ギリシャ語読み索引: ト
ト から始まる単語 57 語。
ト から始まる単語 57 語。
ギリシャ語:τζιτζίκι
読み方:トゥジトゥジキ・トゥジトゥジーキ・トゥジトゥズィキ・トゥジトゥズィーキ・トゥズィトゥジキ・トゥズィトゥジーキ・トゥズィトゥズィキ・トゥズィトゥズィーキ
ラテン文字:tzitziki
ギリシャ語:τούφα
読み方:トゥファ・トゥーファ
ラテン文字:toufa
中世ギリシャ語 τούφα(房、束)が、俗ラテン語 tufa(兜の飾り房、毛の束)からの借用として中世期にギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。
源にある俗ラテン語 tufa はゲルマン起源の語と見られ、古高ドイツ語 zopf(房、束), 英語 top, tuft(房)と同じ語族にさかのぼる。中世ヨーロッパの軍事文化(兜の頂きを飾る馬の毛の房、騎士の家紋的装飾)の語彙とともに、地中海・ビザンツ世界に広まった。
英語 tuft, フランス語 touffe(房、束)も同じ俗ラテン語 tufa からの並行借用で、髪の房・植物の茂み・羊毛の塊など「まとまったもの、密集した塊」を指す広い意味で使われる。
派生に τουφίτσα(小さな房、指小形)。類義語に τρίχα(一本の毛), μαλλί(髪、羊毛), μπούκλα(巻き毛、巻き房), αφέλεια(前髪), χαίτη(たてがみ、長く伸ばした髪), θύσανος(房、書きことば)。τούφα は具体的に「束ねられた毛・房・葉・雪」など、まとまった物質的な単位を指す中心語で、ぼたん雪を τούφες と表現するなど、自然描写にも広く使われる。
ギリシャ語:τραγούδι
読み方:トゥラグディ・トゥラグーディ
ラテン文字:tragoudi
中世ギリシャ語の τραγούδι(歌)に由来。動詞 τραγουδώ(歌う)から作られた名詞で、歌われたもの、つまり作品や曲としての歌を指す。
個々の歌のほか、歌のジャンル、歌唱、鳥のさえずりや水のせせらぎなどの旋律的な音にも使う。指小形 τραγουδάκι は子供向けの短い歌のほか、できの悪い取るに足らない歌を揶揄する表現としても使われる。
歌う行為そのものを指す名詞には τραγούδημα や τραγούδισμα がある。歌い手は τραγουδιστής、その女性形は τραγουδίστρια と呼ぶ。
ギリシャ語:τραγουδιστής
読み方:トゥラグディスティ・トゥラグディスティー
ラテン文字:tragoudistis
中世ギリシャ語 τραγουδιστής(歌手、歌い手、← 動詞 τραγουδώ「歌う」+ -ιστής 動作主名詞接尾辞)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。動詞語幹 τραγουδ- に「〜する人」を表す接尾辞 -ιστής を付けたギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)で、現代ギリシャ語の生産的な動作主名詞造語パターンに乗っている。
源にある中世の τραγουδώ(歌う、現代も継承される動詞)は、ヘレニズム期 τραγῳδέω / τραγωδῶ(悲劇を歌う、悲劇の合唱を歌う、悲劇を演じる、← 古代 τραγῳδία「悲劇」、← τράγος「ヤギ」+ ᾠδή「歌」、文字どおり「ヤギ歌」)の意味と用法が拡大して、一般の歌唱を意味するようになった語。古代の τραγῳδία は、ディオニュソス祭でヤギを犠牲に捧げて歌われた合唱から発達した演劇ジャンルの名前で、近代ヨーロッパ語の tragedy / tragédie / Tragödie の語源にもなった、世界文学史の中核概念。
源にある古代の ᾠδή(歌、ode、← ἀείδω「歌う」)は、印欧祖語の「声、歌う」を表す語根に由来し、現代ギリシャ語の τραγούδι(歌、← τραγῳδ- + -ι), ωδή(書きことば、頌歌), αηδόνι(ナイチンゲール、文字どおり「歌い手」)として継承されている。
接尾辞 -ιστής は、動詞から行為者・職業人を表す名詞をつくる現代ギリシャ語の中心的な造語要素で、極めて生産的。同じパターンで作られた語族には、ποδοσφαιριστής(サッカー選手), μπασκετμπολιστής(バスケット選手), βιολιστής(バイオリン奏者), πιανίστας(ピアニスト), σολίστ(ソリスト), μαθητής(生徒), πελάτης(客), αθλητής(アスリート)が並び、職業・行為者の名詞の系譜の中核を成す。
派生・関連語族として τραγουδίστρια(歌手、女性形、← τραγουδιστ(ής) + -τρια 女性形接尾辞), τραγουδιστά(歌うように、副詞), τραγουδιστός(歌うような、メロディアスな、形容詞), τραγούδι(歌), τραγουδώ(歌う、動詞), αοιδός(古風な「歌い手、吟唱詩人」、書きことば), ψάλτης(聖歌歌手、教会の聖歌係), τενόρος(テノール、← 伊 tenore), βαρύτονος(バリトン), βαθύφωνος(バス), σολίστ(ソリスト、← 仏 soliste)。
同じ「歌う人」の領域には、職業の τραγουδιστής, 古風・文学的な αοιδός(吟唱詩人), 教会の ψάλτης(聖歌歌手), ライブ歌手の περφόρμερ(パフォーマー)が並び、文脈と格式で言い分けられる。τραγουδιστής は最も日常的・中立的で、ポピュラー、ロック、クラシック、伝統音楽、オペラまで含む幅広い「歌う職業人」を指す中心語として機能する。文学では「詩や歌でたたえる人」を意味する比喩用法もあり(例: ο Παλαμάς, ο τραγουδιστής της λιμνοθάλασσας「潟湖を歌った詩人パラマス」), 古代の ἀοιδός 概念とつながる詩人と歌い手の連続性を反映している。
ギリシャ語:τραγουδίστρια
読み方:トゥラグディストゥリア・トゥラグディーストゥリア
ラテン文字:tragoudistria
τραγουδιστής(歌手、歌い手、詩歌でたたえる人)の女性形。
ギリシャ語:τραγούδισμα
読み方:トゥラグディズマ・トゥラグーディズマ
ラテン文字:tragoudisma
τραγούδι(歌)と同じ語族で、動詞 τραγουδώ(歌う)から作られた名詞。歌う行為や歌っている状態を指す。
同義語に τραγούδημα がある。
ギリシャ語:τραγούδημα
読み方:トゥラグディマ・トゥラグーディマ
ラテン文字:tragoudima
τραγούδι(歌)と同じ語族で、動詞 τραγουδώ(歌う)から作られた名詞。歌う行為や歌っている状態を指す。
同義語に τραγούδισμα がある。
ギリシャ語:δράκος
読み方:ドゥラコ・ドゥラーコ
ラテン文字:drakos
中世ギリシャ語 δράκος(蛇、竜、伝承の魔物)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、古代ギリシャ語 δράκων(蛇、大蛇)が、東方の竜の表象の影響を受けて意味の中心が「人間型の魔物」へと移り、語末も -ος に再形成(μετάπλαση、← γέρων > γέρος の同類のパラダイム整理)された結果生まれた形。古代の δράκων からは、対格形を主格化した δράκοντας と、-ος 語尾化した δράκος の二形が中世期に成立し、現代まで並走している。
源にある古代の δράκων(蛇、大蛇、想像上の怪物)は、動詞 δέρκεσθαι / δέρκομαι(鋭く見る、じっと見つめる)からの派生で、印欧祖語の「見る、視線」を表す語根に由来する。「鋭く見るもの」が原義で、蛇の鋭い視線から「蛇」を意味するようになったという解釈が古代から続く。同じ語根からはサンスクリット dr̥ś-(見る), アイルランド語 derc(目)が並ぶ古層語族。
ラテン語経由の系譜では、ラテン語 dracō(蛇、竜、軍旗)から、フランス語 dragon, スペイン語 dragón, イタリア語 dragone, 英語 dragon, ドイツ語 Drache の語源となり、ヨーロッパ各語の「竜」語彙の共通祖となった。古代ギリシャ語 δράκων が西欧文化の竜のイメージそのものの源流にある、神話・伝承語彙の中核。
ギリシャの民間伝承では δράκος は、山に住む人型または超自然的な怪物として語られ、英雄譚(昔話、伝説)の中で英雄が打ち倒すべき敵役として登場する。アンドレアス・カルカヴィッツァスやニコラオス・ポリティスら 19–20 世紀の民俗学者が収集したギリシャ民話の中で、δράκος の像は、頭が複数あり、火を吐き、姫を捕らえ、財宝を守り、最後に英雄に倒される、典型的なドラゴン像として体系化されている。同じ伝承の領域には、女の魔物の λάμια(ラミア、← 古代 Λάμια), 悪霊の δαίμονας, 神霊の τέρας(怪物、奇跡)が並ぶ。
派生・関連語族として δράκοντας(竜、より一般的な書きことば形), δράκαινα(雌竜、女の竜), δρακάκι(小さな竜、指小形、ペット用の竜のキャラクターにも使う), δρακούλης(小さなドラゴン、子供への愛称), δρακογενής(竜から生まれた), δρακοκυνήγι(竜狩り), δρακοκτόνος(竜殺し)。現代ギリシャ語で「蛇」を指す日常語は別系統の φίδι(蛇、← 古代 ὄφις)で、δράκος / δράκοντας は神話・伝承の専門語として棲み分けられる。
文学的用法では、ニコス・カザンザキスの『キリスト最後の試み』のキリスト・ドラゴン像、ミシェル・ファイベルの世界文学論など、西欧の竜伝承全体の中で δράκος は東地中海の独特の表象を象徴する語として位置づけられる。慣用句 Καλό το παραμύθι σου, αλλά δεν έχει δράκο(お前のおとぎ話はいいが、竜が出てこない)は、話に肝心なものが欠けている、信じがたい話だ、という意味で使われる、伝承文学の比喩を介した懐疑表現。
ギリシャ語:Δράκων
読み方:ドゥラコン・ドゥラーコン
ラテン文字:drakon
古代ギリシャ語の Δράκων に由来。普通名詞 δράκων(龍、大蛇)から固有名に転じた語で、δράκων はさらに動詞 δέρκομαι(注意深く見る、睨む)に由来し、「鋭い目をしたもの」がもとの意味だった。現代ギリシャ語では、龍・ドラゴンを表す普通名詞は δράκος として残り、固有名としては古代形のまま Δράκων が立法者名と星座名に使われている。
男性名 Δράκων は、古代アテネで前7世紀に成文法を制定した立法者の名として特によく知られる。死刑を多用するきわめて厳しい刑罰で名を残し、英語 draconian(苛酷な、厳格な)もこの人物名からラテン語 Dracō を経て入った。英語 Draco(星座名、立法者名)、dragon なども同じ語源。
ギリシャ語:τραπουλόχαρτο
読み方:トゥラプロハルト・トゥラプローハルト
ラテン文字:trapoulocharto
τράπουλα(トランプ、カード一組)と χαρτί(紙、トランプの札)から成る複合語。τράπουλα はイタリア語 trappola(罠、欺き)から入った外来語。
札束全体は τράπουλα、一枚ごとの札は τραπουλόχαρτο と言い分ける。同じ一枚の札を指す語に、文語寄りの παιγνιόχαρτο や、口語的な χαρτί もある。
ギリシャ語:τράπεζα
読み方:トゥラペザ・トゥラーペザ
ラテン文字:trapeza
古代ギリシャ語の τράπεζα(食卓, 両替台)を継承。τρι-(三)と πέζα(足, πούς「足」の語族)からなる合成語で, 「三本足の台」がもとの意味。両替商が台の上で金銭を扱ったことから「両替台」の意味が加わり, 現代の「銀行」の意味は英語 bank からの意味借用で整った。ミケーネ時代の線文字 B にも to-pe-za の形で現れる。
英語 trapeze(空中ブランコ), trapezoid(台形), trapezius(僧帽筋)はいずれも同じ τράπεζα から形の連想でできた語。
派生に τραπεζίτης(銀行家), τραπεζικός(銀行の), τραπέζι(テーブル。指小形からできた現代の語形)。
λογαριασμός(勘定, 口座, 請求書)が個別の口座や請求書を指すのに対し, τράπεζα は金融機関そのものを指す。κέρδος(利益, 儲け)は金融活動の結果として残るものを指す。
ギリシャ語:τραπέζι
読み方:トゥラペジ・トゥラページ・トゥラペズィ・トゥラペーズィ
ラテン文字:trapezi
古代ギリシャ語の τραπέζιον(小さな卓、食卓)から。これは τράπεζα(卓、食卓)に指小辞 -ιον が付いた形で、中世ギリシャ語 τραπέζιν を経て今の形になった。
τράπεζα は「四つ足のもの」と説明されることが多く、τετρα-(四)と πούς(足)につながる πέζα(足、脚)に由来。現代ギリシャ語の τράπεζα は同じ語族で、銀行を指すほか、στρογγυλή τράπεζα のような固定表現にも残る。
英語 trapezium(台形)もラテン語を経て同じ τραπέζιον に由来する。古代の「小さな卓」の形から、四辺形の名にも使われるようになった。
家具としては καρέκλα(椅子)など。食事そのものには γεύμα(食事)や φαγητό(食べ物、料理、食事)などを使う。
τραπέζι は食卓を囲む場面から、会食や宴席の意味にも広がる。主に複数形では、双方が同じ席に着くイメージから、交渉や協議の場を指すこともある。
小さなテーブルは τραπεζάκι や τραπεζίδιο など。
家具の丸いテーブルは στρογγυλό τραπέζι と呼ぶが、円卓会議・ラウンドテーブル討論は στρογγυλή τράπεζα のように女性形 τράπεζα を使う。
ギリシャ語:δουλειά
読み方:ドゥリア・ドゥリアー
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλειά を継承。もとは δοῦλος(奴隷)から作られた δουλεία(奴隷状態、隷属)で、母音連続を避ける音変化で δουλειά の形になり、意味も「仕事、労働」全般に移った。同じ綴りでストレス位置だけ異なる δουλεία(ドゥリーア)は「奴隷制度、隷属」を保ったまま別の語として残る。
派生語に動詞 δουλεύω(働く)、δουλευτής(働き者)、指小語 δουλίτσα(ちょっとした仕事)。類義語の εργασία(労働、業務)は ώρες εργασίας(労働時間)、σύμβαση εργασίας(雇用契約)など雇用・労働制度の定型語や複合語で使い、論文・レポート・作品といった「成果物としての仕事」も指す。δουλειά はふだんの「仕事」に使う。επάγγελμα(職業)は具体的な職種、κάματο は苦労を伴う重労働を指す。
ギリシャ語:δουλεία
読み方:ドゥリア・ドゥリーア
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλεία(奴隷状態、隷属、隷属の身分)に由来する学術借用(διαχρονικό δάνειο)。動詞 δουλεύω(仕える、奴隷として働く)+ 行為・状態を表す名詞語尾 -εία の合成で、δοῦλος(奴隷)にさかのぼる。法律用語の「地役権」の用法はフランス語 servitude(隷属、地役権)からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)で近代に加わった。古代の δοῦλος 自体は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、ミケーネ・ギリシャ語にすでに do-e-ro の形で現れているため、エーゲ系基層からの語とする説が有力。同じ古代 δοῦλος から、キリスト教神学のラテン語化を経て、ラテン語 dulia(聖人崇敬。神への崇拝 latria と区別される下位の敬礼)が生まれた。同じ綴りで強勢位置だけが異なる δουλειά(仕事)は同じ δοῦλος 由来だが、中世ギリシャ語で「奴隷の作業」から「労働一般」へと意味が動いた継承語で、δουλεία とは経路が異なる。
類義語に σκλαβιά(奴隷の身分、隷属。中世のスラブ系民族 Σκλάβοι に由来する継承語で、感情的・歴史的な文脈、とくにオスマン帝国支配下のギリシャを指すときに使う), υποτέλεια(属国状態、貢納義務。古代由来の書き言葉の硬い形), υποδούλωση(隷属化、奴隷化)。δουλεία は概念的・法的な用語として奴隷制度・隷属を指し、また法律用語として地役権を指す形として広く使う。派生に δουλικός(奴隷の、卑屈な), δουλικότητα(卑屈さ、屈従)。関連語に δοῦλος(奴隷。古代由来の元の語), δουλειά(仕事。同源で強勢位置の異なる継承語), δουλεύω(働く、仕える。動詞), υπόδουλος(隷属した), δουλοσύνη(隷属、奴隷状態。詩歌的・古風な形)。合成語に δουλοκτησία(奴隷所有制), δουλεμπόριο(奴隷貿易), δουλοπάροικος(農奴)。
ギリシャ語:τριαντάφυλλο
読み方:トゥリアダフィルロ・トゥリアダーフィルロ・トゥリアンダフィルロ・トゥリアンダーフィルロ
ラテン文字:triantafyllo
中世ギリシャ語の τριαντάφυλλον(三十枚の花びらを持つ花。τριάκοντα「三十」+ φύλλον「葉、花びら」の合成)を継承。多くの花弁を持つバラの形態を捉えた中世期のギリシャ語内合成で、古代の ῥόδον に代わってバラを指す形として広まった。古代の ῥόδον も今は ρόδο として詩歌や文芸の硬い文脈に残り、ラテン語 rosa を経由して英語 rose, ドイツ語 Rose, イタリア語 rosa などのバラを指す語の語源になった。英語 rhododendron(シャクナゲ。直訳「バラの木」)はこの ῥόδον からラテン語経由で入った学術借用で、τριαντάφυλλο とは別系統。τριαντάφυλλο 自体もバルカンや東欧の周辺言語に広がり、アルバニア語 trëndafil, ルーマニア語 trandafir, ブルガリア語 трендафил, ウクライナ語 троянда などの形で借用された。
類義語に ρόδο(バラ。古代ギリシャ語由来で詩歌・文芸の硬い形), γκιούλι(バラ。トルコ語 gül 経由でペルシャ語 gul「花」から入った外来借用で、くだけた話し言葉や方言で使う)。τριαντάφυλλο はバラを指すふつうの形として広く使う。派生に τριανταφυλλάκι(小さなバラ。指小形), τριανταφυλλιά(バラの木), τριανταφυλλένιος(バラ色の、バラのような), τριανταφυλλής(バラ色の), τριανταφυλλί(バラ色)。合成語に τριανταφυλλόνερο(バラ水、ローズウォーター), τριανταφυλλόξιδο(バラ酢)。
ギリシャ語:τριβή
読み方:トゥリヴィ・トゥリヴィー
ラテン文字:trivi
古代ギリシャ語の τριβή(摩耗, 経験, 猶予, 従事)に由来。動詞 τρίβω(こする, 摩耗させる)から抽象名詞を作る -ή が付いてできた語で, もとは「こすること」。印欧祖語で「こする」を表す語根に続き, ラテン語 tero(こする, すり減らす)も同じ語族。物理の「摩擦」の意味はフランス語 friction と frottement からの意味借用で整った。「経験, 習熟」の用法は, こすり続けるうちに身につく技という発想から育った。
同じ τρίβω の語族に名詞 τρίψιμο(こすり, 摩擦), διατριβή(論文。δια-「通して」+ τρίβω から)。英語 tribology(摩擦学), diatribe(辛辣な批判。もとの意味は「時間をすり減らす議論」)も同じ τρίβω の語族。
合成語に ανεργία τριβής(摩擦的失業。転職や求職活動の過渡期に生じる一時的な失業)。
ギリシャ語:τρίγωνο
読み方:トゥリゴノ・トゥリーゴノ
ラテン文字:trigono
古代ギリシャ語の τρίγωνον(三角形)から。これは τρι-(三)と γωνία(角、角度)からなる形容詞 τρίγωνος(三つの角を持つ)の中性形が名詞化したもの。
英語 trigonometry(三角法)の trigon- も同じ τρίγωνον に由来。一方、英語 triangle はラテン語 triangulum に由来する語であり、ギリシャ語 τρίγωνον を直接借りたわけではない。ただし、どちらも「三つの角」という構成は共通する。
幾何学では三角形を指すが、三角形をした菓子、楽器のトライアングル、三角定規や角度測定具などにも使われる。星座名では Βόρειο Τρίγωνο(さんかく座)や Νότιο Τρίγωνο(みなみさんかく座)などの形で現れる。
関連語に γωνία(角、角度)、τετράγωνο(正方形、四角いもの)、τριγωνάκι(小さな三角形)などがある。成句では ερωτικό τρίγωνο(三角関係)、προειδοποιητικό τρίγωνο(停止表示板)などの表現を作る。
ギリシャ語:Τρίγωνον
読み方:トゥリゴノン・トゥリーゴノン
ラテン文字:trigonon
古代ギリシャ語の τρίγωνον(三角形)をそのまま継承した古い形で、星座名として残る。現代ギリシャ語で三角形はふつう τρίγωνο と言う。
語源は印欧祖語で「3」を表す語根と「膝、角」を表す語根の合成で、ラテン語の triangulum や、そこから出た英語の triangle と語源を共有する。
プトレマイオスの48星座に含まれる古い星座で、現代の全天88星座のひとつ。略記は Tri。三つの主星が作る形が古代ギリシャ文字の Δ(デルタ)に似ているため、古代では Δελτωτόν(デルトトン)とも呼ばれた。エラトステネスはこれをナイル・デルタに、ローマ人はシチリア島の三角形になぞらえた。
Ανδρομέδα(アンドロメダ座)の南西に位置し、領域内には三角座銀河 M33 があり、暗い空では肉眼でも見える局所銀河群の一員として知られる。
南天には、16世紀末に新たに加えられた Τρίγωνον Νότιον(みなみのさんかく座)があり、こちらと区別される。
ギリシャ語:Τρίγωνον Νότιον
読み方:トゥリゴノンノティオン・トゥリーゴノンノティオン
ラテン文字:trigonon notion
τρίγωνο(三角形)の古形 τρίγωνον と νότιος(南の)の中性古形 νότιον を組み合わせた連語で、「南の三角形」の意味。ラテン語の Triangulum Australe も「南の三角形」を指す。
16世紀末、オランダの航海士ケイセルとデ・ハウトマンが「Den Zuyden Trianghel(南の三角形)」と命名し、プランシウス(プランキウスとも)が南天に配した星座。大航海時代に作られた新しい星座なので、特定の神話は存在しない。
北天には、プトレマイオスの48星座に含まれる歴史の古い Τρίγωνον(さんかく座)がある。それと区別するために「南の(Νότιον)」をつける。
ギリシャ語:τρίχα
読み方:トゥリハ・トゥリーハ
ラテン文字:tricha
古代ギリシャ語 θρίξ(毛、属格 τριχός、対格 τρίχα)の対格 τρίχα を主格として再形成した形が、中世ギリシャ語を経て現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。古代の主格 θρίξ は印欧祖語の「毛、糸状のもの」を表す語根に由来する可能性があるが、Beekes は確実な対応を見出さない。
古代の屈折パラダイムで主格 θρίξ と斜格 τριχ- は子音交替(θ ↔ τ)を伴っていたが、現代では対格をベースにした均一な τριχ- 語幹で固まり、屈折の不規則性が解消された。同じ θρίξ から派生した英語 trichology(毛髪学), trichotomy(三分法、← τρίχα は「三つに」の意味とも掛けて), trichome(植物学の毛状突起), trichinosis(旋毛虫症)など、医学・植物学・寄生虫学の専門用語の語幹となっている。
派生・関連語族として τριχούλα, τριχίτσα(小さな毛、指小形), τρίχωμα(毛皮、被毛), τριχωτός(毛深い、毛におおわれた), τριχοειδής(毛のような、毛細血管の), τριχοβλεφαρίδα(まつげ), τριχόπτωση(脱毛症、毛が落ちること)。類義語に μαλλί(髪、羊毛、複数 μαλλιά で頭髪全体), χαίτη(たてがみ、長く伸ばした髪), πέλος(パイル、織物の毛), χνούδι(うぶ毛、繊維のけば)。τρίχα は個別の「毛」を指すのが基本で、頭髪全体を指す μαλλιά とは区別される。
慣用成句が豊富で、παρά τρίχα(毛一本の差で、間一髪で), στην τρίχα(完璧に、毛一本の乱れもなく), σηκώνονται οι τρίχες μου(毛が逆立つ、身の毛もよだつ), κάνω την τρίχα τριχιά(毛を太いロープにする、針小棒大に言う), τρίχες κατσαρές!(縮れ毛だ = くだらない、デタラメだ)など、日本語の「間一髪」「身の毛がよだつ」「針小棒大」と対応する表現が多数生きている。
ギリシャ語:τουλίπα
読み方:トゥリパ・トゥリーパ
ラテン文字:toulipa
新ラテン語 tulipa(チューリップ、リンネ命名の属名 Tulipa)からギリシャ語に入った学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。源は新ラテン語 → ヴェネト語・フランス語の植物名学術造語にあり、その源にはオスマン・トルコ語 tülbend(ターバン用の布、← ペルシア語 دلبند dulband「ターバン」)からの近代ヨーロッパ植物学への借用と、語の取り違えが横たわる興味深い経歴を持つ。
語源の取り違えの経緯は、16 世紀後半に神聖ローマ帝国の外交官 Ogier Ghiselin de Busbecq がオスマン帝国スレイマン大帝の宮廷を訪問した際の記録(Turcicae Epistolae, 1554-1562)に発する。Busbecq がトルコ宮廷で見た花を「tulipan」と記録した時、現地のトルコ人ガイドが「lâle」(チューリップそのものの名前)ではなく「tülbend」(ターバン)と説明した、あるいは花の形をターバンに見立てた説明を語名と取り違えたと考えられている。この誤解がそのままヨーロッパの植物学に取り入れられ、新ラテン語 tulipa として固定された後、各国語に広まった。
源にあるペルシア語 dulband(ターバン、← dōl「結ぶ」+ band「束ねるもの、紐」)は、中世イスラム文化の代表的な男性の頭飾りで、オスマン帝国を経由してヨーロッパ語の頭飾り語彙にも入った(英語 turban, フランス語 turban, ドイツ語 Turban)。ターバンと「lâle」(チューリップ、← アラビア語 لَالَة), 花としての本来のトルコ・ペルシア名は別系統だが、語形の取り違えにより、ヨーロッパでは tulip 系、トルコ・ペルシアでは lâle 系という二つの系譜が並走することになった、言語接触の興味深い事例。
ヨーロッパ各語の「チューリップ」語彙では、新ラテン語 tulipa から、フランス語 tulipe, スペイン語 tulipán, イタリア語 tulipano, ポルトガル語 tulipa, 英語 tulip, ドイツ語 Tulpe, オランダ語 tulp が広まった。オランダの 17 世紀「チューリップ・バブル」(tulipomania, 1634-1637)はヨーロッパ初の経済バブルとして経済史で知られ、チューリップの球根が金と同等の価値で取引された、近代経済史の象徴的な出来事。
ギリシャ語 τουλίπα は、近代以降の植物学・園芸学の語彙としてフランス語経由で取り入れられ、観賞植物・園芸文化の中核を成す語として定着した。学名 Tulipa(属名), Tulipa gesneriana(園芸品種チューリップ), Tulipa orphanidea(オルファニデアチューリップ、ギリシャ固有種)など、生物学・園芸の学術語彙でも使われる。
ギリシャ自体の野生のチューリップは、エーゲ海の島々(特にレスボス島、クレタ島、サモス島), ペロポネソス半島の山地に複数の固有種が分布し、植物多様性の重要な構成要素として保護されている。
派生・関連語族として τουλιπάκι(小さなチューリップ、口語の指小形), τουλιπιά(チューリップ畑), τουλιπώδης(チューリップのような形の、形容詞), τουλιπομανία(チューリップ熱、← 英 tulipomania), χώρα της τουλίπας(チューリップの国、=オランダ)。
慣用句として、η χώρα της τουλίπας(チューリップの国、オランダ)が定着しており、ヨーロッパの民族・地域の比喩名(η χώρα του Σαίξπηρ「シェイクスピアの国(イギリス)」, η χώρα του ήλιου που ανατέλλει「日出ずる国(日本)」と同じ造語パターン)の一翼を担う、地理・文化の慣用表現の典型例。
ギリシャ語:τρύπα
読み方:トゥリパ・トゥリーパ
ラテン文字:trypa
ヘレニズム期ギリシャ語の τρῦπα(穴)を継承。同じ語族の動詞 τρυπώ(穴をあける)が日常で広く使われる。学術・文語寄りの同義語に οπή(穴)。
連語に μαύρη τρύπα(ブラックホール、英語 black hole の翻訳借用、1964 年)、άσπρη τρύπα(ホワイトホール、1971 年)、τρύπα του όζοντος(オゾンホール)。複合語に κλειδαρότρυπα(鍵穴)。
ギリシャ語:Τουρκία
読み方:トゥルキア・トゥルキーア
ラテン文字:tourkia
中世ギリシャ語の Τουρκία を継承。
Τούρκος(トルコ人)に国名を作る接尾辞 -ία を付けた語。ビザンツ期の初期にはマジャール人(ハンガリー)やハザル人の地の名としても使われていたが、1071年のマンツィケルトの戦いでセルジューク朝がアナトリアに進出して以降、現在のトルコの領域の名として定まった。
中世ラテン語 Turcia / Turchia を経て、英語 Turkey、フランス語 Turquie などにもつながる。人は Τούρκος、Τουρκάλα、形容詞は τουρκικός。

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