ギリシャ語:κυκλώνας
読み方:キクロナス・キクローナス
ラテン文字:kyklonas
英語 cyclone からの借用。cyclone は、19世紀半ばに気象学者ヘンリー・ピディントンが、古代ギリシャ語の κυκλῶν(回転する)をもとに作った造語。
一度ギリシャ語から英語へ渡り、再びギリシャ語に再導入された語にあたる。語根は κύκλος(円、車輪)など。
関連語に気象分野の τυφώνας(台風)など。
さ から始まる単語 45 語。
さ から始まる単語 45 語。
ギリシャ語:κυκλώνας
読み方:キクロナス・キクローナス
ラテン文字:kyklonas
英語 cyclone からの借用。cyclone は、19世紀半ばに気象学者ヘンリー・ピディントンが、古代ギリシャ語の κυκλῶν(回転する)をもとに作った造語。
一度ギリシャ語から英語へ渡り、再びギリシャ語に再導入された語にあたる。語根は κύκλος(円、車輪)など。
関連語に気象分野の τυφώνας(台風)など。
ギリシャ語:βωμός
読み方:ヴォモス・ヴォモース
ラテン文字:vomos
印欧祖語で「歩む, 踏み出す」を表した語根にさかのぼる動詞 βαίνω(歩む, 上る)から派生した古代ギリシャ語の名詞 βωμός(段, 台, 祭壇)を継承。一段高くなった場所を指し, そこから神に供物を捧げる台の意味に移った。
同じ βαίνω の語族に βάση(基盤, 土台), βήμα(一歩, 演壇), βάθρο(基壇, 台座), βατός(通行可能な), 合成語 εμβαίνω(入る), διαβαίνω(渡る), αναβαίνω(上る), καταβαίνω(下る)。祭壇まわりの語には θυσία(犠牲, 供物), σπονδή(献酒), ναός(神殿, 教会), ιερό(聖域)が並ぶ。
類義の θυσιαστήριο(犠牲を捧げる場所)は θυσιάζω(犠牲を捧げる)から作られた語で, キリスト教の祭壇 Αγία Τράπεζα(聖卓)を言うのに使うことが多い。βωμός は古代の異教の祭壇に結びつくが, 正教会では聖卓の同義語にもなる。先頭大文字の Βωμός は南天の星座さいだん座を指し, ラテン語 Ara, 英語 Ara, フランス語 l'Autel と同じ「祭壇」の意で, どれも古代の観測者が天に見立てた祭壇。
ギリシャ語:δικαστήριο
読み方:ディカスティリオ・ディカスティーリオ
ラテン文字:dikastirio
ギリシャ語:κύτταρο
読み方:キタロ・キータロ
ラテン文字:kyttaro
古代ギリシャ語の κύτταρον(小部屋、くぼみ、蜂の巣の一房)に由来。
もとは κύτος(うつろな空間)から作られた語。
生物の「細胞」の意味は、フランス語の cellule からの意味借用によって定着したもの。
ギリシャ語:ψάρι
読み方:プサリ・プサーリ
ラテン文字:psari
中世ギリシャ語 ψάρι(ν)(魚、← ヘレニズム期 ὀψάριον「小さな魚、魚の切り身、おかず」、← 古代 ὄψον「調理された食べ物、副菜、おかず」の指小形)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、定冠詞と続けた発音 τὸ ὀψάριον で語頭の無強勢母音 [o] が脱落(αποβολή)し、さらに母音連続の回避(αποφυγή της χασμωδίας)を経て、現代の ψάρι の形に整えられた。
源にある古代の ὄψον(おかず、ご馳走、副菜)は、本来は主食のパン(σῖτος)に対する「副え物・おかず」を意味したが、古代アテネで魚が代表的なおかずとして好まれたため、しだいに「魚料理」を中心に指すようになった。ヘレニズム期にはその指小形 ὀψάριον が「魚」そのものを意味するに至り、現代まで続く意味の中心が確立した。古代の ὄψον と動詞 ἕψω(煮る)は、印欧祖語の「煮る、料理する」を表す語根に由来するとする説と、別系統の地中海語彙とする説がある。
古代以来の文書語の系譜では、ὄψον からの派生に ὀψοποιός(料理人、書きことばの古典形), ὀψοφάγος(美食家、贅沢な食事をする者), ὀψώνιον(食料の購入、給金、← 英 obsonium「給与」の語源として中世ラテン語に取り入れられ)が出ている。ψάρι の対応する書きことばの古典形は ιχθύς(魚、← 古代 ἰχθύς)で、ホメロス以来の伝統的な魚語彙として現代でも魚座(Ιχθύες), 魚類学(ιχθυολογία), 魚類養殖(ιχθυοκαλλιέργεια)のような書きことば・専門語に残る。古代のキリスト教徒の象徴(ΙΧΘΥΣ = Ιησοῦς Χριστὸς Θεοῦ Υἱὸς Σωτήρ「イエス・キリスト、神の子、救世主」の頭字語)として用いられた歴史も持つ。
派生・関連語族として ψαράκι(小さな魚、指小形), ψαρούκλα(大きな魚、増大形), ψαράκας(間抜けな人、新兵をからかう口語), ψαριά(漁獲、漁獲量、← ψάρι + -ιά), ψαρική(漁業の女性形、書きことば), ψαρικό(魚介類、形容詞中性形が名詞化), ψαρίλα(魚臭さ), ψαρίσιος(魚の、形容詞), ψαράς(漁師、釣り人), ψάρεμα(魚釣り、釣り), ψαρεύω(魚を釣る、動詞), ψαρόσουπα(魚スープ), ψαροχώρι(漁村), ψαροντούφεκο(魚突き), ψαροπούλα(小型の漁船、女性的指小)。色名としての ψαρός(白髪まじりの、← 古代 ψαρός「斑点のある」、現代の比喩用法), ψαρής(白髪まじりの)も同じ語族から派生した。
比喩用法では沈黙や環境への不慣れを表すことが多く、βουβός σαν ψάρι(魚のように黙りこくっている), σαν το ψάρι έξω από το νερό(陸に上がった魚), απ' το κεφάλι βρομάει το ψάρι(魚は頭から腐る、組織の腐敗は上から)が頻出する。俗語では騙されやすい人、新兵、無口な人、歌の下手な人を指す広い口語用法も持つ。
ギリシャ語:ιχθύς
読み方:イフシス・イフシース・イフティス・イフティース
ラテン文字:ichthys
ギリシャ語:πάγκος / μπάγκος
読み方:パンゴス・パンゴース / バンゴス・バンゴース
ラテン文字:pangos / bangos
イタリア語 banco(台、腰掛け、商人の台)からの借用。現代ギリシャ語では πάγκος と μπάγκος の形がある。
banco の語根は、古高ドイツ語 bank などゲルマン系の「長い腰掛け、台」を表す語。英語 bench(ベンチ)も同じゲルマン系の語に属する。
英語 bank(銀行)も、もとは両替商や商人が使う台を表すイタリア語 banca / banco に由来。家具や台を表す語が、商取引の場を経て金融機関の意味へと発展した。
πάγκος は作業台、店のカウンターや陳列台、複数人が座る長い腰掛けなどを指す。指小形 παγκάκι は、公園などにある「ベンチ」を指す語として一般的。
海事の文脈では、船の航行を妨げる砂地や岩場の浅瀬を指すこともある。この意味もイタリア語 banco の「浅瀬、砂州」に対応している。
関連語は、τραπέζι(テーブル)、πάγκος κουζίνας(キッチンカウンター)、πάγκος εργασίας(作業台)、πάγκος πωλητή(売り手の台)、παγκάκι(ベンチ)など。
ギリシャ語:κεράσι
読み方:ケラシ・ケラーシ
ラテン文字:kerasi
ヘレニズム期ギリシャ語 κεράσιον(サクランボ、← 古代 κέρασος「サクランボの木」の指小形)から、中世ギリシャ語 κεράσι(ν) を経て現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。語末の -ν が脱落して中性名詞 κεράσι の形で定着した。
源にある古代の κέρασος は、サクランボの原産地の一つとされる小アジアのポントス地方の都市 Κερασοῦς(Cerasus、現トルコのギレスン)にちなむという伝承的な語源説が知られる。プリニウスの『博物誌』15.30 では、紀元前 74 年に将軍ルクッルスがポントスから持ち帰った果樹がローマに広まったという話を伝え、ラテン語 cerasus(桜の木), cerasum(サクランボ)の語源にもこの地名が当てられる。実際の語源関係は逆方向(地名がサクランボに由来)の可能性も論じられるが、いずれにせよ古代ギリシャ語の κέρασος が地中海・ヨーロッパのサクランボ語彙の源となった点は変わらない。
ラテン語 cerasum を経由して、フランス語 cerise, スペイン語 cereza, ポルトガル語 cereja, イタリア語 ciliegia, ドイツ語 Kirsche, 英語 cherry(< 古フランス語 cherise)など、ヨーロッパ各語の「サクランボ」語彙が広まった。ギリシャ語 κεράσι はその源流の語族の現代継承形。
派生・関連語族として κερασιά(サクランボの木、← κεράσι + -ιά「木を表す接尾辞」), κερασάκι(小さなサクランボ、サクランボのスプーンスイーツ、指小形), κερασί(サクランボ色、不変化色語), κερασένιος(サクランボ色の、語尾変化する形容詞), κερασόμηλο(サクランボの一種、文字どおり「サクランボリンゴ」)。近い果物には βύσσινο(サワーチェリー、酸味のある種類)があり、こちらは派生語として βυσσινί(暗赤色、ボルドー寄り)を生んでいる。κεράσι が甘いサクランボ全般を指すのに対し、βύσσινο は酸味の強い品種を分けて言う語で、ジャムやリキュール、シロップ漬けの材料として使われることが多い。
ギリシャ語:κερασένιο
読み方:ケラセニョ・ケラセーニョ
ラテン文字:kerasenio
形容詞 κερασένιος(サクランボ色の、サクランボ風味の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。サクランボ色という色そのものを指す。
ギリシャ語:κερασί
読み方:ケラシ・ケラシー
ラテン文字:kerasi
κεράσι(サクランボ)に色語をつくる接尾辞 -ί を付け、不変化形容詞・中性名詞として使う色語をつくった、ギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)。果実の色をそのまま色名に転用した命名で、現代ギリシャ語の生産的な造語パターンに乗っている。
不変化語尾 -ί で果物・素材・物の名から色名をつくる造語は現代ギリシャ語で広く使われ、同じパターンで πορτοκαλί(オレンジ色、← πορτοκάλι「オレンジ」), λεμονί(レモンイエロー、← λεμόνι「レモン」), βυσσινί(暗赤色、← βύσσινο「サワーチェリー」), κεραμιδί(瓦色、← κεραμίδι「瓦」), καφέ(茶色、← καφές「コーヒー」、不変化)が並ぶ。物の名前から「その色」をすぐ作れるしくみで、料理や服飾の場面で活躍する。
派生・関連語族として κερασένιος(サクランボ色の、語尾変化する書きことば寄りの形容詞、← κεράσι + -ένιος「素材・色を表す接尾辞」)。κερασί は不変化で形容詞・名詞兼用、κερασένιος は語尾変化する形容詞専用、と棲み分けがある。
近い赤系の色語としては、βυσσινί(暗赤色、ボルドー寄りのサワーチェリー色), κεραμιδί(瓦色、赤茶寄り), μπορντό(ボルドー、← 仏 bordeaux), κόκκινο(赤、一般語), σκούρο κόκκινο(濃い赤), βαθύ κόκκινο(深紅)が並び、赤の色相のなかで明度・彩度・茶味の違いで言い分ける。
ギリシャ語:σολομός
読み方:ソロモス・ソロモース
ラテン文字:solomos
中世ギリシャ語 *σολομός(サケ)が現代まで受け継がれた語で、源はラテン語 salmō(サケ、サーモン、属格 salmōnis)にある外来借用(δάνειο)。中世期にラテン語からギリシャ語に取り入れられる過程で、唇音 [m] の影響と母音同化(αφομοίωση [a-o > o-o])を経て σαλομός から *σολομός へと音韻調整された経路を持つ。語末の -ς は男性名詞の格変化語尾。
源にあるラテン語 salmō は、印欧祖語に確実な対応が見出されない地中海・前ロマンス語基層の語とされる説と、ガリア語起源とする説(古代の北西ヨーロッパ・ゲルマン人の漁業・河川魚の語彙)の両方が論じられる。古代ローマ時代から、ライン川・ドナウ川・ガリアの河川で漁獲されるサケの名前として使われ、プリニウスの『博物誌』第 9 巻にも salmō として記述される。
ラテン語 salmō から、ヨーロッパ各語の「サケ」語彙が広まった:フランス語 saumon, スペイン語 salmón, イタリア語 salmone, ポルトガル語 salmão, 英語 salmon, ドイツ語 Salm(古語、現代では Lachs が一般), ロシア語 семга syomga(別系統)。学名 Salmo salar(タイヘイヨウサケ)はラテン語起源の二語名で、リンネが 1758 年の『自然の体系』で命名した。サーモン科(Salmonidae)の主要な属名として使われる。
サケは古代地中海ではあまり一般的な魚ではなく、ギリシャ語にも独自の伝統的な語が確立されなかった経緯から、中世期にラテン語経由で取り入れられた。これに対し、同じサケ科の πέστροφα(マス、← ブルガリア語 pŭstŭrva)はバルカン半島のスラヴ語経由で、両者は別系統の借用として並走する。地中海・バルカン半島でのサケ・マス語彙の借用源の違いが、地理的な漁業文化の違いを反映する。
派生・関連語族として σολομάκι(小さなサケ、口語の指小形), σολομικός(サケの、形容詞、書きことば), σολομόψαρο(サケ魚、口語), αβγά σολομού(サケの卵、いくら), χαβιάρι σολομού(サーモンキャビア、← μπρικ という別呼称もある), φιλέτο σολομού(サーモンのフィレ), σολομός καπνιστός(スモークサーモン), άγριος σολομός(天然サーモン), ιχθυοτροφείο σολομών(サケ養殖場)。
同じサケ科の魚の領域には、近い種として πέστροφα(マス、トラウト), ιριδίζουσα πέστροφα(ニジマス), αρκτικός σολομός(カラフトマス、北極サケ)が並び、サケ・マス類の食用魚の語彙体系を形成する。誤綴りに σολωμός も見られるが、標準綴りは σολομός(短い o + 短い o)。
近代以降の食文化では、ノルウェー、スコットランド、チリ、カナダの大規模なサーモン養殖の発達とともに、ギリシャでもサーモンが日常的な食材として普及した。スモークサーモン(σολομός καπνιστός), サーモンの寿司・刺身(σολομός σούσι, σολομός σασίμι), 焼きサーモン(σολομός στη σχάρα)など、伝統料理から国際料理(日本料理、フランス料理、北欧料理)まで広く使われる、現代ギリシャの食文化に深く入り込んだ食材。
書きことばの古典形 ιχθύς(魚)は学術・宗教・天文(魚座)の文脈で使われ、日常の ψάρι(魚)と棲み分ける。σολομός は ψάρι の下位の具体的な魚名として位置づけられる。
ギリシャ語:μαχαιριά
読み方:マヘリア・マヘリアー
ラテン文字:maxairia
中世ギリシャ語 μαχαιρία(ナイフによる一撃、刺し傷、← μαχαίρι + -ία)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世期に母音連続 [ia] を避ける母音融合(συνίζηση)を経て、現代ギリシャ語の μαχαιριά の形に定着した。源にある μαχαίρι(ナイフ、包丁、メス、刃)に動作・行為の結果を表す抽象名詞接尾辞 -ιά が付いた、ギリシャ語内部の派生(εσωτερικός σχηματισμός)。
接尾辞 -ιά は現代ギリシャ語の生産的な造語要素で、道具名から「その道具による一撃・行為・結果」を表す名詞をつくる型がよく見られる。同じパターンで作られた語族には、γροθιά(拳骨の一撃、← γρόθος「拳」), κλωτσιά(蹴り、← κλωτσώ「蹴る」), σπαθιά(剣の一撃、← σπαθί「剣」), πιστολιά(拳銃の一発、← πιστόλι「拳銃」), βελονιά(針のひと刺し、← βελόνα「針」)が並び、武器・道具と「ひと打ち」の意味のセットで体系化されている。
派生・関連語族として μαχαιρόβγαλμα(ナイフを抜くこと、口論で刃物に手をかけること), μαχαιρώνω(ナイフで刺す、動詞), μαχαιρωμένος(刺された、過去分詞), μαχαιρώματα(刺し合い、複数形), μαχαιροβγάλτης(ナイフ使い、暴れ者)。
源にある μαχαίρι 自体は、中世ギリシャ語 μαχαίρι(ν) < ヘレニズム期 μαχαίριον(小さなナイフ、指小形)< 古代 μάχαιρα(戦闘用の剣、肉切り包丁、犠牲のナイフ、← 印欧祖語の「切る、戦う」を表す語根)を継承した語族。古代の μάχη(戦闘), μάχομαι(戦う)と同じ語根を共有する系譜で、英語 machete(マチェーテ、← スペイン語 machete < 古ラテン *machetum < ギリシャ語 μάχαιρα)も同源。
比喩用法では、刺し傷の物理的な感覚を「胸を刺すような辛い言葉・出来事」へ転用する慣用が定着しており、μαχαιριά στην καρδιά(心への一突き、深い精神的な痛手)のような表現で頻出する。
ギリシャ語:θεωρείο
読み方:セオリオ・セオリーオ・テオリオ・テオリーオ
ラテン文字:theoreio
動詞 θεωρέω(見物する、観察する、考察する)に由来。
ここから派生した古代ギリシャ語の中性名詞 θεωρεῖον は「見物のための場所」や「観覧席」を意味する。
現代ギリシャ語の動詞形は θεωρώ(見る、考える、みなす)など。
ギリシャ語:σκορπιός
読み方:スコルピオス・スコルピオース
ラテン文字:skorpios
古代ギリシャ語の σκορπίος(サソリ)を継承。母音の衝突を避ける音節の合体(シニゼーシス)で現代の σκορπιός の発音と形になった。先頭大文字の Σκορπιός は星座と占星術でさそり座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ σκορπίος の語族に σκορπίνα(カサゴ), σκορπαινίδης(カサゴ科), σκορπιώδης(サソリに似た形の)。魚の名として使うときの σκορπιός は σκορπίνα より小型で, 大きな頭部と鰓蓋の棘を持つ近縁種を指す。
英語 scorpion はこの語がラテン語 scorpius / scorpio を経て入ったもの。scorpionfish(カサゴ類の総称)も同じ語源で, 英語でもギリシャ語同様「サソリ」の語が魚の名にも使われている。
ギリシャ語:σατανάς
読み方:サタナス・サタナース
ラテン文字:satanas
ヘブライ語 שטן(śāṭān, 敵対者)がギリシャ語に Σατανᾶς の形で借用され, 七十人訳聖書・新約聖書を通じて悪魔の名として用いられ, そのまま現代ギリシャ語に受け継がれた。
同じ σατανάς の語族に σατανικός(悪魔的な), σατανικότητα(悪魔的な性質), σατανισμός(悪魔崇拝), σατανιστής(悪魔崇拝者), αρχισατανάς(大魔王)。
英語 Satan, フランス語 Satan も同じヘブライ語を源にし, ギリシャ語訳聖書を経由して各言語に入った。日常の慣用表現では διάβολος(悪魔, ギリシャ語で「中傷する者」)のほうが圧倒的に多く使われ, σατανάς は宗教的・格式高い文脈と, 「ずる賢い人」「いたずらっ子」の比喩で出てくる。
ギリシャ語:ποδόσφαιρο
読み方:ポドスフェロ・ポドースフェロ
ラテン文字:podosfairo
πούς(足、属格 ποδός)と σφαίρα(球)を合わせた複合語。英語 football を翻訳借用するかたちで、19世紀末にカサレヴサ(公用語的な文語体)で作られた。
σφαίρα は英語 sphere の元になった語。
ギリシャ語:γλυκοπατάτα
読み方:グリコパタタ・グリコパタータ
ラテン文字:glykopatata
γλυκός(甘い)と πατάτα(イモ、ジャガイモ)を組み合わせた合成語で、フランス語 patate douce(サツマイモ、文字どおり「甘いイモ」)の構造をギリシャ語の素材で訳し移した翻訳借用(μεταφραστικό δάνειο)として定着した外来借用(δάνειο)。
合成語の前要素 γλυκός(甘い)は古代以来の継承語、後要素 πατάτα は新世界原産のイモ(ジャガイモ・サツマイモ)の語彙としてスペイン語 patata 経由でヨーロッパ各語に広まった国際語で、ギリシャ語にも同じ系統で入っている。同様の翻訳借用構造はラテン語族でも見られ、フランス語 patate douce, スペイン語 batata, 英語 sweet potato(直訳「甘いイモ」)など、ヨーロッパ各語が「甘い」+ 「イモ」の合成で表現する点で共通する。
学名は Ipomoea batatas(ヒルガオ科サツマイモ属)で、Ipomoea は古代ギリシャ語 ἴψ(虫)+ ὅμοιος(似た)の合成、batatas はカリブ海地域の先住民言語タイノ語起源の語。ジャガイモ(πατάτα)とは別の植物で、ジャガイモがナス科であるのに対し、サツマイモはヒルガオ科。
派生・関連語族として γλυκοπατάτες(複数形、サツマイモ類), γλυκοπατατούλα(小さなサツマイモ、指小形), ψητή γλυκοπατάτα(焼き芋)。類義語的に他のイモ類として πατάτα(ジャガイモ), κολοκάσι(タロイモ), μανιόκα(マニオク、キャッサバ)が並ぶ。料理では焼き芋・揚げ芋・スイートポテトのデザートなど、世界の食文化に広く取り入れられている食材。
ギリシャ語:ζάχαρη
読み方:ザハリ・ザーハリ
ラテン文字:zachari
古代ギリシャ語の σάκχαρις を継承。もとはサンスクリットの शर्करा(シャルカラー、砂粒、砂糖)で、ヘレニズム期にギリシャ語に入り、中世に ζάχαρις, ζάχαρη の形となった。学術・化学では古代形に続く σάκχαρο が使われる。
派生語に ζαχαρένιος(砂糖の、甘い)、ζαχαρωτό(キャンディー)、ζαχαρώνω(砂糖漬けにする)、ζαχαρίνη(サッカリン)など。合成語には ζαχαροκάλαμο(サトウキビ)、ζαχαροπλαστείο(洋菓子店)、ζαχαροδιαβήτης(糖尿病)などがある。
英語 sugar はアラビア語の سكر(sukkar)を経て同じサンスクリットから来た語。英語の saccharin や saccharide はギリシャ語の σάκχαρον を経由した語。
ギリシャ語:έρημος
読み方:エリモス・エーリモス
ラテン文字:erimos
古代ギリシャ語の ἔρημος(人のいない、見捨てられた)を継承。もとは形容詞で、女性形を名詞として「砂漠、荒野」の意で使う用法が古代から定着している。
派生の古代 ἐρημίτης(荒野に住む人、隠者)が後期ラテン語 eremita を経て、英語 hermit(隠者)の元になった。
派生語に ερημιά(荒地、人けのない場所)、ερημία(孤独)、ερημίτης(隠者)、ερημώνω(荒廃させる)、ερημικός(人気のない、寂れた)など。
ギリシャ語:ζαφείρι
読み方:ザフィリ・ザフィーリ
ラテン文字:zafeiri
ヘブライ語 sappir に由来する語で、ヘレニズム時代のギリシャ語では σάπφειρος の形で用いられていた。当時この語が指していたのはサファイアではなくラピスラズリ、つまり青い半貴石だった。
初期の格変化において、対格で冠詞の末尾 n と結合したことにより語頭の s が z に有声化した。その後の音韻変化も経て、中世ギリシャ語では ζαφείρι(ν) の形となり、現代に至る。英語の sapphire と同語源で、いずれもヘブライ語 sappir に由来する。
日常的にはこの口語形 ζαφείρι が一般的だが、鉱物学的な文脈や格調高い表現では古代ギリシャ語の形を保った σάπφειρος が用いられる。
淡い色から濃い色まで、あらゆる色調の青色を持つ鉱物・貴石を指す。
ギリシャ語:ζαφειρένιος
読み方:ザフィレニョス・ザフィレーニョス
ラテン文字:zafirenios
ζαφείρι(サファイア)に、素材や性質を表す形容詞接尾辞 -ένιος が付いた形。宝石そのものに関わる意味のほか、サファイアを思わせる青色にも使う。
μπλε(青)は青全般を指す語。ζαφειρένιος は宝石に基づく色名で、深く澄んだ青を表す。宝石由来の色名としては σμαραγδένιος(エメラルド製の、エメラルド色の)などと並ぶ。
ギリシャ語:κυρία
読み方:キリア・キリーア
ラテン文字:kyria
ヘレニズム期ギリシャ語の κυρία を継いだ学術借用(διαχρονικό δάνειο)。もとは古代ギリシャ語の形容詞 κύριος(主権を持つ、権威のある)の女性形。女性への敬称として使う今の用法は、フランス語 madame やイタリア語 signora の呼称を写した意味借用(σημασιολογικό δάνειο)が重なって定着した。もとの κύριος は古代ギリシャ語 κυριακόν(主の家)を経由して、英語 church(教会。ラテン語 ecclesia とは別にゲルマン語系統を経て入った借用)にも連なる。
類義語に κυρά(おかみさん。親しみのある呼びかけ), νοικοκυρά(主婦、家の女主人), λαίδη(レディ。英語 lady からの借用), δεσποινίς(~嬢。未婚女性の敬称)。関連語に男性形 κύριος(〜氏、紳士), κυριακή(日曜日。「主の日」から)。