#魚
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ギリシャ語:ιχθύς
読み方:イフシス・イフシース・イフティス・イフティース
ラテン文字:ichthys
ギリシャ語:σκορπιός
読み方:スコルピオス・スコルピオース
ラテン文字:skorpios
古代ギリシャ語の σκορπίος(サソリ)を継承。母音の衝突を避ける音節の合体(シニゼーシス)で現代の σκορπιός の発音と形になった。先頭大文字の Σκορπιός は星座と占星術でさそり座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ σκορπίος の語族に σκορπίνα(カサゴ), σκορπαινίδης(カサゴ科), σκορπιώδης(サソリに似た形の)。魚の名として使うときの σκορπιός は σκορπίνα より小型で, 大きな頭部と鰓蓋の棘を持つ近縁種を指す。
英語 scorpion はこの語がラテン語 scorpius / scorpio を経て入ったもの。scorpionfish(カサゴ類の総称)も同じ語源で, 英語でもギリシャ語同様「サソリ」の語が魚の名にも使われている。
ギリシャ語:πεταλούδα
読み方:ペタルダ・ペタルーダ
ラテン文字:petalouda
中世ギリシャ語 πεταλούδα(蝶)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)で、語源には二つの説が論じられる:(1)πέταλο(蹄鉄、円形の金属板、葉、花びら)に語尾 -ούδα が付いた派生説、(2)ヘレニズム期 πετηλίς(属格 -ίδα、バッタの一種)からの音韻変化を経た形とする説。Tri 注記は両方の可能性を「ίσως... ή」(おそらく〜あるいは〜)として並べて示し、確定していない。
源候補の一つの古代 πέταλον(葉、花びら、平たい板、← πετάννυμι「広げる、開く」)は、印欧祖語の「広げる、開く」を表す語根に由来し、ラテン語 pateō(開いている、← 英 patent), παττᾱνος(広がった)と関連する。蝶の羽が広がる姿を「広げられた葉」のように見立てた命名と解釈される。同じ語根からは πέταλο(花びら、蹄鉄), πέταγμα(飛行), πετάλα(金属板), ροδοπέταλο(バラの花びら)が派生する。
源候補のもう一つの πετηλίς(バッタ、書きことば)は、πέτομαι(飛ぶ)の派生で、「飛ぶ虫」を意味した。古代ギリシャ語の動詞 πέτομαι は、現代ギリシャ語の πετώ(飛ぶ)として継承され、πεταλούδα の意味の中心「飛ぶ虫」とつながる。
近代の派生用法として、英語 butterfly の意味展開を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)が複数加わっている:(a)競泳の「バタフライ」(← 英 butterfly stroke), (b)カオス理論の「バタフライ効果」(← 英 butterfly effect、Edward Lorenz が 1972 年に提唱), (c)医療の「バタフライ針」(← 英 butterfly needle、点滴・採血用の小型カテーテル)が、近代の科学・スポーツ・医療語彙として確立されている。
派生・関連語族として πεταλουδίτσα(小さな蝶、指小形), πεταλουδάκι(小さな蝶、口語), πεταλουδοειδής(蝶のような形の、形容詞), πεταλουδώδης(書きことばの「蝶のような」), πεταλουδοθερία(蝶の収集、書きことば), πεταλουδολόγος(蝶の研究者、書きことば), πεταλουδοκύνηγος(蝶取り)。
ヨーロッパ各語の「蝶」語彙は系統がばらばらで、フランス語 papillon(← ラ papilio), スペイン語 mariposa, イタリア語 farfalla, 英語 butterfly(← 古英語 butorflēoge「バターのハエ」), ドイツ語 Schmetterling と、それぞれ独自の語族を形成しており、ギリシャ語 πεταλούδα もその一つの独自の語族を保つ。
学術命名では、リンネが 1758 年の『自然の体系』で、目(科)の Lepidoptera(鱗翅目、← ギリシャ語 λεπίς「鱗」+ πτερόν「翅」)を命名し、現代の昆虫分類学の中核概念となった、ギリシャ語起源の国際語彙の典型例。
「蝶形のもの」の比喩用法は活発で、γυαλιά πεταλούδα(バタフライ眼鏡), μαχαίρι πεταλούδα(バタフライナイフ), πεταλούδα γκαζιού(スロットル弁), ψάρεμα με πεταλούδα(スピナー釣り), λαβίδα πεταλούδα(バタフライ・クランプ)など、形が両側に広がる物を「蝶」と呼ぶ造語パターンが、近代技術の語彙に広く展開している。慣用句では όπως η πεταλούδα στη φωτιά(火に飛び込む蝶のように、危険を顧みず情熱に駆られて)が、蝶の脆さと美しさを介した感情表現の象徴として、詩・歌・文学に頻出する。
ギリシャ語:σκαθάρι
読み方:スカサリ・スカサーリ・スカタリ・スカターリ
ラテン文字:skathari
中世ギリシャ語 *σκανθάριον(甲虫、← 古代 κάνθαρος「甲虫」+ -άριον 指小接尾辞 + 語頭 [s] 発達)が、子音同化([nθ > θθ])と二重子音単純化([θθ > θ])を経て現代の σκαθάρι になった、ギリシャ語の音韻変化の段階を多く含む継承語(κληρονομιά)。語頭の [s] は、定冠詞対格複数 τοὺς との続き発音 τοὺς κανθάρους から再分節([tus-ka > tuska > tus-ska])を経て発生したもので、現代ギリシャ語に共通の語頭子音発達のパターン(σκόνη, σπλάχνο と同類)。
源にある古代の κάνθαρος(属格 κανθάρου、甲虫、フンコロガシ、混酒器)は、印欧祖語に確実な対応が見出されない地中海・前ギリシャ語基層の語とする説が有力(Beekes)。古代ギリシャ語の κάνθαρος は、最初は甲虫を指す語だったが、形が似ていることから「混酒器(クラテール状の容器)」の意味も担うようになった、興味深い意味の二重展開を持つ語。アリストパネスの『平和』にはフンコロガシ(κάνθαρος)が登場し、コミカルな主人公の乗り物として描かれる。
ヘレニズム期形 κανθάριον(小さな甲虫、書きことば)が、中世期に *σκανθάριον として再形成され、さらに音韻簡略化を経て σκαθάρι となった経路は、ギリシャ語の音韻史の典型的な複数段階の変化を示す。書きことばの古典形 κάνθαρος は、現代ギリシャ語にも書きことば・専門語として並走しており、生物学・古典学の文脈で使われる。
派生・関連語族として σκαθαράκι(小さな甲虫、口語の指小形), σκαθαρίσιος(甲虫の、形容詞、書きことば), σκάνθαρος(甲虫、まれな書きことば形), κανθαρίδα(ツチハンミョウ、← 古代 κανθαρίς、書きことば、メロエ科の昆虫), σκαραβαίος(スカラベ、フンコロガシ、← 古代 σκαραβαῖος、書きことば、エジプト宗教の聖なる甲虫)。同じ甲虫類の領域には、種類別に χρυσοκάνθαρος(コガネムシ), σκαθάρι ρινόκερος(カブトムシ、サイカブト), λαμπυρίδα(ホタル)が並び、コウチュウ目の主要な昆虫の語彙体系を形成する。
近代の生物学命名では、ラテン語の Coleoptera(鞘翅目、甲虫目、← ギリシャ語 κολεός「鞘」+ πτερόν「翅」、リンネ命名)が国際分類学の正式な目名として使われる。κάνθαρος / cantharus を含む学名(属名)は、特に魚類分類学で活発で、Spondyliosoma cantharus(クロダイ科の魚、地中海・北東大西洋に分布)の種小名にも残る。
魚類用法では σκαθάρι は、地中海の Spondyliosoma cantharus(クロダイ科の魚、Black sea bream、和名「シマダイ」「クロダイ」近縁種)を指す。古代ギリシャ語にすでに κάνθαρος として魚名と虫名の両方の意味があり、現代まで継承された珍しい多義語の例。同じ魚科には σαργός(タイ), σπάρος(タイ), λυθρίνι(タイ), μελανούρι(イスズミ)が並ぶ。
近代の自動車用法では、フォルクスワーゲン・ビートル(Volkswagen Beetle, 1938 年製造開始)の丸みを帯びた車体が甲虫を連想させることから、σκαθάρι または σκαραβαίος の口語愛称として広まった。同じ命名は世界各語に共通で、英 Beetle, 仏 Coccinelle(テントウムシ), 西 Escarabajo(甲虫), 独 Käfer(甲虫)と、いずれも甲虫を意味する語が車の愛称になっている、20 世紀の自動車文化の国際的な共通命名パターン。
ギリシャ語:χταπόδι
読み方:フタポディ・フタポーディ
ラテン文字:chtapodi
中世ギリシャ語 οκταπόδι(タコ)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、ヘレニズム期 ὀκτάπους(八本足の、タコ、← 古代 ὀκτώ「八」+ ποῦς「足」)の指小形 *οκταπόδιον(小さな八本足、母音連続の回避を経て)から派生したもの。現代ギリシャ語では、語頭の無強勢母音 [o] が脱落(αποβολή)し、定冠詞続き発音 το οκταπόδι > τοκταπόδι > το χταπόδι の経路で再分節し、子音連続 [kt] が中世期に同化変化(ανομοίωση τρόπου άρθρωσης)で [xt] に変わって、現代の χταπόδι の形に定着した。
源にある古代の ὀκτώ(八)は、印欧祖語の「八」を表す語根に由来し、ラテン語 octō, サンスクリット aṣṭáu, 英語 eight, ドイツ語 acht と同族。地中海・印欧語の数詞「八」を表す最古層の語彙の一つで、極めて広範な国際語彙の根幹を成す。同じ語根からはオクターブ(οκτάβα、← 仏 octave), 八角形(οκτάγωνο), 八重奏(οκτέτο), 八月(Οκτώβριος、ただし古代ローマ暦では本来「八番目の月」だった), タコ(χταπόδι)が出ており、数を介した造語の中核。
源にある古代の ποῦς(属格 ποδός、足)は、印欧祖語の「足」を表す語根に由来し、ラテン語 pēs(属格 pedis、← 英 pedal, pedestrian, pedicure), サンスクリット pā́d-, 英語 foot, ドイツ語 Fuß と同族。古代ギリシャ語の ποῦς は現代ギリシャ語の πόδι(足、← μσν. πόδι(ν) < ελνστ. ποδίον υποκορ.)として継承されており、この χταπόδι は数詞「八」と「足」の合成で、文字どおり「八本足」を意味するシンプルな解剖学的命名。
書きことばの古典形 οκτάπους / πολύπους(タコ、文字どおり「多くの足」)は、現代ギリシャ語にも書きことば・専門語として並走する。πολύπους は近代の動物学・医学では πολύποδας(ポリプ、ポリープ、生物学のヒドラ・サンゴ等)として使われ、英語 polyp(ポリプ)の語源にもなった。
派生・関連語族として χταποδάκι(小さなタコ、指小形、口語), χταπόδια κρεμασμένα(つるされたタコ、複数形), χταποδόψαρο(タコ魚、複合語), χταποδολίκι(タコの吸盤), οκτάπους / οκτάποδας(書きことばの古典形), πολύπους / πολύποδας(ポリプ、書きことば、医学用語)。
頭足類(κεφαλόποδα)の領域には、近い海産物として καλαμάρι(イカ、← 中世 καλαμάρι < ラ calamarium「インク壺」), σουπιά(コウイカ、← 古代 σηπία)が並び、地中海料理の主要な海産物として広く食卓に登場する。χταπόδι は食材としてはギリシャ伝統料理の中心の一つで、χταπόδι κρασάτο(ワイン煮), χταπόδι ξιδάτο(酢漬け), χταπόδι στιφάδο(玉ねぎ煮込み), χταπόδι στα κάρβουνα(炭火焼き)など多彩な調理法を持つ。タコを岩に打ちつけて柔らかくする伝統的な下処理(χτυπώ το χταπόδι στα βράχια)も、地中海漁村の生活文化として知られる。
比喩用法では、八本の腕の形が「枝分かれして広がるもの」のイメージを生み、荷物を固定する伸縮ゴムひもの χταπόδι(バンジーコード), 車の排気マニホールドの χταπόδι(複数の排気管が一点に集まる枝分かれ部品)など、近代の道具・機械語彙にも比喩的に展開している。慣用句の χτυπιέμαι σαν χταπόδι(タコのようにのたうち回る、激しく抗議する)も、タコの動きの激しさを介した感情表現の典型例。
ギリシャ語:γαύρος
読み方:ガヴロス・ガーヴロス
ラテン文字:gavros
魚の γαύρος(アンチョビ)は、古代ギリシャ語の ἔγγραυλίς(ヨーロッパアンチョビ)にさかのぼる。これがビザンツ期の ἔγγραυλος(イワシ、アンチョビの類)となり、音の入れ替わりや同化を経て、現代ギリシャ語の γαύρος になった。学名 Engraulis encrasicholus の属名 Engraulis も、この古い語形とつながる。
樹木の γαύρος(シデノキ)は、魚の語義とは別系統と考えられている。γάβρος / γράβος(シデノキ)のような古い形と結びつけられ、シデノキを指す異形や地方形が、現在の発音に寄って γαύρος と重なったものとみられる。
日常語で広く「魚」を表す基本語は ψάρι(魚)で、γαύρος はその中でも群れで泳ぐ小型の海の魚を指す。近い小魚として σαρδέλα(イワシ)があり、どちらも食卓にのぼる身近な魚だが、γαύρος はアンチョビの類をいう。樹木の意味では δέντρο(木、樹木)の一種として使われる。指小語に γαυράκι(小さなアンチョビ、小ぶりの γαύρος)もある。
ギリシャ語:ξιφίας
読み方:クシフィアス・クシフィーアス
ラテン文字:xifias
古代ギリシャ語の ξιφίας(メカジキ)を継承。ξίφος(剣)に「〜のような, 〜を持つ」を表す接尾辞 -ίας を付けた形で, もとは「剣を持つもの」「剣のようなもの」。長く突き出た吻を剣に見立てた魚名。中世ギリシャ語では ξιφιός の形も使われ, 現代でも並行して残る。
同じ ξίφος の語族に ξιφήρης(抜き身の剣を持った), ξιφομαχία(剣闘), ξιφολόγχη(銃剣), ξιφίδιο(短剣)。
ふつう「魚」を言うのは ψάρι(魚)で, ξιφίας はその中の種名。学術・文語的には ιχθύς(魚)も並ぶ。学名 Xiphias gladius は古代ギリシャ語 ξιφίας にラテン語 gladius(剣)を足したもので, ギリシャ・ラテン両系統から「剣の魚」を二重に言っている。英語 xiphoid(剣状の), xiphoid process(剣状突起, 胸骨下端の骨)も同じ ξίφος の系統を引く。
ギリシャ語:πέστροφα
読み方:ペストゥロファ・ペーストゥロファ
ラテン文字:pestrofa
ブルガリア語 пъстърва pŭstŭrva(マス)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)に、語源俗解(παρετυμολογία)として ギリシャ語動詞 επιστρέφω(戻る、回帰する、産卵期に川を遡上するマスの行動の連想)の影響が加わって *επίστροφα に再形成されたと Tri が記す。バルカン半島でのスラヴ語との文化接触の中で取り入れられた、中世以降の動物・自然語彙の代表例。
源にあるブルガリア語 pŭstŭrva は、原スラヴ語 *pъstrava(斑点のある、まだら模様の)に由来し、マスの体表の斑点模様に由来する命名と解釈される。同じスラヴ語族からは、ロシア語 пстрюга / форель forel(マス), セルビア・クロアチア語 pastrva, ポーランド語 pstrąg, チェコ語 pstruh が並び、スラヴ諸語のマス語彙の共通祖となる。原スラヴ語 *pъstrъ(斑点のある、まだら)からは、地名・動物名・色彩語彙が広く派生し、東欧・バルカン半島の自然語彙の中核を成す。
語源俗解の引き手になった動詞 επιστρέφω(戻る、回帰する、← επι-「上に」+ στρέφω「向ける」)は、印欧祖語の「向ける、回す」を表す語根に由来し、ラテン語 stringo(締める、絞る), 英語 strong(強い、もとは「結びついた」)と同族。マスの遡上行動を連想して *επίστροφα(「戻ってくるもの」)の語形が定着したという観察に基づく民間語源は、外来借用語のギリシャ化を示す典型例。
ヨーロッパ各語の「マス」語彙では、ラテン語 trutta(マス、← 後期ラテン語、おそらく中世ガリア語起源)から、フランス語 truite, スペイン語 trucha, イタリア語 trota, 英語 trout, ドイツ語 Forelle(別系統)が広まり、ロマンス諸語と西欧の中核を成すが、ギリシャ語 πέστροφα はバルカン半島のスラヴ語経由の独自の系譜を保つ。学名 Salmo trutta(マス)はラテン語起源の命名。
派生・関連語族として πεστροφάκι(小さなマス、指小形), ιριδίζουσα πέστροφα(ニジマス、← ιριδίζω「虹色を帯びる」+ πέστροφα、英 rainbow trout の翻訳借用), πέστροφα ποταμού(川マス), πέστροφα ιχθυοτροφείου(養殖マス), καπνιστή πέστροφα(燻製マス)。
同じサケ科(Salmonidae)の魚の領域には、近い種として σολομός(サケ、サーモン、← ラ salmo), σολομοπέστροφα(サーモントラウト), αρκτικός σολομός(カラフトマス、北極サケ)が並び、淡水・汽水・海水の異なる生息環境を持つ系列として体系化されている。料理では、πέστροφα στη σχάρα(マスのグリル), πέστροφα μαριναρισμένη(マスのマリネ), πέστροφα γεμιστή(詰め物マス)など、ギリシャの伝統料理から国際料理まで広く使われる、北方寄り内陸の主要な食用魚。
ギリシャの淡水漁業では、エペイロス、テッサリア、マケドニアの山間部の川や湖(特にプレスパ湖、ヴゴリツィダ湖)でマスの自然繁殖と養殖が行われ、地域の食文化と観光資源として親しまれる。
ギリシャ語:τόνος
読み方:トノス・トーノス
ラテン文字:tonos
古代ギリシャ語の τόνος(張り, 音の高さ, アクセント)を継承。動詞 τείνω(張る, 伸ばす)から作られた名詞で, 印欧祖語で「張る」を表す語根に続く。ラテン語 tonus, 英語 tone も同じ語源。
音楽の音程, 声の調子, 文体や色のトーン, 機器の通知音といった現代の用法は, フランス語 ton と英語 tone からの意味借用で整った。
同じ綴りの τόνος には別の語源の語が重なる。重量単位の「トン」はフランス語 tonne からの借用。魚のマグロを指す τόνος(別綴り τόννος)はイタリア語 tonno からの借用で, その先はラテン語 thynnus, 古代ギリシャ語 θύννος(マグロ)に戻る。
派生に τονίζω(強調する, アクセントを置く), τονικός(トニックの)。合成語に ημιτόνιο(半音)。
ギリシャ語:σαρδέλα
読み方:サルデラ・サルデーラ
ラテン文字:sardela
中世ギリシャ語 σαρδέλα を継承した語。イタリア語 sardella(sarda の指小形), フランス語 sardine と同じ流れで、ラテン語 sardus(サルデーニャの、サルデーニャの魚)に行き着く。英語 sardine もフランス語 sardine 経由の同源語。
指小形に σαρδελίτσα。近い小魚に γαύρος(アンチョビ), αντσούγια(塩蔵アンチョビ), παπαλίνα。軍の俗語では制服の階級章や線飾りを指し、σιρίτι(縁テープ)や γαλόνι(ガロン)と同じ文脈に出る。
ギリシャ語:σολομός
読み方:ソロモス・ソロモース
ラテン文字:solomos
中世ギリシャ語 *σολομός(サケ)が現代まで受け継がれた語で、源はラテン語 salmō(サケ、サーモン、属格 salmōnis)にある外来借用(δάνειο)。中世期にラテン語からギリシャ語に取り入れられる過程で、唇音 [m] の影響と母音同化(αφομοίωση [a-o > o-o])を経て σαλομός から *σολομός へと音韻調整された経路を持つ。語末の -ς は男性名詞の格変化語尾。
源にあるラテン語 salmō は、印欧祖語に確実な対応が見出されない地中海・前ロマンス語基層の語とされる説と、ガリア語起源とする説(古代の北西ヨーロッパ・ゲルマン人の漁業・河川魚の語彙)の両方が論じられる。古代ローマ時代から、ライン川・ドナウ川・ガリアの河川で漁獲されるサケの名前として使われ、プリニウスの『博物誌』第 9 巻にも salmō として記述される。
ラテン語 salmō から、ヨーロッパ各語の「サケ」語彙が広まった:フランス語 saumon, スペイン語 salmón, イタリア語 salmone, ポルトガル語 salmão, 英語 salmon, ドイツ語 Salm(古語、現代では Lachs が一般), ロシア語 семга syomga(別系統)。学名 Salmo salar(タイヘイヨウサケ)はラテン語起源の二語名で、リンネが 1758 年の『自然の体系』で命名した。サーモン科(Salmonidae)の主要な属名として使われる。
サケは古代地中海ではあまり一般的な魚ではなく、ギリシャ語にも独自の伝統的な語が確立されなかった経緯から、中世期にラテン語経由で取り入れられた。これに対し、同じサケ科の πέστροφα(マス、← ブルガリア語 pŭstŭrva)はバルカン半島のスラヴ語経由で、両者は別系統の借用として並走する。地中海・バルカン半島でのサケ・マス語彙の借用源の違いが、地理的な漁業文化の違いを反映する。
派生・関連語族として σολομάκι(小さなサケ、口語の指小形), σολομικός(サケの、形容詞、書きことば), σολομόψαρο(サケ魚、口語), αβγά σολομού(サケの卵、いくら), χαβιάρι σολομού(サーモンキャビア、← μπρικ という別呼称もある), φιλέτο σολομού(サーモンのフィレ), σολομός καπνιστός(スモークサーモン), άγριος σολομός(天然サーモン), ιχθυοτροφείο σολομών(サケ養殖場)。
同じサケ科の魚の領域には、近い種として πέστροφα(マス、トラウト), ιριδίζουσα πέστροφα(ニジマス), αρκτικός σολομός(カラフトマス、北極サケ)が並び、サケ・マス類の食用魚の語彙体系を形成する。誤綴りに σολωμός も見られるが、標準綴りは σολομός(短い o + 短い o)。
近代以降の食文化では、ノルウェー、スコットランド、チリ、カナダの大規模なサーモン養殖の発達とともに、ギリシャでもサーモンが日常的な食材として普及した。スモークサーモン(σολομός καπνιστός), サーモンの寿司・刺身(σολομός σούσι, σολομός σασίμι), 焼きサーモン(σολομός στη σχάρα)など、伝統料理から国際料理(日本料理、フランス料理、北欧料理)まで広く使われる、現代ギリシャの食文化に深く入り込んだ食材。
書きことばの古典形 ιχθύς(魚)は学術・宗教・天文(魚座)の文脈で使われ、日常の ψάρι(魚)と棲み分ける。σολομός は ψάρι の下位の具体的な魚名として位置づけられる。
ギリシャ語:ψάρι
読み方:プサリ・プサーリ
ラテン文字:psari
中世ギリシャ語 ψάρι(ν)(魚、← ヘレニズム期 ὀψάριον「小さな魚、魚の切り身、おかず」、← 古代 ὄψον「調理された食べ物、副菜、おかず」の指小形)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、定冠詞と続けた発音 τὸ ὀψάριον で語頭の無強勢母音 [o] が脱落(αποβολή)し、さらに母音連続の回避(αποφυγή της χασμωδίας)を経て、現代の ψάρι の形に整えられた。
源にある古代の ὄψον(おかず、ご馳走、副菜)は、本来は主食のパン(σῖτος)に対する「副え物・おかず」を意味したが、古代アテネで魚が代表的なおかずとして好まれたため、しだいに「魚料理」を中心に指すようになった。ヘレニズム期にはその指小形 ὀψάριον が「魚」そのものを意味するに至り、現代まで続く意味の中心が確立した。古代の ὄψον と動詞 ἕψω(煮る)は、印欧祖語の「煮る、料理する」を表す語根に由来するとする説と、別系統の地中海語彙とする説がある。
古代以来の文書語の系譜では、ὄψον からの派生に ὀψοποιός(料理人、書きことばの古典形), ὀψοφάγος(美食家、贅沢な食事をする者), ὀψώνιον(食料の購入、給金、← 英 obsonium「給与」の語源として中世ラテン語に取り入れられ)が出ている。ψάρι の対応する書きことばの古典形は ιχθύς(魚、← 古代 ἰχθύς)で、ホメロス以来の伝統的な魚語彙として現代でも魚座(Ιχθύες), 魚類学(ιχθυολογία), 魚類養殖(ιχθυοκαλλιέργεια)のような書きことば・専門語に残る。古代のキリスト教徒の象徴(ΙΧΘΥΣ = Ιησοῦς Χριστὸς Θεοῦ Υἱὸς Σωτήρ「イエス・キリスト、神の子、救世主」の頭字語)として用いられた歴史も持つ。
派生・関連語族として ψαράκι(小さな魚、指小形), ψαρούκλα(大きな魚、増大形), ψαράκας(間抜けな人、新兵をからかう口語), ψαριά(漁獲、漁獲量、← ψάρι + -ιά), ψαρική(漁業の女性形、書きことば), ψαρικό(魚介類、形容詞中性形が名詞化), ψαρίλα(魚臭さ), ψαρίσιος(魚の、形容詞), ψαράς(漁師、釣り人), ψάρεμα(魚釣り、釣り), ψαρεύω(魚を釣る、動詞), ψαρόσουπα(魚スープ), ψαροχώρι(漁村), ψαροντούφεκο(魚突き), ψαροπούλα(小型の漁船、女性的指小)。色名としての ψαρός(白髪まじりの、← 古代 ψαρός「斑点のある」、現代の比喩用法), ψαρής(白髪まじりの)も同じ語族から派生した。
比喩用法では沈黙や環境への不慣れを表すことが多く、βουβός σαν ψάρι(魚のように黙りこくっている), σαν το ψάρι έξω από το νερό(陸に上がった魚), απ' το κεφάλι βρομάει το ψάρι(魚は頭から腐る、組織の腐敗は上から)が頻出する。俗語では騙されやすい人、新兵、無口な人、歌の下手な人を指す広い口語用法も持つ。
ギリシャ語:γλώσσα
読み方:グロサ・グローサ
ラテン文字:glossa
古代ギリシャ語の γλῶσσα(舌、言語)を継承。μητέρα γλώσσα(母語), νεκρή γλώσσα(死語), ξύλινη γλώσσα(官僚的で空疎な言葉づかい)など、言語にまつわる現代の言い回しはフランス語・英語からの意味借用で入っているものが多い。
派生語に γλωσσικός(言語の), γλωσσολογία(言語学), πολύγλωσσος(多言語の、多言語話者), γλωσσομαθής(外国語に通じた)。関連語に διάλεκτος(方言), ιδίωμα(土地言葉、言い回し)。英語 glossary, glottis, polyglot も同じ古代ギリシャ語から。

男性名詞
動物
鳥
天文
星座 
信仰・神話 

虫
昆虫
スポーツ
道具
身体・健康 
乗り物 
食べ物
工学
植物
樹木 
言葉
音楽
色
数量
軍事 