ギリシャ語読み索引: ミ
ミ から始まる単語 31 語。
ミ から始まる単語 31 語。
ギリシャ語:μυαλό
読み方:ミアロ・ミアロー
ラテン文字:myalo
中世ギリシャ語 μυαλόν(脳)の語末 -ν が脱落して現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形 μυαλόν は、ヘレニズム期 μυαλός(脳、髄)が中性語尾化(μετάπλαση)で μυαλόν になったもので、その元はさらに古代ギリシャ語 μυελός(骨髄、髄)にさかのぼる。中性化は同じ身体部位の中性名詞 κεφάλι(頭、← κεφάλιον)の語形に引かれた、中世期の系統的な品詞・性の調整の例。
源にある古代の μυελός(骨髄)は、印欧祖語の「肉、髄、内側にあるもの」を表す語根に由来し、サンスクリット mastiṣka-(脳), ラテン語 medulla(髄、骨髄、心髄、中心、← 英 medulla の語源)と関連する系譜の語。古代では「骨髄」を中心に指したが、ヘレニズム期には頭蓋骨の中の「脳髄」も指すようになり、中世以降は「脳」を中心義として現代まで続いている。
書きことばの古典形 μυελός は、現代でも医学・解剖学の専門語として並走しており、νωτιαίος μυελός(脊髄), μυελός των οστών(骨髄)の形で使われる。同じ古代の μυελός から、近代の科学・医学語彙には myeloid(骨髄性の), myelin(ミエリン、神経鞘の物質), multiple myeloma(多発性骨髄腫)が国際語として広まり、英語・仏語経由で μυελοειδής(骨髄性の), μυελίνη(ミエリン)として現代ギリシャ語に再借用されている。
派生・関連語族として μυαλωμένος(分別のある、賢明な、形容詞), μυαλό-(脳の、知性の、を表す連結形), μυαλουδάκι(小さな脳、知能、可愛らしい考え、指小形), ξεμυαλίζω(人の頭を狂わせる、誘惑する), ξεμυαλισμένος(夢中になっている、惑わされた), αμυάλιστος(思慮を欠く、形容詞), ψιλομυαλιά(こざかしさ、口語)。
意味の領域では、近い語の νους(精神、理性、書きことばの古典形), νόηση(認知、知性作用、書きことば), νοημοσύνη(知能、知性、書きことば), διάνοια(知性、思考力、書きことば)と棲み分けがあり、μυαλό は最も日常的・具象的で、物理的な脳・思考の拠点・分別・正気を含む幅広い意味を持つ口語の中心語として機能する。比喩用法では「脳を絞る(στύβω το μυαλό μου)」「脳に空気が入る(παίρνουν τα μυαλά μου αέρα)」のような身体イメージが活発で、思考や感情を脳の物理的状態として描く慣用句の宝庫になっている。
ギリシャ語:μύγα
読み方:ミガ・ミーガ
ラテン文字:myga
中世ギリシャ語 μύγα(ハエ)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世形は、ヘレニズム期に音韻変化を経た μῦα(古代の μυῖα の二重母音 [υι] が単母音化 [υ] した形)に、母音連続を避けるための補助子音 [γ] が発達(ανάπτυξη)して μύγα の形に整えられた。語頭 [γ] の発達は、母音衝突を避けるために発生したギリシャ語の音韻調整の典型例。
源にある古代の μυῖα(ハエ)は、印欧祖語の「ハエ、飛ぶ小虫」を表す語根に由来し、ラテン語 musca(ハエ、← 英 mosquito「蚊」← スペイン語 mosca の指小形), サンスクリット mákṣikā-(ハエ), リトアニア語 mašalas(ブヨ), スラヴ語 mucha(ハエ)と同族。地中海・印欧語の「ハエ」を表す最古層の語彙の一つで、人類の生活と切り離せない害虫の名前として、ヨーロッパ各語に共通の語族を形成する。
ラテン語 musca から、フランス語 mouche(ハエ), スペイン語 mosca, イタリア語 mosca, ポルトガル語 mosca, 英語 mosquito(蚊、← 西 mosca + 指小接尾辞 -ito), mosquito net(蚊帳)の語族が広まった。学名分類では、Musca domestica(イエバエ), Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)など、ラテン語起源の学名が国際生物学用語として使われる。
派生・関連語族として μυγίτσα(小さなハエ、ハエちゃん、口語の指小形), μυγούλα(小さなハエ、口語の指小形), μυγάκι(小さなハエ、まれな指小形), μυγομύτης(ハエの鼻、罵倒語), μυγοχάφτης(ハエ取り、口語), μυγοσκοτώστρα(ハエたたき、口語), μυγοδιώχτης(ハエよけ、馬の尾の毛で作った払い), μυγοχαφτάκι(ハエ取り紙), αλογόμυγα(アブ、← άλογο「馬」+ μύγα), κρεατόμυγα(ニクバエ、← κρέας「肉」+ μύγα), μύγα των φρούτων / μύγα του ξιδιού(ショウジョウバエ、果実バエ), δροσόφιλα(ショウジョウバエ、書きことば、学名 Drosophila からの借用), ισπανική μύγα(スペインバエ、ただし実際はハエではなくカンタリス)。
ボクシング用語の κατηγορία μύγας(フライ級、約 51 kg 級)は、英語 flyweight の翻訳借用で、近代スポーツ語彙の典型例。同じパターンで、πτηνώδης κατηγορία(軽量級、書きことば), βαρέων βαρών κατηγορία(ヘビー級)が並ぶ、近代ボクシング階級の語彙体系の一翼を担う。
慣用表現は極めて活発で、慣用句の宝庫といえる語:κολλάω σαν τη μύγα στο μέλι(蜂蜜のハエのように張りつく、利益のあるものに執着する), βαράω / σκοτώνω μύγες(ハエをたたく、暇を持て余す、← 仏 chasser les mouches、英 swat flies と同じ慣用比喩), δεν σηκώνει μύγα στο σπαθί του(剣の上にハエを乗せない、批判を許さない), κάνω τη μύγα βόδι(ハエを牛にする、ささいなことを大げさにする、← 英 make a mountain out of a molehill の地中海版), σαν τις μύγες(ハエのように、大勢で), σαν τις μύγες στο σκατό(俗な慣用句), έχω τη μύγα της αμφιβολίας(疑いの虫を持つ), θα φάει η μύγα σίδερο(ハエが鉄を食べる、不可能な事態が起こる)が頻出する、害虫としてのハエと身近な動物としての観察を介した、人間生活の比喩表現の宝庫。
ギリシャ語:μύκητας
読み方:ミキタス・ミーキタス
ラテン文字:mykitas
古代ギリシャ語の μύκης(属格 μύκητος、キノコ、またはキノコ状の病的な隆起)の対格 -ητα を主格として再形成した形を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。古代の μύκης の語源は確定されておらず、Beekes は先ギリシャ語基層からの借用と見ている。
英語 mycology(菌類学), mycorrhiza(菌根), mycotoxin(マイコトキシン), 抗生物質名の streptomycin, neomycin などに含まれる -mycin はすべてこの μύκης から派生したもの。学術用語として国際的に流通し、フランス語 mycologie, ドイツ語 Mykologie などに対応する。
派生に μυκητιακός(菌の、真菌性の), μυκητίαση(真菌症、水虫など菌類による疾患)。類義語に μανιτάρι(キノコ。日常で食用のキノコや傘形の菌類を指す)。μύκητας は生物学・医学の分類用語として、キノコ・カビ・酵母を含む菌界全体に用いる。
ギリシャ語:Μικρά Άρκτος
読み方:ミクラアルクトス・ミクラーアルクトス
ラテン文字:mikra arktos
μικρός(小さい)の女性形 μικρά と άρκτος(クマ)からなる連語で「小さなクマ」を言う。星座名としては古典寄りの μικρά で組む形が定着しているが、現代ふつうの女性形 μικρή を当てた Μικρή Άρκτος も広く使われる。神話では、アルテミスに仕えたニンフのキノスラが、幼いゼウスを隠して育てたお礼に天に上げられて、こぐま座になったという伝承がある。別説では、Μεγάλη Άρκτος(おおぐま座)となった母カリストの息子アルカスがこの姿になったともされる。北極星 Πολικός Αστέρας は、この星座の尾の先の星。ラテン語形は Ursa Minor で、英語名もそのまま入った。日常の「クマ」は αρκούδα を使うことが多い。
ギリシャ語:Μικρός Κύων
読み方:ミクロスキオン・ミクロースキオン
ラテン文字:mikros kyon
古代ギリシャ語の μικρός(小さい)と κύων(犬)からなる連語「小さな犬」に由来。
古代から狩人オリオンに従う二匹の犬の小さな方と見なされ、おおいぬ座とともにオリオンのそばに配された。
星座でいちばん明るい恒星 Προκύων(プロキオン)は、προ-(〜の前に)と κύων(犬)からなる名。シリウスより先に昇ることから「犬に先んじて昇る」と名づけられた。
ラテン語形は Canis Minor。英語名もそのまま取り入れられた。
近くに Μέγας Κύων(おおいぬ座)などがある。ふつう「犬」と言うときは σκύλος を使うことが多い。
ギリシャ語:μισθός
読み方:ミスソス・ミスソース・ミストス・ミストース
ラテン文字:misthos
ギリシャ語:μυστικισμός
読み方:ミスティキズモス・ミスティキズモース
ラテン文字:mystikismos
フランス語 mysticisme(神秘主義)の構造を、ギリシャ語の素材で訳し移した翻訳借用(μεταφραστικό δάνειο)兼学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。Tri の分析では、フランス語 mysticisme は mystique(神秘的な、← ギリシャ語 μυστικός 由来)に -isme(主義、← ギリシャ語 -ισμός 由来)を組み合わせた近代造語で、これを再びギリシャ語の μυστικός + -ισμός に置き換えて取り入れた構造を持つ。
源にあるギリシャ語の μυστικός(秘密の、密儀の)は、古代ギリシャ語 μύω(口を閉じる、目を閉じる)に派生する形容詞で、もとは「沈黙が要求される、秘儀に関する」を意味した。エレウシス密儀(Ἐλευσίνια Μυστήρια)など、古代ギリシャの宗教的な秘儀の文脈で発達した語族。
19 世紀ヨーロッパでは、神との合一・脱魂による絶対者との直接的な接触を求める思想・態度を体系的に指す術語として mysticisme / mysticism が確立し、ギリシャ語ではラテン文字経由の借用ではなく自言語の素材で訳し直した μυστικισμός が定着した。
派生に μυστικιστής(神秘主義者), μυστικιστικός(神秘主義的な), μυστικοπάθεια(秘密にしたがる性質、神秘的なものへの過度な傾き)。類義語に αποκρυφισμός(オカルティズム、超感覚的な力に関する知識・実践の体系), εσωτερισμός(秘教、内側の知を求める思想), διαλογισμός(瞑想、← 古代以来の継承)。
μυστικισμός は感覚や理性を介さず直感や脱魂で絶対者・神性との合一を目指す態度に焦点があり、αποκρυφισμός(知識・実践寄り), εσωτερισμός(内輪の教義寄り)と微妙に重なりながらも区別される。隠微なものや神秘的なものに過度に惹かれる傾向、あるいは物事を秘密にしようとする性質を指す派生用法もある。
ギリシャ語:μυστικό
読み方:ミスティコ・ミスティコー
ラテン文字:mystiko
動詞 μύω(口を閉ざす)から派生した古代ギリシャ語の名詞 μύστης(秘儀参入者), その形容詞形 μυστικός(秘儀に関する, 神秘の)を継承した現代ギリシャ語の形容詞 μυστικός の中性形 μυστικό が名詞化した語。「秘密」の意味は近代にフランス語・英語 secret の訳語として定着した。英語 mystery, mystic, mysticism も同じ μύω の語族にさかのぼる。
同じ語族に μυστικός(神秘の, 秘密の), μυστήριο(秘儀, 秘跡, 謎), μυστικότητα(秘匿性, 神秘性), μύηση(入信, 秘儀参入), μυστικιστής(神秘主義者)。
類義語に απόρρητο(機密), αίνιγμα(謎, 難問)。αίνιγμα は解き明かすべき謎を指し, μυστικό は隠されている事柄や神秘を指す。
ギリシャ語:μυστικός
読み方:ミスティコス・ミスティコース
ラテン文字:mystikos
古代ギリシャ語の μυστικός(秘儀に属する、秘密の)に由来。名詞 μύστης(秘儀の入門者)に形容詞語尾 -ικός を付けた語。μύστης は動詞 μύω(目や口を閉じる)に由来し、秘儀で口を閉ざす入門者の姿が語のもとにある。
フランス語 secret, mystique や英語 mystic からの意味借用が入り、宗教的な文脈を離れた「秘密の、内密の」にも使われるようになった。
同じ語根の名詞に μυστήριο(謎、秘儀、秘跡), μυστικισμός(神秘主義), μύστης(秘儀の入門者、神秘家)。派生語に μυστικά(副詞、ひそかに), 中性名詞の μυστικό(秘密)。
英語 mystic もラテン語 mysticus を経て同じ語源。mystery, mysterious は μυστήριο からきた語。
ギリシャ語:μυστήριο
読み方:ミスティリオ・ミスティーリオ
ラテン文字:mystirio
古代ギリシャ語 μυστήριον(属格 μυστηρίου、秘密の儀式、密儀、選ばれた者にのみ明かされる教え)を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。「キリスト教の秘跡」の用法はヘレニズム期以来のキリスト教神学で固まった意味で、近代ギリシャ語にもその文脈で生きている。一方、「推理小説的な謎、不可解な事柄」の現代的な用法は、フランス語 mystère からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として近代以降に加わった層。
源にある古代の μυστήριον は、動詞 μυέω(秘儀を授ける、← μύω「口を閉じる、目を閉じる」)の派生で、文字どおり「沈黙が要求される儀式・教え」を意味した。古代ギリシャの宗教世界で、エレウシス密儀(Ἐλευσίνια Μυστήρια), オルフェウス密儀(Ὀρφικὰ Μυστήρια), サモトラケ密儀など、入信者のみに伝授される秘儀が広く行われ、その総称として μυστήρια(中性複数)が定着した。
ヘレニズム期以降、キリスト教文献で「神の救いの計画」「秘跡(聖体・洗礼など)」の語として再活用され、東方正教会では今日も τα Άχραντα Μυστήρια(聖体), τα επτά Μυστήρια(七つの秘跡)の中核語彙として用いられる。
ラテン語 mysterium として入り、英語 mystery, mysterious, フランス語 mystère, mystérieux, ドイツ語 Mysterium, mystisch, イタリア語 mistero などヨーロッパ各語の「神秘・秘跡・謎」関連語彙の源となった。中世ヨーロッパの「神秘劇」(mystery play)も同じ系統。
派生・関連語族として μυστικός(秘密の、密儀の), μυστικό(秘密、神秘), μυστικισμός(神秘主義), μύηση(入信、秘儀への加入), μύστης(入信者、秘儀に通じた者), μυστηριώδης(神秘的な、形容詞)。類義語に αίνιγμα(謎、なぞなぞ), γρίφος(パズル、難問), μυστικό(秘密), αποκάλυψη(啓示、対義概念)。日常で「謎、不可解な事柄」、宗教で「秘跡、密儀」の二つの意味領域で同形のまま使い分ける多義語。
ギリシャ語:μισό
読み方:ミソ・ミソー
ラテン文字:miso
古代ギリシャ語の ἥμισυς(半分)から。
ビザンチン期に ἥμισος という形になり、語頭の ἡ- が脱落して μισός となった。
見出しの μισό は形容詞 μισός(半分の)の中性形。中性名詞のように、量や距離、時間などの「半分」を表す際に用いられる。
英語 hemisphere(半球)などの接頭辞 hemi- はギリシャ語の ἡμι- から、ラテン語の semi-(半〜)も印欧祖語で「半分」を表す同じ語根から。ギリシャ語では語頭の s が母音の前で気息の h(ἡ-)になり、ラテン語では s が保たれた。
ギリシャ語:μύθος
読み方:ミソス・ミーソス・ミトス・ミートス
ラテン文字:mythos
古代ギリシャ語の μῦθος(言葉, 話, 物語)を継承。現代の「神話, 寓話, 筋書き」の用法はドイツ語 Mythos, フランス語 mythe, 英語 myth からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μῦθος の語族に μυθικός(神話的な, 伝説的な), μύθευμα(作り話), μυθώδης(神話のような, 伝説のような), 合成語 μυθολογία(神話学, 神話体系), μυθιστόρημα(小説), μυθοπλασία(フィクション, 創作), μυθομανία(虚言癖), μυθοποιός(神話を作る, 神話化する)。
類義語 θρύλος は歴史的事実を核に伝承がついた「伝説」, παραμύθι は子ども向けに語られる「おとぎ話」を指すのに対し, μύθος は世界の成り立ちや神々・英雄を扱う構造のある物語で使う。英語 myth, mythology, mythical もこの μῦθος の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:μύτη
読み方:ミティ・ミーティ
ラテン文字:myti
古代ギリシャ語の μύτις(吻、鼻先。もとはタコ・イカの肝や墨袋を指した語)を継承。中世ギリシャ語の μύτη を経て、人や動物の「鼻」を指す形として今に落ち着いた。鼻にまつわる古い同根の語族には鼻水を表す μύξα や鼻孔を表す μυκτήρ もあり、μύτη はこの語族のなかで日常の「鼻」を担う形として広まった。古代のもう一つの「鼻」 ῥίς は今は接頭辞 ρινο- としてのみ生き、ρινίτιδα(鼻炎), ρινοπλαστική(鼻形成術)など医学・解剖の硬い形に残る。英語 rhinoceros(サイ)の rhino- もこの ῥίς からラテン語経由で入った学術借用で、μύτη とは別系統。
類義語に ῥίς(鼻。古代ギリシャ語由来で、今は単独では用いず接頭辞 ρινο- としてのみ医学・解剖の文脈に残る)。μύτη は鼻を指すふつうの形として広く使う。派生に μυτίτσα, μυτούλα(小さな鼻、可愛らしい鼻。指小形), μυτάρα(大きな鼻。増大形), μυτιά(鼻でひと突き、ひと嗅ぎ), μυτερός(先の尖った), μυτίζω(先を尖らせる), ξεμυτίζω(外に顔を出す)。合成語に κουτσομύτης(鼻の欠けた人), σουβλομύτης(とがり鼻の人), στραβομύτης(鼻の曲がった人), ψηλομύτης(お高くとまった人), πλατσομύτης(鼻ぺちゃの人), μυτοτσίμπιδο(鼻先用ピンセット)。
ギリシャ語:μηδέν
読み方:ミデン・ミデーン
ラテン文字:miden
古代ギリシャ語の μηδέν(何もないもの)に由来。μηδέν は μηδείς(誰もない、何もない)の中性形で、さらに μηδέ(そして〜ない)と εἷς(一)に分解できる。
数としての 0、目盛りの基準、評価の最低値などの用法は、フランス語の nul(le) や zéro などからの意味借用で定着した。このフランス語の zéro はイタリア語や中世ラテン語を経て、アラビア語の sifr(空、ゼロ)に遡る。英語の zero や cipher も同じ語源につながる。
派生語には μηδενικός(ゼロの、無の)、μηδενίζω(ゼロにする、無効にする)、μηδενισμός(ニヒリズム、無化)などがある。
ギリシャ語:μητρόπολη
読み方:ミトゥロポリ・ミトゥローポリ
ラテン文字:mitropoli
ヘレニズム期および中世ギリシャ語 μητρόπολις(母都市、府主教座、管区)が現代まで続く意味の層と、近代以降に書きことばから再導入された学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)の層、さらにフランス語 métropole の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の層が重なる、多層構造の語。基本的な「母都市・正教会の管区」の意味は古代ギリシャ語からの継承(κληρονομιά)で、「巨大都市・宗主国」の現代的意味は近代に仏 métropole から取り入れた拡張用法。
源にある古代の μητρόπολις(母都市)は、μήτηρ(母)と πόλις(都市、市民共同体)の合成語で、古代ギリシャ世界で植民都市(αποικία)を建設した母体となる本国の都市国家を指した。コリント、ミレトス、メガラのような植民活動を行った都市国家が「μητρόπολις」と呼ばれ、植民地の側はそれに対する「子都市」と位置づけられた。古代ギリシャの植民活動の語彙の中核を成す概念。
中世以降は、東方正教会の組織用語として取り入れられ、総主教(πατριάρχης)の下にある府主教(μητροπολίτης)が統括する管区を意味するようになった。「母なる都市」の比喩から、「中心となる教会組織を持つ街」「府主教の座所のある街」へと意味が転じ、現代ギリシャ語でも正教会の組織用語として生きている。管区の中心にある大聖堂(μητροπολιτικός ναός)や、府主教の官邸(μητροπολιτικό μέγαρο)も同じ語で呼ばれる。
源にある μήτηρ(母)は印欧祖語の「母」を表す語根に由来し、ラテン語 mater, サンスクリット mātṛ-, 英語 mother, ドイツ語 Mutter と同族。ギリシャ語の派生語族には μητέρα(母、現代の継承形), μητρικός(母の、母性の), μητριά(継母), μητρότητα(母性), μητρόπολη(大都市、母都市)が出ており、家族・社会・地理の語彙の根幹をなす。
ラテン語経由の系譜では、ラテン語 metropolis を介してフランス語 métropole(首都、宗主国、大都市), 英語 metropolis(大都市、メトロポリス), ドイツ語 Metropole が並走し、近代的な「巨大都市」「植民地に対する宗主国」の意味が定着した。現代ギリシャ語の μητρόπολη はこの仏 métropole の意味用法を取り込んだ意味借用の層を持っており、「ハリウッドは映画のメトロポリス」のような比喩用法もここに連なる。
派生・関連語族として μητροπολίτης(府主教、男性形), μητροπολιτικός(府主教の、大都市の、形容詞), μητροπολιτικός ναός(大聖堂、府主教座聖堂), μητροπολιτικό μέγαρο(府主教館), μεγαλούπολη(巨大都市、← 英 megalopolis 由来の αντιδάνειο), υπερπόλη(超大都市、新造語), αποικία(植民地、対義語)。同じ「都市の規模・性格」の領域には、村の χωριό, 町の κωμόπολη, 都市の πόλη, 主要都市の μητρόπολη が並び、規模と機能の連続体として体系化されている。
ギリシャ語:μήνας
読み方:ミナス・ミーナス
ラテン文字:minas
古代ギリシャ語の μήν(月、月の周期)から。中世ギリシャ語 μήνας を経て今の形になった。
μήν は月の満ち欠けを一つの時間単位として数える語で、英語 month や moon も同じ印欧語根に由来する。
χρόνος(時間、年)は時間全般や長い年月、χρονιά(年、一年)は一年単位、ώρα(時、時間)はもっと短い区切りを指す。μήνας はその間にある暮らしの区切りで、Καλό μήνα(よい月を)のような月初めのあいさつにもよく使われる。
派生語に μηνιαίος(月ごとの、月次の)、μηνιάτικο(月給や家賃の一か月分)、μηνιάτικος(月払いの)など。複数形 μήνες は、単に月数を表すだけでなく、給与や賃料などの「数ヶ月分」を数える際にも用いられる。
ギリシャ語:μήνυμα
読み方:ミニマ・ミーニマ
ラテン文字:minyma
ギリシャ語:μηχανάκι
読み方:ミハナキ・ミハナーキ
ラテン文字:michanaki
μηχανή(機械、エンジン、バイク)に指小辞 -άκι が付いた形。
もともと口語では μηχανή 自体がオートバイを指すことがあり、その指小形 μηχανάκι は特に小型のスクーターや原付を指すようになった。大型のオートバイ全般には μοτοσικλέτα を使う。
共通の語源を持つ関連語に μηχανικός(機械の、技師)などがある。
ギリシャ語:μηχανικός
読み方:ミハニコス・ミハニコース
ラテン文字:michanikos
古代ギリシャ語の μηχανικός(機械や仕掛けに関わる)に由来。μηχανή(機械, 装置, 仕掛け)に形容詞を作る -ικός が付いた形で, もとは仕掛けや装置に関わる性質を表した。現代の「技師, エンジニア, 整備士」の用法はフランス語 mécanicien, ingénieur, machinal, 英語 mechanical からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μηχανή の語族に μηχανική(機械工学, 力学), μηχανισμός(機構, 仕掛け), μηχάνημα(機械, 装置), μηχανάκι(スクーター, 原付), 合成語 πολιτικός μηχανικός(土木技師), ηλεκτρολόγος μηχανικός(電気技師), αρχιμηχανικός(主任技師)。
英語 mechanic, mechanical, machine もこの μηχανή からラテン語 machina 経由で入った語。
ギリシャ語:μηχάνημα
読み方:ミハニマ・ミハーニマ
ラテン文字:michanima
古代ギリシャ語の μηχάνημα(機械仕掛け、装置、機械的な発明)に由来。μηχάνημα は μηχανάω / μηχανάομαι(工夫する、仕掛ける)に、結果を表す名詞を作る接尾辞 -μα が付いた形。さらにその遡源には古代ギリシャ語 μηχανή(仕掛け、道具、工夫)がある。
μηχανή のさらに前の由来は確定していない。印欧祖語で「できる、力を持つ」ことを表す語根に結びつける説がある一方、ギリシャ語以前の言語に由来すると見る説もある。
関連語に μηχανή(機械、エンジン)、μηχανικός(技師、整備士)、μηχανική(機械工学、力学)、μηχανισμός(機構、仕組み)、μηχανάκι(スクーター、原付)など。指小辞を用いた μηχανηματάκι(小型の機械、小さな装置)などもある。
類義語には μηχανή(機械、エンジン)、συσκευή(装置、機器)、εργαλείο(道具)などが挙げられる。英語の machine、mechanic、mechanism も、同じ μηχανή の語族に属する。
ギリシャ語:μη με λησμόνει
読み方:ミメリズモニ・ミメリズモーニ
ラテン文字:mi me lismoni
μη(〜するな), με(私を), λησμονώ(忘れる)の命令形 λησμόνει からなる連語で、「私を忘れないで」の意。フランス語 ne m'oubliez pas, ドイツ語 Vergissmeinnicht からの翻訳借用で、ワスレナグサ属(Myosotis)の草本植物を指す。
学名 Myosotis は古代ギリシャ語 μυοσωτίς に由来し、μῦς(ネズミ)の属格 μυός と οὖς(耳)の語幹の合成。葉の形がネズミの耳に似ることにちなむ命名。
ギリシャ語:μοίρα
読み方:ミラ・ミーラ
ラテン文字:moira
古代ギリシャ語の μοῖρα(分前、運命)を継承。動詞 μείρομαι(分配を受ける)から作られた語で、「割り当てられたもの」がもとの意味。印欧祖語で分配・割り当てを表す語根から続き、英語 merit(功績)もラテン語 mereō(値する)を経て同じ語源。
ギリシャ神話では Μοίρες(運命の三女神)が人の生死や境遇を定める存在として語られる。
軍の部隊名(大隊、飛行隊)と角度の「度」には、それぞれフランス語 escadron と degré からの意味借用が入って定着した。
派生語に μοιράζω(分ける、配る), μοιραίος(運命的な、致命的な), μοιρασιά(分け前、取り分)。合成語に κακόμοιρος(不幸な、かわいそうな), μεμψίμοιρος(文句の多い、不平を言う)。
類義語に τύχη(運命、幸運)。τύχη は偶然や巡り合わせを指し、μοίρα はあらかじめ定められた運命を指す。
ギリシャ語:μυρίζω
読み方:ミリゾ・ミリーゾ
ラテン文字:myrizo
名詞 μύρον(香油, 芳香油)に動詞化の -ίζω がついた古代ギリシャ語の動詞 μυρίζω(香油を塗る, 香りがする)を継承。古代は「香油を塗る」と「香りがする」の二つの意味があったが、現代では前者の意味は失われ、「においがする、においをかぐ」の意味に集約された。
同じ μύρον から派生した μυρωδιά(におい、香り)や μυρώνω(香油を塗る、聖別する)などは同族の語。μυρίζω との合成語には μοσχομυρίζω(とてもよい香りがする)などがある。
名詞 μυρωδιά は άρωμα(香水、芳香)より意味が広く、よい香りにも嫌なにおいにも使いやすいのが特徴。
元の μύρον はセム語からの借用とする見方が有力。英語 myrrh(没薬)も同じ源泉からラテン語経由の別ルートで入った親戚にあたる。
ギリシャ語:μυρμήγκι
読み方:ミルミギ・ミルミーギ・ミルミンギ・ミルミーンギ
ラテン文字:myrmigi
中世ギリシャ語 μυρμήγκι(ν) を継承。
古代ギリシャ語 μύρμηξ(蟻)の指小形 μυρμηκίον が、中世に中性名詞 μυρμήγκι(ν) の形に整えられて受け継がれた。μύρμηξ は蟻を表す印欧祖語の語根をもとにした語。
派生語に μυρμηγκιά(蟻の巣、蟻の大群、しびれ)、μυρμήγκιασμα(しびれ、ちくちくする感じ)、μυρμηγκοφωλιά(蟻の巣)などがある。共通の語源を持つ関連語に、ラテン語 formica、サンスクリット vamrá- などがある。
ギリシャ語:μήλο
読み方:ミロ・ミーロ
ラテン文字:milo
古代ギリシャ語 μῆλον(果実全般)を継承。古代にはリンゴのほかマルメロや桃など木の実全般を指したが, 現代ギリシャ語ではリンゴに意味が絞られ, 語尾 -ον が脱落して μῆλο / μήλο の形になった。英語 melon は μῆλον と πέπων(熟したウリ)の合成語 μηλοπέπων がラテン語 melopepo を経て変化したもので, 同じ μῆλον にさかのぼる。
派生に μηλιά(リンゴの木), μηλίτης(リンゴ酒, シードル), μήλινος(リンゴ色の, 淡黄緑色の), μηλιώνας(リンゴ園)。合成語に μηλόπιτα(リンゴのパイ), μηλομαρμελάδα(リンゴジャム), μηλόκρασο(リンゴ酒), μηλοχυμός(リンゴジュース), μηλοπέπονο(カンタロープ), μηλοκύδωνο(マルメロ), ξινόμηλο(酸っぱいリンゴ), μηλολόνθη(コガネムシ)。

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