で, 同じ語族。
星座の Τοξότης は黄道十二星座の第九宮に当たる。ギリシャ神話で Τοξότης と結び付けられるのは, ケンタウロスの姿をした弓の射手, あるいは弓の発明者とされる森の精クロトスである。
ギリシャ語:Υδροχόος
読み方:イドゥロホオス・イドゥロホーオス
ラテン文字:ydrochoos
Υδροχόος(みずがめ座、水瓶座)は、古いギリシャ語で「水を注ぐ人、水を運ぶ人」を表した語に由来する。水を表す υδρο-(水)と、注ぐ・そそぐ動作に関わる語要素が結びついた形が、黄道十二星座の名称として残った。
もとの語は一般に「水を運ぶ人、水を注ぐ人」という意味を持ち、星座名の Υδροχόος はその姿をそのまま固有名詞にした形である。
主な意味は、黄道十二星座のひとつである「みずがめ座、水瓶座」を指す固有名詞である。占星術では、その期間に生まれた人を指すこともある。
ギリシャ語:ζυγός
読み方:ジゴス・ジゴース・ズィゴス・ズィゴース
ラテン文字:zygos
古代ギリシャ語の ζυγός(くびき, 天秤)を継承。印欧祖語で「くびき」を表す語根に由来し, 英語 yoke と同じ語族。
派生に ζυγαριά(天秤, はかり), ζυγίζω(計量する), ζύγι(重り), υποζύγιο(駄獣), διαζύγιο(離婚), σύζυγος(配偶者)。
星座名の Ζυγός(てんびん座)は同じ語形を固有名詞化したもので, 一般名詞と区別して大文字で書く。
ギリシャ語:Αλντεμπαράν
読み方:アルデバラン・アルデバラーン・アルデンバラン・アルデンバラーン・アルンデバラン・アルンデバラーン・アルンデンバラン・アルンデンバラーン
ラテン文字:Alntebaran
Αλντεμπαράν(アルデバラン)は、アラビア語由来の国際的な星名がギリシャ語に入った形である。語源は「従う者」と説明され、Πλειάδες(プレアデス星団、すばる) の後を追うように昇ることと結びつけられる。
Ταύρος(雄牛、おうし座、牡牛座) の領域で特に目立つ明るい星で、Υάδες(ヒアデス星団) の近くに見える。ギリシャ語では古い別名として Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) がある。
主な意味はアルデバラン。おうし座でひときわ目立つ橙色の明るい恒星を指す。
ギリシャ語:Λαμπαδίας
読み方:ラバディアス・ラバディーアス・ランバディアス・ランバディーアス
ラテン文字:Lampadias
古代ギリシャ語の λαμπαδίας(たいまつのように燃えるもの, 彗星)を継承。λαμπάς(松明, たいまつ)に性質を表す -ίας が付いた形で, 動詞 λάμπω(輝く, 光る)の語族に属する。たいまつや彗星のように強く光るものを呼ぶ語だったが, おうし座の明るい赤い星アルデバランをたいまつの火に見立てた古い呼び名として伝わる。
Αλντεμπαράν(アルデバラン)の古いギリシャ語名として Ταύρος(おうし座)の文脈で現れる。同じおうし座周辺の Υάδες(ヒアデス星団), Πλειάδες(プレアデス星団, すばる)とあわせて位置づけを見るとわかりやすい。
同じ λαμπάς の語族に λάμπα(ランプ, 電球), λαμπάδα(ろうそく, 長い蝋燭), 合成語 λαμπαδηδρομία(トーチリレー, たいまつ競走), λαμπαδηφόρος(たいまつを持つ者)。
ギリシャ語:βασιλεύς
読み方:ヴァシレフス・ヴァシレーフス
ラテン文字:vasilefs
古代ギリシャ語の βασιλεύς(王, 君主)を継承。ミュケナイ期の線文字Bにすでに qa-si-re-u として現れる古い語で, ギリシャ語以前の何らかの言語からの借用とする説があるものの, 確かな語源はわかっていない。
同じ語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλικός(王の, 王に関する, バジル), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικοφανής(王のような), βασιλόπαις(王子)。今, 日常で「王」を言うのは βασιλιάς で, βασιλεύς は古代史や歴史上の君主の肩書き, 学術的な文脈に残る。
現代の βασιλιάς は古代の対格 βασιλέα が中世に βασιλιά-ς として主格化したもの。英語 basilica(バシリカ, もとは「王の柱廊」), basilisk(バジリスク, 「小さな王」の意)もラテン語を経てこの βασιλεύς の語族。
ギリシャ語:βασιλιάς
読み方:ヴァシリャス・ヴァシリャース
ラテン文字:vasilias
βασιλιάς(王、国王)は、古代ギリシャ語の βασιλεύς(王)にさかのぼる語である。古代の語形がそのまま日常語として残ったのではなく、中世以後の話しことばの形を経て、いまのギリシャ語では βασιλιάς が基本語になった。
そのため、いまの語では βασιλιάς がまず中心にあり、古い文脈や語源説明で βασιλεύς(王、君主、バシレウス) が現れると考えると整理しやすい。対応する女性形は βασίλισσα(女王、王妃) である。
βασιλικός(王の、王に関する、バジル) はこの語群の代表的な派生語である。王に属すること、王にふさわしいことを表す形容詞として広がり、植物名の「バジル」にもなった。
さらに、Βασιλίσκος(小さな王、レグルス) は「王」を核にした別の派生語で、しし座の明るい恒星レグルスの名にもつながる。
主な意味は王、国王。君主制の国家の最高位の君主を指す。
ギリシャ語:βασιλίσκος
読み方:ヴァシリスコス・ヴァシリースコス
ラテン文字:vasiliskos
古代ギリシャ語の βασιλίσκος(小さな王)を継承。βασιλεύς(王、君主、バシレウス)に指小の接尾辞 -ίσκος を付けた形。
同じ語群に βασιλιάς(王、国王)、形容詞の βασιλικός(王の、王にふさわしい、バジル)、女性形の βασίλισσα(女王、王妃)。
しし座のアルファ星の名 Βασιλίσκος(レグルス)は「小さな王」の直訳で、ラテン語 Regulus も同じ発想で作られた。西洋怪物名の英語 basilisk、フランス語 basilic、イタリア語 basilisco はラテン語 basiliscus を経て広まり、元はヘレニズム期のギリシャ語 βασιλίσκος で、眼光や息で害をなすとされる蛇の伝説に結びついた。
ギリシャ語:αγρότης
読み方:アグロティス・アグローティス
ラテン文字:agrotis
αγρότης(農民、農業従事者、農家)は、αγρός(畑、農地)に由来する語である。現代ギリシャ語では、土地を耕し、作物を育てることを仕事にする人を表す。
χωράφι(畑、耕地) が作業する場所を言い、σοδειά(収穫、作柄) がそこで得られる収穫を言うのに対して、αγρότης はその営みに従事する人を言う。
意味は農民、農業従事者、農家。小規模な畑作から広い農業経営まで表せる。
ギリシャ語:παππούς
読み方:パププス・パププース
ラテン文字:pappous
παππούς(祖父、おじいさん)は、親族を呼ぶ幼児語に由来する形がそのまま続いた語である。現代ギリシャ語では、家族の中の祖父を言うほか、親しみをこめて年配の男性を呼ぶ言い方にもなる。
γιαγιά(祖母、おばあさん) が祖母を言うのに対して、παππούς は祖父を言う。家族内で自然に対になる語である。
意味は祖父、おじいさん。血縁の祖父にも、親しい年配男性への呼びかけにも使える。
ギリシャ語:συνάδελφος
読み方:シナデルフォス・シナーデルフォス
ラテン文字:synadelfos
συνάδελφος(同僚、仲間)は、συν-(共に)と αδελφός(兄弟)に由来する語である。もともとの「同じ仲間に属する人」という感覚が、現代ギリシャ語では同じ職場や同じ立場の人を表す語として残っている。
女性にもそのまま συνάδελφος の形で使われるので、文法上は男性名詞だが実際の用法は通性名詞として広い。
φίλος(友だち、友人、親しい人) が私的な親しさに寄るのに対して、συνάδελφος は同じ仕事や立場のつながりを中心に言う。
意味は同僚、仲間。同じ職場の人にも、同じ専門や団体の仲間にも使える。
ギリシャ語:υάκινθος
読み方:ヤキンソス・ヤーキンソス・ヤキントス・ヤーキントス
ラテン文字:yakinthos
ギリシャ以前の言語から入った古い語とされる古代ギリシャ語 ὑάκινθος(ヒヤシンス)を継承。確かな語源はわかっていない。古代には神話の名としても植物名としても使われた。
同じ ὑάκινθος から派生した形容詞に υακίνθινος(ヒヤシンス色の, 青紫の)がある。
ふつう「花」を言うのは λουλούδι(花)で, 改まった場や詩では άνθος(花)も並ぶ。υάκινθος はその中の特定の種名。色を指すときは藍色を言う λουλακί や, 紫がかった青を言う μαβί が近い色域を表す。英語 hyacinth, フランス語 jacinthe, スペイン語 jacinto はどれも同じ古代ギリシャ語を経由した語族。名の由来は神話の少年ヒュアキントスに結びつき, 太陽神アポロンが愛したこの少年の死から咲いた花とされる。
ギリシャ語:τραυματισμός
読み方:トゥラヴマティズモス・トゥラヴマティズモース
ラテン文字:travmatismos
τραυματισμός(負傷、けが、外傷)は、τραύμα(傷、外傷)から τραυματίζω(傷つける)を経てできた名詞である。現代ギリシャ語では、傷つける行為そのものより、その結果として生じたけがや負傷を言う。
ατύχημα(事故、不運な出来事) が出来事全体を言うのに対して、τραυματισμός はその結果として人が受けた傷やけがに焦点を当てる。
意味は負傷、けが、外傷。軽いけがにも、重い負傷にも使える。
ギリシャ語:υπουργός
読み方:イプルゴス・イプルゴース
ラテン文字:ypourgos
ὑπό(〜のもとで)と ἔργον(仕事)からなる古代ギリシャ語の男性名詞 ὑπουργός(助手, 仕える者)に由来。もとは「手伝って働く者」を言う語。「大臣」の意味は, かつて使われていたイタリア語借用 μινίστρος がフランス語 ministre にならう形で υπουργός に引き継がれ, 今の政治語として残った。文法上は男性名詞だが, 女性にもそのまま υπουργός の形で使い, 通性名詞として働く。
ὑπουργός から派生した語に υπουργείο(省庁), υπουργοποίηση(閣僚への登用)。合成語には πρωθυπουργός(首相, 直訳: 第一の大臣), υφυπουργός(副大臣, 政務官), υπερυπουργός(大臣級の大臣)が政治語として並ぶ。
ὑπουργός の第二成分 ἔργον は έργο(仕事, 作品)として別に残り, 第一成分 ὑπό は接頭辞として多くの合成語に入る。政府全体を言う κυβέρνηση(政府, 政権)の中で, υπουργός は特定の省を担当する閣僚。フランス語 ministre, 英語 minister, イタリア語 ministro, ドイツ語 Minister はラテン語 minister(下働き, 奉仕者)から経由した別系統の語で, 意味の上でだけ υπουργός と対応する。ヨーロッパ諸国が近代に政府制度を整えた時期, ギリシャ語では外来語 μινίστρος が退き, 古代語 ὑπουργός が新しい「大臣」の意味を担うようになった。
ギリシャ語:ιερέας
読み方:イェレアス・イェレーアス
ラテン文字:iereas
ιερέας(司祭、神父、祭司)は、古代ギリシャ語 ἱερεύς(祭司)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、とくにキリスト教の司祭や神父を指す場面で最もよく使われる。
εκκλησία(教会、聖堂、教会組織) が場や制度を言うのに対して、ιερέας はその場で奉仕する聖職者を言う。Πάσχα(復活祭、パスハ) のような宗教行事でも自然に現れる。
主な意味は司祭、神父。広く祭司一般を言うこともあるが、現代の日常文脈では教会の聖職者を指すことが多い。
ギリシャ語:εργοδότης
読み方:エルゴドティス・エルゴドーティス
ラテン文字:ergodotis
εργοδότης(雇用主、使用者)は、έργο(仕事)と δότης(与える人)に由来する語形成からできた語である。現代ギリシャ語では、人を雇って仕事を与える側を指す。
υπάλληλος(職員、社員、事務員) が雇われる側を言うのに対して、εργοδότης は雇う側を言う。雇用関係の文書としては σύμβαση(契約、協定)が近い。
意味は雇用主、使用者。会社にも個人事業主にも使える。
ギリシャ語:ελαιώνας
読み方:エレオナス・エレオーナス
ラテン文字:elaionas
ελαιώνας(オリーブ畑、オリーブ園)は、文語的な ελαία(オリーブの木)から場所を表す語尾が付いてできた語である。現代ギリシャ語では、オリーブの木がまとまって植えられた畑や園地を指す。
ελιά(オリーブの木、オリーブ) が一本の木や実を言うのに対して、ελαιώνας はそれが集まる場所を言う。収穫された実は λάδι(油、オイル)の文脈にもつながる。
意味はオリーブ畑、オリーブ園。オリーブ栽培の土地全体を指す。
ギリシャ語:μάγειρας
読み方:マイェラス・マーイェラス・マゲラス・マーゲラス
ラテン文字:mageiras
動詞 μάσσω(こねる)にさかのぼる古代ギリシャ語 μάγειρος(料理人, 肉をさばく人)を継承。語幹 μάγειρ- に男性名詞語尾 -ας が付いて中世ギリシャ語で μάγειρας の形になった。
派生に μαγειρεύω(料理する), μαγειρικός(料理の), μάγειρισσα(女性の料理人), μαγειρική(料理法), μαγειρείο(厨房, 飲食店)。合成語に εκλογομάγειρας(選挙結果を操作する人, 選挙のコック)。
ギリシャ語:μηχανικός
読み方:ミハニコス・ミハニコース
ラテン文字:michanikos
古代ギリシャ語の μηχανικός(機械や仕掛けに関わる)に由来。μηχανή(機械, 装置, 仕掛け)に形容詞を作る -ικός が付いた形で, もとは仕掛けや装置に関わる性質を表した。現代の「技師, エンジニア, 整備士」の用法はフランス語 mécanicien, ingénieur, machinal, 英語 mechanical からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μηχανή の語族に μηχανική(機械工学, 力学), μηχανισμός(機構, 仕掛け), μηχάνημα(機械, 装置), μηχανάκι(スクーター, 原付), 合成語 πολιτικός μηχανικός(土木技師), ηλεκτρολόγος μηχανικός(電気技師), αρχιμηχανικός(主任技師)。
英語 mechanic, mechanical, machine もこの μηχανή からラテン語 machina 経由で入った語。
ギリシャ語:υπάλληλος
読み方:イパリロス・イパーリロス
ラテン文字:ypallilos
古代ギリシャ語の ὑπάλληλος(互いの下にある、従属する)に由来。ὑπό(〜の下に)と ἀλλήλους(互いに)からなる形容詞で、句 ὑπ' ἀλλήλους から一語に融合した形。「職員、社員」の使い方は、フランス語 employé からの意味借用で加わった。
派生語に υπαλληλικός(職員の)、συνυπάλληλος(同僚)、υπαλληλία(職員身分、職員組織)。よく使う表現に δημόσιος υπάλληλος(公務員)、τραπεζικός υπάλληλος(銀行員)、υπάλληλος γραφείου(事務員)。
古代ギリシャ語 ἀλλήλων(互いに)は、παρά(〜のそばに)と結んで παράλληλος(並行の)を作る。これがラテン語 parallelus を経て英語 parallel(並行の、平行線)の語源につながり、ὑπάλληλος とは合成の型を共有する。
ギリシャ語:θείος
読み方:シオス・シーオス・ティオス・ティーオス
ラテン文字:theios
古代ギリシャ語の θεῖος(おじ)に由来。語源ははっきりとはせず, オノマトペ的に作られた呼称語とみられ, 祖母を指す τήθη(ばあ)などと並ぶ古い親族呼称の仲間。形容詞の θεῖος(神の, 神聖な。θεός + -ιος)とは別の語。
派生に指小形 θειούλης(おじさん), 女性形 θεία(おば)。
父方のおじと母方のおじを区別する専用の語はなく, θείος で両方を表す。くだけた場面では, 血縁でなくても年上の男性への呼びかけ「おじさん」の意味にも使う。
ギリシャ語:μπρούντζος
読み方:ブルドゾス・ブルドーゾス・ブルンドゾス・ブルンドーゾス
ラテン文字:mprountzos
μπρούντζος は、近代ヨーロッパ語 bronze に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、銅と錫を中心にした合金としての青銅、ブロンズを指す。
χαλκός(銅、青銅) が銅そのものや古い意味での青銅を広く含みうるのに対して、μπρούντζος は合金としてのブロンズをより具体的に指しやすい。κασσίτερος(錫) はその代表的な構成金属の一つである。
主な意味は「青銅」「ブロンズ」。金属材料にも、ブロンズ像やブロンズ色にも使う。
ギリシャ語:ορείχαλκος
読み方:オリハルコス・オリーハルコス
ラテン文字:oreichalkos
古代ギリシャ語の ὀρείχαλκος(黄銅、山の銅)に由来。もとはアッカド語 ēru/wēru(銅)と χαλκός(銅)からなる合成語で、両要素とも「銅」。ギリシャ語話者は後に第1要素を ὄρος(山)の与格 ὄρει- と結びつけ直し、「山の銅」の語として定着した。
プラトンの『クリティアス』では、ὀρείχαλκος がアトランティスの宝物として金銀に次ぐ貴重な金属と語られる。ラテン語に入った orichalcum はさらに aurum(金)と結びつけ直されて「金色の神秘の合金」として伝承に残り、スペイン語 oricalco, フランス語 orichalque, イタリア語 oricalco もここから。
χαλκός が銅や青銅(銅・錫)を広く言うのに対し、ορείχαλκος は銅・亜鉛の真鍮に限定して使う。別合金のブロンズは μπρούντζος。派生語 ορειχάλκινος(真鍮製の), ορειχαλκουργός(真鍮職人), ορειχαλκώνω(真鍮メッキをする)。
ギリシャ語:γρανάτης
読み方:グラナティス・グラナーティス
ラテン文字:granatis
γρανάτης は、近代ヨーロッパ語 garnet / grenat に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、赤系の宝石として知られるガーネットを指す。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が宝石を広く言うのに対して、γρανάτης は個別の宝石名である。
意味は基本的に「ガーネット」「ざくろ石」のみ。宝飾や鉱物標本の文脈で使う。
ギリシャ語:γρανίτης
読み方:グラニティス・グラニーティス
ラテン文字:granitis
γρανίτης は、近代ヨーロッパ語 granite / granit に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、建材や石材として用いられる花崗岩を指す。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が石を広く言うのに対して、γρανίτης は岩石の種類としての花崗岩を言う。μάρμαρο(大理石、マーブル模様) と並んで石材名として現れることが多い。
意味は基本的に「花崗岩」。硬くて粒状の火成岩を指す。
ギリシャ語:χαλκός
読み方:ハルコス・ハルコース
ラテン文字:chalkos
古代ギリシャ語の χαλκός(銅、青銅)に由来。さらなる起源は確かでなく、印欧諸語の語彙よりもむしろギリシャ語以前の基層語に属するとされる。古代では銅製の釜や壺、銅貨の意味にも使われた。
χαλκός は銅(copper)を指すのが基本で、歴史的・考古学的な文脈では銅と錫の合金、青銅(bronze)の意味も残る。銅と亜鉛の合金である真鍮(brass)は ορείχαλκος(古代 ὀρείχαλκος「山の銅」、ὄρος「山」と χαλκός の合成)、銅と錫の合金、青銅そのものを指す語には文語的な κρατέρωμα(ヘレニズム期ギリシャ語からの学術借用)と日常的な μπρούντζος(イタリア語由来の借用語)がある。
派生語に χάλκινος(銅の)、χάλκωμα(銅製品)、χαλκιάς(銅細工師)、χαλκουργός(銅工)、χαλκείο(銅工房)、χαλκεύω(銅を鍛える)など。
英語 Chalcolithic(銅石器時代)、chalcopyrite(黄銅鉱)、chalcography(銅版画)、orichalcum(古代の伝説的合金;のち真鍮)も同じ古代ギリシャ語 χαλκός をもとにした語。
ギリシャ語:σεισμός
読み方:シズモス・シズモース
ラテン文字:seismos
古代ギリシャ語の σεισμός(揺れ、震動、地震)を継承。σείω(揺さぶる)を名詞化した語で、古代では γῆς σεισμός(大地の揺れ)の略として地震を指していた。
英語 seismic(地震の), seismology(地震学)も同じ語源。派生語に μετασεισμός(余震), σεισμικός(地震の)。
ギリシャ語:φόρος
読み方:フォロス・フォーロス
ラテン文字:foros
古代ギリシャ語の動詞 φέρω(運ぶ、もたらす)から派生した φόρος(貢ぎ、納付)に由来。共同体や支配者に差し出す納付物を古代から表した。現代の「税、税金」の意味は、フランス語 taxe、英語 tax からの意味借用で整えられた。
派生語に φορολογία(税制、課税), φοροδιαφυγή(脱税), αφορολόγητος(非課税の)。関連語に δασμός(関税)。
ギリシャ語:λογαριασμός
読み方:ロガリアズモス・ロガリアズモース
ラテン文字:logariasmos
中世ギリシャ語の λογαριασμός(計算、勘定)を継承。
中世期の動詞 λογαριάζω(計算する、考慮する)に行為名詞を作る接尾辞 -μός を付けた形で、古代ギリシャ語 λόγος(言葉、理、数え上げ)の系列にさかのぼる。
現代の「口座」「請求書」としての使い方は、フランス語 compte、英語 account・bill などからの意味借用で近代に整えられた。
共通の語源を持つ関連語に λογαριάζω(計算する、見積もる、当てにする)、λογιστής(会計士)、λογιστική(会計学)、λογιστήριο(経理部、会計室)などがある。
ギリシャ語:μισθός
読み方:ミスソス・ミスソース・ミストス・ミストース
ラテン文字:misthos
ギリシャ語:στρατός
読み方:ストゥラトス・ストゥラトース
ラテン文字:stratos
印欧祖語の「広げる、伸ばす」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の στρατός(軍、遠征軍)に由来。
派生語に στρατηγός(将軍), στρατηγική(戦略), στράτευμα(兵力), εκστρατεία(遠征、キャンペーン), στρατοκρατία(軍国主義)。関連語は στρατιώτης(兵士), άμυνα(防衛)。英語 strategy は στρατός と ἄγω(導く)の合成 στρατηγός を経て同じ語根からできた語。
ギリシャ語:μάρτυρας
読み方:マルティラス・マールティラス
ラテン文字:martyras
中世ギリシャ語 μάρτυρας に由来し、さかのぼると古代ギリシャ語 μάρτυς/μάρτυρος(証人、証言する人)にいたる。古くは見聞きしたことを公に明らかにする人を広く指した語で、ヘレニズム期から初期キリスト教の文脈で、信仰の真実を命をかけて証しした人、すなわち殉教者の意味も加わった。現代の苦しみを受ける人という比喩的な使い方はフランス語 martyr の影響で近代に整えられた。英語 martyr も同じギリシャ語にさかのぼる。
派生語・関連語に μαρτυρία(証言、証拠)、μαρτυρώ(証言する、証しする)、μαρτύριο(殉教、苦しみ)、μάρτυρας κατηγορίας(検察側証人)。関連語に δικαστήριο(裁判所、法廷)。
ギリシャ語:κανόνας
読み方:カノナス・カノーナス
ラテン文字:kanonas
古代ギリシャ語の κανών(物差し、定規、基準)に由来。κάννα(葦、細い管)からの派生語。葦で作った測定用の棒から、判断や行動の「基準、規範」へと古代のうちに意味が展開した。
教会法の「教会規則(カノン)」は中世ギリシャ語 κανών から継承。近代における「規則、ルール」としての使い方は、フランス語 règle や英語 rule からの意味借用によって定着した。
派生語に κανονικός(規則的な、正規の)、κανονισμός(規程、規則集)、κανονίζω(規則を定める、調整する)、παρακανόνας(例外、規格外)など。
関連語に δικαίωμα(権利)、νόμος(法律)、αρχή(原則)などがある。
英語 canon(教会法、正典)はラテン語 canon 経由で同じ κανών から継承。英語・イタリア語の cannon(大砲)は κάννα 経由で同じ系列。
ギリシャ語:δάσκαλος
読み方:ダスカロス・ダースカロス
ラテン文字:daskalos
動詞 διδάσκω(教える)から派生した古代ギリシャ語の男性名詞 διδάσκαλος(教える人)に由来。中世ギリシャ語で語頭の δι- が脱落した δάσκαλος の形になった。
熟達者や巨匠、芸術の師を「先生」と呼ぶ用法には、フランス語 maître からの意味借用も含まれる。
派生語には δασκάλα(女性形)や διδασκαλία(教義)などがある。教育的、あるいは説教くさいことを意味する διδακτικός もその一つ。
関連語として σχολείο(学校)や μάθημα(授業)などが挙げられる。英語の didactic(教訓的な)も、同じ動詞 διδάσκω から派生した単語。
ギリシャ語:αρακάς
読み方:アラカス・アラカース
ラテン文字:arakas
古代ギリシャ語の ἄρακος(ある種の豆類)から、中世の αρακάς を経て現代に至る変遷。類義語に μπιζέλι(えんどう豆、グリーンピース)など。
ギリシャ語:γαλαξίας
読み方:ガラクシアス・ガラクシーアス
ラテン文字:galaxias
ギリシャ語:πλάτανος
読み方:プラタノス・プラータノス
ラテン文字:platanos
古代ギリシャ語の πλάτανος(プラタナス)を継承。形容詞 πλατύς(広い、平たい)と結びつけて、広い葉にちなむ名と古くから説明されてきた。元は女性名詞(ἡ πλάτανος)だったが、-ος で終わる名詞の多くが男性であることにつられて、中世以降は男性名詞として使われるようになった。口語では中性形の πλατάνι もある。
英語 plane tree もラテン語 platanus を経て同じ語源。
ギリシャ語:αστερισμός
読み方:アステリズモス・アステリズモース
ラテン文字:asterismos
古代ギリシャ語の ἀστερισμός(星のまとまり、星座)を継承。αστέρας(恒星)に相当する古代形 ἀστήρ に -ισμός を付けた名詞で、もとから星々が一定の形に見えるまとまりを表した。現代の天文学で星座を体系的に言うときの使い方はフランス語・英語 constellation からの意味借用で定着した。
関連語に αστερίσκος(小さな星、アスタリスク)、αστερίας(ヒトデ、属)、αστρονομία(天文学)、αστρολογία(占星術)など。「勢力圏、陣営」の比喩用法は現代の言い回しで、星座を枠組みに見立てた延長線上にある。
英語 asterism(星群、三つ星の光学現象、※記号)も同じ古代ギリシャ語をもとにした語。
ギリシャ語:κομήτης
読み方:コミティス・コミーティス
ラテン文字:komitis
古代ギリシャ語の κομήτης(長い髪を持つもの)を継承。κόμη(髪)に「〜を持つ者」を表す接尾辞 -της を付けた形で, 人名としてミケーネ期から用例がある。古代の天文書で使った κομήτης ἀστήρ(長い髪を持つ星)という言い方が縮まり, κομήτης 単独で「彗星」を言うようになって, ラテン語 cometa を経由したフランス語 comète, 英語 comet と同じ道筋をたどって今に続く。
元となる名詞は κόμη(髪)で, 動詞 κομάω(髪を長く伸ばす)が兄弟の古い語としてあった。κομήτης 自体から派生する語は限られ, 形容詞 κομητικός(彗星の)が天文学の文脈で使われる程度。
天体の総称は αστέρι(星)で, 流れ星や隕石は μετέωρο(流星, 隕石)。κομήτης はその中で, 尾を引いて見える彗星を指す特定の語。英語 comet, フランス語 comète, イタリア語 cometa, スペイン語 cometa はどれもラテン語 cometa を経由した同じ古代ギリシャ語からの語族。
ギリシャ語:δορυφόρος
読み方:ドリフォロス・ドリフォーロス
ラテン文字:doryforos
古代ギリシャ語の δορυφόρος(槍を運ぶ者、護衛兵)に由来。δόρυ(槍)と -φόρος(運ぶ者)からできた語で、古代には支配者のそばに仕える武装した従者、親衛兵を指した。ローマでは皇帝の近衛兵(praetorian guard)も表した。
現代の「衛星」の意味は、フランス語 satellite からの意味借用として近代に加わったもの。フランス語・英語 satellite はラテン語 satelles(護衛兵。エトルリア語起源とも言われる)から来ており、ケプラーが17世紀初頭に木星の月を satelles と呼んだのをきっかけに「惑星の周囲を回る天体」の意味が定着した。つまり「護衛兵→衛星」という意味の展開はラテン語側で独自に起きたもので、δορυφόρος と satellite は語源的には別系統だが、意味の道筋が並行するため、フランス語を介してこの意味だけが δορυφόρος にも乗った。
ギリシャ語:νεροχύτης
読み方:ネロヒティス・ネロヒーティス
ラテン文字:nerochytis
中世ギリシャ語 νεροχύτης を継承。
νερό(水)と古代ギリシャ語の χύνω(流す、注ぐ)に、行為者を表す -της が付いてできた合成語。文字どおりには「水を流すもの」で、中世以降、家屋の流しや洗い場を指す語として使われてきた。言葉を水のようにだらだら流し続ける人を指す比喩は、現代の口語で加わった用法。
共通の語源を持つ関連語に χύτρα(鍋)などがある。
ギリシャ語:ατμός
読み方:アトゥモス・アトゥモース
ラテン文字:atmos
古代ギリシャ語の ἀτμός(蒸気、湯気、匂い)に由来。古い形 ἀετμός にさかのぼり、さらなる起源は確かでないが、伝統的に ἄημι(吹く、息を送る)と結びつけられてきた。
ατμός は、νερό(水)が熱で気体になったもの、あるいは πάγος(氷)が昇華してできるもので、水や氷の気体の相に当たる語。
派生語・複合語に ατμόσφαιρα(大気、雰囲気。σφαῖρα「球」との合成)、ατμομηχανή(蒸気機関)、ατμόπλοιο(蒸気船)、ατμοστρόβιλος(蒸気タービン)、εξατμίζω(蒸発させる)、εξάτμιση(蒸発、排気管)など、蒸気にまつわる語を幅広く作る語根。
英語 atmosphere(大気、雰囲気)は同じ古代ギリシャ語 ἀτμός をもとにした語で、atmospheric(大気の、雰囲気のある)、atmospherics(雰囲気作りの演出)などもここから派生している。接頭辞 atmo- は atmometer(蒸発計)など気象・気化関連の学術語にも使われる。
ギリシャ語:ιδρώτας
読み方:イドゥロタス・イドゥロータス
ラテン文字:idrotas
ギリシャ語:γέρος
読み方:イェロス・イェーロス・ゲロス・ゲーロス
ラテン文字:geros
γέρος(老人、年老いた人)は、古代ギリシャ語の γέρων(老人)に由来する語で、中世ギリシャ語を経て現在の形に至った。いまのギリシャ語でも、年をとった人をかなり直接に言う基本語の一つである。
ηλικία(年齢)が年数や人生段階を言うのに対して、γέρος はその高い年齢を持つ人そのものを指す。より中立的に言いたいときは ηλικιωμένος(高齢の)のような語が選ばれやすい。
主な意味は「老人」「年老いた人」。形容詞的に「老いた」とも使われ、口語では父親や高齢の配偶者を指す言い方にもなる。
ギリシャ語:κάμπος
読み方:カボス・カーボス・カンボス・カーンボス
ラテン文字:kampos
ギリシャ語:σπόρος
読み方:スポロス・スポーロス
ラテン文字:sporos
古代ギリシャ語の σπόρος(種, 播かれたもの)を継承。印欧祖語で「まく, 散らす」を表す語根に続き, 「まく」を意味する動詞 σπείρω(口語では σπέρνω)に -ος が付いて作られた名詞。
派生に σποράκι(小さな種)。合成語に σποροπαραγωγή(種子生産), σπορόφυτο(胞子体)。同じ σπερ- / σπορ- の語族には σπείρω(まく), σπορά(播種, 散布), σπέρμα(精子, 種), σπορέας(種まく人)。
καρπός(果実, 実)が実り全体や成果を言うのに対し, σπόρος はその内側にあって次を生み出す種に焦点がある。μπουμπούκι(つぼみ, 芽)はまだ開いていない始まりの姿で, σπόρος はそこへ至る前の出発点を指す。
ギリシャ語:βράχος
読み方:ブラホス・ブラーホス・ヴラホス・ヴラーホス
ラテン文字:vrachos
古代ギリシャ語の形容詞 βραχύς(浅い)から派生した複数形 βράχεα(浅瀬, 浅い海の場所)を背景にもつ語。浅瀬にある危険な岩場や突き出た岩そのものへ意味が寄り, ヘレニズム期の中性名詞 βράχος(岩)を経て中世ギリシャ語の βράχος(岩, 大岩)に至った。現代では男性名詞として使われるが, これは大きくごつごつしたものとして再解釈された結果と考えられている。
λίθος(石)が石材や文語的な「石」を広く言うのに対して、βράχος はもっと大きく、地形として迫ってくる岩や岩壁を言いやすい。θάλασσα(海)の近くでは、岩礁や岩場としての意味が前に出る。
主な意味は「大きな岩、岩壁」。そこから、海辺や沖合の岩場、さらに比喩で、圧力に負けない頑丈で揺るがない人も表す。
ギリシャ語:μήνας
読み方:ミナス・ミーナス
ラテン文字:minas
μήνας(月)は古代ギリシャ語の μήν(月、月の周期)に由来し、中世ギリシャ語の μήνας(月)を経て現代ギリシャ語の形に至った。
もともと月の満ち欠けで時間を測る感覚と結びついた語で、英語の month や moon とも同じ古い起源にさかのぼる。
χρόνος(時間、年)が時間全般や長い年月を広く言うのに対して、μήνας は一年を十二に区切った単位としての「月」に焦点がある。χρονιά(年、一年)は一年単位のまとまり、ώρα(時、時間)はもっと短い区切りなので、μήνας はその中間にある暮らしの単位としてよく使われる。
日常では Καλό μήνα(よい月を)というあいさつで非常によく現れる。派生語には μηνιαίος(月ごとの、月次の)、μηνιάτικο(月給や家賃の一か月分)、μηνιάτικος(月払いの)がある。
主な意味は「月」。そこから、一か月ほどの期間、さらに口語では給与や家賃などの「ひと月ぶん」を指すこともある。
ギリシャ語:νάρκισσος
読み方:ナルキソス・ナールキソス
ラテン文字:narkissos
古代ギリシャ語の νάρκισσος(スイセン)を継承。古代から地中海沿岸に自生する花の名で, νάρκη(しびれ, 麻酔)と同じ語根に連なる説があり, 花の香りや有毒性との結びつきが想定されている。水面に映った自分に見とれて死んだ美少年 Νάρκισσος の神話が早くから伝わり, 現代の「うぬぼれの強い人」の用法はフランス語 narcisse, 英語 narcissus と, 心理学用語のドイツ語 Narzissmus, 英語 narcissism からの意味借用で輪郭が整った。
同じ νάρκισσος の語族に ναρκισσιστής(ナルシスト), ναρκισσισμός(ナルシシズム), ναρκισσεύομαι(うぬぼれる), 固有名詞 Νάρκισσος(神話のナルキッソス)。ギリシャ語内の関連では νάρκη(しびれ, 麻酔), ναρκωτικό(麻酔薬, 麻薬)も同じ語根につながるとされる。
ラテン語 narcissus を経由して英語 narcissus, フランス語 narcisse が入り, 学名 Narcissus もそのままラテン化された形。
ギリシャ語:γαύρος
読み方:ガヴロス・ガーヴロス
ラテン文字:gavros
魚の γαύρος(アンチョビ)は、古代ギリシャ語の ἔγγραυλίς(ヨーロッパアンチョビ)にさかのぼる。これがビザンツ期の ἔγγραυλος(イワシ、アンチョビの類)となり、音の入れ替わりや同化を経て、現代ギリシャ語の γαύρος になった。学名 Engraulis encrasicholus の属名 Engraulis も、この古い語形とつながる。
樹木の γαύρος(シデノキ)は、魚の語義とは別系統と考えられている。γάβρος / γράβος(シデノキ)のような古い形と結びつけられ、シデノキを指す異形や地方形が、現在の発音に寄って γαύρος と重なったものとみられる。
日常語で広く「魚」を表す基本語は ψάρι(魚)で、γαύρος はその中でも群れで泳ぐ小型の海の魚を指す。近い小魚として σαρδέλα(イワシ)があり、どちらも食卓にのぼる身近な魚だが、γαύρος はアンチョビの類をいう。樹木の意味では δέντρο(木、樹木)の一種として使われる。指小語に γαυράκι(小さなアンチョビ、小ぶりの γαύρος)もある。
ギリシャ語:ξιφίας
読み方:クシフィアス・クシフィーアス
ラテン文字:xifias
古代ギリシャ語の ξιφίας(メカジキ)を継承。ξίφος(剣)に「〜のような, 〜を持つ」を表す接尾辞 -ίας を付けた形で, もとは「剣を持つもの」「剣のようなもの」。長く突き出た吻を剣に見立てた魚名。中世ギリシャ語では ξιφιός の形も使われ, 現代でも並行して残る。
同じ ξίφος の語族に ξιφήρης(抜き身の剣を持った), ξιφομαχία(剣闘), ξιφολόγχη(銃剣), ξιφίδιο(短剣)。
ふつう「魚」を言うのは ψάρι(魚)で, ξιφίας はその中の種名。学術・文語的には ιχθύς(魚)も並ぶ。学名 Xiphias gladius は古代ギリシャ語 ξιφίας にラテン語 gladius(剣)を足したもので, ギリシャ・ラテン両系統から「剣の魚」を二重に言っている。英語 xiphoid(剣状の), xiphoid process(剣状突起, 胸骨下端の骨)も同じ ξίφος の系統を引く。
ギリシャ語:δράκος
読み方:ドゥラコ・ドゥラーコ
ラテン文字:drakos
古代ギリシャ語の δράκων(蛇)に由来。δράκων は動詞 δέρκεσθαι(鋭く見る)から派生し、蛇の鋭い眼差しにちなむ名前とされる。古代にはこの語が巨大な蛇や怪物も指すようになり、ラテン語 draco(蛇、竜)として取り入れられ、古フランス語を経て英語 dragon の語源にもなった。
中世ギリシャ語で δράκων から δράκος の形が生まれ、民間伝承に登場する人間型の魔物を指す語として定着した。竜を指すより一般的な語に δράκοντας(竜)があるが、δράκος は主に昔話の文脈で使われる。現代ギリシャ語で蛇を指す日常語は φίδι(蛇)で、こちらは古代ギリシャ語 ὄφις を起源とする別系統の語。
ギリシャ語:ασβός
読み方:アズヴォス・アズヴォース
ラテン文字:asvos
スラヴ語の jazv(ă)(アナグマ)に由来する中世ギリシャ語 ασβός(アナグマ)を経て現代ギリシャ語に続いた語。ブルガリア語の jazovets(アナグマ)と同系。
主な意味はヨーロッパアナグマ。学名 Meles meles の小型哺乳類で、夜行性の雑食動物として知られる。灰褐色の密な毛と穴掘りに向いた硬い爪を持ち、地中に巣穴を掘って暮らす。敵を遠ざけるために強い臭いの分泌物を出すことでも知られる。
ギリシャ語:παπαγάλος
読み方:パパガロス・パパガーロス
ラテン文字:papagalos
アラビア語 ببغاء(擬音起源)を中世ギリシャ語が παπαγάς(オウム)として取り入れ、そこから派生したイタリア語 pappagallo が現代ギリシャ語に再導入された語。語の反復音はオウムの鳴き声を思わせる。
同義に ψιττακός。指小形の παπαγαλάκι は小型のオウムのほか、情報を流す工作員や情報の運び屋をくだけて言う。派生動詞 παπαγαλίζω(機械的に繰り返す), 形容詞 παπαγαλίστικος(オウム的な)がある。
ギリシャ語:γλάρος
読み方:グラロス・グラーロス
ラテン文字:glaros
古代ギリシャ語の λάρος(海鳥、カモメ)が、中世ギリシャ語で γλάρος(カモメ)となり、現代ギリシャ語でもそのまま続いている。鳥類の学名に見える Larus も、このもとの形に対応する。
より広く「鳥」を指す日常語は πούλι(鳥)で、ややくだけた言い方として γλαροπούλι(カモメ)も使われる。指小形の γλαράκι(小さなカモメ、カモメちゃん)は、そのまま愛称っぽく使える。
主な意味は、海辺や港などの沿岸部でよく見られるカモメ。白い羽毛に、背の灰色や黒っぽい色、長い翼、やや曲がったくちばし、水かきのある足といった特徴と結びついて使われる。
成句では、食べ方の激しさをたとえる σαν γλάρος(カモメのように)や、期待しても無駄だと皮肉る言い回しがある。
ギリシャ語:τόνος
読み方:トノス・トーノス
ラテン文字:tonos
古代ギリシャ語の τόνος(張り, 音の高さ, アクセント)を継承。動詞 τείνω(張る, 伸ばす)から作られた名詞で, 印欧祖語で「張る」を表す語根に続く。ラテン語 tonus, 英語 tone も同じ語源。
音楽の音程, 声の調子, 文体や色のトーン, 機器の通知音といった現代の用法は, フランス語 ton と英語 tone からの意味借用で整った。
同じ綴りの τόνος には別の語源の語が重なる。重量単位の「トン」はフランス語 tonne からの借用。魚のマグロを指す τόνος(別綴り τόννος)はイタリア語 tonno からの借用で, その先はラテン語 thynnus, 古代ギリシャ語 θύννος(マグロ)に戻る。
派生に τονίζω(強調する, アクセントを置く), τονικός(トニックの)。合成語に ημιτόνιο(半音)。
ギリシャ語:σολομός
読み方:ソロモス・ソロモース
ラテン文字:solomos
σολομός(サケ、サーモン)は、ラテン語の salmo(サケ、サーモン)に由来する借用語で、中世ギリシャ語の *σολομός(サケ)を経て現代ギリシャ語の形になった。
日常語で広く「魚」を表す基本語は ψάρι(魚)で、σολομός はその中の具体的な魚名にあたる。文語的・学術的な文脈では ιχθύς(魚)も使われる。
同じサケ科の魚としては πέστροφα(マス、トラウト)と並べて扱われる。
誤った綴りとして σολωμός(サケ、サーモンの誤綴り)も見られるが、標準的な形は σολομός。
主な意味は、黒い斑点を持つ大型の回遊魚としての「サケ、サーモン」。魚そのものだけでなく、食材としてのサーモンや、その切り身、調理した料理にも使われる。
ギリシャ語:ρυθμός
読み方:リスモス・リスモース・リトゥモス・リトゥモース
ラテン文字:rythmos
古代ギリシャ語の動詞 ῥέω(流れる)から派生した ῥυθμός(流れや動きの整い方)に由来。ラテン語 rhythmus を経て、英語 rhythm にもなった。現代ギリシャ語ではリズムやペースを表すほか、建築や芸術の様式を指すのにも使われる。
ギリシャ語:μεζές
読み方:メゼス・メゼース
ラテン文字:mezes
ペルシア語の maze(味, 軽い食べ物)に由来するオスマン・トルコ語の meze から入った語。もともとは「味わうもの」「ちょっとつまむもの」という感覚を持ち, 現代ギリシャ語では酒と一緒に出す小皿料理やつまみを表す語として定着している。
この語は単数より複数形 μεζέδες(複数のメゼ)で目にすることが多い。飲み物に応じた複合語もあり、κρασομεζές(ワインに合うメゼ)や ουζομεζές(ウーゾに合うメゼ)という形がある。指小形 μεζεδάκι(小さなメゼ、ちょっとしたつまみ)は、小ぶりな一皿や軽いつまみを親しみをこめて言う形である。
主な意味は、少量ずつ出される塩気のある小皿料理や酒のつまみ。そこから、食べ物のほんのひと口やごくわずかな取り分も言うようになり、さらに口語では「相手にならないほど楽なもの」「軽く片づく相手」という比喩にも広がる。
ギリシャ語:μόλυβδος
読み方:モリヴドス・モーリヴドス
ラテン文字:molyvdos
古代ギリシャ語の μόλυβδος(鉛)に由来。ミケーネ期の粘土板にも mo-ri-wo-do の形で残る古い語で、ギリシャ語以前のアナトリア方面の言語から入った。リディア語の mariwda(暗い)と同じ系統で、鉛の暗い色につながる。
化学記号 Pb はラテン語 plumbum(鉛)から。現代ギリシャ語で科学用語として定着した背景にはフランス語 plomb(鉛)の影響がある。
日常会話では μολύβι(鉛筆、口語で鉛)を使い、μόλυβδος は鉱物学・化学・工業の文脈で出る語。μέταλλο(金属)の一つ。
派生語に μολυβένιος(鉛製の), αμόλυβδος(無鉛の), μολυβδίαση(鉛中毒)。合成語に μολυβδοσωλήνας(鉛管), χαλκομόλυβδος(銅鉛鉱)。
ギリシャ語:τεμπέλης
読み方:テベリス・テベーリス・テンベリス・テンベーリス
ラテン文字:tempelis
τεμπέλης はトルコ語 tembel に由来する借用語。現代ギリシャ語では、人について「怠け者」「怠惰な」を表すのが中心で、仕事や用事を避けて時間をむだにする人を言う。その延長で、車内で腕を預けて楽な姿勢をとれる収納付きアクセサリーの呼び名にもなっている。
語形は男性形 τεμπέλης、女性形 τεμπέλα(女性形)、中性形 τεμπέλικο(中性形)。人を言うときは名詞としても形容詞としても使え、「怠けた人」「怠け癖のある人」という感覚を表す。
意味の中心には、δουλειά(仕事、労働、職)のようなものを避ける人、という感覚がある。近い語には ακαμάτης(怠け者)、ανεπρόκοπος(だらしなくぱっとしない人)、αργόσχολος(暇をもてあましている人)、οκνηρός(怠惰な)、φυγόπονος(骨折りを嫌う人)がある。きつめの言い方には κηφήνας(怠け者、寄生的な人)、τεμπελχανάς(ぐうたら)、τεμπελόσκυλο(この上なく怠けたやつ)があり、反対側には ακάματος(疲れを知らない)、εργατικός(働き者の)、φίλεργος(仕事好きの)、φιλόπονος(勤勉な)、δουλευταράς(よく働く人)が並ぶ。
指小語の τεμπελάκος(小さな怠け者、ぐうたら坊や)は、軽くからかうような言い方。反対に τεμπέλαρος(ひどい怠け者)は、だらしなさを強めて言う拡大形で、のっそりした怠け者という響きがある。さらに αρχιτεμπέλης(筋金入りの怠け者)も、強調形として使える。
主な意味は、人についての「怠け者」「怠惰な」。やるべきことを後回しにし、楽をしたがる人や態度を指す。そこから転じて、車の中で腕を置きつつ小物も入れられるひじ掛け兼収納も表す。
ギリシャ語:κεραυνός
読み方:ケラヴノス・ケラヴノース
ラテン文字:keravnos
ギリシャ語:αφρός
読み方:アフロス・アフロース
ラテン文字:afros
ギリシャ語:αναπτήρας
読み方:アナプティラス・アナプティーラス
ラテン文字:anaptiras
αναπτήρας はドイツ語の Anzünder から入った借用語。現代ギリシャ語では、火花で小さな炎を出して火をつける道具を指す語として定着している。
主な意味はライター。たばこやガスコンロに火をつけるときのほか、車載のシガーライターも含めて言え、燃料の違いで βενζίνη(オイル、ガソリン)や υγραέριο(ガス)を使うタイプのようにも言い分ける。
火をつける道具としては、σπίρτο(マッチ) も近いが、σπίρτο は一本ごとのマッチを指し、αναπτήρας はライターを指す。比較には ζίπο(Zippo ライター)や τσακμάκι(火打ち石、ライター)もあり、火をつける行為を言う動詞は ανάβω(火をつける、つける、点火する) が基本になる。指小語の αναπτηράκι(小さなライター、小型ライター)は、小さめのライターや気軽な言い方として使われる。
ギリシャ語:γάιδαρος
読み方:ガイダロス・ガーイダロス
ラテン文字:gaidaros
γάιδαρος(ロバ)は、アラビア語 gadar / gaidar に由来するとされる借用語。中世ギリシャ語では *γάιδαρος(ロバ)という形が基盤にあり、比較される古い形に γάδαρος(ロバ)や γαϊδάριον(ロバ)がある。そこから現代ギリシャ語の γάιδαρος になった。
雌を言うときは γαϊδούρα(雌ロバ)や γαϊδάρα(雌ロバ)を使う。同義的な別形に γαϊδούρι(ロバ)があり、指小語の γαϊδαράκος(小さなロバ)は小さなロバや親しみをこめた言い方になる。
派生では、γαϊδουροκαλόκαιρο(猛暑、小春日和)のように γαϊδουρο-(ロバ由来の語幹)が合成語の中に現れる。
主な意味は、荷を運んだり車を引いたりする家畜のロバ。大きな耳、忍耐強さ、鈍重さのイメージと結びついて使われやすく、そこから人の耳や忍耐をロバになぞらえて言うこともある。人に向けると、無神経で恩知らずな人物を責める罵倒になる。
γάιδαρος は、鈍重さ、しつこさ、頑固さ、扱いの荒さなどを帯びた語として成句に頻出する。話題にした本人が現れることを言ったり、責任の押しつけや不当な処罰を皮肉ったり、大仕事の大半が終わったことを言ったりするときにも出てくる。
ギリシャ語:καύσωνας
読み方:カフソナス・カーフソナス
ラテン文字:kafsonas
文語由来の語で、ヘレニズム期ギリシャ語の καύσων(焼けつく暑さ、猛暑)にさかのぼる。そこから対格形 καύσωνα(猛暑を)を経て、現代ギリシャ語の καύσωνας になった。
同じ猛暑でも、γαϊδουροκαλόκαιρο(猛暑、小春日和) は口語的で、「しつこく居座る暑さ」や秋の小春日和まで含むことがある。これに対して καύσωνας は、気象条件としての猛暑や熱波を指す語として使いやすい。
主な意味は、異常に高い気温が続く気象条件としての「猛暑、熱波」。天気予報、報道、注意喚起などで、危険な暑さの到来やその被害、対策を述べるときによく使う。
ギリシャ語:ενθουσιασμός
読み方:エンスシアズモス・エンスシアズモース・エントゥシアズモス・エントゥシアズモース
ラテン文字:enthousiasmos
ギリシャ語:δείκτης
読み方:ディクティス・ディークティス
ラテン文字:deiktis
文語的には、ヘレニズム期の δείκτης(示すもの、明らかにするもの)を土台にした語。のちにフランス語の indice・indicateur やドイツ語の Anzeiger・Anzeige になぞらえる形で意味が広がり、現代ギリシャ語では「針」「指数」「添字」「指示薬」のように、何かを示したり表したりするもの全般を表すようになった。
「人差し指」の意味は、ヘレニズム期の δεικτικός δάκτυλος(指し示す指)に沿う用法で、フランス語の index に対応する。χέρι(手、腕)の親指の隣にある指を指す。
口語寄りの綴りに δείχτης(「指針」「人差し指」で使われる別綴り)もあり、とくに具体物としての「指針」「人差し指」の意味で使われる。これは語中の /kt/ が /xt/ に寄った形。
主な核にあるのは「何かを指し示すもの」という感覚で、計器の針や指示棒のような具体物から、統計や経済の指数、数学や化学で使う添字・指示薬まで広く表す。固定した言い方では οικονομικός δείκτης(経済指標)や δείκτης νοημοσύνης(知能指数、IQ)がよく使われる。
ギリシャ語:νεκρός
読み方:ネクロス・ネクロース
ラテン文字:nekros
古代ギリシャ語の νεκρός(死んだ)を継承。印欧祖語で「滅びる」を表す語根から続き、名詞 νέκυς(死体)に形容詞語尾 -ρός を付けて作られた。
フランス語 mort, 英語 dead からの意味借用が入り、「死語」「死文」「死角」のような比喩の言い回しが近代以降に加わった。
反対語は ζωντανός(生きている)。近い語に θάνατος(死), ζωή(命、生命)。
派生語に νεκρικός(葬儀の、陰気な), νεκρώνω(死なせる、麻痺させる), νέκρωση(壊死)。合成語に νεκροταφείο(墓地), νεκρολογία(追悼記事), νεκρομαντεία(死霊術)。
英語 necrosis, necromancy の necro- は同じ語源。ラテン語 nex(殺害)も同じ印欧祖語の語根から続く。
ギリシャ語:βιολιστής
読み方:ヴィオリスティス・ヴィオリスティース
ラテン文字:violistis
βιολιστής(バイオリン奏者、バイオリニスト)は、βιολί(バイオリン)に、人を表す接尾辞 -ιστής(〜する人を表す語尾)がついた形。バイオリンを弾く人を表す、もっともまっすぐな言い方のひとつである。
女性形は βιολίστρια(バイオリン奏者、バイオリニスト)。類義語として βιολονίστας(バイオリン奏者、バイオリニスト)もある。
バイオリンを弾く音楽家を指す。職業としての演奏家にも、広くバイオリンを弾く人にも使え、オーケストラや室内楽などの μουσική(音楽)の場面で自然に現れる。
ギリシャ語:υπολογιστής
読み方:イポロイスティス・イポロイスティース・イポロギスティス・イポロギスティース・イポロイスティス・イポロイスティース
ラテン文字:ypologistis
技術の意味では、英語 calculator / computer を受けて定着した語。現代ギリシャ語では「計算する装置」という感覚を保ちつつ、いまではコンピューター一般を指す基本語として使われる。日常的には ηλεκτρονικός υπολογιστής(電子計算機)の短い形としてもよく現れる。
人についての「打算的な人」は、フランス語 calculateur を受けた別の流れの用法。何よりも自分の利益を先に考え、利害で動く人をいう。女性については υπολογίστρια(女性の打算家)の形を使う。
この語は複合語でもよく使われ、προσωπικός υπολογιστής(パーソナルコンピューター)、φορητός υπολογιστής(携帯型コンピューター)、υπολογιστής-ταμπλέτα(タブレット型コンピューター)などの形をつくる。手のひらサイズの機種をいうときは、παλάμη(手のひら)を使った υπολογιστής παλάμης(手のひらサイズのコンピューター)や υπολογιστής χειρός(手持ち型コンピューター)とも言う。くだけた言い方では κομπιούτερ(コンピューター)も使われる。
主な意味はコンピューターで、デスクトップ型、携帯型、個人用、中央処理用の機種から、情報科学の複合語まで幅広く言える。別に、人については、損得を先に計算して動く打算的な人を表す。
ギリシャ語:έρωτας
読み方:エロタス・エーロタス
ラテン文字:erotas
中世ギリシャ語の έρωτας(恋愛、性愛)に続く語で、現代では恋愛や性愛を表す基本語になっている。愛する感情そのものだけでなく、その相手や性交まで指せる広がりを持つ。
先頭を大文字にした Έρωτας(愛の神エロス)は、古代ギリシャ語の Ἔρως(愛の神)にさかのぼる。
αγάπη(愛)がより広く「愛」全般を指せるのに対し、έρωτας は恋愛や性的な情熱に重心がある。στοργή(家族的な慈しみ)は家族的な愛情、φλερτ(いちゃつき、軽い恋の駆け引き)は恋の駆け引きや軽い色気を表す語として近い。
主な意味は、ほかの人に向かう強い恋愛感情や性的な欲望。そこから、恋の相手、性交、何かへの熱中も表す。複数形 έρωτες(色恋沙汰、浮ついた恋愛ごと)では、くだけた響きが出る。先頭大文字の Έρωτας は愛の神、植物名ではインパチェンスも指す。
ギリシャ語:χαρακτήρας
読み方:ハラクティラス・ハラクティーラス
ラテン文字:charaktiras
古代ギリシャ語の動詞 χαράσσω(刻む, 彫る)から派生した χαρακτήρ(刻みつけた印, しるし)から。
派生に動詞 χαρακτηρίζω(特徴づける, 性格づける)。同じ語族に χαρακτηρισμός(特徴づけ, レッテル貼り), χαρακτηριστικός(特徴的な), χαρακτηριστικά(特徴), αχαρακτήριστος(ひどすぎて言い表せない), χαρακτηρολογία(性格学)。
英語 character, ラテン語 character も同じ古代ギリシャ語にさかのぼる。
近い語に φύση(本性, 性質)と ιδιοσυγκρασία(気質, 体質)があり, φύση は生まれつきの「本性」, ιδιοσυγκρασία は細かい気質や体質を言い, χαρακτήρας は人や物に現れる特徴を広く指す。
ギリシャ語:τρόπος
読み方:トゥロポ・トゥローポ
ラテン文字:tropos
古代ギリシャ語の τρόπος(向きを変えること, やり方, 態度)を継承。動詞 τρέπω(向ける, 回す)の名詞形で, もとは「向け方, 転じ方」。音楽の「旋法」の意味はフランス語 mode からの意味借用で輪郭が整った。
同じ τρέπω・τροπή の語族に ανατροπή(転覆), μετατροπή(変換), εντροπία(エントロピー), τροποποιώ(修正する), τροπολογία(修正条項), τροπόσφαιρα(対流圏), 合成語 ιδιότροπος(気まぐれな), πολύτροπος(多彩な), δύστροπος(扱いにくい)。
δρόμος(道, 方法, 競走)も比喩で「やり方」を表すが, 道筋・経路の感覚が残る。τρόπος はやり方そのものを指して広く使う。文語的な「生き方」を言う βίος(人生, 生き方)に対し, 日常の τρόπος ζωής は「生活様式」を言う。英語 trope(比喩, 常套的パターン), tropic(回帰線)もラテン語を経てこの τρόπος の語族。
ギリシャ語:τραγουδιστής
読み方:トゥラグディスティ・トゥラグディスティー
ラテン文字:tragoudistis
τραγουδιστής(歌手、歌い手)は、中世ギリシャ語の τραγουδιστής(歌手、歌い手)に由来する語で、動詞 τραγουδώ(歌う)から接尾辞 -ιστής(〜する人を表す語尾)を使ってできた、行為者を表す名詞にあたる。τραγούδι(歌)と同じ語族で、現代ギリシャ語ではまず「歌う人」、とくに職業として歌う人を表す基本語になっている。
女性形は τραγουδίστρια(歌手、歌い手)。意味の中心は同じで、歌う職業人や歌い手を指す。
もっとも一般的には、上手に歌う人や、歌を仕事にする歌手を指す。そこから文語的・比喩的には、誰かや何かを詩や歌でたたえる人を表すこともある。
ギリシャ語:κλέφτης
読み方:クレフティス・クレーフティス
ラテン文字:kleftis
κλέφτης(泥棒)は、中世ギリシャ語の κλέφτης(泥棒)に由来する。
別形に κλέπτης(泥棒)があり、女性形は κλέφτρα(女の泥棒)。
近い語に διαρρήκτης(空き巣)や ληστής(強盗)がある。κλέφτης は盗みを働く者を広く指し、ληστής はより暴力や脅しを伴う文脈で使われる。
主な意味は「泥棒」。日常の盗人から特定の品を専門に盗む者まで幅広く指す。歴史文脈では主に複数形で山岳地帯の武装集団の一員を表し、植物では風に乗って運ばれる綿毛状の種もいう。
ギリシャ語:ληστής
読み方:リスティス・リスティース
ラテン文字:listis
古代ギリシャ語の λῃστής(強盗, 盗賊)を継承。動詞 λῄζομαι(略奪する)に行為者を作る -της が付いた語。
同じ語族に ληστεία(強盗罪, 略奪), ληστεύω(強盗する), ληστρικός(強盗の, 略奪の), 合成語 λήσταρχος(盗賊団の頭領, ἀρχός「長」を合わせた形), λησταρχείο(盗賊団の根城), ληστοκρατία(盗賊支配)。
類義語 κλέφτης(泥棒)や διαρρήκτης(空き巣)が忍び込んで盗む者を指すのに対し, ληστής は暴力や脅しを伴う強盗で使うことが多い。もっと広く「犯罪者」全般を言うときは κακοποιός。歴史の文脈では武装した盗賊団の一員も ληστής と言う。
ギリシャ語:παίκτης
読み方:ペクティス・ペークティス
ラテン文字:pektis
ギリシャ語:παίχτης
読み方:ペフティス・ペーフティス
ラテン文字:pextis
παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:χυμός
読み方:ヒモス・ヒモース
ラテン文字:chymos
古代ギリシャ語の χυμός(汁、液体)から。χέω(注ぐ)からの派生で、もとは「注がれるもの」の意味。複数形 χυμοί で若々しい生気や活力も表す。ラテン語 chȳmus を経て英語 chyme(消化中の胃内容物)の語源にもなった。
ギリシャ語:σουγιάς
読み方:スヤス・スヤース
ラテン文字:sougias
トルコ語の soya に由来する借用語。
μαχαίρι が包丁やナイフを広く指すのに対して、σουγιάς はポケットに入れて持ち歩ける小型の折りたたみ式の刃物を具体的に指す。
主な意味は「折りたたみ小刀、ポケットナイフ」。刃は一本のことが多く、まれに二本付いたものもある。指小語の σουγιαδάκι は、より小さなものやかわいらしく言う場合に使う。
ギリシャ語:κύκλος
読み方:キクロス・キークロス
ラテン文字:kyklos
古代ギリシャ語の κύκλος(円、輪、車輪)を継承。周期、シリーズ、人の輪、範囲、循環といった現代の抽象的・専門的な用法の多くはフランス語 cycle, cercle、英語 cycle からの意味借用で広がった。
修辞学には、一文の冒頭と末尾に同じ語を置いて円を描くように閉じる技法があり、これを κύκλος と呼ぶ。たとえば新約聖書『ピリピ人への手紙』4章4節の Χαίρετε ἐν Κυρίῳ πάντοτε· πάλιν ἐρῶ, χαίρετε(常に主にあって喜べ。もう一度言う、喜べ)は、冒頭と末尾が χαίρετε(喜べ)で閉じられている。
英語 cycle もラテン語 cyclus を経て同じ語源。印欧祖語の「回る」を表す語根から来た語で、英語 wheel も同じ語根を共有する。
ギリシャ語:νόμος
読み方:ノモス・ノーモス
ラテン文字:nomos
古代ギリシャ語の νόμος(割り当て、慣習、掟)に由来。動詞 νέμω(割り当てる、分配する)からできた名詞で、印欧祖語の「割り当てる」を表す語根に続く。「割り当てられたもの」から「慣習」「掟」を経て、法律や法則の意味に広がった。現代の法律・法則としての用法は、フランス語 loi, ドイツ語 Gesetz, 英語 law からの意味借用で整った。
英語 economy は古代ギリシャ語 οἰκονομία(οἶκος「家」+ νόμος、「家の管理」)から、astronomy, autonomy の -nomy も νόμος を語源とする。
ストレスの位置だけが違う νομός(県)も動詞 νέμω から派生した語で、こちらは「割り当てられた土地」から行政区画の意味に分かれた。
派生語に νομικός(法律の、法律家), νόμιμος(合法の), νομοθεσία(立法)。対義語は άνομος, παράνομος(違法の、無法な)。
ギリシャ語:αγώνας
読み方:アゴナス・アゴーナス
ラテン文字:agonas
古代ギリシャ語の動詞 ἄγω(導く, 率いる)から派生した ἀγών(集まり, 競技, 闘争)を継承。
同じ語族に αγωνία(苦悩), αγωνίζομαι(戦う, 競う), αγωνιστής(闘士), ανταγωνιστής(敵対者), ανταγωνισμός(競争, 対抗), διαγωνισμός(コンテスト, 試験), πρωταγωνιστής(主役)。
英語 agony(苦悩), antagonist(敵対者)もラテン語経由で同じ語源。
類義語の μάχη は戦闘行為を, πόλεμος は国家間の武力衝突を指すのに対し, αγώνας は競技や社会運動にも使う。
ギリシャ語:οικισμός
読み方:イキズモス・イキズモース
ラテン文字:oikismos
古代ギリシャ語の動詞 οἰκίζω(住まわせる, 入植させる)から派生した οἰκισμός(入植, 集落)を継承。οἰκίζω は οἶκος(家, 家屋)から作られた動詞。
同じ οἶκος の語族に οικογένεια(家族), οικία(住居, 住宅), οικιστικός(居住の, 都市計画の), οικιστής(入植者, 居住者), 合成語 συνοικισμός(合併集落), συνοικία(地区, 近隣), παροικία(在外ギリシャ人社会), κατοικία(住居)。関連動詞 οικίζω(住まわせる), κατοικώ(住む, 居住する)。
英語 economy(経済), ecology(生態学), ecumenical(全地球規模の)もラテン語を経由してこの οἶκος の語族に連なる。
ギリシャ語:τάρανδος
読み方:タランドス・ターランドス
ラテン文字:tarandos
古代ギリシャ語の τάρανδος(トナカイ, 北方の鹿)を継承。もとはスキタイ語など北方言語からの借用と考えられている語で, アリストテレスの『動物誌』にも現れる。現代ギリシャ語ではそのままの形でトナカイを指す。
学名 Rangifer tarandus の種小名 tarandus はこの τάρανδος が入ったラテン語形。英語の reindeer とは系統が異なり, 動物学の学名の枠で τάρανδος の形が各国語に保たれている。
シカ科のうち, 広い意味で「鹿」を指すのは ελάφι, 中型のノロジカは ζαρκάδι, ダマジカは πλατόνι, 北極圏の大型種が τάρανδος にあたる。
「何度も浮気された人」の比喩は, 角が生える=寝取られるという発想から。ヨーロッパ圏で広く見られる表現で, 成句 κάνω κάποιον τάρανδο(誰かをトナカイにする)もこの比喩に連なる。
ギリシャ語:μαθητής
読み方:マシティ・マシティー・マティティ・マティティー
ラテン文字:mathitis
古代ギリシャ語の μαθητής(学習者)を継承。動詞 μανθάνω(学ぶ、理解する)に「〜する人」を表す接尾辞 -τής がついた形。英語 mathematics や polymath(博学者)、現代ギリシャ語の μαθηματικά(数学)も同じ語根から作られた語。
派生語に μάθημα(授業、科目)、μάθηση(学習)、現代ギリシャ語の動詞 μαθαίνω(学ぶ、教える)など。女性形は μαθήτρια でヘレニズム期以降に作られた形。指小形に μαθητάκος(男)、μαθητριούλα(女)。
ギリシャ語:τοίχος
読み方:ティホス・ティーホス
ラテン文字:toichos
古代ギリシャ語の τοῖχος(家屋の壁, 船の側面)を継承。印欧祖語で「こねる, 形作る」を表す語根に続き, 粘土をこねて壁を築く行為から「壁」の名になった。英語 dough(生地), ラテン語 fingere(形作る)と figura(形)も同じ語族。
並行形の τείχος(城壁)も同じ語根からできた語で, τοίχος が家屋など建物の壁を指すのに対し, τείχος は都市や要塞を囲む城壁を指す。
派生に τοίχωμα(内壁, 隔壁, 細胞壁)。指小形に τοιχάκι, τοιχαλάκι。
ギリシャ語:καημός
読み方:カイモス・カイモース
ラテン文字:kaimos
中世ギリシャ語で「燃えること(κάψιμο)」を意味した語に由来する。動詞 καίω(燃やす)の受動アオリスト語幹 καη- に、動作・状態を表す接尾辞 -μός が付いたもので、もとは物理的な燃焼を指していた。「胸が焼かれるような思い」という比喩から、長く続く深い悲しみや、切なる願いを指すようになった。
英語の "burning desire"(燃えるような願望)や、ポルトガル語の saudade(郷愁、切なさ)にも通じるニュアンスを持つ。
主な意味は二つ。ひとつは長期間にわたる深い悲しみや心痛で、精神をすり減らすような苦悩を表す。もうひとつは叶わぬ切実な願いや渇望で、長い間満たされないまま抱き続ける強い望みを指す。
ギリシャ語:τάφος
読み方:タフォス・ターフォス
ラテン文字:tafos
古代ギリシャ語の τάφος(墓, 埋葬)を継承。印欧祖語で「埋葬する」を表す語根に続き, 同じ語族に動詞 θάπτω(埋葬する, 葬る), その動作名詞 ταφή(埋葬, 葬儀)。
派生に ταφικός(墓の, 葬儀の)。合成語に επιτάφιος(墓碑の, 墓前の), ταφόπλακα(墓石)。英語 epitaph, フランス語 épitaphe はこの επιτάφιος をもとにした学術借用語。英語 cenotaph(空墓, 慰霊碑)も κενός(空の)と τάφος から作られた語。
μνήμα(墓, 記念碑)は個々の墓を指して日常で多く使われ, τάφος は考古学や宗教の文脈, 比喩的な表現で強く残る。Πανάγιος Τάφος(聖墳墓, キリストの墓)はギリシャ正教の中心になる言い方。
ギリシャ語:δήμος
読み方:ディモス・ディーモス
ラテン文字:dimos
古代ギリシャ語の δῆμος(土地、そこに住む人々、平民)に由来。印欧祖語の「分ける、分かつ」を表す語根に起源を持ち、もとは「区分けされた土地とそこの人々」の意で、土地と住民をひとまとまりに捉える語だった。古代アテネで民衆を表す語として政治語彙の中心になった。
英語 democracy(δῆμος + κράτος「支配」)のほか、epidemic・endemic・pandemic(接頭辞 επί, εν, παν + δῆμος)、demographic(δῆμος + γράφω「書く」)なども同じ語源。
類義語は文脈で分かれ、行政区分としては κοινότητα(コミュニティ、より小規模の自治体)が近いが、現代の区分では δήμος のほうが規模の大きい「市、自治体」を指す。人々の集まりとしては λαός(民衆、国民)がより広く、δήμος は特定の地域に結びつく。派生語に δημοτικός(市の、公立の)、δήμαρχος(市長)、δημαρχείο(市役所)など。
ギリシャ語:μυστικισμός
読み方:ミスティキズモス・ミスティキズモース
ラテン文字:mystikismos
フランス語の mysticisme からの借用語。フランス語 mysticisme は、ギリシャ語由来のフランス語 mystique(神秘的な、秘儀の)に、-isme(〜主義、〜論)が加わったもの。英語の mysticism と語源を共有する。
近い語に μυστήριο(秘跡、謎、密儀)や μυστικό(秘密、神秘)がある。どちらも「秘儀」「神秘」「秘密」の領域に近い語だが、μυστικισμός は思想や態度としての神秘主義を指す。
また、近い領域の語に αποκρυφισμός(オカルティズム)や εσωτερισμός(秘教)がある。αποκρυφισμός が超感覚的な力に関する知識や実践に寄り、εσωτερισμός が入門者だけに共有される教義体系に寄るのに対し、μυστικισμός は直感や脱魂を通じた絶対者・神性との合一に重点がある。
派生語には μυστικιστής(神秘主義者)、μυστικιστικός(神秘主義的な)がある。
主な意味は「神秘主義」。感覚や理性を介さず、直感や脱魂(エクスタシー)を通じて絶対者や神性との合一を目指す思想や態度を指す。そこから、隠微なものや神秘的なものに過度に惹かれる傾向、あるいは物事を秘密にしようとする性質を指すこともある。
ギリシャ語:πονοκέφαλος
読み方:ポノケファロス・ポノケーファロス
ラテン文字:ponokefalos
古代ギリシャ語の πόνος(苦痛、労苦)と κεφαλή(頭)に由来する。現代ギリシャ語でも πόνος(痛み)と κεφάλι(頭)を合わせた語として読み取れる。
英語の cephalgia(頭痛)や encephalon(脳)は、κεφαλή(頭)と同じ語源に連なる語。
医学的な「頭痛」は κεφαλαλγία とも言い、κεφαλόπονος は「頭の痛み」を表す。関連語に ημικρανία(片頭痛)がある。
主な意味は物理的な「頭痛」。比喩的に、問題、不快な出来事、疲れさせるような仕事や人についても使われ、英語の headache とほぼ同じように「悩みの種」「厄介ごと」を表す。
ギリシャ語:εσωτερισμός
読み方:エソテリズモス・エソテリズモース
ラテン文字:esoterismos
古代ギリシャ語で「内側」を意味する ἔσω から派生した形容詞 ἐσωτερικός(内側の、内輪の)が語源。古代の哲学では、門弟にのみ教える秘密の教義を ἐσωτερικά(内側のもの)と呼び、一般向けの ἐξωτερικά(外向きのもの)と区別していた。
英語の esoteric もこの ἐσωτερικός から生まれた語で、名詞形の esotericism やフランス語の ésotérisme へと展開した。εσωτερισμός はこれらの西欧語から現代ギリシャ語に取り入れられた。
類義語に αποκρυφισμός(オカルティズム)や μυστικισμός(神秘主義)がある。
主な意味は、入門者のみに知識を共有する秘教的な教義体系。宗教的、神秘的、哲学的エゾテリズムといった使い分けがある。また、作品が持つ内面的な深みを指す「内面性」の意味もある。
ギリシャ語:συνάνθρωπος
読み方:シナンスロポス・シナーンスロポス・シナントゥロポス・シナーントゥロポス
ラテン文字:synanthropos
古代ギリシャ語の σύν(共に)と ἄνθρωπος(人間)を組み合わせた語で、ドイツ語の Mitmensch(同胞、仲間の人間)の翻訳借用として現代ギリシャ語に定着した。Mitmensch も mit(共に)と Mensch(人間)の合成語で、構造がそのまま対応する。後半の ἄνθρωπος は現代ギリシャ語の άνθρωπος と同じ語。
同胞や周りの人間、社会を構成する一員としての人間を指す。類義語に ο πλησίον(隣人)がある。
ギリシャ語:δεισιδαίμονας
読み方:ディシデモナス・ディシデーモナス
ラテン文字:deisidaimonas
古代ギリシャ語の δείδω(恐れる)と δαίμων(神霊)の合成語。元来は「神々を畏れ敬う」という肯定的な意味もあったが、のちに「理不尽な恐怖に駆られて神を信じる」という否定的なニュアンスへと変化した。δαίμων の部分は英語の demon(悪魔)と語源を共有する。
類義語の προληπτικός(縁起を担ぐ人、迷信深い人)に比べ、より非合理的で超自然的な力に対する恐れのニュアンスが強い。
派生語として δεισιδαιμονία(迷信)や δεισιδαιμονικός(迷信の、迷信的な)がある。
迷信を信じる人を指す。書き言葉では、考え方や習慣が迷信に基づいていることを表す形容詞としても使われる。
ギリシャ語:αποκρυφισμός
読み方:アポクリフィズモス・アポクリフィズモース
ラテン文字:apokryfismos
古代ギリシャ語で「隠された」を意味する形容詞 απόκρυφος(アポクリフォス)に由来する。この語幹に -ισμός をつけた形で、19世紀にフランス語の occultisme の訳語として現代ギリシャ語に取り入れられた。英語の occultism と同義。
オカルティストにあたるギリシャ語は αποκρυφιστής(アポクリフィスティス)で、同じ語幹から派生している。
語源の απόκρυφος は英語の apocrypha(アポクリファ、外典)の元にもなっている。
類義語に μυστικισμός(神秘主義)があるが、μυστικισμός は神との合一など内面的な体験に重きを置く。αποκρυφισμός は精霊界や宇宙の超感覚的な力に関する知識・理論・実践の体系を指し、より体系的・実践的な側面を持つ。
精霊界や宇宙の超感覚的な力に関する知識に基づいた、理論・実践・儀式の体系を意味する。
ギリシャ語:παράδεισος
読み方:パラディソス・パラーディソス
ラテン文字:paradeisos
古代ペルシア語の pairi-daēza(周囲を囲われた場所、庭園)に由来する。古代ギリシャ語に借用された当初は、ペルシア貴族の狩猟園や公園を指していた。ヘレニズム期に七十人訳聖書でヘブライ語の「エデンの園」にあたる語として採用され、宗教的な意味を帯びるようになった。新約聖書を経てキリスト教的な「天国」の意味が定着し、現代ギリシャ語でもこの宗教的な意味が中心になっている。
「素晴らしい場所」「理想的な活動拠点」といった世俗的な語義は、フランス語 paradis からの翻訳借用による。英語の paradise も同じ語源から来ている。
対義語はκόλαση(地獄)。
新約聖書における「天国」、旧約聖書における「エデンの園」のほか、比喩的に美しく心地よい場所や、特定の活動にとって理想的な場所も表す。宗教的な意味では先頭大文字の Παράδεισος、比喩的な意味では小文字の παράδεισος と書き分ける。
ギリシャ語:διαλογισμός
読み方:ディアロイズモス・ディアロイズモース・ディアロギズモス・ディアロギズモース
ラテン文字:dialogismos
古代ギリシャ語の διαλογισμός に由来。動詞 διαλογίζομαι に名詞化の接尾辞 -μός がついた語で、その διαλογίζομαι は前置詞 διά(〜を通して)と動詞 λογίζομαι(計算する、考量する)の合成。さらに λογίζομαι は λόγος(言葉、理、筋道)に動詞化の -ίζω がついた形で、計算・勘定と知的な考量の両面を含む語だった。ヘレニズム期の διαλογισμός には「勘定の精算」という具体的な意味と、「熟考、吟味、議論」といった知的な意味が並行してあり、現代ギリシャ語の「瞑想、深い思考」「論理的推理」はこの後者の流れを受け継いでいる。
類義語に σκέψη(思考)、στοχασμός(思索)、συλλογισμός(推論、三段論法)など。
ギリシャ語:ενήλικας
読み方:エニリカス・エニーリカス
ラテン文字:enilikas
コイネーの ἐνήλιξ(一人前の年齢に達した者。対格 ἐνήλικα)からの学術的借用語。語源的には ἐν(〜に至って)と ἡλικία(年齢)の合成で、「しかるべき年齢に至った」という構成になっている。この ἡλικία は現代ギリシャ語の ηλικία(年齢) と同じ語。
同義語に ενήλικος(エニリコス)があり、こちらはより形容詞的な語形成に由来する。対義語は ανήλικος(アニリコス、未成年者)で、法的・生物学的に成熟した個人を ενήλικας、未成年を ανήλικος と対比して用いる。
ενηλικίωση(エニリキオシ、成人に達すること)や ενηλικιώνομαι(エニリキョノメ、成人する)といった派生語もある。
成年に達した人を指す。
ギリシャ語:έφηβος
読み方:エフィヴォス・エーフィヴォス
ラテン文字:efivos
ギリシャ語:φόβος
読み方:フォヴォス・フォーヴォス
ラテン文字:fovos
ギリシャ語:τρόμος
読み方:トゥロモス・トゥローモス
ラテン文字:tromos
印欧祖語で「震える」を表した語根にさかのぼる動詞 τρέμω(震える)から派生した古代ギリシャ語の名詞 τρόμος(震え, 恐怖)を継承。もとは体が震える感覚を指した。
同じ τρέμω の語族に τρομάζω(ぎょっとする), τρομάρα(恐ろしい体験), τρομερός(恐ろしい), τρομακτικός(ぞっとさせる), 副詞 τρομερά, τρομακτικά, 合成語 έντρομος(おびえた), περίτρομος(震え上がった)。
英語 tremor(震え), tremendous(巨大な, 恐ろしい), tremulous(震える)もラテン語 tremere を経て同じ語根の子孫。一般の恐れを言う φόβος(恐怖)に対し, τρόμος は体が震えるほどの激しい戦慄を指し, πανικός(パニック)に近い状態を言う。慣用句 ισορροπία τρόμου(恐怖の均衡)は英語 balance of terror からの翻訳借用で冷戦期の外交語として入った。
ギリシャ語:βραχνάς
読み方:ヴラフナス・ヴラフナース
ラテン文字:vrachnas
中世ギリシャ語の βαρυχνάς(ヴァリフナス:重苦しい呼吸)に由来する。もともとは睡眠中に胸が圧迫されるような不快感、つまり金縛りや悪夢を指していた。現代ギリシャ語では精神的な重圧や厄介な問題も表すようになった。
英語の nightmare(悪夢)の比喩的な用法や albatross(重荷)に近い。類義語に εφιάλτης(悪夢)や μπελάς(厄介事)がある。εφιάλτης は悪夢そのものや恐ろしい経験を指し、μπελάς は日常的な面倒や厄介事を意味する。日常的にプレッシャーの意味で使われる πίεση(圧力)とも近い。
強い不安やストレスを引き起こす対象を総称し、経済的な問題、解雇への恐怖、厄介な人物など幅広い文脈で使われる。
ギリシャ語:νότος
読み方:ノトス・ノートス
ラテン文字:notos
古代ギリシャ語の νότος(南, 南風)を継承。古代ギリシャ語より前の語源は定かでない。先頭を大文字にした Νότος は古代神話で擬人化された南風の神の名でもある。
同じ νότος の語族に νότιος(南の, 南からの), νοτιάς(南風), νοτιάδα(南風の雨), 合成語 νοτιοανατολικός(南東の), νοτιοδυτικός(南西の), νοτιοευρωπαϊκός(南欧の)。νότιος の中性複数形 νότια は副詞で「南へ, 南に」, 方向ラベルで「南方向」を指す。
対義語は βορράς(北)。南風の名としては νοτιάς が一般的で, 地中海・航海語寄りに όστρια もある。
ギリシャ語:βορράς
読み方:ヴォラス・ヴォラース
ラテン文字:vorras
古代ギリシャ語の βορρᾶς(北風、北)に由来。北風の神 Βορέας(ボレアス)のアッティカ方言形で、神名そのものが方角と風の名も兼ねた。
派生の形容詞に βόρειος(北の)、北風に限って使う異形に βοριάς、その指小語に βοριαδάκι(心地よい北風、そよ風)。対義語は νότος(南)。地中海・航海の文脈で使う北風名にイタリア語 tramontana「山の向こう」からの τραμουντάνα、夏のエーゲ海で吹く北寄りの季節風に μελτέμι(メルテミ)。
英語 boreal(北の、北方の)、boreal forest(北方林、タイガ)、Aurora Borealis(オーロラ、直訳「北の夜明け」)はラテン語 borealis を経て βορρᾶς・Βορέας と同じ語源につながる。
ギリシャ語:εφιάλτης
読み方:エフィアルティス・エフィアールティス
ラテン文字:efialtis
古代ギリシャ語の ἐφιάλτης(うなされること、夢魔)に由来。ἐπί(上へ)と ἅλλεσθαι(跳ぶ)の合成で、眠る人の上に飛び乗る怪物を指した。やがて怪物そのものではなく、それが引き起こす夢、すなわち悪夢を指す語に変わった。
テルモピュライの戦いでペルシア軍に抜け道を教えた裏切り者 Εφιάλτης(エピアルテス)の名でもあり、ここから「裏切り者」の代名詞としても使う。派生語に εφιαλτικός(悪夢のような)。類義語の βραχνάς(悪夢、息苦しい夢)も悪夢を指すが、εφιάλτης は脅威・耐えがたい状況の比喩にも広く使う。
ギリシャ語:πανικός
読み方:パニコス・パニコース
ラテン文字:panikos
古代ギリシャ語の Πάν(牧神パン)に由来する形容詞 πανικός が語源で、「パンの」を意味する。パン神は山野に棲む半人半獣の神で、突然の叫び声で家畜や人間を恐怖に陥れるとされた。この神話から πανικός φόβος(パンの恐怖)のように恐怖を形容する表現が生まれ、やがて πανικός だけで突然の制御不能な恐怖を意味する名詞としても定着した。フランス語の panique や英語の panic も同じ古代ギリシャ語に由来し、日本語の「パニック」もここから広まった外来語である。
類義語に τρόμος(恐怖)があるが、πανικός は集団的な混乱や制御不能な状態に重点が置かれる。
精神医学では διαταραχή πανικού(パニック障害)や κρίση πανικού(パニック発作)のように用いられる。社会学の ηθικός πανικός(道徳的パニック)は、メディアなどが特定の事象に過剰に反応し、社会の結束を脅かすような不合理な恐怖を煽る現象を指す。日常語としても μπουτόν πανικού(パニックボタン。κουμπί πανικού とも)や μπάρα πανικού(パニックバー、緊急脱出用の押し棒式ハンドル)のように使われる。
πανικός は主に二つの意味で用いられる。ひとつは個人や集団に突然襲いかかる制御不能な恐怖。もうひとつは大きな動揺や無秩序、収拾のつかない騒ぎである。
ギリシャ語:ορίζοντας
読み方:オリゾダス・オリーゾダス・オリゾンダス・オリーゾンダス
ラテン文字:orizontas
古代ギリシャ語の ὅρος(境界)から派生した動詞 ὁρίζω(境界を定める)の現在分詞 ὁρίζων(境界を定めるもの)が起源。もとは ὁρίζων κύκλος(視界を区切る円)という天文学的な表現の一部で、天球と地表が接して見える仮想の円を指していた。この分詞が名詞化して「地平線」そのものを表すようになり、現代ギリシャ語の ορίζοντας に至る。
ラテン語に horizon として借用され、英語の horizon や horizontal(水平の)の語源にもなっている。
ορίζοντας γεγονότων(事象の地平線)は、ブラックホールを囲む仮想の境界で、光さえも脱出できない領域を指す物理学用語。χρονικός ορίζοντας(タイムホライズン)は、目標達成までに設定する期間のことで、βραχυπρόθεσμος(短期的)や μακροπρόθεσμος(長期的)と組み合わせて使う。υδροφόρος ορίζοντας(帯水層)は、地下水を含む地層を指す。
主な意味は「地平線」「水平線」で、観察者から見た空と大地や海面の境界線を指す。ここから、精神的な「視野」や「知見」、将来の「展望」や「見通し」にも使われる。天文学では天球上の基準面として、地質学では地層中の特定の層を指す専門用語にもなっている。
ギリシャ語:χώρος
読み方:ホロス・ホーロス
ラテン文字:choros
古代ギリシャ語の χῶρος(場所、空間、地方、国土)に由来。さらなる起源は確かでなく、印欧祖語の「あとに残す」を表す根(χήρα「未亡人」と同系)から「空けられた場所」の意とする説や、ギリシャ語以前の基層語とする説がある。χώρα(国、地方)は同じ根に属する姉妹語で、χωράφι(畑)もこの系統から来ている。
動詞 χωρώ(収める、収容する;古代 χωρέω)は χῶρος から派生した語で、派生・複合語に χωρικός(空間の)、χωροθεσία(空間配置)、χωροταξία(国土計画)、χωροχρόνος(時空)、χωρογραφία(地誌学)など。類義語に τόπος(場所、地点)があり、χώρος が広がりを持つ空間、τόπος が特定の地点を指す。
英語 anchorite(隠修士、世俗から退いた修道者)は古代ギリシャ語 ἀναχωρητής(退く者、ἀνα- + χωρέω)からラテン語経由で入った語で、ここに χῶρος が含まれる。chorography(地誌学)も同じ χῶρος をもとにした学術語。
ギリシャ語:βασιλικός
読み方:ヴァシリコス・ヴァシリコース
ラテン文字:vasilikos
古代ギリシャ語の形容詞 βασιλικός(王の, 王にふさわしい)を継承。βασιλεύς(王)に「〜の, 〜に属する」を表す接尾辞 -ικός を付けた形。植物バジルを指す男性名詞としての用法は中世ギリシャ語で生まれ, 香りの気高さから「王の草」と呼ばれたことによる。
同じ βασιλεύς の語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικότητα(王の威厳), 副詞 βασιλικά(王のように, 豪華に), 合成語 φιλοβασιλικός(親王制の, 王党派の), αντιβασιλικός(反王制の), βασιλομήτωρ(王母)。
英語 basil(バジル)はラテン語 basilicum, 古フランス語 basile を経て植物名の βασιλικός の系統を引く。basilica(バシリカ)は古代ギリシャ語 βασιλική στοά「王の柱廊」の βασιλική から, basilisk(バジリスク, 伝説上の蛇王)は指小形 βασιλίσκος(小さな王)を経てラテン語 basiliscus から入った。フランス語 basilic も同じ経路。
ギリシャ語:κρόκος
読み方:クロコス・クローコス
ラテン文字:krokos
古代ギリシャ語の κρόκος(サフラン、クロッカス、卵の黄身)を継承。元はセム語族からの借用と見られ、アッカド語 kurkanū、ヘブライ語 karkom、アラビア語 kurkum と同じ語根を共有する。卵の黄身の意味は、サフランの黄色との連想から古代ギリシャ語後期に加わった。
κρόκος はラテン語 crocus を経て西欧諸語へ広まり、英語 crocus、フランス語 crocus もこの系譜。調味料や染料としてのサフランは ζαφορά や σαφράν とも呼ばれ、こちらはアラビア語 zaʿfarān から来た別系統。
派生語に κροκάδι(卵黄)、δίκροκος(黄身が二つある)、κροκάτος(サフラン色の)。
ギリシャ語:δυόσμος
読み方:ディオズモス・ディオーズモス
ラテン文字:dyosmos
古代ギリシャ語の ἡδύοσμος(甘く香るもの、緑のミント)に由来する。語頭の無アクセント母音 η- が脱落し、母音接続を避けるための音節融合を経て、現代ギリシャ語の δυόσμος になった。
英語の spearmint に相当し、料理に清涼感を加える代表的なハーブである。類義語の μέντα(ペパーミント)よりも香りが穏やかで、ギリシャ料理では肉料理やサラダによく用いられる。
主な意味は「スペアミント」。料理の調味料として葉が利用される、草本性の芳香植物を指す。
ギリシャ語:μαϊντανός
読み方:マイドゥノス・マーイドゥノス・マインドゥノス・マーインドゥノス・マイドゥノス・マーイドゥノス
ラテン文字:maintanos
もとはビザンツ期のギリシャ語 μακεδονήσιον(パセリ)にさかのぼる語とされる。この語がアラビア語の maʕdūnis(パセリ)、オスマン・トルコ語の maydanos(パセリ)を経て、現代ギリシャ語の μαϊντανός に入った。
別表記として μαϊδανός もある。
英語の parsley は、古代ギリシャ語の πετροσέλινον(岩のセリ、パセリ)に由来する。一方、現代ギリシャ語の日常語としては μαϊντανός が一般的である。
主な意味は「パセリ」。料理に欠かせない名脇役としての語感から、皮肉を込めて、あちこちに顔を出す人を指す比喩にも使われる。
ギリシャ語:άνηθος
読み方:アニソス・アーニソス・アニトス・アーニトス
ラテン文字:anithos
古代ギリシャ語の中性名詞 ἄνηθον(ディル)を起源とする。現代ギリシャ語では、もとの中性名詞 άνηθο に加えて、対格の形に基づいて生まれた男性名詞 άνηθος も使われるようになり、現在では両方の性が用いられる。
ἄνηθον は、ギリシャ語成立以前の地域言語から入った植物名と見る説がある。ラテン語には anethum として借用され、植物学名 Anethum graveolens の Anethum にもこの形が残っている。
アニスを表す古代ギリシャ語には ἄνισον / ἄννησον(アニス)があり、英語の anise(アニス)は古フランス語 anis、ラテン語 anisum を経てこのギリシャ語に連なる。ἄνηθον と ἄννησον は形が似ており、同じ先ギリシャ語系の植物名として関連づけられることがあるが、古くから混同されることもあった別の植物名である。植物学的にもディルとアニスは別種である。
主な意味は「ディル」。料理に使用される草本状の芳香植物で、ギリシャ料理に爽やかな香りを添えるハーブとして欠かせない。
指小語 ανηθάκι は少量のディルや可愛らしく呼ぶ形を表す。複合語 ανηθόριζα は「ディルの根」を意味し、フェンネル(ウイキョウ)を指す。
ギリシャ語:κροκόδειλος
読み方:クロコディロス・クロコーディロス
ラテン文字:krokodeilos
古代ギリシャ語 κροκόδιλος(クロコディロス)に由来する。κρόκη(小石)と δρῖλος(ミミズ、虫)の合成語とされ、トカゲが日当たりの良い石の上を這い回る様子に基づいた命名と考えられる。
ラテン語の crocodilus を経て、英語の crocodile(クロコダイル)などへ波及した。
綴り違いの κροκόδιλος も見られるが稀で、κορκόδιλος は誤記にあたる。女性形の κροκοδειλίνα は主に口語で使われる。近縁種を表す αλιγάτορας(アリゲーター)という語もあるが、厳密な区別が必要でなければアリゲーターも含めてワニ全般を κροκόδειλος と呼ぶのが一般的。
熱帯の河川や湖、沼地に生息する大型の肉食爬虫類を指す。
ギリシャ語:δαίμονας
読み方:デモナス・デーモナス
ラテン文字:daimonas
古代ギリシャ語 δαίμων(神性、神的な力)に由来。もとは「運命を割り当てるもの」を意味し、善悪を問わない超自然的な存在、神と人間の中間に位置する精霊のような存在を指した。ヘレニズム期以降、キリスト教の影響で「下級の神」から「悪霊」へと意味が変わり、中世ギリシャ語を経て現代の δαίμονας に至る。英語 demon はラテン語 daemon を介してこの語に由来する。
中性形の δαιμόνιο は新約聖書で人に取り憑く悪霊を指し、現代ギリシャ語では「天才的な才能」の意味でも使われる。類義語に διάβολος(悪魔、もとは「中傷者」)、σατανάς(サタン、ヘブライ語からの借用)など。
ギリシャ語:μάγος
読み方:マゴス・マーゴス
ラテン文字:magos
古代ギリシャ語の μάγος(ペルシアの祭司、魔術師)を継承。古代ペルシア語 maguš(祭司階級の呼び名)からギリシャ語に入った語で、ヘレニズム期に「魔術師」の意味が加わった。ラテン語 magus を経て、英語の magic や magician もここから。現代の「名手、奇術師」の意味は、フランス語 magicien、英語 magician からの意味借用で広がった。
女性形は μάγισσα(魔女)で、中世ギリシャ語で生まれた形。東方の祭司や三博士には当てない。派生語に動詞 μαγεύω(魅了する、魔法をかける)、形容詞 μαγικός(魔法の、不思議な)、抽象名詞 μαγεία(魔法、魔術)、中性複数 τα μάγια(具体的な魔術行為)など。
ギリシャ語:σατανάς
読み方:サタナス・サタナース
ラテン文字:satanas
ヘブライ語 שטן(śāṭān, 敵対者)がギリシャ語に Σατανᾶς の形で借用され, 七十人訳聖書・新約聖書を通じて悪魔の名として用いられ, そのまま現代ギリシャ語に受け継がれた。
同じ σατανάς の語族に σατανικός(悪魔的な), σατανικότητα(悪魔的な性質), σατανισμός(悪魔崇拝), σατανιστής(悪魔崇拝者), αρχισατανάς(大魔王)。
英語 Satan, フランス語 Satan も同じヘブライ語を源にし, ギリシャ語訳聖書を経由して各言語に入った。日常の慣用表現では διάβολος(悪魔, ギリシャ語で「中傷する者」)のほうが圧倒的に多く使われ, σατανάς は宗教的・格式高い文脈と, 「ずる賢い人」「いたずらっ子」の比喩で出てくる。
ギリシャ語:ψαλμός
読み方:プサルモス・プサルモース
ラテン文字:psalmos
古代ギリシャ語の ψαλμός(弦を弾くこと, 竪琴の歌)に由来。ψάλλω(弦を弾く, はじく)から結果を表す -μός を付けて作られた語で, 弦の演奏から竪琴の伴奏の歌へ, さらにヘレニズム期の聖書翻訳とキリスト教典礼を通じて賛美歌の意味に移った。現代ギリシャ語の用法は, フランス語 psaume, 英語 psalm の意味配置と重なって整った。
英語 psalm, フランス語 psaume, ドイツ語 Psalm はラテン語 psalmus を経て同じ語源。派生に ψαλμωδία(詠唱)。同じ ψάλλω(弦を弾く)を源に持つ仲間に ψάλτης(詠唱者), ψαλτήρι(詩篇集, 竪琴)。
ύμνος(賛美歌, 賛歌)や άσμα(歌)は世俗の歌も指すのに対し, ψαλμός は聖書由来の詩篇や典礼の詠唱に使うことが多い。
ギリシャ語:ύμνος
読み方:イムノス・イームノス
ラテン文字:ymnos
古代ギリシャ語の ὕμνος(神や英雄を称える歌、賛歌)を継承。国歌や公的な頌歌の広い用途は、近代にフランス語 hymne、英語 hymn からの意味借用で入った。
派生語に υμνώ(賛美する)、υμνητής(賛美者)、合成語に υμνογραφία(賛歌の作詞)、υμνολογία(賛歌学、賛歌集)。
類義語に άσμα(歌)、ωδή(頌歌)、ψαλμός(詩編)。ψαλμός は旧約聖書『詩編』の賛美歌に限られ、ύμνος は宗教的な歌のほか世俗の称賛や国歌にも使う。英語 hymn、フランス語 hymne、イタリア語 inno はラテン語 hymnus を経て ὕμνος と同じ語源につながる。正教会の聖歌には Ακάθιστος Ύμνος(座らずに聴く賛歌)、Τρισάγιος Ύμνος(三度聖なる賛歌)、国家の公式歌は Εθνικός Ύμνος(国歌)。
ギリシャ語:διάβολος
読み方:ディアヴォロス・ディアーヴォロス
ラテン文字:diavolos
古代ギリシャ語の動詞 διαβάλλω(中傷する、告発する)から派生した名詞で、もとは「中傷者」「告発者」を意味した。δια-(越えて)と βάλλω(投げる)の合成語で、「言葉を投げつける」から「中傷する」の意になったもの。
ヘレニズム期に、ヘブライ語聖書のギリシャ語訳(七十人訳聖書)で、ヘブライ語の śāṭān(敵対者)の訳語にこの語があてられた。キリスト教の広がりとともに「悪魔」「サタン」の意味が定着し、もともとの「中傷者」の意味は失われた。英語の devil は、ラテン語 diabolus を経てこの語に由来する。
現代ギリシャ語の口語形 διάολος(ディアオロス)は、不吉な名前をそのまま呼ぶのを避けるために間音 [v] が脱落した形。
類義語の σατανάς(サタン)はヘブライ語からの直接の借用で、宗教的な文脈で使われることが多い。日常の慣用表現には διάβολος のほうがはるかに頻繁に登場する。
δαίμονας(デモナス)は、古代ギリシャ語では善悪を問わない超自然的存在を指したが、キリスト教の影響で「悪霊」の意味に変わった語で、英語 demon の語源にあたる。中性形の δαιμόνιο(デモニオ)は新約聖書で人に取り憑く悪霊を指し、現代ギリシャ語では「天才的な才能」の意味でも使われる。
Εωσφόρος(エオスフォロス)は「光をもたらす者」の意味で、堕天使ルシファーを指す。
主な意味は悪の精神を具現化した存在としての「悪魔」で、複数形は悪霊全般を、定冠詞付きの単数形は悪魔の長であるサタンを指す。驚きや怒りを表す間投詞や、知恵者・いたずらっ子の比喩としても日常的に使われ、ギリシャ語で最も慣用表現の多い語のひとつ。
指小形は、おもにかわいげのあるいたずらっ子の呼び名として使われる。
ギリシャ語:ήρωας
読み方:イロアス・イーロアス
ラテン文字:iroas
古代ギリシャ語 ἥρως(hḗrōs、英雄)が起源。対格の ἥρωα を経て現代ギリシャ語の ήρωας となった。もともとは古代神話において卓越した能力を持ち、死後に崇拝の対象となった存在を指す語だった。
古代ギリシャ語 ἥρως はラテン語に hērōs として借用され、さらにフランス語の héros へと受け継がれた。フランス語では「勇敢な人物」や「物語の主人公」の意味が発達し、現代ギリシャ語はこの用法を逆輸入する形で取り入れた(意味借用)。英語の hero も同じくラテン語経由でこの語に由来し、日本語のヒーローもここから来ている。女性形は ηρωίδα で、古代ギリシャ語 ἡρωίς(対格 -ίδα)から来ている。
神話上の超人的な存在から、勇気ある行動をとる人物、物語の登場人物までを指す。
ギリシャ語:κέδρος
読み方:ケドゥロス・ケードゥロス
ラテン文字:kedros
古代ギリシャ語の κέδρος(ケドロス、特定の属に限らず香りの強い樹脂質の針葉樹)を継承。語の起源は不明で、ギリシャ先住の言語からの借用とする説がある。
κέδρος がラテン語に入る際に、ふたつの異なる語形に分かれた。
ひとつは、もとの「針葉樹」の意味を引き継いだ cedrus。当時のラテン語では特にケードネズ(Juniperus oxycedrus)を指し、現在は Cedrus(ヒマラヤスギ属)の学名として用いられている。英語の cedar やフランス語の cèdre はこの系統から来ている。
もうひとつは、「シトロンの木」を意味する語に変わった citrus。κέδρος から citrus への音の変化(母音 e→i、子音 dr→tr)は、エトルリア語を経由したためと考えられている。なぜ針葉樹の名がシトロンを指す語になったのかは定かでないが、古代ローマの医師ガレノスは複数の可能性を挙げている。未熟なシトロンの実がスギの球果に似ていること、どちらの木の葉にもトゲがあること、果実や葉の香りがスギに似ていることなどが候補。
cedrus 系の語形は針葉樹の意味を保つ一方で、一部の言語では意味が変わった。イタリア語の cedro は「シトロン」を意味し、フランス語の cédrat も同じくシトロンを指す。cedrus 系と citrus 系の両方から、それぞれ別の経路で「シトロン」を意味する語が生まれたことになる。
citrus 系からは英語 citrus(ミカン属の属名)が生まれたほか、フランス語 citron はレモンを、英語 citron はシトロンそのものを指す語になった。そしてこの citrus 系の語は、ラテン語 citrum の形で古代ギリシャ語に逆輸入され、κίτρον(シトロン)になった。現代ギリシャ語では κίτρο(シトロン)。ギリシャ語から出てラテン語を経由し、ふたたびギリシャ語に戻ってきた往復借用の例。
現代ギリシャ語で κέδρος はヒマラヤスギ属(Cedrus)を指す標準的な名称だが、ギリシャ各地ではビャクシン(ジュニパー、Juniperus 属)の俗称としても広く使われている。ギリシャ本土にヒマラヤスギ属は自生しておらず、各地で κέδρα と呼ばれる木のほとんどはビャクシン属。植物学上の正式な名称は άρκευθος(アルケフソス)だが、日常語としては κέδρος のほうが通りがよい。
ギリシャ語:νεφρίτης
読み方:ネフリティス・ネフリーティス
ラテン文字:nefritis
古代ギリシャ語の νεφρός(腎臓)から派生した形容詞 νεφρῖτις(腎臓の)に由来する。もとは νεφρῖτις λίθος(腎臓の石)の形で使われ、この石が腎臓の病を治すと信じられていたことに基づく名前。中世から近代にかけて鉱物名として定着した。
英語の nephrite も同じギリシャ語が語源にあたる。同じ νεφρός から派生した語に νεφρίτιδα(腎炎)があり、英語の nephritis(腎炎)もこの語根を共有する。
ίασπις(翡翠)を構成する2鉱物のひとつで、もう一方の ιαδεΐτης(ジェダイト、硬玉)とは鉱物学的に区別される。
翡翠のうちの軟玉にあたる鉱物で、半貴石として珍重される。
ギリシャ語:ίασπις
読み方:イアスピス・イーアスピス
ラテン文字:iaspis
古代ギリシャ語の ἴασπις から。語源不明の借用語で、エジプト語に由来する可能性がある。ヘブライ語やアッカド語、ペルシア語にも同源の語があり、広い地域で共有されていた。古代ではさまざまな色の不透明な石を広く指していたが、現代ギリシャ語では翡翠の総称として定着している。ラテン語 iaspis、古フランス語 jaspre を経て英語 jasper(碧玉)の語源にもなったが、英語とは異なる鉱物を指す。
翡翠としての ίασπις は νεφρίτης(軟玉)と ιαδεΐτης(硬玉)の2つの鉱物を含む。この2つが別の鉱物であることは、1863年にフランスの鉱物学者ダムールによって明らかにされた。
νεφρίτης は νεφρός(腎臓)に由来し、腎臓の病に効く石とされたことにちなむ。英語 nephrite もこのギリシャ語から来ている。ιαδεΐτης はスペイン語 piedra de ijada(脇腹の石)からフランス語 jade を経てギリシャ語に入った語で、スペイン語の ijada(脇腹)も腎臓のあたりを指しており、別の言語経路から同じ「体の痛みに効く石」という意味合いの名になっている。ιαδεΐτης は近代の借用語のため、γιαδείτης や ιαδείτης といった表記揺れがある。
ギリシャ語:κρύσταλλος
読み方:クリスタロス・クリースタロス
ラテン文字:krystallos
古代ギリシャ語の κρύσταλλος(澄んだ氷、水晶)に由来。現代の「結晶」「ガラス製品」の意味はフランス語 cristal、英語 crystal からの意味借用で広がった。英語 crystal もラテン語 crystallus を経て同じ語源。
現代ギリシャ語では主に男性名詞で、まれに女性名詞としても使う。同じ意味の中性名詞 κρύσταλλο の形もある。
ギリシャ語:αμέθυστος
読み方:アメシストス・アメーシストス・アメティストス・アメーティストス
ラテン文字:amethystos
古代ギリシャ語の ἀ-(否定の接頭辞)と μεθύω(酔う)に由来する。もともと「酔わせない」という性質を意味する形容詞で、この石を身につけていると酒に酔わないという古代の迷信から、宝石アメジスト(紫水晶)を指す名詞としても定着した。英語の amethyst も同語源である。
現代ギリシャ語では、名詞として半貴石のアメジスト(淡い紫色の石英)を、形容詞として酔っていない状態(素面)を意味する。
ギリシャ語:αχάτης
読み方:アハティス・アハーティス
ラテン文字:achatis
古代ギリシャ語の ἀχάτης(瑪瑙)から。シチリア島のアカテス川(現ディリロ川)のほとりで発見されたことにちなむとされる。ラテン語 achātēs、中世フランス語 agathe を経て英語 agate の語源にもなった。
ギリシャ語:λαζουρίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazouritis
ペルシア語の lāžward(ラピスラズリ)から、アラビア語 lāzaward(青い石)、中世ラテン語 lazur を経て、フランス語 lazurite としてギリシャ語に入った。英語の lazurite(ラズライト)や azure(紺碧)も同じペルシア語に由来する。
鮮やかな青色が特徴の珪酸塩鉱物を指す。名前の似た λαζουλίτης(天藍石)とは別の鉱物。
ギリシャ語:λαζουλίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazoulitis
ペルシア語の lāžaward(青色)から中世ラテン語 lazulum(青)を経て、フランス語 lazurite としてギリシャ語に入った。λάπις λάζουλι(ラピスラズリ)の λάζουλι と同じ語源だが、指す鉱物は異なる。英語の lazulite(天藍石)や azure(紺碧)も同じペルシア語に由来する。
語尾の -ίτης は鉱物や「〜に関連するもの」を表す接尾辞で、英語の -ite に対応する。
マグネシウムや鉄を含むリン酸塩鉱物で、美しい青色が特徴。
ギリシャ語:λάπις λάζουλι
読み方:ラピス ラズリ・ラーピス ラズリ
ラテン文字:lapis lazouli
ラテン語の lapis(石)と、ペルシア語に由来するアラビア語 lāzaward(鮮やかな青)を組み合わせた中世ラテン語 lapis lazuli に由来する。「青い石」を意味する。フランス語・英語を経由して現代ギリシャ語に入った借用語で、英語の lapis lazuli も同じ中世ラテン語から来ている。
ラピスラズリの主成分にあたる鉱物は λαζουρίτης(青金石)と呼ばれる。名前の似た λαζουλίτης(天藍石)は別の鉱物で、リン酸塩からなる青い石を指す。顔料としての青色は ουλτραμαρίνα(ウルトラマリン)と呼ばれる。
鮮やかな青色をした半貴石を指す。性・数で語形が変化せず、男性名詞としても中性名詞としても使われる。
ギリシャ語:άστριος
読み方:アストゥリオス・アーストゥリオス
ラテン文字:astrios
古代ギリシャ語の ἄστριος(ある種の貴石)から。鉱物群を指すため、通常は複数形 άστριοι で用いられる。ορθόκλαστο(正長石)や πλαγιόκλαστα(斜長石)が代表的で、φεγγαρόπετρα(ムーンストーン)もこのグループに属する。
ギリシャ語:χρυσός
読み方:フリソス・フリソース
ラテン文字:chrysos
フェニキア語 ḥrṣ, ヘブライ語 חָרוּץ(ḥārūṣ), アッカド語 ḫurāṣum など, 古代西アジアのセム語系で「金」を表す語から借用した古代ギリシャ語 χρυσός(金, 金の)を継承。
形容詞の χρυσός は中世に古代形 χρυσοῦς(音約形)を一般的な -ός 型に整え直した形で続いている。日常的に「金」を指す名詞は χρυσάφι(ヘレニズム期の指小語 χρυσάφιον から)。色を表す語は χρυσάφι から派生した χρυσαφής(金色の)や中性名詞 χρυσαφί(黄金色)で、素材を表す χρυσός とは区別される。
派生・複合語に χρυσώνω(金メッキする)、χρυσοχόος(金細工師)、χρυσοχοείο(金細工店、宝飾店)、χρυσόφυλλο(金箔)、χρυσοθήρας(金探し)、χρυσάνθεμο(菊)、χρυσαλλίδα(さなぎ)、χρυσόψαρο(金魚)、χρυσαφικά(貴金属、宝飾品)など。
英語 chrysalis(さなぎ)は古代ギリシャ語 χρυσαλλίς(金色のもの)をもとにした語で、さなぎの殻が金色に輝くことから名づけられた。chrysanthemum(菊)は χρυσός と ἄνθεμον(花)の合成で「金の花」の意。クリソライト(貴橄欖石)、クリソプレーズ、金緑石などの宝石名(英語 chrysolite / chrysoprase / chrysoberyl)も同じ χρυσός をもとにした学術語。4世紀の「金口ヨハネ」を指す Chrysostom は χρυσός と στόμα(口)の合成で「金の口」つまり雄弁を表す名。
ギリシャ語:ίσκιος
読み方:イスキョス・イースキョス
ラテン文字:iskios
古代ギリシャ語の ἴσκιος(影、日陰)を継承。σκιά と同じ語源で、ίσκιος のほうが口語的。
σκιά と同じく「影」「日陰」を中心に、比喩的な用法も含めて幅広い意味を持つ。
ギリシャ語:λίθος
読み方:リソス・リーソス・リトス・リートス
ラテン文字:lithos
古代ギリシャ語の λίθος(石)に由来。起源はよくわかっていない。英語の接尾辞 -lith, -lite(〜石)や litho-(lithography「石版画」、lithosphere「岩石圏」、monolith「一枚岩」など)、元素名 lithium(リチウム)はこの語から。
現代ギリシャ語は文語的な語で、ふつうは πέτρα を使う。λίθος は地質学や医学、建築の文脈、歴史的な慣用句に残る。男性名詞のほか、λυδία λίθος(試金石)や φιλοσοφική λίθος(賢者の石)のような固定表現では女性名詞として使う。派生語に形容詞 λίθινος(石の)、合成語の ασβεστόλιθος(石灰岩)、λιθόσφαιρα(岩石圏)など。
ギリシャ語:μύκητας
読み方:ミキタス・ミーキタス
ラテン文字:mykitas
古代ギリシャ語の μύκης(キノコ、またはキノコのような形の病的な隆起)を語源とし、対格形の -ητα を経て現代ギリシャ語の μύκητας となった。
英語の mycology(菌類学)や、抗生物質の streptomycin(ストレプトマイシン)に含まれる -mycin などは、このギリシャ語を語源に持つ。
派生語に、形容詞の μυκητιακός(菌の、真菌性の)や、菌による疾患を指す μυκητίαση(真菌症、水虫など)がある。
日常的にキノコを指す場合は μανιτάρι(キノコ)が一般的で、μύκητας は生物学や医学の文脈で用いられることが多い。
主な意味は「菌類」。広義にはキノコからカビ、酵母などの微生物までを含む。生物学では葉緑素を持たず寄生生活を送る生物群(菌界)を指し、五界説(動物、植物、菌、原生生物、モネラ)の一つに数えられる。
ギリシャ語:ύπνος
読み方:イプノス・イープノス
ラテン文字:ypnos
古代ギリシャ語の ὕπνος(眠り)を継承。印欧祖語で「眠る」を表した語根から出た語で、ラテン語 somnus、サンスクリット語 svápna、英語 sweven(古語で「夢」)はすべて同じ語根の子孫。語頭の sw- が言語ごとに変化し、ギリシャ語では s が h に変わり w が落ちて ὕπνος、ラテン語では w が落ち p が m に同化して somnus、サンスクリット語は sv- のまま元の形を残した。
派生語に υπνάκος(うたた寝、昼寝)、υπνηλία(眠気)、υπνωτικό(睡眠薬)、υπνωτίζω(催眠にかける)。合成語に αϋπνία(不眠)、αφυπνίζω(目覚めさせる)。
類義語に κοίμηση(眠り、永眠)、ανάπαυση(休息)。κοίμηση は永眠や他界の含みも出る硬めの言い方。英語 hypnosis(催眠)、hypnotic(催眠の)は ὕπνος をもとにした学術造語。
ギリシャ語:αιώνας
読み方:エオナス・エオーナス
ラテン文字:aionas
古代ギリシャ語の αἰών(一生, 生涯, 永劫)を継承。
同じ語族に αιώνιος(永遠の), αιωνιότητα(永遠性), διαιωνίζω(永続させる), μεσαίωνας(中世), μεσαιωνικός(中世の), προαιώνιος(太古の)。
英語 eon, aeon(永劫)もラテン語経由で同じ語源。
類義語の εκατονταετία がきっかり100年の長さを指すのに対し, αιώνας は時代区分や「ひどく長い時間」の比喩にも使う。
ギリシャ語:τροχός
読み方:トゥロホス・トゥロホース
ラテン文字:trochos
古代ギリシャ語の τροχός(車輪、回転体)を継承。印欧祖語で「走る、引く」を表した語根の子孫で、動詞 τρέχω(走る)と同じ語根から出る。
派生語に τροχαλία(滑車)、τροχίσκος(小さな車輪、錠剤、円盤)、τροχαίος(交通の、交通関係の)。合成語に τροχιά(軌道、軌跡)、υδροτροχός(水車)、τροχοφόρος(車輪のついた、輪付きの乗り物)、τροχοπέδη(ブレーキ)。
車輪を言うもう一つの語に ρόδα(車輪)があり、τροχός は技術的な合成や比喩(歯車、ろくろ、運命の輪)で使う。英語 truck(もとは車輪付きの台車)、trochanter(解剖学の転子)はラテン語 trochus を経て τροχός と同じ語源に連なる。
ギリシャ語:κάβουρας
読み方:カヴラス・カーヴラス
ラテン文字:kavouras
古代ギリシャ語の κάραβος(ザリガニ)が起源。コイネーを経て、中世ギリシャ語では κάβαρος(中間形)に近い形が現れ、その後は唇音 [v] の影響で母音が a から u に寄ったとされる。さらに中世ギリシャ語の κάβουρ(ος)(中間形)を経て、現代ギリシャ語の κάβουρας に至った。
英語の crab も、最終的にはこの語と同じ語源につながるとされる。
近い語に καβούρι があり、どちらも一般には「カニ」を指す。派生語には女性形の καβουρίνα や、指小語の καβουράκι がある。καβουράκι は小さなカニを指すほか、帽子の一種の俗称にもなる。
主な意味は「カニ」。そこから、形の似た道具や、横に進む動きになぞらえた編み方も指す。独特の歩き方から、進み方が遅いことや、難しい局面で実力が試されることを言う表現にもよく現れる。
ギリシャ語:μύθος
読み方:ミソス・ミーソス・ミトス・ミートス
ラテン文字:mythos
古代ギリシャ語の μῦθος(言葉, 話, 物語)を継承。現代の「神話, 寓話, 筋書き」の用法はドイツ語 Mythos, フランス語 mythe, 英語 myth からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μῦθος の語族に μυθικός(神話的な, 伝説的な), μύθευμα(作り話), μυθώδης(神話のような, 伝説のような), 合成語 μυθολογία(神話学, 神話体系), μυθιστόρημα(小説), μυθοπλασία(フィクション, 創作), μυθομανία(虚言癖), μυθοποιός(神話を作る, 神話化する)。
類義語 θρύλος は歴史的事実を核に伝承がついた「伝説」, παραμύθι は子ども向けに語られる「おとぎ話」を指すのに対し, μύθος は世界の成り立ちや神々・英雄を扱う構造のある物語で使う。英語 myth, mythology, mythical もこの μῦθος の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:φλοιός
読み方:フリオス・フリオース
ラテン文字:floios
古代ギリシャ語の φλοιός(樹皮、外皮)を継承。木や実を覆う固い皮を古代から表した。現代の地殻や大脳皮質のような外層を指す使い方は、フランス語 croûte(地殻)、cortex(皮質)からの意味借用で広がった。
日常で果物や野菜の皮を言うときは φλούδα のほうで、φλοιός は植物学・地質学・解剖学など専門的な文脈で使う。
ギリシャ語:γείτονας
読み方:イトナス・イートナス・ギトナス・ギートナス・イトナス・イートナス
ラテン文字:geitonas
古代ギリシャ語の γείτων(隣人、近所の人)の対格 γείτονα を経て、中世ギリシャ語の γείτονας(隣人、近所の人)が成立し、現代ギリシャ語の γείτονας に至った。
同じ語は英語の neighbour / neighbor に相当する。より形式的に「近隣住民」を指す περίοικος などもあるが、日常会話では γείτονας が最も一般的である。
女性形 γειτόνισσα も、中世に古代ギリシャ語の語幹 γειτον- に接尾辞 -ισσα が付いて成立した。親しみを込めた指小語 γειτονάκι もある。
主な意味は「隣人、近所の人」。同じ近所に住んでいる人を指し、複数形では比喩的に「隣国の人々」を表すこともある。
ギリシャ語:καρπός
読み方:カルポス・カルポース
ラテン文字:karpos
古代ギリシャ語の καρπός(実、収穫物、手首)を継承。「実」は印欧祖語の「摘む、刈り取る」を表す語根から続き、英語 harvest、ラテン carpō(摘む、carpe diem の carpe)も同じ系統。解剖学の英語 carpus(手根)は καρπός の「手首」の意味からきた語。「子」や「成果」の意味はフランス語 fruit にならった意味借用で加わった。
派生語 περικάρπιο は植物の果皮と、手首に巻くリストバンドの両方を指す。
解剖学では καρπός が手首を指し、日常では手首も含めて χέρι(手)と言うことが多い。
ギリシャ語:πολίτης
読み方:ポリティス・ポリーティス
ラテン文字:politis
古代ギリシャ語の πολίτης(ポリスの自由市民)に由来。πόλη(都市)の古代形 πόλις に「〜に属する人」を表す -ίτης が付いた形。現代の「国民, 市民」の用法はフランス語 citoyen からの意味借用で輪郭が整った。中世には Πολίτης が「コンスタンティノープル住民」の呼び名として固有名化した。
同じ πόλις・πόλη の語族に πολιτεία(国家, 市民権), πολιτεύομαι(政治に携わる), πολιτικός(政治の, 政治家), πολιτισμός(文明), πολιτογράφηση(帰化), 合成語 συμπολίτης(同郷人, 同胞), κοσμοπολίτης(コスモポリタン), μητροπολίτης(首都出身者, 大主教)。
英語 politics(政治), policy(政策), cosmopolitan(世界市民)もラテン語を経由してこの πόλις の語族に連なる。κάτοικος(住民)が住んでいる事実を指すのに対し, πολίτης は権利と義務を持つ市民の立場を指す。
ギリシャ語:λαός
読み方:ラオス・ラオース
ラテン文字:laos
古代ギリシャ語の λαός(民衆, 人々, 軍勢)を継承。もとは「武装した人々」を指したとされ, 印欧祖語で「軍事行動」を表す語根に連なる説と, ギリシャ語以前の基層から来たとする説がある。現代の「国民, 民族, 庶民」の用法はフランス語 peuple からの意味借用で輪郭が整った。
派生に λαϊκός(庶民の, 民俗の, 世俗の), λαογραφία(民俗学), λαοθάλασσα(人の海, 群衆), λαοσυναξία(大衆の集まり)。英語 lay(俗人の), laity(俗人階層), liturgy(典礼)も, λαός を含むギリシャ語合成語(λαϊκός, λειτουργία)からラテン語経由で入った。
類義語 έθνος は歴史, 言語, 文化を共有する「民族, 国民」を指すのに対し, λαός は国民, 民衆, 庶民までを幅広く受ける。πληθυσμός は統計的な「人口」を指す。κόσμος は会話で「人々, 大勢の人」を表すときに使い, κοσμάκης は同情や軽い卑下を込めた「庶民, 民草」を指す。
ギリシャ語:πόλεμος
読み方:ポレモス・ポーレモス
ラテン文字:polemos
古代ギリシャ語の πόλεμος(争い, 戦闘)を継承。起源は明らかでない。ギリシャ語以前の基層言語に由来する可能性と, 「揺する, 打つ」を表す πάλλω(振り回す), πελεμίζω(震わせる)などと同じく印欧祖語の語根「打つ, 押す」に続くとする説がある。ラテン語 pello(押す, 打ち負かす)や英語 feel との結びつきも示唆されるが, いずれも定説ではない。「派閥の戦い」「麻薬撲滅運動」のような比喩・キャンペーンの用法は, 英語 war, フランス語 guerre からの意味借用で加わった。
英語 polemic(論争的な), polemics(論争術)も同じ語源。派生に πολεμώ(戦う), πολεμικός(戦争の, 軍事の), πολεμιστής(戦士), πολεμοχαρής(好戦的)。
μάχη(戦闘)は個々の戦い, πόλεμος はより長期にわたる全体の戦いを指す。σύγκρουση(衝突, 対立)は物理的な衝突から意見対立まで指し, πόλεμος より広い。対義語は ειρήνη(平和)。
ギリシャ語:ουρανός
読み方:ウラノス・ウラノース
ラテン文字:ouranos
古代ギリシャ語の οὐρανός(空, 天)を継承。神話では「空」を擬人化したティタン神 Οὐρανός が同名で, クロノスの父にあたる。現代の「ベッドや乗り物の天蓋」の用法はフランス語 ciel de lit(ベッドの空)からの翻訳借用。惑星名 Ουρανός は神名 Οὐρανός から新ラテン語 Uranus を経て入った。
同じ οὐρανός の語族に ουράνιος(空の, 天の), ουρανίσκος(口蓋, 天蓋), επουράνιος(天上の), 合成語 ουρανοξύστης(摩天楼), ουράνιο τόξο(虹, もとは「天の弓」)。宗教文脈では複数形 ουρανοί が「天, 天国」の意味でよく出てくる。
英語 uranium(ウラン)は天王星 Uranus にちなむ元素名で, 神名 Οὐρανός に連なる。「天国」では παράδεισος(楽園, パラダイス, ペルシア語起源)も近く, ουρανοί が神の住まう天を広く指すのに対し, παράδεισος は祝福された者が至る楽園を指す。
ギリシャ語:αγέρας
読み方:アイェラス・アイェーラス・アゲラス・アゲーラス
ラテン文字:ageras
古代ギリシャ語の ἀήρ(空気、霧、もや。属格 ἀέρος)を継承する αέρας と並んで、中世ギリシャ語以降に母音連続 [a-e] を埋める半母音 [j] が挿入された別形 αγέρας が口語と詩歌の中で生まれた。αέρας と αγέρας は語源を共有する別形の対をなし、αγέρας のほうが肌に感じる風や民謡・詩歌の文脈で好まれる響きを持つ。古代の ἀήρ は「夜明け、東」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、もとは「朝もや、薄霧」を指す語で、古代ギリシャ語 αὔρα(そよ風), ラテン語 aurōra(夜明け、暁の女神)と同根。英語の接頭辞 aero-(航空・空気の)や air(空気、仏 air 経由)も同じ ἀήρ に由来する学術借用。
類義語に αέρας(空気、風。同じ ἀήρ から母音連続をそのまま保った形で、空気そのものや風を指す日常の形として広く使う), άνεμος(風。古代ギリシャ語由来で、気象学・詩歌の硬い形), αύρα(そよ風、空気の流れ。古代 αὔρα 由来), μπάτης(凪の風、海風・陸風)。αγέρας は口語的・文学的な響きで風や肌に感じる空気の動きを指す形として、民謡・詩・地方の話し言葉でよく使う。派生に αγεράκι(そよ風、心地よい風。指小形)。関連語に αήρ(空気。古代 ἀήρ の素形を保った形で硬い文脈に残る)。
ギリシャ語:λόγος
読み方:ロゴス・ローゴス
ラテン文字:logos
λόγος は古代ギリシャ語の λέγω(集める、選ぶ、話す)に由来する名詞。古代から「言葉」「話」「理性」「根拠」「計算」などを広く表し、現代ギリシャ語でもその多義性を引き継いでいる。
英語の logic は、λόγος から派生した古代ギリシャ語 λογική(論理学)を経て伝わった語。-logy も λόγος を含む -λογία に由来し、「〜についての学」「論」をつくる。λόγος は現代ギリシャ語の日常語であると同時に、英語の学術語にも痕跡を残している。
通常の複数は λόγοι だが、具体的な「言葉、発言」を表すときは λόγια がよく使われる。λόγια は古代の λόγιον(託宣、キリストの言葉)に由来する形で、現代ギリシャ語では口語的な「言葉、話」として広く現れる。
ομιλία(演説、スピーチ)は、まとまった話を指しやすい。κουβέντα(日常のおしゃべり、会話)は、よりくだけた会話に寄る。派生語には、ちょっとした言葉を表す λογάκι(ちょっとした言葉)や、短くつまらない演説を皮肉っぽく言う λογύδριο(短くつまらない演説)がある。
主な意味は「言葉」「話」「理性」「理由」。人間の話す能力、具体的な発言、演説、評判、命令や約束、説明責任や理由、理性的な判断、神学上の「ロゴス」、数学的な比率まで、非常に広い範囲をカバーする。
さらに口語では του λόγου (σου/του...) の形で、「あなた様」「彼自身」のように、やや丁寧または親愛をこめて人を指すことがある。こうした言い方は、日常の呼びかけや定型句にも残っている。
ギリシャ語:καφές
読み方:カフェス・カフェース
ラテン文字:kafes
語源は、イタリア語の caffé およびフランス語の café にギリシャ語の男性名詞の語尾 -ς が付いたもの。これらはトルコ語の kahve(方言形では καϊβές)に由来し、さらに遡ればアラビア語で「ワイン、飲み物」を指した qahwah に行き着く。
英語の coffee も同じ語源から来ている。
主な意味は飲料としての「コーヒー」だが、原料の「コーヒー豆」や植物の「コーヒーノキ」も指す。日常会話から公的な場面まで広く使われる標準的な語で、ギリシャ特有の注文の仕方や、弔いの席でのコーヒーのような比喩的な表現にも用いられる。
指小辞を伴う καφεδάκι は、コーヒーに誘うときなどに親しみを込めて使われる。
ギリシャ語:πόντος
読み方:ポドゥトス・ポードゥトス・ポンドゥトス・ポーンドゥトス
ラテン文字:pontos
現代ギリシャ語の πόντος には二つの起源がある。日常で使う「センチメートル, 得点, 編み目」の πόντος はヴェネツィア語 ponto(点)からの借用で, 元はラテン語 punctum(刺された点)。文学的な「大海, 外海」を指す πόντος は古代ギリシャ語の πόντος(海上の通路, 大海)を継承したもの。
ヴェネツィア語経由の πόντος の語族は英語側に多い。point(点, 得点), punctuation(句読点), puncture(穴, 穿孔), appointment(約束)もラテン語 punctum の子孫。「センチメートル」の正式な語は εκατοστό だが, 日常では πόντος が使われることが多い。
古代ギリシャ語の πόντος はもと「渡る通路」の意味で, 同じ語源からラテン語 pons(橋), 英語 pontoon(浮き橋), pontiff(教皇, もとは「橋を架ける者」)が出ている。海の意味では θάλασσα(海全般), πέλαγος(外海, 沖合)が日常を担い, πόντος は文学や古風な表現に残る。
ギリシャ語:άνεμος
読み方:アネモス・アーネモス
ラテン文字:anemos
古代ギリシャ語の ἄνεμος(風)を継承。印欧祖語で「息をする、吹く」を意味する語根に起源を持ち、同じ語根からはラテン語 animus(心、精神)、anima(息、魂)が生まれ、英語 animate(生気を与える)、animal(動物)の語源にもなった。
関連語に αέρας(空気、風)、その口語・文学形 αγέρας。派生語に ανεμώνη(アネモネ)、ανεμόμυλος(風車)、ανεμοζάλη(暴風)など。
英語 anemometer(風速計)は ἄνεμος と μέτρον(測ること)をもとにした語。「変化の風」のような比喩用法は、フランス語 vent や英語 wind の比喩からの意味借用。
ギリシャ語:πατέρας
読み方:パテラス・パテーラス
ラテン文字:pateras
古代ギリシャ語の πατήρ(父)に由来する。対格(目的語の形)πατέρα をもとに、中世ギリシャ語を経て現代の πατέρας となった。
印欧祖語で「父」を意味する語から派生しており、英語の father、ラテン語の pater と同じ起源を持つ。英語の paternal(父親の)や patriarch(家長)もこの語根に由来する。
日常的には μπαμπάς(パパ、お父さん)が使われるが、πατέρας はよりフォーマルな響きを持つ。「父親」という存在そのものや、社会的・宗教的な役割を指す場合に適している。
派生語には πατερούλης(お父ちゃん、親愛の情を込めた指小語)、πατρικός(父親の、父方の)、πατερικός(教父の、教父学の)、πατρίδα(祖国)がある。
基本義は「父親」。そこから祖先、動物の種牡、学問の創始者、キリスト教における神や聖職者への尊称、初期教会の教父など、さまざまな意味で用いられる。
ギリシャ語:όρος
読み方:オロス・オーロス
ラテン文字:oros
古代ギリシャ語の ὅρος(境界、限界、定義)と ὄρος(山)に由来。
男性名詞のもとになった ὅρος は、もともと土地の境界を示す標石を指した。そこから論理学の「項」や「定義」の意味が生まれ、さらに「条件」「用語」へと広がった。同じ語源の動詞 ὁρίζω(境界を定める)は、英語 horizon(地平線)の語源でもある。
中性名詞 ὄρος は古代から一貫して「山」を意味する。現代ギリシャ語では文語的・地理学的な語で、日常的には βουνό が使われる。
現代ギリシャ語では気息記号が廃止され、どちらも όρος と書かれるが、文法上の性で区別が残り、男性名詞 ο όρος が条件や用語を、中性名詞 το όρος が山を表す。
ギリシャ語:τάπητας
読み方:タピタス・ターピタス
ラテン文字:tapitas
古代ギリシャ語の τάπης(敷物、絨毯。属格 τάπητος、対格 τάπητα)からの学術借用(διαχρονικό δάνειο)で、対格 τὸν τάπητα を主格として再分析し、現代ギリシャ語の男性名詞 -ας 型に整えなおして τάπητας の形に落ち着いた。フランス語 tapis(絨毯)の意味から、表面を端から端まで覆うもの(舗装面・芝生など)を指す現代の比喩用法も意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として加わった。古代の τάπης 自体の起源は明確でなく、イラン語派(ペルシャ語 tanbase「絨毯」など)からの借用説と、先ギリシャ語基層からの語とする説が並ぶ。古代ギリシャ語の τάπης はラテン語 tapete を経て、フランス語 tapis(絨毯), イタリア語 tappeto(絨毯), 英語 tapestry(タペストリー), ドイツ語 Teppich(絨毯)の源になった。
類義語に χαλί(絨毯、敷物。トルコ語 halı 由来の外来借用で、置き敷きの絨毯全般を指す日常の形), μοκέτα(敷き詰めカーペット。フランス語 moquette 由来の外来借用), κιλίμι(キリム。トルコ語 kilim 由来の外来借用、毛足のない平織り)。τάπητας はやや硬い書き言葉で絨毯を指す形として、行政・公式・装飾文化や、表面を端から端まで覆うものの比喩(舗装面、競技場の芝生)で使う。派生に ταπητοστρώνω(絨毯を敷く), ταπητόστρωση(絨毯敷き), ταπητόστρωτος(絨毯敷きの), ταπητουργείο(絨毯工房), ταπητουργία(絨毯製造業), ταπητουργός(絨毯職人)。関連語に ταπί(一文無しの。賭場の毛織りテーブルクロス由来), ταπετσαρία(壁紙、室内張り), ταπετσάρω(壁紙を貼る、布張りする), ταπισερί(タペストリー店、壁掛織り)。合成語に ασφαλτοτάπητας(アスファルト舗装面)。
ギリシャ語:θυμός
読み方:シモス・シモース・ティモス・ティモース
ラテン文字:thymos
古代ギリシャ語の θῡμός(魂, 精神, 息, 勇気, 情熱)を継承。印欧祖語で「煙」を表す語根に続き, サンスクリット dhūmá(煙), リトアニア語 dūmas, ラテン語 fūmus(煙), 古代教会スラヴ語 dymŭ, アルバニア語 tym と同じ語族の仲間。英語 fume(煙, 立腹する)はラテン語 fūmus から。古代には魂や生命の息吹を幅広く指したが, 現代ギリシャ語では「怒り」に意味がしぼられた。
派生に動詞 θυμώνω(怒る), その過去分詞 θυμωμένος(怒っている)。
アクセント位置が異なる θύμος(胸腺)は別の語源で, タイム(百里香)の名から解剖学用語になった。類義の οργή(激しい怒り, 憤怒)は瞬間的な激情を, θυμός は一過性から持続的なものまで幅広い怒りを指す。
ギリシャ語:άνθρωπος
読み方:アンスロポス・アーンスロポス・アントゥロポス・アーントゥロポス
ラテン文字:anthropos
古代ギリシャ語の ἄνθρωπος(人間、人)を継承。語源には諸説あり、ἀνήρ(男、人)と ὤψ(顔、目)を合わせた「人の顔を持つもの」説が古くから唱えられてきたが、ギリシャ語以前の基層語から入ったとする説や、印欧祖語で「下にあるもの(=大地の人)」を意味する語根から生まれ、ラテン語 homō(人)や英語 guma(人、〜man の -man)と同根とする説もある。ミュケナイ時代(a-to-ro-qo)からすでに現れる古い語。
口語で ν が脱落した άθρωπος の形は 3 世紀から確認される古い別形。派生語に ανθρωπιά(人間らしさ、人情)、ανθρώπινος(人間の、人道的な)、ανθρωπάκι(取るに足らない人)、συνάνθρωπος(隣人、同胞)、υπεράνθρωπος(超人)など。類義の言い方に άτομο(個人)、πρόσωπο(人物、法人)、ανθρώπινο γένος(人類)。
英語の anthropology(人類学)、philanthropy(博愛)、misanthropy(人間嫌い)、anthropoid(類人猿の)など -anthrop- を含む語はすべて古代ギリシャ語 ἄνθρωπος をもとにした語。
ギリシャ語:νους
読み方:ヌス
ラテン文字:nous
古代ギリシャ語の νόος(心, 知性)から短縮された νοῦς を継承。前ソクラテス期の哲学で中心概念となり, アナクサゴラスは νοῦς を宇宙を統べる理性として位置づけた。現代の「精神, 心, 理性」の用法はフランス語 esprit, 英語 mind, ドイツ語 Geist からの意味借用で輪郭が整った。
同じ νοῦς の語族に νόηση(知覚, 思考), νοητικός(知的な), νοημοσύνη(知能), νοήμων(知性ある), διάνοια(思考能力, 知性), 合成語 εννοώ(意味する, 理解する), κατανοώ(把握する), παρανοώ(誤解する), δυσνόητος(理解しづらい)。
思考する主体を言うのは νους, 感情の「心」は καρδιά(心臓, 心), 魂や生命の「心」は ψυχή(魂), πνεύμα(霊)が担い, それぞれ英語の psyche, spirit に対応する。頭の働きを気軽に言うときは μυαλό(頭, 頭脳)が一般的。英語 noetic, noesis もこの νοῦς の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:χειμώνας
読み方:ヒモナス・ヒモーナス
ラテン文字:cheimonas
印欧祖語で「雪, 冬」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 χειμών(冬, 嵐)を経て, 中世ギリシャ語の χειμώνας を継承。ラテン語 hiems(冬), 英語 hibernate(冬眠する), サンスクリット Himalaya(「雪の住処」)も同じ語族。
派生に動詞 χειμωνιάζει(冬になる, 非人称), 形容詞 χειμωνιάτικος(冬の)。同じ語族に χειμερινός(冬季の, 改まった形), χειμέριος(冬の, 詩的), χειμάζομαι(冬を過ごす, 嵐に翻弄される), χειμαδιό(冬営地), χείμαρρος(急流, 激流)。合成語に διαχειμάζω(越冬する), ξεχειμωνιάζω(冬を過ごし終える), καταχείμωνο(真冬), βαρυχειμωνιά(厳しい冬)。
ギリシャ語:βραχίονας
読み方:ヴラヒオナス・ヴラヒーオナス
ラテン文字:vrachionas
古代ギリシャ語の βραχίων(腕)が、日常の腕を指す形としては早くに口語から消え、現代ギリシャ語に学術借用として戻って医学・解剖や書き言葉の硬い文脈で使う形に落ち着いた。古代の βραχίων は形容詞 βραχύς(短い)の比較級 βραχίων(より短いもの)と同形で、解剖学的に脚より「短い」肢として「腕」を指したと考えられている。フランス語 bras(腕), イタリア語 braccio(腕), スペイン語 brazo(腕)はいずれも同じ βραχίων からラテン語 brachium を経由して入った借用で、英語 brace(締め具、支え), embrace(抱きしめる), brachial(上腕の), brachiosaurus(ブラキオサウルス)も同系譜に連なる。日常の「腕」を指す μπράτσο も、イタリア語 braccio から戻ってきた再借用(αντιδάνειο)で、語根を共有する。
類義語に μπράτσο(腕、二の腕。イタリア語 braccio 由来の再借用で、日常の腕の呼び方として広く使う), χέρι(手、腕。指先から肩までを指す総称)。βραχίονας は肩から肘までの上腕や、機械・建築の腕状部分を指して、書き言葉や医学・解剖の硬い文脈で使う。派生に βραχιονικός(上腕の、腕の), βραχιονάκι(小さな腕。指小形)。合成語に αντιβραχίονας(前腕), λιμενοβραχίονας(防波堤、突堤), μοχλοβραχίονας(てこの腕), περιβραχιόνιο(腕章、腕輪), βραχιονοπλαστική(上腕形成術)。
ギリシャ語:μπράτσο
読み方:ラトゥソ・ラートゥソ
ラテン文字:bratso
イタリア語 braccio(腕)からの外来借用で、ギリシャ語を源とするイタリア語を経て再びギリシャ語に戻った再借用(αντιδάνειο)。イタリア語 braccio はラテン語 bracchium から、ラテン語 bracchium は古代ギリシャ語の βραχίων(腕。βραχύς「短い」の比較級から、前腕より「短い方」の意)から入った借用。古代ギリシャ語の βραχύς は印欧祖語で「短い」を表す語根にさかのぼり、英語 brace(補強具、つなぎ), embrace(抱きしめる), brachial(腕の、上腕の)はこの bracchium 系譜からラテン語・古フランス語を経由して入った借用で、μπράτσο と語根を共有する。
類義語に χέρι(手、腕。手先から腕全体まで広く指す), βραχίονας(腕、上腕。同じ βραχίων から継いだ学術借用で、解剖や公式の文脈で使う硬い形)。μπράτσο は肩から肘までの上腕や腕の力を指す形として広く使う。派生に μπρατσάκι(小さな腕、子どもの腕、水泳用のアームリング。指小形), μπρατσαράς(太く力強い腕の持ち主), μπρατσωμένος(筋骨たくましい), ξεμπρατσώνομαι(腕をまくる)。
ギリシャ語:οφθαλμός
読み方:オフサルモス・オフサルモース・オフタルモス・オフタルモース
ラテン文字:ofthalmos
古代ギリシャ語の ὀφθαλμός(眼)に由来。古代以前の由来は諸説あり、印欧祖語で「目」を表す語根に結びつける説もある。
日常の「目」は μάτι。οφθαλμός は医学や文語で使う。
派生語に οφθαλμία(眼炎), οφθαλμικός(眼の、眼科の)。合成語 οφθαλμίατρος(眼科医), οφθαλμολογία(眼科学), οφθαλμοσκόπιο(検眼鏡)。英語の医学用語 ophthalmology(眼科学), ophthalmic(眼科の)も ὀφθαλμός をもとにした造語。
ギリシャ語:ποταμός
読み方:ポタモス・ポタモース
ラテン文字:potamos
古代ギリシャ語の ποταμός(川)を継承。印欧祖語で「走る, 流れる」を表した語根から出た語。名詞にハイフンでつなげて「非常に長い〜」を表す合成表現(ταινία-ποταμός など)はフランス語 fleuve(大河)からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ποταμός の語族に ποτάμι(ふだんの会話で使う形), ποταμάκι(小さな川), ποταμίσιος(川の, 川沿いの), παραπόταμος(支流), 合成語 ιπποπόταμος(カバ, もとは「川の馬」), ποταμόψαρο(川魚), ποταμόπλοιο(川船), ποταμόκολπος(河口湾)。
英語 hippopotamus(カバ), potamology(河川学)もこの古代ギリシャ語 ποταμός から入った。日常では ποτάμι が広く使われ, ποταμός は地理や文学, 比喩表現で使うことが多い。
ギリシャ語:ωκεανός
読み方:オケアノス・オケアノース
ラテン文字:okeanos
古代ギリシャ語の ὠκεανός(大地を囲む大河, 大河の神)に由来。神話では大地を取り巻く一本の巨大な河であり, 同時にその河を擬人化したティタン神 Ὠκεανός の名でもある。現代の「大洋, 海洋」の用法はフランス語 océan, 英語 ocean, イタリア語 oceano からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὠκεανός の語族に ωκεάνιος(大洋の, 広大な), 合成語 ωκεανογραφία(海洋学), ωκεανογράφος(海洋学者), ωκεανοπόρος(大洋を渡る)。神話の Ωκεανός はウラノスとガイアの息子で, 妻は姉妹のテテュス, 娘たちは海のニンフ オケアニデス。
英語 ocean もラテン語 oceanus を経て同じ語源。海全般を言う θάλασσα(海)や岸から離れた沖の πέλαγος(外洋, 沖)に対し, ωκεανός は太平洋や大西洋のような大陸を隔てる大水域に使う。
ギリシャ語:γιατρός
読み方:ヤトゥロ・ヤトゥロー
ラテン文字:giatros
古代ギリシャ語の ἰατρός(医者。動詞 ἰάομαι「治療する、癒やす」から行為者を作る接尾辞 -τρός を付けた形)を継承。中世ギリシャ語で語頭の無アクセント i- が後続母音との衝突を避けて滑音 [j] となり、γ- が前接して γιατρός の形が生まれた。古形 ἰατρός もそのまま ιατρός として学術借用で残り、改まった場面や医学用語で用いられる。英語の接頭辞 iatro-(治療)や接尾辞 -iatry(psychiatry「精神医学」), -iatrics(pediatrics「小児科学」)はこの ἰατρός を新ラテン語経由で受け継いだ学術借用。
類義語に ιατρός(医者。古形を保った硬い形で、公式・学術の文脈で使う)。γιατρός は医者を指すふつうの形として広く使う。文法上は男性名詞だが、男女共通の通性名詞として用いられ、冠詞で性を区別する(ο γιατρός / η γιατρός)。俗語的な女性形に γιατρίνα, γιάτρισσα, γιατρέσα。派生に γιατρεύω(治療する、癒やす), γιατρικό(薬、治療法), γιατρειά(治療、治癒), γιατρείο(診療所), αγιάτρευτος(治せない、不治の)。合成語に οδοντογιατρός(歯科医), τρελογιατρός(精神科医。俗称), γιατροσόφι(民間療法), γιατροπορεύω(治療する、世話をする)。
ギリシャ語:αέρας
読み方:アエラス・アエーラス
ラテン文字:aeras
印欧祖語で「夜明け, 東」を表す語根にさかのぼり, もとは「朝もや」を指した古代ギリシャ語の ἀήρ(下層の空気, 霧)を継承。やがて空気一般を指すようになり, 対格形 ἀέρα から主格が再形成され, 中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた。ラテン語 aurōra(夜明け)は同じ語根から出た同源の語。英語の接頭辞 aero-(aeroplane「飛行機」)や名詞 air(空気)はこの ἀήρ を借用要素として受け継いでいる。雰囲気・堂々とした態度の意味は, フランス語 air からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)。
類義語に αγέρας(風。詩歌や民謡の中で使う古風な形), άνεμος(風。気象や文芸の文脈で使う硬い形), ατμόσφαιρα(大気、空気感)。αέρας は空気・風を指すふつうの形として広く使う。派生に αεράκι(そよ風。指小形), αέριος(気体の), αέρινος(空気のように軽い), αερίζω(風を通す、換気する), αερικό(風の精、妖精), αεράτος(風通しのよい、のびやか), ανάερος(空中の)。合成語に αεροπλάνο(飛行機), αεραντλία(空気ポンプ), αερολιμένας(空港), αεροδρόμιο(飛行場), αεροπόρος(飛行士), αερόσακος(エアバッグ)。
ギリシャ語:χρόνος
読み方:フロノス・フローノス
ラテン文字:chronos
古代ギリシャ語の χρόνος(時間、期間、時代、年)を継承。さらなる起源は確かでなく、古来さまざまな語との結びつけが試みられてきたが定説はない。
派生・複合語に χρονικός(時間の、年代記の)、χρονικό(年代記)、χρονολογία(年代学、年代順)、χρονόμετρο(クロノメーター、ストップウォッチ)、χρονοδιάγραμμα(スケジュール、工程表)、χρονοτριβή(時間の浪費、遅滞)、χρονογράφος(年代記作者、コラムニスト)、σύγχρονος(同時代の、現代の)、συγχρονίζω(同期させる)、διαχρονικός(通時的な、時代を超えた)、αναχρονισμός(時代錯誤)など。関連語に χρονιά(年、一年)、ώρα(時刻、1時間)。
英語 chronology(年代学)、chronological(年代順の)、chronic(慢性の)、chronicle(年代記)、chronometer(クロノメーター)、chronograph(クロノグラフ)、anachronism(時代錯誤)、synchronize / synchronous(同期する、同時の)、diachronic(通時的な)も同じ古代ギリシャ語 χρόνος をもとにした学術語。
ギリシャ語:θάνατος
読み方:サナトス・サーナトス・タナトス・ターナトス
ラテン文字:thanatos
古代ギリシャ語の θάνατος(死)を継承。印欧祖語で「死ぬ」を表す語根に続き, 動詞 θνῄσκω(死ぬ)から名詞を作る接尾辞 -τος で作られた語。同じ作り方で βίοτος(命, 生活)も作られた。
派生に θανατηφόρος(死を招く, 致命的な), θανατώνω(死なせる, 処刑する), θανάσιμος(致命的な)。否定の α- を付けた αθάνατος(不死の, 不滅の)は合成語で, 動詞 θνῄσκω から作られた θνητός(死すべき)は同じ語族の兄弟。英語 thanatology(死生学)や euthanasia(安楽死, εὖ「良い」+ θάνατος)はこの語から作られた学術借用語。
対義語は ζωή(命, 生命)。近い語に απώλεια(喪失, 人の死にも使う), χαμός(失うこと, 死)。死を擬人化した Χάρος(死神)は, ギリシャ神話の冥府の渡し守カローン (Χάρων) に由来する。
ギリシャ語:κύριος
読み方:キリオス・キーリオス
ラテン文字:kyrios
古代ギリシャ語の κύριος(権限を持つ者、支配者)に由来。κῦρος(権威、力)に -ιος が付いてできた語。男性への丁寧な敬称・呼びかけとしての用法は、中世ギリシャ語を経てフランス語 monsieur、イタリア語 signore からの意味借用で広まった。「紳士」としての用法は英語 gentleman からの意味借用で加わった。
派生した κυριακόν(主の家)は、ゲルマン語を経て英語 church(教会)の語源になった。「キリエ・エレイソン(主よ、憐れみたまえ)」の Kyrie は呼格 κύριε にあたる。
女性形は κυρία(女性への敬称)。
ギリシャ語:θεός
読み方:セオス・セオース・テオス・テオース
ラテン文字:theos
古代ギリシャ語の θεός(神)を継承。印欧祖語で「置く, 為す」を表す語根に続き, ラテン語 feriae(祭日), fanum(神殿), festus(祝祭の)と同じ語族の仲間。古代の多神教の神々から, ビザンティン以降はキリスト教の唯一神を指す語として引き継がれた。
派生に θεϊκός(神聖な, 素晴らしい), 指小形 θεούλης(神さま。親しみを込めた言い方)。女性形は θεά(女神)。合成語 αποθεώνω(神格化する, 絶賛する)は από- と θεός から作られた動詞。英語 theology(神学), theism(有神論), atheist(無神論者), enthusiasm(熱狂。もとは「神が内に宿る」の意), apotheosis(神格化)はこの語族から作られた学術借用語。
キリスト教における神の呼称には Κύριος(主), Κτίστης(創造主), Πλάστης(造り主)がある。θεότητα は神性や神格を指し, 多神教の個別の神にも使う。
ギリシャ語:βίος
読み方:ヴィオス・ヴィーオス
ラテン文字:vios
古代ギリシャ語の βίος(人生、生き方、生涯)に由来。印欧祖語で「生きる」を表した語根の子孫で、同じ語根からラテン語 vivus(生きている)、サンスクリット語 jīvati(生きる)が出る。ζωή も同じ語根から並んで出た兄弟語。
同じ語群に βιώνω(生きる、体験する)、βιώσιμος(持続可能な、生きていける)。合成語に βιογραφία(伝記)、βιολογία(生物学)、βιομηχανία(工業)、βιοηθική(生命倫理)、βιοτεχνία(手工業)。中性名詞 βιος(財産、資産)は同じ綴りでアクセント位置が違う別語で、中世に「生計を支えるもの」から転じて出た。
βίος と ζωή は古代から意味が分かれ、前者は生き方や暮らし、後者は生きている状態や生命力の場面に使われた。コイネー期に新約聖書が永遠の命(ζωή αἰώνιος)など霊的な命に ζωή を集中的に当てたことで、生き方・経歴の用法は βίος に集まっていった。英語 biology(生物学)、biography(伝記)、biosphere(生物圏)、antibiotic(抗生物質)は βίος をもとにした学術造語で、同じ語根につながる。
ギリシャ語:αστέρας
読み方:アステラス・アステーラス
ラテン文字:asteras
印欧祖語で「星」を表す語根にさかのぼり, 英語 star と同じ語根を共有する古代ギリシャ語の ἀστήρ(星)を継承。中世ギリシャ語で αστέρας の形になり, 今に至る。英語 astronomy は古代ギリシャ語 ἄστρον(星)と νόμος(法則, 秩序)の合成語に, asterisk は ἀστήρ の指小形 ἀστερίσκος(小さな星)にラテン語を経由してさかのぼる。
類義語に αστέρι(星。ふだんの会話で最も一般), άστρο(星。文学や詩でよく出る)。αστέρας は硬い響きで、天文学や著名人を指す比喩、格付けの星の属格複数 αστέρων の形で使うことが多い。派生に ημιαστέρας(クエーサー、半恒星状天体)。関連語に αστερισμός(星座), αστεροειδής(小惑星), αστρικός(星の、星形の), αστρονομία(天文学), αστροναύτης(宇宙飛行士)。
ギリシャ語:πυρετός
読み方:ピレトス・ピレトース
ラテン文字:pyretos
古代ギリシャ語の πυρετός(燃えるような熱, 熱病)を継承。πυρ(火)に状態を表す -ετός が付いた語で, 体が燃えるように熱くなる状態から発熱や熱病を指す。比喩の「熱狂, 興奮」の用法は, フランス語 fièvre からの意味借用で加わった。
英語 pyretic(熱病の)は同じ語族の仲間。派生に πυρετικός(熱病の), πυρετούλης(微熱)。同じ πυρ- の語族には πυρέσσω(熱病にかかる)から作られた πυρεξία(発熱状態), さらにその派生 υπερπυρεξία(過高熱)。
医学の同義語に πυρεξία。θερμότητα(熱, 熱さ)は物理的な熱エネルギーや温度の高さを指し, πυρετός の病的な発熱とは区別される。関連に υποθερμία(低体温症), υπερθερμία(高体温症)。
ギリシャ語:δρόμος
読み方:ドゥロモス・ドゥローモス
ラテン文字:dromos
古代ギリシャ語の δρόμος(走ること、走る場所、コース)を継承。動詞 τρέχω(走る)と同じ印欧祖語で「走る」を表す語根に由来し、古代では走ることや競走路を意味したが、しだいに「人が通る道」「道路」の意味が中心になった。英語には -drome として入り、hippodrome(競馬場)、aerodrome(飛行場)、velodrome(自転車競技場)、syndrome(症候群。syn- + -drome)などに使われる。
指小語 δρομάκι(路地、小さな道)のほか、合成語として αυτοκινητόδρομος(高速道路)、πεζόδρομος(歩行者専用道路)、χωματόδρομος(未舗装道路)、ιππόδρομος(競馬場)、αεροδρόμιο(空港)など -δρομος, -δρόμιο 系が豊富。類義語では、οδός は改まった語で住所の通り名(οδός Σταδίου「スタディウ通り」)や行政の文脈に使い、σοκάκι(路地)は市街地の建物のあいだの狭い路地、μονοπάτι(小道)は田園や山の歩行者用の小道を指す。
ギリシャ語:ήλιος
読み方:イリョ・イーリョ
ラテン文字:ilios
印欧祖語で「太陽」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の ἥλιος(太陽)を継承。ラテン語 sol、英語 sun、ドイツ語 Sonne は同じ語根の別系統。
派生語に ηλιακός(太陽の), ηλιοθεραπεία(日光浴), ηλιοστάσιο(至点), λιάζομαι(日なたぼっこをする)など。関連語に ηλίανθος(ヒマワリ、ήλιος + άνθος「花」の合成語で、口語では ήλιος だけでも呼ぶ), φως(光)。英語 helium は太陽のスペクトルで発見された元素で、ラテン語経由で ἥλιος をもとにした語。heliocentric(太陽中心の), heliosphere(太陽圏)なども同じ語源。
ギリシャ語:καπνός
読み方:カプノス・カプノース
ラテン文字:kapnos
古代ギリシャ語の καπνός(煙)を継承。印欧祖語で「煙、沸騰、激しい動き」を表す語根に遡るとされる。古代から現代まで基本の意味は「煙」で、そこから植物のタバコや、乾燥・加工した喫煙用のタバコ製品も指す用法が加わった。
派生語に κάπνισμα(喫煙), καπνίζω(喫煙する、燻す), καπνιστής(喫煙者), καπνιστός(燻製の), καπνοδόχος(煙突)。接頭辞 καπνο- で καπνοβιομηχανία(タバコ産業), καπνοκαλλιέργεια(タバコ栽培), καπνοπωλείο(タバコ店)などの合成語を作る。口語で部屋に立ち込める濃い煙は、トルコ語由来の ντουμάνι とも言う。英語の医学用語 hypercapnia(高炭酸ガス血症), hypocapnia(低炭酸ガス血症)の -capnia は、この καπνός を受け継いだ語根。
ギリシャ語:θάμνος
読み方:サムノス・サームノス・タムノス・タームノス
ラテン文字:thamnos
古代ギリシャ語の θάμνος(低木, 茂み)に由来。ギリシャ語以前の基層から古代ギリシャ語に入ったとされる語で, 同じ語族に θαμινός(ぎっしり詰まった), θαμά(しばしば)。
派生に θαμνώδης(低木状の)。合成語に θαμνοσκεπής(低木に覆われた)。
δέντρο(木, 樹木)が一定以上に育って主幹を持つ木を指すのに対し, θάμνος は地面に近い位置から枝分かれする低木を言う。χαμόδεντρο(低木)は「低い + 木」の合成語で同じ範囲を指し, とげのある藪には βάτος(キイチゴ, イバラの類)を使う。
ギリシャ語:ξυλάνθρακας
読み方:クシランスラカス・クシラーンスラカス・クシラントゥラカス・クシラーントゥラカス
ラテン文字:xylanthrakas
古代ギリシャ語の ξύλον(木)と ἄνθραξ(炭、石炭)を組み合わせて作られた学術借用で、フランス語 charbon de bois(木炭)の意味を写した翻訳借用。アカデミー辞書は「επίσημο(正式)」と扱い、化学や工業の文脈によく出る。
類義語に ξυλοκάρβουνο(木炭、炭。話し言葉で日常的に使う)。関連語に άνθρακας(炭素、炭疽、炭疽病)。英語の anthracite(無煙炭)や anthrax(炭疽)も、この ἄνθραξ を起源とする。
ギリシャ語:άνθρακας
読み方:アンスラカス・アーンスラカス・アントゥラカス・アーントゥラカス
ラテン文字:anthrakas
古代ギリシャ語の ἄνθραξ(石炭、木炭、燃える炭)に由来。中世ギリシャ語 άνθρακας を経て今に至る。化学の「炭素」の意味はフランス語 carbone(ラヴォワジエの命名)からの意味借用で、現代に加わったもの。英語 anthrax(炭疽), anthracite(無煙炭)も ἄνθραξ を起源とする。英語 carbon は同じ炭を指すが、ラテン語 carbō(熾火)に由来するフランス語 carbone からの借用で、語源的には別系統。
燃料の炭・石炭を言うときは κάρβουνο(炭、石炭、木炭)がふつうで、άνθρακας は化学・医学・農学で使う学術的な語。合成語の核にもなり、ξυλάνθρακας(木炭、木炭末), γαιάνθρακας(石炭), λιθάνθρακας(無煙炭), υδατάνθρακας(炭水化物), υδρογονάνθρακας(炭化水素)などを作る。απανθρακώνω(完全に焼く、炭にする)にも同じ語幹。
ギリシャ語:σπινθήρας
読み方:スピンシラス・スピンシーラス・スピンティラス・スピンティーラス
ラテン文字:spinthiras
古代ギリシャ語の σπινθήρ(火花)から。さらに、印欧祖語で「輝く、光る」を意味する語根につながると考えられている。英語の spinthari- や、放射線計測器の spinthariscope(スピンサリスコープ、閃光計)にも、同じ古代ギリシャ語の語根が見られる。
類義語に σπίθα(火花) がある。物理的な火花という意味ではほぼ同じだが、σπινθήρας のほうがより科学的・専門的な響きを持つ。
主な意味は火花。文語的な響きを持つことがあり、科学技術分野では電気的な火花にも使われる。比喩的には、物事の発端や原因、きらめきを指すこともある。
複合語では ηλεκτρικός σπινθήρας が電気火花を表す。現代のこの用法は、英語の spark やフランス語の étincelle の影響で広がったものと考えられる。異なる極性を持つ二つの電荷が結びつくときの発光を指し、英語の electric spark やフランス語の étincelle électrique に当たる。
ギリシャ語:καιρός
読み方:ケロス・ケロース
ラテン文字:keros
ギリシャ語:σκύλος
読み方:スキロス・スキーロス
ラテン文字:skylos
ギリシャ語:ηλίανθος
読み方:イリアンソス・イリーアンソス・イリアントス・イリーアントス
ラテン文字:ilianthos
ギリシャ語:πετεινός
読み方:ペティノス・ペティノース
ラテン文字:petinos
動詞 πέτομαι(飛ぶ)から派生した古代ギリシャ語の形容詞 πετεινός(翼のある, 飛べる)を継承。のちに名詞に転じて雄鶏を指すようになった。
派生の指小形に πετεινάρι(若い雄鶏)。合成語に λυροπετεινός(クロライチョウ)。日常で雄鶏を指すのは κόκορας で、πετεινός は文学や伝統的な言い回しに出る。
πέτομαι の印欧祖語の語根は「飛ぶ、翼を広げる」を表す。同じ語根からラテン語 penna(羽)が生まれ、英語 pen(もとは羽ペン)はこれを経て入った。