ギリシャ語:βάζω
読み方:バゾ・バーゾ・ヴァゾ・ヴァーゾ
ラテン文字:vazo
中世ギリシャ語の βάζω を継承。
古代ギリシャ語の動詞 βιβάζω(上げる、乗せる)が音変化を経た形で、βιβάζω は βαίνω(行く、進む)から作られた使役形。
完結相過去形 έβαλα は別系統。古代の βάλλω(投げる、置く)に由来し、非完結相と完結相で語源の異なる語幹が組み合わさっている。
β から始まる単語 78 語。
β から始まる単語 78 語。
ギリシャ語:βάζω
読み方:バゾ・バーゾ・ヴァゾ・ヴァーゾ
ラテン文字:vazo
中世ギリシャ語の βάζω を継承。
古代ギリシャ語の動詞 βιβάζω(上げる、乗せる)が音変化を経た形で、βιβάζω は βαίνω(行く、進む)から作られた使役形。
完結相過去形 έβαλα は別系統。古代の βάλλω(投げる、置く)に由来し、非完結相と完結相で語源の異なる語幹が組み合わさっている。
ギリシャ語:βαλτός
読み方:ヴァルトス・ヴァルトース
ラテン文字:valtos
古代ギリシャ語の動詞 βάλλω(投げる、置く)の動詞形容詞 βαλτός(置かれた、はめ込まれた)を継承。もとの「他人によって置かれた」の意味から、口語で否定的に「手先、回し者、スパイ」を指して使われるようになった。
綴りは同じで強勢が違う βάλτος(沼)は別語で、中世にスラヴ語から借用されたもの。語源は無関係。
ギリシャ語:βάλτος
読み方:ヴァルトス・ヴァールトス
ラテン文字:valtos
スラヴ語の bolto(沼)から中世ギリシャ語に借用された βάλτος を継承。ブルガリア語の blato(沼)にも同じ語が残る。派生語に動詞 βαλτώνω(沼にはまる、停滞する)、βαλτόνερα(淀んだ水)など。
同じ「沼、湿地」を表す古代ギリシャ語由来の語に έλος と τέλμα がある。έλος は学術・形式寄り(ελώδης πυρετός「マラリア」など)、τέλμα は淀みのほか比喩で「停滞」を表し、βάλτος と意味が重なる。
なお綴りは同じで強勢が違う βαλτός(手先、スパイ)は別語。古代ギリシャ語の動詞 βάλλω(投げる、置く)の動詞形容詞から来ていて、語源は無関係。
ギリシャ語:βανίλια
読み方:ヴァニリャ・ヴァニーリャ
ラテン文字:vanilia
イタリア語 vaniglia(バニラ)からの外来借用(δάνειο)。イタリア語 vaniglia は、スペイン語 vainilla(小さな鞘)に由来する。これはスペイン語 vaina(鞘)に指小辞 -illa が付いた形で、新世界(メキシコ)原産のバニラの果実が細長い鞘の形をしていたことからスペイン人が命名した。さらに遡るとラテン語 vāgīna(鞘、覆い)にたどり着く。英語 vagina(腟)も同じ vāgīna を語源とする。
新世界の発見以降、コロンブス交換で持ち込まれた香料植物として、スペイン語 vainilla、フランス語 vanille、英語 vanilla、ロシア語 ваниль など、ヨーロッパ各語に広まった国際語の典型である。日本語のバニラもこの系統に含まれる。
ギリシャの食文化では、香料としての用途に加え、伝統菓子 υποβρύχιο(イポヴリヒオ)の代表的なフレーバーとして親しまれている。これは白く粘り気のある甘い練り菓子をスプーンですくい、冷水のグラスに沈めて食べる伝統スイーツで、その菓子自体を βανίλια と呼ぶ用法もある。また、植物学の専門用法では濃赤色の δαμάσκηνο(スモモ)の一品種を指すこともある。
派生・関連語に乏しい外来語で、主な用法は香料、菓子、植物名などに限られる。形容詞的な「バニラ風味の」を表す慣用には παγωτό βανίλια(バニラアイスクリーム)や εκχύλισμα βανίλιας(バニラエッセンス)などの連語が定型化している。
ギリシャ語:βάρδια
読み方:ヴァルディア・ヴァールディア
ラテン文字:vardia
北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 vardia(見張り、当番)からの借用。同源のイタリア標準語形は guardia で、英語 guard, ward もこの系統。海事用語の見張り当番が「勤務交代、シフト」の意味に広がった。
ギリシャ語:βαρελότο
読み方:ヴァレロト・ヴァレロート
ラテン文字:vareloto
イタリア語 barilotto(小さな樽)からの借用で、祝祭や行事で使う爆竹を表す。barilotto は barile(樽)に指小辞 -otto を付けた形。ギリシャ語 βαρέλι(樽)はイタリア語 barile から、英語 barrel は古フランス語 baril から来ていて、いずれも同じ語族につながる。
類義語に κροτίδα(爆竹、クラッカー), στρακαστρούκα(爆竹、かんしゃく玉), μπομπάκι(小型爆弾), δυναμιτάκι(小型ダイナマイト)。関連語に βεγγαλικό(手持ち花火、ベンガル花火), πυροτέχνημα(花火), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾)。
ギリシャ語:βαρύς
読み方:ヴァリス・ヴァリース
ラテン文字:varys
印欧祖語で「重い」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の βαρύς(重い)を継承。名詞は βάρος(重さ)。英語 baritone(バリトン、もとは「重い声」)や barometer(気圧計)も同じ語源。
ギリシャ語:βαρύτητα
読み方:ヴァリティタ・ヴァリティータ
ラテン文字:varytita
古代ギリシャ語の βαρύτης(重さ、重み)に由来。βαρύτης は βαρύς(重い)に、性質や状態を表す名詞を作る接尾辞 -της が付いた形。現代形 βαρύτητα は、古代語の対格 βαρύτητα をもとにしている。
βαρύς の語根は印欧祖語で「重い」を表す語に起源を持つ。ラテン語 gravis(重い、重大な)も同系統で、英語 gravity はラテン語 gravitas(重さ、重大さ)からの借用。物理的な「重力」と比喩的な「重大さ」が同じ語で表される点は、βαρύτητα との共通点と言える。
関連語に βαρύς(重い)、βάρος(重さ、重み)、βαρυτικός(重力の)、βαρυτική δύναμη(重力)など。対義語は ελαφρότητα(軽さ)。
物理では βαρύτητα が重力という現象や法則を指す。力として述べるときは βαρυτική δύναμη が用いられ、天体や物体が互いに引き合う文脈では βαρυτική έλξη も重力を指して使われる。比喩的な文脈では σημασία(重要性)、κύρος(権威)、σοβαρότητα(重大さ、深刻さ)などと近い意味を持つ。
ギリシャ語:βαρυτική δύναμη
読み方:ヴァリティキ ディナミ・ヴァリティキー ディーナミ
ラテン文字:varytiki dynami
ギリシャ語:βαρυτικό πεδίο
読み方:ヴァリティコ ペディオ・ヴァリティコー ペディーオ
ラテン文字:varytiko pedio
βαρυτικός(重力の)の中性形 βαρυτικό と πεδίο(場、フィールド)からなる連語。
物理では、重力が空間の各点でどのように働くかを表す「重力場」を指す。古典力学では、質量をもつ物体のまわりに定まる場として扱い、各点で物体が受ける δύναμη(力)や επιτάχυνση(加速度)を記述する。
一般相対論では、重力場は単なる力の場ではなく、物質や ενέργεια(エネルギー)の分布によって生じる時空の曲がりとして捉えられる。弱い重力場では古典力学の説明とほぼ一致するが、強い重力場では φως(光)の曲がりや重力波のような現象が問題になる。
関連語に βαρύτητα(重力)、βαρυτική δύναμη(重力)、βαρυτική έλξη(重力による引き合い)、βαρυτικά κύματα(重力波)、βαρυτικός φακός(重力レンズ)などがある。
ギリシャ語:βαρυτικός
読み方:ヴァリティコス・ヴァリティコース
ラテン文字:varytikos
βαρύς(重い)から派生した名詞 βαρύτητα(重力、重さ)の関係形容詞。近代物理学では、ドイツ語 Gravitations- やフランス語 gravitationnel に対応する翻訳借用として整えられた。Gravitations- / gravitationnel は gravitation(重力、万有引力)から作られた関係表現で、βαρύτητα から βαρυτικός を作る発想と対応している。
βαρύτητα が「重力という現象・法則」そのもの("ο νόμος της βαρύτητας" = 重力の法則)を指すのに対し、βαρυτικός は「重力に関する」を表す関係形容詞。物体間に働く具体的な「力」を表現するときは βαρυτική δύναμη が用いられ、天体や物体が互いに引き合う文脈では βαρυτική έλξη も重力を指して使われる。
連語に βαρυτικό πεδίο(重力場)、βαρυτική δύναμη(重力(の力))、βαρυτικά κύματα(重力波)、βαρυτικός φακός(重力レンズ)など。
ギリシャ語:βάσανο
読み方:ヴァサノ・ヴァーサノ
ラテン文字:vasano
中世ギリシャ語の βάσανον を継承。起源となる古代ギリシャ語の βάσανος はエジプト語 baḫan からの借用。金属の純度を調べる試金石を指した。
そこから「厳しく調べること、拷問」などへと意味が拡大。中世以降は中性形 βάσανον となり、「苦しみ、試練」などの意味に転じた。
ギリシャ語:βασιλεύς
読み方:ヴァシレフス・ヴァシレーフス
ラテン文字:vasilefs
古代ギリシャ語の βασιλεύς(王, 君主)を継承。ミュケナイ期の線文字Bにすでに qa-si-re-u として現れる古い語で, ギリシャ語以前の何らかの言語からの借用とする説があるものの, 確かな語源はわかっていない。
同じ語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλικός(王の, 王に関する, バジル), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικοφανής(王のような), βασιλόπαις(王子)。今, 日常で「王」を言うのは βασιλιάς で, βασιλεύς は古代史や歴史上の君主の肩書き, 学術的な文脈に残る。
現代の βασιλιάς は古代の対格 βασιλέα が中世に βασιλιά-ς として主格化したもの。英語 basilica(バシリカ, もとは「王の柱廊」), basilisk(バジリスク, 「小さな王」の意)もラテン語を経てこの βασιλεύς の語族。
ギリシャ語:βασιλιάς
読み方:ヴァシリャス・ヴァシリャース
ラテン文字:vasilias
古代ギリシャ語 βασιλεύς(王)の対格 βασιλέα が、中世に二母音衝突を避ける母音融合(συνίζηση)を起こして βασιλιάς となり、現代の基本語になった。古典の主格形は文語・専門文脈で βασιλεύς(王、君主、バシレウス)として残る。女性形は βασίλισσα(女王、王妃)。
派生語に βασιλικός(王の、バジル), Βασιλίσκος(小さな王、しし座の恒星レグルス)。英語 basilica(王の館 → 大聖堂), basil(バジル), basilisk(バシリスク)も同じ系統。
ギリシャ語:βασιλικός
読み方:ヴァシリコス・ヴァシリコース
ラテン文字:vasilikos
古代ギリシャ語の形容詞 βασιλικός(王の, 王にふさわしい)を継承。βασιλεύς(王)に「〜の, 〜に属する」を表す接尾辞 -ικός を付けた形。植物バジルを指す男性名詞としての用法は中世ギリシャ語で生まれ, 香りの気高さから「王の草」と呼ばれたことによる。
同じ βασιλεύς の語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικότητα(王の威厳), 副詞 βασιλικά(王のように, 豪華に), 合成語 φιλοβασιλικός(親王制の, 王党派の), αντιβασιλικός(反王制の), βασιλομήτωρ(王母)。
英語 basil(バジル)はラテン語 basilicum, 古フランス語 basile を経て植物名の βασιλικός の系統を引く。basilica(バシリカ)は古代ギリシャ語 βασιλική στοά「王の柱廊」の βασιλική から, basilisk(バジリスク, 伝説上の蛇王)は指小形 βασιλίσκος(小さな王)を経てラテン語 basiliscus から入った。フランス語 basilic も同じ経路。
ギリシャ語:βασιλίσκος
読み方:ヴァシリスコス・ヴァシリースコス
ラテン文字:vasiliskos
古代ギリシャ語の βασιλίσκος(小さな王)を継承。βασιλεύς(王、君主、バシレウス)に指小の接尾辞 -ίσκος を付けた形。
同じ語群に βασιλιάς(王、国王)、形容詞の βασιλικός(王の、王にふさわしい、バジル)、女性形の βασίλισσα(女王、王妃)。
しし座のアルファ星の名 Βασιλίσκος(レグルス)は「小さな王」の直訳で、ラテン語 Regulus も同じ発想で作られた。西洋怪物名の英語 basilisk、フランス語 basilic、イタリア語 basilisco はラテン語 basiliscus を経て広まり、元はヘレニズム期のギリシャ語 βασιλίσκος で、眼光や息で害をなすとされる蛇の伝説に結びついた。
ギリシャ語:βαφή
読み方:ヴァフィ・ヴァフィー
ラテン文字:vafi
古代ギリシャ語の βαφή(浸すこと、染色、焼入れ)を継承。動詞 βάπτω(浸す)から作られた名詞。
派生語に βάφω(染める、塗る), βάψιμο(染めること、塗ること), βαφέας(染物師、塗装工), βαφικός(染色の)。関連語は χρώμα(色), μπογιά(ペンキ、絵の具)。英語 baptism は動詞 βάπτω から教会ラテン語 baptismus を経て作られた語で、同じ語根。
ギリシャ語:βεγγαλικό
読み方:ヴェンガリコ・ヴェンガリコー
ラテン文字:vengaliko
地名 Βεγγάλη(ベンガル。英語 Bengal、ベンガル語の自称 Bangla から入った外来借用)を形容詞化した βεγγαλικός(ベンガル風の)の中性名詞形で、英語 Bengal light(ベンガル花火)を写した意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として花火を指す名詞に定着した。もとは πυροτέχνημα βεγγαλικό(ベンガル風の花火)と修飾関係で使われていた中性形容詞が単独で名詞化した形。ベンガル花火は、ベンガル地方で信号用に使われた青白い光を放つ火薬を指し、手持ちや信号弾として燃やすタイプのものだった。
類義語に πυροτέχνημα(花火。やや硬い語)。βεγγαλικό は打ち上げ・手持ちの両方を含む花火全般を指す形として広く使う。通常は複数形 βεγγαλικά で用いる。関連語に βαρελότο(爆竹), κροτίδα(クラッカー、爆竹), στρακαστρούκα(爆竹), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾), βεγγαλικός(ベンガル風の。形容詞形)。
ギリシャ語:βερίκοκο
読み方:ヴェリココ・ヴェリーココ
ラテン文字:verikoko
古代ギリシャ語の πραικόκκιον を継承。ラテン語 praecox(早熟の)を由来とする。 アンズがほかの果物より早く熟すことにちなんだ名称。 praecox は prae-(前に)と coquo(煮る、熟す)の合成語。 中世に βερίκοκκον となり、現在の形へと続く。
派生語には βερικοκιά(アンズの木)、βερικοκί(アンズ色)、βερικοκέλαιο(アンズ油)など。 近縁の語に καΐσι(大きめの品種、トルコ語からの借用)がある。
英語 apricot は、このギリシャ語がアラビア語 البرقوق(al-barqūq)へ意味借用され、カタルーニャ語やフランス語を経て英語に入った同源語。 英語 precocious(早熟な)も、同じく praecox を語源とする。
ギリシャ語:βιασύνη
読み方:ヴィアシニ・ヴィアシーニ
ラテン文字:viasyni
古代ギリシャ語の βία(力、暴力)から派生した動詞 βιάζω(強いる、急がせる)に由来。もとは「力で押す、強いる」感覚をもつ語。
「強いる、急がせる」から、時間に追われる焦りや急ぎを表す意味へと広がった。
類義語の βιάση(急ぎ、焦り)は文語寄り。一方、πρεμούρα や φούρια は口語寄りで、せかされた感じが強い。関連する形容詞には βιαστικός(急いでいる、性急な)や βίαιος(暴力的な、強制的な)などがある。
急ぐあまり丁寧さを欠いた雑な仕事にも使う。複数形 βιασύνες では、慎重さを欠いた性急な行動や場当たり的な振る舞いなどを指す。
ギリシャ語:βιβλίο
読み方:ヴィヴリオ・ヴィヴリーオ
ラテン文字:vivlio
古代ギリシャ語の βιβλίον(本、巻物)に由来。βιβλίον は βύβλος(パピルス)の指小形で、βύβλος はフェニキアの都市 Βύβλος(今のレバノンのジュベイル)から加工パピルスが輸入されたことにちなむ名前。つまり「ビブロス産の小さな巻物」が本の呼び名になった。
派生語に βιβλιοθήκη(図書館、本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιοθηκάριος(司書), βιβλιοδεσία(製本), βιβλιάριο(小冊子)。英語 bible(聖書)は βιβλία(βιβλίο の複数形)から教会ラテン語 biblia を経て作られた語で、「書物」の意味から聖書だけを指すようになった。bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)の biblio- も同じ語源。
ギリシャ語:βιβλιογραφία
読み方:ヴィヴリョグラフィア・ヴィヴリョグラフィーア
ラテン文字:vivliografia
フランス語 bibliographie(書誌、文献目録)からギリシャ語に入った逆方向の借用、αντιδάνειο(再借用)。源にあるフランス語 bibliographie は、古代ギリシャ語の素材 βιβλιο-(本、← βιβλίον「書物」)+ -γραφία(書くこと、記述、← γράφω「書く」)の合成で 17 世紀末にフランス語に作られた近代造語が、現代ギリシャ語に戻ってきた典型例。古代ギリシャ語の語が外国語を経由して再びギリシャ語に入った例の代表的な学術語彙の一つ。
ヘレニズム期ギリシャ語にすでに βιβλιογραφία(本を書くこと)という形が存在したが、現代の意味(「文献目録、書誌、参考文献の集成」)はフランス語 bibliographie の意味用法を受け取って加わったもので、古代の意味とは異なる。Tri 辞典は「διαφ. το ελνστ. βιβλιογραφία『本を書くこと』」と特に注記して、近代の意味と古代の意味の区別を明示する。
源にある古代の βιβλίον(書物、巻物)は、地名 Βύβλος(ビブロス、フェニキアの都市、現レバノンのジュベイル)に由来する説が伝統的。ビブロスはエジプトのパピルスを集積する古代地中海の主要な交易拠点で、その都市名がギリシャ語で「パピルス」「書物」を意味する語になった、地名から普通名詞へと意味が転じた例。ラテン語 biblia(書物、← ギリシャ語複数形 τὰ βιβλία)から、ヨーロッパ各語の Bible(聖書、← 「書物」の代表), biblio-(書物の、を表す国際造語要素), library(図書館、← ラ librāria)の語源となった。
源にある古代の γράφω(書く、記す、刻む、描く)は、印欧祖語の「ひっかく、刻む」を表す語根に由来し、ドイツ語 kerben(刻む), 英語 carve(彫る)と関連する古層語。古代の γράφω は最初は「鋭いもので刻みつける」を意味し、書字・絵画・記録・記述の語彙の根幹となる動詞として、極めて生産的な派生語族を持つ。同じ動詞からは、γραφή(書、文書), γράμμα(文字), γραμματική(文法), γραφικός(絵画的な、書記の), αυτογράφο(サイン、自筆、← 英 autograph), καλλιγραφία(書道、書法), ορθογραφία(正書法), παραγραφή(時効、書き換え)が並ぶ。
接尾辞 -γραφία は近代の学術造語要素として極めて生産的で、γεωγραφία(地理学), ιστοριογραφία(歴史記述), λαογραφία(民俗学), βιογραφία(伝記、自伝学), αυτοβιογραφία(自伝), χαρτογραφία(地図学), χορογραφία(振付、舞踊記譜), ξυλογραφία(木版画)が並び、英語 -graphy / 仏語 -graphie の語源となった国際造語要素の中核。
派生・関連語族として βιβλιογράφος(書誌学者、書誌作成者), βιβλιογραφικός(書誌の、書誌学的な、形容詞), βιβλιογραφώ(文献を引用する、参考文献を挙げる、動詞), βιβλιογραφική αναφορά(書誌記述), βιβλιογραφικό λήμμα(文献記述項目)。同じ書物・出版に関する語彙には、出版の βιβλίο(本、書物), 図書館の βιβλιοθήκη(図書館、書棚), 書店の βιβλιοπωλείο(書店), 書籍商の βιβλιοπώλης(書店主), 出版社の εκδοτικός οίκος(出版社)が並び、書物の生産・流通・分類・参照の語彙体系の中で、βιβλιογραφία は学術研究の参照体系を支える中核語。
ギリシャ語:βίβλος
読み方:ヴィヴロス・ヴィーヴロス
ラテン文字:vivlos
古代ギリシャ語の βίβλος(パピルス, 巻物, 書物)から。フェニキアの港町 Βύβλος(現レバノンのジュベイル)がパピルスの交易地だったことから, そこで扱われた素材の名がギリシャ語に入った。指小形 βιβλίον の複数 τὰ βιβλία はヘレニズム期以降のキリスト教でギリシャ語訳聖書を指すようになり, ラテン語 biblia を経て英語 Bible になった。
同じ βίβλος の語族に βιβλίο(本), βιβλιάριο(小冊子, 通帳), βιβλιοθήκη(図書館, 本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιογραφία(書誌学, 参考文献目録), βιβλικός(聖書の), βιβλιόφιλος(愛書家), βιβλιοδεσία(製本)。ふつうの「本」には βιβλίο を使い, βίβλος は先頭大文字 Βίβλος の聖書と, λευκή βίβλος「白書」のような硬い公文書名に限られる。
λευκή βίβλος「白書」, κυανή βίβλος「青書」, μαύρη βίβλος「黒書」のような色+βίβλος の公文書名は英語 White Paper, Blue Paper, フランス語 Livre Noir からの翻訳借用。英語 Bible, bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)もこの βιβλίον・βίβλος の語族。