ギリシャ語:ασβεστόλιθος
読み方:アズヴェスソリトス・アズヴェスソーリトス・アズヴェストリトス・アズヴェストーリトス
ラテン文字:asvestolithos
#宝石・鉱物 該当語 36 件。単語の詳細は各ページで確認できます。
ギリシャ語:ασβεστόλιθος
読み方:アズヴェスソリトス・アズヴェスソーリトス・アズヴェストリトス・アズヴェストーリトス
ラテン文字:asvestolithos
ギリシャ語:ηφαιστειακή πέτρα
読み方:イフェスティアキペトゥラ・イフェスティアキーペトゥラ
ラテン文字:ifaisteiaki petra
ギリシャ語:ζαφειρένιος
読み方:ザフィレニョス・ザフィレーニョス
ラテン文字:zafirenios
ζαφείρι(サファイア)に、素材や性質を表す形容詞接尾辞 -ένιος が付いた形。宝石そのものに関わる意味のほか、サファイアを思わせる青色にも使う。
μπλε(青)は青全般を指す語。ζαφειρένιος は宝石に基づく色名で、深く澄んだ青を表す。宝石由来の色名としては σμαραγδένιος(エメラルド製の、エメラルド色の)などと並ぶ。
ギリシャ語:γρανάτης
読み方:グラナティス・グラナーティス
ラテン文字:granatis
近代ヨーロッパ語の宝石名 garnet(英語)/ grenat(フランス語)/ granato(イタリア語)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)に、ギリシャ語の男性名詞語尾 -ης を付けて整えた近代の宝石・鉱物名。源の系譜は中世ラテン語 granātum / granātus(ザクロのような、ザクロ色の、← ラテン語 grānum「種、粒」)にあり、ザクロの実の形と色がガーネットの結晶の形と色に似ていることから、中世ヨーロッパで「ザクロ石」と命名された経緯を持つ。
源にあるラテン語 grānum(種、粒、穀粒)は、印欧祖語の「粒、芽」を表す語根に由来し、英語 grain(穀粒、種、繊維), granule(顆粒), granary(穀物倉), granite(花崗岩、← 「粒の集まった石」), pomegranate(ザクロ、← pōmum「果実」+ grānātum「粒の多い」)と同族。古代ギリシャ語の対応概念は κόκκος(粒、種、ガーネット、← 古代ギリシャ語 κόκκος「ケルメスカイガラムシの実、種、粒」、英 coccus, coccoid と同根)で、現代ギリシャ語の κόκκινος(赤、← 「ケルメスの赤」)も同じ語族。
ガーネットはザクロの実のように赤く粒状に集まる結晶を持つことから、地中海・ヨーロッパでザクロ石と呼ばれた経緯:英語 garnet, フランス語 grenat(「ザクロ色の」), イタリア語 granato, ドイツ語 Granat, スペイン語 granate, ロシア語 гранат granat(ガーネットとザクロの両方を意味する)が並走する、ヨーロッパ各語の宝石名の中核。Tri 辞典には γρανάτης のエントリーが見当たらないが、語形と意味から近代の借用と判断される、宝石・鉱物の専門語彙の一つ。
地質学・鉱物学の用語としては、γρανάτης は宝石として赤色のガーネット(特に Pyrope パイロープ、Almandine アルマンディン)を中心に指すが、鉱物学的にはガーネット族(Garnet group)の珪酸塩鉱物の総称で、化学組成の違いで多様な色を持つ:赤色(Pyrope, Almandine), オレンジ色(Spessartine), 緑色(Andradite, Demantoid Garnet), 黄色(Hessonite), 黒色(Melanite)など、宝石学・鉱物学の領域で多様な変種が知られる。
派生・関連語族として γρανάτη(ガーネット石、女性名詞形でも使われる), γρανατένιος(ガーネットの、形容詞), βυσσινιά γρανάτη(暗赤色のガーネット), πέτρα γρανάτη(ガーネット石), σκουλαρίκια με γρανάτη(ガーネットのイヤリング), δαχτυλίδι με γρανάτη(ガーネット指輪), γρανατί(ガーネット色、不変化色語、口語)。
ガーネットは古代から珍重されてきた宝石の一つで、エジプトのファラオの墓、ローマ帝国の貴族の装飾品、ビザンツの聖具、中世の十字軍の装備、19 世紀ヴィクトリア朝のジュエリーまで、長い歴史を持つ。1 月の誕生石として知られ、古来から「保護」「忠誠」「強さ」の象徴として信仰された宝石。
同じ赤色系の宝石の領域には、近い宝石として ρουμπίνι(ルビー、← 英 ruby), αμέθυστος(アメジスト、紫水晶、← 古代 ἀμέθυστος「酔わない」), αχάτης(瑪瑙、メノウ), σαρδόνυχας(サルドニクス、紅縞瑪瑙), ζιρκόν(ジルコン)が並び、宝石学の体系の中で位置づけられる。
ギリシャ語:γρανίτης
読み方:グラニティス・グラニーティス
ラテン文字:granitis
フランス語 granite(花崗岩)からギリシャ語に入った学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)に、ギリシャ語の男性名詞語尾 -ίτης を付けて整えた近代の鉱物名。源にあるフランス語 granite は、イタリア語 granito(粒状の、← granire「粒にする」)の借用で、さらにラテン語 grānum(種、粒)を語源とする系譜にある。「粒状の集合体」を意味する形容詞が、花崗岩の特徴的な粒状の見た目から鉱物名として確立された経緯を持つ。
源にあるラテン語 grānum(種、粒、穀粒)は、印欧祖語の「粒、芽」を表す語根に由来し、英語 grain, granule, granary, granite, pomegranate(ザクロ、← 「粒の多い果実」)と同族。ヨーロッパ各語の「花崗岩」語彙はこのラテン語 grānum 系の系譜で、英語 granite, フランス語 granit / granite, スペイン語 granito, イタリア語 granito, ドイツ語 Granit が並走する、近代鉱物学の国際語の中核。
地質学の用語として近代に整備された γρανίτης は、18 世紀末から 19 世紀の地質学・鉱物学の発達に伴って、ヨーロッパの科学・建材業界の語彙が国際的に標準化される過程でギリシャ語にも取り入れられた。地質学者 James Hutton(1726-1797)の『地球の理論』(1795 年)以降、火成岩の主要な分類として花崗岩が中核的な岩石種類として認識されるようになり、現代の地質学・建材業界の中核概念として確立された。
地質学的には、γρανίτης は深成岩(プルトン岩)の代表的な岩石で、主成分は石英(χαλαζίας), カリ長石(άστριος、αλκαλικός άστριος), 斜長石(πλαγιόκλαστος), 雲母(μίκα)から成る。地下深部でゆっくり冷えて固まったマグマから生成される結晶質の岩石で、硬度・耐久性・美観に優れることから、古代から建材・墓石・記念碑・装飾石材として広く使われてきた。
派生・関連語族として γρανιτένιος / γρανιτένιος(花崗岩の、形容詞), γρανιτικός(花崗岩の、書きことば), γρανιτοσχηματισμός(花崗岩形成), γρανιτικός όγκος(花崗岩の岩塊), γρανιτόπλακα(花崗岩の板、タイル), πάγκος γρανίτη(花崗岩のカウンター), γρανίτης Καβάλας(カヴァラの花崗岩), μαύρος γρανίτης(黒花崗岩), ροζ γρανίτης(ピンク花崗岩)。
接尾辞 -ίτης は、古代ギリシャ語以来の生産的な造語要素で、岩石・鉱物の名前をつくる中心的な造語要素。同じパターンで作られた語族には、γαληνίτης(方鉛鉱、ガレナ), αμίαντος(アスベスト、← α- + μιαίνω「汚れる」, 「汚れない」が原義), σιδηρίτης(褐鉄鉱、← σίδερο「鉄」+ -ίτης), μαρμαρίτης(大理石の派生語), οψιανός(黒曜石、← ラ obsidianus), χαλαζίτης(石英岩)が並ぶ、近代鉱物学の語彙の中核を形成する。
ギリシャの地質では、北部マケドニア(カヴァラ Καβάλα、ドラマ Δράμα), ロドス島、エーゲ海諸島の一部に花崗岩の地質帯があり、古代から石材の採掘地として知られる。アテネのパルテノン神殿は主に大理石(μάρμαρο)で建てられているが、ギリシャの墓石・記念碑・近代建築の基礎・カウンターなどに花崗岩が広く使われる。
同じ岩石・鉱物の領域には、近い概念として μάρμαρο(大理石), αμμόλιθος(砂岩), ασβεστόλιθος(石灰岩), σχιστόλιθος(片岩), βασάλτης(玄武岩), οψιανός(黒曜石)が並び、地質学・建材学の岩石分類体系の中で位置づけられる。γρανίτης は深成岩・建材石材の中心語として、近代地質学の語彙の中核を担う。
近代の食品名としては、イタリア語 granita(グラニータ、シシリーの伝統的な氷菓)が別系統で借用されており、ギリシャ語 γρανίτα(カキ氷、シャーベット)として広まっている。同じラテン語 grānum 起源で、「粒状の氷」を意味する別ルートの借用語として並走する、興味深い同源異種の例。
ギリシャ語:μάρμαρο
読み方:マルマロ・マールマロ
ラテン文字:marmaro
古代ギリシャ語の男性名詞 μάρμαρος(光輝, 光る石, 印欧祖語で「輝く」を表す語根にさかのぼる説がある)が女性形を経て中性 μάρμαρον(大理石)となり, 語尾 -ον が脱落して現代ギリシャ語の μάρμαρο に至った。同じ語根に動詞 μαρμαίρω(輝く, きらめく)もある。英語 marble はラテン語 marmor を経て同じ μάρμαρος にさかのぼる。
派生に μαρμάρινος(大理石の), μαρμαρένιος(大理石の, 大理石のように冷たい), μαρμαράς(大理石職人), μαρμαράδικο(大理石加工場), μαρμαρώνω(大理石にする, 凍りつかせる), μαρμαρυγή(きらめき, 輝き), μαρμαρόσκονη(大理石の粉)。合成語に μαρμαρογλύπτης(大理石彫刻家), μαρμαρογλυπτική(大理石彫刻), μαρμαρόστρωση(大理石舗装), καλλιμάρμαρος(美しい大理石の)。
ギリシャ語:ορυκτό
読み方:オリクト・オリクトー
ラテン文字:orykto
古代ギリシャ語 ὀρυκτός(掘り出された、← 動詞 ὀρύσσω「掘る、採掘する」+ -τός 動詞形容詞接尾辞)の中性形 ὀρυκτόν を、近代以降に書きことばから名詞化して再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)に、フランス語 minéral(鉱物)の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の層を併せ持つ近代地質学用語。
源にある古代の動詞 ὀρύσσω(掘る、採掘する、発掘する)は、印欧祖語の「引き裂く、掘る」を表す語根に由来し、ラテン語 runcō(掘る、土を削る、別系統だが類似概念)と関連する。古代ギリシャ語の ὀρύσσω は、ホメロスの『イーリアス』以来、地面・墓・井戸・坑道を「掘る」動作を表す中核動詞で、現代まで広範な派生語族が継承される。
古代ギリシャ語 ὀρύσσω からの派生語族は、現代まで広範に展開する:ορυκτός(掘り出された、鉱物の、形容詞), ορυκτό(鉱物、中性形が名詞化), ορυχείο(鉱山、採掘場、← ὀρύσσω + -χεῖον 場所接尾辞), ορυκτολογία(鉱物学、← 仏 oryctologie の翻訳借用), ορυκτολόγος(鉱物学者), ορυκτογεωλογία(鉱物地質学), μεταλλείο(金属鉱山)。
近代地質学・鉱物学の用語として、19 世紀の地質学・鉱物学の発達とともに整備された。フランス語の orycto-(鉱物の、← 古代ギリシャ語 ὀρυκτός)系の合成語が 18-19 世紀に近代造語として作られ、それを翻訳借用したギリシャ語の ορυκτο- 系の語族(ορυκτολογία「鉱物学」, ορυκτολογικός「鉱物学の」, ορυκτολόγος「鉱物学者」)が現代ギリシャ語に整備された。Tri 注記が示すように、ορυκτό 自体も「鉱物」の意味として、フランス語 minéral の意味用法を取り込んだ意味借用の側面を持つ。
接尾辞 -τός は、古代ギリシャ語以来の生産的な動詞形容詞接尾辞で、動詞語幹に付いて「〜された、〜できる」を表す形容詞をつくる。同じパターンで作られた語族には、γραπτός(書かれた、← γράφω), γνωστός(知られた、← γιγνώσκω), λεκτός(数えられた、← λέγω), ορατός(見える、← ὁράω), χρηστός(用立つ、← χρή)が並び、極めて広範な動詞派生形容詞の系列を成す。
派生・関連語族として ορυκτά(複数形、鉱物群), ορυκτός πλούτος(鉱物資源、鉱物資源財), ορυκτό δείγμα(鉱物標本), σπάνιο ορυκτό(希少鉱物), ραδιενεργό ορυκτό(放射性鉱物), ορυκτή πρώτη ύλη(鉱物原料), συλλογή ορυκτών(鉱物コレクション), ορυκτολογική μελέτη(鉱物学研究), ορυκτολογικό μουσείο(鉱物博物館), ορυκτολογική ανάλυση(鉱物学的分析)。
地質学・鉱物学的には、鉱物(mineral)は、自然界に存在する均質な化学組成と結晶構造を持つ無機物質と定義される。現在約 5,500 種類の鉱物が国際鉱物学連盟(IMA)に登録されており、岩石(pétra, βράχος), 土壌(χώμα), 鉱石(μετάλλευμα)の構成要素として、地球科学の中核を成す。
ギリシャの地質では、ボーキサイト(αλουμίνιο の原料), マグネサイト, クロム鉱, 大理石(μάρμαρο、特にパロス・ペンテリ・ティノス産), ニッケル鉱, 銅鉱が主要な ορυκτοί πόροι(鉱物資源)として、近代の重要な経済資源となっている。
同じ「自然物質・鉱物」の領域には、近い概念として λίθος(石、宝石、試金石、結石), μέταλλο(金属), μετάλλευμα(鉱石), βράχος(岩、大岩), πέτρα(石), κρύσταλλος(結晶、水晶)が並び、それぞれの物質形態・サイズ・用途で言い分けられる。ορυκτό は最も包括的・科学的な「鉱物」の概念語として、地質学・鉱物学・経済地理学の中核を担う。
ギリシャ語:τοπάζι
読み方:トパジ・トパージ・トパズィ・トパーズィ
ラテン文字:topazi
古代ギリシャ語の τοπάζιον(トパーズ)から。もとは τόπαζος に -ιον が付いた形で、ラテン語 topazus / topazion を経て英語 topaz などにも入った。
この名は、紅海の島 Τοπάζιος と結びつけて説明されることが多い。古代文献の「トパーズ」は現在の鉱物学でいうトパーズとは限らず、ペリドットや黄色いオリビンなど、別の黄色い石を指した可能性もある。
近代鉱物学では、αλουμίνιο(アルミニウム)とフッ素を含むケイ酸塩鉱物を指す。黄色系の石として知られるが、無色、青、ροζ(ピンク)などもある。
宝石全般には λίθος(石、宝石)や πέτρα(石)も使う。関連する宝石名には σμαράγδι(エメラルド)、ρουμπίνι(ルビー)、ζαφείρι(サファイア)、ακουαμαρίνα(アクアマリン)などがある。
ギリシャ語:ήλεκτρο
読み方:イレクトゥロ・イーレクトゥロ
ラテン文字:ilektro
古代ギリシャ語 ἤλεκτρον(輝くもの, 琥珀)に由来。古代では琥珀のほか金と銀の天然合金(エレクトラム)も指した。擦ると静電気を帯びる琥珀の性質にちなみ, 近代に英語 electricity(電気), electron(電子)が作られ, 現代ギリシャ語ではそこから逆輸入する形で電気関係の語彙が広がった。
派生に ηλεκτρίζω(帯電させる、しびれさせる)、ηλεκτρικός(電気の)、ηλεκτρισμός(電気)。合成語は ηλεκτρο- の形で作られ、ηλεκτρόνιο(電子)、ηλεκτρονικός(電子の)、ηλεκτρόλυση(電気分解)、ηλεκτρομαγνητικός(電磁気の)など電気・電子に関わる語群を形成する。
琥珀を指すときはトルコ語由来の κεχριμπάρι を使うことが多い。
ギリシャ語:οπάλιο
読み方:オパリョ・オパーリョ
ラテン文字:opalio
ヘレニズム期のギリシャ語 ὀπάλλιος / ὀπάλιος(オパール)を、近代以降に書き言葉から綴りを簡略化(απλοποίηση)して再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。男性形 οπάλιος と中性形 οπάλιο の両方が並存し、現代では中性が標準形だが、男性形も宝石店・鉱物情報の文脈ではよく使われる。
源にあるヘレニズム期の ὀπάλλιος は、サンスクリット उपल(upala、宝石、貴石、原石)からヘレニズム時代のインド・地中海交易を介してギリシャ語に入った東方起源の語と見られる。ラテン語に opalus として入り、英語 opal, フランス語 opale, ドイツ語 Opal, イタリア語 opale, スペイン語 ópalo など、ヨーロッパ各語の「オパール」語彙の源となった国際語。
派生に οπαλίνα(乳白色のガラス、オパリンガラス), οπαλένιος(オパール製の、オパール色の), οπάλινος(オパール色の、虹色光沢のある)。鉱物学的には非晶質のシリカ(二酸化ケイ素)からなる宝石で、内部に含まれる微細な水分粒子による光の干渉が虹色の遊色効果を生み出す。同じ宝石・鉱物の語族として αμέθυστος(アメシスト), ζαφείρι(サファイア), ρουμπίνι(ルビー), ζαμπίρι(緑柱石)が並ぶ。
ギリシャ語:κεχριμπάρι
読み方:ケフリバリ・ケフリバーリ・ケフリンバリ・ケフリンバーリ
ラテン文字:kechrimpari
トルコ語 kehribar(琥珀)にギリシャ語の中性語尾 -ι がついた外来借用(δάνειο)。さらにトルコ語の元はペルシャ語 کهربا(kahrubā、文字どおり「藁を引きつけるもの」、kāh「藁」+ rubā「引きつける、奪う」)にさかのぼる。琥珀は擦ると静電気を帯びて藁などの軽いものを引きつける性質があり、その性質がそのまま名前になった、世界の言語学史で有名な命名例の一つ。
古代ギリシャ語では同じ琥珀を ἤλεκτρον(エーレクトロン)と呼び、これも擦ると引きつける性質に注目した命名と見られる。中世以降ペルシャ語・トルコ語経由で κεχριμπάρι が日常語として定着し、古代の ἤλεκτρον は学術借用として ήλεκτρο の形で残るが、対の関係で語の重みが分かれている。なお、近代の物理学・電気の用語 ηλεκτρισμός(電気)、ηλεκτρόνιο(電子)、electric、electricity、electron などはすべてこの ἤλεκτρον からの派生で、琥珀の静電気の発見が電気現象の研究の出発点になった歴史を反映している。
ペルシャ語 kahrubā は中世イスラム世界の通商で広く知られ、アラビア語 كهرباء(kahrabāʾ)を経て、現代アラビア語ではこの語が「電気」の意味でも使われる。トルコ語 kehribar, ブルガリア語 кехлибар, ルーマニア語 chihlimbar など、東地中海・バルカン諸語にも共通の語源で広まった。
派生・関連語に乏しい外来語の典型で、宝石名・色名としての用法に限られる。「琥珀色の」を表す形容詞の代用として、不変化的に名詞 κεχριμπάρι を比喩で使う μάτια σαν κεχριμπάρι(琥珀色の目), κρασί κεχριμπάρι(琥珀色のワイン)のような連語が多い。
ギリシャ語:νεφρίτης
読み方:ネフリティス・ネフリーティス
ラテン文字:nefritis
ドイツ語 Nephrit(軟玉、ネフライト)からの外来借用(δάνειο)にギリシャ語の鉱物名接尾辞 -ίτης が一致する形で、近代鉱物学の術語として取り入れられた。ドイツ語 Nephrit 自体は古代ギリシャ語 νεφρός(腎臓)に鉱物・岩石の接尾辞 -it(古代 -ίτης 由来)を組み合わせた近代の造語で、ギリシャ語の素材で外国の科学者が造った国際語が再びギリシャ語に戻った αντιδάνειο の側面を併せ持つ。
近代鉱物学が成立する以前、この鉱物は「腎臓の病を治す石」として古来知られ、ヘレニズム期のギリシャ語に λίθος νεφρῖτις(腎臓の石、← νεφρός「腎臓」+ -ῖτις 形容詞接尾辞)の表現があった。中世から近代の地中海・ヨーロッパでは、腎結石・腎疝痛などの腎疾患に効くと信じて持ち歩く伝統があり、その薬効伝承がそのまま鉱物名となった。1789 年にフランス人鉱物学者アロイ・ド・サモンが lapis nephriticus を Nephrit として体系化し、近代の標準鉱物名として定着した。
英語 nephrite(ネフライト、軟玉)も同じ系統。同じ νεφρός から派生した医学用語に νεφρίτιδα(腎炎), 英語 nephritis, nephrology(腎臓学), nephron(ネフロン)などが並ぶ。
派生に乏しい鉱物学術語の典型で、宝石名・鉱物名としての用法に限られる。ίασπις(翡翠)を構成する 2 鉱物の一つで、もう一方の ιαδεΐτης(ジェダイト、硬玉)と区別される。色は白から濃緑色まで幅広く、中国・中央アメリカ・ニュージーランドなどで宝飾品・彫刻に古来用いられてきた。
ギリシャ語:ίασπις
読み方:イアスピス・イーアスピス
ラテン文字:iaspis
古代ギリシャ語の ἴασπις(色のある不透明な石)から。語源不詳の借用語で、エジプト語や西アジアの諸言語との関係が指摘される。
ラテン語 iaspis、古フランス語 jaspre を経て、英語 jasper(碧玉)の語源にもなった。碧玉は石英の不透明な変種で、赤、黄、茶、緑など、さまざまな色を持つ。一方、現代ギリシャ語の ίασπις は翡翠の訳語としても使われるため、英語 jasper とは指す石がずれる。
翡翠は νεφρίτης(軟玉)や ιαδεΐτης(硬玉)などの総称。νεφρίτης は νεφρός(腎臓)に由来し、腎臓の病に効く石とされたことにちなむ。ιαδεΐτης はスペイン語 piedra de ijada(脇腹の石)からフランス語 jade を経て入った語で、こちらも体の脇腹や腎臓の痛みに効く石という発想を背景にしている。
ギリシャ語:κρύσταλλο
読み方:クリスタロ・クリースタロ
ラテン文字:krystallo
κρύσταλλος の中性名詞形。
ギリシャ語:κρύσταλλος
読み方:クリスタロス・クリースタロス
ラテン文字:krystallos
古代ギリシャ語の κρύσταλλος(澄んだ氷、水晶)に由来。現代の「結晶」「ガラス製品」の意味はフランス語 cristal、英語 crystal からの意味借用で広がった。英語 crystal もラテン語 crystallus を経て同じ語源。
現代ギリシャ語では主に男性名詞で、まれに女性名詞としても使う。同じ意味の中性名詞 κρύσταλλο の形もある。
ギリシャ語:χαλαζίας
読み方:ハラジアス・ハラジーアス・ハラズィアス・ハラズィーアス
ラテン文字:chalazias
ヘレニズム期のギリシャ語 χαλαζίας(霰石、雹のような結晶)を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。古代ギリシャ語 χάλαζα(あられ、雹)に -ίας(〜のような、〜の性質を持つ)の接尾辞がついて派生した形で、結晶の粒状の見た目が霰に似ていることから命名された。
英語 chalaza(カラザ、卵黄をつなぎ止めるひも状の構造。転じて植物学で珠柄の付け根)も同じ古代の χάλαζα に由来する語。
派生に χαλαζιακός(石英の、石英質の), χαλαζίτης(珪岩、石英質変成岩)。χαλαζίας の品種にあたる宝石として αμέθυστος(紫水晶), αχάτης(瑪瑙), ορεία κρύσταλλος(水晶)など、貴石・半貴石として扱われるさまざまな品種がある。
ギリシャ語:αλεξανδρίτης
読み方:アレクサンドゥリティス・アレクサンドゥリーティス
ラテン文字:alexandritis
英語 alexandrite(アレクサンドライト)からの外来借用(δάνειο)。1830 年代にロシアのウラル山脈で発見されたクリソベリル(金緑石)の変種で、当時のロシア皇太子(後のアレクサンドル 2 世、1818-1881)にちなんで命名された。
語幹の Alexander はギリシャ語の人名 Ἀλέξανδρος(ἀλέξω「守る」+ ἀνήρ「男」、属格 ἀνδρός、文字どおり「人々を守る者」)に由来する。語尾の -ίτης は古代以来、鉱物・岩石の名前に多用される接尾辞で(たとえば πυρίτης「黄鉄鉱」, αιματίτης「赤鉄鉱、ヘマタイト」)、ヨーロッパの近代鉱物学が国際的な命名法として広く採用した。alexandrite はこの両方を組み合わせて造られた近代的な国際語で、ロシア語 александрит, フランス語 alexandrite, ドイツ語 Alexandrit などとともにギリシャ語にも入った。
最大の特徴は、光源によって色が変わる変色効果。自然光下では緑色、白熱灯などの人工光下では赤紫色に変わる稀有な性質を持つ。同じクリソベリル系の宝石にキャッツアイがある。
ギリシャ語:αμέθυστος
読み方:アメシストス・アメーシストス・アメティストス・アメーティストス
ラテン文字:amethystos
ヘレニズム期のギリシャ語 ἀμέθυστος(酔わない、酔わせない)を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。否定接頭辞 ἀ- と動詞 μεθύω(酔う、酔っぱらう、← μέθυ「酒、ワイン」)の語幹を組み合わせた形容詞で、文字どおり「酔わない」を意味する。
古代ギリシャ・ローマでは、紫色の水晶を身につけたり、これでつくった杯から飲むと酔わないという迷信があり、その性質にちなんで紫水晶の名として ἀμέθυστος λίθος(酔わない石)→ ἀμέθυστος(紫水晶)と固定された。中世ラテン語 amethystus を経て、英語 amethyst, フランス語 améthyste, ドイツ語 Amethyst, イタリア語 ametista などヨーロッパ語の「アメシスト」語彙の源となった。
μέθυ(酒)はさらに印欧祖語の「蜂蜜、蜂蜜酒」を表す語根に由来し、英語 mead(ミード、蜂蜜酒), ドイツ語 Met, サンスクリット mádhu(蜂蜜)と同じ語族。
形容詞「酔っていない、素面の」の用法は古代の意味をそのまま残し、対義語は μεθυσμένος(酔っぱらった)。
ギリシャ語:αχάτης
読み方:アハティス・アハーティス
ラテン文字:achatis
古代ギリシャ語の ἀχάτης(瑪瑙)から。シチリア島のアカテス川(現ディリロ川)のほとりで発見されたことにちなむとされる。ラテン語 achātēs、中世フランス語 agathe を経て英語 agate の語源にもなった。
ギリシャ語:ακουαμαρίνα
読み方:アクアマリナ・アクアマリーナ
ラテン文字:akouamarina
イタリア語 acquamarina(アクアマリン、海水色)からの借用(δάνειο)。
文字どおりラテン語 aqua(水)+ marīna(女性形「海の」)からなる合成語で、海の色を思わせる青色〜青緑色の宝石を指す名前としてヨーロッパ中世に定着した。
イタリア語 acquamarina、フランス語 aigue-marine、スペイン語 aguamarina、英語 aquamarine、ドイツ語 Aquamarin など、ヨーロッパ各語に同じラテン語起源の合成語の形で広まっており、ギリシャ語にもこの流れで取り入れられた。
ベリル(緑柱石)の一種。同じベリルの仲間に σμαράγδι(エメラルド、緑色の品種)などがある。
色を決めるのは微量に含まれる鉄イオン。酸化状態によって青〜青緑の色合いが生まれる。
ギリシャ語:σμαραγδένιος
読み方:ズマラグデニョス・ズマラグデーニョス
ラテン文字:smaragdenios
中世ギリシャ語の σμαράγδι(エメラルド)に、素材を表す形容詞接尾辞 -ένιος がついて造られた形を継承。
基となる σμαράγδι は古代ギリシャ語 σμάραγδος(エメラルド、緑色の宝石)の指小形 σμαράγδιον からの継承。古い形 σμαράγδινος(エメラルドの、-ινος 接尾辞)は古風な表現として残るが、現代ギリシャ語では -ένιος 接尾辞のほうが生産的で広く使われる。
古代の σμάραγδος は東方起源の語と見られ、サンスクリット मरकत(marakata、エメラルド)や、セム諸語の barāqu / barqā(輝く、雷光)系と関連する可能性が指摘される。ラテン語に smaragdus、さらに smaraldus から esmeraldus へと変形。これが英語 emerald、フランス語 émeraude、ドイツ語 Smaragd、イタリア語 smeraldo、スペイン語 esmeralda など、ヨーロッパ各語の語源となった。
接尾辞 -ένιος は素材を表す形容詞をつくる造語要素。χρυσάφι(金)から χρυσαφένιος(金製の)、ασήμι(銀)から ασημένιος(銀製の)、μάρμαρο(大理石)から μαρμαρένιος(大理石製の)など、宝飾品や素材語彙に広く使われる。
エメラルドで作られていることに加え、その鮮やかな緑色の比喩としても文学や詩で多用される。σμαραγδένια θάλασσα(エメラルド色の海)、σμαραγδένια μάτια(エメラルドの瞳)などの定型表現がある。類義語には βαθυπράσινος(深緑の)や λαχανί(キャベツ色、淡い緑)などが挙げられる。
ギリシャ語:λαζουρίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazouritis
フランス語 lazurite からの借用に、ギリシャ語の鉱物名接尾辞 -ίτης を組み合わせた近代鉱物学の術語。フランス語 lazurite 自体も、中世ラテン語 lazur(青)とギリシャ語起源の鉱物接尾辞 -ite を組み合わせた近代の造語である。その語源はペルシャ語 لاژورد(lāžavard、ラピスラズリ、青色)に由来する。
同じペルシャ語を起源とする語族には、中世ラテン語経由の lazulum(青)から派生した λαζουλίτης(天藍石)などがある。また、アラビア語 لازورد(lāzaward)の定冠詞付き形態 al-lāzaward が再分析されて生じた英語 azure、フランス語 azur(紺碧)、スペイン語 azul(青)も含まれる。これらはいずれも「ラピスラズリ系の青」を表す国際的な色彩・鉱物語彙の一群を形成している。
λάπις λάζουλι(ラピスラズリ)の主成分にあたるケイ酸塩鉱物で、ナトリウムやカルシウム、アルミニウムなどを含む。青金石とも呼ばれ、深い青色が特徴。同じ青色で組成の異なる λαζουλίτης(天藍石、リン酸塩鉱物)と混同されやすいが、別の鉱物である。
派生語や関連語に乏しい鉱物学術語の典型で、宝石名や鉱物名としての用法に限られる。
ギリシャ語:λαζουλίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazoulitis
フランス語 lazulite からの借用に、ギリシャ語の鉱物名接尾辞 -ίτης(〜石、〜質)を組み合わせた近代鉱物学の術語。
フランス語 lazulite は中世ラテン語 lazulum(青、青い色)と、ギリシャ語起源の鉱物接尾辞 -ite(古代ギリシャ語 -ίτης 由来)を組み合わせて造られた近代の造語。
源にある中世ラテン語 lazulum は、ペルシャ語 لاژورد(lāžavard、ラピスラズリ、青色)にさかのぼる。
同じペルシャ語起源で、別系統の経路を経た語に、英語 azure、フランス語 azur(紺碧)、スペイン語 azul(青)などがある。
リン酸鉱物の一種で、マグネシウム・鉄・アルミニウムを含む青色のリン酸塩鉱物。色は深い空色から濃紺まで変わり、λάπις λάζουλι(ラピスラズリ)とは外観が似ているため混同されがちだが、化学組成も結晶系も全く異なる別の鉱物。名前の似た λαζουρίτης(青金石、ラズライト)とも明確に区別される。まれに λαζουρίτης の表記でも見られるが、本来は別語。
派生・関連語に乏しい鉱物学術語の典型で、宝石名・鉱物名としての用法に限られる。
同じ -ίτης(古代の -ίτης「〜から成る」由来)はギリシャ語の鉱物・岩石名で多用される接尾辞である。αμμωνίτης(アンモナイト)、αιματίτης(赤鉄鉱)、μαγνητίτης(磁鉄鉱)、πυρίτης(黄鉄鉱)など、近代鉱物学の国際命名に広く採用されている。
ギリシャ語:σμαράγδι
読み方:ズマラグディ・ズマラーグディ
ラテン文字:smaragdi
古代ギリシャ語の σμάραγδος(エメラルド)の指小形 σμαράγδιον から。中世を経て現在の形態に至る。
σμάραγδος は東方起源の語と見られ、サンスクリットの मरकत(marakata、エメラルド)や、セム諸語で「輝く、雷光」を表す語との関連が指摘されるが、借用の経路は判然としない。
ラテン語に smaragdus として入り、さらに smaraldus、esmeraldus のように形を変えた。英語 emerald、フランス語 émeraude、イタリア語 smeraldo、スペイン語 esmeralda などもこの系統につながる。
宝石としては、緑色のベリル(緑柱石)の一種。同じベリルの仲間に ακουαμαρίνα(アクアマリン)など。
派生形容詞に σμαραγδένιος(エメラルド製の、エメラルド色の)がある。古い形 σμαράγδινος(エメラルドの)も残る。
ギリシャ語:λάπις λάζουλι
読み方:ラピス ラズリ・ラーピス ラズリ
ラテン文字:lapis lazouli
中世ラテン語 lapis lazuli(青い石)からの外来借用(δάνειο)。ラテン語 lapis(石)と lazuli(lazulus「青の」の属格)の二語が連結した連語の形で、性・数で語形が変化しないまま現代ギリシャ語に取り入れられた。
合成の後半 lazuli は、ペルシャ語 لاژورد(lāžavard、ラピスラズリ、青色)にさかのぼり、これがアラビア語 لازورد(lāzaward)を経て中世ラテン語に入ったもの。さらに語頭の l- がアラビア語の定冠詞 al- と再分析されて脱落した形が、フランス語 azur, スペイン語 azul, 英語 azure(紺碧、青色)の系統を生み出した。一方、フランス語 lapis lazuli, 英語 lapis lazuli, ドイツ語 Lapislazuli, イタリア語 lapislazzuli はラテン語の連語の形をそのまま受け継ぐ。
主成分の鉱物は λαζουρίτης(青金石、ラズライト)で、ナトリウムやカルシウムを含むケイ酸塩鉱物。古代から中世にかけて顔料ウルトラマリン(ουλτραμαρίνα、文字どおり「海を越えてきたもの」、アフガニスタンから地中海を渡ってヨーロッパに運ばれたことから)の原料として珍重された。アフガニスタン北東部のサル・エ・サング鉱山が古代以来の主要産地で、数千年にわたり地中海・西アジア・ヨーロッパに供給された。
ギリシャ語内部では、短縮形の λαζούλι(中性、ラズリ), λάπις(男性、ラピス)も使われる。名前の似た λαζουλίτης(天藍石)はリン酸塩鉱物で、別の青い石にあたる。
ギリシャ語:αδάμαντας
読み方:アダマダス・アダーマダス・アダマンダス・アダーマンダス・アダマダス・アダーマダス
ラテン文字:adamantas
ヘレニズム期のギリシャ語 ἀδάμας(属格 ἀδάμαντος、対格 ἀδάμαντα、「征服できないもの、もっとも硬い金属、鋼鉄」)の対格 -αντα を主格として再形成した形を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。古代の ἀδάμας は否定接頭辞 ἀ- と動詞 δαμάζω(手なずける、屈服させる、打ち砕く)の語幹からなり、文字どおり「征服できない」「打ち砕けない」を意味した。古代では主に最も硬い金属(鋼鉄、ダイヤなど)を指したが、後期に宝石としての「ダイヤモンド」の意味で固定された。
同じ ἀδάμας が中世ラテン語に diamas として入り、古フランス語 diamant を経て、英語 diamond, フランス語 diamant, ドイツ語 Diamant, イタリア語 diamante などヨーロッパ語の「ダイヤモンド」語彙の源になった。同じ流れの中で、ロマンス語経由で再びギリシャ語に戻った αντιδάνειο の形が日常語の διαμάντι(ダイヤモンド)。一方、αδάμαντας はヘレニズム期からの形を直接近代に再導入した学術借用形で、両者は同じ語源から異なる経路で現代ギリシャ語にたどり着いた対の関係にある。
派生に αδαμάντινος(ダイヤモンドの、堅固な、揺るぎない)。類義語に διαμάντι(日常で「ダイヤモンド」を指す中心語), αδάμας(αδάμαντας と同じ語の古典的な形、書きことばで使う)。αδάμαντας は文学・宝飾・人名で使う書きことば寄りの語。
ギリシャ語:ζαφείρι
読み方:ザフィリ・ザフィーリ
ラテン文字:zafeiri
ヘブライ語 sappir に由来する語で、ヘレニズム時代のギリシャ語では σάπφειρος の形で用いられていた。当時この語が指していたのはサファイアではなくラピスラズリ、つまり青い半貴石だった。
初期の格変化において、対格で冠詞の末尾 n と結合したことにより語頭の s が z に有声化した。その後の音韻変化も経て、中世ギリシャ語では ζαφείρι(ν) の形となり、現代に至る。英語の sapphire と同語源で、いずれもヘブライ語 sappir に由来する。
日常的にはこの口語形 ζαφείρι が一般的だが、鉱物学的な文脈や格調高い表現では古代ギリシャ語の形を保った σάπφειρος が用いられる。
淡い色から濃い色まで、あらゆる色調の青色を持つ鉱物・貴石を指す。
ギリシャ語:τουρκουάζ
読み方:トゥルクアズ・トゥルクアーズ
ラテン文字:tourkouaz
τιρκουάζ(ターコイズ)の母音の逆行同化(υποχωρητική αφομοίωση)[i-u > u-u] による別形。同じくフランス語 turquoise からの外来借用(δάνειο)で、語源・意味・用法はすべて τιρκουάζ と同じ。Tri も両形を一つの見出しで扱う。
τουρκουάζ の形は語頭の τουρκ- が「トルコの」を意味する Τούρκος / Τουρκία の語幹と一致するため、語源と意味を直感的に結びつけやすく、現代ギリシャ語の話者には親しまれやすい形。両形は併存し、どちらを使っても通じる。
詳しい語源・意味・派生・関連語は τιρκουάζ の項を参照。