
文中の主要構成要素の語順
文中の主要構成要素の語順について
格による語順の自由と情報構造
- 格語尾が文中の役割を示すため、主語・動詞・目的語の順序は自由に並べ替えられる
- どの語順が選ばれるかは情報構造(旧情報/新情報、主題/焦点)によって決まる
特定の要素を強調しない文の語順パターン
- VSO(動詞ー主語ー目的語):新情報の提示、不特定の主語、出現・存在を表す動詞などで選ばれやすい
- SVO(主語ー動詞ー目的語):主語が聞き手にとって既知の具体的な存在である場合に選ばれやすい
- VOS(動詞ー目的語ー主語):動詞と目的語が既知の背景情報で、主語が新たに導入・再導入される場合に選ばれやすい
格による語順の自由と情報構造
ギリシャ語において、節の主要な構成要素である主語・動詞・目的語の配置は非常に柔軟です。たとえば「母は父を叱った」という内容は、以下の6通りの語順で表現でき、すべて文法的に正しい文になります。
以下では、主語(主格)、動詞、目的語(対格) の並び方を見ます。
- Η μητέρα μου μάλωσε τον πατέρα μου(SVO)
- Μάλωσε η μητέρα μου τον πατέρα μου(VSO)
- Μάλωσε τον πατέρα μου η μητέρα μου(VOS)
- Τον πατέρα μου μάλωσε η μητέρα μου(OVS)
- Η μητέρα μου τον πατέρα μου μάλωσε(SOV)
- Τον πατέρα μου η μητέρα μου μάλωσε(OSV)
このように語順が柔軟であるのは、名詞句が格語尾によって文中の役割を示すためです。主格は主語、対格は直接目的語、属格や前置詞句は間接目的語などの役割を表すので、語順に頼らなくても名詞句の役割がわかります。
しかし語順はランダムに選ばれるわけではありません。上の6つの語順はすべて同じ内容を表しますが、文脈によってどれが適切かが異なります。どの語順が自然に選ばれるかは、各要素が「既知の情報」か「新しい情報」かによって左右されます。
さらに、特定の要素をとくに前面に出すことで、それをより強く印象づけることもできます。以下では、まずそのような強調を明示的に行わない場合に見られる典型的な語順パターンを見ます。この場合、主に3つの語順が見られ、情報構造に加えて動詞の性質などの文法的要因もその選択に関わります。要素をより強く際立たせる手段(主題化・転置・フォーカス)は次のページで扱います。
特定の要素を強調しない文の語順パターン
特定の要素を強調しない文は、中立的なイントネーションで発音されます。会話の冒頭や、「ニュース聞いた?(Τα ‘μαθες τα νέα;)」といった言葉の後に続く場合、あるいは内容がまったく予測できない文脈でよく使われます。
このような文脈では、VSO(動詞ー主語ー目的語)とSVO(主語ー動詞ー目的語)の語順が最も一般的です。VOS(動詞ー目的語ー主語)も使われます。それぞれが選ばれる条件を以下で見ていきます。
動詞ー主語ー目的語(VSO)
動詞が主語や目的語の前に来る語順は、自動詞(目的語がない文)でより頻繁に見られますが、他動詞でも見られます。この語順が選ばれる要因は以下の通りです。
予測できない新情報を提示する場合
- Ξαφνικά αρπάζει ο Γιάννης το παλτό του και φεύγει
- 突然、ヤニスはコートをひっつかんで出て行った。(出来事全体が新しく提示されている)
- Suddenly John grabs his coat and leaves
主語が不特定で漠然としている場合
- Κυκλοφορούν διάφορες φήμες τώρα τελευταία ότι…
- 最近、……という様々な噂が流れている。(主語は不特定の「様々な噂」)
- Various rumours have been circulating recently that…
疑問文や否定文ではない文で、不特定の κανείς や κάποιος が主語になる場合
- Ίσως να ’ρθει κανείς/κάποιος να με ζητήσει
- 誰かが私を訪ねてくるかもしれない。(主語は不特定の「誰か」)
- Someone may come asking for me
出現・進入・存在・到着・開始などを表す動詞の場合
- Δεν μου παρουσιάζονται συχνά τέτοιες ευκαιρίες
- そのような機会はめったに訪れない。(何かが現れる・訪れるという出来事を述べている)
- Such opportunities do not present themselves to me often
- Άρχισαν χθες τα γυρίσματα της νέας ταινίας του Τζέιμς Μποντ
- 昨日、ジェームズ・ボンドの新作映画の撮影が始まった。(何かが始まったという出来事の発生を述べている)
- The filming of the new James Bond picture started yesterday
副詞など他の要素が文頭に来ている場合
- Πίσω από τα παρασκήνια ακούστηκε το κλάμα της
- 舞台裏から彼女の泣き声が聞こえた。(文頭の副詞句が場面設定になっている)
- Behind the scenes one could hear her crying
κανείς が主語の場合を除き、上記の文は主語を動詞の前に置くこともできますが、ニュアンスがわずかに変わります。たとえば直前の「出現・進入・存在・到着・開始などを表す動詞」の2つ目の例で主語を文頭に出すと次のようになります。
- Τα γυρίσματα της νέας ταινίας … άρχισαν χθες
- (その)新作映画の撮影は……昨日始まった。
- The filming of the new picture … started yesterday
この文は、以前にその映画についての話が出ていて撮影開始が関心事であったことを示唆します。つまりこのSVOの文は「撮影開始について」述べているのに対し、VSOの語順は単に「新しい出来事の発生」を告げています。
主語ー動詞ー目的語(SVO)
この語順も新情報を伝える際に使われますが、VSOとは少し性質が異なります。主語が話者の背景知識の一部である場合(聞き手も知っている人物の名前や、特定の具体的な名詞句など)に、主語が動詞より前に来る傾向があります。
他動詞の文で、主語が聞き手にとって既知の具体的な存在である場合
- Ο Γιάννης αγόρασε καινούργιο αυτοκίνητο
- ヤニスは新しい車を買った。(聞き手はヤニスを知っている)
- John bought a new car
- Ο Υπουργός Παιδείας κάλεσε αντιπροσώπους των φοιτητών σε μια συνάντηση
- 教育大臣は学生代表を会合に招いた。(聞き手は教育大臣という特定の存在を想定できる)
- The Minister of Education invited student representatives to a meeting
主語が不特定であっても、特定の対象を指しており、聞き手にも知られている場合
- Κάποιοι υπουργοί αποκρύπτουν την αλήθεια για την οικονομική κατάσταση
- 一部の大臣たちは経済状況についての真実を隠している。(主語は不特定でも、誰のことかある程度見当がつく)
- Certain ministers are hiding the truth about the economic situation
動詞ー目的語ー主語(VOS)
この語順は、特に動詞と目的語の両方が既知の背景情報の一部である場合に適切です。
目的語が動詞の意味からある程度予測できる場合
- Φόρεσε το σακάκι του ο Τάσος και έφυγε
- タソスは上着を着て出て行った。(「着る」なら何を着るかがある程度予測できる)
- Tasos put on his jacket and left
動詞と目的語が一種の慣用表現を形成している場合
- Έτσι κάνει την πλάκα του ο Δημήτρης
- こうやってディミトリスは楽しんでいる(ふざけている)のだ。(動詞と目的語がまとまった表現になっている)
- This is how Dimitris amuses himself
主語がその文脈で初めて導入される、または再導入される場合
- Ύστερα μας είπε τα δικά του κι ο Γιάννης
- その後、ヤニスも自分の身の上話を私たちに話してくれた。(主語の「ヤニス」がここで付け加えられている)
- Later it was John who told us his stories
- Εκεί που τρώγαμε ανοίγει την πόρτα ένας παπάς και…
- 私たちが食べているところに、ある司祭がドアを開けて……。(主語の「ある司祭」がここで新たに導入される)
- As we were eating, a priest opens the door and…
- Τώρα μαθαίνει πιάνο η Ελένη, του χρόνου θα αρχίσει και η Μαίρη
- 今はエレーニがピアノを習っていて、来年はメアリーも始める予定だ。(誰が習っているかという主語が順に導入されている)
- Now it is Helen who is learning the piano, next year Mary will start too
主題化・転位構文・焦点化
主題化・転位構文・焦点化について
