ギリシャ語:τρίχα
読み方:トゥリハ・トゥリーハ
ラテン文字:tricha
古代ギリシャ語 θρίξ(毛、属格 τριχός、対格 τρίχα)の対格 τρίχα を主格として再形成した形が、中世ギリシャ語を経て現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。古代の主格 θρίξ は印欧祖語の「毛、糸状のもの」を表す語根に由来する可能性があるが、Beekes は確実な対応を見出さない。
古代の屈折パラダイムで主格 θρίξ と斜格 τριχ- は子音交替(θ ↔ τ)を伴っていたが、現代では対格をベースにした均一な τριχ- 語幹で固まり、屈折の不規則性が解消された。同じ θρίξ から派生した英語 trichology(毛髪学), trichotomy(三分法、← τρίχα は「三つに」の意味とも掛けて), trichome(植物学の毛状突起), trichinosis(旋毛虫症)など、医学・植物学・寄生虫学の専門用語の語幹となっている。
派生・関連語族として τριχούλα, τριχίτσα(小さな毛、指小形), τρίχωμα(毛皮、被毛), τριχωτός(毛深い、毛におおわれた), τριχοειδής(毛のような、毛細血管の), τριχοβλεφαρίδα(まつげ), τριχόπτωση(脱毛症、毛が落ちること)。類義語に μαλλί(髪、羊毛、複数 μαλλιά で頭髪全体), χαίτη(たてがみ、長く伸ばした髪), πέλος(パイル、織物の毛), χνούδι(うぶ毛、繊維のけば)。τρίχα は個別の「毛」を指すのが基本で、頭髪全体を指す μαλλιά とは区別される。
慣用成句が豊富で、παρά τρίχα(毛一本の差で、間一髪で), στην τρίχα(完璧に、毛一本の乱れもなく), σηκώνονται οι τρίχες μου(毛が逆立つ、身の毛もよだつ), κάνω την τρίχα τριχιά(毛を太いロープにする、針小棒大に言う), τρίχες κατσαρές!(縮れ毛だ = くだらない、デタラメだ)など、日本語の「間一髪」「身の毛がよだつ」「針小棒大」と対応する表現が多数生きている。

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