日本語索引: へ
へ から始まる単語 24 語。
へ から始まる単語 24 語。
ギリシャ語:πεδιάδα
読み方:ペディアダ・ペディアーダ
ラテン文字:pediada
古代ギリシャ語の πεδιάς(平野、平野の)に由来。πεδιάς は πέδον / πεδίον(地面、平地、野原)から作られた語で、πεδίο(場、領域、フィールド)と同じ語族に属する。
πέδον / πεδίον は古代ギリシャ語の πούς(足)と同語源で、現代ギリシャ語の πόδι(足、脚)にもつながる。さらに印欧祖語で「足、踏む地面」を表す語根に遡る。
現代ギリシャ語において、地形としての「平野」は πεδιάδα が一般的。一方で πεδίο は物理の「場」や抽象的な「領域」を指すのが中心で、地形としての用法は文語表現に留まる。
類義語には κάμπος(平野、野のひらけた土地)がある。周辺の地形語は κοιλάδα(谷)、λεκανοπέδιο(盆地)、λιβάδι(牧草地)、σαβάνα(サバナ)、στέπα(ステップ)など。
ギリシャ語:κάμπος
読み方:カボス・カーボス・カンボス・カーンボス
ラテン文字:kampos
中世ギリシャ語 κάμπος(平野、野原)が現代まで受け継がれた語で、源はラテン語 campus(平野、野原、軍事訓練場、戦場)にある外来借用(δάνειο)が中世期に完全にギリシャ化して継承の流れに乗った形。「農地・耕作地」の意味用法は、近代以降にイタリア語 campo / フランス語 champ(農地、田畑)の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の側面も併せ持つ。
源にあるラテン語 campus(平野、平地、野原、戦場、訓練場、競技場)は、印欧祖語の「曲がる、湾曲する」を表す語根に由来し、ラテン語の campus からはフランス語 champ(畑、領域、戦場), スペイン語 campo, イタリア語 campo, ポルトガル語 campo, 英語 camp(野営地、← 中世ラ campus「軍事野営地」), campus(大学キャンパス、近代の英語造語), campaign(軍事行動、選挙運動、← 中世ラ campania「平野での軍事行動」), escape(脱出、← ラ ex- + cappa「外套を投げ出して逃げる」), champion(チャンピオン、← ラ campiō「戦場の戦士」)が広く派生した。
ヨーロッパ語の「平野・農地・キャンプ」の語彙の根幹を成すラテン語起源の系譜の中で、ギリシャ語 κάμπος は中世期に取り入れられて以降、地中海地域の平野・農地・田園を表す日常語として定着した。同じ系譜の語族には κάμπινγκ(キャンプ、← 英 camping), καμπάνια(キャンペーン、← 仏 campagne), κάμπιον(チャンピオン、← 英 champion)が並び、「平野」の概念から派生した意味の広がりが現代まで継承されている。
派生・関連語族として καμπίσιος(平野の、形容詞), καμπίτης(平野の住人、書きことば), καμπόσος(かなりの量、相当の、← μσν. καμπόσος < καν「もし」+ πόσος「どれほど」、別系統だが偶然似た形を持つ), μεσοκάμπιος(平野の真ん中の), ανηφόρα προς τον κάμπο(平野へ下る道), ορεινός κάμπος(山間の平野、書きことば)。
同じ地形語彙の領域には、対比される βουνό(山、高くそびえる地形), λόφος(丘、低めの起伏), πεδιάδα(平野、← 古代 πεδίον「平野」), οροπέδιο(高原、← όρος「山」+ πέδιο「平野」, 文字どおり「山の平野」), χωράφι(畑、口語), αγρός(耕作地、書きことば、← 古代 ἀγρός)が並び、地形と農業の語彙が体系化されている。
ギリシャの地理では、テッサリア平野(θεσσαλικός κάμπος), マケドニア平野(οι κάμποι της Μακεδονίας), トラキア平野(θρακικός κάμπος)が代表的な大規模平野で、いずれも農業生産の中心地として歴史的に重要な役割を担ってきた。山地が多いギリシャ地形の中で、平野は貴重な農地として畜産・羊飼いの冬の移牧(χειμώνας στους κάμπους)の目的地としても語られる。
慣用句では σαν την καλαμιά στον κάμπο(平野の一本の葦のように、頼りなく一人で立っているさま)が、広い平野に唯一立つ植物の孤立感を介して、孤独・無防備さを比喩する慣用表現として定着している。
ギリシャ語:ειρήνη
読み方:イリニ・イリーニ
ラテン文字:eirini
古代ギリシャ語の εἰρήνη(平和、静寂)を継承。さらなる起源は確かでなく、ギリシャ語以前の基層語とする見方が有力。ギリシャ神話の平和の女神 Εἰρήνη(エイレネ、ホーライ「季節の女神たち」の一柱)もこの語そのもので、英語の女性名 Irene(アイリーン)も同じ名の系譜。フランス語 Irène、ロシア語 Ирина などヨーロッパ各国の女性名として残る。
派生語に ειρηνικός(平和な;太平洋の、Ειρηνικός Ωκεανός「太平洋」)、ειρηνεύω(平和にする、和解する)、ειρηνιστής(平和主義者)、ειρηνισμός(平和主義)など。類義語に γαλήνη(平穏、静穏)、ηρεμία(落ち着き)。対義語は πόλεμος(戦争)。
英語 irenic(平和的な、宥和的な)、irenology(平和学)は同じ εἰρήνη をもとにした学術語。
ギリシャ語:μπεζ
読み方:ベズ・ベーズ
ラテン文字:mpez
フランス語 beige(ベージュ、未染色の羊毛色)からの外来借用(δάνειο)。性・数・格で語形が変化しない不変化形容詞として現代ギリシャ語に取り入れられ、同じくフランス語由来の色名 γκρι(グレー), μοβ(モーヴ), μπλε(青), ροζ(ピンク)と共通の形で定着している。
フランス語 beige はもともと、染色や漂白を施していない自然な状態の羊毛とその色を指す語だった。語源はイタリア語 bigio(灰色がかった), あるいはラテン語 *baeticus(スペイン南部のベティカ地方産の毛織物)にさかのぼるとされるが、確定的ではない。19 世紀のフランス・ファッションの語彙の中で「淡い茶色がかった黄色」の色名として固まり、英語 beige, ドイツ語 Beige, イタリア語 beige などヨーロッパ各語に広まった国際語の一員。
派生・関連語に乏しい不変化形容詞だが、修飾語を加えて色合いを細分化する慣用的な連語が使われる: ανοιχτό μπεζ(ライトベージュ), σκούρο μπεζ(ダークベージュ), μπεζ ροζ(ベージュピンク), μπεζ καμηλό(キャメルベージュ、< γαλλ. beige chameau)。中性形と同じ形で名詞としても使い、「ベージュ色」そのものを指す(το μπεζ)。同系の色名として ιβουάρ(アイボリー、< γαλλ. ivoire), εκρού(生成り色、< γαλλ. écru), κρεμ(クリーム色、< γαλλ. crème)が並ぶ淡いニュートラル色の語族の一員。
ギリシャ語:μπάσο
読み方:バソ・バーソ
ラテン文字:baso
ギリシャ語:φουντούκι
読み方:フンドゥキ・フンドゥーキ
ラテン文字:fountouki
トルコ語 fındık からの借用。現代ギリシャ語では中性名詞語尾 -ι を伴って φουντούκι となった。
トルコ語 fındık は、アラビア語やペルシア語を経ているが、もともとはヘレニズム期ギリシャ語の (κάρυον) Ποντικόν(ポントス地方のナッツ)に遡る。Ποντικός は黒海沿岸のポントス地方を指し、κάρυον は κάρυο(ナッツ、堅果)に対応する。
φουντούκι は φουντουκιά(ヘーゼルの木)の実を指す。φουντουκιά は φουντούκι に、樹木を表す女性名詞を作る接尾辞 -ιά が付いた語。
関連語には καρπός(果実)、σπόρος(種)、κάρυο(ナッツ、堅果)、καρύδι(クルミ)、αμύγδαλο(アーモンド)、φιστίκι(ピスタチオ、ピーナッツ)などがある。
ギリシャ語:Πήγασος
読み方:ピガソス・ピーガソス
ラテン文字:pigasos
ギリシャ語:κρεβάτι
読み方:クレヴァティ・クレヴァーティ
ラテン文字:krevati
中世ギリシャ語 κρεβάτι(ον) が、古代の κράββατος(粗末な寝床)の指小形 κραββάτιον を経て、語頭の母音調整・指小辞の縮小を経て現代の κρεβάτι になった継承語(κληρονομιά)。指小辞が原形と入れ替わって新しい主格となるのは、ギリシャ語の名詞語形成によく見られるパターン。
源にある古代の κράββατος / κράβατος は、ギリシャ語そのものではなく古代の他言語からの借用語と見られ、トラキア・マケドニア系の基層言語、あるいは小アジアの先住民言語からの借用と推測される(Tri も「δάνειο από άλλη γλώσσα」と明記、κρεβ- の異形があった可能性も指摘)。新約聖書(マルコ福音書 2:9 など)の κράββατος がラテン語 grabattus, grabatus として伝わり、ヨーロッパ各語の俗語的な「粗末な寝床、簡易ベッド」の語彙に痕跡を残す。
格式高い古代由来の κλίνη(寝台、長椅子、医療や文章語)と並んで使われる対の関係で、κλίνη が書きことば・専門用語・医学用語、κρεβάτι が日常語、と棲み分けが明確。古代のギリシャ語では κλίνη が中心語で、κράββατος は粗末な寝床を指す日常的・口語的な語だったが、中世以降は κρεβάτι が日常の中心語に昇格した。
派生・関連語族として κρεβατάκι(小さなベッド、ベビーベッド、指小形), κρεβατίνα(ぶどう棚、トレリス、← 「ベッドのような格子」の比喩), κρεβατώνω(寝床に着かせる、寝かせる), κρεβατωμένος(病床に伏せる、寝込んだ), κατάκοιτος(病で寝たきりの、← κατά-「下に」+ κοίτη「寝床」、別語源)。類義語に κλίνη(寝台、文章語), ξαπλώστρα(リクライニングチェア、デッキチェア), ντιβάνι(ディワン、長椅子), ράντζο(簡易ベッド、軍隊用ベッド、イタリア語 rancio 由来), καναπές(ソファ)。比喩・成句として κλίνη του Προκρούστη(プロクルステスの寝台、強引な基準で他者を切り合わせる), πέφτω στο κρεβάτι(病気で寝込む), σηκώνομαι από το κρεβάτι(起床する、回復する)など、医療・人生の比喩で頻繁に使われる。
ギリシャ語:πετριχώρ
読み方:ペトゥリホル・ペトゥリホール
ラテン文字:petrichor
英語 petrichor からの借用。1964年にオーストラリアの科学者ベアとトーマスが古代ギリシャ語の πέτρα(石)と ἰχώρ(神々の体液)を合わせて名づけた語で、ギリシャ語には再借用として入った。
πετριχώρ のほか、男性名詞として活用する πετριχώρας や πετριχώρος の形でも使われる。
ギリシャ語:πετριχώρας
読み方:ペトゥリホラス・ペトゥリホーラス
ラテン文字:petrichoras
ギリシャ語:πετριχώρος
読み方:ペトゥリホロス・ペトゥリホーロス
ラテン文字:petrichoros
ギリシャ語:φίδι
読み方:フィディ・フィーディ
ラテン文字:fidi
古代ギリシャ語 ὄφις(属格 ὄφεως、ヘビ)の指小形 ὀφίδιον(小さなヘビ)を継承。中世にかけて、母音接続(χασμωδία / hiatus)を避けるための音節融合と、定冠詞との連声によって語頭の ὀ- が落ち、今の形になった。指小辞が原形と入れ替わって新しい主格となるのは、ギリシャ語の名詞語形成によく見られるパターン。
古代の ὄφις は印欧祖語の「ヘビ」を表す語根に由来。サンスクリットの अहि (áhi) や、アヴェスター語の aži-(敵対する蛇神)と同源である。
同じ ὄφις を語源として、英語の ophidian(ヘビ類の)、ophiology(蛇類学)、ophiolite(オフィオライト、蛇紋岩。緑色のまだら模様がヘビに似ることに由来)などの学術語が広まった。
派生語には、φιδάκι(小さなヘビ、可愛らしいヘビなどの指小形)、φιδίσιος(ヘビのような、しなやかで滑らかな性質)、φιδωτός(ヘビのようにくねくねした様子や蛇行)がある。また、古代の ἔχιδνα から派生した οχιά(クサリヘビ、毒蛇の総称)なども関連する。
古代ギリシャ語の語形を保つ όφις は、学術・文章的な単語として残る。合成語には οφιόδηκτος(ヘビに噛まれた)、οφιολάτρης(ヘビ崇拝者)、οφιοειδής(ヘビ形の、波打つ)、οφιόλιθος(蛇紋岩、オフィオライト)などがある。より広く爬虫類全般を指す語には ερπετό がある。
狡猾・邪悪な人物を比喩する用法は古代から続くもので、φίδι στον κόρφο μου(懐のヘビ、恩を仇で返す身近な裏切り者)などの定型句も多い。
具体的な種類としては、ανακόντα(アナコンダ)、βόας(ボア)、κόμπρα(コブラ)、κροταλίας(ガラガラヘビ)、πύθωνας(ニシキヘビ)などが並ぶ。
ギリシャ語:όφις
読み方:オフィス・オーフィス
ラテン文字:ofis
印欧祖語で「ヘビ」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の ὄφις(ヘビ)に由来。サンスクリット語 áhi(ヘビ)と同じ語源。
ふつうのヘビは φίδι。όφις は文語的な語。隣の星座 Ὀφιοῦχος(へびつかい座)は「ヘビを持つ者」の意で、ὄφις + ἔχω(持つ)からなる合成名。
派生語・合成語に οφιόδηκτος(ヘビに噛まれた), οφιολάτρης(ヘビ崇拝者), οφιοειδής(ヘビ形の、波打つ)。英語の動物学用語 ophidian(ヘビ類の), ophiology(蛇類学)も ὄφις をもとにした造語。
ギリシャ語:δωμάτιο
読み方:ドマティオ・ドマーティオ
ラテン文字:domatio
印欧祖語で「家」を表す語根にさかのぼる名詞 δῶμα, δόμος(家, 建物)に指小の接尾辞 -άτιον がついた古代ギリシャ語の中性名詞 δωμάτιον(小さな家, 寝室)に由来。もとは「小さな家」「寝室」を意味し, 現代の δωμάτιο は家や建物の中の部屋を幅広く指す。ラテン語 domus も同じ系統で, 英語 domestic(家庭の), dome(ドーム)はこのラテン語経由の同系語。
部屋を表す関連語として、κάμαρα(部屋、寝室)、σαλόνι(居間、応接間)、κοιτώνας(寝室、寮)、ξενώνας(客室、ゲストハウス)、θάλαμος(病室、船室)など、用途に応じた語がある。δωματιάκι(小部屋)は指小形、δωματιάρα(大きな部屋)は拡大形。
ギリシャ語:περιστέρα
読み方:ペリステラ・ペリステーラ
ラテン文字:peristera
ギリシャ語:Περσεύς
読み方:ペルセフス・ペルセーフス
ラテン文字:persefs
ギリシャ語:ζώνη
読み方:ゾニ・ゾーニ
ラテン文字:zoni
古代ギリシャ語の ζώνη(帯、腰帯)を継承。古代ギリシャ語でも腰に巻く帯や帯状のものを指し、動詞 ζώννυμι(帯を締める、身に着ける)と同じ語族に属する。
腰に巻く帯から転じて、二つの境界のあいだにある細長い部分、地理・天文上の地帯、軍事・法律上の区域、放送の時間帯などにも使われる。
指小形に ζωνίτσα、ζωνούλα、ζωνάκι。関連語に ζωνάρι(帯、腰帯)、ζωστήρας(帯、ベルト)、ζώνη ασφαλείας(シートベルト、安全帯)、μαύρη ζώνη(黒帯)などがある。
ギリシャ語:πλευρά
読み方:プレヴラ・プレヴラー
ラテン文字:plevra
古代ギリシャ語の πλευρά(脇, 脇腹, 肋骨)に由来。形も意味も古代からほとんど変わらないが, 現代の「側面」「陣営」「観点」などの比喩的な用法はフランス語 côté, 英語 side からの意味借用で輪郭が整った。英語 pleura(胸膜)もラテン語経由でこの語から入った医学用語。
派生に πλευρικός(側の, 肋骨の), πλευρίτιδα(胸膜炎), πλευρίτσα, πλευρούλα(指小形)。合成語に δίπλευρος(二辺の), ισόπλευρος(等辺の), τρίπλευρος(三辺の), πολύπλευρος(多面的な), αμφίπλευρος(両面の)。中性並行形 πλευρό も同じ語族で, 肋骨を言うときによく使う。
話し言葉で「側, 面」と言うときは μεριά もよく使う。πλευρά は幾何学や形式的な場面, 身体の部位(肋骨), 抽象的な「側面」や議論の「陣営」で選ばれる。立方体のような立体の面を πλευρές と呼ぶこともあるが, 幾何学の厳密な用語では面は έδρα にあたる。
ギリシャ語:αλλαγή
読み方:アライ・アライー・アラギ・アラギー
ラテン文字:allagi
形容詞 ἄλλος(別の)をもとにした動詞 ἀλλάσσω(変える, 交換する, 現代 αλλάζω)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ἀλλαγή(変化, 交換)を継承。類義語は μεταβολή。合成語に ανταλλαγή(交換), εναλλαγή(交替), παραλλαγή(変異), συναλλαγή(取引)など。
ἄλλος は英語 else と同じ語源で、学術用語の接頭辞 allo-(他の、異なる)もここから。allophone(異音)、allograft(他家移植)など。
ギリシャ語:δικηγόρος
読み方:ディキゴロス・ディキゴーロス
ラテン文字:dikigoros
中世ギリシャ語 δικήγορος(裁判で弁論する人)を、近代以降に書きことばから再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。中世期には δικήγορος(前々アクセント)の形だったが、近代に古代の δημηγόρος(民衆の前で演説する人)の類推(誤った類推)でアクセントが δικηγόρος(前アクセント)に移動した経緯を持つ、現代の標準形。
源にある合成は δίκη(裁判、訴訟、正義)+ -ήγορος(演説する者、弁論する者、← 動詞 ἀγορεύω「演説する、語る」と同じ語幹 ἀγορ-)の二つの古代ギリシャ語要素から成る。同じ -ήγορος 系の合成語族には、συνήγορος(弁護人、共同弁論者、← σύν-「共に」+ -ήγορος), κατήγορος(告発者、検察官、← κατά-「対して」+ -ήγορος、英 category と同根), δημηγόρος(民衆の前で演説する人、政治家), αντίδικος(対立する側)が並び、古代ギリシャの法廷弁論・政治演説・公的言論の語彙の中核を成す。
源にある古代の δίκη(正義、裁判、判決、訴訟、女神 Δίκη)は、印欧祖語の「指し示す、示す」を表す語根に由来し、ラテン語 dīcō(言う、宣告する、← 英 dictate, dictionary, edict), dīx(指、点)と同根。古代ギリシャの女神 Δίκη(ディケー、正義の女神、ゼウスとテミスの娘)は、現代ギリシャ語の正義・法律語彙の根幹で、δικαιοσύνη(正義), δικαστήριο(裁判所), δικαστής(裁判官), δικηγόρος(弁護士), δίκαιος(公正な)が並ぶ、極めて生産的な語族。
源にある古代の ἀγορεύω(演説する、公の場で語る)は、名詞 ἀγορά(広場、市場、市民集会、← 英 agora)からの派生で、古代ギリシャの民主政治の中核となる「市民集会で語ること」を意味した。アテネのアゴラは、商業・政治・司法・哲学が交差する市民の中心地で、その場で「演説する」(αγορεύω) ことが古代民主主義の核心的な行為だった。現代ギリシャ語にも αγορεύω(書きことば), αγόρευση(演説、書きことば)として継承されている。
派生・関連語族として δικηγόρος(男性形), δικηγόρος(女性も同形、通性名詞), δικηγόρισσα / δικηγορίνα(女性弁護士、口語), δικηγορικός(弁護士の、形容詞), δικηγορία(弁護士業務), δικηγορικό γραφείο(法律事務所), δικηγορικός σύλλογος(弁護士会), ασκούμενος δικηγόρος(修習弁護士), ποινικολόγος δικηγόρος(刑事弁護人), δικηγόρος υπεράσπισης(弁護人), δικηγόρος κατηγορίας(公訴側の弁護士)。
ギリシャの法律・司法制度では、ローマ帝国期からビザンツ期、オスマン期、ギリシャ独立後の近代法体系の発達を通じて、弁護士の役割が確立されてきた。現代ギリシャの法体系はローマ法・大陸法の伝統に立脚し、独特のギリシャ正教会法の影響も残る、地中海・ヨーロッパの法律文化の交差点に位置する。
同じ「法律・司法」の領域には、上位概念の δικαιοσύνη(正義), 裁判官の δικαστής, 裁判所の δικαστήριο, 訴訟の δίκη, 訴訟当事者の διάδικος, 検察官の εισαγγελέας, 公証人の συμβολαιογράφος, 司法書士の συμβολαιογράφος が並び、現代ギリシャの法律語彙の中核を成す職業名詞の体系の一翼を担う。

男性名詞
軍事
人 
地形 
社会 
形容詞
色
茶系の色 
音楽
道具
情報・メディア 
食べ物
植物 

信仰・神話
天文
星座 
住居 
天気 
動物
爬虫類 
施設・建物 
鳥 

衣類
空間
地学
法
時
乗り物
幾何
身体・健康 
動作
職業 