#地形
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ギリシャ語:πάγκος
読み方:パンゴス・パンゴース
ラテン文字:pangos
イタリア語 banco(台、腰掛け、商人の台)からの借用。現代ギリシャ語では πάγκος と μπάγκος の形がある。
banco の語根は、古高ドイツ語 bank などゲルマン系の「長い腰掛け、台」を表す語。英語 bench(ベンチ)も同じゲルマン系の語に属する。
英語 bank(銀行)も、もとは両替商や商人が使う台を表すイタリア語 banca / banco に由来。家具や台を表す語が、商取引の場を経て金融機関の意味へと発展した。
πάγκος は作業台、店のカウンターや陳列台、複数人が座る長い腰掛けなどを指す。指小形 παγκάκι は、公園などにある「ベンチ」を指す語として一般的。
海事の文脈では、船の航行を妨げる砂地や岩場の浅瀬を指すこともある。この意味もイタリア語 banco の「浅瀬、砂州」に対応している。
関連語は、τραπέζι(テーブル)、πάγκος κουζίνας(キッチンカウンター)、πάγκος εργασίας(作業台)、πάγκος πωλητή(売り手の台)、παγκάκι(ベンチ)など。
ギリシャ語:πεδιάδα
読み方:ペディアダ・ペディアーダ
ラテン文字:pediada
古代ギリシャ語の πεδιάς(平野、平野の)に由来。πεδιάς は πέδον / πεδίον(地面、平地、野原)から作られた語で、πεδίο(場、領域、フィールド)と同じ語族に属する。
πέδον / πεδίον は古代ギリシャ語の πούς(足)と同語源で、現代ギリシャ語の πόδι(足、脚)にもつながる。さらに印欧祖語で「足、踏む地面」を表す語根に遡る。
現代ギリシャ語において、地形としての「平野」は πεδιάδα が一般的。一方で πεδίο は物理の「場」や抽象的な「領域」を指すのが中心で、地形としての用法は文語表現に留まる。
類義語には κάμπος(平野、野のひらけた土地)がある。周辺の地形語は κοιλάδα(谷)、λεκανοπέδιο(盆地)、λιβάδι(牧草地)、σαβάνα(サバナ)、στέπα(ステップ)など。
ギリシャ語:βάλτος
読み方:ヴァルトス・ヴァールトス
ラテン文字:valtos
スラヴ語の bolto(沼)から中世ギリシャ語に借用された βάλτος を継承。ブルガリア語の blato(沼)にも同じ語が残る。派生語に動詞 βαλτώνω(沼にはまる、停滞する)、βαλτόνερα(淀んだ水)など。
同じ「沼、湿地」を表す古代ギリシャ語由来の語に έλος と τέλμα がある。έλος は学術・形式寄り(ελώδης πυρετός「マラリア」など)、τέλμα は淀みのほか比喩で「停滞」を表し、βάλτος と意味が重なる。
なお綴りは同じで強勢が違う βαλτός(手先、スパイ)は別語。古代ギリシャ語の動詞 βάλλω(投げる、置く)の動詞形容詞から来ていて、語源は無関係。
ギリシャ語:λακκούβα
読み方:ラクヴァ・ラクーヴァ
ラテン文字:lakkouva
スラヴ系の語からの借用。ギリシャ語にある λάκκος(穴、坑)との類推(似た語に引き寄せられること)で、kk の重子音で綴られるようになった。
ギリシャ語:άμμος
読み方:アモス・アーモス
ラテン文字:ammos
印欧祖語にさかのぼらない地中海圏の基層語からの借用とされる古代ギリシャ語の ἄμμος(砂)を継承。同じ「砂」を表す ψάμμος とは語形が混ざり合った可能性も指摘されている。
派生語に αμμώδης(砂地の)、αμμουδιά(砂浜)、αμμόλοφος(砂丘)、αμμόλιθος(砂岩)、αμμοθύελλα(砂嵐)、αμμοθεραπεία(砂療法)など。
英語の科学用語で「砂」を表す接頭辞 psamm(o)-(psammophile=好砂性生物、psammon=砂中生物群集など)は、同じ意味の古代ギリシャ語 ψάμμος をもとにした語。
ギリシャ語:έρημος
読み方:エリモス・エーリモス
ラテン文字:erimos
古代ギリシャ語の ἔρημος(人のいない、見捨てられた)を継承。もとは形容詞で、女性形を名詞として「砂漠、荒野」の意で使う用法が古代から定着している。
派生の古代 ἐρημίτης(荒野に住む人、隠者)が後期ラテン語 eremita を経て、英語 hermit(隠者)の元になった。
派生語に ερημιά(荒地、人けのない場所)、ερημία(孤独)、ερημίτης(隠者)、ερημώνω(荒廃させる)、ερημικός(人気のない、寂れた)など。
ギリシャ語:σπηλιά
読み方:スピリャ・スピリャー
ラテン文字:spilia
古代ギリシャ語 σπήλαιον(洞窟)の語幹に、女性名詞・場所名詞をつくる接尾辞 -ιά を付けたギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)で、中世ギリシャ語期に形成されて現代まで使われる継承語(κληρονομιά)。古典形 σπήλαιον は「洞窟、ほら穴」を意味する中性名詞として書きことばに残り、口語形 σπηλιά と棲み分ける、二形が並走する典型例。
源にある古代の σπήλαιον(洞窟)と、そのもとの σπέος, σπήος(洞窟、書きことばの古い形、ホメロス)は、印欧祖語の「穴、空洞」を表す語根に由来し、古代ギリシャ語の文献ではホメロスの『オデュッセイア』第 9 巻のキュクロプスの洞窟、第 1 巻のカリュプソーの洞窟など、ギリシャ神話・叙事詩の重要な舞台として頻出する。古代の σπήλαιον は、神話・神託(特にデルポイのアポロン神託、コリントのプセポロス), 異形の住処(ニュンフ、サテュロス、巨人), 隠遁の場(隠者、修道士)の語彙の中心を担った。
接尾辞 -ιά は、現代ギリシャ語の生産的な造語要素で、名詞・形容詞の語幹に付いて「〜の場所、〜の状態、〜の集合」を表す女性名詞をつくる。同じパターンで作られた語族には、αμμουδιά(砂浜、← άμμος「砂」), βραχιά(岩場、← βράχος「岩」), λασπιά(泥地、← λάσπη「泥」), χιονιά(雪が積もった状態、← χιόνι「雪」)が並び、地形・自然現象を表す日常語の中核を成す。
派生・関連語族として σπηλιάκι(小さな洞窟、口語の指小形), σπηλαιωτής(洞窟探検家), σπηλαιολογία(洞窟学、書きことば、← σπήλαιον + -λογία), σπηλαιολόγος(洞窟学者), σπηλαιώδης(洞窟のような), σπηλαιοβίωση(洞窟生息、書きことば), αβαθή σπηλαιοσχηματισμός(浅い洞窟形成), σπηλαιο-σταγόνες(鍾乳石、書きことば)。
書きことばの古典形 σπήλαιον は、現代ギリシャ語にも書きことば・専門語として並走しており、宗教・神話・地質・観光の文脈で使われる:σπήλαιο της Αλιστράτης(アリストラトス洞窟), σπήλαιο των Πετραλώνων(ペトラロナ洞窟、人類学の重要遺跡), σπήλαιο του Διρού(ディロス洞窟、ペロポネソス南部の有名な観光洞窟)など、地名・遺跡名で頻出する。
ギリシャの地形・観光資源として、σπηλιά / σπήλαιο は数多くの有名な洞窟を持つ:マニ半島のディロス洞窟、テッサロニキ近郊のペトラロナ洞窟、ヴォロス近郊のスピリオ洞窟、ザキントス島の青の洞窟(Γαλάζια Σπηλιά)など、観光・考古学・地質学の中核をなす自然遺産。古代以来、洞窟は神話・宗教・隠遁・避難所・観光の語彙と密接に結びつく文化的な空間として機能している。
比喩用法では、人目を避ける場所や秘密の隠れ家を「洞窟」と呼ぶ慣用が定着しており、文学・映画・口語で「隠遁する」「身を潜める」のイメージとともに使われる、自然空間と社会的逃避を結ぶ表現の中核を担う。
ギリシャ語:κάμπος
読み方:カボス・カーボス・カンボス・カーンボス
ラテン文字:kampos
中世ギリシャ語 κάμπος(平野、野原)が現代まで受け継がれた語で、源はラテン語 campus(平野、野原、軍事訓練場、戦場)にある外来借用(δάνειο)が中世期に完全にギリシャ化して継承の流れに乗った形。「農地・耕作地」の意味用法は、近代以降にイタリア語 campo / フランス語 champ(農地、田畑)の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の側面も併せ持つ。
源にあるラテン語 campus(平野、平地、野原、戦場、訓練場、競技場)は、印欧祖語の「曲がる、湾曲する」を表す語根に由来し、ラテン語の campus からはフランス語 champ(畑、領域、戦場), スペイン語 campo, イタリア語 campo, ポルトガル語 campo, 英語 camp(野営地、← 中世ラ campus「軍事野営地」), campus(大学キャンパス、近代の英語造語), campaign(軍事行動、選挙運動、← 中世ラ campania「平野での軍事行動」), escape(脱出、← ラ ex- + cappa「外套を投げ出して逃げる」), champion(チャンピオン、← ラ campiō「戦場の戦士」)が広く派生した。
ヨーロッパ語の「平野・農地・キャンプ」の語彙の根幹を成すラテン語起源の系譜の中で、ギリシャ語 κάμπος は中世期に取り入れられて以降、地中海地域の平野・農地・田園を表す日常語として定着した。同じ系譜の語族には κάμπινγκ(キャンプ、← 英 camping), καμπάνια(キャンペーン、← 仏 campagne), κάμπιον(チャンピオン、← 英 champion)が並び、「平野」の概念から派生した意味の広がりが現代まで継承されている。
派生・関連語族として καμπίσιος(平野の、形容詞), καμπίτης(平野の住人、書きことば), καμπόσος(かなりの量、相当の、← μσν. καμπόσος < καν「もし」+ πόσος「どれほど」、別系統だが偶然似た形を持つ), μεσοκάμπιος(平野の真ん中の), ανηφόρα προς τον κάμπο(平野へ下る道), ορεινός κάμπος(山間の平野、書きことば)。
同じ地形語彙の領域には、対比される βουνό(山、高くそびえる地形), λόφος(丘、低めの起伏), πεδιάδα(平野、← 古代 πεδίον「平野」), οροπέδιο(高原、← όρος「山」+ πέδιο「平野」, 文字どおり「山の平野」), χωράφι(畑、口語), αγρός(耕作地、書きことば、← 古代 ἀγρός)が並び、地形と農業の語彙が体系化されている。
ギリシャの地理では、テッサリア平野(θεσσαλικός κάμπος), マケドニア平野(οι κάμποι της Μακεδονίας), トラキア平野(θρακικός κάμπος)が代表的な大規模平野で、いずれも農業生産の中心地として歴史的に重要な役割を担ってきた。山地が多いギリシャ地形の中で、平野は貴重な農地として畜産・羊飼いの冬の移牧(χειμώνας στους κάμπους)の目的地としても語られる。
慣用句では σαν την καλαμιά στον κάμπο(平野の一本の葦のように、頼りなく一人で立っているさま)が、広い平野に唯一立つ植物の孤立感を介して、孤独・無防備さを比喩する慣用表現として定着している。
ギリシャ語:κορυφή
読み方:コリフィ・コリフィー
ラテン文字:koryfi
ギリシャ語:ακτή
読み方:アクティ・アクティー
ラテン文字:akti
古代ギリシャ語の ἀκτή(海岸)から。地形としての海岸線や沿岸部を指し、崖や岩場も含む。類義語の παραλία(海辺)は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:νησί
読み方:ニシ・ニシー
ラテン文字:nisi
中世ギリシャ語 νησί(ν)(島、← νησίον「小島」, ← 古代 νῆσος「島」の指小形)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。語末の -ν が脱落して現代の νησί になった。指小形が指小性を失って一般語化する、現代ギリシャ語の名詞語形成の典型パターン。
源にある古代の νῆσος(島)は、印欧祖語の「泳ぐ、流れる、水」を表す語根に由来する説と、地中海の前ギリシャ語基層の語とする説(Beekes)の両方が論じられる。古代ギリシャ語の νῆσος は、ホメロス以来「水に囲まれた陸地」「海の島」を中心に指し、地中海の島嶼文化と密接に結びついた古層語。
書きことばの古典形 νήσος(島、書きことば)と、その指小形 νησίδα(小島、小さな島、書きことば、← 古代 νησίς, αιτ. -ίδα)は現代ギリシャ語にも並走しており、地名・学術・公式文書で使われる。「島嶼群」の νησιωτικό σύμπλεγμα, 国名「ニュージーランド」Νέα Ζηλανδία, 大陸の Ωκεανία(オセアニア)と並ぶ、地理学の体系の中で機能する。
ラテン語経由の系譜では、ラテン語 īnsula(島、← おそらく印欧祖語起源、ギリシャ語 νῆσος とは別系統の同義語)から、フランス語 île, スペイン語 isla, イタリア語 isola, 英語 isle / island, isolate(孤立させる、← ラ insula)の語族が広まり、ヨーロッパ各語の「島」語彙の中核となった。ギリシャ語 νησί はこのラテン語系統とは別の独自の系譜を保つ。
派生・関連語族として νησάκι(小島、口語の指小形), νησίδα(小島、書きことば), νησιώτης(島民、男性形), νησιώτισσα(島民、女性形), νησιώτικος / νησιωτικός(島の、島民の、形容詞), νησιωτοπούλα(島の娘、口語), νησιωτόπουλο(島の少年、口語), νησιωτικός χαρακτήρας(島民気質), αρχιπέλαγος(諸島、← αρχι-「主要な」+ πέλαγος「海」、ヴェネツィア語経由でエーゲ海全体を指す国際語化), ακρωτήριο νησί(岬の島), ηπειρωτικό κράτος(大陸国家、← ήπειρος「大陸」), νησιωτικό κράτος(島嶼国家)。
ギリシャは島嶼国家として知られ、エーゲ海・イオニア海に約 6,000 の島々(ただし有人は約 200 島)を有する。νησί はギリシャの地理・文化・歴史の根幹を成す概念で、エーゲ海諸島(Νησιά του Αιγαίου), イオニア諸島(Επτάνησα、← επτά「七」+ νησί), キクラデス諸島(Κυκλάδες), ドデカネス諸島(Δωδεκάνησα、← δώδεκα「十二」+ νησί), スポラデス諸島(Σποράδες)の地理区分は、各島の名前と複合した形で書きことばに頻出する。
「自分の故郷の島」の意味用法は、現代ギリシャの「島出身」アイデンティティ(ταυτότητα νησιώτη)の文化と密接に結びつく。文学・歌・映画では、νησί はギリシャ人の故郷意識・郷愁・帰属の象徴として頻出するモチーフ。Νίκος Καββαδίας の海洋詩、Mάνος Χατζιδάκις の映画『日曜はダメよ』(Ποτέ την Κυριακή)など、ギリシャ近代文化の中核を担うイメージとして機能する。
ギリシャ語:βράχος
読み方:ブラホス・ブラーホス・ヴラホス・ヴラーホス
ラテン文字:vrachos
中世ギリシャ語 βράχος(岩、大岩)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、ヘレニズム期に中性名詞として使われた τὸ βράχος(岩)が、中世期に「大きく堂々としたもの」のイメージから増大形 -ος の男性名詞として再解釈(μετάπλαση)された結果。源にあるのは、古代ギリシャ語 βραχύς(短い、浅い)の中性複数形 τὰ βράχεα(浅い場所、浅瀬、浅い海の岩場)で、もとは「浅瀬」「浅い海中の岩場」を意味していた語が、地形としての「岩」へと意味の中心が移った経路を持つ。
源にある古代の βραχύς(短い、浅い、低い、簡潔な)は、印欧祖語の「短い、わずかな」を表す語根に由来し、ラテン語 brevis(短い、← 英 brief, abbreviate, brevity), ゴート語 ga-maurgjan(短くする)と同族。古代ギリシャ語の βραχύς からは現代まで広範な派生語族が継承され、βραχίονας(腕、もとは「短い肩」「上腕」、βραχιόλι も同源), βραχυχρόνιος(短時間の), βραχυγραφία(速記、← 英 stenography と同類), βραχύβιος(短命の), βραχυκύκλωμα(短絡、ショート、電気用語)が並ぶ、極めて生産的な造語要素。
意味の変化のすじみちは興味深い:古代の「浅い場所」(船にとって危険な浅瀬の岩礁)が、ビザンツ期の航海語彙の中で「岩礁、岩場」へと意味の中心が移り、さらに中世期に陸の「大きな岩」へと拡張された。海洋・地形の語彙が、古代の形容詞から具体的な岩石を指す名詞へと変化する、意味の物質化の典型例。
派生・関連語族として βράχια(複数形、岩場、岩礁、複数の岩), βραχάκι(小さな岩、口語の指小形), βραχούδι(書きことばの指小形), βραχοτέιχισμα(岩壁、書きことば), βραχόκηπος(ロックガーデン、岩石庭園), βραχονησίδα(小さな岩礁の島、書きことば), βραχώδης(岩の多い、岩がちの、形容詞), αναρρίχηση σε βράχο(ロッククライミング), βραχογράφημα(岩絵、考古学)。
同じ岩・石の領域には、書きことば寄りの λίθος(石、書きことば、専門語), 日常の πέτρα(石、岩、口語の中心語), 大きな塊の όγκος(塊、岩塊), 岩盤の κιμωλιόλιθος(石灰岩、← κιμωλία「白亜」+ λίθος)が並び、規模・用途・専門性で言い分けられる。βράχος は中規模から大規模の岩塊や岩壁を指し、特に地形として迫ってくる印象を持つ語として機能する。
地理学的には、ギリシャの代表的な「岩」として、アテネのアクロポリスの岩(ο βράχος της Ακρόπολης), メテオラの巨大岩塊(οι βράχοι των Μετεώρων), モネンヴァシアの岩(ο βράχος της Μονεμβασιάς), ザキントスの岩礁(οι βράχοι της Ζακύνθου)など、観光・歴史・地質の中核となる岩石地形が多数あり、ギリシャの自然・文化遺産の象徴として広く認識されている。
比喩用法は活発で、人について「圧力に負けない頑丈で揺るがない人」を「岩」と呼ぶ慣用が定着している(στάθηκε βράχος「岩のように踏みとどまった」, σαν βράχος「岩のように頑丈な」, ἐπὶ τῆς πέτρας ταύτης「この岩の上に」、マタイ伝 16:18 のキリストのペテロへの言葉と並ぶ宗教的比喩)。岩の不動・堅牢のイメージを介した精神的強さの表現が、自然と人格の関係を結ぶ慣用表現として機能する。
ギリシャ語:ρυάκι
読み方:リアキ・リアーキ
ラテン文字:ryaki
古代ギリシャ語の ῥύαξ(流れ、小川)から。中世ギリシャ語 ρυάκιον(小川)を経て今に至る。
ποταμός(川)より小さい自然の水の流れに使う。水以外でも、液体が細く流れる筋を指すことがある。
近い語に ρεματάκι(小さな沢、小川)や ρείθρο(細い流れ、水路)など。人工の溝や水路には αυλάκι(溝、水路)、χαντάκι(掘り溝、どぶ)などがある。
ギリシャ語:έδαφος
読み方:エダフォス・エーダフォス
ラテン文字:edafos
古代ギリシャ語の ἔδαφος(地面、地表、底)からの学術借用。ἕδος(座、土台)に -φος が付いた形と考えられ、さらに ἕζομαι(座る)の根につながる。比喩の「土台、条件」として使う用法は、フランス語 terrain(地面、活動の場)の影響による。
派生語に εδαφικός(土壌の、領土の)、εδάφιο(節、聖書や法律の一節;古代 ἐδάφιον「底、節」から)、εδαφολογία(土壌学)、εδαφοτεχνική(土質工学)など。関連語に γη(地球、大地)、χώμα(土、土壌)、επικράτεια(領域、版図)、χώρα(国、土地)。
英語 edaphic(土壌の)は同じ古代ギリシャ語 ἔδαφος をもとにした生態学・農学の学術語で、土壌条件による生物の差を論じるときに使う。
ギリシャ語:χείλος
読み方:ヒロス・ヒーロス
ラテン文字:cheilos
古代ギリシャ語の χεῖλος(唇、縁、くちばし、岸)に由来。さらなる起源は確かでない。日常的な同義語に χείλι(唇)がある。
派生語に χειλικός(唇の)、χειλορραφία(口唇縫合)、χειλοσχιστία(口唇裂)、音声学の χειλοδοντικός(唇歯音)、χειλοϋπερωικός(唇軟口蓋音)など、医学・音声学の用語を多く作る語根。
英語 cheilitis(口唇炎)、cheiloplasty(口唇形成術)、cheiloschisis(口唇裂)も同じ古代ギリシャ語 χεῖλος をもとにした語。
ギリシャ語:ορίζοντας
読み方:オリゾダス・オリーゾダス・オリゾンダス・オリーゾンダス
ラテン文字:orizontas
古代ギリシャ語の ὁρίζων(境界を定めるもの)から。動詞 ὁρίζω(境を定める、区切る)の分詞で、もとは ὁρίζων κύκλος(視界を区切る円)のように、天文学で見える世界の限界を指す表現だった。
ὁρίζω は ὅρος(境界、境界標)から派生した動詞で、同じ語族に όριο(境界、限度)などがある。ラテン語 horizon を経て、英語 horizon や horizontal の語源にもなった。
空と地面・海面の境目だけでなく、複数形 ορίζοντες では知識や経験の広がり、将来の展望などにも使う。
物理学の ορίζοντας γεγονότων(事象の地平線)は光さえ抜け出せない境界を指し、χρονικός ορίζοντας は目標までの期間、υδροφόρος ορίζοντας は地下水を含む地層を意味する。
ギリシャ語:υφήλιος
読み方:イフィリョス・イフィーリョス
ラテン文字:yfilios
古代ギリシャ語の ὑπό(〜の下)と ἥλιος(太陽 → ήλιος)からなる ὑφήλιος(太陽の下のもの)に由来。もとは γη(大地)を修飾する形容詞だったが、修飾先の γη が省かれて名詞として独立し、-ος の語尾でも γη に合わせた女性形のまま残ったので冠詞は η が付く。
類義語に κόσμος(世界、宇宙)、γη(地球、大地)。κόσμος は秩序・宇宙・世界観を、γη は大地・地球そのものを、υφήλιος は「太陽の下のすべて」の発想で地球上・世界全土を言う。ミス・ユニバースのギリシャ語名 Μις Υφήλιος にもこの語が使われる。
英語の接頭辞 hypo-(下、過少)は ὑπό、元素名 helium(ヘリウム)は ἥλιος と同じ語源につながる。
ギリシャ語:παραλία
読み方:パラリア・パラリーア
ラテン文字:paralia
古代ギリシャ語の παράλιος(海岸の、海辺の)から。παρά(〜のそば)と ἅλς(海)からなる形容詞で、もとは παραλία χώρα(海岸地方)のように名詞を伴っていたが、παραλία 単独で名詞として定着した。派生語に παραλιακός(海岸の、沿岸の)。
類義語の ακτή は地形としての海岸線を指し、崖や岩場も含む。παραλία は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:πόντος
読み方:ポドゥトス・ポードゥトス・ポンドゥトス・ポーンドゥトス
ラテン文字:pontos
現代ギリシャ語の πόντος には二つの起源がある。日常で使う「センチメートル, 得点, 編み目」の πόντος はヴェネツィア語 ponto(点)からの借用で, 元はラテン語 punctum(刺された点)。文学的な「大海, 外海」を指す πόντος は古代ギリシャ語の πόντος(海上の通路, 大海)を継承したもの。
ヴェネツィア語経由の πόντος の語族は英語側に多い。point(点, 得点), punctuation(句読点), puncture(穴, 穿孔), appointment(約束)もラテン語 punctum の子孫。「センチメートル」の正式な語は εκατοστό だが, 日常では πόντος が使われることが多い。
古代ギリシャ語の πόντος はもと「渡る通路」の意味で, 同じ語源からラテン語 pons(橋), 英語 pontoon(浮き橋), pontiff(教皇, もとは「橋を架ける者」)が出ている。海の意味では θάλασσα(海全般), πέλαγος(外海, 沖合)が日常を担い, πόντος は文学や古風な表現に残る。
ギリシャ語:όρος
読み方:オロス・オーロス
ラテン文字:oros
古代ギリシャ語の ὅρος(境界、限界、定義)と ὄρος(山)から。
男性名詞の由来となった ὅρος は、土地の境界を示す標石としての意味から、論理学の「項」や定義、さらに条件や用語などの意味へつながった。同じ語族の動詞 ὁρίζω(境界を定める)からは ορίζοντας(地平線、水平線)も出ている。英語 horizon もこの系統に由来する。
中性名詞の由来となった ὄρος は「山」を表す別語。現代ギリシャ語では気息記号が廃止され、どちらも όρος と書くが、男性名詞 ο όρος は条件や用語などを、中性名詞 το όρος は山を指す。
日常で山を指すときは βουνό を使うことが多く、το όρος は山名や改まった地理名などに残る。複数形 όροι は生活や労働の条件にも使い、論理学・文法・数学では推論や文、式を構成する「項」も指す。μέσος όρος は三段論法では「中名辞」、数学では「平均値」を意味する。
ギリシャ語:βουνό
読み方:ヴノ・ヴノー
ラテン文字:vouno
古代ギリシャ語の βουνός(丘、小山)から。中世ギリシャ語 βουνόν を経て今の形になった。
βουνός はドーリス方言、またはキレナイカ地方の語と説明されることがあるが、さらに古い語源ははっきりしない。もとは男性名詞だったものが、中世以降に中性名詞として扱われるようになった。
山名や改まった地理名では όρος(山)も使われる。低い丘は λόφος(丘)と言う。
接頭辞 βουνο- は βουνοκορφή(山頂)などの語を作る。関連語は βουνίσιος(山の、山育ちの)、βουνάκι(小さな山)、βουνί, βουναλάκι など。πάγος(氷)と合わせた παγόβουνο は氷山を指す。
比喩では、洗濯物や本、借金などが山のように積み上がった大量のものや、克服しにくい大きな問題にも使われる。
ギリシャ語:ποταμός
読み方:ポタモス・ポタモース
ラテン文字:potamos
古代ギリシャ語の ποταμός(川)を継承。印欧祖語で「走る, 流れる」を表した語根から出た語。名詞にハイフンでつなげて「非常に長い〜」を表す合成表現(ταινία-ποταμός など)はフランス語 fleuve(大河)からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ποταμός の語族に ποτάμι(ふだんの会話で使う形), ποταμάκι(小さな川), ποταμίσιος(川の, 川沿いの), παραπόταμος(支流), 合成語 ιπποπόταμος(カバ, もとは「川の馬」), ποταμόψαρο(川魚), ποταμόπλοιο(川船), ποταμόκολπος(河口湾)。
英語 hippopotamus(カバ), potamology(河川学)もこの古代ギリシャ語 ποταμός から入った。日常では ποτάμι が広く使われ, ποταμός は地理や文学, 比喩表現で使うことが多い。
ギリシャ語:ωκεανός
読み方:オケアノス・オケアノース
ラテン文字:okeanos
古代ギリシャ語の ὠκεανός(大地を囲む大河, 大河の神)に由来。神話では大地を取り巻く一本の巨大な河であり, 同時にその河を擬人化したティタン神 Ὠκεανός の名でもある。現代の「大洋, 海洋」の用法はフランス語 océan, 英語 ocean, イタリア語 oceano からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὠκεανός の語族に ωκεάνιος(大洋の, 広大な), 合成語 ωκεανογραφία(海洋学), ωκεανογράφος(海洋学者), ωκεανοπόρος(大洋を渡る)。神話の Ωκεανός はウラノスとガイアの息子で, 妻は姉妹のテテュス, 娘たちは海のニンフ オケアニデス。
英語 ocean もラテン語 oceanus を経て同じ語源。海全般を言う θάλασσα(海)や岸から離れた沖の πέλαγος(外洋, 沖)に対し, ωκεανός は太平洋や大西洋のような大陸を隔てる大水域に使う。
ギリシャ語:πέλαγος
読み方:ペラゴス・ペーラゴス
ラテン文字:pelagos
古代ギリシャ語の πέλαγος(海、外洋)に由来。印欧祖語で「平らに広がる」を表す語根に続くとされる。
ラテン語 pelagus と語源を共有する。英語 archipelago は中世イタリア語 arcipelago を経て古代ギリシャ語の ἀρχιπέλαγος(主たる海)に連なり、もとはエーゲ海を指した。エーゲ海には島が多いため、のちに「多島海、列島」の意味でも使われるようになった。
同じ語根からギリシャ語内に πλατύς(広い), πλάγιος(斜めの), πλάξ(平板), παλάμη(手のひら)が派生。派生に πελάγιος(外洋の), πελαγικός(外洋性の), πελαγίζω(水びたしになる), πελαγώνω(途方に暮れる)。合成に αρχιπέλαγος, αρχιπέλαγο(群島、列島), βαθυπελαγικός(深海の)。海全般には θάλασσα を使い、πέλαγος は沖合の広い海域にかぎって使う。大洋は ωκεανός で区別する。

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