ギリシャ語:νεύρα
読み方:ネヴラ・ネーヴラ
ラテン文字:nevra
νεύρο(神経)の複数形 νεύρα が、感情の領域で「神経の張りつめ、いらだち、怒り」を表す pluralia tantum 的用法として独立して使われている語。基本となる νεύρο 自体は、古代ギリシャ語 νεῦρον(腱、神経、弓の弦)を、近代以降に書きことばから再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)の側面と、ヘレニズム期に新たに加わった「神経」の意味を意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として保持する側面を併せ持つ。
「いらだち、怒り」の用法は、近代以降にフランス語 nerfs(神経、神経過敏、いらだち)の意味展開を取り込んだ意味借用の層によるもので、英語 nerves(神経、ぴりぴり、神経過敏), ドイツ語 Nerven も同じ比喩展開を共有している。身体器官としての神経が、感情・心理状態の比喩へと転じる用法は、19 世紀以降のヨーロッパ語に共通する近代的な意味展開。
源にある古代の νεῦρον は、印欧祖語の「腱、繊維」を表す語根に由来し、ラテン語 nervus(腱、筋、活力、神経、← 英 nerve, sinew の語源), サンスクリット snāvan-(腱)と同族。古代ギリシャ語の νεῦρον は最初は「腱」を中心に指し、弓の弦(弓の腱)にも使われたが、ヘレニズム期の医学(ガレノスら)で解剖学的な「神経」の概念が発達するにつれて、現代の neuron, neurology の意味の出発点となった。
近代以降、フランス語の名詞接頭辞 névr(o)- / neur(o)- としてヨーロッパの医学・心理学語彙に再輸出され、neurology, neuralgia, neurasthenia, neurosis などの近代造語の素材になった。これらはギリシャ語にも逆輸入される形で、νευρολογία(神経学), νευραλγία(神経痛), νευρασθένεια(神経衰弱), νεύρωση(神経症)として再借用されている、典型的な国際造語要素。
派生・関連語族として νεύρο(単数形、神経、書きことば、心理用法では一般的), νευρικός(神経の、神経質な、形容詞), νευρικότητα(神経質さ、書きことば), νευράκια(ちょっとしたいらだち、指小形、口語), νευριάζω(いらつく、動詞), νευριασμένος(いらいらした、過去分詞), εκνευρίζω(人をいらつかせる), εκνευρισμός(いらだち、書きことば), νευρικό σύστημα(神経系)。
同じ「怒り・いらだち」の領域には、広い「怒り」の θυμός(怒り、立腹), 重く深い「憤怒」の οργή(激しい怒り), 短気な「かんしゃく」の τσαντίλα(かんしゃく、口語), ぴりついた「神経の張り」の νεύρα が並び、強さと持続性で言い分けられている。νεύρα は最も口語的で、瞬間的・継続的なぴりつきを軽く言える幅広い使い勝手を持つ。慣用句では γερά / ατσάλινα / σιδερένια νεύρα(鉄の神経、肝が据わっていること), πόλεμος νεύρων(神経戦), τα νεύρα μου!(もううんざりだ)が頻出する、口語表現の宝庫になっている。

中性名詞
感情
怒り 
形容詞
年齢
人
スポーツ 
生と死
様態 
天気 
宝石・鉱物 
魔術 
水 
素材
飲み物
道具 