ギリシャ語:μυαλό
読み方:ミアロ・ミアロー
ラテン文字:myalo
中世ギリシャ語 μυαλόν(脳)の語末 -ν が脱落して現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形 μυαλόν は、ヘレニズム期 μυαλός(脳、髄)が中性語尾化(μετάπλαση)で μυαλόν になったもので、その元はさらに古代ギリシャ語 μυελός(骨髄、髄)にさかのぼる。中性化は同じ身体部位の中性名詞 κεφάλι(頭、← κεφάλιον)の語形に引かれた、中世期の系統的な品詞・性の調整の例。
源にある古代の μυελός(骨髄)は、印欧祖語の「肉、髄、内側にあるもの」を表す語根に由来し、サンスクリット mastiṣka-(脳), ラテン語 medulla(髄、骨髄、心髄、中心、← 英 medulla の語源)と関連する系譜の語。古代では「骨髄」を中心に指したが、ヘレニズム期には頭蓋骨の中の「脳髄」も指すようになり、中世以降は「脳」を中心義として現代まで続いている。
書きことばの古典形 μυελός は、現代でも医学・解剖学の専門語として並走しており、νωτιαίος μυελός(脊髄), μυελός των οστών(骨髄)の形で使われる。同じ古代の μυελός から、近代の科学・医学語彙には myeloid(骨髄性の), myelin(ミエリン、神経鞘の物質), multiple myeloma(多発性骨髄腫)が国際語として広まり、英語・仏語経由で μυελοειδής(骨髄性の), μυελίνη(ミエリン)として現代ギリシャ語に再借用されている。
派生・関連語族として μυαλωμένος(分別のある、賢明な、形容詞), μυαλό-(脳の、知性の、を表す連結形), μυαλουδάκι(小さな脳、知能、可愛らしい考え、指小形), ξεμυαλίζω(人の頭を狂わせる、誘惑する), ξεμυαλισμένος(夢中になっている、惑わされた), αμυάλιστος(思慮を欠く、形容詞), ψιλομυαλιά(こざかしさ、口語)。
意味の領域では、近い語の νους(精神、理性、書きことばの古典形), νόηση(認知、知性作用、書きことば), νοημοσύνη(知能、知性、書きことば), διάνοια(知性、思考力、書きことば)と棲み分けがあり、μυαλό は最も日常的・具象的で、物理的な脳・思考の拠点・分別・正気を含む幅広い意味を持つ口語の中心語として機能する。比喩用法では「脳を絞る(στύβω το μυαλό μου)」「脳に空気が入る(παίρνουν τα μυαλά μου αέρα)」のような身体イメージが活発で、思考や感情を脳の物理的状態として描く慣用句の宝庫になっている。

中性名詞
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