中世ギリシャ語 παιγνίδι(< παιγνίδιον「小さな遊び、おもちゃ」、← 古代 παίγνιον「遊び、おもちゃ」の指小形)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世期に [γ > x] への音変化が動詞 παίχτης(プレーヤー、← 古代 παίκτης の中世形)からの類推(αναλογική επίδραση)で起こり、現代の標準綴り παιχνίδι が定着した。古い綴りを残した形 παιγνίδι もまれに口語に残る。
源にある古代の παίγνιον(遊び、おもちゃ、戯れ、見世物)は、動詞 παίζω(遊ぶ、戯れる、楽器を奏でる、演じる、← παῖς「子供」由来)の派生で、もとは「子供が遊ぶように戯れること、子供の遊び道具」を意味した。同じ語族からは παιχνιδιάρης(遊び好きの、いたずら好きの), παιδιά(遊び戯れ、書きことば), παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)が出ている。
源にある古代の παῖς(子供、息子、娘、奴隷の若者)は、印欧祖語の「子供、若い者」を表す語根に由来し、ラテン語 puer(少年、子供), 英語 few と関連する古層語。古代ギリシャ語の παῖς からは、古代以来の派生語族として、παιδί(子供、現代の継承形), παιδεία(教育、教養、書きことば), παιδαγωγός(教育者、← παῖς + ἄγω「導く」、英 pedagogue), παιδιατρική(小児科), パイドス(pedagogy, paedophilia などの語幹)が広く出ている、教育・子供に関する語彙の根幹をなす語族。
派生・関連語族として παιχνιδάκι(小さなおもちゃ、たやすいこと、指小形), παιχνιδιάρης(遊び好きの、いたずらっぽい、形容詞), παιχνιδίζω(戯れる、ふざける、動詞), παιχνιδίσματα(戯れごと、複数形), παίζω(遊ぶ、演奏する、演じる、動詞), παίκτης(プレーヤー、選手)。複合表現では ηλεκτρονικά παιχνίδια(電子ゲーム、← 英 video games の翻訳借用), παιχνίδι ρόλων(ロールプレイ、← 英 role-playing game), ομαδικό παιχνίδι(チームゲーム)のような近代造語が広く使われる。
意味の領域は古代以来一貫して幅広く、子供のおもちゃ、ルールのある遊びやゲーム、スポーツの試合、運任せの賭け事、人を振り回す駆け引き、政治の裏工作、光や色の戯れまで、「遊び」の意味の連続体として体系化されている。比喩用法も豊富で、παίζω διπλό παιχνίδι(二重スパイ的に振る舞う), παιχνίδι νεύρων(神経戦), τα παιχνίδια της τύχης(運命のいたずら)など、人間関係・政治・運命の語彙にも深く入り込んでいる。