ギリシャ語索引
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Α
ギリシャ語:αγανακτώ
読み方:アガナクト・アガナクトー
ラテン文字:aganakto
古代ギリシャ語の ἀγανακτῶ(憤る、苛立つ、ἀγανακτέω の無縮約形)を継承。派生語に αγανάκτηση(憤り)、αγανακτισμένος(腹を立てている、イライラしている)。
αγαναχτώ の形も並んで使われる。古代 ἀγανακτῶ からの口語的な系譜で、中世ギリシャ語で κτ が χτ に変化してできた。
ギリシャ語:αγάπη
読み方:アガピ・アガーピ
ラテン文字:agapi
古代ギリシャ語の動詞 ἀγαπάω(愛する)から派生した ἀγάπη(親愛、神の愛)を継承。古代では ἔρως(性的な愛)や φιλία(友愛)とは区別され、おもに親愛や兄弟愛を指した。新約聖書の時代にキリスト教的な無償の愛を表す語として定着し、現代ギリシャ語では「愛」全般を指す最も一般的な語になった。
英語の agape(アガペー)の語源でもある。
類義語にはそれぞれ守備範囲の異なるものがある。έρως(恋愛、性的な情熱)は情欲を含む愛、στοργή(家族愛、親子の慈しみ)は血縁的な絆、φιλία(友情)は対等な親しみを指す。αδυναμία(弱さ)は比喩的に「目がない、溺愛している」の意味でも使われる。
派生語には αγαπάω(愛する)、αγαπημένος(愛されている、お気に入りの)、αγαπητός(親愛なる)がある。対義語は μίσος(憎しみ)や απέχθεια(嫌悪)。
主な意味は、共感や献身による深い愛情。恋愛やその対象となる人を指すほか、物事への関心や情熱も表す。複数形の Αγάπες は、初期キリスト教徒の間で行われていた共食(愛餐)を指す。
ギリシャ語:αγαπημένος
読み方:アガピメノス・アガピメーノス
ラテン文字:agapimenos
中世ギリシャ語の ἀγαπημένος を継承。αγαπώ(愛する)の受動完了分詞から、形容詞として独立した形。
副詞 αγαπημένα は「仲よく、穏やかに」を言う。ブラウザの「お気に入り」を指す αγαπημένα (τα) は英語 favourites からの意味借用。類義語は αγαπητός(親愛なる)、δημοφιλής(人気のある)。
ギリシャ語:αγγούρι
読み方:アングリ・アングーリ
ラテン文字:angouri
古代ギリシャ語 ἄγγουρον の指小形 ἀγγούριον(キュウリ)を経て, 中世ギリシャ語の αγγούρι を継承。ἄγγουρον 自体はアラビア語 ʾājurr を介した借用で, アラム語, アッカド語, シュメール語まで遡る。
派生に αγγουράκι(小キュウリ), αγγουριά(キュウリの木), αγγουρόσπορος(キュウリの種), αγγουρόσουπα(キュウリのスープ), αγγουρόφλουδα(キュウリの皮), αγγουροσαλάτα(キュウリのサラダ), αγριάγγουρο(野生のキュウリ), πικράγγουρο(苦いキュウリ)。
ギリシャ語:αγελάδα
読み方:アイェラダ・アイェラーダ・アゲラダ・アゲラーダ
ラテン文字:agelada
αγελάδα(雌牛、乳牛)は、中世ギリシャ語の αγελάδα(雌牛)に由来する。現代ギリシャ語ではこの形が標準的で、民間的・口語的な形として γελάδα(雌牛)もある。
牛をまとめて言う総称には βοοειδή(牛類、家畜のウシ)がある。その中で αγελάδα は雌の成獣を指し、去勢された雄は βόδι(去勢牛)、繁殖用の雄は ταύρος(雄牛)、子は μοσχάρι(子牛)と言う。近い語の δαμάλα(若い雌牛)は、まだ若い雌や未成熟な段階を意識するときに使い分けられる。
主な意味は雌牛、乳牛。とくに一度子を産んだあとの雌牛を指し、搾乳、飼育、放牧、肉用・乳用の区別など、畜産や農場の文脈で広く使う。
複合表現では νόσος των τρελών αγελάδων(狂牛病)があり、比喩では ιερή αγελάδα(神聖視されて手を出せないもの)もよく知られている。ことわざや言い回しでは、搾取しやすい相手を見つけたことを言う表現や、παχιές / ισχνές αγελάδες(豊かな時期 / 苦しい時期)のような表現がある。
ギリシャ語:αγέρας
読み方:アイェラス・アイェーラス・アゲラス・アゲーラス
ラテン文字:ageras
古代ギリシャ語の ἀήρ(空気、霧、もや。属格 ἀέρος)を継承する αέρας と並んで、中世ギリシャ語以降に母音連続 [a-e] を埋める半母音 [j] が挿入された別形 αγέρας が口語と詩歌の中で生まれた。αέρας と αγέρας は語源を共有する別形の対をなし、αγέρας のほうが肌に感じる風や民謡・詩歌の文脈で好まれる響きを持つ。古代の ἀήρ は「夜明け、東」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、もとは「朝もや、薄霧」を指す語で、古代ギリシャ語 αὔρα(そよ風), ラテン語 aurōra(夜明け、暁の女神)と同根。英語の接頭辞 aero-(航空・空気の)や air(空気、仏 air 経由)も同じ ἀήρ に由来する学術借用。
類義語に αέρας(空気、風。同じ ἀήρ から母音連続をそのまま保った形で、空気そのものや風を指す日常の形として広く使う), άνεμος(風。古代ギリシャ語由来で、気象学・詩歌の硬い形), αύρα(そよ風、空気の流れ。古代 αὔρα 由来), μπάτης(凪の風、海風・陸風)。αγέρας は口語的・文学的な響きで風や肌に感じる空気の動きを指す形として、民謡・詩・地方の話し言葉でよく使う。派生に αγεράκι(そよ風、心地よい風。指小形)。関連語に αήρ(空気。古代 ἀήρ の素形を保った形で硬い文脈に残る)。
ギリシャ語:αγκαλιά
読み方:アガリャ・アガリャー・アンガリャ・アンガリャー
ラテン文字:agkalia
中世ギリシャ語の ἀγκαλιά を継承。古代ギリシャ語の ἀγκάλη(腕の曲がるところ、抱きかかえるところ)に女性名詞の語尾 -ιά が付いて作られた形。
派生語に αγκαλιάζω(抱く、抱きしめる)、αγκάλιασμα(抱擁)、αγκαλίτσα(指小形、小さな抱っこ)。
ギリシャ語:άγνωστος
読み方:アグノストス・アーグノストス
ラテン文字:agnostos
άγνωστος(未知の、無名の、見知らぬ、未知のもの、見知らぬ人)は、否定の α-(否定の接頭辞)と γνωστός(知られた、既知の)からできた語である。文字どおりには「知られていない」で、現代ギリシャ語でもその感覚がそのまま残っている。
ξένος(外国の、見知らぬ、外国人、よそ者) も見知らぬ人を言えるが、άγνωστος はまず「知らない」「正体がわからない」に軸がある。外から来た感じを出す ξένος に対して、άγνωστος は認知の欠如に寄る。
意味は未知の、無名の、見知らぬ。名詞的に使って、未知のものや見知らぬ人そのものを指すこともある。
ギリシャ語:αγριοράδικο
読み方:アグリオラディコ・アグリオラーディコ
ラテン文字:agrioradiko
αγριοράδικο(野生のチコリー、野草のラディキ)は、αγριο-(野生の)と ράδικο(ラディキ、チコリー系の野草)からできた複合語である。現代ギリシャ語では、野に生える苦みのある草を指す。
πικραλίδα(タンポポ) も近い野草として重なることがあるが、αγριοράδικο は食用の野草、ラディキ系の草として言われやすい。
意味は野生のチコリー、野草のラディキ。花や草全体を言うが、食べる野草として意識されることも多い。
ギリシャ語:αγρότης
読み方:アグロティス・アグローティス
ラテン文字:agrotis
αγρότης(農民、農業従事者、農家)は、αγρός(畑、農地)に由来する語である。現代ギリシャ語では、土地を耕し、作物を育てることを仕事にする人を表す。
χωράφι(畑、耕地) が作業する場所を言い、σοδειά(収穫、作柄) がそこで得られる収穫を言うのに対して、αγρότης はその営みに従事する人を言う。
意味は農民、農業従事者、農家。小規模な畑作から広い農業経営まで表せる。
ギリシャ語:άγχος
読み方:アンホス・アーンホス
ラテン文字:agchos
古代ギリシャ語の動詞 ἄγχω(絞める、息を詰まらせる)を語源とする。
ψεύδω(欺く)→ ψεῦδος(嘘)、πνίγω(窒息させる)→ πνῖγος(蒸し暑さ)といった動詞から名詞を派生させる規則に基づき、カサレヴサにおいて ἄγχω に接尾辞 -ος を加えて構成された。
ἄγχω は古代から比喩的に「圧迫する、悩ます」の意味でも用いられていたが、現代の「不安、ストレス」という語義はフランス語 angoisse からの意味借用によって定着したものである。英語 anxiety も印欧祖語の同一語根に由来する。
φόβος(恐怖)や不安から生じる、強く持続する不快感・圧迫感の状態を指す。動詞形は άγχομαι(不安になる、気が揉める)。
ギリシャ語:αγώνας
読み方:アゴナス・アゴーナス
ラテン文字:agonas
古代ギリシャ語の動詞 ἄγω(導く, 率いる)から派生した ἀγών(集まり, 競技, 闘争)を継承。
同じ語族に αγωνία(苦悩), αγωνίζομαι(戦う, 競う), αγωνιστής(闘士), ανταγωνιστής(敵対者), ανταγωνισμός(競争, 対抗), διαγωνισμός(コンテスト, 試験), πρωταγωνιστής(主役)。
英語 agony(苦悩), antagonist(敵対者)もラテン語経由で同じ語源。
類義語の μάχη は戦闘行為を, πόλεμος は国家間の武力衝突を指すのに対し, αγώνας は競技や社会運動にも使う。
ギリシャ語:αέρας
読み方:アエラス・アエーラス
ラテン文字:aeras
印欧祖語で「夜明け, 東」を表す語根にさかのぼり, もとは「朝もや」を指した古代ギリシャ語の ἀήρ(下層の空気, 霧)を継承。やがて空気一般を指すようになり, 対格形 ἀέρα から主格が再形成され, 中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた。ラテン語 aurōra(夜明け)は同じ語根から出た同源の語。英語の接頭辞 aero-(aeroplane「飛行機」)や名詞 air(空気)はこの ἀήρ を借用要素として受け継いでいる。雰囲気・堂々とした態度の意味は, フランス語 air からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)。
類義語に αγέρας(風。詩歌や民謡の中で使う古風な形), άνεμος(風。気象や文芸の文脈で使う硬い形), ατμόσφαιρα(大気、空気感)。αέρας は空気・風を指すふつうの形として広く使う。派生に αεράκι(そよ風。指小形), αέριος(気体の), αέρινος(空気のように軽い), αερίζω(風を通す、換気する), αερικό(風の精、妖精), αεράτος(風通しのよい、のびやか), ανάερος(空中の)。合成語に αεροπλάνο(飛行機), αεραντλία(空気ポンプ), αερολιμένας(空港), αεροδρόμιο(飛行場), αεροπόρος(飛行士), αερόσακος(エアバッグ)。
ギリシャ語:αερίζω
読み方:アエリゾ・アエリーゾ
ラテン文字:aerizo
中世ギリシャ語で αέρας(空気、風)から作られた動詞。関連語に εξαερίζω(排気する、強制換気する)がある。
ギリシャ語:αεροδρόμιο
読み方:アエロドゥロミオ・アエロドゥローミオ
ラテン文字:aerodromio
αεροδρόμιο(空港)は、αέρας(空気)に関わる要素と δρόμος(走路、道)に由来する語形成からできた語である。現代ギリシャ語では、飛行機が離着陸する空港を指す。
αεροπλάνο(飛行機)が乗り物そのものを言うのに対して、αεροδρόμιο はその離着陸と出発・到着の場を言う。旅行では ξενοδοχείο(ホテル) とも結びつきやすい。
意味は空港。国際空港にも地方空港にも使える。
ギリシャ語:αεροπλάνο
読み方:アエロプラノ・アエロプラーノ
ラテン文字:aeroplano
フランス語の aéroplane(飛行機。「空中をさまようもの」の意の合成語)からの外来借用で、19世紀後半のフランスで作られた語が国際語化してギリシャ語にも入った。文語形 ἀεροπλάνον が後に口語化して αεροπλάνο の形に落ち着き、口語ではアクセント位置が移った αερόπλανο の形も並行する。フランス語の aéroplane 自体は、両構成要素ともに古代ギリシャ語由来の学術合成で、ἀέρ- / ἀήρ(空気、空)と πλάνος(さまよう、さまよい歩く)から作られた。古代ギリシャ語にもヘレニズム期に ἀεροπλάνος(空中をさまよう)という形容詞が存在したが、現代の「飛行機」を指す名詞用法はフランス語経由で取り入れられた再借用(αντιδάνειο)にあたる。英語 airplane(米), aeroplane(英)も同じフランス語経由の並行借用。
類義語に αεροσκάφος(航空機。古代 σκάφος「船」+ ἀέρ- の合成、軍事・公式・技術文書の硬い形で、ヘリコプターを含む飛行機械全般を指す), ιπτάμενο μέσο(飛行体、飛行機械。書き言葉の硬い形)。αεροπλάνο は翼とエンジンを備えた固定翼機を指すふつうの形として広く使う。派生に αεροπλανάκι(小さな飛行機、おもちゃの飛行機。指小形), αεροπλανοφόρο(航空母艦、空母), αεροπλανικός(飛行機の、航空機の)。関連語に αέρας(空気、風。第一構成要素 ἀέρ- の元), αερο-(航空・空中を表す結合辞)。
ギリシャ語:άζωτο
読み方:アゾト・アーゾト
ラテン文字:azoto
フランス語 azote からの借用。もとは古代ギリシャ語の ἄζωτον で、ἀ-(〜でない)と ζωή(生命)を合わせて「生命を保たないもの」の意。1789年にラヴォアジエが呼吸を支えない気体として azote と名づけ、それをギリシャ語が元素名として取り戻した。
英語は nitrogen が標準で、ギリシャ語の νίτρον(ソーダ)と -γενής(〜を生む)を合わせた語。ラヴォアジエの azote は18世紀末から19世紀前半まで英語でも使われていたが、次第に nitrogen に置き換わり、今は古語の扱い。
関連語に αζωτούχος(窒素を含む)、αζωτοδέσμευση(窒素固定)。
ギリシャ語:αθανασία
読み方:アサナシア・アサナシーア・アタナシア・アタナシーア
ラテン文字:athanasia
古代ギリシャ語の ἀθανασία(不死)に由来。αθάνατος に相当する古代形 ἀθάνατος(不死の、死なない)に -ία を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と θάνατος(死)にさかのぼる。
類義語に αιωνιότητα(永遠)、αφθαρσία(不滅、不朽)など。
英語 athanasy(不死、不朽)は古代ギリシャ語 ἀθανασία がそのまま入った語で、現代では古語として文学的な文脈に限られる。人名の Athanasius / Athanasia(アタナシオス、アタナシア)は同じ語から「不死の者」を表す名で、4世紀のアレクサンドリアの教父アタナシオスにちなむ Athanasian Creed(アタナシオス信条)も広く知られる。ギリシャ神話の死神 Θάνατος(Thanatos)、英語 euthanasia(安楽死、eu- + θάνατος)も同じ語根 θάνατος を含む。
ギリシャ語:αίγα
読み方:エガ・エーガ
ラテン文字:aiga
ギリシャ語:Αίγυπτος
読み方:エイプト・エーイプト・エギプト・エーギプト
ラテン文字:aigyptos
古代ギリシャ語の Αἴγυπτος を継承。この古代ギリシャ語自体は、古代エジプト語で首都メンフィスにあった神殿を指した Hut-ka-Ptah(プタハの魂の館)から来たとされる。ギリシャ人が都市名から国全体を指すようになり、古代ギリシャ語を経由して英語 Egypt、フランス語 Égypte、ドイツ語 Ägypten など各国語のエジプトの呼び名になった。
人は Αιγύπτιος・Αιγύπτια、形容詞は αιγυπτιακός(エジプトの)、学問は αιγυπτιολογία(エジプト学)、学者は αιγυπτιολόγος。
ギリシャ語:αίνιγμα
読み方:エニグマ・エーニグマ
ラテン文字:ainigma
ギリシャ語:αινιγματικός
読み方:エニグマティコス・エニグマティコース
ラテン文字:ainigmatikos
αίνιγμα(謎) に、性質を表す接尾辞 -ικός が付いた形容詞で、中世ギリシャ語に遡る。英語の enigmatic も同じ語源から。
副詞形は αινιγματικά(謎めいた様子で)。さらに抽象名詞 αινιγματικότητα(不可解さ) も派生している。
謎のように理解や解釈が難しいさまを表す。人の振る舞いや表情、言葉遣いなどに幅広く用いる。
ギリシャ語:αινιγματικότητα
読み方:エニグマティコティタ・エニグマティコーティタ
ラテン文字:ainigmatikotita
αίνιγμα(謎) から派生した形容詞 αινιγματικός(謎めいた) に、抽象名詞を作る接尾辞 -ότητα が付いたもの。英語の enigmatic と語源を共有する。
謎めいている性質、あるいは正体のつかめない雰囲気を表す。
ギリシャ語:αίρεση
読み方:エレシ・エーレシ
ラテン文字:airesi
動詞 αἱρέω(取る, 選ぶ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 αἵρεσις(選択, 傾向, 学派)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の αίρεση の形になった。
派生に αιρετικός(異端の, 選挙の), αιρεσιάρχης(異端の指導者), εξαίρεση(例外)。
英語 heresy(異端)もラテン語 haeresis を経て同じ語源。
ギリシャ語:αιώνας
読み方:エオナス・エオーナス
ラテン文字:aionas
古代ギリシャ語の αἰών(一生, 生涯, 永劫)を継承。
同じ語族に αιώνιος(永遠の), αιωνιότητα(永遠性), διαιωνίζω(永続させる), μεσαίωνας(中世), μεσαιωνικός(中世の), προαιώνιος(太古の)。
英語 eon, aeon(永劫)もラテン語経由で同じ語源。
類義語の εκατονταετία がきっかり100年の長さを指すのに対し, αιώνας は時代区分や「ひどく長い時間」の比喩にも使う。
ギリシャ語:ακριβής
読み方:アクリヴィス・アクリヴィース
ラテン文字:akrivis
古代ギリシャ語の ἀκριβής(正確な、厳密な)に由来。
数量や大きさ、重さ、寸法のように過不足なくぴたりと定まっていることにも、日時や場所を近似でなく細かく特定することにも使う。
対応する副詞 ακριβώς(正確に、ちょうど、まさに)は、数値や時刻をぴたりと示すときにも、言い方を強めて「その通り」「まさしく」と言うときにもよく使われる。
主な意味は二つある。ひとつは、数量や時刻、位置などが近似でなく正確に定まっていること。もうひとつは、翻訳や記述、約束の履行が元の内容や現実に細部まで忠実であること。
ギリシャ語:ακτή
読み方:アクティ・アクティー
ラテン文字:akti
古代ギリシャ語の ἀκτή(海岸)から。地形としての海岸線や沿岸部を指し、崖や岩場も含む。類義語の παραλία(海辺)は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:άλας
読み方:アラス・アーラス
ラテン文字:alas
古代ギリシャ語の ἅλας(塩)に由来。食卓の塩や料理には古代の指小語 ἁλάτιον を継承した αλάτι(塩、食塩)が使われ、άλας は化学や改まった文脈に残る。「地の塩(το άλας της γης)」のように、塩そのものを指す語義は文語。
化学の塩(えん)、および複数形 άλατα が指すミネラル、水垢、バスソルトなどの用法は、ドイツ語 Salz とフランス語 sel からの意味借用。
英語 halogen(ハロゲン)は ἅλς(塩。ἅλας の古代の基本形)と γεν-(生じる)をもとにした語。halo-(halite=岩塩など)も同じ語源。
ギリシャ語:αλάτι
読み方:アラティ・アラーティ
ラテン文字:alati
印欧祖語で「塩」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 ἅλς / ἅλας(塩)の指小形 ἁλάτιον を経て, 中世ギリシャ語の αλάτι を継承。ラテン語 sal, 英語 salt も同じ語族。
派生に αλατίζω(塩をかける), αλατώνω(塩漬けにする), αλατιέρα(塩入れ), αλάτινος(塩の), αφαλάτωση(脱塩), αλατοπίπερο(塩コショウ), αλατόνερο(塩水), αλατωρυχείο(岩塩鉱)。
文語形の άλας は改まった「塩」や化学の「塩類」に残る。同じ語族の αλμυρός は塩気を帯びた味や状態を表す語で, 物質としての αλάτι と対になる。
ギリシャ語:άλγος
読み方:アルゴス・アールゴス
ラテン文字:algos
古代ギリシャ語の ἄλγος(苦痛)から。πόνος が痛み全般を広く表すのに対し、άλγος は医学的な文脈や深い精神的苦痛に使われる。医学用語の接尾辞 -αλγία(νευραλγία=神経痛など)はこの語から。英語 nostalgia も νόστος(帰郷)と ἄλγος をもとにした語。
ギリシャ語:αλεποουρά
読み方:アレポウラ・アレポウラー
ラテン文字:alepooura
αλεπού(キツネ)と ουρά(尻尾)を合わせた合成語で、文字どおり「キツネの尻尾」。片手鋸の用法はドイツ語 Fuchsschwanz(キツネの尻尾、片手鋸)からの翻訳借用で、細長い鋸身をキツネの尾に見立てた名。園芸では、花序がキツネの尾に似た羽毛ケイトウ(Celosia plumosa)の通称にもなる。
別形に αλεπονουρά。同じケイトウ属全体は σελόσια、トサカケイトウは λειρί του κόκορα(オンドリのとさか)。
ギリシャ語:αλεπού
読み方:アレプ・アレプー
ラテン文字:alepou
古代ギリシャ語の ἀλώπηξ(キツネ、属格 ἀλώπεκος)を継承。中世ギリシャ語 ἀλεπού を経て今の形になった。
派生の指小形に αλεπουδάκι, αλεπουδίτσα、子ギツネを αλεπόπουλο とも。合成語に αλεποουρά(キツネの尻尾、引目鋸、ケイトウ), αλεποφωλιά(キツネの巣穴)。
英語 alopecia(脱毛症)もラテン語を経て同じ語源。古代ギリシャ語ではキツネの疥癬による脱毛を ἀλωπεκία と呼び、これがラテン語経由で英語に入った。毛皮の文脈ではフランス語 renard を借りた ρενάρ も使う。
ギリシャ語:αλήθεια
読み方:アリシア・アリーシア・アリティア・アリーティア
ラテン文字:alitheia
ギリシャ語:αλθαία
読み方:アルセア・アルセーア・アルテア・アルテーア
ラテン文字:althaia
古代ギリシャ語の ἀλθαία(ウスベニタチアオイ、キノマルバ、マンテマの一種)から。ἀλθαίνω(癒す)に由来し、薬用植物として知られたことにちなむ。
ギリシャ語:άλικο
読み方:アリコ・アーリコ
ラテン文字:aliko
形容詞 άλικος(鮮紅色の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。
鮮紅色そのものを指す。
ギリシャ語:άλικος
読み方:アリコス・アーリコス
ラテン文字:alikos
トルコ語の al(赤)に、ギリシャ語の形容詞語尾 -ικος を付けた外来借用。al は古くからテュルク諸語にある赤を表す語で、オスマン期にギリシャ語化され、宝石や絹織物、刺繍などの赤を指す日常の語として定着した。
類義語に κόκκινος(赤の。赤全般を指す総称), σκαρλάτος(緋色の。中世ラテン語 scarlatum 経由イタリア語 scarlatto 由来の外来借用), κατακόκκινος(真っ赤な。κατά- 強調+κόκκινος の合成), βαθυκόκκινος(深紅の), πορφυρός(貝紫色の、紫紅色の。古代ギリシャ語由来), φλογάτος(炎のような赤)。άλικος は鮮やかで深みのある赤、緋色から深紅までの生き生きとした赤を指す形として、文学的・比喩的な文脈でよく使う。派生に άλικο(中性形を名詞化したもの。鮮紅色そのものを指す)。
ギリシャ語:αλλαγή
読み方:アライ・アライー・アラギ・アラギー
ラテン文字:allagi
形容詞 ἄλλος(別の)をもとにした動詞 ἀλλάσσω(変える, 交換する, 現代 αλλάζω)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ἀλλαγή(変化, 交換)を継承。類義語は μεταβολή。合成語に ανταλλαγή(交換), εναλλαγή(交替), παραλλαγή(変異), συναλλαγή(取引)など。
ἄλλος は英語 else と同じ語源で、学術用語の接頭辞 allo-(他の、異なる)もここから。allophone(異音)、allograft(他家移植)など。
ギリシャ語:Αλντεμπαράν
読み方:アルデバラン・アルデバラーン・アルデンバラン・アルデンバラーン・アルンデバラン・アルンデバラーン・アルンデンバラン・アルンデンバラーン
ラテン文字:Alntebaran
Αλντεμπαράν(アルデバラン)は、アラビア語由来の国際的な星名がギリシャ語に入った形である。語源は「従う者」と説明され、Πλειάδες(プレアデス星団、すばる) の後を追うように昇ることと結びつけられる。
Ταύρος(雄牛、おうし座、牡牛座) の領域で特に目立つ明るい星で、Υάδες(ヒアデス星団) の近くに見える。ギリシャ語では古い別名として Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) がある。
主な意味はアルデバラン。おうし座でひときわ目立つ橙色の明るい恒星を指す。
ギリシャ語:άλογο
読み方:アロゴ・アーロゴ
ラテン文字:alogo
古代ギリシャ語の形容詞 ἄλογος(理性のない, 言葉をもたない)の中性形が名詞化して, ヘレニズム期コイネーの ἄλογον(馬)を経て継承。もとは軍で兵士(λόγος を持つ存在)と対比される「理性をもたない動物」を指し, やがて馬に特化した。「馬力」の用法は現代の ίππος(馬, 馬力)からの意味借用。
派生に αλογάκι(子馬), αλογίσιος(馬の), αλογοκλέφτης(馬泥棒), αλογόμυγα(アブ), αλογότριχα(馬毛), αλογέμπορας(馬商人)。
類義語に ίππος(改まった言い方), άτι(駿馬, 古風), φοράδα(雌馬), πουλάρι(子馬)。
ギリシャ語:αλουμίνιο
読み方:アルミニオ・アルミニーオ
ラテン文字:alouminio
αλουμίνιο は、近代ヨーロッパ語 aluminium / aluminum に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、軽くて加工しやすい金属としてのアルミニウムを指す。
μέταλλο(金属) の中でも、軽さ、耐食性、日用品への使いやすさで語られやすい。窓枠、鍋、缶、箔などの材料名でよく出てくる。
主な意味は「アルミニウム」「アルミ」。工業材料としても、日用品の材質名としても使う。
ギリシャ語:αλχημεία
読み方:アルヒミア・アルヒミーア
ラテン文字:alchimeia
フランス語の alchimie(錬金術)からの外来借用で、中世ラテン語 alchemia、アラビア語 al-kīmiyāʾ(الكيمياء)を経て、もとは古代ギリシャ語の χυμεία(金属を溶かして合金を作る術)にさかのぼる再借用(αντιδάνειο)にあたる。χυμεία は動詞 χέω(注ぐ、流し込む)の派生語で、金属の溶融・合金作り・薬剤調合の技術を指した。アラビア圏に伝わるとき定冠詞 al- を伴って al-kīmiyāʾ となり、卑金属を金に変える秘術として中世イスラム世界で大きく発展、さらに中世ラテン語 alchemia、フランス語 alchimie を経て近代に元の言語へ αλχημεία の形で戻った。同じ古代 χυμεία からは、アラビアの al- を経ない学術的な再導入経路で、現代の χημεία(化学)も生まれた。英語 alchemy(仏 alchimie 経由), chemistry(中世ラテン chymia 経由)も同じ流れの語族。
類義語に χημεία(化学。同じ古代 χυμεία をもう一つの経路で取り戻した語で、近代以降に実証科学の用語として分化、αλχημεία と対をなす形), μυσταγωγία(秘儀、神秘的儀式), μαγεία(魔術、呪術)。αλχημεία は中世の錬金術、ならびに比喩的に不透明・疑わしい手段や裏工作を指す形として広く使い、比喩義は通常複数形 αλχημείες で現れる。派生に αλχημικός(錬金術の), αλχημιστής(錬金術師), αλχημίστρια(女性の錬金術師), αλχημιστικός(錬金術師の)。
ギリシャ語:αμέθυστος
読み方:アメシストス・アメーシストス・アメティストス・アメーティストス
ラテン文字:amethystos
古代ギリシャ語の ἀ-(否定の接頭辞)と μεθύω(酔う)に由来する。もともと「酔わせない」という性質を意味する形容詞で、この石を身につけていると酒に酔わないという古代の迷信から、宝石アメジスト(紫水晶)を指す名詞としても定着した。英語の amethyst も同語源である。
現代ギリシャ語では、名詞として半貴石のアメジスト(淡い紫色の石英)を、形容詞として酔っていない状態(素面)を意味する。
ギリシャ語:άμμος
読み方:アモス・アーモス
ラテン文字:ammos
印欧祖語にさかのぼらない地中海圏の基層語からの借用とされる古代ギリシャ語の ἄμμος(砂)を継承。同じ「砂」を表す ψάμμος とは語形が混ざり合った可能性も指摘されている。
派生語に αμμώδης(砂地の)、αμμουδιά(砂浜)、αμμόλοφος(砂丘)、αμμόλιθος(砂岩)、αμμοθύελλα(砂嵐)、αμμοθεραπεία(砂療法)など。
英語の科学用語で「砂」を表す接頭辞 psamm(o)-(psammophile=好砂性生物、psammon=砂中生物群集など)は、同じ意味の古代ギリシャ語 ψάμμος をもとにした語。
ギリシャ語:αμπέλι
読み方:アベリ・アベーリ・アンベリ・アンベーリ
ラテン文字:ampeli
αμπέλι(ブドウの木、ブドウ畑)は、中世ギリシャ語 αμπέλι(ブドウの木、ブドウ畑)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、一本のつるにも、植えられた畑全体にも使う。
τρύγος(ブドウの収穫、収穫期) が収穫の行為や季節を言うのに対して、αμπέλι はその作物や畑を言う。そこから κρασί(ワイン)の文脈にもつながりやすい。
意味はブドウの木、ブドウ畑。文脈によって一本にも畑全体にもなる。
ギリシャ語:αμφιβολία
読み方:アムフィヴォリア・アムフィヴォリーア
ラテン文字:amfivolia
古代ギリシャ語の ἀμφιβολία(両義性、疑い)に由来。ἀμφίβολος(どちらとも取れる、疑わしい)に -ία を付けた名詞で、さらに ἀμφί(両側に)と βάλλω(投げる)にさかのぼる。動詞は αμφιβάλλω(疑う)、対義語は αναμφίβολος(疑う余地のない)。
英語 amphiboly(文法上の曖昧さ)の語源にもなった。
ギリシャ語:ανάβω
読み方:アナヴォ・アナーヴォ
ラテン文字:anavo
古代ギリシャ語の ἀνάπτω(火をつける、結びつける)を継承。ἀνα-(上へ)と ἅπτω(つける、触れる)の合成語で、完結形(アオリスト)の語幹 αναψ- は現代形 άναψα(火をつけた)にそのまま残り、現在形の語尾が -πτω から -βω に変わって今に至る。
感情や興味をかき立てる意では εξάπτω(興奮させる), κεντρίζω(刺激する), προκαλώ(引き起こす)が近い。火や騒ぎが勢いよく燃え上がるときは φουντώνω(勢いよく燃える)、高熱や顔の火照りは κορώνω(頂点に達する), πυρώνω(焼けるように熱する)、ひどい暑さは καψώνω(焼けつかせる)。逆に「消す、消える」は σβήνω。
派生に αναμμένος(火がついた、熱狂した), άναμμα(点火、点灯), αναπτήρας(ライター), ξανάβω(再び火をつける、再燃する)。
ギリシャ語:ανακούφιση
読み方:アナクフィシ・アナクーフィシ
ラテン文字:anakoufisi
ギリシャ語:αναλήθεια
読み方:アナリシア・アナリーシア・アナリティア・アナリーティア
ラテン文字:analitheia
ギリシャ語:αναπτήρας
読み方:アナプティラス・アナプティーラス
ラテン文字:anaptiras
αναπτήρας はドイツ語の Anzünder から入った借用語。現代ギリシャ語では、火花で小さな炎を出して火をつける道具を指す語として定着している。
主な意味はライター。たばこやガスコンロに火をつけるときのほか、車載のシガーライターも含めて言え、燃料の違いで βενζίνη(オイル、ガソリン)や υγραέριο(ガス)を使うタイプのようにも言い分ける。
火をつける道具としては、σπίρτο(マッチ) も近いが、σπίρτο は一本ごとのマッチを指し、αναπτήρας はライターを指す。比較には ζίπο(Zippo ライター)や τσακμάκι(火打ち石、ライター)もあり、火をつける行為を言う動詞は ανάβω(火をつける、つける、点火する) が基本になる。指小語の αναπτηράκι(小さなライター、小型ライター)は、小さめのライターや気軽な言い方として使われる。
ギリシャ語:ανατολή
読み方:アナトリ・アナトリー
ラテン文字:anatoli
ἀνά(上へ)と τέλλω(昇る, 生じる)の合成からなる動詞 ανατέλλω(昇る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ἀνατολή(昇ること, 日の出, 東)を継承。対義語は δύση(日没, 西)。「東方, アジア諸国」や比喩の「始まり」の用法は, フランス語 Orient / Est と動詞 ανατέλλω の比喩用法からの意味借用。
形容詞形は ανατολικός(東の、東からの)。その中性複数形 ανατολικά は、副詞として「東へ、東に」を表すほか、方向ラベルとして「東方向」の意味でも使われる。東から吹く風の名には λεβάντες や απηλιώτης がある。
英語 Anatolia(アナトリア、小アジア)はギリシャの東に位置する土地を指して Ἀνατολή が地域名として使われた中世ギリシャ語の用法から、中世ラテン語を経て入った。フランス語 Anatole、ロシア語 Анатолий は同じ語を男性名にしたもの。
ギリシャ語:ανατολικός
読み方:アナトリコス・アナトリコース
ラテン文字:anatolikos
ギリシャ語:ανάφλεξη
読み方:アナフレクシ・アナーフレクシ
ラテン文字:anaflexi
古代ギリシャ語の名詞 ἀνάφλεξις(発火)に由来。動詞 αναφλέγω(発火させる)の名詞形で、ἀνά-(上に、再び)と φλέγω(燃やす、焼く)の合成に名詞化接尾辞が付いた形。
化学の発火・引火が中心義。戦争や緊張の勃発・再燃に使う比喩用法はフランス語 conflagration(大火、動乱)からの意味借用。機械工学の点火(ガソリンエンジンの点火装置)はフランス語 allumage(点火)からの意味借用。
類義語に λαμπάδιασμα(ぱっと燃え上がること), έναυση(点火、着火), αναζωπύρωση(再燃), πυροδότηση(起爆、誘発)。派生に αυτανάφλεξη(自然発火), προανάφλεξη(早期点火、ノッキング)。英語 phlogiston(燃素), phlegm(粘液)も φλέγω を起源とする。
ギリシャ語:αναψυκτικό
読み方:アナプシクティコ・アナプシクティコー
ラテン文字:anapsyktiko
形容詞 αναψυκτικός(冷やす、元気づける)の中性形が名詞として定着した語であり、フランス語 rafraîchissement(爽快にするもの、冷たい飲み物)の概念をなぞって作られた翻訳借用語である。
動詞 αναψύχω(冷やす、元気づける)からの派生で、ἀνα-(再び、戻す)と古代ギリシャ語 ψύχω(冷やす、息をつかせる)の合成から成る。
類義語には、具体的な種類を指す λεμονάδα(レモネード)や πορτοκαλάδα(オレンジ飲料)などが挙げられる。
ギリシャ語:Ανδρομέδα
読み方:アンドゥロメダ・アンドゥロメーダ
ラテン文字:andromeda
ギリシャ語:άνεμος
読み方:アネモス・アーネモス
ラテン文字:anemos
古代ギリシャ語の ἄνεμος(風)を継承。印欧祖語で「息をする、吹く」を意味する語根に起源を持ち、同じ語根からはラテン語 animus(心、精神)、anima(息、魂)が生まれ、英語 animate(生気を与える)、animal(動物)の語源にもなった。
関連語に αέρας(空気、風)、その口語・文学形 αγέρας。派生語に ανεμώνη(アネモネ)、ανεμόμυλος(風車)、ανεμοζάλη(暴風)など。
英語 anemometer(風速計)は ἄνεμος と μέτρον(測ること)をもとにした語。「変化の風」のような比喩用法は、フランス語 vent や英語 wind の比喩からの意味借用。
ギリシャ語:άνηθος
読み方:アニソス・アーニソス・アニトス・アーニトス
ラテン文字:anithos
古代ギリシャ語の中性名詞 ἄνηθον(ディル)を起源とする。現代ギリシャ語では、もとの中性名詞 άνηθο に加えて、対格の形に基づいて生まれた男性名詞 άνηθος も使われるようになり、現在では両方の性が用いられる。
ἄνηθον は、ギリシャ語成立以前の地域言語から入った植物名と見る説がある。ラテン語には anethum として借用され、植物学名 Anethum graveolens の Anethum にもこの形が残っている。
アニスを表す古代ギリシャ語には ἄνισον / ἄννησον(アニス)があり、英語の anise(アニス)は古フランス語 anis、ラテン語 anisum を経てこのギリシャ語に連なる。ἄνηθον と ἄννησον は形が似ており、同じ先ギリシャ語系の植物名として関連づけられることがあるが、古くから混同されることもあった別の植物名である。植物学的にもディルとアニスは別種である。
主な意味は「ディル」。料理に使用される草本状の芳香植物で、ギリシャ料理に爽やかな香りを添えるハーブとして欠かせない。
指小語 ανηθάκι は少量のディルや可愛らしく呼ぶ形を表す。複合語 ανηθόριζα は「ディルの根」を意味し、フェンネル(ウイキョウ)を指す。
ギリシャ語:άνθος
読み方:アンソス・アーンソス・アントス・アーントス
ラテン文字:anthos
古代ギリシャ語の ἄνθος(花、芽吹き、最盛)に由来。印欧祖語で「花、芽吹き」を意味する語根から生まれた古い語で、ヴェーダ・サンスクリットの ándhas(ソーマ、草)と同根。λουλούδι(花)に対して、άνθος は改まった言い方で残る。男性形に ανθός(文語的な「花」)。派生語に ανθάκι(小さな花)、ανθόγαλα(生クリーム)、ανθηρός(花咲いている、栄えている)など。
英語 anthology(選集。もとは「花集め」)は古代ギリシャ語 ἄνθος と λέγω(集める)をもとにした語。anther(葯)は ἀνθηρός(花の)からフランス語を経て入った。
「精髄、全盛」や「表面の薄層」の用法はフランス語 fleur の比喩用法からの意味借用。
ギリシャ語:άνθρακας
読み方:アンスラカス・アーンスラカス・アントゥラカス・アーントゥラカス
ラテン文字:anthrakas
古代ギリシャ語の ἄνθραξ(石炭、木炭、燃える炭)に由来。中世ギリシャ語 άνθρακας を経て今に至る。化学の「炭素」の意味はフランス語 carbone(ラヴォワジエの命名)からの意味借用で、現代に加わったもの。英語 anthrax(炭疽), anthracite(無煙炭)も ἄνθραξ を起源とする。英語 carbon は同じ炭を指すが、ラテン語 carbō(熾火)に由来するフランス語 carbone からの借用で、語源的には別系統。
燃料の炭・石炭を言うときは κάρβουνο(炭、石炭、木炭)がふつうで、άνθρακας は化学・医学・農学で使う学術的な語。合成語の核にもなり、ξυλάνθρακας(木炭、木炭末), γαιάνθρακας(石炭), λιθάνθρακας(無煙炭), υδατάνθρακας(炭水化物), υδρογονάνθρακας(炭化水素)などを作る。απανθρακώνω(完全に焼く、炭にする)にも同じ語幹。
ギリシャ語:άνθρωπος
読み方:アンスロポス・アーンスロポス・アントゥロポス・アーントゥロポス
ラテン文字:anthropos
古代ギリシャ語の ἄνθρωπος(人間、人)を継承。語源には諸説あり、ἀνήρ(男、人)と ὤψ(顔、目)を合わせた「人の顔を持つもの」説が古くから唱えられてきたが、ギリシャ語以前の基層語から入ったとする説や、印欧祖語で「下にあるもの(=大地の人)」を意味する語根から生まれ、ラテン語 homō(人)や英語 guma(人、〜man の -man)と同根とする説もある。ミュケナイ時代(a-to-ro-qo)からすでに現れる古い語。
口語で ν が脱落した άθρωπος の形は 3 世紀から確認される古い別形。派生語に ανθρωπιά(人間らしさ、人情)、ανθρώπινος(人間の、人道的な)、ανθρωπάκι(取るに足らない人)、συνάνθρωπος(隣人、同胞)、υπεράνθρωπος(超人)など。類義の言い方に άτομο(個人)、πρόσωπο(人物、法人)、ανθρώπινο γένος(人類)。
英語の anthropology(人類学)、philanthropy(博愛)、misanthropy(人間嫌い)、anthropoid(類人猿の)など -anthrop- を含む語はすべて古代ギリシャ語 ἄνθρωπος をもとにした語。
ギリシャ語:άνοιξη
読み方:アニクシ・アーニクシ
ラテン文字:anoiksi
古代ギリシャ語の ἄνοιξις(開くこと、開扉)を継承。ανοίγω(開く)の動詞語幹 ἀνοιγ- に行為・状態を表す接尾辞 -ση を付けた形で、「(自然や花が)開く時期」の意で冬と夏の間の季節を指すようになり、中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた。古代ギリシャ語で春は ἔαρ と呼ばれていたが、やがて ἄνοιξις が春を指す語として定着し、古典語の ἔαρ は今では学術借用 έαρ として詩歌や文芸の中に残るのみ。
類義語に έαρ(春。古代ギリシャ語由来で詩歌や公式・文芸の文脈で使う硬い形)。άνοιξη は春を指すふつうの形として広く使う。派生に ανοιξιάτικος(春の〜、春らしい)。関連語に動詞 ανοίγω(開く), 名詞 άνοιγμα(開き、開口部)。
ギリシャ語:ανοιξιάτικος
読み方:アニクシアティコス・アニクシアーティコス
ラテン文字:anoixiatikos
ギリシャ語:ανοιχτός
読み方:アニフトス・アニフトース
ラテン文字:anoichtos
ヘレニズム期の古代ギリシャ語 ἀνοικτός(開けられる、開くことができる)に由来する。中世ギリシャ語では子音連続 kt が xt に変化した民衆形から ανοιχτός(一般的な綴り)が定着し、いっぽうで文語的な借り直しとして ανοικτός(文語的な綴り)も残った。現代では ανοιχτός がより一般的で、対義語には κλειστός(閉じた)が立つ。
意味の核は「閉じていない」「閉ざされていない」。πέλαγος(外洋、海、沖合)のように広く開けた場所、μυαλό(脳、知性、正気)の柔軟さ、ουρανός(空、天)の晴れ具合、営業中の店、まだ決着していない問題など、物理的な開き方から比喩的な広がりまでを広く表す。
副詞 ανοιχτά(開けたままに、率直に) / ανοικτά(同じ意味の別綴り)では、「開けたまま」「沖で」「営業している」のほか、「率直に」「気前よく」の意味でも使う。成句では、手の内を隠さずに進める言い方や、温かく迎える言い方にもよく現れる。
ギリシャ語:ανοιχτόχρωμος
読み方:アニフトフロモス・アニフトーフロモス
ラテン文字:anoichtochromos
ανοιχτόχρωμος(淡い色の、明るい色の)は、ανοιχτό-(明るい、開いた色調の)と -χρωμος(色の)からできた複合形容詞である。現代ギリシャ語では暗い色ではない明るい色合いをまとめて言う。
σκούρος(濃い色の、暗い色の) の反対側に立つ語で、服や壁、髪色などの色調をざっくり分けるときに並びやすい。
意味は淡い色の、明るい色の。個別の色名よりも全体のトーンを言う。
ギリシャ語:αντιλαμβάνομαι
読み方:アディラムヴァノメ・アディラムヴァーノメ・アンディラムヴァノメ・アンディラムヴァーノメ
ラテン文字:antilamvanomai
古代ギリシャ語の ἀντιλαμβάνομαι(受け取る、捉える、気づく)に由来。αντί(対して、応じて)と λαμβάνω(取る、受け取る)を合わせた中動相の動詞で、もとは「自分の側へ取り込む」の意味。そこから感覚や思考で対象を捉えることを表すようになった。書き言葉では三人称で αντελήφθη のような古風な形も現れる。
名詞形は αντίληψη(知覚、理解)。動詞 βλέπω(見る、見える)が視覚を広く担うのに対し、αντιλαμβάνομαι は気づく、事情をのみこむ、意図を読み取るところまで含む。
λαμβάνω は印欧祖語で「取る、つかむ」を意味する語根にさかのぼり、同じ動詞から συλλαμβάνω(ともに取る、捕える → 英語 syllable)、επιλαμβάνομαι(〜に取りかかる → 英語 epilepsy)など多くの合成語が作られた。
ギリシャ語:αντιλόπη
読み方:アンディロピ・アンディローピ・アンディロンピ・アンディローンピ・アンディロピ・アンディローピ
ラテン文字:antilopi
中世ギリシャ語の ἀνθόλοψ(アンテロープという伝説上の獣)という名が、中世ラテン語とフランス語を経て西欧語側へ広まり、近代にはフランス語 antilope や英語 antelope として定着した。現代ギリシャ語の αντιλόπη は、その西欧語形を背景にギリシャ語へ戻った借用語である。ἀνθόλοψ のさらに古い起源ははっきりしないが、現代ギリシャ語の形そのものは、ギリシャ語に由来する語が西欧語を回って戻ったものとして理解できる。
αντιλόπη は ζώο(動物)の中でも βοοειδή(牛類、家畜のウシ)に属する細身の草食獣をまとめていう語。近い語として γαζέλα(ガゼル)や γκνου(ヌー)があり、αντιλόπη はそれらより広いくくりで使われることがある。
主な意味は「レイヨウ、アンテロープ」。アジアやアフリカに生息する、細身で足が速く、群れで行動するウシ科の哺乳類を指す。動物学の説明や図鑑的な文脈だけでなく、野生動物の一般的な呼び名としても使われる。
ギリシャ語:αντλία
読み方:アドゥリア・アドゥリーア・アンドゥリア・アンドゥリーア
ラテン文字:antlia
古代ギリシャ語の ἀντλία に由来。もとは ἄντλος(船底にたまった水)に -ία を付けた形で、船底水そのものや、それをかき出すこと、船倉などを指す海事用語だった。現代ギリシャ語で「ポンプ」の意味を持つのは、動詞 αντλώ(くむ、抽出する)に引きよせられて意味がずれたもの。
星座名の Αντλία(ポンプ座)は、18 世紀のフランスの天文学者ラカーユが南天を整理した際、当時発明された空気ポンプを表す la Machine Pneumatique と名づけ、ラテン語で Antlia Pneumatica と訳されたのが始まり。のちに一語に短縮されて Antlia として定着し、英語やギリシャ語に取り入れられた。
ギリシャ語:ανυπαρξία
読み方:アニパルクシア・アニパルクシーア
ラテン文字:anyparxia
古代ギリシャ語の ἀνυπαρξία を継承。ύπαρξη(存在)に否定の αν- が付いてできた名詞。
ギリシャ語:αξία
読み方:アクシア・アクシーア
ラテン文字:axia
古代ギリシャ語の形容詞 ἄξιος(ふさわしい、価値がある)の女性名詞形 ἀξία を継承。英語の axiology(価値論)や axiom(公理)の axio- も同じ起源。現代の「価格」「重要性」などの用法にはフランス語 valeur、「音価」などの専門用法にはドイツ語 Wert の意味借用が含まれる。
類義語の τιμή は市場での「値段」や、名誉としての「誉れ」を指すのに対し、αξία はより本質的な「価値」や「値打ち」を表す。σπουδαιότητα は物事の重要性に焦点を当てた語である。
派生語には、άξιος(価値のある、有能な)、αξιολογία(価値論、評価)、πολύτιμος(貴重な)、απαξία(無価値、軽蔑)がある。
主な意味は「価値」。人間の美徳や能力、物事の重要性、芸術的な質、社会的な価値観、経済的な価格や有価証券、音楽の音価、文法上の用法まで、きわめて広い範囲で使われる。
ギリシャ語:απανθρακώνω
読み方:アパンスラコノ・アパンスラコーノ・アパントゥラコノ・アパントゥラコーノ
ラテン文字:apanthrakono
前置詞 από(〜から、完全に)と άνθρακας(炭、炭素)からの合成動詞。接頭辞 από- の「完全に」の含意から、物質が熱で完全に炭化することを表す。
類義語に αποτεφρώνω(灰にする), καρβουνιάζω(炭にする、焦がす), κατακαίω(焼き尽くす、焼き払う)。英語 anthracite, anthrax も ἄνθραξ を起源とする。
ギリシャ語:αποκάλυψη
読み方:アポカリプシ・アポカーリプシ
ラテン文字:apokalypsi
古代ギリシャ語の動詞 ἀποκαλύπτω(覆いを取る)から派生した ἀποκάλυψις(覆いを取ること)に由来。ἀποκαλύπτω は接頭辞 ἀπο-(離れて, 取り除く)と動詞 καλύπτω(覆う)から成る。
同じ語族に動詞 αποκαλύπτω(暴く, 明かす), 形容詞 αποκαλυπτικός(黙示的な, 啓示的な), αποκαλυπτήρια(除幕式)。対義語に συγκάλυψη(隠蔽)。
英語 apocalypse(黙示)は ἀποκάλυψις をラテン語経由で借用したもの。
ギリシャ語:αποκρυφισμός
読み方:アポクリフィズモス・アポクリフィズモース
ラテン文字:apokryfismos
古代ギリシャ語で「隠された」を意味する形容詞 απόκρυφος(アポクリフォス)に由来する。この語幹に -ισμός をつけた形で、19世紀にフランス語の occultisme の訳語として現代ギリシャ語に取り入れられた。英語の occultism と同義。
オカルティストにあたるギリシャ語は αποκρυφιστής(アポクリフィスティス)で、同じ語幹から派生している。
語源の απόκρυφος は英語の apocrypha(アポクリファ、外典)の元にもなっている。
類義語に μυστικισμός(神秘主義)があるが、μυστικισμός は神との合一など内面的な体験に重きを置く。αποκρυφισμός は精霊界や宇宙の超感覚的な力に関する知識・理論・実践の体系を指し、より体系的・実践的な側面を持つ。
精霊界や宇宙の超感覚的な力に関する知識に基づいた、理論・実践・儀式の体系を意味する。
ギリシャ語:απόκρυφος
読み方:アポクリフォス・アポークリフォス
ラテン文字:apokryfos
古代ギリシャ語の ἀπόκρυφος(隠された)から。ἀπό(〜から離れて)と κρύπτω(隠す)からなり、もとは「隠し置かれた」の意。教会が正典と認めない書物「外典」の意味でも使われる。後期ラテン語 apocryphus を経て英語 apocryphal の語源にもなった。
「オカルトの」の語義は19世紀にフランス語 occulte の翻訳借用として加わった。派生語の αποκρυφισμός(オカルティズム)もこの語義から。
ギリシャ語:απορία
読み方:アポリア・アポリーア
ラテン文字:aporia
古代ギリシャ語の ἀπορία を継承。否定の ἀ- と πόρος(通り道、手立て)からできた名詞。形容詞 ἄπορος(手立てがない、行き場のない)とつながり、行き場のなさから当惑や疑問の意味に移った。動詞は απορώ(不思議に思う)。英語 aporia はラテン語経由で同じ語から。
ギリシャ語:απορώ
読み方:アポロ・アポロー
ラテン文字:aporo
古代ギリシャ語の ἀπορῶ を継承。名詞 απορία(当惑、疑問)と同じ語根。形容詞 ἄπορος(手立てがない)からできた動詞。
ギリシャ語:απόσταση
読み方:アポスタシ・アポースタシ
ラテン文字:apostasi
古代ギリシャ語の動詞 ἀφίστημι(離れて立つ, 離れる)から派生した ἀπόστασις(離れること, 距離)に由来。ἀφίστημι は接頭辞 ἀπό-(離れて)と動詞 ἵστημι(立つ)から成る。
同じ語族に動詞 αφίσταμαι(離れる, 距離を置く), αποστασιοποίηση(距離を置くこと)。
類義語の διαδρομή は「行程」, διάστημα は「空間的・時間的間隔」に重心があり, απόσταση は二点間の隔たりそのものを指す。
ギリシャ語:απόχρωση
読み方:アポフロシ・アポーフロシ
ラテン文字:apochrosi
古代ギリシャ語の ἀπόχρωσις(色が変化する、弱められた色)を継承。
動詞 ἀποχρώννυμι(色を変化させる、弱める)の名詞形で、ἀπο-(離れて、減じて)と χρώννυμι(色をつける)の合成に由来する。
現代の「色合い、ニュアンス」の使い方はフランス語 coloration からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:απρόσμενος
読み方:アプロズメノ・アプローズメノ
ラテン文字:aprosmenos
否定の α- と動詞 προσμένω(待つ、予期する)からできた形容詞。
ギリシャ語:αρακάς
読み方:アラカス・アラカース
ラテン文字:arakas
古代ギリシャ語の ἄρακος(ある種の豆類)から、中世の αρακάς を経て現代に至る変遷。類義語に μπιζέλι(えんどう豆、グリーンピース)など。
ギリシャ語:αργά
読み方:アルガ・アルガー
ラテン文字:arga
αργά は形容詞 αργός(遅い)の中性複数形から生まれた副詞。αργός の起源は古代ギリシャ語にあり、ἔργον(仕事)に否定の接頭辞 ἀ- が付いた ἀ-εργός(仕事をしていない)が縮約して ἀργός(働かない、怠惰な)となった。「活動していない」から「遅い」に意味が転じ、中世ギリシャ語を経て現在の形に至った。
αργά の語源にある ἔργον(仕事)は、英語の energy(エネルギー)や allergy(アレルギー)にも含まれている。energy は ἐν(中で)+ ἔργον で「活動中の力」を、allergy は ἄλλος(他の)+ ἔργον で「通常とは異なる反応」を表す。
αργά の対義語は意味の領域によって異なる。「遅く、ゆっくり」の反対は γρήγορα(速く、素早く)で、「時間が遅く」の反対は νωρίς(早く、早い時間に)にあたる。
「速度が遅い」ことと「時間が遅い」ことの両方を表す副詞。比較級 αργότερα は「後で」「将来的に」という意味でも使われる。
ギリシャ語:αργός
読み方:アルゴス・アルゴース
ラテン文字:argos
古代ギリシャ語の ἀργός(働かない、怠惰な)から。「活動していない」から「速度が遅い」「加工されていない」へと意味が広がった。類義語の βραδύς(遅い)は文語的な語。
ギリシャ語:άρθρο
読み方:アルスロ・アールスロ・アルトゥロ・アールトゥロ
ラテン文字:arthro
古代ギリシャ語の ἄρθρον(継ぎ目、関節)を継承。動詞 ἀραρίσκω(合わせる、組み合わせる)に道具・手段を表す接尾辞 -θρον が付いた形で、もとは体の継ぎ目を表した。現代ギリシャ語の「記事」「条文」「文法の冠詞」の使い方は、フランス語・英語 article、ドイツ語 Artikel からの意味借用で広がった。
派生語に άρθρωση(関節)、αρθρωτός(節のある)、αρθρώνω(関節を組む、明確に発音する)。英語 arthritis(関節炎)、arthropod(節足動物)は同じ古代語から。英語 article は「合わせる」を表す印欧祖語語根から、ラテン語 articulus(artus「関節」の指小形)を経て入った。
ギリシャ語:αρκούδα
読み方:アルクダ・アルクーダ
ラテン文字:arkouda
αρκούδα は古代ギリシャ語 ἄρκτος(熊)にさかのぼり、中世ギリシャ語 αρκούδα を経て現代ギリシャ語の αρκούδα になった。古代形に基づく文語形の άρκτος(熊)も現代ギリシャ語に学術的な語として残るが、日常語として普通に使うのは αρκούδα である。
文語的・学術的な文脈では άρκτος(熊)が現れる一方、日常語では αρκούδα が基本になる。指小語には αρκουδίτσα(小さなクマ)と αρκουδάκι(小さなクマ、テディベア)があり、後者は文字どおりには小さなクマだが、現代ではテディベアやクマの意匠を言うときにもよく使う。
主な意味はクマ、熊。とくに一般的なクマや、茶色のクマを念頭に置いた言い方として使われやすい。複合表現では πολική αρκούδα / λευκή αρκούδα(ホッキョクグマ、シロクマ)でホッキョクグマを指す。比喩では、太って大柄な人を荒っぽく言う語になり、口語では超大国としてのロシアを動物のイメージで呼ぶこともある。
ギリシャ語:αρκουδάκι
読み方:アルクダキ・アルクダーキ
ラテン文字:arkoudaki
αρκουδάκι は αρκούδα(クマ)に -άκι(指小接尾辞)が付いた形。文字どおりには「小さなクマ」だが、現代ギリシャ語では実際の子グマよりも、クマをかたどった玩具や小さなクマの絵柄を指す語として使われることが多い。
同じぬいぐるみを αρκούδος(テディベア)とも言う。αρκουδάκι は小ささや親しみを出しやすく、子ども向けの持ち物や柄物の説明でよくなじむ。一般におもちゃを広く言うときは παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)を使う。
主な意味はテディベア、クマのぬいぐるみ。そこから、チョコレートや寝具などに付いたクマ形の飾りやクマ柄も指す。後者では複数形 αρκουδάκια(クマたち、クマ柄のモチーフ)で現れることが多い。
ギリシャ語:αρνί
読み方:アルニ・アルニー
ラテン文字:arni
ギリシャ語:αρρώστια
読み方:アロスティア・アロースティア
ラテン文字:arrostia
ギリシャ語:αρχείο
読み方:アルヒオ・アルヒーオ
ラテン文字:archeio
古代ギリシャ語の ἀρχεῖον(役所、公文書の置かれた場所)を継承。ἀρχή(支配、長、始まり)からできた名詞。現代の「書類のまとまり、公文書館」の意味はフランス語 archives、英語 archive から、コンピュータの「ファイル」の意味は英語 file からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:ασβέστιο
読み方:アズヴェスティオ・アズヴェースティオ
ラテン文字:asvestio
古代ギリシャ語の ἄσβεστος(消えない、石灰)をもとに作られた語。フランス語 calcium からの翻訳借用で、元素の名としての意味はそちらから入った。
英語 calcium はラテン語 calx(石灰)からで、ギリシャ語とラテン語で語根は別だが、石灰をもとに元素の名を作った発想が共通する。英語 asbestos も同じ古代ギリシャ語 ἄσβεστος からで、ラテン語を経て今の綴りに落ち着いた。
関連語に ασβέστης(石灰、生石灰)、ασβεστόλιθος(石灰岩)、ασβεστώνω(白く塗る)。
ギリシャ語:ασβός
読み方:アズヴォス・アズヴォース
ラテン文字:asvos
スラヴ語の jazv(ă)(アナグマ)に由来する中世ギリシャ語 ασβός(アナグマ)を経て現代ギリシャ語に続いた語。ブルガリア語の jazovets(アナグマ)と同系。
主な意味はヨーロッパアナグマ。学名 Meles meles の小型哺乳類で、夜行性の雑食動物として知られる。灰褐色の密な毛と穴掘りに向いた硬い爪を持ち、地中に巣穴を掘って暮らす。敵を遠ざけるために強い臭いの分泌物を出すことでも知られる。
ギリシャ語:ασημένιος
読み方:アシメニョス・アシメーニョス
ラテン文字:asimenios
ギリシャ語:ασημής
読み方:アシミス・アシミース
ラテン文字:asimis
古代ギリシャ語の形容詞 ἄσημος(刻印のない)が刻印の打たれていない銀を指す語として使われ, 中世ギリシャ語の ἀσήμιν(銀)を経て, 現代ギリシャ語で銀を意味する ασήμι となった。ασημής はこの ασήμι から派生した形容詞形にあたる。
ασήμι からはほかに ασημίζω(銀色に光る、銀メッキする)や ασημικό(銀器)も派生している。
似た形容詞に ασημένιος があるが、ασημένιος が「銀製の」と材料を指すのに対し、ασημής / ασημί は「銀色の」と色彩を指す。ただし比喩的な表現では ασημένιος も色の意味で使われることがある。
主な意味は「銀色の」で、銀のような光沢や色合いを持つものを指す。不変化の形 ασημί は特に口語や色の名前として多用される。
中性名詞 το ασημί は色の名前そのものを指す。
ギリシャ語:ασήμι
読み方:アシミ・アシーミ
ラテン文字:asimi
ギリシャ語:ασθένεια
読み方:アスセニア・アスセーニア・アステニア・アステーニア
ラテン文字:astheneia
古代ギリシャ語の ἀσθένεια(弱さ、病気)に由来。ἀσθενής(弱い、病気の)に -εια を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と σθένος(力、強さ)にさかのぼる。もとは「力がないこと」を表す語。σθένος は Δημοσθένης(デモステネス)、Ἐρατοσθένης(エラトステネス)のようなギリシャ人名にも含まれる語根。
類義語に αρρώστια(病気、病)、νόσος(疾病、病)、νόσημα(疾患)、πάθηση(病変)など。
英語 asthenia(無力症)は古代ギリシャ語 ἀσθένεια からそのまま入った医学用語。σθένος を含む英語の医学用語には myasthenia(筋無力症)、neurasthenia(神経衰弱)、psychasthenia(精神衰弱)、asthenosphere(岩流圏)などがあり、いずれも ἀ- + σθένος の組み合わせをもとにしている。
ギリシャ語:άσπρος
読み方:アスプロス・アースプロス
ラテン文字:aspros
ギリシャ語:αστείο
読み方:アスティオ・アスティーオ
ラテン文字:astio
名詞 ἄστυ(町)から派生した「都会風の, 垢抜けた」を意味する古代ギリシャ語の形容詞 ἀστεῖος(洗練された, 気の利いた)の中性形 ἀστεῖον が「しゃれ, 気の利いた言い回し」を指す名詞として用いられ, καθαρεύουσα が再び取り入れた語に由来。フランス語 plaisanterie からの意味借用も重なり, 今の「冗談」の用法が定着した。
派生に αστειάκι(ちょっとした冗談)。同じ語族に形容詞 αστείος(面白い, 気の利いた), 動詞 αστειεύομαι(冗談を言う, ふざける)。類義語に ανέκδοτο(逸話, ジョーク)。
ギリシャ語:αστέρας
読み方:アステラス・アステーラス
ラテン文字:asteras
印欧祖語で「星」を表す語根にさかのぼり, 英語 star と同じ語根を共有する古代ギリシャ語の ἀστήρ(星)を継承。中世ギリシャ語で αστέρας の形になり, 今に至る。英語 astronomy は古代ギリシャ語 ἄστρον(星)と νόμος(法則, 秩序)の合成語に, asterisk は ἀστήρ の指小形 ἀστερίσκος(小さな星)にラテン語を経由してさかのぼる。
類義語に αστέρι(星。ふだんの会話で最も一般), άστρο(星。文学や詩でよく出る)。αστέρας は硬い響きで、天文学や著名人を指す比喩、格付けの星の属格複数 αστέρων の形で使うことが多い。派生に ημιαστέρας(クエーサー、半恒星状天体)。関連語に αστερισμός(星座), αστεροειδής(小惑星), αστρικός(星の、星形の), αστρονομία(天文学), αστροναύτης(宇宙飛行士)。
ギリシャ語:αστέρι
読み方:アステリ・アステーリ
ラテン文字:asteri
印欧祖語で「星」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 ἀστήρ(星)の指小形 ἀστέριον を経て, 中世ギリシャ語の ἀστέρι を継承。ラテン語 stella, 英語 star も同じ語族。
派生に αστερώνω(星で飾る), αστερωτός(星形の), αστεράτος(星に恵まれた), αστερισμός(星座)。合成語に αστεροειδής(星のような, 小惑星), πεφταστέρι(流れ星), ξαστεριά(晴れた星空), ξάστερος(晴れた, 星の出た)。
ギリシャ語:αστερισμός
読み方:アステリズモス・アステリズモース
ラテン文字:asterismos
古代ギリシャ語の ἀστερισμός(星のまとまり、星座)を継承。αστέρας(恒星)に相当する古代形 ἀστήρ に -ισμός を付けた名詞で、もとから星々が一定の形に見えるまとまりを表した。現代の天文学で星座を体系的に言うときの使い方はフランス語・英語 constellation からの意味借用で定着した。
関連語に αστερίσκος(小さな星、アスタリスク)、αστερίας(ヒトデ、属)、αστρονομία(天文学)、αστρολογία(占星術)など。「勢力圏、陣営」の比喩用法は現代の言い回しで、星座を枠組みに見立てた延長線上にある。
英語 asterism(星群、三つ星の光学現象、※記号)も同じ古代ギリシャ語をもとにした語。
ギリシャ語:αστραπή
読み方:アストゥラピ・アストゥラピー
ラテン文字:astrapi
ギリシャ語:άστριος
読み方:アストゥリオス・アーストゥリオス
ラテン文字:astrios
古代ギリシャ語の ἄστριος(ある種の貴石)から。鉱物群を指すため、通常は複数形 άστριοι で用いられる。ορθόκλαστο(正長石)や πλαγιόκλαστα(斜長石)が代表的で、φεγγαρόπετρα(ムーンストーン)もこのグループに属する。
ギリシャ語:άστρο
読み方:アストゥロ・アーストゥロ
ラテン文字:astro
印欧祖語で「星」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 ἄστρον(星)を継承。ラテン語 astrum, 英語 astro-(astronomy, asteroid など)も同じ語族。「運命の星」の意味は中世ギリシャ語の時代から。幾何学図形や記章としての「星」はフランス語 étoile, 「星の戦争」の言い方は英語 star からの意味借用。
派生に αστράκι(小さな星), αστρικός(星の, 恒星の)。同じ語族に έναστρος(星のある, 星の出た), άναστρος(星のない)。合成語は αστρο- の形で作られ, αστρονομία(天文学), αστροφυσική(天体物理学), αστροφεγγιά(星明かり)などがある。
αστέρι は日常の星に, αστέρας は天文学や著名人の比喩に使われ, άστρο は文学や詩, 運命や宗教的シンボルの文脈で好まれる。
ギリシャ語:άστυ
読み方:アスティ・アースティ
ラテン文字:asty
古代ギリシャ語の ἄστυ(都市、市街)に由来。城壁に囲まれた居住区を指し、宗教的・政治的な中枢であるアクロポリスや、国家としての都市 πόλη(古代 πόλις)と対比して使われた。
派生語に αστικός(都市の、民事の。古代 ἀστικός を継承)、αστυνομία(警察。古代 ἀστυνόμος「都市の法を司る役人」に由来し、ἄστυ と νόμος の結合による語)、αστυνόμος(警官)、αστυφύλακας(警官)など。
印欧諸語の同源語にサンスクリット vāstu(住居の地)、ラテン語 Vesta(かまどを守る女神)、トカラ語 waṣt / ost(家)があり、共通して「住みか、住む場所」を表す。
ギリシャ語:ασφάλεια
読み方:アスファリア・アスファーリア
ラテン文字:asfaleia
古代ギリシャ語の ἀσφάλεια(安全、確かさ)を継承。ἀσφαλής(揺るがない、確かな、安全な)に -εια を付けた抽象名詞で、さらに ἀ-(否定)と σφάλλω(倒す、つまずかせる)にさかのぼる。もとは「倒されないこと、崩れないこと」を表す語。
派生語に ασφαλής(安全な)、ασφαλίζω(保険をかける、確保する)、ασφαλιστικός(保険の)、ασφάλιση(保険)など。
「治安」「公的安全」「機械の安全装置」の用法はフランス語 sécurité / sûreté からの意味借用、「保険」の用法は英語 insurance とフランス語 assurance からの意味借用。
英語 asphalt(アスファルト)も同じ ἀ- + σφάλλω の組み合わせで、「崩れない、劣化しない」の意から天然の瀝青を指した古代ギリシャ語 ἄσφαλτος に由来し、ラテン語 asphaltum を経て入った。
ギリシャ語:άτμισμα
読み方:アトゥミズマ・アートゥミズマ
ラテン文字:atmisma
ατμός(蒸気)から動詞 ατμίζω(蒸気にする、ベイプを吸う)が作られ、それに -μα を付けて作った名詞。湯気を立てる意味は動詞からの素直な名詞形で、電子たばこのベイプの意味は2011年にフランス語 vapotage から訳されて新しく入った。
ατμός は古代ギリシャ語の ἀτμός(蒸気)からそのまま続く語。
ギリシャ語:ατμός
読み方:アトゥモス・アトゥモース
ラテン文字:atmos
古代ギリシャ語の ἀτμός(蒸気、湯気、匂い)に由来。古い形 ἀετμός にさかのぼり、さらなる起源は確かでないが、伝統的に ἄημι(吹く、息を送る)と結びつけられてきた。
ατμός は、νερό(水)が熱で気体になったもの、あるいは πάγος(氷)が昇華してできるもので、水や氷の気体の相に当たる語。
派生語・複合語に ατμόσφαιρα(大気、雰囲気。σφαῖρα「球」との合成)、ατμομηχανή(蒸気機関)、ατμόπλοιο(蒸気船)、ατμοστρόβιλος(蒸気タービン)、εξατμίζω(蒸発させる)、εξάτμιση(蒸発、排気管)など、蒸気にまつわる語を幅広く作る語根。
英語 atmosphere(大気、雰囲気)は同じ古代ギリシャ語 ἀτμός をもとにした語で、atmospheric(大気の、雰囲気のある)、atmospherics(雰囲気作りの演出)などもここから派生している。接頭辞 atmo- は atmometer(蒸発計)など気象・気化関連の学術語にも使われる。
ギリシャ語:ατμόσφαιρα
読み方:アトゥモスフェラ・アトゥモースフェラ
ラテン文字:atmosfaira
古代ギリシャ語の ἀτμός(蒸気、湯気)と σφαῖρα(球、球体)からなる ἀτμόσφαιρα に由来する学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。構成要素はともに古代ギリシャ語由来だが、合成語としての ἀτμόσφαιρα はもともと古代ギリシャ語にはなく、17世紀の自然学者ジョン・ウィルキンスがラテン語 atmosphaera を新造したのが始まりで、これがフランス語 atmosphère, 英語 atmosphere として国際的に広まり、現代ギリシャ語にも入った。元の構成要素がギリシャ語由来であるため、再借用(αντιδάνειο)の側面も持つ。「雰囲気・ムード」の比喩義はフランス語・英語経由で広がった意味借用。古代の σφαῖρα は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、Beekes は先ギリシャ語基層からの語と位置づけている。同じ古代 σφαῖρα から英語 sphere(球), hemisphere(半球), 独 Sphäre が、また ἀτμός から英語 atomizer(噴霧器)など蒸気・霧化に関する語族が広まっている。
類義語に αέρας(空気、風。日常の空気、室内・身近な雰囲気), κλίμα(気候、風土、世論。場の雰囲気・空気感も指す), διάθεση(気分、ムード。個人の心の状態)。ατμόσφαιρα は地球や天体を取り囲む大気そのもの、物理学の気圧単位、場の雰囲気、文学・映画作品の独特の情緒を指す形として広く使う。派生に ατμοσφαιρικός(大気の、雰囲気のある), ατμοσφαιρικότητα(雰囲気のあるさま)。関連語に ατμός(蒸気), σφαίρα(球), ατμο-(蒸気・大気を表す結合辞)。成句に περιρρέουσα ατμόσφαιρα(社会を取り巻く空気、情勢)。
ギリシャ語:ατσάλι
読み方:アトゥサリ・アトゥサーリ
ラテン文字:atsali
ατσάλι はトルコ語 çelik(鋼)に由来する借用語である。現代ギリシャ語では、硬くて強度の高い金属材料としての鋼、スチールを言う基本語として定着している。
μέταλλο(金属) の中でも、構造材や刃物、工具などに使う鋼を指す語である。σίδερο(鉄、アイロン) が鉄を広く言うのに対して、ατσάλι はより加工された鋼材の感じが強い。
主な意味は「鋼」「スチール」。硬さ、耐久性、刃や構造材への適性と結びつきやすい。
ギリシャ語:ατύχημα
読み方:アティヒマ・アティーヒマ
ラテン文字:atychima
ατύχημα(事故、不運な出来事)は、α-(否定の接頭辞)と τύχη(運、めぐり合わせ)からできた語である。文字どおりには「運がよくないこと」で、現代ギリシャ語では事故や不慮の出来事を広く表す。
ζημιά(損害、損失、故障) が起きた結果の損害を言いやすく、τραυματισμός(負傷、けが) は人が受けたけがに焦点を当てる。ατύχημα はその出来事全体を言う。
意味は事故、不運な出来事。交通事故や家庭内事故から、広い意味の不運まで表せる。
ギリシャ語:αυγό
読み方:アヴゴ・アヴゴー
ラテン文字:avgo
印欧祖語で「卵」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 ᾠόν(卵)を継承。ヘレニズム期の ὠόν を経て, 中世ギリシャ語で母音の連続を避けて γ が挿入された αυγό(ν) / αβγό(ν) の形が定着した。ラテン語 ovum, 英語 egg, ドイツ語 Ei も同じ語族。英語の接頭辞 ovo- も同じ源。
派生に αυγουλάκι(小さな卵)。αβγό は音の変化をそのまま反映した綴りで, 発音は同じ。
古代 ᾠόν を直接受け継いだ ωόν は, 生物学の「卵細胞」や σιγά τα ωά のような成句に残る。卵子を指す ωάριο も同じ源。
ギリシャ語:αυτί
読み方:アフティ・アフティー
ラテン文字:afti
古代ギリシャ語の οὖς(耳。属格 ὠτός、語幹 ὠτ-)の指小形 ὠτίον が、日常では指小辞の意味を失って本来の「耳」を指す形として用いられたものを継承。中世ギリシャ語で冠詞つき複数形 τὰ ὠτία の連続発音の中で、母音衝突を避けて ω が半母音 [w] となり、無声子音 [t] の前で [f] に変化した [taftía] が新しい語幹として再分析され、単数形 αὐτί(ν) または ἀφτί が生まれて今に至る。表記は語源に忠実な αφτί と、のちに αὐτός(自分)と結び付けて綴った民間語源の αυτί が並存し、現在は αυτί の表記が広く使われる。「耳」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、ラテン語 auris(耳), 英語 ear と語根を共有する。英語の医学接頭辞 oto-(耳科学)も同じ ὠτ- からラテン語経由で入った学術借用で、αυτί と語根を共有する。
派生に αυτάκι(小さな耳、取っ手の耳、ページの折り目。指小形), αυτάρα(大きな耳。増大形)。関連語に ους(耳。古代ギリシャ語由来で、今は ωτ- 系の医学・解剖の硬い形にのみ残る), ωτίτιδα(中耳炎、外耳炎), ωτορινολαρυγγολογία(耳鼻咽喉科学。oto-「耳」+ rhino-「鼻」+ laryngo-「喉頭」+ -logy「学」のすべて古代ギリシャ語の部品で構成される学術借用)。
ギリシャ語:αυτοκίνητο
読み方:アフトキニト・アフトキーニト
ラテン文字:aftokinito
αυτοκίνητο は、19世紀末ごろにフランス語 automobile の影響で定着した近代の語。語の形そのものは αυτο-(自分で)と κινητός(動く、可動の)に対応しており、「自力で動くもの」という意味を表している。
日常会話では、自動車を αμάξι(車)と言うことも非常に多い。αυτοκίνητο のほうが中立的で、公的な表現や車種説明、技術的な言い方にもそのまま使いやすい。
拡大形の αυτοκινητάρα(でかくて立派な車)は「大きくて豪華な車」「排気量の大きい立派な車」のような言い方。指小形の αυτοκινητάκι(小さな車)は、小さな車や玩具の車をやわらかく言うときに使われる。
主な意味は、自前のエンジンで走る四輪車としての「自動車、車」。乗用車を中心に、用途、車体の型、駆動方式などを言い分けるときの土台になる語で、公用車、私用車、商用車、四輪駆動車、ハッチバック、セダン系の車などにも広く使われる。
ギリシャ語:αφθονία
読み方:アフソニア・アフソニーア・アフトニア・アフトニーア
ラテン文字:afthonia
古代ギリシャ語の ἀφθονία(豊かにあること)に由来。否定の ἀ- と φθόνος(ねたみ、出し惜しみ)からできた語で、妬まず惜しまず与えることがもとにある。
ギリシャ語:αφρός
読み方:アフロス・アフロース
ラテン文字:afros
ギリシャ語:αχάτης
読み方:アハティス・アハーティス
ラテン文字:achatis
古代ギリシャ語の ἀχάτης(瑪瑙)から。シチリア島のアカテス川(現ディリロ川)のほとりで発見されたことにちなむとされる。ラテン語 achātēs、中世フランス語 agathe を経て英語 agate の語源にもなった。
ギリシャ語:αχλάδι
読み方:アフラディ・アフラーディ
ラテン文字:achladi
古代ギリシャ語の ἀχράς(野生のナシ。属格 ἀχράδος)を継承。ヘレニズム期コイネーで変異形 ἀχλάς が生まれ、中世ギリシャ語ではその指小形 ἀχλάδιον(小さなナシ)が日常のナシ全般を指す形として定着して今の αχλάδι に落ち着いた。やがて単数の素形は αχλάδα として「大きなナシ」を指す側に分かれ、αχλάδι がふつうのナシを担う形になった。古代の ἀχράς は印欧祖語の古い果樹名にさかのぼる独立した古層の語で、明確な近縁の同族語は他の古典語にあまり残っていない。
類義語に απίδι(ナシ。話し言葉や地域的な言い方), άπιον(ナシ。古代ギリシャ語由来で、今は事実上使わない)。αχλάδι はナシ全般、特に洋梨を指すふつうの形として広く使う。派生に αχλαδάκι(小さなナシ。指小形), αχλάδα(大きなナシ。素形が増大形相当に分かれた語), αχλαδιά(ナシの木), αχλαδεώνας(ナシ畑、果樹園), αχλαδής(ナシ色の、薄黄緑の)。合成語に αγριαχλάδι(野生のナシ), αγριαχλαδιά(野生のナシの木), αχλαδόμηλο(和梨、ナシリンゴ), αχλαδόσχημος(ナシ形の)。
ギリシャ語:αχλαδομηλιά
読み方:アフラドミリャ・アフラドミリャー
ラテン文字:achladomilia
和梨(αχλαδόμηλο)の果実がなる木。
ギリシャ語:αχλαδόμηλο
読み方:アフラドミロ・アフラドーミロ
ラテン文字:achladomilo
αχλάδι(ナシ)と μήλο(リンゴ)からなるギリシャ語内の合成語で、ともに古代ギリシャ語から継承された構成要素を組み合わせて作られた。リンゴのように丸い形をしたナシ、つまりアジア原産のナシ(和梨)を指し、英語 Asian pear, apple pear に相当する。並行する呼称として日本語の「梨」をそのまま音写した外来借用 νάσι もあるが、ふつうは αχλαδόμηλο が使われる。
類義語に νάσι(和梨。日本語「梨」からの外来借用)。αχλαδόμηλο は和梨を指すふつうの形として広く使う。派生に αχλαδομηλιά(和梨の木。-ιά は果樹を表す語尾)。関連語に αχλάδι(ナシ、洋梨。第一構成要素), μήλο(リンゴ。第二構成要素)。
ギリシャ語:άχρηστος
読み方:アフリストス・アーフリストス
ラテン文字:achristos
古代ギリシャ語の ἄχρηστος(役に立たない)を継承。否定の ἀ- と χρηστός(役に立つ)からできた語。χρηστός は「使う」を意味する動詞 χρῶμαι からできた形容詞で、同じ語根から現代の χρήσιμος(役に立つ)も続く。
Β
ギリシャ語:βάζω
読み方:バゾ・バーゾ・ヴァゾ・ヴァーゾ
ラテン文字:vazo
中世ギリシャ語の βάζω を継承。古代ギリシャ語の動詞 βιβάζω(上げる、乗せる)が音変化を経た形で、βιβάζω は βαίνω(行く、進む)から作られた使役形。完結相過去形 έβαλα は別系統で、古代の βάλλω(投げる、置く)から続く。未完了相と完結相で由来の違う語幹が合わさっている。
ギリシャ語:βανίλια
読み方:ヴァニリャ・ヴァニーリャ
ラテン文字:vanilia
スペイン語の vainilla(小さな鞘)に由来し、イタリア語の vaniglia やフランス語の vanille を経て現代ギリシャ語に入った。バニラの果実が細長い鞘の形をしていることから「小さな鞘」と名づけられた。英語の vanilla や日本語のバニラも同じ語源から来ている。
中南米原産のラン科の蔓性植物と、その種子鞘から抽出される香料成分(バニリン)を指す。ギリシャの食文化では伝統菓子 υποβρύχιο(直訳「潜水艦」)のことを βανίλια とも呼ぶほか、プラムの一品種も指す。
ギリシャ語:βάρδια
読み方:ヴァルディア・ヴァールディア
ラテン文字:vardia
βάρδια(勤務交代、シフト、当番)は、イタリア語 guardia(見張り、当番)系の借用語から入った語である。現代ギリシャ語では、勤務の時間帯や当番の順番を言うのに広く使われる。
νοσοκομείο(病院) の夜勤や、店や工場の交代勤務の文脈で使いやすい。仕事そのものを言う εργασία(労働、仕事、作業、論文) より、時間帯ごとの持ち場に重心がある。
意味は勤務交代、シフト、当番。日勤、夜勤、警備当番などに使える。
ギリシャ語:βαρελότο
読み方:ヴァレロト・ヴァレロート
ラテン文字:vareloto
イタリア語 barilotto(小さな樽)からの借用で、祝祭や行事で使う爆竹を表す。barilotto は barile(樽)に指小辞 -otto を付けた形。ギリシャ語 βαρέλι(樽)はイタリア語 barile から、英語 barrel は古フランス語 baril から来ていて、いずれも同じ語族につながる。
類義語に κροτίδα(爆竹、クラッカー), στρακαστρούκα(爆竹、かんしゃく玉), μπομπάκι(小型爆弾), δυναμιτάκι(小型ダイナマイト)。関連語に βεγγαλικό(手持ち花火、ベンガル花火), πυροτέχνημα(花火), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾)。
ギリシャ語:βαρύς
読み方:ヴァリス・ヴァリース
ラテン文字:varys
印欧祖語で「重い」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の βαρύς(重い)を継承。名詞は βάρος(重さ)。英語 baritone(バリトン、もとは「重い声」)や barometer(気圧計)も同じ語源。
ギリシャ語:βάσανο
読み方:ヴァサノ・ヴァーサノ
ラテン文字:vasano
中世ギリシャ語の βάσανον を継承。古代ギリシャ語の βάσανος はエジプト語 baḫan からの借用で、金属の純度を調べる試金石の名。そこから「厳しく調べること、拷問」の意味に広がり、中世以降は中性形 βάσανον で「苦しみ、試練」の意味に移った。
ギリシャ語:βάση
読み方:ヴァシ・ヴァーシ
ラテン文字:vasi
βάση は古代ギリシャ語の βάσις(足取り、立つ位置、台座、土台)に由来する。さらにさかのぼると、βαίνω(歩く、踏む、進む)という動詞につながっており、もともとの核には「足を置く場所」「立つための位置」という感覚がある。
そこから現代ギリシャ語では、物が立つための台座や底部、議論や制度を支える基礎、軍事や仕事の拠点、成分のベース、化学の塩基まで広く表すようになった。英語の basis は同じ古代ギリシャ語 βάσις に由来する学術語で、base も近い系統の語として並ぶ。
抽象的な用法では、θεωρία(理論)や λογική(論理、考え方)を支える根拠として βάση が現れやすい。具体的な用法では、幾何の τρίγωνο(三角形)の底辺や、円錐・ピラミッドの底面を言うときにも使う。
中心にあるのは「何かがその上に成り立つ土台」という感覚である。物理的な台座や底部にも、抽象的な基礎や根拠にも使え、さらに基地、本拠地、支持基盤、主成分、下地、塩基などへ広がる。複数形 βάσεις(合格ライン、基礎)は、入試の合格ラインや「基礎がある」という意味でもよく使われる。
固定表現では、「〜に基づいて」「基本的には」「〜ベースで」「重視する、気にかける」といった意味を作る言い回しが多い。
ギリシャ語:βασιλεύς
読み方:ヴァシレフス・ヴァシレーフス
ラテン文字:vasilefs
古代ギリシャ語の βασιλεύς(王, 君主)を継承。ミュケナイ期の線文字Bにすでに qa-si-re-u として現れる古い語で, ギリシャ語以前の何らかの言語からの借用とする説があるものの, 確かな語源はわかっていない。
同じ語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλικός(王の, 王に関する, バジル), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικοφανής(王のような), βασιλόπαις(王子)。今, 日常で「王」を言うのは βασιλιάς で, βασιλεύς は古代史や歴史上の君主の肩書き, 学術的な文脈に残る。
現代の βασιλιάς は古代の対格 βασιλέα が中世に βασιλιά-ς として主格化したもの。英語 basilica(バシリカ, もとは「王の柱廊」), basilisk(バジリスク, 「小さな王」の意)もラテン語を経てこの βασιλεύς の語族。
ギリシャ語:βασιλιάς
読み方:ヴァシリャス・ヴァシリャース
ラテン文字:vasilias
βασιλιάς(王、国王)は、古代ギリシャ語の βασιλεύς(王)にさかのぼる語である。古代の語形がそのまま日常語として残ったのではなく、中世以後の話しことばの形を経て、いまのギリシャ語では βασιλιάς が基本語になった。
そのため、いまの語では βασιλιάς がまず中心にあり、古い文脈や語源説明で βασιλεύς(王、君主、バシレウス) が現れると考えると整理しやすい。対応する女性形は βασίλισσα(女王、王妃) である。
βασιλικός(王の、王に関する、バジル) はこの語群の代表的な派生語である。王に属すること、王にふさわしいことを表す形容詞として広がり、植物名の「バジル」にもなった。
さらに、Βασιλίσκος(小さな王、レグルス) は「王」を核にした別の派生語で、しし座の明るい恒星レグルスの名にもつながる。
主な意味は王、国王。君主制の国家の最高位の君主を指す。
ギリシャ語:βασιλικός
読み方:ヴァシリコス・ヴァシリコース
ラテン文字:vasilikos
古代ギリシャ語の形容詞 βασιλικός(王の, 王にふさわしい)を継承。βασιλεύς(王)に「〜の, 〜に属する」を表す接尾辞 -ικός を付けた形。植物バジルを指す男性名詞としての用法は中世ギリシャ語で生まれ, 香りの気高さから「王の草」と呼ばれたことによる。
同じ βασιλεύς の語族に βασιλιάς(王, 国王), βασίλισσα(女王), βασιλεία(王政, 王国), βασιλεύω(王として治める), βασιλικότητα(王の威厳), 副詞 βασιλικά(王のように, 豪華に), 合成語 φιλοβασιλικός(親王制の, 王党派の), αντιβασιλικός(反王制の), βασιλομήτωρ(王母)。
英語 basil(バジル)はラテン語 basilicum, 古フランス語 basile を経て植物名の βασιλικός の系統を引く。basilica(バシリカ)は古代ギリシャ語 βασιλική στοά「王の柱廊」の βασιλική から, basilisk(バジリスク, 伝説上の蛇王)は指小形 βασιλίσκος(小さな王)を経てラテン語 basiliscus から入った。フランス語 basilic も同じ経路。
ギリシャ語:βασιλίσκος
読み方:ヴァシリスコス・ヴァシリースコス
ラテン文字:vasiliskos
古代ギリシャ語の βασιλίσκος(小さな王)を継承。βασιλεύς(王、君主、バシレウス)に指小の接尾辞 -ίσκος を付けた形。
同じ語群に βασιλιάς(王、国王)、形容詞の βασιλικός(王の、王にふさわしい、バジル)、女性形の βασίλισσα(女王、王妃)。
しし座のアルファ星の名 Βασιλίσκος(レグルス)は「小さな王」の直訳で、ラテン語 Regulus も同じ発想で作られた。西洋怪物名の英語 basilisk、フランス語 basilic、イタリア語 basilisco はラテン語 basiliscus を経て広まり、元はヘレニズム期のギリシャ語 βασιλίσκος で、眼光や息で害をなすとされる蛇の伝説に結びついた。
ギリシャ語:βαφή
読み方:ヴァフィ・ヴァフィー
ラテン文字:vafi
古代ギリシャ語の βαφή(浸すこと、染色、焼入れ)を継承。動詞 βάπτω(浸す)から作られた名詞。
派生語に βάφω(染める、塗る), βάψιμο(染めること、塗ること), βαφέας(染物師、塗装工), βαφικός(染色の)。関連語は χρώμα(色), μπογιά(ペンキ、絵の具)。英語 baptism は動詞 βάπτω から教会ラテン語 baptismus を経て作られた語で、同じ語根。
ギリシャ語:βεγγαλικό
読み方:ヴェンガリコ・ヴェンガリコー
ラテン文字:vengaliko
地名 Βεγγάλη(ベンガル。英語 Bengal、ベンガル語の自称 Bangla から入った外来借用)を形容詞化した βεγγαλικός(ベンガル風の)の中性名詞形で、英語 Bengal light(ベンガル花火)を写した意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として花火を指す名詞に定着した。もとは πυροτέχνημα βεγγαλικό(ベンガル風の花火)と修飾関係で使われていた中性形容詞が単独で名詞化した形。ベンガル花火は、ベンガル地方で信号用に使われた青白い光を放つ火薬を指し、手持ちや信号弾として燃やすタイプのものだった。
類義語に πυροτέχνημα(花火。やや硬い語)。βεγγαλικό は打ち上げ・手持ちの両方を含む花火全般を指す形として広く使う。通常は複数形 βεγγαλικά で用いる。関連語に βαρελότο(爆竹), κροτίδα(クラッカー、爆竹), στρακαστρούκα(爆竹), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾), βεγγαλικός(ベンガル風の。形容詞形)。
ギリシャ語:βερίκοκο
読み方:ヴェリココ・ヴェリーココ
ラテン文字:verikoko
古代ギリシャ語の πραικόκκιον を継承。ラテン語 praecox(早熟の)から入った語で、アンズがほかの果物より早く熟すことからついた名前。praecox は prae-(前に)と coquo(煮る、熟す)の合成。中世に βερίκοκκον となって今の形に続く。
派生語に βερικοκιά(アンズの木), βερικοκί(アンズ色), βερικοκέλαιο(アンズ油)。近い語に καΐσι(大きめの品種、トルコ語から)。英語 apricot は、このギリシャ語がアラビア語 al-barqūq に渡り、カタルーニャ語・フランス語を経て英語に入った同語源の語。英語 precocious(早熟な)も同じ praecox からきた語。
ギリシャ語:βιασύνη
読み方:ヴィアシニ・ヴィアシーニ
ラテン文字:viasyni
古代ギリシャ語の βία(力、暴力)から派生した動詞 βιάζω(強いる、急がせる)に由来する。中世ギリシャ語以降、時間のなさに追われる「急ぎ」の状態を指す名詞として定着した。
意味の背景としては、英語で言えば force(力)や violence(暴力)に近い「力、強制」の領域から、現代ギリシャ語では主に「時間的な焦り」を意味する語へ広がっている。
類義語の βιάση はより文語的で、πρεμούρα や φούρια はより口語的で切迫したニュアンスを持つ。関連する形容詞に βιαστικός(急いでいる、性急な)と βίαιος(暴力的な、強制的な)がある。
主な意味は「急ぐこと」「焦り」。時間に追われ、物事を素早く行わなければならない状態を指す。そこから、急ぐあまり丁寧さを欠いた雑な仕事や、複数形 βιασύνες で慎重さを欠いた性急な行動も表す。
ギリシャ語:βιβλίο
読み方:ヴィヴリオ・ヴィヴリーオ
ラテン文字:vivlio
古代ギリシャ語の βιβλίον(本、巻物)に由来。βιβλίον は βύβλος(パピルス)の指小形で、βύβλος はフェニキアの都市 Βύβλος(今のレバノンのジュベイル)から加工パピルスが輸入されたことにちなむ名前。つまり「ビブロス産の小さな巻物」が本の呼び名になった。
派生語に βιβλιοθήκη(図書館、本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιοθηκάριος(司書), βιβλιοδεσία(製本), βιβλιάριο(小冊子)。英語 bible(聖書)は βιβλία(βιβλίο の複数形)から教会ラテン語 biblia を経て作られた語で、「書物」の意味から聖書だけを指すようになった。bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)の biblio- も同じ語源。
ギリシャ語:βιβλιογραφία
読み方:ヴィヴリョグラフィア・ヴィヴリョグラフィーア
ラテン文字:vivliografia
βιβλιογραφία はフランス語 bibliographie の文語借用。前半の βιβλιο-(本を表す接頭辞)と、後半の -γραφία(書くこと、記録すること)からなる。-γραφία は γράφω(書く)と同じ語族にあたり、全体としては英語 bibliography とも同系の語になる。
なお、ヘレニズム期の βιβλιογραφία は「本を書くこと」という意味で、現代ギリシャ語の βιβλιογραφία とは指す内容が異なる。
主な意味は、ある主題について本・雑誌・論文などを体系的に並べた文献一覧、またはその主題についてすでに書かれている文献群そのもの。個々の本ではなく、資料を整理して見渡す視点で使われる語である。
ギリシャ語:βίβλος
読み方:ヴィヴロス・ヴィーヴロス
ラテン文字:vivlos
古代ギリシャ語の βίβλος(パピルス, 巻物, 書物)から。フェニキアの港町 Βύβλος(現レバノンのジュベイル)がパピルスの交易地だったことから, そこで扱われた素材の名がギリシャ語に入った。指小形 βιβλίον の複数 τὰ βιβλία はヘレニズム期以降のキリスト教でギリシャ語訳聖書を指すようになり, ラテン語 biblia を経て英語 Bible になった。
同じ βίβλος の語族に βιβλίο(本), βιβλιάριο(小冊子, 通帳), βιβλιοθήκη(図書館, 本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιογραφία(書誌学, 参考文献目録), βιβλικός(聖書の), βιβλιόφιλος(愛書家), βιβλιοδεσία(製本)。ふつうの「本」には βιβλίο を使い, βίβλος は先頭大文字 Βίβλος の聖書と, λευκή βίβλος「白書」のような硬い公文書名に限られる。
λευκή βίβλος「白書」, κυανή βίβλος「青書」, μαύρη βίβλος「黒書」のような色+βίβλος の公文書名は英語 White Paper, Blue Paper, フランス語 Livre Noir からの翻訳借用。英語 Bible, bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)もこの βιβλίον・βίβλος の語族。
ギリシャ語:βίδρα
読み方:ヴィドゥラ・ヴィードゥラ
ラテン文字:vidra
βίδρα は、カワウソを表すスラヴ系の vidra / vydra に由来する借用語。さらに遡ると、「水の動物」を表す古い印欧語系の語につながり、ギリシャ語の ύδρα(ヒュドラ、水蛇)や英語の otter とも遠いところで語源を共有する。
やや学術的な言い方には ενυδρίδα(カワウソ、より学術的な言い方)もあるが、ふつうの呼び名としては βίδρα が使われる。ギリシャ語圏の文脈では、とくにヨーロッパカワウソ(Lutra lutra)を念頭に置くことが多い。
主な意味はカワウソ。川や湖などの水辺で暮らす水生の食肉目哺乳類を指し、足の指に水かきがあること、保護対象の野生動物として扱われることが特徴として意識されやすい。
ギリシャ語:βιολετί
読み方:ヴィオレティ・ヴィオレティー
ラテン文字:violeti
βιολετί(すみれ色の、青紫の、すみれ色)は、βιολέτα(スミレ)から派生した色名である。不変化形容詞として立ち、スミレのような青紫色を言う。名詞としては το βιολετί(すみれ色)とも使う。
花の名では βιολέτα(スミレ)があり、近い色名には μενεξελί(すみれ色、菫色) がある。βιολετί は不変化の色名として現れやすい。
意味はすみれ色の、青紫の、すみれ色。服、壁、花の色にも、色名そのものにも使える。
ギリシャ語:βιολί
読み方:ヴィオリ・ヴィオリー
ラテン文字:violi
βιολί(バイオリン)は、中世ギリシャ語の βιολί(バイオリン)に由来する語。現代ギリシャ語では、肩とあごのあいだに支えて弓で弾く四弦の擦弦楽器を指す基本語になっている。
もっとも基本的な意味は、オーケストラや室内楽、民俗音楽で使うバイオリン。その複数形 βιολιά(小編成の楽団、生演奏)は、くだけた言い方で小さな楽団やその場の生演奏を指すこともある。
指小語 βιολάκι(小さなバイオリン、子供向けのバイオリン)がある。演奏することを言うときには παίζω(弾く、演奏する)を使い、演奏の場面全体では μουσική(音楽)と結びつくことが多い。同じ擦弦楽器の仲間として βιόλα(ヴィオラ)、κοντραμπάσο(コントラバス)、τσέλο(チェロ)が並ぶ。
ギリシャ語:βιολιστής
読み方:ヴィオリスティス・ヴィオリスティース
ラテン文字:violistis
βιολιστής(バイオリン奏者、バイオリニスト)は、βιολί(バイオリン)に、人を表す接尾辞 -ιστής(〜する人を表す語尾)がついた形。バイオリンを弾く人を表す、もっともまっすぐな言い方のひとつである。
女性形は βιολίστρια(バイオリン奏者、バイオリニスト)。類義語として βιολονίστας(バイオリン奏者、バイオリニスト)もある。
バイオリンを弾く音楽家を指す。職業としての演奏家にも、広くバイオリンを弾く人にも使え、オーケストラや室内楽などの μουσική(音楽)の場面で自然に現れる。
ギリシャ語:βίος
読み方:ヴィオス・ヴィーオス
ラテン文字:vios
古代ギリシャ語の βίος(人生、生き方、生涯)に由来。印欧祖語で「生きる」を表した語根の子孫で、同じ語根からラテン語 vivus(生きている)、サンスクリット語 jīvati(生きる)が出る。ζωή も同じ語根から並んで出た兄弟語。
同じ語群に βιώνω(生きる、体験する)、βιώσιμος(持続可能な、生きていける)。合成語に βιογραφία(伝記)、βιολογία(生物学)、βιομηχανία(工業)、βιοηθική(生命倫理)、βιοτεχνία(手工業)。中性名詞 βιος(財産、資産)は同じ綴りでアクセント位置が違う別語で、中世に「生計を支えるもの」から転じて出た。
βίος と ζωή は古代から意味が分かれ、前者は生き方や暮らし、後者は生きている状態や生命力の場面に使われた。コイネー期に新約聖書が永遠の命(ζωή αἰώνιος)など霊的な命に ζωή を集中的に当てたことで、生き方・経歴の用法は βίος に集まっていった。英語 biology(生物学)、biography(伝記)、biosphere(生物圏)、antibiotic(抗生物質)は βίος をもとにした学術造語で、同じ語根につながる。
ギリシャ語:βλάβη
読み方:ブラヴィ・ブラーヴィ・ヴラヴィ・ヴラーヴィ
ラテン文字:vlavi
古代ギリシャ語の βλάβη(害、損傷)を継承。動詞 βλάπτω(傷つける、害する)から作られた名詞。
派生語に βλαβερός(有害な), αβλαβής(無害な), επιβλαβής(有害な)。ζημιά(損失、損害)は損失・損害を広く言うのに対して、βλάβη は機械や身体の機能が停止した状態によく使う。法律用語の ηθική βλάβη(精神的損害), σωματική βλάβη(身体的損害)はフランス語 préjudice moral / préjudice corporel の翻訳借用。
ギリシャ語:βλαστήμια
読み方:ヴラスティミア・ヴラスティーミア
ラテン文字:vlastimia
βλαστήμια は古代ギリシャ語の βλασφημία(誹謗、不敬な言葉)に由来する。英語の blasphemy(冒涜)の語源でもある。
類義語の βρισιά(罵倒) と比べると、βλαστήμια は宗教的・神聖な対象を汚すニュアンスがより強い。ただし現代ギリシャ語では、口汚い罵り言葉全般を指すこともある。
不敬な言葉や卑俗な罵り言葉を総称する語で、神への冒涜から日常的な罵言まで幅広く使われる。
ギリシャ語:βλέμμα
読み方:ヴレマ・ヴレーマ
ラテン文字:vlemma
古代ギリシャ語の βλέμμα(視線, 眼差し)を継承。動詞 βλέπω(見る)の名詞形で, -μα は動詞の結果や産物を指す接尾辞。「見ること」「見た様子」「目つき」を指す。
同じ βλέπω の語族に βλέψη(視覚, 視力), βλέφαρο(まぶた), βλεφαρίδα(まつ毛), βλεφαρίτιδα(眼瞼炎), 合成語 διαβλέπω(見抜く), παραβλέπω(見逃す), προβλέπω(予見する), επιβλέπω(監督する)。
「ちらっと見ること」を言うには ματιά(一瞥, 視線)を使い, 目そのものは μάτι(目)。βλέμμα はその中間で, 視線の向け方に加え, そこににじむ表情や感情を含む。英語 ablepsia(盲目), hemiblepsia(半盲)のような医学用語も同じ βλέπω の系統を引く。
ギリシャ語:βλέπω
読み方:ヴレポ・ヴレーポ
ラテン文字:vlepo
古代ギリシャ語の βλέπω(見る)を継承。ギリシャ語以前の何らかの言語からの借用とされ, 確かな語源はわかっていない。現在系列は βλέπω で残るが, 完結相(過去)は別語源の είδα が担う。είδα は古代ギリシャ語の完結相過去形 εἶδον に由来し, ラテン語 video(見る), 英語 wit(知恵), wise(賢い), ドイツ語 wissen(知る)と同じ印欧語根で「見る, 知る」を表した語の子孫。一つの動詞の現在と過去で別系統の語根が並んで残った形。
同じ βλέπω の語族に βλέμμα(視線, 眼差し), βλέψη(視覚), βλέφαρο(まぶた), βλεφαρίδα(まつ毛), 合成語 αναβλέπω(見上げる), αποβλέπω(目標にする), διαβλέπω(見抜く), επιβλέπω(監督する), παραβλέπω(見逃す), προβλέπω(予見する), ξαναβλέπω(再会する), πρωτοβλέπω(初めて見る)。
意識して「眺める」を言う κοιτάζω に対し, βλέπω は「見える」から「見守る」まで幅広い。抽象的な「知覚する」には αντιλαμβάνομαι, 「理解する」には κατανοώ が並ぶ。辞書や注記の略号 βλ. は βλέπε(参照せよ)の略。「薔薇色の目で見る(βλέπω τα πάντα ρόδινα)」のような成句はフランス語 voir tout en rose からの翻訳借用。
ギリシャ語:βόδι
読み方:ヴォディ・ヴォーディ
ラテン文字:vodi
βόδι(牛、去勢牛)は、古代ギリシャ語の βοῦς(牛)の指小形をもとにする後期古代の βοΐδιον(小さな牛、牛)に由来する。そこから語形が縮まり、現代ギリシャ語の βόδι になった。民間的・口語的な形に βόιδι(牛、去勢牛)もある。
牛をまとめて言う総称には βοοειδή(牛類、家畜のウシ)がある。その中で βόδι は広く牛を指すこともあるが、とくに去勢された雄牛を中心に表す。雌は αγελάδα(雌牛、乳牛)、繁殖用の雄は ταύρος(雄牛)、子は μοσχάρι(子牛)という。
βοδινός(牛の、牛肉の)は βόδι から出た形容詞で、中性形 το βοδινό(牛肉)は牛肉を指す。
主な意味は牛、去勢牛。動物としての牛を広く言うこともあるが、ふつうは肉を取るため、あるいは昔は農作業にも使うために去勢した雄牛を指す。複合表現では χολή βοδιού(牛胆汁、オックスゴール)のような専門的な言い方もある。比喩では、太っていて粗野だったり、愚かだったりする人を罵って言うこともある。
ギリシャ語:βοδινός
読み方:ヴォディノス・ヴォディノース
ラテン文字:vodinos
ギリシャ語:βόλτα
読み方:ヴォルタ・ヴォールタ
ラテン文字:volta
中世にイタリア語 volta(回転、ひと回り)から借用された語。volta はラテン語 volvo(回転する、巻く)の過去分詞 voluta から作られた名詞で、英語 revolve(回転する), evolve(展開する), volume(巻物、量)も同じ語根。
派生語に βολτάρω(散歩する), βολτούλα, βολτίτσα(ちょっとした散歩)。近い語に περίπατος(散策), γύρα(ひと回り), τσάρκα(ぶらつき)。複数形の βόλτες は回転の意から、ねじの山や機械の回し数を指すのにも使う。κόβω βόλτες(ぶらぶらする), παίρνει την κάτω βόλτα(下降線をたどる)のような慣用句も多い。
ギリシャ語:βοοειδή
読み方:ヴォオイディ・ヴォオイディー
ラテン文字:vooeidi
古代ギリシャ語の βοῦς(牛)と -ειδής(〜に似た)からなる βοοειδής(牛に似た)から。そこからヘレニズム期の古代ギリシャ語の βοοειδής(牛に似た)が現れ、現代ギリシャ語の βοοειδή ではその中性複数形が名詞として使われるようになった。
現代ギリシャ語では複数形 βοοειδή が基本で、この形が名詞として動物の一群をまとめて表す。動物学で「ウシ科」を指す意味は、もともとあったギリシャ語の語形に、学名 Bovidae やフランス語 bovidés(ウシ科動物)などに対応する近代の学術的な意味が重なって定着したと考えられる。
学名 Bovidae はラテン語の Bos(牛)に科名を表す -idae が付いた形で、Bos は古代ギリシャ語の βοῦς と同根語である。つまり、現代の βοοειδή は古代ギリシャ語由来の形そのものを土台にしつつ、近代の分類学の中で学術語として意味が整理された語だと言える。
この語は牛をまとめて言う総称として使われるが、個々の家畜を日常的に言い分けるときは別の語が立つ。雌牛や乳牛は αγελάδα(雌牛、乳牛)、去勢された雄は βόδι(去勢牛)、繁殖用の雄は ταύρος(雄牛)、子は μοσχάρι(子牛)という。
主な意味は牛類、家畜のウシ。畜産の文脈では、牛を一頭ずつではなく種類や群れとしてまとめていうときに使う。動物学では、より広くウシ科の動物全体を指す総称にもなる。
ギリシャ語:βορειοανατολικά
読み方:ヴォリオアナトリカ・ヴォリオアナトリカー
ラテン文字:voreioanatolika
βορειοανατολικός(北東の)の中性複数形。βόρειος(北の)の接頭辞 βορειο- と ανατολικός(東の)が合わさった形容詞の中性複数形で、方角名・方向ラベルとして一語で立つ。
北東から吹く風の名には γραίγος と μέσης がある。γραίγος はイタリア語由来の地中海の航海語で、μέσης は古代ギリシャ語に由来する名称。
方角としての北東を表す。名詞として「北東部」、副詞として「北東へ」の用法もある。
:::example
- στα βορειοανατολικά της χώρας
- 国の北東部に
- in the northeast of the country :::
:::example
- Κατευθύνεται βορειοανατολικά.
- 北東へ向かっている。
- Heading northeast. :::
ギリシャ語:βορειοδυτικά
読み方:ヴォリオディティカ・ヴォリオディティカー
ラテン文字:voreiodytika
βορειοδυτικός(北西の)の中性複数形。βόρειος(北の)の接頭辞 βορειο- と δυτικός(西の)が合わさった形容詞の中性複数形で、方角名・方向ラベルとして一語で立つ。
北西から吹く風の名には μαΐστρος と σκίρων がある。μαΐστρος はイタリア語由来の地中海の航海語で、σκίρων は古代ギリシャ語に由来する名称。
方角としての北西を表す。名詞として「北西部」、副詞として「北西へ」の用法もある。
:::example
- στα βορειοδυτικά της χώρας
- 国の北西部に
- in the northwest of the country :::
:::example
- Κατευθύνεται βορειοδυτικά.
- 北西へ向かっている。
- Heading northwest. :::
ギリシャ語:βόρειος
読み方:ヴォリオス・ヴォーリオス
ラテン文字:voreios
古代ギリシャ語の βόρειος(北の、北風の)を継承。北風の神 Βορέας から作られた形容詞で、親の名詞は βορράς(北)。
同じ語群に建物の向きを言う βορινός(北向きの)、北風を言う βοριάς、対義語は νότιος(南の)。中性複数形 βόρεια は副詞「北へ、北に」にも名詞「北部」にも使う。
英語 boreal(北の)、boreal forest(北方林、タイガ)、Aurora Borealis(オーロラ、直訳「北の夜明け」)はラテン語 borealis を経て βόρειος と同じ語源につながる。ギリシャ語ではオーロラをラテン名で言わず、フランス語 Aurore Boréale をなぞった Βόρειο Σέλας(北の光輝)と呼ぶ。はくちょう座の中央の十字形は Βόρειος Σταυρός(北十字星)、月の軌道上の昇交点は Βόρειος Δεσμός της Σελήνης(ドラゴンヘッド)。
ギリシャ語:βορράς
読み方:ヴォラス・ヴォラース
ラテン文字:vorras
古代ギリシャ語の βορρᾶς(北風、北)に由来。北風の神 Βορέας(ボレアス)のアッティカ方言形で、神名そのものが方角と風の名も兼ねた。
派生の形容詞に βόρειος(北の)、北風に限って使う異形に βοριάς、その指小語に βοριαδάκι(心地よい北風、そよ風)。対義語は νότος(南)。地中海・航海の文脈で使う北風名にイタリア語 tramontana「山の向こう」からの τραμουντάνα、夏のエーゲ海で吹く北寄りの季節風に μελτέμι(メルテミ)。
英語 boreal(北の、北方の)、boreal forest(北方林、タイガ)、Aurora Borealis(オーロラ、直訳「北の夜明け」)はラテン語 borealis を経て βορρᾶς・Βορέας と同じ語源につながる。
ギリシャ語:βουβάλι
読み方:ヴウヴァリ・ヴウヴァーリ
ラテン文字:vouvali
ギリシャ語:βουλή
読み方:ヴリ・ヴリー
ラテン文字:vouli
古代ギリシャ語の βουλή(評議, 意志, 決断)に由来。動詞 βούλομαι(望む, 決意する)に -ή が付いた動詞名詞で, 相談して決めることを指していた。現代の「議会」の用法はフランス語 Parlement, 英語 Parliament からの意味借用で輪郭が整った。
同じ βούλομαι の語族に βουλεύω(熟議する), βουλευτής(議員), βουλευτήριο(議場), βούλευμα(起訴状, 決定), βούληση(意志, 意向), 合成語 κοινοβούλιο(国会, κοινός「共通の」と合わせた語), κοινοβουλευτικός(議会制の), συμβουλή(助言), επιβουλή(陰謀, 策略)。
書き言葉に残る βουλές(意志, 決意)は άγνωστες οι βουλές του Θεού(神の御心は知れない)のような言い回しで使う。英語 voluntary, volition もラテン語 voluntas を介して, βούλομαι と同じ「望む」を表す語根に連なる。
ギリシャ語:βουνό
読み方:ヴノ・ヴノー
ラテン文字:vouno
古代ギリシャ語の βουνός(丘、小山)から。もともとはドーリス方言、あるいはキレナイカ地方(リビア)の言葉であったとされる。
古典期から中世にかけて、「丘」よりも大きな「山」を指す一般的な語として定着し、中世ギリシャ語の βουνόν を経て現在の形に至る。
βουνό は日常的に最も広く使われる「山」の語。より公的・地理学的な文脈では όρος(山)が用いられ、標高の低い λόφος(丘)とは区別される。
接頭辞 βουνο- として βουνοκορφή(山頂)などの合成語をつくるほか、形容詞 βουνίσιος(山の、山に住む)も派生する。παγόβουνο は πάγος(氷)と βουνό の合成で「氷山」を意味する。
主な意味は標高300メートルを超える「山」。そこから山がちな地域やその周辺も指す。比喩的には、山のように積み上がった「大量のもの」や、克服が困難な「大きな障害」を表す。
ギリシャ語:βούτυρο
読み方:ヴティロ・ヴーティロ
ラテン文字:voutyro
古代ギリシャ語の βούτυρον(牛のチーズ、バター)から。βοῦς(牛)と τυρός(チーズ)の合成語で、もともとは「牛のチーズ」、すなわちバターを指していた。なお現代ギリシャ語でチーズは τυρί。
ラテン語の butyrum を経て、英語の butter やフランス語の beurre など多くの言語に借用されている。
連結形 βουτυρο- / βουτυρό- は複合語の第一成分として使われ、βουτυροκομείο(バター製造所)、βουτυρομηχανή(バター攪拌機)などの語をつくる。
また、蔑称的に、過保護に育てられたひ弱な人物を指す語にも使われる。βουτυρόπαιδο は甘やかされて育った子ども(バター坊や)、βουτυρομπεμπές はなよなよした若者(バター赤ちゃん)を表す。
主な意味は γάλα(牛乳)などから作られるバター。植物の種子から抽出される固形油脂(ココアバターなど)にも使われる。類義語の μαργαρίνη(マーガリン)とは異なり、一般的に乳脂肪由来のものを指す。
比喩的には「ψωμί(パン)の上のバター」の形で、誰かにとって好都合な状況を表す表現にも使われる。
ギリシャ語:Βοώτης
読み方:ヴォオティス・ヴォオーティス
ラテン文字:vootis
古代ギリシャ語の Βοώτης(牛飼い、牛追い)を継承。βοῦς(牛)からできた語。英語 Boötes もラテン語 Boōtēs を経て同じ語源。
プトレマイオスの48星座に含まれる古い星座。古代の人は Μεγάλη Άρκτος(おおぐま座)の星並びを牛の引く車に見立て、それを追う人の姿として空に描いたという。別名 Αρκτοφύλαξ(熊の番人)もあり、主星 Αρκτούρος(アルクトゥルス)はこの別名にちなむ。神話では、ゼウスとカリストの子アルカスとされ、熊に変えられた母を追って空に昇ったという伝承もある。
ギリシャ語:βράδυ
読み方:ブラディ・ブラーディ
ラテン文字:vrady
古代ギリシャ語の βραδύς(緩慢な、遅い)から。アクセント位置の変化には、ヘレニズム期の副詞 βράδιον(より遅く)の影響があったと考えられている。
この語の語源である βραδύς は、英語では brady-(緩慢な、遅い)として bradycardia(徐脈)などの医学用語に残る。
類義語の νύχτα も「夜」を表すが、βράδυ は主に日没から真夜中ごろまでの晩の時間を指し、νύχτα は暗い時間帯全体や就寝時間まで含めて広く言いやすい。
主な意味は「晩」「夕方」「夜」。日が暮れるころから深夜までの時間を指すほか、文脈によっては夜の暗がりそのものも表す。副詞的に「夜に」の意味でも使われ、指小語 βραδάκι は宵の口や晩の早い時間を指す。
ギリシャ語:βράζω
読み方:ヴラゾ・ヴラーゾ
ラテン文字:vrazo
古代ギリシャ語の βράσσω(激しく揺する、はね散らす)を継承。コイネーで βράζω の形となり、激しく動く湯のさまから「沸く、煮る」の意味へ移った。
派生語に αναβράζω(沸き立つ、湧き上がる), σιγοβράζω(とろ火で煮る), βρασμός(沸騰、騒然とした状態), βραστός(茹でた)。慣用句に βράσε ρύζι(もうお手上げ), βράζει το αίμα(血が騒ぐ), καζάνι που βράζει(煮え立つ釜、緊迫した情勢)。
ギリシャ語:βραχιόλι
読み方:ヴラヒョリ・ヴラヒョーリ
ラテン文字:vrachioli
ラテン語の bracchiale(腕の装飾品)に由来する。ヘレニズム期に βραχιάλιον としてギリシャ語に入り、中世ギリシャ語で βραχιόλιον を経て、現在の形になった。途中の母音の変化(a → o)は、同じく「腕の装飾品」を意味する βραχιόνιον の影響とされる。
βραχίονας(腕)に関連する語であり、英語の bracelet(ブレスレット)や brace(支え具)とも起源を共有する。いずれも古代ギリシャ語の βραχίων(腕)からラテン語 bracchium(腕)を経た派生にあたる。
装飾品としてのブレスレット(腕輪)を指すのが基本だが、工業用の金属リングや、口語で手錠の俗称としても使われる。
χρυσό βραχιόλι(金のブレスレット)は、学歴による女性の経済的自立を象徴する成句としても使われる。
ギリシャ語:βραχίονας
読み方:ヴラヒオナス・ヴラヒーオナス
ラテン文字:vrachionas
古代ギリシャ語の βραχίων(腕)が、日常の腕を指す形としては早くに口語から消え、現代ギリシャ語に学術借用として戻って医学・解剖や書き言葉の硬い文脈で使う形に落ち着いた。古代の βραχίων は形容詞 βραχύς(短い)の比較級 βραχίων(より短いもの)と同形で、解剖学的に脚より「短い」肢として「腕」を指したと考えられている。フランス語 bras(腕), イタリア語 braccio(腕), スペイン語 brazo(腕)はいずれも同じ βραχίων からラテン語 brachium を経由して入った借用で、英語 brace(締め具、支え), embrace(抱きしめる), brachial(上腕の), brachiosaurus(ブラキオサウルス)も同系譜に連なる。日常の「腕」を指す μπράτσο も、イタリア語 braccio から戻ってきた再借用(αντιδάνειο)で、語根を共有する。
類義語に μπράτσο(腕、二の腕。イタリア語 braccio 由来の再借用で、日常の腕の呼び方として広く使う), χέρι(手、腕。指先から肩までを指す総称)。βραχίονας は肩から肘までの上腕や、機械・建築の腕状部分を指して、書き言葉や医学・解剖の硬い文脈で使う。派生に βραχιονικός(上腕の、腕の), βραχιονάκι(小さな腕。指小形)。合成語に αντιβραχίονας(前腕), λιμενοβραχίονας(防波堤、突堤), μοχλοβραχίονας(てこの腕), περιβραχιόνιο(腕章、腕輪), βραχιονοπλαστική(上腕形成術)。
ギリシャ語:βραχνάς
読み方:ヴラフナス・ヴラフナース
ラテン文字:vrachnas
中世ギリシャ語の βαρυχνάς(ヴァリフナス:重苦しい呼吸)に由来する。もともとは睡眠中に胸が圧迫されるような不快感、つまり金縛りや悪夢を指していた。現代ギリシャ語では精神的な重圧や厄介な問題も表すようになった。
英語の nightmare(悪夢)の比喩的な用法や albatross(重荷)に近い。類義語に εφιάλτης(悪夢)や μπελάς(厄介事)がある。εφιάλτης は悪夢そのものや恐ろしい経験を指し、μπελάς は日常的な面倒や厄介事を意味する。日常的にプレッシャーの意味で使われる πίεση(圧力)とも近い。
強い不安やストレスを引き起こす対象を総称し、経済的な問題、解雇への恐怖、厄介な人物など幅広い文脈で使われる。
ギリシャ語:βράχος
読み方:ブラホス・ブラーホス・ヴラホス・ヴラーホス
ラテン文字:vrachos
古代ギリシャ語の形容詞 βραχύς(浅い)から派生した複数形 βράχεα(浅瀬, 浅い海の場所)を背景にもつ語。浅瀬にある危険な岩場や突き出た岩そのものへ意味が寄り, ヘレニズム期の中性名詞 βράχος(岩)を経て中世ギリシャ語の βράχος(岩, 大岩)に至った。現代では男性名詞として使われるが, これは大きくごつごつしたものとして再解釈された結果と考えられている。
λίθος(石)が石材や文語的な「石」を広く言うのに対して、βράχος はもっと大きく、地形として迫ってくる岩や岩壁を言いやすい。θάλασσα(海)の近くでは、岩礁や岩場としての意味が前に出る。
主な意味は「大きな岩、岩壁」。そこから、海辺や沖合の岩場、さらに比喩で、圧力に負けない頑丈で揺るがない人も表す。
ギリシャ語:βρισιά
読み方:ヴリシア・ヴリシアー
ラテン文字:vrisia
βρισιά は古代ギリシャ語の ὕβρις(傲慢、侮辱)に由来する。中世ギリシャ語で υβρισία の形を経て、現代ギリシャ語の βρισιά に至った。英語の hubris(過度な自信、傲慢)も同じ ὕβρις を語源に持つ。
βλαστήμια(冒涜、罵言) が宗教的・神聖な対象を汚す不敬な言葉を指すのに対し、βρισιά は相手の名誉を傷つける侮辱的な言葉を広く指す。
相手を不快にさせたり名誉を傷つけたりする目的で放たれる、下品で無礼な言葉を指す。
ギリシャ語:βροχή
読み方:ヴロヒ・ヴロヒー
ラテン文字:vrochi
動詞 βρέχω(濡らす, 雨が降る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 βροχή(濡れ, 降り注ぐこと)を継承。古代では「雨」を言う中心語は ὑετός や ὄμβρος で, βροχή は副次的な語だったが, ヘレニズム期以降はこの βροχή が「雨」そのものを指す語として主流になった。非人称の βρέχει(雨が降っている)は今もよく使う言い方。
同じ βρέχω の語族に指小形 βροχούλα(小雨), 増大形 βροχάρα(大雨), 形容詞 βροχερός(雨の多い), βρόχινος(雨の), 名詞 βροχόπτωση(降水量), 合成語 ανεμοβρόχι(風雨), χιονόβροχο(みぞれ), ψιλόβροχο(霧雨), βροχόμετρο(雨量計), αδιάβροχο(レインコート, 防水の)。νερό(水)と組み合わせた νεροποντή(豪雨)も同じ圏にある。
δάσος βροχής(熱帯雨林)は英語 rain forest からの翻訳借用, τεχνητή βροχή(人工降雨)も英語 artificial rain と対応する形で取り入れられた。現代の気象用語は仏英からの訳語経路で整ったものが多い。
ギリシャ語:βρώμικος
読み方:ブロミコス・ブローミコス・ヴロミコス・ヴローミコス
ラテン文字:vromikos
βρόμα(悪臭、汚れ)に形容詞を作る -ικος が付いてできた語。βρόμα は古代ギリシャ語 βρομέω/βρομῶ(音を立てる、騒ぐ)の系列と、ヘレニズム期の βρωμῶ(ひどい臭いがする)が重なって「臭い、汚れ」の意味を前に出した語で、そこから βρώμικος は物が汚れていることにも、後ろ暗く不正な事柄にも使われるようになった。
派生語・関連語に βρόμα(悪臭、汚れ)、βρομώ(悪臭がする)、βρομιά(汚れ、不潔さ、不正)、βρομίζω(汚す、汚れる)。類義語は ακάθαρτος(不潔な)、対義語は καθαρός(清潔な)。
ギリシャ語:βυσσινής
読み方:ヴィシニス・ヴィシニース
ラテン文字:vyssinis
古代ギリシャ語の βύσσινος(亜麻布の)から。βύσσινος は中世にサワーチェリーを指す βύσσινο へ転じ、その形容詞形が βυσσινής。熟したサワーチェリーのような暗く濃い赤色を表す。ふつうのさくらんぼ色は κερασένιος。
形容詞形には語尾変化する βυσσινής(-ιά, -ί)と、不変化の βυσσινί がある。口語では βυσσινί が広く使われ、名詞としても用いられる。
類義語に κόκκινος(赤)や μπορντό(ボルドー)など。πορφυρός(貝紫色の)より赤みが強く紫みは少ない。
ギリシャ語:βύσσινο
読み方:ヴィシノ・ヴィーシノ
ラテン文字:vyssino
古代ギリシャ語の βύσσινος(亜麻布製の、亜麻布の色をした)の中性形 βύσσινον が、中世ギリシャ語以降に名詞化されてサワーチェリーの果実を指す形として使われるようになった継承語。βύσσινος は古代ギリシャ語の βύσσος(亜麻布、上等な麻布、絹)に -ινος(〜製の、〜由来の)が付いた形容詞で、布地の色合いから「深紅色の」の意味も帯び、深い赤色をしたサワーチェリーの果実の名として定着した。古代の βύσσος 自体はセム語派からの借用語で、ヘブライ語 בּוּץ(būṣ、亜麻布), アラム語 בּוּצָא(būṣā、亜麻布)と同根で、地中海交易を介して古代ギリシャ語に入った古層の語。同じ βύσσος からラテン語 byssus を経て、英語 byssus(イガイ類の足糸)も派生した。
類義語に κεράσι(サクランボ。古代 κεράσιον 由来の継承語で、Prunus avium、甘くて大粒の品種を指す)。βύσσινο はサクランボより小ぶりで酸味の強い Prunus cerasus(スミミザクラ、モレロチェリー類)の果実と、それを煮詰めたシロップ漬けの伝統菓子(γλυκό του κουταλιού)を指す形として広く使う。派生に βυσσινιά(サワーチェリーの木。-ιά は果樹を表す語尾), βυσσινής / βυσσινί(えんじ色の、サワーチェリー色の), βυσσινάδα(サワーチェリーのジュース、シロップ)。合成語に βυσσινόκηπος(サワーチェリーの果樹園)。
ギリシャ語:βωμός
読み方:ヴォモス・ヴォモース
ラテン文字:vomos
印欧祖語で「歩む, 踏み出す」を表した語根にさかのぼる動詞 βαίνω(歩む, 上る)から派生した古代ギリシャ語の名詞 βωμός(段, 台, 祭壇)を継承。一段高くなった場所を指し, そこから神に供物を捧げる台の意味に移った。
同じ βαίνω の語族に βάση(基盤, 土台), βήμα(一歩, 演壇), βάθρο(基壇, 台座), βατός(通行可能な), 合成語 εμβαίνω(入る), διαβαίνω(渡る), αναβαίνω(上る), καταβαίνω(下る)。祭壇まわりの語には θυσία(犠牲, 供物), σπονδή(献酒), ναός(神殿, 教会), ιερό(聖域)が並ぶ。
類義の θυσιαστήριο(犠牲を捧げる場所)は θυσιάζω(犠牲を捧げる)から作られた語で, キリスト教の祭壇 Αγία Τράπεζα(聖卓)を言うのに使うことが多い。βωμός は古代の異教の祭壇に結びつくが, 正教会では聖卓の同義語にもなる。先頭大文字の Βωμός は南天の星座さいだん座を指し, ラテン語 Ara, 英語 Ara, フランス語 l'Autel と同じ「祭壇」の意で, どれも古代の観測者が天に見立てた祭壇。
Γ
ギリシャ語:γαζέλα
読み方:ガゼラ・ガゼーラ
ラテン文字:gazela
フランス語の gazelle(ガゼル)から入った借用語で、そのフランス語は古フランス語の gazel を経てアラビア語の غزال(ガゼル)にさかのぼる。現代ギリシャ語では、この国際的な動物名がそのまま定着した。
γαζέλα はガゼル類を指す語で、ελάφι(シカ)のようなシカ全般の基本語とは区別される。そこから、長い脚や軽やかな身のこなしを連想させて、すらりとした美しい女性やモデルをたとえる語にも広がった。
まれに γκαζέλα(同じ意味の別綴り)とも綴る。語頭の /g/ を二文字で書いた形で、意味の中心は変わらない。
経済の文脈では、アメリカ英語の gazelle company にならった言い方として、短期間で大きく成長する中小企業を指す。動物のすばやさや身軽さを重ねた比喩的な用法である。
主な意味は「ガゼル」。そこから、優雅で細身の美女をほめて言う比喩や、急成長する企業を指す経済用語にも使われる。
ギリシャ語:γάιδαρος
読み方:ガイダロス・ガーイダロス
ラテン文字:gaidaros
γάιδαρος(ロバ)は、アラビア語 gadar / gaidar に由来するとされる借用語。中世ギリシャ語では *γάιδαρος(ロバ)という形が基盤にあり、比較される古い形に γάδαρος(ロバ)や γαϊδάριον(ロバ)がある。そこから現代ギリシャ語の γάιδαρος になった。
雌を言うときは γαϊδούρα(雌ロバ)や γαϊδάρα(雌ロバ)を使う。同義的な別形に γαϊδούρι(ロバ)があり、指小語の γαϊδαράκος(小さなロバ)は小さなロバや親しみをこめた言い方になる。
派生では、γαϊδουροκαλόκαιρο(猛暑、小春日和)のように γαϊδουρο-(ロバ由来の語幹)が合成語の中に現れる。
主な意味は、荷を運んだり車を引いたりする家畜のロバ。大きな耳、忍耐強さ、鈍重さのイメージと結びついて使われやすく、そこから人の耳や忍耐をロバになぞらえて言うこともある。人に向けると、無神経で恩知らずな人物を責める罵倒になる。
γάιδαρος は、鈍重さ、しつこさ、頑固さ、扱いの荒さなどを帯びた語として成句に頻出する。話題にした本人が現れることを言ったり、責任の押しつけや不当な処罰を皮肉ったり、大仕事の大半が終わったことを言ったりするときにも出てくる。
ギリシャ語:γαϊδουροκαλόκαιρο
読み方:ガイドゥロカロケロ・ガーイドゥロカロケロ
ラテン文字:gaidourokalokero
γάιδαρος(ロバ)と καλοκαίρι(夏) の合成語。構成要素の γάιδαρος は、古代ギリシャ語の κάνθων(荷役獣)が中世ギリシャ語で γαϊδάριον となり、現在の形に至った語。
接頭辞的に使われる γαϊδουρο- は「ロバのような」から転じて「しつこい、過度な」という意味を付加する。直訳すると「ロバの夏」。
猛暑の意味では、より気象用語に近い καύσωνας(熱波)がある。小春日和の意味では、μικρό καλοκαιράκι(小さな夏)という言い方もある。
主な意味は耐え難いほどの猛暑。また、秋に訪れる小春日和も指す。真夏ならしつこく居座る暑さ、秋なら去り際に戻ってくる夏の暑さで、どちらもロバの頑固さになぞらえた表現。
ギリシャ語:γαλάζιο
読み方:ガラジオ・ガラージオ・ガラズィオ・ガラーズィオ
ラテン文字:galazio
形容詞 γαλάζιος(空色の)の中性単数形。色名として名詞的に用いられる。
空色、青色を指す色名。
ギリシャ語:γαλάζιος
読み方:ガラジオス・ガラージオス・ガラズィオス・ガラーズィオス
ラテン文字:galazios
ヘレニズム期の κάλαϊς(カライス、トルコ石)が起源。κ から γ への有声化や半母音化などの音韻変化を経て、中世ギリシャ語では動詞形が生まれ、そこから形容詞 γαλάζιος(空色の)が派生して現在の形に定着した。
一般的・客観的に「空色」を表す日常語で、類義語の γαλανός(ガラノス)はより詩的な響きがあり、澄んだ瞳の色などを形容する場面で好まれる。
雲ひとつない空のような明るい青色を指す形容詞。中性単数形 γαλάζιο は「空色」「青色」を表す色名としても用いられる。また複数形で青い服を指したり、大文字の Γαλάζιοι はビザンツ帝国の競馬における青党(ベネトイ)を指す歴史用語としても使われる。
ギリシャ語:γαλανό
読み方:ガラノ・ガラノー
ラテン文字:galano
形容詞 γαλανός(澄んだ青の)の中性単数形。色名として名詞的に用いられる。
澄んだ明るい青色を指す色名。
ギリシャ語:γαλανός
読み方:ガラノス・ガラノース
ラテン文字:galanos
トルコ石を指す κάλαϊς(カライス)から派生したヘレニズム期の語 καλλεανός(カレアノス)が語源。中世に語頭の κ が γ に変化して γαλεανός となり、さらに母音の連続を避けるために ε が脱落して現在の γαλανός(澄んだ青の)の形に定着した。
同じ κάλαϊς を語源とする γαλάζιος と比べ、より詩的な響きがあり、空や海の澄んだ自然の青を強調する場面で好まれる。
γαλανός と λευκός(レフコス、白い)の合成語 γαλανόλευκη(ガラノレフキ、青と白)は、ギリシャ国旗の通称として広く使われる。1822年の国旗制定時、ギリシャの空と海を象徴する詩的な「青」として γαλανός が選ばれた。
現在のギリシャ国旗の青はかなり濃い色合いだが、公式な色は時代によって変化しており、より明るい青が使われた時期もあった。γαλανόλευκη という名称は特定の色味の指定ではなく、国土の自然を象徴する文化的な呼称として定着している。
空や海の澄んだ明るい青色を形容する語。中性単数形 γαλανό は色名としても用いられる。青い目の持ち主を指すほか、ギリシャ国旗の通称 γαλανόλευκη(青と白)にもこの語が用いられている。
ギリシャ語:γαλαξίας
読み方:ガラクシアス・ガラクシーアス
ラテン文字:galaxias
ギリシャ語:γαλήνη
読み方:ガリニ・ガリーニ
ラテン文字:galini
ギリシャ語:Γαλλία
読み方:ガリア・ガリーア
ラテン文字:gallia
ラテン語 Gallia からの借用。現代ギリシャ語では近代以降、フランスの正式な国名として定着した。Gallia は Gallus(ガリア人)に土地を表す -ia を付けた形で、古代のガリア、つまり現代のフランス、ベルギー、スイス北部、北イタリア一帯にまたがったケルト人の地域を指した。ローマ帝国が使ったこの名は、中世以降のヨーロッパでもラテン語文献で「フランス」を指す名として受け継がれた。
Gallus の起源はケルト諸語の語と結びつくとされ、印欧祖語で「呼ぶ、叫ぶ」を表す語根につなぐ説もあるが、確定していない。古代ギリシャ語では、ガリア人を Γαλάται、その土地を Γαλατία と呼んだ。小アジア中央部にも紀元前3世紀に移住したケルト人の一派が住んだ地域があり、そこも Γαλατία と呼ばれる(新約聖書「ガラテヤ人への手紙」のガラテヤはこちら)。
派生・関連語に Γάλλος(フランス人男性)、Γαλλίδα(フランス人女性)、γαλλικά(フランス語)、γαλλικός(フランスの)、γαλλοφιλία(フランス好き、親仏)。
ギリシャ語:γαρίφαλο
読み方:ガリファロ・ガリーファロ
ラテン文字:garifalo
古代ギリシャ語の καρυόφυλλον(丁子、文字通り「クルミの葉」)に由来する。この語がラテン語 caryophyllum、ベネチア語 garofolo を経て、中世ギリシャ語で γαρόφαλο / γαρίφαλο として再導入された。
当初は香辛料のクローブを指していたが、カーネーションがクローブに似た香りを持つことから、のちに花のカーネーションも指すようになった。英語の clove も同じ καρυόφυλλον から来た語で、carnation もこの系統に由来するとする説がある。
カーネーションの花を指すほか、開いたカーネーションの形に見立てた比喩としても使われる。また、香辛料のクローブ(丁子)も指す。
ギリシャ語:γάτα
読み方:ガタ・ガータ
ラテン文字:gata
中世ラテン語の gatta(猫、雌猫)がヴェネツィア語の gata(猫)を経て、中世ギリシャ語の γάτα(猫)や κάττα(猫)に入った借用語。現代ギリシャ語ではこの γάτα(猫)の形が定着し、日常語の「猫」を表す基本語になった。
文法上は女性名詞だが、日常語では雄猫も含めた猫全般を指す。雄を言い分けるときは γάτος(雄猫)という。くだけた近い呼び方として γαλή(猫を言う別の語)や ψιψίνα(猫を呼ぶ愛称のような語)も並べられる。
指小語の γατάκι(子猫、小さな猫)と γατούλα(かわいい猫、小さな猫)は、人について「甘え上手でかわいらしい女性」を言う比喩にも使われる。指大語の γατάρα(大きな猫、印象の強い猫)は猫を強調して言う形。
主な意味は猫。飼い猫、野良猫、品種名を伴う猫まで広く指し、喉を鳴らす、鳴く、忍び足で歩くといった猫らしい動作と結びついて使われる。比喩では、嫉妬深い女や甘え上手な女を猫に重ねる言い方があり、さらに頭の回転が速く、柔軟で、困難をうまく切り抜ける人を指して「切れ者」と言うこともある。
猫は成句や迷信にもよく現れる。黒猫が不吉だとする δεισιδαιμονία(迷信)が知られ、人についての γάτα は τσακάλι(ジャッカル、切れ者、やり手)に近い「抜け目のない切れ者」にもなる。σκύλος(犬、イヌ、雄犬)と並べて対照させる言い方も多い。
ギリシャ語:γαύρος
読み方:ガヴロス・ガーヴロス
ラテン文字:gavros
魚の γαύρος(アンチョビ)は、古代ギリシャ語の ἔγγραυλίς(ヨーロッパアンチョビ)にさかのぼる。これがビザンツ期の ἔγγραυλος(イワシ、アンチョビの類)となり、音の入れ替わりや同化を経て、現代ギリシャ語の γαύρος になった。学名 Engraulis encrasicholus の属名 Engraulis も、この古い語形とつながる。
樹木の γαύρος(シデノキ)は、魚の語義とは別系統と考えられている。γάβρος / γράβος(シデノキ)のような古い形と結びつけられ、シデノキを指す異形や地方形が、現在の発音に寄って γαύρος と重なったものとみられる。
日常語で広く「魚」を表す基本語は ψάρι(魚)で、γαύρος はその中でも群れで泳ぐ小型の海の魚を指す。近い小魚として σαρδέλα(イワシ)があり、どちらも食卓にのぼる身近な魚だが、γαύρος はアンチョビの類をいう。樹木の意味では δέντρο(木、樹木)の一種として使われる。指小語に γαυράκι(小さなアンチョビ、小ぶりの γαύρος)もある。
ギリシャ語:γείτονας
読み方:イトナス・イートナス・ギトナス・ギートナス・イトナス・イートナス
ラテン文字:geitonas
古代ギリシャ語の γείτων(隣人、近所の人)の対格 γείτονα を経て、中世ギリシャ語の γείτονας(隣人、近所の人)が成立し、現代ギリシャ語の γείτονας に至った。
同じ語は英語の neighbour / neighbor に相当する。より形式的に「近隣住民」を指す περίοικος などもあるが、日常会話では γείτονας が最も一般的である。
女性形 γειτόνισσα も、中世に古代ギリシャ語の語幹 γειτον- に接尾辞 -ισσα が付いて成立した。親しみを込めた指小語 γειτονάκι もある。
主な意味は「隣人、近所の人」。同じ近所に住んでいる人を指し、複数形では比喩的に「隣国の人々」を表すこともある。
ギリシャ語:γέλιο
読み方:イェリョ・イェーリョ・ゲリョ・ゲーリョ
ラテン文字:gelio
γέλιο(笑い、笑い声)は中世ギリシャ語の γέλιο(笑い、笑い声)に由来する。現代ギリシャ語では、顔に出る笑いと、耳に聞こえる笑い声の両方をひとまとめに言う基本語として使われている。
χαρά(喜び)や κέφι(上機嫌、陽気な気分)は感情や気分そのものを言う語だが、γέλιο はそれが表情や声として外に出た状態を指しやすい。口元だけの χαμόγελο(微笑み)よりも大きく、表情や声の動きを伴う笑いに合う。比較される語に γέλως(笑い)という形もある。
主な意味は「笑い、笑い声」。自然にこぼれる笑いから、皮肉や気まずさを含んだ笑い、響きとして聞こえる笑い声まで広く言える。複数形の γέλια(大笑い、笑いの連続)では、その場が笑いで満ちることや、どっと笑いが起こることも表す。
ギリシャ語:γελώ
読み方:イェロ・イェロー・ゲロ・ゲロー
ラテン文字:gelo
ギリシャ語:γενέθλια
読み方:イェネスリャ・イェネースリャ・イェネトゥリャ・イェネートゥリャ・ゲネスリャ・ゲネースリャ・ゲネトゥリャ・ゲネートゥリャ
ラテン文字:genethlia
ギリシャ語:γένια
読み方:イェニャ・イェーニャ・ゲニャ・ゲーニャ
ラテン文字:genia
古代ギリシャ語の γένειον(ゲネイオン:顎、顎ひげ)の指小辞形が変化し、中世ギリシャ語の γένιν(顎、顎ひげ)を経て現在の形に至る。英語の chin(顎)やラテン語の gena(頬)と語源を共有し、いずれも「顎」を意味する印欧語の語根から生まれた。解剖学用語の genial(下顎骨の)も同じ流れにある。
μούσι(顎ひげ)は主に顎部分のひげ、μουστάκι(口ひげ)は鼻の下のひげを指すのに対し、γένια は顔の下半分のひげ全般を区別せずに指すことが多い。長く伸ばしたひげは一般に γενειάδα と呼ばれる。頭髪全体は μαλλιά、個別の毛は τρίχα で表す。
なお、綴りは同じだがストレスの位置が異なる γενιά(イェニャー/ゲニャー:世代、一族)はまったく別の語で、語源も異なる。
男性の顔の下半分に生える毛の総称で、顎ひげ、頬ひげ、口ひげを区別せずに指すことが多い。単数形 γένι は特に顎ひげを指す。
ギリシャ語:γενιά
読み方:イェニャ・イェニャー・ゲニャ・ゲニャー
ラテン文字:genia
古代ギリシャ語の γενεά(ゲネアー、生まれ、血筋、世代)を起源とし、中世ギリシャ語の γενιά(世代)を経て現在の形に至る。英語の generation やフランス語の génération と同じ語源から生まれた語で、「生む」を意味する印欧語の語根に行き着く。
なお、綴りは同じだがストレスの位置が異なる γένια(イェニャ/ゲニャ:ひげ)という語があり、こちらは γένι(あごひげ)の複数形でまったく別の語。
同義語に σοΐ(家系・一族)や、より口語的な φάρα(一族・徒党)がある。特定の世代を表す表現として、μπιτ γενιά(ビート・ジェネレーション)や χαμένη γενιά(失われた世代)もよく知られている。
同時期に生きる人々の集団、共通の家系、約30年の時間単位、技術の進歩段階など、さまざまな場面で用いられる。日本語でもおなじみの「ジェネレーション」にあたる語で、日常会話から生物学まで幅広い。
ギリシャ語:γενναίος
読み方:イェネオス・イェネーオス・ゲネオス・ゲネーオス
ラテン文字:gennaios
ギリシャ語:γέννηση
読み方:イェニシ・イェーニシ・ゲニシ・ゲーニシ
ラテン文字:gennisi
動詞 γεννώ / γεννάω(産む, 生む)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γέννησις(誕生, 出生)を経て, 中世ギリシャ語の γέννηση を継承。古代 -σις が -ση に変わった形が中世から定着した。
派生に γεννητικός(生殖の), γεννητούρια(出産祝い), γεννησιά(誕生の時, 生まれ)。同じ語族に γέννα(出産), γεννήτορες(両親), γενέθλια(誕生日), γενιά(世代, 一族), γένος(種族, 性)。
誕生日を指すときは γενέθλια を使う。
ギリシャ語:γεράκι
読み方:イェラキ・イェラーキ・ゲラキ・ゲラーキ
ラテン文字:geraki
鳥名としての γεράκι は、中世ギリシャ語 γεράκιν(タカ、ハヤブサ)にさかのぼる。政治や軍事の文脈で「タカ派」を指す用法は、英語の hawk に対応して広がった。
中性形の γεράκι が基本形で、雄を表す形として γέρακας(オスのタカ、ハヤブサ)、雌を表す形として γερακίνα(メスのタカ、ハヤブサ)も使われる。
主な意味は、鋭い視力をもつ昼行性の猛禽。そこから、獲物を狙うように利に群がる人や、好戦的な将軍・政治家を指す比喩にも広がる。強欲な人を指す用法は κοράκι(カラス)と近く、政治では平和志向の περιστερά(ハト)と対置される。
ギリシャ語:Γερμανία
読み方:イェルマニア・イェルマニーア・ゲルマニア・ゲルマニーア
ラテン文字:germania
古代ギリシャ語の Γερμανία(ゲルマン人の地)に由来。元はラテン語 Germania からの借用で、古代ローマが中欧のゲルマン諸族の居住地を呼んだ地名。
派生語に Γερμανός(ドイツ人男性), Γερμανίδα(ドイツ人女性), γερμανικός(ドイツの), γερμανικά(ドイツ語)。元素の γερμάνιο(ゲルマニウム)は 19 世紀にこの国名から作られた名前。
英語 Germany も同じラテン Germania から。
ギリシャ語:γέρος
読み方:イェロス・イェーロス・ゲロス・ゲーロス
ラテン文字:geros
γέρος(老人、年老いた人)は、古代ギリシャ語の γέρων(老人)に由来する語で、中世ギリシャ語を経て現在の形に至った。いまのギリシャ語でも、年をとった人をかなり直接に言う基本語の一つである。
ηλικία(年齢)が年数や人生段階を言うのに対して、γέρος はその高い年齢を持つ人そのものを指す。より中立的に言いたいときは ηλικιωμένος(高齢の)のような語が選ばれやすい。
主な意味は「老人」「年老いた人」。形容詞的に「老いた」とも使われ、口語では父親や高齢の配偶者を指す言い方にもなる。
ギリシャ語:γεύση
読み方:イェフシ・イェーフシ・ゲフシ・ゲーフシ
ラテン文字:gefsi
動詞 γεύομαι(味わう)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γεῦσις(味わうこと, 味覚)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γεύση の形になった。
派生に γευστικός(味覚の, 味のある, おいしい), γευστικότητα(味の良さ)。同じ語族に άγευστος(味のない), αγευσία / αγευστία(味覚消失)。合成語に γευσιγνωσία(鑑味, テイスティング), γευσιγνώστης(鑑味家, テイスター)。
ギリシャ語:γέφυρα
読み方:イェフィラ・イェーフィラ・ゲフィラ・ゲーフィラ
ラテン文字:gefyra
古代ギリシャ語の γέφυρα(橋)を継承。起源は印欧系ではなく、ギリシャ以前からこの地で話されていた古い言語か、小アジアのアナトリア諸語からの借用とする説が有力。古代ギリシャ内にも方言差があり、ボイオティアでは βέφυρα、クレタでは δέφυρα、ラコニア(スパルタ周辺)では δίφουρα と呼んだ。古アルメニア語 kamurǰ(橋)、ハッティ語 ḫamuruwa(梁)とも比較される。
船の艦橋、歯科のブリッジ、ネットワーク機器のブリッジなどでの使い方は、フランス語 pont、英語 bridge からの意味借用で近代に加わった。
派生語に γεφυρώνω(橋を架ける、橋渡しする)、γεφύρι(小さな橋)。複合語に πεζογέφυρα(歩道橋)、αερογέφυρα(空輸)、σιδηροδρομική γέφυρα(鉄道橋)。
ギリシャ語:γη
読み方:イ・イー・ギ・ギー
ラテン文字:gi
ギリシャ語:γητειά
読み方:イティア・イティアー・ギティア・ギティアー
ラテン文字:giteia
ギリシャ語:γιαούρτι
読み方:ヤウルティ・ヤウールティ
ラテン文字:giaourti
トルコ語の yoğurt に由来。英語 yogurt など多くの言語に取り入れられた語で、ギリシャ語にはバルカン半島のトルコ語方言またはアルーマニア語(ブラフ語)を経由して入った。ブルガリア語 yagurt、ルーマニア語 yaurt も同じ語源。日本で馴染み深い「ヤクルト」も、エスペラント語で「ヨーグルト」を意味する jahurto をもとにした商品名で、同じトルコ語に行き着く。
トルコ語 yoğurt の中間音 [ğ] は、ギリシャ語に取り込まれる際に消失、あるいは滑らかな発音へと変化している。指小語 γιαουρτάκι は少量のヨーグルト、または可愛らしい言い方として使われる。
ギリシャ語:γιασεμί
読み方:ヤセミ・ヤセミー
ラテン文字:giasemi
ギリシャ語:γιατρός
読み方:ヤトゥロ・ヤトゥロー
ラテン文字:giatros
古代ギリシャ語の ἰατρός(医者。動詞 ἰάομαι「治療する、癒やす」から行為者を作る接尾辞 -τρός を付けた形)を継承。中世ギリシャ語で語頭の無アクセント i- が後続母音との衝突を避けて滑音 [j] となり、γ- が前接して γιατρός の形が生まれた。古形 ἰατρός もそのまま ιατρός として学術借用で残り、改まった場面や医学用語で用いられる。英語の接頭辞 iatro-(治療)や接尾辞 -iatry(psychiatry「精神医学」), -iatrics(pediatrics「小児科学」)はこの ἰατρός を新ラテン語経由で受け継いだ学術借用。
類義語に ιατρός(医者。古形を保った硬い形で、公式・学術の文脈で使う)。γιατρός は医者を指すふつうの形として広く使う。文法上は男性名詞だが、男女共通の通性名詞として用いられ、冠詞で性を区別する(ο γιατρός / η γιατρός)。俗語的な女性形に γιατρίνα, γιάτρισσα, γιατρέσα。派生に γιατρεύω(治療する、癒やす), γιατρικό(薬、治療法), γιατρειά(治療、治癒), γιατρείο(診療所), αγιάτρευτος(治せない、不治の)。合成語に οδοντογιατρός(歯科医), τρελογιατρός(精神科医。俗称), γιατροσόφι(民間療法), γιατροπορεύω(治療する、世話をする)。
ギリシャ語:γιορτή
読み方:ヨルティ・ヨルティー
ラテン文字:giorti
古代ギリシャ語の ἑορτή(祭り、祝日)に由来する。中世ギリシャ語の段階で eo の連続が jo に寄る音変化を起こし、現代ギリシャ語では γιορτή(祭り、祝日)になった。文語では古い形を保った εορτή(祝日、祝祭)も並行して使われる。
複数形の οι γιορτές(祝祭期、ホリデーシーズン)は、クリスマスから新年にかけての祝祭期をまとめて言うときの定番表現。διακοπές(休暇、バカンス)は学校や仕事の休み、旅行や休暇そのものを言いやすく、γιορτή のような祝祭性は前面に出ない。
感情そのものとしての「喜び」は χαρά(喜び)が自然で、γιορτή は人が集まって祝う場、そのための日、その場に漂うお祭りらしさを表しやすい。
公開の催しとしての祭りや式典、記念日、教会暦の祝日や名の日を広く表す語。複数形では年末年始の祝祭期を指すことが多い。比喩的には、華やかさや喜びに満ちた状態も言える。
ギリシャ語:γκρι
読み方:グリ・グリー
ラテン文字:gkri
フランス語の gris(灰色)に由来する借用語。英語の gray / grey もゲルマン祖語で「灰色」を意味する同じ語から派生している。
現代ギリシャ語では性・数・格によって語形が変化しない不変化形容詞として定着している。同じフランス語由来の色名 μπεζ(ベージュ)も同様の特徴をもつ。
白と黒の中間色全般を指す。古代ギリシャ語には φαιός(灰色の、暗い)という語があったが、現代の日常ではこの γκρι が最も広く使われる。
同じ灰色を表す σταχτής は στάχτη(灰)から派生した口語的な語で、灰そのものの色合いを感じさせる。一方、γκρι はニュートラルな「グレー」として色名全般に使われる。形容詞としてはこの γκρι のほかに、語形変化をもつ γκρίζος(グレーの)もある。
形容詞と同じ形で中性名詞としても使われ、灰色という色そのものを指す(το γκρι)。
白と黒の中間にある色を表す。明暗の幅が広く、σκούρο(暗い)や ανοιχτό(明るい)を付けてダークグレーやライトグレーを表す。
ギリシャ語:γκρίζος
読み方:グリゾス・グリーゾス
ラテン文字:gkrizos
ヴェネツィア語の griso(灰色)に由来する借用語。古期フランス語の gris や英語の gray / grey とも語源を共有しており、いずれもゲルマン祖語で「灰色」を意味する語に由来する。
同じく灰色を表す γκρι がフランス語からの直接の借用で不変化なのに対し、γκρίζος はギリシャ語の形容詞語尾 -ος/-α/-ο をもち、修飾する名詞の性・数・格に応じて語形が変化する。
同じ灰色を表す語に σταχτής がある。σταχτής は στάχτη(灰)から派生した口語的な語で、灰そのものの色合いを感じさせる。一方、γκρίζος と γκρι は白と黒の中間色を広く指す日常語として使われる。
中性単数形の γκρίζο は名詞としても用いられ、灰色という色そのものを指す(το γκρίζο)。
灰色を表す最も一般的な形容詞のひとつ。比喩的に、暗い見通しや悲観的な態度を表すのにも使われる。
ギリシャ語:γλάρος
読み方:グラロス・グラーロス
ラテン文字:glaros
古代ギリシャ語の λάρος(海鳥、カモメ)が、中世ギリシャ語で γλάρος(カモメ)となり、現代ギリシャ語でもそのまま続いている。鳥類の学名に見える Larus も、このもとの形に対応する。
より広く「鳥」を指す日常語は πούλι(鳥)で、ややくだけた言い方として γλαροπούλι(カモメ)も使われる。指小形の γλαράκι(小さなカモメ、カモメちゃん)は、そのまま愛称っぽく使える。
主な意味は、海辺や港などの沿岸部でよく見られるカモメ。白い羽毛に、背の灰色や黒っぽい色、長い翼、やや曲がったくちばし、水かきのある足といった特徴と結びついて使われる。
成句では、食べ方の激しさをたとえる σαν γλάρος(カモメのように)や、期待しても無駄だと皮肉る言い回しがある。
ギリシャ語:γλυκό
読み方:グリコ・グリコー
ラテン文字:glyko
形容詞 γλυκός(甘い)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。中世ギリシャ語で、すでに「甘いもの、菓子」の意味で使われていた形が、そのまま現代ギリシャ語に残っている。
γλυκό は一個の菓子や一皿のデザートにも使えるが、ふつうは複数形 γλυκά(菓子類、甘いもの)で「お菓子」「甘いもの全般」をまとめて言うことが多い。家庭で作る焼き菓子から店で買うデザートまで、広い範囲を自然に包みこむ言い方になる。
γλυκά του ταψιού(オーブン焼きのシロップ菓子)は、天板や型に入れて焼く甘い菓子をまとめて言う表現。γλυκό του κουταλιού(果物や花の砂糖煮、スプーン菓子)は、βύσσινο(サワーチェリー)や κεράσι(サクランボ)などの果物、ときに τριαντάφυλλο(バラ)の花びらを砂糖で煮た保存菓子を指す。
主な意味は「菓子」「甘いもの」「デザート」。砂糖や甘味料を使った広い意味の甘い食べ物を指し、家で作る菓子、店で買う洋菓子、食後のデザート、来客に出す保存菓子まで含めて使える。
ギリシャ語:γλυκόριζα
読み方:グリコリザ・グリコーリザ
ラテン文字:glykoriza
中世ギリシャ語の γλυκύρριζα(甘い根)に由来する。前半の γλυκό-(甘い)は γλυκός(甘い)とつながり、後半の ρίζα(根)がこの植物の根を指す。現代ギリシャ語では γλυκόριζα と γλυκόρριζα(別綴り)の両方の綴りが使われる。
主な意味はリコリス、甘草。学名は Glycyrrhiza glabra。草本植物そのものを指し、その根はやわらげたり落ち着かせたりする性質があるものとして、主に薬用や菓子づくりに使われる。
ギリシャ語:γλυκός
読み方:グリコス・グリコース
ラテン文字:glykos
γλυκός(甘い)は古代ギリシャ語の γλυκύς(甘い)に由来する。中世ギリシャ語では、ほかの形容詞とそろう形で γλυκός(甘い)となり、そのまま現代ギリシャ語に受け継がれた。
味を表す基本的な形容詞には、γλυκός(甘い)のほかに πικρός(苦い)、ξινός(酸っぱい)、αλμυρός(塩辛い、しょっぱい)がある。名詞としては、それぞれの中性形 το γλυκό(甘味)、το πικρό(苦味)、το ξινό(酸味)、το αλμυρό(塩味)が並び、味を対比して言い分けるときの土台になる。
γλυκός は合成語の前要素にもなり、味の甘さを表すときは γλυκοπατάτα(サツマイモ)、γλυκόξινος(甘酸っぱい)、γλυκόπικρος(甘苦い、ほろ苦い)、γλυκόριζα(リコリス)のような語を作る。比喩では、γλυκόηχος(音が甘美な)、γλυκόλαλος(やさしい口調の)、γλυκοκοιτάζω(やさしい、あるいは色っぽい目で見る)のように、やわらかさや愛情のこもった感じを加える前要素としても使われる。
指小形には γλυκούτσικος(ちょっと甘い、かわいらしい)と γλυκούλης(かわいらしい、感じのよい)があり、とくに人について「かわいらしい」「やさしくて感じがよい」という気持ちをこめて言うときに使う。副詞形は γλυκά(やさしく、穏やかに)で、さらにくだけた形として γλυκούτσικα(やさしく、かわいらしく)、γλυκούλικα(やさしく、かわいらしく)もある。
主な意味は味の甘さ。そこから、塩気のない味や淡水、食べておいしいこと、光や風や記憶が心地よいこと、人が優しく愛らしいことまで広がる。中性形の το γλυκό(甘味)は、味覚のひとつとしての「甘味」を指す。
ギリシャ語:γλύπτης
読み方:グリプティス・グリープティス
ラテン文字:glyptis
古代ギリシャ語の動詞 γλύφω(彫る、刻む)から派生した γλύπτης(彫刻家)に由来。先頭大文字の Γλύπτης はちょうこくしつ座(南天の星座)を表す。
ギリシャ語:Γλυφείον
読み方:グリフィオン・グリフィーオン
ラテン文字:glyfeion
古代ギリシャ語の γλυφεῖον(彫る道具、彫刻刀)に由来。γλύφω(彫る、刻む)に道具を表す接尾辞 -ειον を付けた語で、現代ギリシャ語で彫刻刀を表すふつうの語は σμίλη や καλέμι。
18世紀にフランスの天文学者ラカーユが Δίκτυον(レチクル座)などとともに南天に配した星座のひとつで、彫刻家の道具を記念してラテン語 Caelum Sculptoris(彫刻家の彫刻刀)と名付けた。新しい星座なので神話はない。英語 glyph は同じ γλύφω から派生した γλυφή(彫り、刻み)を経て入った語。
ギリシャ語:γλώσσα
読み方:グロサ・グローサ
ラテン文字:glossa
古代ギリシャ語の γλῶσσα(舌、言語)を継承。μητέρα γλώσσα(母語), νεκρή γλώσσα(死語), ξύλινη γλώσσα(官僚的で空疎な言葉づかい)など、言語にまつわる現代の言い回しはフランス語・英語からの意味借用で入っているものが多い。
派生語に γλωσσικός(言語の), γλωσσολογία(言語学), πολύγλωσσος(多言語の、多言語話者), γλωσσομαθής(外国語に通じた)。関連語に διάλεκτος(方言), ιδίωμα(土地言葉、言い回し)。英語 glossary, glottis, polyglot も同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:γλωσσολογία
読み方:グロソロイア・グロソロイーア
ラテン文字:glossologia
フランス語 linguistique の訳として、近代ギリシャ語で γλώσσα(言語、舌)と -λογία(学、論)をもとに作られた語。中世ギリシャ語に同じ形の γλωσσολογία(おしゃべり、くだらない話)があったが、現代の「言語学」とは別もの。
関連語に γλωσσολόγος(言語学者), γλωσσολογικός(言語学の), κοινωνιογλωσσολογία(社会言語学), νευρογλωσσολογία(神経言語学)。
英語 linguistics もラテン語 lingua(舌、言語)をもとに作られた。
ギリシャ語:γνώση
読み方:グノシ・グノーシ
ラテン文字:gnosi
印欧祖語で「知る」を表す語根にさかのぼる動詞 γιγνώσκω(知る)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γνῶσις(知識)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γνώση の形になった。英語の gno- を含む gnostic, diagnosis, prognosis, recognize も同じ語族。
同じ語族に動詞 γνωρίζω(知る, 知らせる), γνωστός(知られている, 知人), γνωστικός(認識の, 知的な), γνώμη(意見, 判断), γνώμων(指標), άγνοια(無知), αναγνώριση(認識)。合成語に επίγνωση(自覚), διάγνωση(診断), πρόγνωση(予後, 予測), γνωσιολογία(認識論)。
μάθηση(学習)は学ぶ過程, παιδεία(教育, 教養)は全人格的形成, σοφία(知恵)は知を正しく使う洞察を指す。
ギリシャ語:γνωστός
読み方:グノストス・グノストース
ラテン文字:gnostos
ギリシャ語:γούρι
読み方:グリ・グーリ
ラテン文字:gouri
トルコ語の uğur(良い兆し、幸運)に由来する。語頭の無アクセントの [u] が異化により脱落し、現代ギリシャ語の γούρι となった。
派生語に γουρλής(幸運を運ぶ人)、γουρλίδικος(幸運をもたらすような)、γουριάζω(幸運をもたらす、縁起を担ぐ)がある。
幸運をもたらすと信じられている縁起物やジンクスを指す。単なる運を表す τύχη とは異なり、特定の物や事象に結びついた幸運を意味する。対義語は γρουσουζιά(不運、縁起の悪さ)。
ギリシャ語:γράμμα
読み方:グラマ・グラーマ
ラテン文字:gramma
古代ギリシャ語の γράμμα(書かれたもの、文字)を継承。動詞 γράφω(書く)に -μα を付けた名詞。古代から、一つの文字、書類や手紙、複数形 γράμματα で「書物」「読み書き」「学問」まで幅広く指した。
同じ語根から γραμμή(線)。派生語に γραμματέας(秘書), γραμματική(文法), γραμμάριο(グラム、重量単位)。英語 grammar はこの γραμματική(文字を扱う技術)からラテン語・古フランス語を経て入った語で、telegram, diagram, program, epigram のような -gram の付く語もすべて同じ γράμμα から。
ギリシャ語:γραμμή
読み方:グラミ・グラミー
ラテン文字:grammi
ギリシャ語:γρανάτης
読み方:グラナティス・グラナーティス
ラテン文字:granatis
γρανάτης は、近代ヨーロッパ語 garnet / grenat に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、赤系の宝石として知られるガーネットを指す。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が宝石を広く言うのに対して、γρανάτης は個別の宝石名である。
意味は基本的に「ガーネット」「ざくろ石」のみ。宝飾や鉱物標本の文脈で使う。
ギリシャ語:γρανίτης
読み方:グラニティス・グラニーティス
ラテン文字:granitis
γρανίτης は、近代ヨーロッパ語 granite / granit に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、建材や石材として用いられる花崗岩を指す。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が石を広く言うのに対して、γρανίτης は岩石の種類としての花崗岩を言う。μάρμαρο(大理石、マーブル模様) と並んで石材名として現れることが多い。
意味は基本的に「花崗岩」。硬くて粒状の火成岩を指す。
ギリシャ語:γρασίδι
読み方:グラシディ・グラシーディ
ラテン文字:grasidi
γρασίδι は、古代ギリシャ語 γράστις(青草、飼い葉)にさかのぼる語群に属する。そこから γράσσις(青草)を経た指小形が想定され、中世ギリシャ語 γρασίδι を経て、現代ギリシャ語の γρασίδι になった。さらに元をたどると、γράω(食べる、かじる)に結びつく。
近い χορτάρι(草、牧草、芝生、雑草、ターフ)はもっと広く草全般を言える語で、γρασίδι はその中でも短く青い芝を言いやすい。近い語に χλόη(青草、草地、芝生)や χλοοτάπητας(芝生、芝のマット)、γκαζόν(芝生、ローン)もある。
主な意味は、低く青く生えた芝や芝生。そこから、その芝でおおわれた面や地面全体も指し、刈った芝や人工芝にも使える。
公園や庭では、座る、寝転ぶ、転がるといった場面でよく使う。掲示では Μην πατάτε το γρασίδι(芝生に入らないで、直訳「芝を踏まないで」)の形でも見かける。
ギリシャ語:γραφείο
読み方:グラフィオ・グラフィーオ
ラテン文字:grafeio
γραφείο(オフィス、事務所、机)は、γράφω(書く)に関わる語形成からできた語である。現代ギリシャ語では、仕事をする事務所にも、書き物や事務作業をする机にも使われる。
υπάλληλος(職員、社員、事務員) がそこで働く人を言うのに対して、γραφείο はその仕事場を言う。会議や打ち合わせなら συνάντηση(会合、打ち合わせ)がその中で行われる。
意味はオフィス、事務所、机。文脈で部屋にも家具にもなる。
ギリシャ語:γράφω
読み方:グラフォ・グラーフォ
ラテン文字:grafo
古代ギリシャ語の γράφω(刻む、引っかいて描く、書く)を継承。石や板に引っかいて字や絵を刻むことが古代の中心の意味で、道具の変化にともなって「書く」が中心になった。現代の「録音する、録画する」の用法は、英語 record、フランス語 enregistrer からの意味借用。
派生語に γραφή(書き込み、書類), γραφείο(事務所), γραφικός(絵画的な)。同じ語根から γραμμή(線), γράμμα(文字), διαγράφω(線を引く、消す), συγγράφω(執筆する)など。英語 graph, graphic や biography, photography, geography のような -graphy の付く語もすべて同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:γρήγορος
読み方:グリゴロス・グリーゴロス
ラテン文字:grigoros
古代ギリシャ語の ἐγρήγορος(目覚めている)に由来する。中世ギリシャ語では γρήγορος(目覚めている、警戒している)となり、「目が覚めている」状態から、「動作が機敏である」「速い」へと意味が転じた。
現代ギリシャ語の口語では γλήγορος とも言う。
類義語の ταχύς はより硬い表現や科学的な速さに使われ、γρήγορος は日常的な速さを広く指す。対義語は αργός(遅い)、βραδύς(緩慢な)。
主な意味は「速い、素早い」。人や乗り物の移動、仕事や理解の速さ、機器や通信の処理速度など、日常的な速さを広く表す。短時間で物事が済むことや、十分に時間をかけない性急さにも使われる。
ギリシャ語:γυαλί
読み方:ヤリ・ヤリー
ラテン文字:gyali
古代ギリシャ語 ὕαλος(hýalos、ガラス)が起源。中世ギリシャ語で ὑαλίν(hyalín)の形を経て γυαλίν となり、現在の γυαλί に至る。英語の hyaline(ガラス状の、透明な)と同じ語源を持つ。
日常的な「窓ガラス」を指す τζάμι や、より学術的・専門的な響きを持つ ύαλος と意味が近いが、γυαλί は材質そのものや日常品を指す最も一般的な語。
φυσητό γυαλί(吹きガラス)は息を吹き込んで成形する技法とその製品を指し、χυτό γυαλί(鋳造ガラス)は型に流し込んで作る技法を指す。また γυαλί ταμπούρ は弓で弾くタイプのタンプール(弦楽器)を指す。
物質としてのガラスが基本義。口語ではテレビの画面やテレビ業界を換喩的に指すのにも使う。比喩的に、ガラスのように滑らかで光沢のある状態も表す。
γυαλάκι(το)は γυαλί の指小語。
ギリシャ語:γυμναστική
読み方:イムナスティキ・イムナスティキー・ギムナスティキ・ギムナスティキー
ラテン文字:gymnastiki
古代ギリシャ語の γυμναστική(鍛錬の術、γυμναστική τέχνη の略)を継承。形容詞 γυμναστικός(鍛錬の)に τέχνη(術)を補った言い方から τέχνη が落ちた形。動詞 γυμνάζω(鍛える)、さらに γυμνός(裸の)から来ており、古代の鍛錬が裸で行われたことが名前の由来。現代の競技「体操」や学校の「体育」の用法は、フランス語 gymnastique、英語 gymnastics からの意味借用で定着した。
派生語に γυμνάζω(鍛える), γυμναστής / γυμνάστρια(体育教師、体操指導者), γυμναστήριο(体育館、ジム)。関連語に άσκηση(運動、練習)。英語 gymnasium, gymnast は、ラテン語 gymnasium を経て同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:γυναίκα
読み方:イネカ・イネーカ・ギネカ・ギネーカ
ラテン文字:gynaika
印欧祖語で「女性」を表す語根にさかのぼり, 英語 queen(古英語 cwēn から)と同じ語根を共有する古代ギリシャ語 γυνή(女性, 対格 γυναῖκα)を継承。もとの対格形 γυναῖκα が主格として定着し, 中世ギリシャ語を経て今に至る。英語の接頭辞 gyn(o)-(gynecology「婦人科学」, gynoecium「雌蕊」)はこの γυνή から新ラテン語を経て入った学術借用。
類義語に κυρία(〜様、貴婦人。丁寧な言い方), κοπέλα(娘、若い女性), θήλυ(生物学的な雌)。γυναίκα は年齢や立場を問わず成人女性を広く指す。派生に γυναικάρα(強意形。魅力的で堂々とした女性), γυναικάκι(小柄な女性、妻の愛称。また取るに足らない女性を指すこともある), γυναικούλα(愛しい妻、また器の小さい女), γυναικείος(女性の、女性らしい), γυναικίσιος(女性の〜), γυναικίστικος(女性らしい、女々しい), γυναικωνίτης(女性の部屋、ハーレム)。合成語に αντρογυναίκα(男勝りの女性), αντρόγυνο(夫婦), μισογύνης(女性嫌い), βρομογύναικο(ひどい女。蔑称), παλιογύναικο(どうしようもない女。蔑称)。
Δ
ギリシャ語:δαίμονας
読み方:デモナス・デーモナス
ラテン文字:daimonas
古代ギリシャ語 δαίμων(神性、神的な力)に由来。もとは「運命を割り当てるもの」を意味し、善悪を問わない超自然的な存在、神と人間の中間に位置する精霊のような存在を指した。ヘレニズム期以降、キリスト教の影響で「下級の神」から「悪霊」へと意味が変わり、中世ギリシャ語を経て現代の δαίμονας に至る。英語 demon はラテン語 daemon を介してこの語に由来する。
中性形の δαιμόνιο は新約聖書で人に取り憑く悪霊を指し、現代ギリシャ語では「天才的な才能」の意味でも使われる。類義語に διάβολος(悪魔、もとは「中傷者」)、σατανάς(サタン、ヘブライ語からの借用)など。
ギリシャ語:δαμασκηνής
読み方:ダマスキニス・ダマスキニース
ラテン文字:damaskinis
δαμάσκηνο(プラム)に形容詞をつくる接尾辞 -ής が付いた語。δαμάσκηνο は古代ギリシャ語の δαμασκηνόν(プラム)に由来し、その名はシリアの都市ダマスカス(Δαμασκός)から来ている。ダマスカス周辺がプラムの産地として知られていたことから、この果実にダマスカスの名が冠された。
英語の damson(ダマスンプラム)も同じ語源を持つ。ラテン語 prunum damascenum(ダマスカスのプラム)の damascenum が短縮され、古フランス語を経て英語の damson になった。
形容詞形には、語尾変化する δαμασκηνής(-ιά, -ί)と、不変化の δαμασκηνί の2種類がある。口語では不変化の δαμασκηνί が名詞の性・数に関わらず広く使われる。中性形 δαμασκηνί は名詞としても用いられ、プラム色そのものを指す。
δαμάσκηνο の実のような濃い紫色を表す。
ギリシャ語:δαμασκηνί
読み方:ダマスキニ・ダマスキニー
ラテン文字:damaskini
δαμασκηνής の不変化形。名詞の性・数に関わらず「プラム色の」を表す不変化形容詞として、また中性名詞として色そのものを指す。口語では語尾変化する δαμασκηνής より広く使われる。
ギリシャ語:δαμάσκηνο
読み方:ダマスキノ・ダマースキノ
ラテン文字:damaskino
古代ギリシャ語の δαμασκηνόν(ダマスカスのもの)に由来。プラムの主要な産地だったシリアのダマスカス(Δαμασκός)にちなんで果実の名として定着し、中世ギリシャ語 δαμάσκηνον を経て現代の δαμάσκηνο に至る。英語 damson(ダムソン・プラム)、damask(ダマスク織)、damascene(ダマスカスの、象嵌細工の)はいずれも同じダマスカス由来で、damson は後期ラテン語 prūnum damascēnum 経由で入った。
派生語に δαμασκηνιά(スモモの木)、δαμασκηνής(プラム色の、濃い紫色の)。
ギリシャ語:δάσκαλος
読み方:ダスカロス・ダースカロス
ラテン文字:daskalos
動詞 διδάσκω(教える)から派生した古代ギリシャ語の男性名詞 διδάσκαλος(教える人)に由来。中世ギリシャ語で語頭の δι- が脱落した δάσκαλος の形になった。
熟達者や巨匠、芸術の師を「先生」と呼ぶ用法には、フランス語 maître からの意味借用も含まれる。
派生語には δασκάλα(女性形)や διδασκαλία(教義)などがある。教育的、あるいは説教くさいことを意味する διδακτικός もその一つ。
関連語として σχολείο(学校)や μάθημα(授業)などが挙げられる。英語の didactic(教訓的な)も、同じ動詞 διδάσκω から派生した単語。
ギリシャ語:δαχτυλίδι
読み方:ダフティリディ・ダフティリーディ
ラテン文字:dachtylidi
古代ギリシャ語の δακτύλιος(指輪)をもとにした、ヘレニズム期の指小形 δακτυλίδιον(小さな指輪)から来た語。中世ギリシャ語の δαχτυλίδι(ον)(指輪)を経て、現代ギリシャ語の δαχτυλίδι になった。
音韻面では、この過程で子音連続 [kt] が [xt] に変わっている。形のうえでは小ささを表す指小形がもとだが、現代ギリシャ語ではふつうに「指輪」を表す日常語として定着している。
基本の意味は、指にはめる κόσμημα としての指輪。そこから、輪の形をした部品や帯のようなものにも広がり、ピストンリング、シガーバンド、καπνός の輪、輪のようにくるんとした髪を言うのにも使われる。
ギリシャ語:δέηση
読み方:デイシ・デーイシ
ラテン文字:deisi
古代ギリシャ語で「乞う、必要とする」を意味する動詞 δέομαι から派生した名詞 δέησις(請い、祈り)が起源。中世ギリシャ語を経て語末が -σις から -ση に変化し、現代ギリシャ語の δέηση となった。キリスト教の祈祷で中心的に使われる語のひとつで、επιμνημόσυνη δέηση(追悼祈祷)のような複合語にも用いられる。
同じ「祈り」を表す προσευχή が礼拝、感謝、神との対話を含む広い意味での祈りを指すのに対し、δέηση は「乞う」ニュアンスが強く、神への切実な願いや公的な祈祷に用いられる。ικεσία(嘆願)や παράκληση(哀願)と比べても、より儀礼的・教会的な響きがある。
ひとつめの意味は神に対する祈りの行為や公的な祈祷で、特に教会における儀式的な祈りを指す。また、美術用語として、キリストを中心に聖母マリアと洗礼者ヨハネが執り成しの祈りを捧げる図像「デーシス」の意味もある。
ギリシャ語:δείκτης
読み方:ディクティス・ディークティス
ラテン文字:deiktis
文語的には、ヘレニズム期の δείκτης(示すもの、明らかにするもの)を土台にした語。のちにフランス語の indice・indicateur やドイツ語の Anzeiger・Anzeige になぞらえる形で意味が広がり、現代ギリシャ語では「針」「指数」「添字」「指示薬」のように、何かを示したり表したりするもの全般を表すようになった。
「人差し指」の意味は、ヘレニズム期の δεικτικός δάκτυλος(指し示す指)に沿う用法で、フランス語の index に対応する。χέρι(手、腕)の親指の隣にある指を指す。
口語寄りの綴りに δείχτης(「指針」「人差し指」で使われる別綴り)もあり、とくに具体物としての「指針」「人差し指」の意味で使われる。これは語中の /kt/ が /xt/ に寄った形。
主な核にあるのは「何かを指し示すもの」という感覚で、計器の針や指示棒のような具体物から、統計や経済の指数、数学や化学で使う添字・指示薬まで広く表す。固定した言い方では οικονομικός δείκτης(経済指標)や δείκτης νοημοσύνης(知能指数、IQ)がよく使われる。
ギリシャ語:δειλός
読み方:ディロス・ディロース
ラテン文字:deilos
古代ギリシャ語の δειλός(臆病な、気の弱い)に由来。人の性格にも、行動や態度の弱気さにも使う。
類義語に λιγόψυχος, λιπόψυχος(気の小さい)、φοβητσιάρης(怖がりの)、διστακτικός(ためらいがちな)、άτολμος(思い切りのない)など。対義語に γενναίος(勇敢な)、θαρραλέος(勇ましい)、τολμηρός(大胆な)など。
ギリシャ語:δεισιδαίμονας
読み方:ディシデモナス・ディシデーモナス
ラテン文字:deisidaimonas
古代ギリシャ語の δείδω(恐れる)と δαίμων(神霊)の合成語。元来は「神々を畏れ敬う」という肯定的な意味もあったが、のちに「理不尽な恐怖に駆られて神を信じる」という否定的なニュアンスへと変化した。δαίμων の部分は英語の demon(悪魔)と語源を共有する。
類義語の προληπτικός(縁起を担ぐ人、迷信深い人)に比べ、より非合理的で超自然的な力に対する恐れのニュアンスが強い。
派生語として δεισιδαιμονία(迷信)や δεισιδαιμονικός(迷信の、迷信的な)がある。
迷信を信じる人を指す。書き言葉では、考え方や習慣が迷信に基づいていることを表す形容詞としても使われる。
ギリシャ語:δεισιδαιμονία
読み方:ディシデモニア・ディシデモニーア
ラテン文字:deisidaimonia
古代ギリシャ語から引き継がれた語で、δείδω(恐れる)と δαίμων(神霊、超自然的存在)の合成語。もとは「神々への恐れ」を意味した。δαίμων は古代ギリシャ語では善悪を問わない超自然的存在を広く指し、ラテン語の daemon を経て英語の demon(悪魔)の語源にもなった。古代には敬虔さの意味合いも持っていたが、ヘレニズム期を経て否定的なニュアンスが強まり、現代ギリシャ語では非科学的な恐怖に基づく迷信を指すようになった。英語の superstition に相当する。
類義語の πρόληψη(縁起担ぎ、予断)と混同されることが多いが、δεισιδαιμονία はより非合理的で超自然的な力に対する恐れのニュアンスが強い。
δεισιδαίμονας は「迷信深い人」や「迷信深い」を意味し、名詞としても形容詞としても使われる。
偶然の出来事や特定の行為、物体に対して非合理的に超自然的な性質を認め、それらが運命や人生に悪影響を及ぼすと信じること。
ギリシャ語:δενδρολίβανο
読み方:デヌドゥロリヴァノ・デヌドゥロリーヴァノ
ラテン文字:dendrolivano
コイネー・ギリシャ語の δενδρολίβανον(ローズマリー)を受け継いで、現代ギリシャ語の δενδρολίβανο になった語。古い形では、δένδρον(木、樹木)に対応する要素と λίβανος(乳香、香)に対応する要素が合わさった複合語で、樹木のように茂る姿と、樹脂を思わせる強い香りをあわせて表した名と考えられる。
別綴りに δεντρολίβανο(ローズマリー)があり、同義語として δυοσμαρίνι(ローズマリー)も使われる。料理の香りづけに使う地中海のハーブとしては、βασιλικός(バジル) や δυόσμος(スペアミント) と並んで親しまれている。
主な意味は「ローズマリー」。地中海に生える常緑の芳香低木で、紫がかった花と針のような葉をつける。葉は料理や菓子、香料、薬用の材料として使われる。
ギリシャ語:δέντρο
読み方:デドゥロ・デードゥロ・デンドゥロ・デーンドゥロ
ラテン文字:dendro
古代ギリシャ語の δένδρον(木、樹木)に由来し、中世ギリシャ語の δέντρο(ν) を経て現代の形になった。現代ギリシャ語の基本形は δέντρο で、古い形を保った異形として δένδρο という綴りもある。こちらは古風、文語、学術寄りの文脈で見られる。英語の dendro-、dendrology、rhododendron なども、この δένδρον を起源とする。
ξύλο(木材、材木、殴打、お仕置き、薪) が材料としての木を指すのに対して、δέντρο はふつう生えている木、樹木そのものを指す。類義語の θάμνος(低木、灌木) は、主幹がはっきりしない低い木を言うことが多い。比喩では、平和や自由の象徴としての木や、図式的な構造としての樹形図にも広がる。
接頭辞 δενδρο- は樹木に関する語を作り、δενδροδιάγραμμα(樹形図)のような語にも見られる。主な意味は樹木で、そこから系統樹やツリー図にも使われる。
:::vocab
- το δέντρο της γνώσης(知恵の樹)
- το δέντρο της ειρήνης(平和の木)
- το δέντρο της ελευθερίας(自由の木)
- το δέντρο της ζωής(生命の樹)
- χριστουγεννιάτικο δέντρο(クリスマスツリー)
- δέντρο των Χριστουγέννων(クリスマスツリー) :::
:::example
- Στολίζω το χριστουγεννιάτικο δέντρο.
- クリスマスツリーを飾る。
- decorate the Christmas tree :::
ギリシャ語:δευτερόλεπτο
読み方:デフテロレプト・デフテローレプト
ラテン文字:defterolepto
中世ギリシャ語の δευτερόλεπτον(天文学で、角の一分をさらに六十分した単位)が土台にあり、近代にはフランス語 seconde の影響も重なって、現代ギリシャ語の δευτερόλεπτο が日常的な時間の単位として定着した。
ώρα(時間、時刻)が時計の時刻や一時間を言い、χρόνος(時間、時、期間、年、時制、タイム、拍)が時間の流れや長さを広く言うのに対し、δευτερόλεπτο はその中のごく短い一区切りを数える語である。さらに数学では、γωνία(角、隅、アングル材)や弧を測る細かな単位にも使う。
主な意味は時間の単位としての「秒」。そこから転じて「ほんの一瞬」「すぐに」という言い方にもなり、幾何や天文では角度の細かな単位である「角秒」も表す。
速さを強調するときは、σε κλάσμα δευτερολέπτου(ほんの一瞬で)や υπόθεση δευτερολέπτων(ほんの数秒のこと)のような言い回しがよく使われる。
ギリシャ語:δημιουργία
読み方:ディミウルイア・ディミウルイーア・ディミウルギア・ディミウルギーア
ラテン文字:dimiourgia
δῆμος(人民)と ἔργον(仕事)が結びついた古代ギリシャ語の δήμια ἔργα(公共の仕事)にさかのぼる名詞 δημιουργός(職人, 創造者)から動詞 δημιουργώ(創造する)が派生し, その名詞形 δημιουργία を継承。表面的には δημιουργός は δήμιος(公の)と -ουργός(働く者, ἔργον「仕事」から派生した後接辞)の合成にあたる。
古代ギリシャ語の δημιουργός は、まず「職人、手工業者、技芸をもつ者」を指す語だった。ペロポネソス諸邦では「行政官、為政者」を表す用法もあった。さらに哲学の文脈では、プラトン『ティマイオス』で「世界の制作者(デミウルゴス)」として語られ、宇宙を形づくる存在を意味するようになった。このプラトン的な用法がヘレニズム期以降の神学に受け継がれ、キリスト教文化圏での「天地創造」「被造世界」の意味にもつながっている。
派生語に δημιουργός(創造者)、δημιουργώ(創造する)、δημιουργικός(創造的な)、δημιουργικότητα(創造性)、δημιούργημα(創作物)、αναδημιουργία(再創造)など。
ギリシャ語:δημοκρατία
読み方:ディモクラティア・ディモクラティーア
ラテン文字:dimokratia
古代ギリシャ語の δημοκρατία(民衆の支配)を継承。δῆμος(民衆)と κράτος(力、支配)の合成で、古代アテネの政治体制を指した語。近代西洋で政治体制として体系化された「民主主義、民主政」の使い方はフランス語 démocratie、英語 democracy、ドイツ語 Demokratie からの意味借用で整えられた。
派生語に δημοκράτης(民主主義者)、δημοκρατικός(民主的な)、σοσιαλδημοκρατία(社会民主主義)。関連語に κράτος(国家、国家権力)。英語 democracy もラテン語 democratia 経由で同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:δήμος
読み方:ディモス・ディーモス
ラテン文字:dimos
古代ギリシャ語の δῆμος(土地、そこに住む人々、平民)に由来。印欧祖語の「分ける、分かつ」を表す語根に起源を持ち、もとは「区分けされた土地とそこの人々」の意で、土地と住民をひとまとまりに捉える語だった。古代アテネで民衆を表す語として政治語彙の中心になった。
英語 democracy(δῆμος + κράτος「支配」)のほか、epidemic・endemic・pandemic(接頭辞 επί, εν, παν + δῆμος)、demographic(δῆμος + γράφω「書く」)なども同じ語源。
類義語は文脈で分かれ、行政区分としては κοινότητα(コミュニティ、より小規模の自治体)が近いが、現代の区分では δήμος のほうが規模の大きい「市、自治体」を指す。人々の集まりとしては λαός(民衆、国民)がより広く、δήμος は特定の地域に結びつく。派生語に δημοτικός(市の、公立の)、δήμαρχος(市長)、δημαρχείο(市役所)など。
ギリシャ語:δημόσιος
読み方:ディモシオス・ディモーシオス
ラテン文字:dimosios
名詞 δῆμος(民衆)から派生した古代ギリシャ語の形容詞 δημόσιος(公の, 民衆に属する)に由来。古代より私的な ἴδιος に対する「公的な概念」を表した。現代の公共や国家の制度に属することを指す用法は, フランス語 public や英語 public からの意味借用によって整えられたもの。
派生語には δημοσιεύω(公表する、掲載する)、δημοσίευση(公表)、δημοσιογράφος(ジャーナリスト)、δημοσιότητα(公衆の注目)など。対義語に ιδιωτικός(私的な)。関連語には κράτος(国家、国家権力)、κοινωνία(社会)、δημοκρατία(民主主義)など。
ギリシャ語:διάβολος
読み方:ディアヴォロス・ディアーヴォロス
ラテン文字:diavolos
古代ギリシャ語の動詞 διαβάλλω(中傷する、告発する)から派生した名詞で、もとは「中傷者」「告発者」を意味した。δια-(越えて)と βάλλω(投げる)の合成語で、「言葉を投げつける」から「中傷する」の意になったもの。
ヘレニズム期に、ヘブライ語聖書のギリシャ語訳(七十人訳聖書)で、ヘブライ語の śāṭān(敵対者)の訳語にこの語があてられた。キリスト教の広がりとともに「悪魔」「サタン」の意味が定着し、もともとの「中傷者」の意味は失われた。英語の devil は、ラテン語 diabolus を経てこの語に由来する。
現代ギリシャ語の口語形 διάολος(ディアオロス)は、不吉な名前をそのまま呼ぶのを避けるために間音 [v] が脱落した形。
類義語の σατανάς(サタン)はヘブライ語からの直接の借用で、宗教的な文脈で使われることが多い。日常の慣用表現には διάβολος のほうがはるかに頻繁に登場する。
δαίμονας(デモナス)は、古代ギリシャ語では善悪を問わない超自然的存在を指したが、キリスト教の影響で「悪霊」の意味に変わった語で、英語 demon の語源にあたる。中性形の δαιμόνιο(デモニオ)は新約聖書で人に取り憑く悪霊を指し、現代ギリシャ語では「天才的な才能」の意味でも使われる。
Εωσφόρος(エオスフォロス)は「光をもたらす者」の意味で、堕天使ルシファーを指す。
主な意味は悪の精神を具現化した存在としての「悪魔」で、複数形は悪霊全般を、定冠詞付きの単数形は悪魔の長であるサタンを指す。驚きや怒りを表す間投詞や、知恵者・いたずらっ子の比喩としても日常的に使われ、ギリシャ語で最も慣用表現の多い語のひとつ。
指小形は、おもにかわいげのあるいたずらっ子の呼び名として使われる。
ギリシャ語:διαδίκτυο
読み方:ディアディクティオ・ディアディークティオ
ラテン文字:diadiktyo
英語 internet(inter「間を」+ network「網」)を翻訳借用して、現代ギリシャ語内で作られた語。διά-(間を通って)と δίκτυο(網)の合成。
1990 年代半ばにインターネットを指す標準語として広まった経緯がある。口語では ίντερνετ もそのまま使う。
関連語には διαδικτυακός(ネット上の)や ιστοσελίδα(ウェブサイト)のほか、Παγκόσμιος Ιστός(ワールド・ワイド・ウェブ)などが挙げられる。
ギリシャ語:διακοπή
読み方:ディアコピ・ディアコピー
ラテン文字:diakopi
διακοπή は διακόπτω(中断する、断ち切る)からできた名詞で、中断や停止の語義はヘレニズム期の διακοπή を文語的に受け継ぐ。古くは「裂け目、断裂」を表す感覚もあり、そこから、物事の流れや進行が途中で切れて止まる「中断、途絶」の意味に広がった。
複数形の διακοπές(休暇、休み)が「休暇」を表す意味は、フランス語 vacances の複数形にならった意味借用による。現代ギリシャ語では、単数形が中断や供給停止を言いやすく、複数形が休みやバカンスを言いやすい。
単数形の διακοπή は、εργασία(労働、仕事、作業、論文)や授業、交通、水や電気の供給が止まることを表すのに向く。複数形の διακοπές は、学校や議会などの制度的な休み、あるいは人が家を離れて過ごす休暇を表す。
似た場面で使う ταξίδι(旅、旅行、旅立ち、トリップ)が移動そのものを言いやすいのに対し、διακοπές は休む期間やその過ごし方に重心がある。άδεια(許可、休暇)は職場や制度の側から見た「休み」に寄り、有給休暇や病気休暇のように、与えられた休暇を言うときに自然。αργία(休日、休業日)は祝日や定休日のように、その日が休みであることを表しやすい。
αναψυχή(気晴らし、レクリエーション)は心身を休めるためのくつろぎやレジャーを表し、διακοπές の中身に近い。ψυχαγωγία(娯楽、楽しみ)は楽しませる活動や娯楽全般に寄り、休暇そのものを指す語ではない。ανάπαυση(休息)は休む行為や休養の状態に焦点があり、ελεύθερος χρόνος(自由時間、余暇)は働きや義務から離れた時間そのものを言う。
主な意味は、何かが途中で止まること。そこから、断水や停電のような供給停止、話の流れをさえぎること、さらに複数形で学校や議会の休み、人が楽しみや休養のために出かける休暇まで表す。
休暇の語義では、πάω για διακοπές(休暇に行く)、είμαι σε διακοπές(休暇中だ)、καλές διακοπές(よい休暇を)のような言い方が定番。制度としての休みも同じ複数形で表す。
ギリシャ語:διάλεκτος
読み方:ディアレクトス・ディアーレクトス
ラテン文字:dialektos
διάλεκτος(方言)は、ヘレニズム期の διάλεκτος(言語の型、話し方)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、共通語とは区別される地域的な言語変種を指す。
ομιλία(話しことば、スピーチ) が話すこと全体を言うのに対して、διάλεκτος は地域や共同体ごとの型を言う。より大きく言語全体を立てるときは γλώσσα(言語、ことば)が上位に来る。
意味は方言。地域差のある話し方や言語変種を指す。
ギリシャ語:διαλογισμός
読み方:ディアロイズモス・ディアロイズモース・ディアロギズモス・ディアロギズモース
ラテン文字:dialogismos
古代ギリシャ語の διαλογισμός に由来。動詞 διαλογίζομαι に名詞化の接尾辞 -μός がついた語で、その διαλογίζομαι は前置詞 διά(〜を通して)と動詞 λογίζομαι(計算する、考量する)の合成。さらに λογίζομαι は λόγος(言葉、理、筋道)に動詞化の -ίζω がついた形で、計算・勘定と知的な考量の両面を含む語だった。ヘレニズム期の διαλογισμός には「勘定の精算」という具体的な意味と、「熟考、吟味、議論」といった知的な意味が並行してあり、現代ギリシャ語の「瞑想、深い思考」「論理的推理」はこの後者の流れを受け継いでいる。
類義語に σκέψη(思考)、στοχασμός(思索)、συλλογισμός(推論、三段論法)など。
ギリシャ語:διαμάντι
読み方:ディアマディ・ディアマーディ・ディアマンディ・ディアマーンディ・ディアマディ・ディアマーディ
ラテン文字:diamanti
古代ギリシャ語の ἀδάμας(征服しがたい、不屈の)に由来する。中世ラテン語に入って diamas となり、さらにイタリア語の diamante を経て、再びギリシャ語に取り入れられた。もとはギリシャ語だった語がラテン語・イタリア語を回って戻ってきた返り借用語にあたる。語頭が ἀδ- から δια- に変化した背景には、古代ギリシャ語の διαφανής(透明な)の影響があるとされている。
同じ ἀδάμας から英語の diamond や adamant(断固とした)も生まれた。現代ギリシャ語でも αδάμας の形は残るが、専門的な文脈に限られ、日常的には διαμάντι が使われる。
主な意味はダイヤモンド(金剛石)で、硬度と光沢に優れた炭素の結晶体を指す。宝石としての利用のほか、比喩的に非常に澄んだものや、優れた人格の持ち主を形容するのにも使われる。指小語 διαμαντάκι は「小さなダイヤモンド」のほか、愛称として「可愛い人」の意味でも使われる。
ギリシャ語:διάνοια
読み方:ディアニア・ディアーニア
ラテン文字:dianoia
διάνοια は古代ギリシャ語から文語で入った語で、古代ギリシャ語では心の働きや思考を表す語として使われていた。古典語からほぼ同じ形のまま現代ギリシャ語に受け継がれている。
現代ギリシャ語でもその延長で、知性を表すほか、法律では知的創作物を指し、人については非常に聡明な人物をいうのにも使われる。
近い語に νους(精神、心、理性)がある。διάνοια はその中でも、考える力や知的な働き、創造的な才覚を強調したい場面で使いやすい。
主な意味は「知性」。そこから法律での「知的創作物」や、並外れて知的な人物を表す用法もある。
ギリシャ語:διασκέδαση
読み方:ディアスケダシ・ディアスケーダシ
ラテン文字:diaskedasi
διασκεδάζω(楽しむ、気を晴らす)は、さらにさかのぼると古代ギリシャ語の διασκεδάννυμι(散らす)系の語に連なる。もともとは、物を散らすことや、気がかりを吹き払うことに近い語だった。名詞の系統には中世ギリシャ語の διασκέδασις(散逸、気晴らし)があり、現代ギリシャ語の διασκέδαση はこの流れを引き継ぐ。
今の「娯楽、楽しみ」の語義は、フランス語 dissipation や divertissement の意味的な影響を受けながら整った。もとの「気を散らす、気が晴れる」という感覚から、楽しい時間を過ごすこと、そのための娯楽を言う語になっている。
αναψυχή(気晴らし、レクリエーション)は、休みながら心身を立て直す感じが強い。ψυχαγωγία(娯楽、楽しみ)は、人を楽しませる活動や娯楽一般を言いやすい。
κέφι(上機嫌、陽気な気分、意欲)は内側から湧くノリや勢いを指しやすく、ευχαρίστηση(楽しみ、満足感)は快さや満足そのものに寄る。παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)は個々の遊びやゲームを言いやすい。διασκέδαση は、それらより広く、楽しんで過ごすことや、そのための娯楽をまとめて言える。
主な意味は、楽しい時間を過ごすこと、またそのための娯楽や気晴らし。夜遊び、案内、施設、好きな楽しみのように、楽しみ方やその手段まで含めて言える。まれに文語寄りでは、不安や印象が散って薄れることも表す。
定番の言い方に、για διασκέδαση(楽しみのために)、είναι διασκέδαση για μένα(私には楽しくて朝飯前だ)、καλή διασκέδαση(楽しんでね、よい時間を)! がある。
ギリシャ語:διαφορά
読み方:ディアフォラ・ディアフォラー
ラテン文字:diafora
古代ギリシャ語の διαφορά(違い、隔たり)を継承。「引き算の差」「差額」の用法にはフランス語 différence の意味借用が含まれる。
主な意味は「違い、差異」。人や物の性質、価格、年齢、時刻、意見などの隔たりを表し、そこから「はっきり良くなった違い」「引き算の差や差額」「意見や利害の不一致による争い」にも広がる。
近い語としては ομοιότητα(類似、共通性)があり、これは二つのもののあいだに見られる「似ている点」に目を向ける語。数量や条件がぴたりと等しいことを言うなら ισότητα(等しさ、平等)のほうが近く、διαφορά はそこから外れた「開き」や「ずれ」を表す。争いの意味では συμφωνία(合意、一致)が対立しやすく、立場の食い違いが解消された状態をいう。より抽象的、哲学的には ταυτότητα(同一性、アイデンティティ)が対立項になりうるが、日常語としての διαφορά にまず対応するのは「似ていること」や「一致していること」を表す語のほうである。
με τη διαφορά ότι(ただし...という条件で/...という違いを除けば)は、条件や留保を添える言い方。κάνει διαφορά(差が出る、違いを生む)は、結果の違いがはっきり表れることをいう。専門語では ειδοποιός διαφορά(種差、特質的差異)や διαφορά δυναμικού(電位差)のような言い方もある。
ギリシャ語:Δίδυμοι
読み方:ディディミ・ディーディミ
ラテン文字:didymoi
古代ギリシャ語の δίδυμος(二重の、双子の)に由来。δύο(二)の重複からできた形容詞で、印欧祖語で「二」を表す語根につながり、サンスクリット語 dvis(二つ)やラテン語 duplus(二重の)とも系統を同じくする。
男性複数形の Δίδυμοι は、ギリシャ神話のカストルとポルックスの双子兄弟にちなんだ星座名。一方は不死、一方は死すべき定めだったが、死別を悼んで兄弟が願い、二人で夜空にのぼるようになったという神話。ふたご座の主星 α と β もそれぞれ Castor、Pollux と呼ばれる。占星術では黄道十二宮の第三宮の名にも使われる。現代ギリシャ語で一般に「双子」を表すのは中性複数形の δίδυμα で、Δίδυμοι は天文・占星の固有名詞としてのみ用いる。
ギリシャ語:δικαίωμα
読み方:ディケオマ・ディケーオマ
ラテン文字:dikaioma
古代ギリシャ語の δικαίωμα(正当とされた行い、正当化)を継承。
動詞 δικαιόω(正当とする、正しいとみなす)に結果・動作を表す接尾辞 -μα が付いた形。
現代の「権利」としての用法は、フランス語の droit、英語の right、ドイツ語の Recht などの概念を取り入れた意味借用により定着したもの。
δίκη(正義、裁判)系の関連語には、δικαστήριο(裁判所)や δικαιοσύνη(正義、司法)のほか、δίκαιος(正しい)、δικαιολογία(言い訳、正当化)といった語がある。
ギリシャ語:δικαστήριο
読み方:ディカスティリオ・ディカスティーリオ
ラテン文字:dikastirio
ギリシャ語:δίκτυο
読み方:ディクティオ・ディークティオ
ラテン文字:diktyo
古代ギリシャ語の δίκτυον(漁や狩りの網)を学術語として取り入れ直した語。自然に受け継がれた通俗形 δίχτυ と対をなし、日常の物理的な網は δίχτυ、抽象的な網目構造やネットワークは δίκτυο で表すことが多い。
通信網、電力網、交通網、コンピュータネットワーク、人のつながりのネットワークといった抽象的な用法は、フランス語 réseau や英語 network を訳して取り入れた新しい意味。
派生語に δικτύωση(ネットワーク化)、δικτυακός(ネットワークの)、διαδίκτυο(インターネット)。
ギリシャ語:δίνω
読み方:ディノ・ディーノ
ラテン文字:dino
古代ギリシャ語の δίδωμι(与える)が、ヘレニズム期に δίδω に縮まり、さらに中世ギリシャ語で -νω 型の現在形に整えられた語。
印欧祖語で「与える」を表す語根から出た語で、ラテン語 do(与える、英語 donate の元)、サンスクリット dā(与える)とも同じ系統。派生語に δόση(投与、分割払いの一回分)、δώρο(贈り物)、δότης(提供者)。
ギリシャ語:δίπλωμα
読み方:ディプロマ・ディープロマ
ラテン文字:diploma
古代ギリシャ語の δίπλωμα を継承。動詞 διπλόω(二重にする、折り畳む)に結果を示す接尾辞 -μα がついた語で、もとは「二重のもの、折り畳まれたもの」を意味した。古代には「銀河の二重の流れ」「胎児の折り畳まれた姿勢」のような具体的な意味から、折り畳まれた書面、すなわち推薦状や通行証、旅行許可証を指す用法までを含んだ。ローマ期にラテン語 diploma が公的文書の意味で定着し、中世以降はヨーロッパで学業修了や権限付与を示す公文書を指すようになった。現代ギリシャ語の「学位証、免許、証書」の意味は、古代からの「折り畳まれた公文書」の流れを受け継ぎつつ、ラテン語 diploma やフランス語 diplôme の用法と連動して確立したもの。
類義語に πτυχίο(学位、大学卒業証)、πιστοποιητικό(証明書)、βεβαίωση(証明書類)、άδεια(免許、許可証)など。同じ語から枝分かれした διπλωμάτης(外交官)、διπλωματία(外交)、διπλωματικός(外交的な)は、外交官が折り畳まれた公文書を携えたことにちなむ語族。英語 diploma、diplomat、diplomacy もこの系統の同系語。
ギリシャ語:δόντι
読み方:ドディ・ドーディ・ドンディ・ドーンディ
ラテン文字:donti
古代ギリシャ語の ὀδούς(歯)の語幹 ὀδοντ- から派生した中世ギリシャ語 δόντι(ο)ν(歯)から。語頭の弱い音が落ち、現代ギリシャ語では δόντι の形になった。英語の tooth やラテン語の dens(歯)も、同じ「歯」を表す印欧系の語源を共有している。
派生語に δοντάκι(小さい歯)と δοντάρα(大きな歯)がある。δοντάκι は小さな歯のほか、ニンニクの小さな1片を表すときにも使う。
主な意味は、人間や一部の脊椎動物の口の中に生える「歯」。そこから、櫛、のこぎり、歯車などにある歯のような細長い突起、さらにニンニクの1片も指す。
ギリシャ語:δορυφόρος
読み方:ドリフォロス・ドリフォーロス
ラテン文字:doryforos
古代ギリシャ語の δορυφόρος(槍を運ぶ者、護衛兵)に由来。δόρυ(槍)と -φόρος(運ぶ者)からできた語で、古代には支配者のそばに仕える武装した従者、親衛兵を指した。ローマでは皇帝の近衛兵(praetorian guard)も表した。
現代の「衛星」の意味は、フランス語 satellite からの意味借用として近代に加わったもの。フランス語・英語 satellite はラテン語 satelles(護衛兵。エトルリア語起源とも言われる)から来ており、ケプラーが17世紀初頭に木星の月を satelles と呼んだのをきっかけに「惑星の周囲を回る天体」の意味が定着した。つまり「護衛兵→衛星」という意味の展開はラテン語側で独自に起きたもので、δορυφόρος と satellite は語源的には別系統だが、意味の道筋が並行するため、フランス語を介してこの意味だけが δορυφόρος にも乗った。
ギリシャ語:δουλειά
読み方:ドゥリア・ドゥリアー
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλειά を継承。もとは δοῦλος(奴隷)から作られた δουλεία(奴隷状態、隷属)で、母音連続を避ける音変化で δουλειά の形になり、意味も「仕事、労働」全般に移った。同じ綴りでストレス位置だけ異なる δουλεία(ドゥリーア)は「奴隷制度、隷属」を保ったまま別の語として残る。
派生語に動詞 δουλεύω(働く)、δουλευτής(働き者)、指小語 δουλίτσα(ちょっとした仕事)。類義語の εργασία(労働、業務)は ώρες εργασίας(労働時間)、σύμβαση εργασίας(雇用契約)など雇用・労働制度の定型語や複合語で使い、論文・レポート・作品といった「成果物としての仕事」も指す。δουλειά はふだんの「仕事」に使う。επάγγελμα(職業)は具体的な職種、κάματο は苦労を伴う重労働を指す。
ギリシャ語:δουλεία
読み方:ドゥリア・ドゥリーア
ラテン文字:douleia
古代ギリシャ語の δουλεία(奴隷状態、隷属、隷属の身分)に由来する学術借用(διαχρονικό δάνειο)。動詞 δουλεύω(仕える、奴隷として働く)+ 行為・状態を表す名詞語尾 -εία の合成で、δοῦλος(奴隷)にさかのぼる。法律用語の「地役権」の用法はフランス語 servitude(隷属、地役権)からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)で近代に加わった。古代の δοῦλος 自体は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、ミケーネ・ギリシャ語にすでに do-e-ro の形で現れているため、エーゲ系基層からの語とする説が有力。同じ古代 δοῦλος から、キリスト教神学のラテン語化を経て、ラテン語 dulia(聖人崇敬。神への崇拝 latria と区別される下位の敬礼)が生まれた。同じ綴りで強勢位置だけが異なる δουλειά(仕事)は同じ δοῦλος 由来だが、中世ギリシャ語で「奴隷の作業」から「労働一般」へと意味が動いた継承語で、δουλεία とは経路が異なる。
類義語に σκλαβιά(奴隷の身分、隷属。中世のスラブ系民族 Σκλάβοι に由来する継承語で、感情的・歴史的な文脈、とくにオスマン帝国支配下のギリシャを指すときに使う), υποτέλεια(属国状態、貢納義務。古代由来の書き言葉の硬い形), υποδούλωση(隷属化、奴隷化)。δουλεία は概念的・法的な用語として奴隷制度・隷属を指し、また法律用語として地役権を指す形として広く使う。派生に δουλικός(奴隷の、卑屈な), δουλικότητα(卑屈さ、屈従)。関連語に δοῦλος(奴隷。古代由来の元の語), δουλειά(仕事。同源で強勢位置の異なる継承語), δουλεύω(働く、仕える。動詞), υπόδουλος(隷属した), δουλοσύνη(隷属、奴隷状態。詩歌的・古風な形)。合成語に δουλοκτησία(奴隷所有制), δουλεμπόριο(奴隷貿易), δουλοπάροικος(農奴)。
ギリシャ語:δράκος
読み方:ドゥラコ・ドゥラーコ
ラテン文字:drakos
古代ギリシャ語の δράκων(蛇)に由来。δράκων は動詞 δέρκεσθαι(鋭く見る)から派生し、蛇の鋭い眼差しにちなむ名前とされる。古代にはこの語が巨大な蛇や怪物も指すようになり、ラテン語 draco(蛇、竜)として取り入れられ、古フランス語を経て英語 dragon の語源にもなった。
中世ギリシャ語で δράκων から δράκος の形が生まれ、民間伝承に登場する人間型の魔物を指す語として定着した。竜を指すより一般的な語に δράκοντας(竜)があるが、δράκος は主に昔話の文脈で使われる。現代ギリシャ語で蛇を指す日常語は φίδι(蛇)で、こちらは古代ギリシャ語 ὄφις を起源とする別系統の語。
ギリシャ語:Δράκων
読み方:ドゥラコン・ドゥラーコン
ラテン文字:drakon
古代ギリシャ語の Δράκων に由来。普通名詞 δράκων(龍、大蛇)から固有名に転じた語で、δράκων はさらに動詞 δέρκομαι(注意深く見る、睨む)に由来し、「鋭い目をしたもの」がもとの意味だった。現代ギリシャ語では、龍・ドラゴンを表す普通名詞は δράκος として残り、固有名としては古代形のまま Δράκων が立法者名と星座名に使われている。
男性名 Δράκων は、古代アテネで前7世紀に成文法を制定した立法者の名として特によく知られる。死刑を多用するきわめて厳しい刑罰で名を残し、英語 draconian(苛酷な、厳格な)もこの人物名からラテン語 Dracō を経て入った。英語 Draco(星座名、立法者名)、dragon なども同じ語源。
ギリシャ語:δρόμος
読み方:ドゥロモス・ドゥローモス
ラテン文字:dromos
古代ギリシャ語の δρόμος(走ること、走る場所、コース)を継承。動詞 τρέχω(走る)と同じ印欧祖語で「走る」を表す語根に由来し、古代では走ることや競走路を意味したが、しだいに「人が通る道」「道路」の意味が中心になった。英語には -drome として入り、hippodrome(競馬場)、aerodrome(飛行場)、velodrome(自転車競技場)、syndrome(症候群。syn- + -drome)などに使われる。
指小語 δρομάκι(路地、小さな道)のほか、合成語として αυτοκινητόδρομος(高速道路)、πεζόδρομος(歩行者専用道路)、χωματόδρομος(未舗装道路)、ιππόδρομος(競馬場)、αεροδρόμιο(空港)など -δρομος, -δρόμιο 系が豊富。類義語では、οδός は改まった語で住所の通り名(οδός Σταδίου「スタディウ通り」)や行政の文脈に使い、σοκάκι(路地)は市街地の建物のあいだの狭い路地、μονοπάτι(小道)は田園や山の歩行者用の小道を指す。
ギリシャ語:δροσερός
読み方:ドゥロセロス・ドゥロセロース
ラテン文字:droseros
ギリシャ語:δύναμη
読み方:ディナミ・ディーナミ
ラテン文字:dynami
古代ギリシャ語の δύναμις(能力、力)に由来する。δύναμις は「できる」を意味する動詞 δύναμαι から派生した名詞で、もともと「何かをする能力」を表した。中世ギリシャ語を経て語末の -ις が -η に変化し、現代ギリシャ語の δύναμη となった。
英語の dynamic(動的な)、dynamite(ダイナマイト)、dynamo(発電機)は、いずれもこの δύναμις を語源とする。
類義語に ισχύς(効力、威力)や σθένος(強健さ、気概)がある。対義語は αδυναμία(弱さ、無力)で、否定の接頭辞 α- が付いた形。
δύναμη は多くの定型表現に用いられる。軍事では Ένοπλες Δυνάμεις(軍隊)、Ειδικές Δυνάμεις(特殊部隊)、αεροπορική δύναμη(空軍力)、δύναμη πυρός(火力)、政治・経済では δημόσια δύναμη(公権力)、Μεγάλες Δυνάμεις(列強)、αγοραστική δύναμη(購買力)などがある。
ήρεμη δύναμη は「静かなる強さ」を意味し、実力をひけらかさないが能力のある人を指す比喩表現。
日本語の「力」と同様に、身体的・精神的な能力から、物の作用や効能、政治・経済的な勢力、軍事力、物理学の力、数学の累乗、超自然的な存在まで非常に幅広い意味を持つ。
ギリシャ語:δυνατός
読み方:ディナトス・ディナトース
ラテン文字:dynatos
古代ギリシャ語の δυνατός(力のある、可能な)を継承。英語の dynamic や dynamite の dyna- とは、動詞 δύναμαι(できる、力がある)から広がった語根 δυν- を共有する。
「強い」を表すギリシャ語にはいくつかの類義語があり、それぞれ焦点が異なる。ισχυρός はより硬い表現で、「強力な」「権力のある」といった物理的・制度的な強さを指す。γερός は日常的な語で、体格が「がっしりした」「健康な」、あるいは物が「丈夫な」という意味で使われる。
εύρωστος、ρωμαλέος、στιβαρός はいずれも肉体的な力強さや逞しさを強調する語である。
文法用語で、δυνατός τύπος / ισχυρός τύπος は人称代名詞の「強変化形式(強形)」を指す。アクセントを持ち、強調される形のこと。対義語は αδύνατος τύπος(弱変化形式)。
:::example
- Ο δυνατός τύπος του "με" είναι "εμένα".
- "με" の強形は "εμένα" である。
- The strong form of "με" is "εμένα". :::
主な意味は「強い」。体力、精神力、能力、音や光の強さ、味の濃さなど、物理的・抽象的なあらゆる「強さ」を表現する。また「可能な」「あり得る」という可能・蓋然性の意味でも非常に重要で、日常的に頻繁に使われる。
副詞形 δυνατά は「強く」「力を込めて」を意味し、動作の強さや激しさを表す。口語的な掛け声としても使われる。
文法用語では δυνατός τύπος(強変化形式)として、人称代名詞のアクセントを持つ強調形を指す。対義語は αδύνατος τύπος(弱変化形式)。
慣用句も多く、βάζω τα δυνατά μου(全力を尽くす)、όσο το δυνατόν(できる限り)、δεν είναι δυνατόν!(ありえない!)など、日常会話でよく耳にする表現がある。
ギリシャ語:δυόσμος
読み方:ディオズモス・ディオーズモス
ラテン文字:dyosmos
古代ギリシャ語の ἡδύοσμος(甘く香るもの、緑のミント)に由来する。語頭の無アクセント母音 η- が脱落し、母音接続を避けるための音節融合を経て、現代ギリシャ語の δυόσμος になった。
英語の spearmint に相当し、料理に清涼感を加える代表的なハーブである。類義語の μέντα(ペパーミント)よりも香りが穏やかで、ギリシャ料理では肉料理やサラダによく用いられる。
主な意味は「スペアミント」。料理の調味料として葉が利用される、草本性の芳香植物を指す。
ギリシャ語:δύση
読み方:ディシ・ディーシ
ラテン文字:dysi
古代ギリシャ語 δύσις(沈むこと、日没)に由来し、中世ギリシャ語の δύση(日没)を経て現在の形になった。動詞 δύω(沈む)から派生した語で、天体が沈むことから、その方角である西、さらに終わりや衰退の意味へ広がった。対義語は ανατολή(日の出、東)。
「西洋・西側諸国」の意味では、フランス語 ouest や英語 west の影響も受けている。
形容詞形は δυτικός(西の、西からの)。その中性複数形 δυτικά は、副詞として「西へ、西に」を表すほか、方向ラベルとして「西方向」の意味でも使われる。
西から吹く風の名には πουνέντες や ζέφυρος がある。
主な意味は天体が沈むこと。そこから西という方角、西洋や西側諸国、比喩的な衰退や終わりを指すのにも使われる。
ギリシャ語:δυσκολία
読み方:ディスコリア・ディスコリーア
ラテン文字:dyskolia
δύσκολος(難しい、厄介な)に、性質や状態を表す接尾辞 -ία を付けて作った抽象名詞。反対は ευκολία(簡単、楽さ)。
ギリシャ語:δύσκολος
読み方:ディスコロス・ディースコロス
ラテン文字:dyskolos
ギリシャ語:δυστυχία
読み方:ディスティヒア・ディスティヒーア
ラテン文字:dystychia
古代ギリシャ語の δυστυχία(不運、不幸)に由来。接頭辞 δυσ-(悪い、困難な)と τύχη(運)の組み合わせで、「運に恵まれない状態」を表す語。英語 dystopia(ディストピア)、dysfunction(機能障害)、dyslexia(失読症)などの接頭辞 dys- もこの δυσ- から。
対義語は ευτυχία(幸福)で、εὖ(良い)+ τύχη の構成で対をなす。類義語に ατυχία(不運)、κακοτυχία(悪運)、απελπισία(絶望)、κακομοιριά(不運)など。派生語に δυστυχής(不幸な)、δυστυχισμένος(不幸な)、δυστύχημα(災難、事故)など。
ギリシャ語:δυτικός
読み方:ディティコス・ディティコース
ラテン文字:dytikos
δύση(西、日没)+ -ικός の派生形容詞。方角としての「西の」の意味は中世ギリシャ語の δυτικός(西の)から直接受け継いだもの。一方、「西方の、西洋の」という文化的な意味は、フランス語の occidental や英語の western の影響で加わった。
Δυτική Εκκλησία は西方教会、すなわちローマ・カトリック教会を指す。Παπική Εκκλησία(教皇の教会)とも呼ばれる。1054年の大シスマで Ανατολική Εκκλησία(東方教会、正教会)と分裂した。Δυτική Ευρώπη はかつて政治的に、アメリカやカナダとともに NATO を設立した西欧諸国を指した用法もある。
中性複数形 δυτικά は副詞の「西へ、西に」や名詞の「西部」としても使われる。対義語は ανατολικός(東の)。
主な意味は位置や方向が西であること。ほかに、西欧や北米を中心とする「西方の、西洋の」という文化的な意味、中性複数形 τα δυτικά の名詞用法、δυτικά/δυτικώς の副詞用法もある。
ギリシャ語:δωμάτιο
読み方:ドマティオ・ドマーティオ
ラテン文字:domatio
印欧祖語で「家」を表す語根にさかのぼる名詞 δῶμα, δόμος(家, 建物)に指小の接尾辞 -άτιον がついた古代ギリシャ語の中性名詞 δωμάτιον(小さな家, 寝室)に由来。もとは「小さな家」「寝室」を意味し, 現代の δωμάτιο は家や建物の中の部屋を幅広く指す。ラテン語 domus も同じ系統で, 英語 domestic(家庭の), dome(ドーム)はこのラテン語経由の同系語。
部屋を表す関連語として、κάμαρα(部屋、寝室)、σαλόνι(居間、応接間)、κοιτώνας(寝室、寮)、ξενώνας(客室、ゲストハウス)、θάλαμος(病室、船室)など、用途に応じた語がある。δωματιάκι(小部屋)は指小形、δωματιάρα(大きな部屋)は拡大形。
Ε
ギリシャ語:έαρ
読み方:エアル・エーアル
ラテン文字:ear
古代ギリシャ語の ἔαρ(春)をそのまま受け継いだ学術借用で、文語・雅語として用いられる。日常的に「春」を指すのは άνοιξη。
印欧祖語で「春」を表す根に由来し、ラテン語 vēr、サンスクリット vasantá-、古ノルド語 vár、古アルメニア語 garun、古代教会スラヴ語 vesna、ペルシャ語 bahâr など、印欧諸語で「春」を表す語と同源。
派生語に εαρινός(春の、古代 ἐαρινός)、εαρινή ισημερία(春分)など。英語 vernal(春の)、vernal equinox(春分)はラテン語 vēr から vernālis を経由した同源語。
ギリシャ語:εβδομάδα
読み方:エヴドマダ・エヴドマーダ
ラテン文字:evdomada
中世ギリシャ語の εβδομάδα(週)がそのまま受け継がれた語。現代ギリシャ語でも基本形は εβδομάδα で、日常会話では語頭を落とした口語形 βδομάδα(週)もよく使われる。属格は通常 εβδομάδας(週の)で、やや文語では εβδομάδος(週の)という形も現れる。
主な意味は「週」。七つの μέρα(日)から成る時間のまとまりを指し、週の始まりは文脈によって日曜始まりにも月曜始まりにもなる。さらに、催し・授業・広報などで区切った「週間」や、休暇・調整などの七日間のまとまりにも使う。
固定した呼び名として、εργάσιμη εβδομάδα(労働週)、εβδομάδα επικοινωνίας / εισαγωγική εβδομάδα(学期冒頭の導入週間)、η Μεγάλη Εβδομάδα / η Εβδομάδα των Αγίων Παθών(聖週間)のような表現がある。
ギリシャ語:έδαφος
読み方:エダフォス・エーダフォス
ラテン文字:edafos
古代ギリシャ語の ἔδαφος(地面、地表、底)からの学術借用。ἕδος(座、土台)に -φος が付いた形と考えられ、さらに ἕζομαι(座る)の根につながる。比喩の「土台、条件」として使う用法は、フランス語 terrain(地面、活動の場)の影響による。
派生語に εδαφικός(土壌の、領土の)、εδάφιο(節、聖書や法律の一節;古代 ἐδάφιον「底、節」から)、εδαφολογία(土壌学)、εδαφοτεχνική(土質工学)など。関連語に γη(地球、大地)、χώμα(土、土壌)、επικράτεια(領域、版図)、χώρα(国、土地)。
英語 edaphic(土壌の)は同じ古代ギリシャ語 ἔδαφος をもとにした生態学・農学の学術語で、土壌条件による生物の差を論じるときに使う。
ギリシャ語:έδρα
読み方:エドゥラ・エードゥラ
ラテン文字:edra
古代ギリシャ語の ἕδρα(座席、座る場所)からの学術借用。印欧祖語で「座る」を表す根に由来し、ἕζομαι(座る)と同根。ラテン語 sedēre(座る)、サンスクリット sad-(座る)、英語 sit / seat も同じ根から来た語。
古代ギリシャ語から続く合成語が多く、現代語でもそのまま使う:καθέδρα(椅子、教授職。κατά- + ἕδρα)、εξέδρα(演壇、桟敷。ἐξ- + ἕδρα)、ενέδρα(待ち伏せ。ἐν- + ἕδρα)、συνέδριο(会議。σύν- + ἕδρα)、πρόεδρος(議長、大統領。πρό- + ἕδρα)、πάρεδρος(陪席、助手。παρά- + ἕδρα)、πολύεδρο(多面体)、τετράεδρο(四面体)など。動詞形 εδρεύω は「本部を置く」。
英語 cathedral(大聖堂)、chair(椅子)は καθέδρα がラテン語 cathedra を経て入った語で、「司教座・教師が座る椅子」のイメージから分かれた。幾何学の polyhedron(多面体)、tetrahedron(四面体)、dihedral(二面の)、建築の exedra(壁龕、半円形のベンチ)、薬用植物 ephedra(マオウ)/ephedrine(エフェドリン)は ἕδρα の合成語から取った学術語。「座る」の根からは、ラテン語を経て英語 sedentary(座りがちの)、session(会期)も生まれている。
ギリシャ語:είδηση
読み方:イディシ・イーディシ
ラテン文字:eidisi
ギリシャ語:είδος
読み方:イドス・イードス
ラテン文字:eidos
古代ギリシャ語 εἶδος(姿、形、種類)に由来。印欧祖語で「見る」を表す語根から出た語で、同じ語根から ιδέα(考え、イメージ)、ιστορία(もとは「見て知ること」)、είδωλον(像、偶像)も生まれている。ラテン語 video(見る)、英語 wit(機知、もとは「知る」)、サンスクリット veda(知識)とも同系。
生物学の「種」や商品の「品目」の用法は、英語 species とフランス語 espèce からの意味借用で定着した。
派生語に ειδικός(特殊な、専門の、専門家)。後半要素の -ειδής(〜のような形の、〜状の)は複合語を多く作り、ανθρωποειδής(人間のような)、κυκλοειδής(円状の)などがある。
ギリシャ語:είδωλο
読み方:イドロ・イードロ
ラテン文字:eidolo
古代ギリシャ語の εἴδωλον(像、形、幻、神像)から。είδος(形)に指小の -ωλον が付いた語。「見る、知る」の語根に連なり、ιδέα(考え、観念)や είδηση(ニュース)とは兄弟語。
ラテン語 īdōlum を経て英語 idol(偶像)、その複数形から idola(イドラ、偏見)が生まれ、eidolon(幻影)、pareidolia(パレイドリア、無意味なものに顔や形を見る現象)も同じ語源。
派生語・関連語に ειδωλολατρία(偶像崇拝)、ειδώλιο(小像、フィギュア)、ξόανο(古代の木製神像)、ίνδαλμα(憧れの的、典型)など。
ギリシャ語:ειρήνη
読み方:イリニ・イリーニ
ラテン文字:eirini
古代ギリシャ語の εἰρήνη(平和、静寂)を継承。さらなる起源は確かでなく、ギリシャ語以前の基層語とする見方が有力。ギリシャ神話の平和の女神 Εἰρήνη(エイレネ、ホーライ「季節の女神たち」の一柱)もこの語そのもので、英語の女性名 Irene(アイリーン)も同じ名の系譜。フランス語 Irène、ロシア語 Ирина などヨーロッパ各国の女性名として残る。
派生語に ειρηνικός(平和な;太平洋の、Ειρηνικός Ωκεανός「太平洋」)、ειρηνεύω(平和にする、和解する)、ειρηνιστής(平和主義者)、ειρηνισμός(平和主義)など。類義語に γαλήνη(平穏、静穏)、ηρεμία(落ち着き)。対義語は πόλεμος(戦争)。
英語 irenic(平和的な、宥和的な)、irenology(平和学)は同じ εἰρήνη をもとにした学術語。
ギリシャ語:εκκλησία
読み方:エクリシア・エクリシーア
ラテン文字:ekklisia
古代ギリシャ語の ἐκκλησία(民会、市民の集会)からの学術借用。ἐκ-(外へ)+ καλέω(呼ぶ)から作られた ἔκκλητος(呼び出された)に -ία を加えた形で、直訳は「呼び集められたもの」。古代アテネなどでは民主政の中核をなす市民の公的集会を指した。新約聖書の時代にキリスト教徒の共同体を表す語として取り入れられ(マタイ伝 16:18 が有名)、のちに建物としての教会、教会組織全体までを指すようになった。
派生語に εκκλησιαστικός(教会の)、εκκλησιαστής(伝道者、旧約「コヘレト」Ἐκκλησιαστής の称号)、口語形 εκκλησιά など。類義語に θρησκεία(宗教)、ιερό(聖域、神殿)。
ラテン語 ecclēsia を経由してロマンス諸語の「教会」として広く残る:フランス語 église、スペイン語 iglesia、イタリア語 chiesa、ポルトガル語 igreja。英語の church は別系統(古代ギリシャ語 κυριακόν「主の家」由来)だが、ecclesiastical(教会の)、ecclesiastic(聖職者)、ecclesiology(教会論)、旧約書名 Ecclesiastes(コヘレトの言葉)は同じ ἐκκλησία をもとにした学術語。
ギリシャ語:έκλειψη
読み方:エクリプシ・エークリプシ
ラテン文字:ekleipsi
古代ギリシャ語の ἔκλειψις(欠如、消失、食)を継承。動詞 ἐκλείπω(欠ける、途切れる、姿を消す)の名詞形で、ἐκ-(外へ)+ λείπω(残す、去る)からなる。λείπω はラテン語 linquō(置き去る)と同じ印欧祖語の語根から出ており、英語 relinquish(放棄する)にもこの根がつながる。
英語 eclipse(食)はラテン語を経てこの ἔκλειψις から。天文用語の ecliptic(黄道)も同じ語源。
関連語に έλλειψη(欠如、楕円)など。派生語に εκλειπτική(黄道)、εκλιπών(亡くなった、故人の)など。
ギリシャ語:εκλογή
読み方:エクロイ・エクロイー・エクロギ・エクロギー
ラテン文字:eklogi
古代ギリシャ語の ἐκλογή(選び出し、選抜)からの学術借用。動詞 ἐκλέγω(ἐκ-「外へ」+ λέγω)に名詞化接尾辞 -ή が付いた形で、直訳は「選り出すこと」。λέγω は古くは「集める、選ぶ」が基本の意味で、そこから「並べて話す、言う」の意味が生まれた。印欧祖語「集める、選ぶ」を表す根に由来し、ラテン語 legere(集める、読む、選ぶ)、英語 collect、lecture、legend も同じ根から生まれた語。
派生語に εκλογικός(選挙の)、εκλογέας(有権者、選挙人)、εκλέγω(選ぶ、選出する)、εκλεκτός(選ばれた、上等な)、εκλεκτικός(選り抜きの、折衷的な)、εκλεκτικισμός(折衷主義)、εκλόγιμος(当選資格のある)など。関連語に ψήφος(票、投票)、δικαίωμα(権利、資格)。
英語 eclectic(折衷的な)、eclecticism(折衷主義)は εκλεκτικός をもとにした学術語。詩の形式名 eclogue(牧歌)は ἐκλογή そのものがラテン語 ecloga を経て入った語で「選り抜きの短詩」の意から。英語 election、elect、select はラテン語 ēligere(ex- + legere)に由来し、ギリシャ語 ἐκλέγω と同じ語構成になっている。
ギリシャ語:εκνευρίζω
読み方:エクネヴリゾ・エクネヴリーゾ
ラテン文字:eknevryzo
古代ギリシャ語の ἐκνευρίζω に由来。εκ-(外へ、切り離して)と νεῦρον(腱、神経)を合わせた動詞で、もともとは「腱を切る」ことを言った。現代の「いらいらさせる」の意味は、フランス語 énerver からの意味借用で定着した。
関連語に νεύρα(神経、いらだち)、νευρικός(神経質な、神経の)、εκνευρισμός(いらだち)。
ギリシャ語:έκπληξη
読み方:エクプリクシ・エークプリクシ
ラテン文字:ekplixi
古代ギリシャ語の ἔκπληξις(衝撃、驚愕)から。ἐκ-(外へ)+ πλήσσω(打つ)からなる語で、もとは衝撃に打たれて我を失う状態を指した。
πλήσσω は英語 apoplexy(脳卒中、ギリシャ語 ἀποπληξία から)や paraplegia(対麻痺)の語源。「打つ」という核が、感情では驚き、身体では発作や麻痺として残る。
派生語に εκπλήσσω(驚かせる)、εκπληκτικός(驚くべき、素晴らしい)など。関連語に κατάπληξη(仰天)、ξάφνιασμα(不意)など。
ギリシャ語:εκπλήσσομαι
読み方:エクプリソメ・エクプリーソメ
ラテン文字:ekplissomai
古代ギリシャ語の ἐκπλήσσομαι に由来。能動形 ἐκπλήσσω の受動態で、ἐκ-(外へ、強く)と πλήσσω(打つ)を合わせた動詞。「強く打たれて正気を失う」感覚が、驚きに打ちのめされる意味へ移って定着した。
πλήσσω は印欧祖語で「打つ」を表す語根から出た語。ラテン語 plaga(打撃、傷、のち「災厄」)を経由した英語 plague(疫病、災厄)、同じ πλήσσω から出たギリシャ語の αποπληξία(卒中、英語 apoplexy の元)も同系。
能動形は εκπλήσσω(驚かせる)、名詞は έκπληξη(驚き)、形容詞に έκπληκτος(驚いた)、εκπληκτικός(驚くほどの)。
ギリシャ語:εκρήγνυμαι
読み方:エクリグニメ・エクリーグニメ
ラテン文字:ekrignymai
ギリシャ語:έκρηξη
読み方:エクリクシ・エークリクシ
ラテン文字:ekrixi
古代ギリシャ語の ἔκρηξις(破裂)から。ἐκ-(外へ)+ ῥήγνυμι(壊す、破裂させる)からなり、内部の圧力が外へ弾ける動きを表す。
ῥήγνυμι は英語 hemorrhage(出血、αἷμα「血」+ ῥήγνυμι から)の語根でもある。
動詞形は εκρήγνυμαι(爆発する)。派生語に εκρηκτικός(爆発的な、火薬の)、εκρηκτικότητα(爆発性)など。関連語に ανάφλεξη(着火、点火)、ρωγμή(亀裂)、διάρρηξη(破壊、侵入)、σκάσιμο(破裂、パンク)など。
ギリシャ語:ελαιοκράμβη
読み方:エレオクラムヴィ・エレオクラームヴィ
ラテン文字:elaiokravmi
ελαιοκράμβη(セイヨウアブラナ、ナタネ、カノーラ)は、ελαιο-(油)と κράμβη(キャベツ、アブラナ科の草)からできた複合語である。現代ギリシャ語では、油をとるアブラナ科の作物を指し、春には黄色い花を広く見せる。
ελαιοκράμβη は花の名としても見えるが、現代では作物名として意識されやすい。黄色い花の群れよりも、油料作物としての側面が前に出やすい語である。
意味はセイヨウアブラナ、ナタネ、カノーラ。油をとるために栽培されるアブラナ科の植物をいう。
ギリシャ語:ελαιώδης
読み方:エレオディス・エレオーディス
ラテン文字:elaiodis
古代ギリシャ語の ἐλαιώδης(油のような, 油を帯びた)に由来。ἔλαιον(油, オリーブ油)に性質を作る -ώδης(〜のような, 〜を帯びた)が付いてできた形容詞。ラテン語 oleum(油)も同じ ἔλαιον の系統から入った語で, そこから英語 oil も Romance 経由で入った。現代の「油性の, 含油の」の用法はフランス語 huileux, oléagineux と英語 oily, oleaginous からの意味借用で整った。
同じ ἔλαιον の語族に λάδι(油, オイル), ελαιούχος(含油の), ελαιόλαδο(オリーブ油), ελαιοπαραγωγός(オリーブ生産者)。
λάδι が油そのものを指すのに対し, ελαιώδης は質感や成分について「油っぽい」「油を含む」と言うときに使う。υγρός(液体の, 液状の, 湿った)が液体一般を指すのに対し, ελαιώδης は油らしいぬめりや重さ, 油分の含有に焦点がある。
ギリシャ語:ελαιώνας
読み方:エレオナス・エレオーナス
ラテン文字:elaionas
ελαιώνας(オリーブ畑、オリーブ園)は、文語的な ελαία(オリーブの木)から場所を表す語尾が付いてできた語である。現代ギリシャ語では、オリーブの木がまとまって植えられた畑や園地を指す。
ελιά(オリーブの木、オリーブ) が一本の木や実を言うのに対して、ελαιώνας はそれが集まる場所を言う。収穫された実は λάδι(油、オイル)の文脈にもつながる。
意味はオリーブ畑、オリーブ園。オリーブ栽培の土地全体を指す。
ギリシャ語:ελάφι
読み方:エラフィ・エラーフィ
ラテン文字:elafi
古代ギリシャ語の ἔλαφος(シカ)が、中世ギリシャ語の ελάφι(ν) を経て現代ギリシャ語の ελάφι になった。
英語の elaphine(シカの)や、学名 Cervus elaphus(アカシカ)の elaphus も、この古代ギリシャ語と語源を共有する。
ελάφι はシカ全般を指す最も一般的な語。文語では古い形の έλαφος、口語や詩的な表現では λάφι も使われる。
シカの仲間を細かく言い分けるときは、ζαρκάδι(ノロジカ)、πλατόνι(ダマジカ)、τάρανδος(トナカイ)などの語もある。
主な意味は「シカ」。森林に生息する反芻動物を指し、雌を特に言うときは女性形の ελαφίνα を使う。比喩的には、その ελαφίνα が、すらりとした美しい女性を表すこともある。
ギリシャ語:ελευθερία
読み方:エレフセリア・エレフセリーア・エレフテリア・エレフテリーア
ラテン文字:eleftheria
古代ギリシャ語の ἐλευθερία(自由、自由身分)に由来。古代ギリシャでは人の身分が ἐλεύθεροι(自由民)と δοῦλοι(奴隷)に法律上分かれており、形容詞 ἐλεύθερος は「自由民の」「奴隷ではない」という身分を指す語だった。抽象名詞 ἐλευθερία もまずは「自由民であること、奴隷でない法的身分」を意味し、そこから国家の独立、行動・言論の自由、哲学的な自由意志まで、抽象的な「自由」一般に意味が広がった。印欧祖語まで遡ると「人々の仲間に属する者」を意味する語根にたどりつき、自由民とはもともと共同体に属する人のことだった。
派生語に ελευθερώνω(自由にする、解放する)、ελευθερωτής(解放者)、ελευθερωτικός(解放の)。口語的な λευτεριά は民衆歌や文学で使われ、感情のこもった響きを持つ。複数形 ελευθερίες は「個々の自由、諸権利」を指す。対義語に ανελευθερία(不自由)、δουλεία(隷属)、σκλαβιά(奴隷状態)。
ギリシャ語:ελιά
読み方:エリャ・エリャー
ラテン文字:elia
中世ギリシャ語の ελιά を継承。古代ギリシャ語 ἐλαία(オリーブ、オリーブの木)の縮約形で、中世以降は木と実の両方を指す言葉として定着した。
派生語には ελαιόδεντρο(オリーブの木)、ελαιόλαδο(オリーブ油)、ελαιώνας(オリーブ畑)、ελαιοπαραγωγός(オリーブ生産者)など。
英語の olive やフランス語の olive はラテン語 olīva を経て、ελιά と同じ古代ギリシャ語 ἐλαίᾱ の語根に由来する。
ギリシャ語:Ελλάδα
読み方:エラダ・エラーダ
ラテン文字:ellada
古代ギリシャ語 Ἑλλάς(ギリシャ)の対格形に由来。対格が主格として定着し、古い文体では主格 Ελλάς も使う。
Ἑλλάς は Ἕλλην(ギリシャ人)から作られた地名。Ἕλλην はもともと北部ギリシャ・テッサリアの一部族名で、神話では全ギリシャ人の祖とされる同名の人物の名でもある。それ以前の起源は不明で、ギリシャ語以前の基層に由来するという説もある。英語 Hellenic(ギリシャの)、Hellenistic(ヘレニズム的)、Panhellenic(汎ギリシャの)もギリシャ語 Ἕλλην から。
関連語に Έλληνας(ギリシャ人男性)、Ελληνίδα(ギリシャ人女性)、ελληνικός(ギリシャの)、ελληνικά(ギリシャ語)。地理・国家の文脈では ελλαδικός(ギリシャの、国家としての)も使う。
ギリシャ語:έλλειμμα
読み方:エリマ・エーリマ
ラテン文字:elleimma
ギリシャ語:έλλειψη
読み方:エルリプシ・エールリプシ
ラテン文字:elleipsi
古代ギリシャ語の ἔλλειψις(不足、欠け)から。ἐν-(中に)+ λείπω(残す、欠ける)からなる語で、λείπω は英語 leave と同じ語根から。
英語 ellipse(楕円)、ellipsis(省略)はこの ἔλλειψις から。幾何の意味は古代の数学者アポロニオスが円錐曲線の一つに名づけたもので、文体論の意味も古代の修辞学用語に由来する。
派生語に ελλειπτικός(楕円の、省略の、不完全な)、ελλιπής(不十分な、欠けた)など。関連語に έκλειψη(食、消失、同じ λείπω から)、ανυπαρξία(不在)、ένδεια(欠乏、窮乏)、έλλειμμα(赤字、不足分)など。
ギリシャ語:εμπάθεια
読み方:エバシア・エバーシア・エバティア・エバーティア・エンバシア・エンバーシア・エンバティア・エンバーティア
ラテン文字:empatheia
εμπάθεια は εν(中に)と πάθος(感情、受苦)の合成語で、古代ギリシャ語では「激しい感情」「苦痛」を意味していた。現代ギリシャ語ではこの語の意味は否定的な方向に固まり、「強い敵意」や「悪意ある偏見」を指すようになった。
英語の empathy はこの語を土台にして作られたが、εν(中に)+ πάθος(感情)という語の構造通りに、「相手の中に入り込んで感じる」という意味で使われている。ギリシャ語で「悪意」を表す語が、英語では「共感」を意味するという逆転が起きている。
この混乱を避けるため、現代ギリシャ語では英語の empathy にあたる概念に εμπάθεια を使わず、ενσυναίσθηση(共感)という別の語を充てている。
激しい嫌悪や、偏見に基づいた敵対心を指す。同じ πάθος から接頭辞を変えて作られた συμπάθεια(好感、同情)とは対照的で、類義語には έχθρα(敵意)や κακία(悪意)がある。
ギリシャ語:εμπόδιο
読み方:エボディオ・エボーディオ・エンボディオ・エンボーディオ
ラテン文字:empodio
古代ギリシャ語の ἐμπόδιον(足を取られるもの、邪魔になるもの)に由来。ἐν(中に、間に)と πούς(足、属格 ποδός)を合わせた形容詞 ἐμπόδιος(足に絡みつく、妨げになる)から作られた中性名詞。
πούς は印欧祖語で「足」を表す語根から出た語で、ラテン語 pes(属格 pedis、足)と同系。英語 impede(妨げる、もとは「足に枷をかける」)、expedite(急がせる、もとは「足を解く」)、pedestrian(歩行者の)もこの語族。英語 foot も同じ語根。
派生語に εμποδίζω(妨げる)、εμπόδιση(妨害)、εμπόδισμα(障害)。同じ語族で日常に使うのは πόδι(足)。
ギリシャ語:εμπόριο
読み方:エボリオ・エボーリオ・エンボリオ・エンボーリオ
ラテン文字:emporio
古代ギリシャ語の ἐμπόριον(交易の場、商い)に由来。ἐν-(中に)+ πόρος(通路、道)からなる ἔμπορος(旅する商人)に、場所を表す -ιον が付いた語で、商人が行き交う場を指した。πόρος は英語 port(港)、portal(入り口)と同じ印欧祖語の語根から。現代ギリシャ語にはカサレヴサを通じて入り、フランス語 commerce、英語 trade からの意味借用で「貿易、商業」を言う語として整えられた。
英語 emporium(大商店、通商地)もラテン語を経てこの ἐμπόριον から。
派生語に εμπορικός(商業の)、εμπορεύομαι(商う、取引する)、έμπορος(商人)、εμπόρευμα(商品)。関連語に αγορά(市場)、κατάστημα(店舗)、συναλλαγή(取引)、κέρδος(利益)など。
ギリシャ語:ενέργεια
読み方:エネルイア・エネールイア・エネルギア・エネールギア
ラテン文字:energeia
古代ギリシャ語の ἐνέργεια(働き、活動)を継承。ἐν-(中で、〜の状態で)と ἔργον(仕事、働き)を合わせた形容詞 ἐνεργής(働いている、活動している)に性質を表す接尾辞 -ία を付けて作った名詞。物理の「エネルギー」の意味は、フランス語 énergie、英語 energy からの意味借用で定着した。
ἔργον は印欧祖語で「作る、働く」を表す語根から出た語で、英語 work、ドイツ語 Werk と同系。英語 energy、ergonomics(人間工学)、synergy(相乗作用)もこの語族。
派生語に ενεργώ(作用する、活動する)、ενεργός(活発な、働いている)、ενεργητικός(能動的な、活動的な)、ενεργειακός(エネルギーの)。複合語に ραδιενέργεια(放射能)、παρενέργεια(副作用)、αλληλενέργεια(相互作用)。
ギリシャ語:ενήλικας
読み方:エニリカス・エニーリカス
ラテン文字:enilikas
コイネーの ἐνήλιξ(一人前の年齢に達した者。対格 ἐνήλικα)からの学術的借用語。語源的には ἐν(〜に至って)と ἡλικία(年齢)の合成で、「しかるべき年齢に至った」という構成になっている。この ἡλικία は現代ギリシャ語の ηλικία(年齢) と同じ語。
同義語に ενήλικος(エニリコス)があり、こちらはより形容詞的な語形成に由来する。対義語は ανήλικος(アニリコス、未成年者)で、法的・生物学的に成熟した個人を ενήλικας、未成年を ανήλικος と対比して用いる。
ενηλικίωση(エニリキオシ、成人に達すること)や ενηλικιώνομαι(エニリキョノメ、成人する)といった派生語もある。
成年に達した人を指す。
ギリシャ語:ενθουσιασμός
読み方:エンスシアズモス・エンスシアズモース・エントゥシアズモス・エントゥシアズモース
ラテン文字:enthousiasmos
ギリシャ語:ενσυναίσθηση
読み方:エンシネスシシ・エンシネースシシ・エンシネスティシ・エンシネースティシ・エンシネスシシ・エンシネースシシ
ラテン文字:ensynaisthisi
ενσυναίσθηση は εν(中に)、συν(共に)、αίσθηση(感覚)の合成語で、英語 empathy やフランス語 empathie が表す「相手の内面に入り込んで共に感じる」という概念を、ギリシャ語の要素で訳した語。稀に中性名詞の ενσυναίσθημα も使われる。
同じ概念を表しそうな εμπάθεια は εν(中に)+ πάθος(感情)で構造上は empathy にぴったりだが、現代ギリシャ語では「悪意、敵意」と正反対の意味を持っている。この混乱を避ける形で、ενσυναίσθηση が empathy の受け皿になった。
ギリシャ語:εντύπωση
読み方:エディポシ・エディーポシ・エンディポシ・エンディーポシ
ラテン文字:entyposi
古代ギリシャ語の ἐντύπωσις(刻印、刻み込むこと)から。ἐν-(中に)+ τύπος(型、刻印)からなる語で、もとは物理的に型を押しつけることを指した。τύπος は英語 type(型、活字)、typical(典型的な)、stereotype(ステレオタイプ)の語源で、ラテン語 typus を経て英語に入った。
現代の「心に受ける印象」の意味は、フランス語 impression(「押す」の意から)の訳語としてうつったもの。
派生語に εντυπωσιακός(印象的な)、εντυπωσιάζω(感銘を与える)、εντυπώνω(刻み込む)など。関連語に αίσθηση(感覚)、ιδέα(考え、観念)、άποψη(見解)、τύπος(型、新聞、活字)など。
ギリシャ語:ένωση
読み方:エノシ・エーノシ
ラテン文字:enosi
古代ギリシャ語の ἕνωσις(結合、一体化)を継承。動詞 ἑνόω(ひとつにする、結合する)に結果を表す接尾辞 -σις を付けて作った名詞。ἑνόω は εἷς / ἕν(一、一つ)から作られた語。
εἷς は印欧祖語で「一、同じ」を表す語根から出た語で、ラテン語 simul(同時に)、semper(いつも、常に)と同系。英語 simple、similar、simultaneous、same、single もすべてこの語根から。
団体や国の連合の意味はフランス語 union、化学の「化合物」の意味はドイツ語 Verbindung からの意味借用で定着した。
関連語に ενώνω(結びつける、一つにする)、ενωμένος(結合した)、ενωσιακός(連合の)。同じ語族の基本語は ένας(一、ある)。
ギリシャ語:έξαλλος
読み方:エクサルロス・エークサルロス
ラテン文字:exallos
古代ギリシャ語の ἔξαλλος(普通と違う、際立った)に由来。ἐξ(〜の外へ)と ἄλλος(他の)の合成で、「他のものから外れている、通常の範囲を超えている」が初義。古代の動詞 ἐξάλλομαι(高く跳び上がる)と取り違えられたとも言われ、その影響もあって今は怒りや喜びで「我を忘れている」状態、祝祭やリズムが「度を越して激しい」さま、見た目が「奇抜すぎる」ことなどに使う。
派生語に名詞 εξαλλοσύνη(取り乱した状態、奇行)、副詞 έξαλλα(取り乱して、どぎつく)。怒りの文脈では θυμός(怒り)、喜びの文脈では χαρά(喜び)と結びつく。成句 εν εξάλλω καταστάσει/σε έξαλλη κατάσταση は「ひどく興奮した状態で」を指す改まった表現。
ギリシャ語:έξυπνος
読み方:エクシプノス・エークシプノス
ラテン文字:exypnos
中世ギリシャ語の ἔξυπνος を継承。ἐξ-(〜から外へ、〜の状態から抜けて)と ύπνος(眠り)を合わせた形容詞で、もとは「眠りから抜けた、目が覚めた」の意味。目覚めている人は物わかりが早いという連想から、「頭のよい、気の利く」の意味で定着した。
ύπνος は印欧祖語で「眠る」を表す語根から出た語で、ラテン語 somnus(眠り)、sopor(深い眠り)と同系。英語 hypnosis(催眠)、hypnotic(催眠の)、somnolent(眠気を催す)、insomnia(不眠症)、soporific(眠気を誘う)も同じ語族。
関連語に εξυπνάδα(機転、利口さ)、εξυπνάκιας(知ったかぶり、小利口な者)、動詞の ξυπνώ(目を覚ます、起きる)。
ギリシャ語:έξω
読み方:エクソ・エークソ
ラテン文字:exo
古代ギリシャ語の ἔξω(外に、外で)を継承。前置詞 ἐξ(〜の外へ)に副詞語尾 -ω が付いた語で、形がほぼそのまま今に伝わる。英語の接頭辞 exo- は同じ ἔξω に由来し、exoskeleton(外骨格)、exoplanet(太陽系外惑星)に残る。exotic(異国の、エキゾチックな)も古代ギリシャ語 ἐξωτικός(外部の、外来の)から。
接頭辞 εξω-(〜の外の)として εξωπραγματικός(非現実的な)、εξώφυλλο(表紙)、εξωσυζυγικός(婚姻外の)、εξωγήινος(地球外の)などの合成語をつくる。対義語は μέσα(中に、内側に)。
ギリシャ語:εξώστης
読み方:エクソスティス・エクソースティス
ラテン文字:exostis
ギリシャ語:επέτειος
読み方:エペティオス・エペーティオス
ラテン文字:epeteios
古代ギリシャ語の ἐπέτειος(毎年めぐる、年ごとの)に由来。ἐπί-(〜の上で、〜ごとに)と ἔτος(年)を合わせた形容詞で、もとは「毎年めぐる」という意味。現代の「記念日」の意味は、フランス語 anniversaire からの意味借用で定着した。
ἔτος は印欧祖語で「年」を表す語根から出た語で、ラテン語 vetus(古い、年を重ねた)と同系。英語 veteran(古参、経験豊かな人、もとは「年を重ねた」)、inveterate(根深い、ずっと続いた)もこの語族。
関連語に επετειακός(記念日の)、ετήσιος(年ごとの、毎年の)、έτος(年)。誕生日は γενέθλια で言うことが多い。
ギリシャ語:επίθεση
読み方:エピセシ・エピーセシ・エピテシ・エピーテシ
ラテン文字:epithesi
古代ギリシャ語の ἐπίθεσις(上に置くこと、付加、攻撃)に由来。
動詞 ἐπιτίθημι(上に置く、加える、攻撃する)に行為を表す接尾辞 -σις が付いた形で、構成要素は ἐπί-(上に)+ τίθημι(置く)。古代から物を上に載せる意味と、敵に仕掛ける意味の両方を持っていた。
現代ギリシャ語における軍事的な「攻撃、襲撃」としての使い方は、フランス語 attaque からの意味借用によって整理されたもの。
派生語に επιτίθεμαι(攻撃する)、επιθετικός(攻撃的な)、επιθετικότητα(攻撃性)、επίθετο(形容詞、文法)など。関連語に άμυνα(防衛)、ήττα(敗北)、προσβολή(攻撃、侵害)など。
ギリシャ語:επίθετο
読み方:エピセト・エピーセト・エピテト・エピーテト
ラテン文字:epitheto
古代ギリシャ語の ἐπίθετον(付加されたもの)から。ἐπί-(〜に)+ τίθημι(置く)からなる ἐπιτίθημι(添える、加える)の形容詞 ἐπίθετος の中性形が名詞化した語。τίθημι は英語 theme(主題)、thesis(テーゼ)、hypothesis(仮説)、thesaurus(類語辞典)の語源でもある。
英語 epithet(形容語句)はこの ἐπίθετον から。英語 adjective はラテン語 adiectīvum(「投げ加えられた」)で、ἐπίθετον の翻訳借用。どちらも名詞に「添えられる語」の発想を名称にしている。
「姓」の意味は、下の名前に添えられる家族名として現代ギリシャ語で定着した用法。派生語に επίθεση(付加、攻撃)、επιθετικός(形容詞的な、攻撃的な)など。関連語に όνομα(名前)、επώνυμο(姓、同じく ἐπί- を用いる)、ουσιαστικό(名詞)など。
ギリシャ語:επιστήμη
読み方:エピスティミ・エピスティーミ
ラテン文字:epistimi
古代ギリシャ語 ἐπιστήμη(知識、学知)に由来。動詞 ἐπίσταμαι(よく知っている、心得ている)に名詞を作る接尾辞 -μη を付けた語で、ἐπί-(〜の上に)と ἵσταμαι(立つ、身を置く)を合わせた動詞から作られている。「知の上に身を置く」感覚が出発点。現代の「科学、学問分野」の意味は、フランス語 science、英語 science からの意味借用で定着した。
ἵστημι(立つ、立てる)は印欧祖語で「立つ」を表す語根から出た語で、ラテン語 stāre(立つ)、status(状態)と同系。英語 stand、state、status、stable、system、stasis も同じ語族。
派生語に επιστήμονας(科学者、学者)、επιστημονικός(科学的な)、επιστημονισμός(科学主義)。複合語に πανεπιστήμιο(大学)、γεωεπιστήμη(地球科学)、νευροεπιστήμη(神経科学)、ψευδοεπιστήμη(疑似科学)。
ギリシャ語:επιτάχυνση
読み方:エピタヒンシ・エピターヒンシ
ラテン文字:epitachynsi
古代ギリシャ語の ἐπιταχύνω(速める)から。ἐπί-(さらに)+ ταχύνω(速くする)からなり、語根 ταχύς(速い)は英語 tachy-(tachometer「回転速度計」、tachycardia「頻脈」、tachyon「タキオン」など)の語源でもある。
派生語に επιταχυντής(加速器、粒子加速器)、επιταχύνω(加速する、促進する)など。関連語に ταχύτητα(速度)、τάχυνση(同義の、接頭辞のない形)、επιβράδυνση(減速)など。
ギリシャ語:επιφάνεια
読み方:エピファニア・エピファーニア
ラテン文字:epifaneia
古代ギリシャ語の ἐπιφάνεια(現れ、出現、姿)を継承。形容詞 ἐπιφανής(はっきり見える、名高い)に性質を表す接尾辞 -ια を付けた名詞で、もとの動詞は ἐπιφαίνω(現れる、姿を見せる)。ἐπί-(〜の上に、前に)と φαίνω(光る、姿を現す)を合わせた語。もとは「姿を見せること」を言い、現代の「表面、面」の意味は、英語 surface、フランス語 surface からの意味借用で定着した。
φαίνω は印欧祖語で「光る、現れる」を表す語根から出た語で、ギリシャ語 φως(光)、φαντασία(空想、想像)、φαινόμενο(現象)も同じ語族。英語 phenomenon、phase、phantom、fantasy、emphasis、epiphany(キリスト教の公現祭)も仲間。
派生語に επιφανειακός(表面の、表面的な)、関連語に εμφάνιση(現れ、外見)。
ギリシャ語:εποχή
読み方:エポヒ・エポヒー
ラテン文字:epochi
古代ギリシャ語の ἐποχή(天体が止まって見える点、一定の時期)に由来。動詞 ἐπέχω(〜の上で止まる、保持する)から作られた語で、古代天文学で星が運行の頂点で止まって見える点を指したのが起点。そこから「時間の区切り」を表すようになり、近代に「季節」「歴史上の時代」の意味はフランス語 époque、période からの意味借用で加わった。英語 epoch も同じギリシャ語から。
派生語に εποχικός(季節の、時代の)。類義語の καιρός(天気、時、好機)が状況やタイミングを言うのに対し、εποχή はまとまった期間としての区切りを表す。μέρα(日)よりは長く、χειμώνας(冬)のような一つの季節は εποχή の下位区分にあたる。
ギリシャ語:εργάζομαι
読み方:エルガゾメ・エルガーゾメ
ラテン文字:ergazomai
古代ギリシャ語の ἐργάζομαι(働く、行う)に由来。古代の基本語 ἔργον(仕事、作品)に中動態の接尾辞 -άζομαι が付いた動詞。ἔργον は英語 work と同語源。ἐν-(中に)+ ἔργον の合成語 ἐνέργεια は、ενέργεια(エネルギー)と英語 energy の共通の源。
日常で「働く」を広く指す δουλεύω に対し、εργάζομαι はよりフォーマルで、公的・職業的な文脈で使われやすい。
派生語に εργασία(労働、仕事)、εργάτης(労働者)、έργο(仕事、作品)、εργοστάσιο(工場)、εργαλείο(道具)、εργοδότης(雇用主)など。合成動詞に επεξεργάζομαι(処理する、加工する)、συνεργάζομαι(協力する)、κατεργάζομαι(加工する)、περιεργάζομαι(詳しく調べる)など。
ギリシャ語:εργαλείο
読み方:エルガリオ・エルガリーオ
ラテン文字:ergaleio
古代ギリシャ語の ἐργαλεῖον(道具、作業具)に由来。ἔργον(仕事、働き)に道具を表す接尾辞 -εῖον を付けた名詞で、もともと「仕事の道具」の意味。比喩的に研究や作業の手段を言う用法は、英語 tool、フランス語 outil からの意味借用で定着した。
ἔργον は印欧祖語で「作る、働く」を表す語根から出た語で、英語 work、ドイツ語 Werk と同系。同じ語族に ενέργεια(エネルギー)、όργανο(器官、楽器)、英語 ergonomics(人間工学)、synergy(相乗作用)。
複合語に εργαλειοθήκη(道具箱)、εργαλειομηχανή(工作機械)、πολυεργαλείο(多機能ツール)。
ギリシャ語:εργασία
読み方:エルガシア・エルガシーア
ラテン文字:ergasia
古代ギリシャ語の ἐργασία(労働、仕事、商売、作品など)に由来。古代の基本語 ἔργον(仕事、作品)から動詞 εργάζομαι(働く)が派生し、その名詞形としてできた語。ἔργον は英語 work と同じ語源。ενέργεια(エネルギー)も ἐν-(中に)+ ἔργον からなる語で、同じ語根をもつ。
日常で「仕事」を広く指す δουλειά に対し、εργασία はよりフォーマルで、雇用、労働市場、契約など制度的な文脈で使われる。
派生語に εργάτης(労働者)、εργαλείο(道具)、έργο(仕事、作品)、εργασιακός(労働の、雇用の)など。合成名詞も多く、συνεργασία(協力)、επεξεργασία(処理、加工)、διεργασία(過程)、τηλεργασία(テレワーク)など。
ギリシャ語:εργοδότης
読み方:エルゴドティス・エルゴドーティス
ラテン文字:ergodotis
εργοδότης(雇用主、使用者)は、έργο(仕事)と δότης(与える人)に由来する語形成からできた語である。現代ギリシャ語では、人を雇って仕事を与える側を指す。
υπάλληλος(職員、社員、事務員) が雇われる側を言うのに対して、εργοδότης は雇う側を言う。雇用関係の文書としては σύμβαση(契約、協定)が近い。
意味は雇用主、使用者。会社にも個人事業主にも使える。
ギリシャ語:έρημος
読み方:エリモス・エーリモス
ラテン文字:erimos
古代ギリシャ語の ἔρημος(人のいない、見捨てられた)を継承。もとは形容詞で、女性形を名詞として「砂漠、荒野」の意で使う用法が古代から定着している。
派生の古代 ἐρημίτης(荒野に住む人、隠者)が後期ラテン語 eremita を経て、英語 hermit(隠者)の元になった。
派生語に ερημιά(荒地、人けのない場所)、ερημία(孤独)、ερημίτης(隠者)、ερημώνω(荒廃させる)、ερημικός(人気のない、寂れた)など。
ギリシャ語:ερυθρός
読み方:エリスロス・エリスロース・エリトゥロス・エリトゥロース
ラテン文字:erithros
ギリシャ語:έρχομαι
読み方:エルホメ・エールホメ
ラテン文字:erchomai
古代ギリシャ語の ἔρχομαι(来る)を継承。人や物がこちらへ来ることを表す、現代ギリシャ語の基本動詞の一つ。
過去形 ήρθα(文語では ήλθα)は、古代のアオリスト ἦλθον から来ており、現在形 έρχομαι とは別の語根に由来する。同じ語根からは έλευση(到来)や προέλευση(由来、出どころ)も派生している。命令形 έλα・ελάτε(来い、来て)はさらに別で、古代の ἐλαύνω(馬車を駆る)の命令形が、中世ビザンツ期に馬車競技場の掛け声として使われたのがもとではないかとされる。έρχομαι は現在・過去・命令がそれぞれ別の語源を持つ補充法動詞である。
合成動詞は多く、εισέρχομαι(入る)、εξέρχομαι(出る)、προέρχομαι(由来する)、συνέρχομαι(集まる、意識を取り戻す)、παρέρχομαι(過ぎ去る)など。現在分詞 ερχόμενος は「来たる、次の」の意で日付や時期によく使われる。
関連する動詞に「行く」の πάω / πηγαίνω、「去る」の φεύγω、「着く」の φτάνω、「入る」の μπαίνω、「出る」の βγαίνω など。
ギリシャ語:έρωτας
読み方:エロタス・エーロタス
ラテン文字:erotas
中世ギリシャ語の έρωτας(恋愛、性愛)に続く語で、現代では恋愛や性愛を表す基本語になっている。愛する感情そのものだけでなく、その相手や性交まで指せる広がりを持つ。
先頭を大文字にした Έρωτας(愛の神エロス)は、古代ギリシャ語の Ἔρως(愛の神)にさかのぼる。
αγάπη(愛)がより広く「愛」全般を指せるのに対し、έρωτας は恋愛や性的な情熱に重心がある。στοργή(家族的な慈しみ)は家族的な愛情、φλερτ(いちゃつき、軽い恋の駆け引き)は恋の駆け引きや軽い色気を表す語として近い。
主な意味は、ほかの人に向かう強い恋愛感情や性的な欲望。そこから、恋の相手、性交、何かへの熱中も表す。複数形 έρωτες(色恋沙汰、浮ついた恋愛ごと)では、くだけた響きが出る。先頭大文字の Έρωτας は愛の神、植物名ではインパチェンスも指す。
ギリシャ語:ερώτηση
読み方:エロティシ・エローティシ
ラテン文字:erotisi
古代ギリシャ語の ἐρώτησις(問い、質問)から。動詞 ἐρωτάω(尋ねる、問う)の名詞形で、古代から「問うこと」を表す基本語として使われていた。似た綴りの ἔρως(愛)や英語 erotic は別の語根から。
派生語に ερώτημα(質問、疑問。より抽象的な問い)、ερωτηματικός(疑問の)、ερωτηματολόγιο(アンケート、質問票)、ερωτώ(尋ねる)、διερωτώμαι(自問する)など。関連語に απορία(当惑、疑問)、απορώ(不思議に思う)など。
ギリシャ語:εσωτερισμός
読み方:エソテリズモス・エソテリズモース
ラテン文字:esoterismos
古代ギリシャ語で「内側」を意味する ἔσω から派生した形容詞 ἐσωτερικός(内側の、内輪の)が語源。古代の哲学では、門弟にのみ教える秘密の教義を ἐσωτερικά(内側のもの)と呼び、一般向けの ἐξωτερικά(外向きのもの)と区別していた。
英語の esoteric もこの ἐσωτερικός から生まれた語で、名詞形の esotericism やフランス語の ésotérisme へと展開した。εσωτερισμός はこれらの西欧語から現代ギリシャ語に取り入れられた。
類義語に αποκρυφισμός(オカルティズム)や μυστικισμός(神秘主義)がある。
主な意味は、入門者のみに知識を共有する秘教的な教義体系。宗教的、神秘的、哲学的エゾテリズムといった使い分けがある。また、作品が持つ内面的な深みを指す「内面性」の意味もある。
ギリシャ語:ευγενικός
読み方:エヴイェニコス・エヴイェニコース・エヴゲニコス・エヴゲニコース
ラテン文字:evgenikos
中世ギリシャ語の εὐγενικός を継承。古代ギリシャ語の εὐγενής(生まれのよい、気高い)に接尾辞 -ικός を付けた形容詞。εὐγενής は εὖ(よく、うまく)と γένος(生まれ、家柄、血統)を合わせた語で、もとは「よい家に生まれた」感覚。
γένος は印欧祖語で「生む、生まれる」を表す語根から出た語で、ラテン語 genus(種族、生まれ)、gens(氏族)と同系。英語 genus、generate、generation、genuine、gentle、gentleman、genesis も同じ語族。ギリシャ語の語族に γονιός(親)、γενιά(世代)、γενναίος(勇敢な、気前のよい、もとは「生まれのよい」)、γενέθλια(誕生日)。
派生語に ευγενικότητα(礼儀正しさ、親切)、関連形容詞に ευγενής(高貴な、気品のある)。
ギリシャ語:ευθεία
読み方:エフシア・エフシーア・エフティア・エフティーア
ラテン文字:eftheia
古代ギリシャ語の εὐθεῖα(直線, まっすぐなもの)を継承。形容詞 εὐθύς(まっすぐな, 直接の)の女性形から名詞化した語で, 「まっすぐな線」がもとの意味。印欧祖語で「向きをまっすぐに定める」を表す語根に続く。
同じ εὐθύς の語族に現代の ευθύς(まっすぐな, 直接の), κατευθείαν(まっすぐに, 直接に), ευθύτητα(正直さ), 合成語 ευθύγραμμος(直線の)。
γραμμή(線)が曲線や折れ線を含む線一般を指すのに対し, ευθεία は曲がらないまっすぐな線に限って使う。対になる語は καμπύλη(曲線)で, 形容詞 καμπύλος(曲がった, 湾曲した)と名詞 καμπύλωση(湾曲, 屈曲)も同じ語族。
ギリシャ語:εύκολος
読み方:エフコロス・エーフコロス
ラテン文字:efkolos
古代ギリシャ語の εὔκολος を継承。εὖ(よく)と κόλος を合わせた語で、κόλος の出所ははっきりせず、χολή(胆汁)の変種ではないかという説もある。反対語は δυσ-(悪く、困難に)を持つ δύσκολος(難しい、厄介な)。
派生語に ευκολία(簡単、楽さ)、διευκολύνω(楽にする、便宜をはかる)、διευκόλυνση(便宜、便益)。複合語に ευκολονόητος(わかりやすい)、ευκολόπιστος(信じやすい、だまされやすい)。
ギリシャ語:ευσέβεια
読み方:エフセヴィア・エフセーヴィア
ラテン文字:efseveia
古代ギリシャ語の εὐσέβεια(敬虔、信仰心)からの学術借用。形容詞 εὐσεβής(敬虔な、εὖ「よく」+ σέβομαι「畏れ敬う」+ -ής)から作られた抽象名詞で、直訳は「よく畏れ敬うこと」。σέβομαι は印欧祖語で「避ける、離れる」を表す根に由来し、神聖なものから身を退いて敬うという感覚がもとにある。サンスクリット tyaj-(離れる、捨てる)が同源。
派生・関連語に ευσεβής(敬虔な)、ευσεβώς(敬虔に)、ευσεβισμός(敬虔主義)、ευσεβιστής(敬虔主義者)、ασέβεια(不敬、不遜)、σέβας(畏敬、尊崇)、σέβομαι(敬う)、σεβασμός(敬意、尊敬)、σεβαστός(尊敬すべき)など。
固有名 Ευσέβιος(エウセビオス、「敬虔な者」)は古代からの男性名で、4世紀の教会史家カイサリアのエウセビオスで広く知られる。英語 Eusebius も同じ名。
ギリシャ語:ευτυχία
読み方:エフティヒア・エフティヒーア
ラテン文字:eftychia
古代ギリシャ語の εὖ(良く)と τύχη(運、偶然 → τύχη)からなる εὐτυχία(成功、幸運)に由来。現代ギリシャ語では「幸福、幸せ」が中心の意味で、「幸運、好機」の用法にはフランス語 bonheur の意味借用が含まれる。
対義語の δυστυχία(不幸)は δυσ-(悪い)と τύχη の構成で、ちょうど対をなす。派生語には ευτυχισμένος(幸せな)がある。
類義語の ευδαιμονία(持続的な幸福、至福)は、より精神的・哲学的な充足感を指す。ευτυχία が出来事や感情の昂ぶりによる幸せを表すのに対し、ευδαιμονία は内面的な充足に重きを置く。出来事としての「幸運」には ευτύχημα(幸運な出来事)や καλοτυχία(幸運)もある。
主な意味は、ポジティブな出来事や喜びによる幸福、幸せ。また、幸運や好都合な巡り合わせも指す。祝辞では「κάθε ευτυχία(あらゆる幸福を)」のように用いられることも多い。
ギリシャ語:ευφορία
読み方:エフォリア・エフォリーア
ラテン文字:euforia
ευφορία は古代ギリシャ語の εὖ(よく)と φέρω(運ぶ、耐える)から成る語。古代ギリシャ語では「耐え忍ぶ力」を意味していたが、ヘレニズム期に「土壌が豊かであること(多産)」や「病気の際の安らぎ・快感」へと意味が変化した。
現代ギリシャ語で「精神的な幸福感」を指すようになったのは、フランス語 euphorie(ギリシャ語源からの借用語)から逆輸入される形で定着したことによる。英語の euphoria(多幸感、幸福感)とも語源を共有している。対義語には δυσφορία(不快感、不機嫌)がある。
主な意味は、心身の多幸感・高揚感と、土地が豊作をもたらす肥沃さの二つ。比喩的に、何かが満ち足りている状態を指すこともある。
ギリシャ語:ευφυΐα
読み方:エフィア・エフィーア
ラテン文字:efyia
古代ギリシャ語の εὐφυΐα(優れた資質、生まれつきの才能)からの学術借用。形容詞 εὐφυής(生まれつき優れた、εὖ「よく」+ φυή「生まれつきの性質、体格」+ -ής)から作られた抽象名詞。φυή は動詞 φύω(生える、生まれる)の派生名詞で、印欧祖語「現れる、生まれる、育つ」の根に由来する。英語 be はこの根から生まれた代表的な語で、ラテン語 fuī(あった)/ fiō(なる)、サンスクリット bhávati(なる、ある)なども同じ根から来ている。
派生・関連語に ευφυής(聡明な、才気ある)、ευφυώς(聡明に)、ευφυολόγημα(気の利いた言葉、ウィット)、ευφυολογία(機知)、ευφυολόγος(ウィットに富んだ人)、δυσφυΐα(愚鈍)など。類義語に νοημοσύνη(知能、知性)、διάνοια(知性、思考力)、μυαλό(脳、頭、知恵)。
英語 physical(身体の、物理の)、physics(物理学)、physique(体格)、physiology(生理学)は、同じ φύω の根から生まれた φύσις(自然、性質)や φυτόν(植物)をもとにした学術語。
ギリシャ語:ευχαρίστηση
読み方:エフハリスティシ・エフハリースティシ
ラテン文字:efcharistisi
ευχαρίστηση は中世ギリシャ語の ευχαρίστησις(喜び、満足)にさかのぼる語で、のちにフランス語 plaisir(喜び、楽しみ)の意味的な影響も受けながら、現代ギリシャ語では ευχαρίστηση の形に整った。「欲求や望みが満たされたときに生まれる喜びや満足感」を表す語として定着している。
日常会話でよく知られる ευχαριστώ(感謝する、ありがとうと言う)も同じ語族に属する語で、挨拶の「ありがとう」としての ευχαριστώ は、もともと動詞 ευχαριστώ の一人称単数がそのまま使われている形。
χαρά(喜び) が喜びそのものの高まりを言いやすいのに対し、ευχαρίστηση はもっと落ち着いた快さや満ち足りた感じに寄る。ευτυχία(幸福、幸せ) はさらに広く、持続的な幸せや幸福を指しやすい。
近い語には αγαλλίαση(歓喜)、απόλαυση(享受、楽しみ)、ευαρέσκεια(満足)、ευφροσύνη(晴れやかな喜び)、ικανοποίηση(満足)、τέρψη(楽しみ)があり、反対側には δυσαρέσκεια(不満、不快)がある。
中心にあるのは、何かが自分の望みや必要にかなったときの喜び、楽しみ、満足感。その感情そのものだけでなく、何かが楽しみになることや、丁寧なやり取りで「喜んで」「光栄です」に当たる言い方にも使われる。
ギリシャ語:ευχάριστος
読み方:エフハリストス・エフハーリストス
ラテン文字:efcharistos
古代ギリシャ語の εὐχάριστος(感謝する、喜ばせる)に由来。εὖ(よく)と χάρις(喜び、好意)を合わせた形容詞。現代の「楽しい、感じのよい」の意味は、フランス語 agréable からの意味借用で定着した。
関連語に εὐχαριστώ(感謝する、「ありがとう」)、ευχαρίστηση(喜び、楽しみ、満足感)。
ギリシャ語:έφηβος
読み方:エフィヴォス・エーフィヴォス
ラテン文字:efivos
ギリシャ語:εφημερίδα
読み方:エフィメリダ・エフィメリーダ
ラテン文字:efimerida
ギリシャ語:εφιάλτης
読み方:エフィアルティス・エフィアールティス
ラテン文字:efialtis
古代ギリシャ語の ἐφιάλτης(うなされること、夢魔)に由来。ἐπί(上へ)と ἅλλεσθαι(跳ぶ)の合成で、眠る人の上に飛び乗る怪物を指した。やがて怪物そのものではなく、それが引き起こす夢、すなわち悪夢を指す語に変わった。
テルモピュライの戦いでペルシア軍に抜け道を教えた裏切り者 Εφιάλτης(エピアルテス)の名でもあり、ここから「裏切り者」の代名詞としても使う。派生語に εφιαλτικός(悪夢のような)。類義語の βραχνάς(悪夢、息苦しい夢)も悪夢を指すが、εφιάλτης は脅威・耐えがたい状況の比喩にも広く使う。
Ζ
ギリシャ語:ζαρζαβατικό
読み方:ザルザヴァティコ・ザルザヴァティコー
ラテン文字:zarzavatiko
ペルシャ語の sabz/sabza(緑、青物、野菜)の複数形 sabzavāt が、トルコ語 zerzevat(青物、野菜)として借用され、それがオスマン期にギリシャ語へ ζαρζαβάτι(青物、野菜)として入った外来借用。これに「〜に関するもの」を表す接尾辞 -ικό が付き、ζαρζαβατικό の形になった。日常では複数形 ζαρζαβατικά で「野菜類」を指して使うことが多い。
類義語に λαχανικό(野菜。標準的・正式な形で、栄養学・農学・流通など硬い文脈で広く使う), χορταρικό(野菜、青物。葉物や草を中心に指す)。ζαρζαβατικό は市場や台所、料理の場面で使うくだけた形として広く使う。関連語に ζαρζαβάτι(青物、野菜。-ικό 抜きの形でも単独で野菜を指し、ζαρζαβατικό はこれに -ικό を付けた形)。
ギリシャ語:ζαρκάδι
読み方:ザルカディ・ザルカーディ
ラテン文字:zarkadi
古代ギリシャ語の ζορκάς(ガゼルの一種)に由来する。ζορκάς は δορκάς(ガゼル)の別形で、ヘレニズム時代から中世にかけて指小辞形 ζορκάδιον が生まれた。その後、母音調和により o が a に変わり、現代ギリシャ語の ζαρκάδι となった。
英語の dorcas(ガゼルの一種)も同じ古代ギリシャ語の δορκάς に由来する。
ζαρκάδι はノロジカを指す語で、シカ全般を表す ελάφι とは区別される。ελάφι がシカ科の動物を広く指すのに対し、ζαρκάδι はノロジカに限定される。ほかにも πλατόνι(ダマジカ)、τάρανδος(トナカイ)など、シカの仲間にはそれぞれ固有の語がある。
森に生息するシカの仲間で、優雅な身のこなしと足の速さで知られる。「ζαρκάδι のように走る」という言い回しがあり、非常に速いことのたとえに使われる。
ギリシャ語:ζαφειρένιος
読み方:ザフィレニョス・ザフィレーニョス
ラテン文字:zafirenios
ζαφειρένιος(サファイア色の、深い青の)は、ζαφείρι(サファイア)から -ένιος(〜でできた、〜に関わる)でできた形容詞である。現代ギリシャ語では、宝石そのものに関わる意味と、サファイアのような青色の意味の両方で使う。
γαλανός(澄んだ明るい青の) が明るい青を広く言えるのに対して、ζαφειρένιος は宝石のような深く濃い青を言いやすい。宝石由来の色名という点では σμαραγδένιος(エメラルド製の、エメラルド色の) と並べて見やすい。
意味はサファイア色の、深い青の。海、空、目、布、宝石の色に使いやすい。
ギリシャ語:ζαφείρι
読み方:ザフィリ・ザフィーリ
ラテン文字:zafeiri
ヘブライ語 sappir に由来する語で、ヘレニズム時代のギリシャ語では σάπφειρος の形で用いられていた。当時この語が指していたのはサファイアではなくラピスラズリ、つまり青い半貴石だった。
初期の格変化において、対格で冠詞の末尾 n と結合したことにより語頭の s が z に有声化した。その後の音韻変化も経て、中世ギリシャ語では ζαφείρι(ν) の形となり、現代に至る。英語の sapphire と同語源で、いずれもヘブライ語 sappir に由来する。
日常的にはこの口語形 ζαφείρι が一般的だが、鉱物学的な文脈や格調高い表現では古代ギリシャ語の形を保った σάπφειρος が用いられる。
淡い色から濃い色まで、あらゆる色調の青色を持つ鉱物・貴石を指す。
ギリシャ語:ζάχαρη
読み方:ザハリ・ザーハリ
ラテン文字:zachari
古代ギリシャ語の σάκχαρις を継承。もとはサンスクリット शर्करा(シャルカラー、砂粒、砂糖)で、ヘレニズム期にギリシャ語に入り、中世に ζάχαρις, ζάχαρη の形となった。学術・化学では古代形に続く σάκχαρο が使われる。
派生語に ζαχαρένιος(砂糖の、甘い), ζαχαρωτό(キャンディー), ζαχαρώνω(砂糖漬けにする), ζαχαρίνη(サッカリン)。合成語に ζαχαροκάλαμο(サトウキビ), ζαχαροπλαστείο(洋菓子店), ζαχαροδιαβήτης(糖尿病)。英語 sugar はアラビア語 sukkar を経て同じサンスクリット語から来た語。英語 saccharin, saccharide はギリシャ語 σάκχαρον を経由した語。
ギリシャ語:ζεσταίνω
読み方:ゼステノ・ゼステーノ
ラテン文字:zestaino
ギリシャ語:ζέσταμα
読み方:ゼスタマ・ゼースタマ
ラテン文字:zestama
古代ギリシャ語の ζεστός(沸騰した、熱い)と、その動詞形である ζεσταίνω(温める) に由来する語。さらに起源は ζέω(煮える、沸騰する)につながり、現代ギリシャ語では「温めること」や「準備運動」の意味で日常的に使われる。
英語の zest(熱意、風味)も、もとをたどれば同じ ζέω から派生したフランス語やラテン語を経由している。
再加熱には αναθέρμανση や ξαναζέσταμα があり、物理的な加熱については θέρμανση(暖房、加熱)とも近い。ただし ζέσταμα はより日常的で、特にスポーツの文脈でよく使われる。対義語には、運動後の αποθεραπεία(クールダウン)や χαλάρωμα(リラックス、弛緩)、冷却を表す κρύωμα がある。
主な意味は、運動前の準備運動と、物体を温めること。そこから、何かの本番に向けた準備の段階を比喩的に言うこともある。
ギリシャ語:ζέστη
読み方:ゼスティ・ゼースティ
ラテン文字:zesti
ギリシャ語:ζεστό
読み方:ゼスト・ゼストー
ラテン文字:zesto
形容詞 ζεστός(熱い、温かい)の中性単数形が名詞として使われるようになったもの。カモミールや紅茶などの植物を煮出した温かい飲み物を指す。通常は治療目的などで温かいうちに飲むもの(煎じ薬)を表す。αφέψημα(煎じ液)と同義。
ギリシャ語:ζεστός
読み方:ゼストス・ゼストース
ラテン文字:zestos
ヘレニズム期ギリシャ語の ζεστός(熱い、沸かした)を継承。古代ギリシャ語の動詞 ζέω(沸騰する、熱くなる)から、動詞由来の形容詞を作る接尾辞 -τός で派生した形。
類義語に θερμός(温かい、熱い), καυτός(焼けるように熱い), χλιαρός(ぬるい、生ぬるい)。温度の度合いに応じて使い分ける。反義語に κρύος(冷たい、寒い), παγερός(凍えるように冷たい)。派生に ζεσταίνω(温める), ζέστη(暑さ、熱さ), ζέστα(熱、暑さ), ζεστασιά(暖かさ、温かみ), ζεστούλης(ほんのり温かい), ζεστούτσικος(ほどよく温かい), ζεστά(温かく、親しく。副詞)。
ギリシャ語:ζήτημα
読み方:ジティマ・ジーティマ・ズィティマ・ズィーティマ
ラテン文字:zitima
古代ギリシャ語の ζήτημα(探求、問題)に由来。動詞 ζητέω / ζητῶ(探す、求める)に、動作の結果を表す -μα を付けた名詞で、現代ギリシャ語の動詞形は ζητώ(求める、探す)。似た語に πρόβλημα(問題)があり、解決を求められる困難は πρόβλημα、議論や検討の対象として取り上げられる案件は ζήτημα と使い分けることが多い。
ギリシャ語:ζυγός
読み方:ジゴス・ジゴース・ズィゴス・ズィゴース
ラテン文字:zygos
古代ギリシャ語の ζυγός(くびき, 天秤)を継承。印欧祖語で「くびき」を表す語根に由来し, 英語 yoke と同じ語族。
派生に ζυγαριά(天秤, はかり), ζυγίζω(計量する), ζύγι(重り), υποζύγιο(駄獣), διαζύγιο(離婚), σύζυγος(配偶者)。
星座名の Ζυγός(てんびん座)は同じ語形を固有名詞化したもので, 一般名詞と区別して大文字で書く。
ギリシャ語:ζωή
読み方:ゾイ・ゾイー
ラテン文字:zoi
古代ギリシャ語の ζωή(生きること、生命)を継承。動詞 ζω(生きる)に名詞を作る -η を付けた形で、印欧祖語で「生きる」を表した語根の子孫。ラテン語 vivus(生きている)、サンスクリット語 jīvati(生きる)はすべて同じ語根から出る。
派生語に ζωηρός(活発な、生き生きとした)。同じ語根の身近な語に ζώο(動物、古代 ζῷον「生き物」から)。
類義語に βίος。伝統的に ζωή は生物としての生命、βίος は生きざまや経歴を指して使い分ける。英語 zoology(動物学)、zoo(動物園)、protozoa(原生動物)は古代ギリシャ語 ζῷον をもとにした学術造語で、同じ語根につながる。
ギリシャ語:ζωντανός
読み方:ゾダノス・ゾダノース・ゾンダノス・ゾンダノース
ラテン文字:zontanos
ギリシャ語:ζώο
読み方:ゾオ・ゾーオ
ラテン文字:zoo
古代ギリシャ語の ζῷον(生き物、動物)から。ζῷον は ζωός(生きている)に指小辞 -ιον がついた形で、もとは「小さな生き物」を意味した。この語は ζωή(命)や ζω(生きる)と語根を共有している。英語の zoology(動物学)や zoo(動物園)、接頭辞の zoo- は、この古代ギリシャ語が起源である。
類義語として、文脈により ζωντανό(家畜、生き物)、αγρίμι(野生動物)、θηρίο(猛獣)、κτήνος(獣、非道な人間)などと使い分けられる。
主な意味は、植物と対比される動物全般を指すが、とくに人間(άνθρωπος)や鳥(πουλί)、魚(ψάρι)、昆虫(έντομο)を除いた哺乳類(θηλαστικό)を指すことも多い。比喩的には、教養のない人や愚かな人に対する罵倒語としても使われる。
指小語の ζωάκι は小さな動物、または親しみを込めた「動物ちゃん」。
Η
ギリシャ語:ήλεκτρο
読み方:イレクトゥロ・イーレクトゥロ
ラテン文字:ilektro
古代ギリシャ語 ἤλεκτρον(輝くもの, 琥珀)に由来。古代では琥珀のほか金と銀の天然合金(エレクトラム)も指した。擦ると静電気を帯びる琥珀の性質にちなみ, 近代に英語 electricity(電気), electron(電子)が作られ, 現代ギリシャ語ではそこから逆輸入する形で電気関係の語彙が広がった。
派生に ηλεκτρίζω(帯電させる, しびれさせる), ηλεκτρικός(電気の), ηλεκτρισμός(電気)。合成語は ηλεκτρο- の形で作られ, ηλεκτρόνιο(電子), ηλεκτρονικός(電子の), ηλεκτρόλυση(電気分解), ηλεκτρομαγνητικός(電磁気の)など電気・電子に関わる語群を形成する。
琥珀を指すときはトルコ語由来の κεχριμπάρι を使うことが多い。
ギリシャ語:ηλίανθος
読み方:イリアンソス・イリーアンソス・イリアントス・イリーアントス
ラテン文字:ilianthos
ギリシャ語:ηλικία
読み方:イリキア・イリキーア
ラテン文字:ilikia
古代ギリシャ語の ἡλικία(同じ年齢、成熟した年齢)を継承。ἧλιξ(同い年の)からの派生語。派生語に ηλικιωμένος(年配の)、συνομήλικος(同い年の)。
ギリシャ語:ήλιος
読み方:イリョ・イーリョ
ラテン文字:ilios
印欧祖語で「太陽」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の ἥλιος(太陽)を継承。ラテン語 sol、英語 sun、ドイツ語 Sonne は同じ語根の別系統。
派生語に ηλιακός(太陽の), ηλιοθεραπεία(日光浴), ηλιοστάσιο(至点), λιάζομαι(日なたぼっこをする)など。関連語に ηλίανθος(ヒマワリ、ήλιος + άνθος「花」の合成語で、口語では ήλιος だけでも呼ぶ), φως(光)。英語 helium は太陽のスペクトルで発見された元素で、ラテン語経由で ἥλιος をもとにした語。heliocentric(太陽中心の), heliosphere(太陽圏)なども同じ語源。
ギリシャ語:ημέρα
読み方:イメラ・イメーラ
ラテン文字:imera
古代ギリシャ語の ἡμέρα(日)を継承。フォーマルな文章や καλημέρα のような挨拶では古代の形のまま、日常会話では中世以降に語頭の母音が落ちた μέρα が一般的。
派生語に ημερήσιος(日ごとの), ημερίδα(一日の研究会), σήμερα(今日), καθημερινός(日々の), εφημερίδα(新聞、もとは「日刊のもの」), ενημερώνω(知らせる)など。英語 ephemeral(はかない、短命の)は古代ギリシャ語の ἐφήμερος(一日かぎりの)を経て同じ ἡμέρα をもとにした語。
ギリシャ語:Ηνίοχος
読み方:イニオホス・イニーオホス
ラテン文字:iniochos
古代ギリシャ語の ἡνίοχος(御者)から。ἡνία(手綱)と ἔχω(持つ)からなる合成語で、「手綱を持つ者」の意味。
ギリシャ語:ήρεμος
読み方:イレモス・イーレモス
ラテン文字:iremos
古代ギリシャ語の副詞 ἠρέμα(静かに、穏やかに)から派生した ἤρεμος(穏やかな)に由来。印欧祖語で休む・静まることを表す語根につながる。
派生語に名詞 ηρεμία(落ち着き)、動詞 ηρεμώ(落ち着く)、副詞 ήρεμα(穏やかに)、ηρεμιστικός(鎮静の)、ηρεμιστικά(鎮静剤)。近い語に ήσυχος(静かな)、γαλήνιος(凪いだ、安らかな)、πράος(穏やかな、温和な)、ψύχραιμος(冷静な)。関連名詞に ειρήνη(平和)。対義語に ταραγμένος(取り乱した、波立った)。
ギリシャ語:ήρωας
読み方:イロアス・イーロアス
ラテン文字:iroas
古代ギリシャ語 ἥρως(hḗrōs、英雄)が起源。対格の ἥρωα を経て現代ギリシャ語の ήρωας となった。もともとは古代神話において卓越した能力を持ち、死後に崇拝の対象となった存在を指す語だった。
古代ギリシャ語 ἥρως はラテン語に hērōs として借用され、さらにフランス語の héros へと受け継がれた。フランス語では「勇敢な人物」や「物語の主人公」の意味が発達し、現代ギリシャ語はこの用法を逆輸入する形で取り入れた(意味借用)。英語の hero も同じくラテン語経由でこの語に由来し、日本語のヒーローもここから来ている。女性形は ηρωίδα で、古代ギリシャ語 ἡρωίς(対格 -ίδα)から来ている。
神話上の超人的な存在から、勇気ある行動をとる人物、物語の登場人物までを指す。
Θ
ギリシャ語:θάλασσα
読み方:サラサ・サーラサ・タラサ・ターラサ
ラテン文字:thalassa
古代ギリシャ語の θάλασσα(海)を継承。印欧語族に属さないギリシャ語以前の基層から入った語で, 確かな親族関係のある言語は立っていない。
派生に形容詞 θαλασσινός(海の, 海産物の), θαλάσσιος(海の, 海洋の), 色を表す θαλασσής, θαλασσί(海色の, 青緑の), 動詞 θαλασσώνω(台無しにする), 指小形 θαλασσάκι(小さな海, 穏やかな海)。合成語に θαλασσοκράτωρ(海を支配する者), θαλασσόλυκος(海の狼, 老練な船乗り)。英語 thalassic(海洋の), thalassemia(地中海性貧血)はここから作られた学術借用語。
πέλαγος(外海, 大海)が陸から離れた広い海面を指すのに対し, θάλασσα は海そのもの全体を言う。πόντος(海)は詩的・文学的な言い方, ωκεανός(大洋)は太平洋や大西洋のような巨大な海洋を指す。淡水の λίμνη(湖)や ποταμός(川)とは別の語。
:::vocab
- ανοιχτή θάλασσα(公海、沖合)
- νεκρή θάλασσα(生物のいない海。νεκρός:死んだ)
- αγγούρι της θάλασσας(ナマコ)
- αλογάκι της θάλασσας(タツノオトシゴ)
- αυτί της θάλασσας(アワビ)
- φρούτα της θάλασσας(シーフード)
- θαλάσσιο σκι(水上スキー)
- θαλάσσιο ταξί(水上タクシー)
- επτά θάλασσες(七つの海)
- χωρικά ύδατα(領海)
:::
主な意味は「海」で、陸地を取り囲む塩水の塊を指す。比喩的に「大量のもの」を表すのにも使われる。
θάλασσα や派生形 θαλάσσιος(海の)を含む合成語が多く、海の生き物の通称にも使われる。αγγούρι της θάλασσας(ナマコ、直訳「海のきゅうり」)、αλογάκι της θάλασσας(タツノオトシゴ、直訳「海の子馬」)、αυτί της θάλασσας(アワビ、直訳「海の耳」)のように、見た目や特徴から名付けられたものが多い。
ギリシャ語:θαλασσής
読み方:サラシス・サラシース・タラシス・タラシース
ラテン文字:thalassis
θάλασσα(海)に、形容詞をつくる接尾辞 -ής が付いた語。θάλασσα は前ギリシャ語(基層言語)からの借用語と考えられており、古代から現代まで「海」の意味で使われ続けている。
英語の thalassic(海の、海洋の)や、地中海貧血症を指す thalassemia(サラセミア)もこの θάλασσα を語源に持つ。
形容詞形には、語尾変化する θαλασσής(-ιά, -ί)と、不変化の θαλασσί の2種類がある。口語では不変化の θαλασσί が名詞の性・数に関わらず広く使われる。中性形 θαλασσί は名詞としても用いられ、海色そのものを指す。
類義語に、明るい青を広く指す γαλάζιος(空色の)や μπλε(青)があるが、θαλασσής は特に海の色を指す。派生語には θαλασσινός(海の、海産の)がある。
澄んだ海のような明るい青色、シーブルーを表す。
ギリシャ語:θάμνος
読み方:サムノス・サームノス・タムノス・タームノス
ラテン文字:thamnos
古代ギリシャ語の θάμνος(低木, 茂み)に由来。ギリシャ語以前の基層から古代ギリシャ語に入ったとされる語で, 同じ語族に θαμινός(ぎっしり詰まった), θαμά(しばしば)。
派生に θαμνώδης(低木状の)。合成語に θαμνοσκεπής(低木に覆われた)。
δέντρο(木, 樹木)が一定以上に育って主幹を持つ木を指すのに対し, θάμνος は地面に近い位置から枝分かれする低木を言う。χαμόδεντρο(低木)は「低い + 木」の合成語で同じ範囲を指し, とげのある藪には βάτος(キイチゴ, イバラの類)を使う。
ギリシャ語:θάνατος
読み方:サナトス・サーナトス・タナトス・ターナトス
ラテン文字:thanatos
古代ギリシャ語の θάνατος(死)を継承。印欧祖語で「死ぬ」を表す語根に続き, 動詞 θνῄσκω(死ぬ)から名詞を作る接尾辞 -τος で作られた語。同じ作り方で βίοτος(命, 生活)も作られた。
派生に θανατηφόρος(死を招く, 致命的な), θανατώνω(死なせる, 処刑する), θανάσιμος(致命的な)。否定の α- を付けた αθάνατος(不死の, 不滅の)は合成語で, 動詞 θνῄσκω から作られた θνητός(死すべき)は同じ語族の兄弟。英語 thanatology(死生学)や euthanasia(安楽死, εὖ「良い」+ θάνατος)はこの語から作られた学術借用語。
対義語は ζωή(命, 生命)。近い語に απώλεια(喪失, 人の死にも使う), χαμός(失うこと, 死)。死を擬人化した Χάρος(死神)は, ギリシャ神話の冥府の渡し守カローン (Χάρων) に由来する。
ギリシャ語:θαύμα
読み方:サヴマ・サーヴマ・タヴマ・ターヴマ
ラテン文字:thavma
古代ギリシャ語の θαῦμα(驚き, 驚異)を継承。θεάομαι(観る)と語源を共有し, もとは「見て驚くもの」。現代の「経済の奇跡」「技術の奇跡」「奇跡のワクチン」など比喩で幅広い驚異を指す用法はフランス語 miracle, merveille と英語 miracle からの意味借用で輪郭が整った。話しことばや文学ではアクセントを移した θάμα という短縮形も使う。
同じ θαῦμα の語族に動詞 θαυμάζω(感嘆する), 形容詞 θαυμάσιος(素晴らしい, 見事な)と θαυμαστός(感嘆に値する), 名詞 θαυμασμός(感嘆), θαυμαστής(愛好者, ファン), θαυμαστικό(感嘆符), 合成語 θαυματοποιία, θαυματουργία(奇跡を起こす業), αξιοθαύμαστος(感嘆に値する)。θαυμάσιος が日常で広く使われ, θαυμαστός は格式高い場面で出てくる。
θεάομαι からは θέατρον(観る場所)が派生して現代の θέατρο になり, ラテン語 theatrum を経て英語 theatre(劇場)になった。英語 thaumaturgy(奇跡的な業, マジック)は θαυματουργία を経て入ったもの。年齢にそぐわない才能を持つ子を指す παιδί-θαύμα(神童)は独語 Wunderkind, 英語 child prodigy, 仏語 enfant prodige の意味借用で生まれた合成語。
ギリシャ語:θεά
読み方:セア・セアー・テア・テアー
ラテン文字:thea
古代ギリシャ語の θεά(女神)に由来。男性名詞 θεός(神)の女性形で, 印欧祖語で「神聖な, 宗教的な」を表す語根に続く語。
派生に増大形 θεάρα(美女を強めて言うときの言い方)。成句 στρογγυλή θεά(丸い女神)はサッカーやサッカーボール自体を指す言い方。
同じ綴りでアクセント位置が異なる θέα(眺め, 景色)は別の語で, 動詞 θεάομαι(見つめる)に由来する。英語 theology(神学), enthusiasm(熱狂)の接頭辞 theo- はこの θεός / θεά と同じ語根から。
καλλονή(絶世の美女), κούκλα(人形のような美貌)は姿かたちの美しさを言うが, θεά は「神々しい, 圧倒的な」美しさの形容として使う。
ギリシャ語:θέα
読み方:セア・セーア・テア・テーア
ラテン文字:thea
古代ギリシャ語の θέα(見ること, 眺め, 光景)を継承。「見る, 観察する」を意味する動詞 θεάομαι の名詞形。同じ綴りでアクセント位置が異なる θεά(女神)は θεός(神)に由来する別の語で, 語源上のつながりはない。
同じ θέα の語族に θέαμα(見せ物, 光景), θέαση(観賞, 視聴), θεατής(観客), 合成語 θέατρο(劇場, もとは「観る場所」)。類義の語として άποψη(視点, パノラマ的な眺め), εικόνα(像, イメージ), κοίταγμα(見ること, 視線)がある。
英語 theater, theory はどちらも同じ θεάομαι の語族から入った語で, θέατρον(観る場所)→ラテン語 theatrum →英語 theater, θεωρία(観察, 考察)→ラテン語 theoria →英語 theory の経路で各言語に入った。仏語 théâtre, théorie も同じ経路。
ギリシャ語:θέατρο
読み方:セアトゥロ・セーアトゥロ・テアトゥロ・テーアトゥロ
ラテン文字:theatro
古代ギリシャ語の θέατρον(見る場所、劇場)から。語根は θέα(眺め、見ること)で、もともとは「人が何かを観る場所」を表していた。
この語はラテン語の theatrum(劇場)にも入り、そこから英語の theatre、theater をはじめとするヨーロッパ諸語にも広がった。現代ギリシャ語の θέατρο は、そうした外来語ではなく、古い語形がそのまま近い形で保たれた語である。
θέατρο は、舞台で演じられる芸術としての演劇、公演そのもの、上演のための戯曲や作品群、建物としての劇場、さらに劇場組織や観客まで含めて言える。ひとつの語で「演じるもの」「上演そのもの」「それを受け止める場」まで覆うのが特徴である。
影絵芝居を指す θέατρο σκιών(影絵芝居)や、操り人形を使う θέατρο μαριονετών(マリオネット劇)のように、上演形式を添えて種類を言い分けることも多い。
主な意味は「演劇」「劇場」。そこから、公演、戯曲という文学ジャンル、特定の作者や国に属する劇作品群、劇団や劇場組織、客席全体の観客、さらに比喩的な「出来事が展開する現場」へと広がる。
成句では、人前で恥をさらす γίνομαι θέατρο(見世物になる、笑いものになる)や、わざとらしくふるまう παίζω θέατρο(芝居を打つ、しらばっくれる)のような言い方がある。近い言い方に γίνομαι θέαμα(見世物になる)があり、どちらも「人に見られる場」という核のイメージから生まれた表現である。
ギリシャ語:θεατρολογία
読み方:セアトゥロロギア・セアトゥロロギーア・テアトゥロロギア・テアトゥロロギーア
ラテン文字:theatrologia
θεατρολογία は、θεατρολόγος(演劇研究者、演劇学者)に -λογία(学問分野を表す要素)が加わった形で、学問名として使われる。中心にあるのは θέατρο(演劇、劇場)で、それを研究対象として扱う分野を表す。
-λογία は、学問分野や体系的な研究を表す語を作るときによく使われる形で、英語の -logy に対応する。θεατρολογία も同じ作りの学術語である。
人を表す語には θεατρολόγος(演劇研究者、演劇学者)があり、分野名と対になる。内容の面では θέατρο(演劇、劇場)の研究を中心に、作品、上演、演劇史、舞台表現などを扱う語として使われる。
主な意味は「演劇学」。大学の学科名、研究分野名、肩書きとして使われることが多い。
ギリシャ語:θείος
読み方:シオス・シーオス・ティオス・ティーオス
ラテン文字:theios
古代ギリシャ語の θεῖος(おじ)に由来。語源ははっきりとはせず, オノマトペ的に作られた呼称語とみられ, 祖母を指す τήθη(ばあ)などと並ぶ古い親族呼称の仲間。形容詞の θεῖος(神の, 神聖な。θεός + -ιος)とは別の語。
派生に指小形 θειούλης(おじさん), 女性形 θεία(おば)。
父方のおじと母方のおじを区別する専用の語はなく, θείος で両方を表す。くだけた場面では, 血縁でなくても年上の男性への呼びかけ「おじさん」の意味にも使う。
ギリシャ語:θεός
読み方:セオス・セオース・テオス・テオース
ラテン文字:theos
古代ギリシャ語の θεός(神)を継承。印欧祖語で「置く, 為す」を表す語根に続き, ラテン語 feriae(祭日), fanum(神殿), festus(祝祭の)と同じ語族の仲間。古代の多神教の神々から, ビザンティン以降はキリスト教の唯一神を指す語として引き継がれた。
派生に θεϊκός(神聖な, 素晴らしい), 指小形 θεούλης(神さま。親しみを込めた言い方)。女性形は θεά(女神)。合成語 αποθεώνω(神格化する, 絶賛する)は από- と θεός から作られた動詞。英語 theology(神学), theism(有神論), atheist(無神論者), enthusiasm(熱狂。もとは「神が内に宿る」の意), apotheosis(神格化)はこの語族から作られた学術借用語。
キリスト教における神の呼称には Κύριος(主), Κτίστης(創造主), Πλάστης(造り主)がある。θεότητα は神性や神格を指し, 多神教の個別の神にも使う。
ギリシャ語:θερμός
読み方:セルモス・セルモース・テルモス・テルモース
ラテン文字:thermos
古代ギリシャ語の形容詞 θερμός(温かい, 燃えるような)を継承。印欧祖語で「温かい, 熱い」を表す語根に連なる語で, 同じ語根から古代ギリシャ語の θέρος(夏)や θέρω(温める)が来ている。現代の比喩「熱烈な, 激しい」の用法はフランス語 chaleureux や英語 warm, heated からの意味借用で輪郭が整った。
名詞の θερμός(魔法瓶)は別の経路で, 20世紀初頭に英語で商標化された Thermos(1907年)がフランス語と英語から現代ギリシャ語に入った形。もとをたどれば同じ古代ギリシャ語の θερμός に行き着く再借入となっている。
同じ語族に θερμότητα(熱), θέρμανση(暖房, 加熱), θερμαίνω(温める), θερμικός(熱の), 合成語 θερμόμετρο(温度計, 体温計), θερμοστάτης(サーモスタット), θερμοκρασία(温度)。英語 thermal, thermometer, thermodynamics の thermo- もこの θερμός から入った接頭辞。
物理的な温度は ζεστός(温かい, 熱い)がふつうの会話で使われるのに対し, θερμός は学術的・気象的な場面や, 比喩の「熱烈な」「激しい」で選ばれる。対義語は κρύος(冷たい), ψυχρός(寒い, 冷淡な)。
ギリシャ語:θερμότητα
読み方:セルモティタ・セルモーティタ・テルモティタ・テルモーティタ
ラテン文字:thermotita
古代ギリシャ語の θερμότης(熱さ)から。のちには情熱や激情の意味でも使われるようになった。語根の θερμ- は、英語の thermal や thermometer の語源でもある。
日常的、体感的な暑さを言うときは ζέστη(暑さ、熱さ)が使われやすい。対義語には、物理的な冷たさを表す κρύο(寒い)や ψύχος(極寒)、比喩的な冷たさを表す ψυχρότητα(冷淡)がある。
:::vocab
- γηγενής θερμότητα(地殻熱)
- λανθάνουσα θερμότητα(潜熱)
- ανάκτηση θερμότητας(熱回収)
- αντλία θερμότητας(ヒートポンプ)
- εναλλάκτης θερμότητας(熱交換器) :::
主な意味は物理学の熱エネルギーだが、そこから物体の温度や熱量、人や態度の温かみ、情熱といった比喩的な意味にも広がる。
ギリシャ語:θέση
読み方:セシ・セーシ・テシ・テーシ
ラテン文字:thesi
古代ギリシャ語の θέσις(置くこと、設置)に由来する。θέσις は「置く」を意味する動詞 τίθημι から派生した名詞で、もともとは「置くこと」「置かれた状態」を表した。中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の θέση となり、基本義である「置かれた場所」から、物理的な位置、座席、姿勢、社会的な地位、意見の立場まで幅広く指すようになった。
フランス語 place(場所、地位)や position(位置、立場)の語義の影響も受けている。
英語の thesis(テーゼ、命題)も、古代ギリシャ語の θέσις(置くこと、設置)と同じ語源から来ている。「置くこと」から「提示された考え」「主張」へ意味が広がった語で、現代ギリシャ語の θέση が「見解、立場」も指すこととつながりがある。
類義語には μέρος(場所、部分)、χώρος(空間、場所)、στάση(姿勢、態度)、πόστο(役職、持ち場)がある。μέρος は部分や場所、χώρος は広がりのある空間、στάση は体の姿勢や態度、πόστο は職場での持ち場やポストを指す。
主な意味は「位置、場所」。人や物が置かれた場所から、座席、体や物の姿勢、順位、社会的な地位や職務、募集枠、置かれた状況、見解や立場、社会や人生における役割や重要性まで、広い範囲で使われる。
指小語の θεσούλα は、皮肉を込めて公務員の安定したポストを指すことがあるほか、ちょっとした席や小さなスペースも指す。複合表現には χάρτης θέσης(位置図、所在マップ)や φώτα θέσης(車幅灯)がある。
ギリシャ語:θεωρείο
読み方:セオリオ・セオリーオ・テオリオ・テオリーオ
ラテン文字:theoreio
動詞 θεωρέω(見物する, 観察する, 考察する)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 θεωρεῖον(見物のための場所, 観覧席)に由来。現代ギリシャ語の動詞形は θεωρώ(見る, 考える, みなす)。
ギリシャ語:θεωρία
読み方:セオリア・セオリーア・テオリア・テオリーア
ラテン文字:theoria
古代ギリシャ語の θεωρία(見ること, 観察, 熟考)に由来。θεωρός(使節, 観覧者)に抽象名詞の接尾辞 -ία が付いてできた語で, θέα(見ること, 眺め)を根にもつ語族の一員。「理論」「空論」「学説」の現代の使い分けは, フランス語 théorie, ドイツ語 Theorie, 英語 theory の意味配置と重なって整った。
派生に形容詞 θεωρητικός(理論的な)。「美しい外見」の古い意味からは民衆語の θωριά(風貌, 外見)が生まれた。
同じ θέα の語族に動詞 θεωρώ(見なす, 考える), θέατρο(劇場, 観る場所), θεώρημα(定理, 観察されたもの)。英語 theory(理論), theater(劇場), theorem(定理)はすべてこの語族からの学術借用。対になる πράξη(実践, 実行)とは「理論と実践」の対で対比される。類義の άποψη(意見, 見解), υπόθεση(仮説)は広く日常で使う。
ギリシャ語:θλίψη
読み方:スリプシ・スリープシ・トゥリプシ・トゥリープシ
ラテン文字:thlipsi
古代ギリシャ語の θλῖψις(圧迫、圧縮)から。古代ギリシャ語の名詞形が中世ギリシャ語から現代ギリシャ語へ受け継がれる過程で、現在の形になった。
この語からは二つの流れが出ている。ひとつは中世ギリシャ語を経て、動詞 θλίβω(圧迫する、心を痛める)に引かれる形で、「心が押しつぶされるような悲しみ」や「憂鬱さ」を表す日常語になった流れ。もうひとつは、もとの機械的な意味を保ったまま、技術語として「圧縮」を表す流れ。
主な意味は、つらい出来事に向き合ったときの深い悲しみ、長く重く沈む憂鬱さ、そして口語での「見ていて気が滅入るもの」。複数形では、人生の中で悲しみをもたらす出来事そのものを指すこともある。技術文脈では別の流れとして、物体を押し縮める圧縮を表す。
近い語には καημός(深い悲しみ、心痛、渇望)や δυστυχία(不幸、悲惨、災難)がある。καημός は胸を焼くような個人的な痛みや切なる願いに寄り、δυστυχία は不幸な状態や災難まで広く含む。それに対して θλίψη は、出来事に対する悲しみや、重く沈んだ気分そのものを表しやすい。
対義語は χαρά(喜び)。技術の意味では、引っ張る力を表す εφελκυσμός(引張)と対になる。
ギリシャ語:θρησκεία
読み方:スリスキア・スリスキーア・トゥリスキア・トゥリスキーア
ラテン文字:thriskeia
後古典期ギリシャ語の θρησκεία(神への崇拝, 儀式)に由来。動詞 θρησκεύω(宗教儀礼を行う)から抽象名詞を作る -εία が付いてできた語で, もとは個人の信念ではなく神への儀礼的な奉仕を指した。近代に入り教義や組織を含む体系としての「宗教」全般を指す意味が加わった。
同じ θρησκεύω の語族に形容詞 θρησκευτικός(宗教的な), 名詞 θρήσκος(信心深い人)。
πίστη(信仰)が個人の内面的な信じる行為に, λατρεία(崇拝, 礼拝)が神に対する儀礼的な崇拝行為に焦点があるのに対し, θρησκεία はそれらを含む体系全体を指す。
ギリシャ語:θυμάρι
読み方:シマリ・シマーリ・ティマリ・ティマーリ
ラテン文字:thymari
ヘレニズム期の古代ギリシャ語 θύμος(タイム)に指小辞が付き、中世ギリシャ語の θυμάριον(小さなタイム)とされる形を経て、現代ギリシャ語の θυμάρι になった。英語の thyme(タイム)とも語源を共有する。
主な意味は「タイム」。香気のある小さな低木で、青く小さな花を咲かせる植物を指す。乾燥した痩せ地でも育つたくましい植物の象徴としても使われる。
指小語 θυμαράκι は小さなタイムを表す。複数形 θυμαράκια を含む στα θυμαράκια は、墓地や埋葬された状態を婉曲に指す表現になる。
ギリシャ語:θυμός
読み方:シモス・シモース・ティモス・ティモース
ラテン文字:thymos
古代ギリシャ語の θῡμός(魂, 精神, 息, 勇気, 情熱)を継承。印欧祖語で「煙」を表す語根に続き, サンスクリット dhūmá(煙), リトアニア語 dūmas, ラテン語 fūmus(煙), 古代教会スラヴ語 dymŭ, アルバニア語 tym と同じ語族の仲間。英語 fume(煙, 立腹する)はラテン語 fūmus から。古代には魂や生命の息吹を幅広く指したが, 現代ギリシャ語では「怒り」に意味がしぼられた。
派生に動詞 θυμώνω(怒る), その過去分詞 θυμωμένος(怒っている)。
アクセント位置が異なる θύμος(胸腺)は別の語源で, タイム(百里香)の名から解剖学用語になった。類義の οργή(激しい怒り, 憤怒)は瞬間的な激情を, θυμός は一過性から持続的なものまで幅広い怒りを指す。
Ι
ギリシャ語:ίασπις
読み方:イアスピス・イーアスピス
ラテン文字:iaspis
古代ギリシャ語の ἴασπις から。語源不明の借用語で、エジプト語に由来する可能性がある。ヘブライ語やアッカド語、ペルシア語にも同源の語があり、広い地域で共有されていた。古代ではさまざまな色の不透明な石を広く指していたが、現代ギリシャ語では翡翠の総称として定着している。ラテン語 iaspis、古フランス語 jaspre を経て英語 jasper(碧玉)の語源にもなったが、英語とは異なる鉱物を指す。
翡翠としての ίασπις は νεφρίτης(軟玉)と ιαδεΐτης(硬玉)の2つの鉱物を含む。この2つが別の鉱物であることは、1863年にフランスの鉱物学者ダムールによって明らかにされた。
νεφρίτης は νεφρός(腎臓)に由来し、腎臓の病に効く石とされたことにちなむ。英語 nephrite もこのギリシャ語から来ている。ιαδεΐτης はスペイン語 piedra de ijada(脇腹の石)からフランス語 jade を経てギリシャ語に入った語で、スペイン語の ijada(脇腹)も腎臓のあたりを指しており、別の言語経路から同じ「体の痛みに効く石」という意味合いの名になっている。ιαδεΐτης は近代の借用語のため、γιαδείτης や ιαδείτης といった表記揺れがある。
ギリシャ語:ιδέα
読み方:イデア・イデーア
ラテン文字:idea
「見る」を意味する古代ギリシャ語の動詞から派生した女性名詞 ἰδέα(形, 見え方, 観念)に由来。見た姿やそこから浮かぶ観念を古代から表し, プラトン哲学では本質や原型の意味で中心概念になった。日常的な「考え, 着想」としての使い方は, フランス語 idée, 英語 idea からの意味借用で定着した。
派生語に ιδεώδης(理想的な), ιδεαλισμός(理想主義、観念論), ιδεολογία(イデオロギー), ιδεατός(観念上の)など。類義語に σκέψη(思考)。英語 idea はラテン語 idea を経て同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:ιδιοσυγκρασία
読み方:イディオシグラシア・イディオシグラシーア・イディオシングラシア・イディオシングラシーア
ラテン文字:idiosygkrasia
古代ギリシャ語の ἰδιοσυγκρασία(体質, 固有の配合)に由来。ἴδιος(自分の, 固有の)と σύγκρασις(混合)の合成語で, σύγκρασις は σύν(ともに)と κρᾶσις(混ぜること。動詞 κεράννυμι「混ぜる」から)からなる。古代ギリシャの医学で体液の配合が気質を決めるとされ, その人固有の配合を呼ぶためにこの合成語が作られた。近代にフランス語 idiosyncrasie, 英語 idiosyncrasy からの意味借用で現代の「気質, 特異体質」の用法が整った。
派生に ιδιοσυγκρασιακός(気質の, 特異体質の)。類義語の κράση(体格, 気質)は構成要素 κρᾶσις の現代形で, ιδιοσυγκρασία が個人の「固有の」配合を強調するのに対し, κράση はより一般的に体格や気質を指す。ταμπεραμέντο(気質, テンペラメント)はラテン語 temperamentum からの借用語。
英語 idiosyncrasy, idiosyncratic も同じ語源。
ギリシャ語:ιδρώτας
読み方:イドゥロタス・イドゥロータス
ラテン文字:idrotas
ギリシャ語:ιερέας
読み方:イェレアス・イェレーアス
ラテン文字:iereas
ιερέας(司祭、神父、祭司)は、古代ギリシャ語 ἱερεύς(祭司)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、とくにキリスト教の司祭や神父を指す場面で最もよく使われる。
εκκλησία(教会、聖堂、教会組織) が場や制度を言うのに対して、ιερέας はその場で奉仕する聖職者を言う。Πάσχα(復活祭、パスハ) のような宗教行事でも自然に現れる。
主な意味は司祭、神父。広く祭司一般を言うこともあるが、現代の日常文脈では教会の聖職者を指すことが多い。
ギリシャ語:ιερό
読み方:イェロ・イェロー
ラテン文字:iero
古代ギリシャ語の形容詞 ἱερός(聖なる)の中性形 ἱερόν が起源で、「聖なる場所」を意味した。古代では神や女神に捧げられた神殿とその周辺の聖域全体を指していた。
ヘレニズム期には「教会」を指す広い意味で使われたが、ビザンチン時代にキリスト教の「至聖所」を指す語に変わった。この変遷にはヘブライ語の概念からの意味借用も含まれる。
英語の hierarchy(階層、聖職階級)は、ἱερός と ἀρχή(支配)から成る古代ギリシャ語 ἱεραρχία に由来する。hieroglyph(象形文字)の hiero- も同じ語源。
古代の神殿や聖域全体を指すほか、キリスト教の聖堂内で最も神聖な空間である「至聖所」も意味する。
ギリシャ語:ινδός
読み方:インドス・インドース
ラテン文字:indos
古代ギリシャ語の Ἰνδός(インドの人、インダス川)を継承。古代ペルシャ語 hindūš(インド)からの借用で、そこからインド・イラン祖語で「川」を表す語根につながる。もとはインダス川の名で、そこから川のほとりに住む人やその地方、インド全体の呼び名にも移った。
国名は Ινδία(インド)の形で言う。英語 Indian, Indus も同じ系統。
星座のインディアン座は、16世紀末にオランダの航海者カイザーとデ・ハウトマンが観測した南天の星をもとに、オランダの天文学者プランシウス(プランキウスとも)が考案した星座。新しい星座なので神話はない。
ギリシャ語:ιπομέα
読み方:イポメア・イポメーア
ラテン文字:ipomea
学名 Ipomoea のギリシャ文字転記。ιπομοία, ιπόμαια とも表記する。ヒルガオ科(Convolvulaceae)イポメア属の観賞用つる植物を指し、とくにマルバアサガオ(Ipomoea purpurea)が代表的。
同じ植物を χωνάκι(円錐形の容器の意), πρωινή χαρά(朝の喜び), πρωινή δόξα(朝の栄光)とも呼ぶ。後二者は英語 morning glory の意訳。
学名 Ipomoea は古代ギリシャ語 ἴψ(属格 ἰπός、虫)と ὅμοιος(似た)からの合成で、「虫に似た」の意。フランス語 ipomée を経て現代ギリシャ語に入った。
ギリシャ語:Ιππάριον
読み方:イプパリオン・イプパーリオン
ラテン文字:ipparion
古代ギリシャ語の ἱππάριον(小さい馬、子馬)を継承。ἵππος(馬)に指小辞 -άριον が付いた形。現代ギリシャ語で馬はふつう άλογο と言い、ἵππος は文語的な言い方として残る。ιππάριο は古生物学で先史時代の小型馬ヒッパリオンも指す。
ヒッパルコスが記しプトレマイオスの48星座にも含まれる古い星座。神話では Πήγασος(ペガスス座)の兄弟の子馬ケレリス(「俊足」)をヘルメスがカストルに贈った、という話があり、別にポセイドンがアテナと争ったとき矛から打ち出した馬とする伝えもある。ペガスス座より先に昇るため「最初の馬」とも呼ばれた。
ギリシャ語:ίσκιος
読み方:イスキョス・イースキョス
ラテン文字:iskios
古代ギリシャ語の ἴσκιος(影、日陰)を継承。σκιά と同じ語源で、ίσκιος のほうが口語的。
σκιά と同じく「影」「日陰」を中心に、比喩的な用法も含めて幅広い意味を持つ。
ギリシャ語:ισορροπία
読み方:イソロピア・イソロピーア
ラテン文字:isorropia
古代ギリシャ語の ἰσορροπία(釣り合い、等しく傾くこと)に由来。ἴσος(等しい)と ῥοπή(傾き、重さ)からなる合成語で、天秤の両側が等しく傾く、すなわち釣り合いの取れた状態を古代から表した。現代の物理・化学や社会的な「平衡、均衡」の意味は、フランス語 équilibre、英語 equilibrium からの意味借用で広がった。
対義語に ανισορροπία(不均衡、不安定)。派生語に ισορροπώ(バランスを取る), εξισορρόπηση(均衡の回復)。英語の iso- はこの ἴσος を受け継いだ接頭辞で、isosceles(二等辺三角形), isotope(同位体)などに使う。
ギリシャ語:ιστία
読み方:イスティア・イスティーア
ラテン文字:istia
ギリシャ語:ιχθύς
読み方:イフシス・イフシース・イフティス・イフティース
ラテン文字:ichthys
古代ギリシャ語の ἰχθύς(魚)に由来。中世以降、魚を表す一般的な単語として使われるようになったのは ψάρι(ὀψάριον から)で、ιχθύς は書き言葉や学術的な文脈、οστεϊχθύες(硬骨魚類)、χονδριχθύες(軟骨魚類)のような分類名で残っている。英語 ichthyology(魚類学)、ichthyosaur(魚竜)の ichthyo- も同じ起源。先頭大文字の Ιχθύς は星座名、全大文字の ΙΧΘΥΣ はキリスト教で Ιησούς Χριστός Θεού Υιός Σωτήρ(イエス・キリスト、神の子、救世主)の頭字語として用いられる。
ギリシャ語:Ιχθύς Νότιος
読み方:イフシスノティオス・イフシースノティオス・イフティスノティオス・イフティースノティオス
ラテン文字:ichthys notios
ιχθύς(魚)と νότιος(南の)からできた連語で、「南の魚」の意味。2世紀のトレミーが挙げた 48 星座の一つで、南天に位置する。
水瓶座から流れる水を、大きな魚が飲んでいる姿で描かれる。シリアの神話では女神デルケトが水に落ちたときにこの魚が救い、そこから星空にあげられたとされ、うお座の2匹の魚はこの魚の子と伝わる。
α星は「魚の口」を意味するアラビア語由来の Fomalhaut(フォーマルハウト)。秋の南の空で孤立して輝く1等星で、「孤独な星」とも呼ばれる。
Κ
ギリシャ語:κάβουρας
読み方:カヴラス・カーヴラス
ラテン文字:kavouras
古代ギリシャ語の κάραβος(ザリガニ)が起源。コイネーを経て、中世ギリシャ語では κάβαρος(中間形)に近い形が現れ、その後は唇音 [v] の影響で母音が a から u に寄ったとされる。さらに中世ギリシャ語の κάβουρ(ος)(中間形)を経て、現代ギリシャ語の κάβουρας に至った。
英語の crab も、最終的にはこの語と同じ語源につながるとされる。
近い語に καβούρι があり、どちらも一般には「カニ」を指す。派生語には女性形の καβουρίνα や、指小語の καβουράκι がある。καβουράκι は小さなカニを指すほか、帽子の一種の俗称にもなる。
主な意味は「カニ」。そこから、形の似た道具や、横に進む動きになぞらえた編み方も指す。独特の歩き方から、進み方が遅いことや、難しい局面で実力が試されることを言う表現にもよく現れる。
ギリシャ語:καβούρι
読み方:カヴリ・カヴーリ
ラテン文字:kavouri
ギリシャ語:καημός
読み方:カイモス・カイモース
ラテン文字:kaimos
中世ギリシャ語で「燃えること(κάψιμο)」を意味した語に由来する。動詞 καίω(燃やす)の受動アオリスト語幹 καη- に、動作・状態を表す接尾辞 -μός が付いたもので、もとは物理的な燃焼を指していた。「胸が焼かれるような思い」という比喩から、長く続く深い悲しみや、切なる願いを指すようになった。
英語の "burning desire"(燃えるような願望)や、ポルトガル語の saudade(郷愁、切なさ)にも通じるニュアンスを持つ。
主な意味は二つ。ひとつは長期間にわたる深い悲しみや心痛で、精神をすり減らすような苦悩を表す。もうひとつは叶わぬ切実な願いや渇望で、長い間満たされないまま抱き続ける強い望みを指す。
ギリシャ語:καθαρός
読み方:カサロス・カサロース・カタロス・カタロース
ラテン文字:katharos
古代ギリシャ語の καθαρός(清らかな、汚れのない)を継承。古代の動詞 καθαίρω(清める)と同じ語族。現代の動詞は καθαρίζω(清める、きれいにする)。名詞 κάθαρση(浄化)は英語 catharsis の語源になった。
ギリシャ語:καθυστέρηση
読み方:カシステリシ・カシステーリシ・カティステリシ・カティステーリシ
ラテン文字:kathysterisi
καθυστέρηση は、動詞 καθυστερώ(遅れる、遅らせる)から派生した女性名詞。動詞の動作や結果を名詞化し、「遅れること」「遅らせること」を表す。
近い語には αργοπορία(遅刻)、επιβράδυνση(減速)、χρονοτριβή(時間の浪費)などがある。対義語には επιτάχυνση(加速) や επίσπευση(促進)がある。
時間的な遅延や遅刻を表すのが中心で、列車や船の遅れ、納期の遅れ、返事の遅れなどに広く使われる。口語では、女性について生理が遅れていることを指すこともある。
社会、経済、文化、技術などの発展が遅れていることや、音楽で和音の構成音を次の和音まで引き伸ばすことを指すのにも使われる。
サッカーなどでは複数形 καθυστερήσεις が、試合の規定時間に加えられるアディショナルタイムを指す。発達に関する表現では、καθυστέρηση του λόγου や καθυστέρηση της ομιλίας が、子供の言語習得が平均より遅れることを表す。
ギリシャ語:καίγομαι
読み方:ケゴメ・ケーゴメ
ラテン文字:kaigomai
ギリシャ語:καιρός
読み方:ケロス・ケロース
ラテン文字:keros
ギリシャ語:καίω
読み方:ケオ・ケーオ
ラテン文字:kaio
古代ギリシャ語の καίω(燃やす)を継承。中世に母音間に γ が挿入された καίγω も現代で並行して使われる。コンピュータ用語の「CDを焼く」用法は英語 burn からの意味借用で定着した。
派生語に καύσιμος(可燃性の、燃料), καύση(燃焼), κάψιμο(火傷、焦げ), έγκαυμα(火傷), καυστικός(腐食性の、辛辣な)など。焼き方を細かく言い分ける近い動詞に απανθρακώνω(炭化させる), αποτεφρώνω(灰にする), καψαλίζω(軽くあぶる)。英語 caustic, cauterize, holocaust はいずれもラテン語経由で、καίω と同じ語根をもつ古代ギリシャ語(καυστικός, καυτηριάζω, ὁλόκαυστον)から来ている。
ギリシャ語:κακός
読み方:カコス・カコース
ラテン文字:kakos
古代ギリシャ語の κακός(悪い、卑しい)を継承。対義語は καλός(良い)。比較級 χειρότερος(より悪い), 最上級 χείριστος(最悪の)は別語根から引き継いだ形で、古代から κακός の比較形として使われている。
派生語に κακία(悪意、悪), κακώς(副詞、悪く、不適切に)。接頭辞 κακο- は合成語で生産的で、κακοτυχία(不運), κακόγουστος(趣味の悪い), κακοφωνία(不協和音)などを作る。英語の caco- 接頭辞(cacophony, cacography)はこの κακο- から入った。
ギリシャ語:καλοκαίρι
読み方:カロケリ・カロケーリ
ラテン文字:kalokeri
古代ギリシャ語の καλός(良い)と καιρός(時、天気、季節)の合成語 καλοκαίριον から、中世ギリシャ語 καλοκαίρι(ν) を経て今に至る継承。もとは「穏やかな天候、好機」の意で、ギリシャでは一年で最も良い季節とされることから、やがて「夏」そのものを指すようになった。καλός は英語の calligraphy(カリグラフィー)や kaleidoscope(万華鏡)にも借用要素として残り、いずれも「良い、美しい」の意を共有する。
類義語に θέρος(夏)。θέρος は古典・詩歌の文脈で使う硬い語で、特に「収穫期」としての夏を指すことが多い。ふつうは καλοκαίρι が「夏」を表す形として定着している。派生に καλοκαιράκι(気持ちのよい夏の日), καλοκαιρία(好天), καλοκαιριάζω(夏めく、夏になる), καλοκαιρεύω(夏を過ごす), καλοκαιριάτικος(夏の〜), καλοκαιρινός(夏の〜)。合成語に κατακαλόκαιρο(真夏), μεσοκαλόκαιρο(夏の中頃), αποκαλόκαιρο(夏の終わり), αποκαλοκαιρινός(夏の終わりの〜), γαϊδουροκαλόκαιρο(小春日和、猛暑)。
ギリシャ語:καλοκαιρινός
読み方:カロケリノス・カロケリノース
ラテン文字:kalokerinos
καλοκαιρινός(夏の、夏向きの)は、中世ギリシャ語の καλοκαιρινός(夏の)にさかのぼる形で、καλοκαίρι(夏)に接尾辞 -ινός(〜に属する形容詞語尾)がついてできた語。意味は基本的に「夏に関する」「夏に属する」で、いまも広く使われる。
かなりの場面で θερινός(夏の、夏季の)と重なるが、καλοκαιρινός のほうが日常語らしい響きが強い。反対側には χειμωνιάτικος(冬の)が立つが、こちらは季節感や生活感の強い語として並びやすい。
主な意味は「夏の」。そこから、夏に起こること、夏に食べたり着たり使ったりするものまで広く表せる。複数中性の τα καλοκαιρινά(夏物、夏服)は、夏服や夏物をまとめて言う名詞用法。
ギリシャ語:καλός
読み方:カロス・カロース
ラテン文字:kalos
古代ギリシャ語の καλός(美しい、立派な)を継承。古代では外見の美しさや内面の高貴さを主に表したが、現代ギリシャ語では「良い」全般に意味の中心が移り、性格、能力、品質、状態、好都合さまで幅広く使う。対義語は κακός(悪い)。比較級は καλύτερος、最上級には文語的な άριστος(非常に優れた)や κάλλιστος(最良の)も使う。
派生語に κάλλος(美), καλοσύνη(善良さ、親切), καλοσυνάτος(気のいい)。接頭辞 καλο- は合成語で非常に生産的で、καλημέρα(おはよう), καλοκαίρι(夏), καλόγουστος(趣味の良い), καλοφαγάς(食通)などを作る。英語 calligraphy(書道)は κάλλος と γράφω(書く)の合成 καλλιγραφία から、フランス語 calligraphie 経由で入った。kaleidoscope(万華鏡)は καλός, εἶδος(形), σκοπέω(見る)を組み合わせてブリュースターが1817年に造語した。
ギリシャ語:καμηλοπάρδαλη
読み方:カミロパルダリ・カミロパールダリ
ラテン文字:kamilopardali
καμηλοπάρδαλη は、古代ギリシャ語の複合語 καμηλοπάρδαλις(キリン)にさかのぼり、中世ギリシャ語の καμηλοπάρδαλις(キリン)を経て今の形になった。もとの語は κάμηλος(ラクダ)と πάρδαλις(ヒョウ、雌ヒョウ)を組み合わせたもので、長い首はラクダ、褐色の斑点模様はヒョウを思わせるという見立てから生まれた名である。現代ギリシャ語でも、その発想がほぼそのまま語形に残っている。
学名 Giraffa camelopardalis の camelopardalis も、この古い呼び名を引き継いだもの。
大きな分類では ζώο(動物)の一種で、反芻動物として理解される。自然につながる関連語としては、λεοπάρδαλη(ヒョウ)、οκάπι(オカピ)、σαβάνα(サバンナ)が挙がる。
主な意味は「キリン」。アフリカに生息する反芻動物で、非常に長い首と脚、短い角、黄褐色の地に褐色の斑点がある体表が特徴になる。
ギリシャ語:Καμηλοπάρδαλις
読み方:カミロパルダリス・カミロパールダリス
ラテン文字:kamilopardalis
古代ギリシャ語の καμηλοπάρδαλις(キリン)を継承。κάμηλος(ラクダ)と πάρδαλις(ヒョウ)からなる語で、ラクダのような長い首とヒョウのようなまだら模様から、こう呼ばれた。現代ギリシャ語ではふつう καμηλοπάρδαλη(キリン)と言う。
17世紀にオランダの天文学者プランシウス(プランキウスとも)が設けた星座で、新しい星座なので神話はない。
ギリシャ語:κάμινος
読み方:カミノス・カーミノス
ラテン文字:kaminos
古代ギリシャ語の κάμινος(炉、かまど)に由来。日常の炉、かまどには κάμινος の指小形 καμίνιον からきた καμίνι を使い、κάμινος は工業用の溶解炉や文語的な場面で使う。英語 chimney もラテン語 caminus を経て同じ語源。
先頭大文字の Κάμινος は南天の星座、ろ座を指す。1750年代にフランスの天文学者ラカイユが南天に設けた新しい星座で、ラテン語の Fornax Chemica(化学の炉)から名付けられた。
ギリシャ語:κάμπος
読み方:カボス・カーボス・カンボス・カーンボス
ラテン文字:kampos
ギリシャ語:κανέλα
読み方:カネラ・カネーラ
ラテン文字:kanela
イタリア語 cannella(小さな管)を中世ギリシャ語が借り入れた語。cannella はラテン語 canna(葦)の指小形で、canna は古代ギリシャ語 κάννα(葦)がラテン語に入ったもの。乾燥したシナモン樹皮が丸まって筒状になる形からこの「小さな管」の名が付いた。
派生の形容詞 κανελής、指小形 κανελί(いずれもシナモン色)。同じ香辛料の別名に κιννάμωμο があり、こちらは古代ギリシャ語 κιννάμωμον からの語で、英語 cinnamon も同じ κιννάμωμον 経由の語。
ギリシャ語:κανελής
読み方:カネリス・カネリース
ラテン文字:kanelis
κανέλα(シナモン)に由来する色名。κανέλα 自体は、古代ギリシャ語の κάννη(葦、管)からラテン語 canna を経て、その指小形 cannula(小さな管)がイタリア語 cannella となり、中世ギリシャ語に再導入されたもの。乾燥した樹皮が丸まった形から香辛料を指すようになった語が、さらにその色を表す形容詞 κανελής を生んだ。
なお、英語の cinnamon はギリシャ語 κιννάμωμον に由来する別系統の語だが、指しているものは同じ香辛料。
同じシナモン色を表す語に、不変化形の κανελί もある。κανελής は性・数・格の変化を伴う形容詞(男性 κανελής、女性 κανελιά、中性 κανελί)として機能するのに対し、κανελί は格変化しない形容詞としても使われる。
シナモンのような薄茶色を指す。主に動物の毛色や衣類の色を表現する際に用いられる。中性形 κανελί は名詞としても用いられ、シナモン色という色そのものを指す。
ギリシャ語:κανόνας
読み方:カノナス・カノーナス
ラテン文字:kanonas
古代ギリシャ語の κανών(物差し、定規、基準)に由来。κάννα(葦、細い管)からの派生語。葦で作った測定用の棒から、判断や行動の「基準、規範」へと古代のうちに意味が展開した。
教会法の「教会規則(カノン)」は中世ギリシャ語 κανών から継承。近代における「規則、ルール」としての使い方は、フランス語 règle や英語 rule からの意味借用によって定着した。
派生語に κανονικός(規則的な、正規の)、κανονισμός(規程、規則集)、κανονίζω(規則を定める、調整する)、παρακανόνας(例外、規格外)など。
関連語に δικαίωμα(権利)、νόμος(法律)、αρχή(原則)などがある。
英語 canon(教会法、正典)はラテン語 canon 経由で同じ κανών から継承。英語・イタリア語の cannon(大砲)は κάννα 経由で同じ系列。
ギリシャ語:καπέλο
読み方:カペロ・カペーロ
ラテン文字:kapelo
καπέλο(帽子)は中世ギリシャ語の καπέλο(帽子)を経た借用語で、そのもとはヴェネツィア語 capelo にある。西欧由来の服飾語が現代ギリシャ語に入った例のひとつで、今では日常語として完全に定着している。
衣類全般を広く言う ρούχο(布製品、服、衣類)に対して、καπέλο は頭にかぶる帽子そのものを指す。素材や用途を添えて言うことが多く、ふだんの帽子から軍帽まで広く使える。
主な意味は頭にかぶる帽子。そこから、似た形で上にかぶさる部分という感覚で、λάμπα(ランプ、電球、照明器具)の笠や μανιτάρι(キノコ)の傘、煙突の覆いのような部分も言う。さらに口語では、値段や請求に上から載せられる不当な割増にも意味が広がっている。
指小語 καπελάκι(小さな帽子)は、小さな帽子のほか、顔のまわりを帽子のように囲む短いボブの髪型も指す。成句では、感服して「脱帽する」、話題を切り分けて「それは別の話だ」、皮肉を込めて「お偉方」と言うような言い方によく現れる。
ギリシャ語:καπνίζω
読み方:カプニゾ・カプニーゾ
ラテン文字:kapnizo
ギリシャ語:κάπνισμα
読み方:カプニズマ・カープニズマ
ラテン文字:kapnisma
古代ギリシャ語の κάπνισμα(香を焚くこと, 燻蒸)に由来。動詞 καπνίζω(煙を出す, 燻す)に結果・動作を表す -μα が付いてできた語で, 背景には καπνός(煙)の語族がある。もとは神殿での香焚きや燻蒸の作業を指していたが, たばこの普及とともに「喫煙」が中心の意味に移り, フランス語 fumage からの意味借用で輪郭が整った。
同じ καπνός の語族に καπνίζω(煙を出す, たばこを吸う), καπνιστής(喫煙者), καπνιστός(燻製にした), καπνιστήριο(喫煙所)。英語の capno-(煙の)もこの καπνός から入った接頭辞で, capnomancy(煙占い), hypercapnia(高二酸化炭素血症)に見られる。
口語の φούμα, φουμάρισμα はイタリア語 fumare(煙を出す)から入った語。άτμισμα(電子たばこを吸うこと, ベイピング)は ατμός(蒸気)からの造語で, 従来の「喫煙」と区別する文脈で用いる。
ギリシャ語:καπνός
読み方:カプノス・カプノース
ラテン文字:kapnos
古代ギリシャ語の καπνός(煙)を継承。印欧祖語で「煙、沸騰、激しい動き」を表す語根に遡るとされる。古代から現代まで基本の意味は「煙」で、そこから植物のタバコや、乾燥・加工した喫煙用のタバコ製品も指す用法が加わった。
派生語に κάπνισμα(喫煙), καπνίζω(喫煙する、燻す), καπνιστής(喫煙者), καπνιστός(燻製の), καπνοδόχος(煙突)。接頭辞 καπνο- で καπνοβιομηχανία(タバコ産業), καπνοκαλλιέργεια(タバコ栽培), καπνοπωλείο(タバコ店)などの合成語を作る。口語で部屋に立ち込める濃い煙は、トルコ語由来の ντουμάνι とも言う。英語の医学用語 hypercapnia(高炭酸ガス血症), hypocapnia(低炭酸ガス血症)の -capnia は、この καπνός を受け継いだ語根。
ギリシャ語:καραμελί
読み方:カラメリ・カラメリー
ラテン文字:karameli
καραμέλα(キャラメル、飴)からできた色名。不変化形容詞として名詞にそのまま添え、中性名詞として色そのものを言うこともある。
καραμέλα はイタリア語 caramella からの借用。さかのぼるとラテン語 calamellus(小さな葦)があり、そのもとは古代ギリシャ語 κάλαμος(葦、筒状の茎)。ギリシャ語からラテン語, イタリア語を経て再びギリシャ語に戻ってきた語にあたる。
ギリシャ語:κάρβουνο
読み方:カルヴノ・カールヴノ
ラテン文字:karvouno
ラテン語 carbō(炭)に由来し、ヘレニズム期ギリシャ語 κάρβων、中世ギリシャ語 κάρβουνον を経て今に至る。英語 carbon(ラテン語 → フランス語 carbone 経由)も同じ carbō を起源とする。
現代ギリシャ語で化学の炭素を指すのは άνθρακας で、κάρβουνο は燃料や画材の炭、炭火を広く指す。木炭は ξυλοκάρβουνο と ξυλάνθρακας, 石炭は πετροκάρβουνο と γαιάνθρακας のように、κάρβουνο 側と άνθρακας 側で並行して合成語を作る。
派生に καρβουνιάζω(真っ黒に焦がす、炭にする), καρβουνιάρης(石炭を扱う人、昔の蒸気機関車), καρβουνάκι(小さな炭)。
ギリシャ語:καρδιά
読み方:カルディア・カルディアー
ラテン文字:kardia
古代ギリシャ語の καρδία(心臓、心)を継承。中世ギリシャ語で母音の連続を避けて今の形になった。印欧祖語の「心臓」を表す語根から続き、英語 heart も同じ語源。英語 cardiac はギリシャ語 καρδιακός からラテン語を経て入った語で、医学接頭辞 cardio- も同じ系統。
感情や人柄としての「心」は καρδιά、思考や知性としての「心」は νους、魂としての「心」は ψυχή や πνεύμα と使い分ける。類義語の στήθος(胸)も感情の座としての心を指すことがある。
指小形の καρδούλα は小さなハートのほか、καρδούλα μου(愛しい人)のように親しみを込めた呼びかけにも使う。
ギリシャ語:καρέκλα
読み方:カレクラ・カレークラ
ラテン文字:karekla
古代ギリシャ語の καθέδρα(座席、椅子)にさかのぼる語で、後期ラテン語やヴェネツィア語系の形を経たのち、中世ギリシャ語の καρέκλα(椅子)に現れ、現代ギリシャ語に定着したと考えられている。古いギリシャ語由来の語が外来形を経て戻った、再借用の例として扱われることもある。
制度的でやや改まった「席」「議席」には έδρα(本部、議席、本拠地、座席、面)が近く、もっと広く「位置、ポスト」を言うなら θέση(位置、場所、座席、姿勢、順位、地位、職、枠、状況、立場、役割)が使いやすい。これに対して καρέκλα は実際の椅子を表す日常語から出発しつつ、比喩では「その椅子にしがみつく」ような語感を帯びやすい。
家具として並べるなら、τραπέζι(テーブル)は食卓や机の側を指し、καρέκλα はそこに合わせる一人用の椅子を指す。もっとゆったりした肘掛け椅子なら πολυθρόνα(アームチェア、肘掛け椅子)、背もたれのない簡単な腰掛けなら σκαμπό(スツール、腰掛け)を使うことが多い。
主な意味は、背もたれのある一人用の椅子。そこから、車いすや診察用の椅子のような専用の座席も指す。比喩では、組織や政治の中で人が占める役職や権力の座も表し、競争や失脚の話でよく目立つ。
指小語の καρεκλάκι(小さな椅子、子ども用の椅子)と καρεκλίτσα(小さな椅子)は、家具としての小ぶりな椅子をやわらかく言う形。固定表現では η πολιτική της άδειας καρέκλας(空席戦術、不参加で妨害するやり方)や μουσικές καρέκλες(椅子取りゲーム)のように、席の不在や奪い合いを表す言い方にも現れる。
ギリシャ語:Καρκίνος
読み方:カルキノス・カルキーノス
ラテン文字:karkinos
古代ギリシャ語の καρκίνος(カニ)を継承。カニの姿に見立てて同じ語が星座名にも使われ, その用法が現代ギリシャ語の Καρκίνος(かに座, 蟹座)に至る。ラテン語 cancer(カニ, 腫瘍)と同語源とみられ, 英語 Cancer(かに座, がん)はラテン語 cancer から入った。
ギリシャ神話では, Ηρακλής がレルネのヒュドラと戦ったときに足元を挟もうとした大ガニが星座になったとされる。ヘラがヘラクレスを妨害するために送った使いで, 同じ神話に由来する Ύδρα(うみへび座)と近い空域に置かれた。
同じ καρκίνος の語族に καρκίνος(カニ, がん), καρκινικός(がんの), καρκινοπαθής(がん患者), καρκίνωμα(がん腫)。「がん」の意味は, 古代の医学書で腫瘍の形をカニになぞらえたところから始まり, ラテン語 cancer を経て近代の各語に引き継がれた。
ギリシャ語:καρότο
読み方:カロト・カロート
ラテン文字:karoto
古代ギリシャ語の καρωτόν(ニンジン)が出発点で、この語はラテン語 carota に入り、さらにイタリア語 carota やフランス語 carotte などの同系形へ続いた。中世ギリシャ語の同系形を経て、現代ギリシャ語の καρότο(ニンジン)もこの系統に連なる形として定着した。
食材としては λαχανικό(野菜)の一種を指す。料理の文脈では λάχανο(キャベツ)と並んで現れることも多く、χυμός(ジュース)の材料としてもよく出る。指小語に καροτάκι(小さなニンジン)がある。
基本の意味は、食用になる肥大した根としての「ニンジン」と、その植物全体である。そこから比喩では、人を動かすために差し出す「見返り」や「誘因」を表す。さらにまれに、掘削で抜き取った円筒状のコア試料をいうこともある。
ギリシャ語:καρπός
読み方:カルポス・カルポース
ラテン文字:karpos
古代ギリシャ語の καρπός(実、収穫物、手首)を継承。「実」は印欧祖語の「摘む、刈り取る」を表す語根から続き、英語 harvest、ラテン carpō(摘む、carpe diem の carpe)も同じ系統。解剖学の英語 carpus(手根)は καρπός の「手首」の意味からきた語。「子」や「成果」の意味はフランス語 fruit にならった意味借用で加わった。
派生語 περικάρπιο は植物の果皮と、手首に巻くリストバンドの両方を指す。
解剖学では καρπός が手首を指し、日常では手首も含めて χέρι(手)と言うことが多い。
ギリシャ語:καρπουζιά
読み方:カルプジア・カルプジアー・カルプズィア・カルプズィアー
ラテン文字:karpouzia
καρπούζι(スイカの果実)に、植物の名称を作る接尾辞 -ιά を付けた語。
スイカの植物体を指す。
ギリシャ語:κάρτα
読み方:カルタ・カールタ
ラテン文字:karta
イタリア語の carta(紙、カード)からの外来借用で、carta はラテン語 charta(パピルス紙)を経て、もとは古代ギリシャ語の χάρτης(パピルスの巻物、紙)にさかのぼる。古代ギリシャ語からラテン・イタリアと西欧諸語を巡って戻ってきた再借用(αντιδάνειο)にあたる。同じ χάρτης 由来で継承形のままギリシャ語に残った χαρτί(紙、書類)と、再借用として戻った κάρτα は、語源を共有する別形の対をなす。英語 card(仏 carte 経由), chart(地図), charter(憲章), cartoon(漫画), cartography(地図学)も同じ χάρτης 系譜の借用で、日本語のカルタ(ポルトガル語 carta 経由)も同根。
類義語に χαρτί(紙、トランプの札。同じ χάρτης 由来の継承形), δελτίο(カード、整理券、票。古代ギリシャ語 δέλτος「板、書字板」の指小形 δελτίον 由来で、行政・公式の硬い文脈で使う)。κάρτα はハガキ、身分証、決済カード、回路基板などプラスチック製や厚紙製の小さなカード状のものを指す形として広く使う。派生に καρτούλα, καρτάκι(小さなカード。指小形)。関連語に χάρτης(地図、海図、憲章。同じ古代の χάρτης の素形を保った形), καρτ-ποστάλ(ポストカード。フランス語 carte postale 由来の外来借用)。
ギリシャ語:καρύδι
読み方:カリディ・カリーディ
ラテン文字:karydi
古代ギリシャ語の κάρυον(カリュオン、核果、ナッツ)の指小辞 καρύδιον に由来する。中世ギリシャ語を経て現代の καρύδι となった。
英語の kernel(核)とは、印欧語レベルで遠い親戚にあたる可能性がある。
植物学的な総称や文語では κάρυο が使われ、日常語としてはこちらが一般的。クルミの木は καρυδιά(女性名詞)と呼ばれる。
クルミの実を指す。比喩的に「頑固者」を表したり、形状の類似から喉仏を指したりもする。指小語 καρυδάκι はクルミのシロップ漬け菓子としても知られる。
ギリシャ語:καρυδιά
読み方:カリディア・カリディアー
ラテン文字:karydia
καρύδι(クルミ)に接尾辞 -ιά がついた女性名詞で、クルミの木を指す。
クルミの木を指す。
ギリシャ語:κάρυο
読み方:カリオ・カーリオ
ラテン文字:karyo
古代ギリシャ語 κάρυον(堅果, クルミ)に由来。英語の接頭辞 karyo-(核の, eukaryote, karyotype など)も同じ κάρυον にさかのぼる。
派生に καρυά(クルミの木)。合成語に καρυοθραύστης(くるみ割り器), καρυότυπος(核型, カリオタイプ), καρυόφυλλο(クローブ, 丁字), ευκαρυωτικός(真核生物の), προκαρυωτικός(原核生物の)。
καρύδι は古代 κάρυον の指小形 καρύδιον から受け継がれ, クルミを指すときはふつう καρύδι を使う。
ギリシャ語:κασκόλ
読み方:カスコル・カスコール
ラテン文字:kaskol
κασκόλ はフランス語の cache-col(首を隠すもの)から入った借用語。cache は cacher(隠す)、col は首を表し、首元を覆って寒さをしのぐ用途がそのまま語形に残っている。
κασκόλ は、首に巻いたり掛けたりして使う ρούχο(布製品、服、衣類)の一種。ギリシャ語では中性名詞だが、不変化語として扱われ、格によって語形が変わらない。
細長い布を首に巻いたり掛けたりする防寒具を指す。毛皮、ウール、ニットなど素材を問わず使え、筒状のものは κασκόλ σωλήνας(筒状のネックウォーマー)と言う。スポーツでは、チーム名や色の入った応援用のマフラーも同じ語で呼ぶ。
ギリシャ語:Κασσιόπη
読み方:カシオピ・カシオーピ
ラテン文字:kassiopi
ギリシャ語:κάστανο
読み方:カスタノ・カースタノ
ラテン文字:kastano
古代ギリシャ語 κάστανον(クリ)を継承。小アジアの地名「カスタナ」に由来するという説がある。ラテン語に castanea として入り, そこから英語 chestnut, フランス語 châtaigne, イタリア語 castagna が生まれた。
派生に καστανιά(クリの木), καστανάς(焼き栗売り), καστανός(栗色の, 形容詞), καστανάκι(小さな栗, 指小形)。合成語に καστανόχρωμος(褐色の), καστανομάλλης(栗色の髪の), καστανομάτης(栗色の目の), καστανοπώλης(栗売り), αγριοκάστανο(セイヨウトチノキの実)。
ギリシャ語:καστανός
読み方:カスタノス・カスタノース
ラテン文字:kastanos
古代ギリシャ語で「栗」を指す κάστανον(カスタノン)に由来する。中世ギリシャ語において ξανθός(クサンソス、金髪の)などの色彩語の影響を受けてアクセントが移動し、形容詞 καστανός となった。
英語の chestnut とも語源を共有する。κάστανον がラテン語 castanea(栗)を経て英語に入った。
同じ語源の名詞として κάστανο(栗)があり、こちらは栗の実そのものを指す。茶系の色を表す語としては κανελής(シナモン色の)が近い。
栗色の髪であることを強調する複合語 καστανομάλλης(栗色の髪の)もある。中性形 καστανό は名詞としても用いられ、栗色という色そのものを指す。
主に髪や瞳の色を指す際に「栗色」「茶褐色」として使われる。名詞としても、栗色の髪の人を指すのに用いられる。
ギリシャ語:καταγάλανος
読み方:カタガラノス・カタガーラノス
ラテン文字:katagalanos
γαλανός(澄んだ明るい青の) に強調の接頭辞 κατα-(強く、すっかり)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、空や海の青がひときわ強く目立つことを言う。
ふつうの γαλανός(澄んだ明るい青の) が詩的な青を広く言えるのに対して、καταγάλανος は「真っ青」「一面に澄んだ青」という強調が前に出る。
意味は真っ青な、抜けるように青い。空や海、澄んだ目の色などで使いやすい。
ギリシャ語:καταιγίδα
読み方:カテイダ・カテイーダ・カテギダ・カテギーダ
ラテン文字:kataigida
古代ギリシャ語 καταιγίς(嵐)に由来。κατά(下へ, 激しく)と αἰγίς(ゼウスの山羊皮の盾, アイギス)の合成で, 神話でゼウスがアイギスを振ると嵐が起こるとされたことによる。古代 -ίς が現代ギリシャ語で -ίδα に変わった形で受け継がれた。英語 aegis(庇護, 後ろ盾)は同じ αἰγίς にさかのぼる。
派生に καταιγιστικός(激しい, 嵐のような), καταιγισμός(激しい嵐, 集中砲火), καταιγιδοφόρος(嵐をもたらす)。合成語に ηλιοκαταιγίδα(太陽嵐), ιδεοκαταιγίδα(ブレインストーミング), χιονοκαταιγίδα(吹雪), φοροκαταιγίδα(増税の嵐)。
ギリシャ語:κατακόκκινος
読み方:カタコキノス・カタコーキノス
ラテン文字:katakokkinos
κόκκινος(赤い、赤色の) に強調の接頭辞 κατα-(強く、すっかり)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、色が強くはっきり赤いことを言う。
ふつうの κόκκινος(赤い、赤色の) よりも、κατακόκκινος は色の強さが一段前に出る。顔が真っ赤になる、花が真紅に見える、というような場面で使いやすい。
ολοκόκκινος(全体が真っ赤な)は全体が赤で覆われている感じに寄りやすく、κατακόκκινος は赤さの鮮やかさや強度を言いやすい。
意味は真っ赤な、真紅の。鮮やかな赤や、赤さが強く目立つ状態を表す。
ギリシャ語:κατάλευκος
読み方:カタレフコス・カターレフコス
ラテン文字:kataleukos
λευκός(白い、白色の、淡い、潔白な) に強調の接頭辞 κατα-(強く、すっかり)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、非常に白いこと、純白に見えることを強く言う。
ふつうの λευκός(白い、白色の、淡い、潔白な) よりも、κατάλευκος は白さの度合いが高く、雪、歯、壁、衣服などが真っ白に見えることを印象づける。
ολόασπρος(全体がまっ白な)は全体が白一色だという感じに寄りやすく、κατάλευκος は白さそのものの強さを言いやすい。
意味は真っ白な、純白の。白さの強い見え方を表す。
ギリシャ語:κατάμαυρος
読み方:カタマヴロス・カターマヴロス
ラテン文字:katamavros
μαύρος(黒い、黒色の、非常に濃い、暗い) に強調の接頭辞 κατα-(強く、すっかり)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、非常に黒いこと、漆黒に近いことを強く言う。
ふつうの μαύρος(黒い、黒色の、非常に濃い、暗い) よりも、κατάμαυρος は黒さの強度が高く、髪や夜や煙などが真っ黒である印象を強く出す。
ολόμαυρος(全体が真っ黒な)は全体が黒一色だという感じに寄りやすく、κατάμαυρος は黒さそのものの強さを言いやすい。
意味は真っ黒な、漆黒の。色そのものにも、非常に暗い見え方にも使える。
ギリシャ語:καταπράσινος
読み方:カタプラシノス・カタプラーシノス
ラテン文字:kataprasinos
πράσινος(緑の、緑色の) に強調の接頭辞 κατα-(強く、すっかり)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、植物や風景が非常に緑豊かであることを強く言う。
ολοπράσινος(全体が緑の、緑一色の) が「全体に緑だ」というまとまりを言いやすいのに対して、καταπράσινος は色の鮮やかさや青々しさを強調する。
意味は真っ緑な、青々と緑の。草木が茂った景色や濃い緑色に使いやすい。
ギリシャ語:κατάρα
読み方:カタラ・カターラ
ラテン文字:katara
古代ギリシャ語の κατά-(〜に対して)と ἀρά(祈り)からなる κατάρα(呪い)を継承。
対義語は ευχή(願い、祝福)と ευλογία(祝福)。同じ祈りでも、相手の幸いを願うのが ευχή、災いを願うのが κατάρα。
ギリシャ語:καταστροφή
読み方:カタストゥロフィ・カタストゥロフィー
ラテン文字:katastrofi
ギリシャ語:κατηγορία
読み方:カティゴリア・カティゴリーア
ラテン文字:katigoria
古代ギリシャ語の κατηγορία(告発、公の言い立て、範疇)に由来。κατά(〜に対して)と ἀγορεύω(公の場で話す)から作られた κατήγορος(告発者)に -ία を付けた名詞。現代の「分類、カテゴリー」の用法はフランス語 catégorie、英語 category からの意味借用で定着した。英語 category もラテン語 catēgoria を経て同じ語源。
派生語に κατηγορώ(告発する、非難する), κατηγορούμενος(被告)。関連語に δικαστήριο(裁判所), ποινή(刑罰)。
ギリシャ語:κατολίσθηση
読み方:カトリスシシ・カトリースシシ・カトリスティシ・カトリースティシ
ラテン文字:katolisthisi
κατολίσθηση(地すべり、土砂崩れ)は、κατά(下へ)と ολισθαίνω(滑る)系の語からできた名詞である。文字どおりには「下へ滑ること」で、現代ギリシャ語では斜面の土砂や岩が崩れ落ちる災害を言う。
σεισμός(地震、震動) や πλημμύρα(洪水、氾濫) のあとに引き起こされやすい災害として並ぶことがある。κατολίσθηση はとくに斜面の崩れに焦点がある。
意味は地すべり、土砂崩れ。山腹や斜面の土砂が崩れて滑り落ちる災害をいう。
ギリシャ語:κατσίκα
読み方:カツィカ・カツィーカ
ラテン文字:katsika
中世ギリシャ語の κατσίκα(ヤギ)に由来する語で、その前の形として κατσίκι(子ヤギ)がある。現代ギリシャ語では、ヤギを表す基本語として使われる。
κατσίκα はヤギ全般を言う基本語だが、とくに雌を指しやすい。同義語に γίδα(ヤギ)があり、雄ヤギは τράγος(雄ヤギ)、子ヤギは κατσίκι(子ヤギ)と言い分ける。近い語として αίγα(雌のヤギ、ヤギ)、野生のヤギに関わる αίγαγρος(野生ヤギ)、クレタの野生ヤギを指す κρι-κρι(クリクリ)、年老いた雌ヤギをいう γκιόσα(年老いた雌ヤギ)もある。
主な意味はヤギ、とくに雌ヤギ。家畜として飼われる反芻動物を指し、乳、糞、毛の話でもよく出る。そこからヤギ肉やヤギ料理を指すこともあり、罵倒では気難しい女を言う。
ギリシャ語:καύση
読み方:カフシ・カーフシ
ラテン文字:kafsi
動詞 καίω(燃やす)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 καῦσις(焼くこと, 焼却)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の καύση の形になり, 近代にフランス語 combustion の訳語としても取り入れられ化学や工学の「燃焼」の意味が定着した。英語 caustic(腐食性の), cauterize(焼灼する), holocaust(ホロコースト, 焼き尽くし)も同じ καίω にさかのぼる。
同じ語族に καύσιμο(燃料), καυστικός(腐食性の, 辛辣な), καυστήρας(バーナー), καυτός(熱い)。合成語に καυσαέριο(排気ガス), καυσόξυλα(薪)。
ギリシャ語:καύσιμος
読み方:カフシモス・カーフシモス
ラテン文字:kafsimos
古代ギリシャ語の καύσιμος(燃やすのに適した)に由来。動詞 καίω(燃やす)と同じ語根 καυ- からの形容詞。現代ギリシャ語で中性複数形 τα καύσιμα が「燃料」を指す名詞として使われる用法は、フランス語 carburants からの意味借用で定着した。
同じ語根から καύση(燃焼), καυστικός(腐食性の、辛辣な), καυστήρας(バーナー)など。英語 caustic(腐食性の、辛辣な)はラテン語経由で古代ギリシャ語の καυστικός から。holocaust は ὅλος(全部の)と καίω の合成 ὁλόκαυστον(丸ごと焼いた供物)から。
ギリシャ語:καύσωνας
読み方:カフソナス・カーフソナス
ラテン文字:kafsonas
文語由来の語で、ヘレニズム期ギリシャ語の καύσων(焼けつく暑さ、猛暑)にさかのぼる。そこから対格形 καύσωνα(猛暑を)を経て、現代ギリシャ語の καύσωνας になった。
同じ猛暑でも、γαϊδουροκαλόκαιρο(猛暑、小春日和) は口語的で、「しつこく居座る暑さ」や秋の小春日和まで含むことがある。これに対して καύσωνας は、気象条件としての猛暑や熱波を指す語として使いやすい。
主な意味は、異常に高い気温が続く気象条件としての「猛暑、熱波」。天気予報、報道、注意喚起などで、危険な暑さの到来やその被害、対策を述べるときによく使う。
ギリシャ語:καυτός
読み方:カフトス・カフトース
ラテン文字:kaftos
古代ギリシャ語 καυστός(焼かれた、可燃性の)を継承。σ が脱落して今に至る。動詞 καίω(燃やす)の語群に属し、καύση(燃焼), καύσιμος(燃焼性の)と同根。
類義語に ζεματιστός(熱湯のように熱い、温度のみ), πικάντικος(スパイシーな、食べ物の辛さのみ), ζεστός(暖かい), θερμός(温かい、熱心な)。καυτός は触れると火傷するほどの極端な熱さや、食べ物の強い辛さに使う。関連語に καυτερός(辛い、焼けるように熱い), καύτρα(燃える炭、火傷の跡)。
英語の caustic(腐食性の、辛辣な)は καυστικός(焼く力のある)から、cauterize(焼灼する)は καυτήρ(焼きごて)から。どちらも καίω の語群につながる。
ギリシャ語:καφέ
読み方:カフェ・カフェー
ラテン文字:kafe
フランス語の café(カフェ、コーヒー)からの借用語。もとはアラビア語の qahwa(カフワ、コーヒー)がトルコ語に kahve(カフヴェ、コーヒー)として入り、さらにフランス語を経てギリシャ語に取り入れられた。フランス語の形がそのまま借用されたため、ギリシャ語の格変化を持たない不変化語として使われる。英語の coffee、cafe、cafeteria もアラビア語 qahwa を共通の起源とする。
現代ギリシャ語ではカフェ(飲料を供する場所)を指す中性名詞として、またコーヒーの色から転じて茶色を表す形容詞として用いられる。飲料としてのコーヒーは男性名詞の καφές(カフェス)で区別される。
καφετί(カフェティ)は、より口語的に茶色を表す派生語。καφεκοπτείο(カフェコプティオ)はコーヒー豆の販売や焙煎を行う店を指す複合語。
主な意味はカフェ(飲料を供する場所)と茶色。茶色は形容詞として名詞を修飾するほか、名詞として色そのものも指す。
ギリシャ語:καφές
読み方:カフェス・カフェース
ラテン文字:kafes
語源は、イタリア語の caffé およびフランス語の café にギリシャ語の男性名詞の語尾 -ς が付いたもの。これらはトルコ語の kahve(方言形では καϊβές)に由来し、さらに遡ればアラビア語で「ワイン、飲み物」を指した qahwah に行き着く。
英語の coffee も同じ語源から来ている。
主な意味は飲料としての「コーヒー」だが、原料の「コーヒー豆」や植物の「コーヒーノキ」も指す。日常会話から公的な場面まで広く使われる標準的な語で、ギリシャ特有の注文の仕方や、弔いの席でのコーヒーのような比喩的な表現にも用いられる。
指小辞を伴う καφεδάκι は、コーヒーに誘うときなどに親しみを込めて使われる。
ギリシャ語:καφετής
読み方:カフェティス・カフェティース
ラテン文字:kafetis
トルコ語の kahve(カフヴェ、コーヒー)から入った καφές(コーヒー)に由来する色名。もともとはコーヒーの色、つまり茶色を表す形容詞として καφεδής / καφεδί の形で使われていた。その後、σταχτής(灰色の)などギリシャ語に元からある形容詞の変化パターンに引き寄せられ、[δ] が [t] へと変化して現在の καφετής になった。英語の coffee もアラビア語の qahwa(カフワ、コーヒー)を共通の起源とする。
現代ギリシャ語で茶色を表す語には、不変化形の καφέ もある。καφέ はフランス語からの借用でギリシャ語の格変化を持たないのに対し、καφετής は性・数・格の変化を伴う形容詞として機能する。
派生語の καφετιάζω(茶色くなる、変色する)は茶色に変わっていく過程を表し、καφετίζω(茶色がかった色をしている)は茶色みを帯びた状態を表す。
主な意味は「茶色の」。コーヒーの色やそれに近い色を表す。中性形 καφετί は名詞としても用いられ、茶色という色そのものを指す。
ギリシャ語:κάψιμο
読み方:カプシモ・カープシモ
ラテン文字:kapsimo
古代ギリシャ語の動詞 καίω(燃やす、焼く)のアオリスト語幹 καψ- に行為・状態を表す接尾辞 -ιμο を付けた形で、中世ギリシャ語の κάψιμο(ν) を経て今に至る継承。コンピュータで「焼く(CD や DVD に書き込む)」という意味は、英語 burn から来た意味借用。
類義語に καύση(燃焼)。καύση は化学・工学や火葬の文脈で使う硬い語で、κάψιμο は焼くこと・燃えることをふつうに指す形として広く使う。関連語に καψάλα(焦げ跡), καψάλισμα(軽く焼くこと、きつね色に焼くこと), καύσωνας(猛暑、熱波), καούρα(胸焼け), εμπρησμός(放火), αποτέφρωση(火葬), ζεμάτισμα(熱湯火傷、やけど), τσούξιμο(しみるような痛み)。
ギリシャ語:κέδρο
読み方:ケドゥロ・ケードゥロ
ラテン文字:kedro
κέδρος(ヒマラヤスギ、シダー) の中性名詞の形。
マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹、およびその木材を指す。ギリシャではビャクシン属の木も広くこの語で呼ぶ。
ギリシャ語:κέδρος
読み方:ケドゥロス・ケードゥロス
ラテン文字:kedros
古代ギリシャ語の κέδρος(ケドロス、特定の属に限らず香りの強い樹脂質の針葉樹)を継承。語の起源は不明で、ギリシャ先住の言語からの借用とする説がある。
κέδρος がラテン語に入る際に、ふたつの異なる語形に分かれた。
ひとつは、もとの「針葉樹」の意味を引き継いだ cedrus。当時のラテン語では特にケードネズ(Juniperus oxycedrus)を指し、現在は Cedrus(ヒマラヤスギ属)の学名として用いられている。英語の cedar やフランス語の cèdre はこの系統から来ている。
もうひとつは、「シトロンの木」を意味する語に変わった citrus。κέδρος から citrus への音の変化(母音 e→i、子音 dr→tr)は、エトルリア語を経由したためと考えられている。なぜ針葉樹の名がシトロンを指す語になったのかは定かでないが、古代ローマの医師ガレノスは複数の可能性を挙げている。未熟なシトロンの実がスギの球果に似ていること、どちらの木の葉にもトゲがあること、果実や葉の香りがスギに似ていることなどが候補。
cedrus 系の語形は針葉樹の意味を保つ一方で、一部の言語では意味が変わった。イタリア語の cedro は「シトロン」を意味し、フランス語の cédrat も同じくシトロンを指す。cedrus 系と citrus 系の両方から、それぞれ別の経路で「シトロン」を意味する語が生まれたことになる。
citrus 系からは英語 citrus(ミカン属の属名)が生まれたほか、フランス語 citron はレモンを、英語 citron はシトロンそのものを指す語になった。そしてこの citrus 系の語は、ラテン語 citrum の形で古代ギリシャ語に逆輸入され、κίτρον(シトロン)になった。現代ギリシャ語では κίτρο(シトロン)。ギリシャ語から出てラテン語を経由し、ふたたびギリシャ語に戻ってきた往復借用の例。
現代ギリシャ語で κέδρος はヒマラヤスギ属(Cedrus)を指す標準的な名称だが、ギリシャ各地ではビャクシン(ジュニパー、Juniperus 属)の俗称としても広く使われている。ギリシャ本土にヒマラヤスギ属は自生しておらず、各地で κέδρα と呼ばれる木のほとんどはビャクシン属。植物学上の正式な名称は άρκευθος(アルケフソス)だが、日常語としては κέδρος のほうが通りがよい。
ギリシャ語:κένταυρος
読み方:ケダヴロス・ケーダヴロス・ケンダヴロス・ケーンダヴロス
ラテン文字:kentavros
古代ギリシャ語の κένταυρος(ケンタウロス)を継承。語源は不明。英語 centaur もラテン語 centaurus を経て同じ語源。
先頭大文字の Κένταυρος は南天のケンタウルス座を指す。隣の Λύκος(おおかみ座)はケンタウロスが狙う獣の姿という伝承があり、現在の Σταυρός του Νότου(みなみじゅうじ座)の星々もかつてはケンタウルス座の後ろ足の一部とされていた。
ギリシャ語:κέντρο
読み方:ケドゥロ・ケードゥロ・ケンドゥロ・ケーンドゥロ
ラテン文字:kentro
動詞 κεντέω(刺す, 突く)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 κέντρον(家畜を追い立てる尖った棒, 針, 円規の足)に由来。円規の尖った足が紙面に刺さる点を κέντρον と呼んだことから「円の中心」の意味が生まれた。語尾 -ον が脱落して現代ギリシャ語の κέντρο の形になり, 現代の用法の多くはラテン語 centrum を経たフランス語 centre からの意味借用。英語 center / centre も同じ centrum にさかのぼる。
派生に κεντράκι(こぢんまりした店, 指小形), κεντρί(針, 棘), κεντρίζω(刺激する), κεντρικός(中心の), κεντρώνω(接ぎ木する), κέντρωμα(接ぎ木), άκεντρος(針のない, 中心のない)。合成語に επίκεντρο(震源, 中心点), ομόκεντρος(同心の), φυγόκεντρος(遠心の), έκκεντρος(偏心の, 奇矯な), συγκεντρώνω(集中させる), απόκεντρος(中心から遠い)。
μέση(真ん中)が位置を指すのに対し, κέντρο は機能や活動が集まる点, 拠点や施設を指す。
ギリシャ語:κεραμιδί
読み方:ケラミディ・ケラミディー
ラテン文字:keramidi
κεραμιδί(瓦色の、赤茶色の)は、κεραμίδι(瓦、屋根瓦)からできた色名である。現代ギリシャ語では、焼いた瓦を思わせる赤茶色を表す。
不変化形容詞として名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞として瓦色そのものも指す(το κεραμιδί(瓦色))。
μπορντό(ボルドー色の、深い赤紫の、ボルドー色) が紫みのある深い赤を指すのに対して、κεραμιδί はもっと土っぽい赤茶色を言いやすい。茶色寄りの暗さでは σοκολατί(チョコレート色の、濃い茶色の、チョコレート色) と近づくが、κεραμιδί には焼いた土の赤みが残る。
意味は瓦色の、赤茶色の、瓦色。屋根、壁、布、小物、焼き物の色に使いやすい。
ギリシャ語:κεραμικό
読み方:ケラミコ・ケラミコー
ラテン文字:keramiko
κεραμικό は、古代ギリシャ語 κέραμος(陶土、焼き物)に由来する形容詞 κεραμικός(陶製の)が名詞化した語である。現代ギリシャ語では、焼き物やセラミック素材を指す中性名詞として使われる。
πηλός(粘土、泥) が成形前の土の材料を指すのに対して、κεραμικό は焼成後の陶器や、その種の素材を指しやすい。
主な意味は「陶器」「セラミック」。器やタイルのような製品にも、素材分類としてのセラミックにも使える。
ギリシャ語:κέρας
読み方:ケラス・ケーラス
ラテン文字:keras
古代ギリシャ語の κέρας(角)に由来。印欧祖語の「角、頭」を表す語根から続き、英語 horn、ラテン語 cornu(角)、ギリシャ語由来の rhinoceros(サイ、「鼻に角」)や triceratops(トリケラトプス、「三つの角の顔」)、keratin(ケラチン、角質)も同じ語源に連なる。現代ギリシャ語では文語的な語で、日常の「角」には中世以降に生まれた派生形 κέρατο が使われる。合成語 αἰγόκερως(やぎの角を持つもの)から来た Αιγόκερως(やぎ座、山羊座)の後半要素にも残る。
ギリシャ語:κερασένιο
読み方:ケラセニョ・ケラセーニョ
ラテン文字:kerasenio
形容詞 κερασένιος(サクランボ色の、サクランボ風味の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。
サクランボ色そのものを指す。
ギリシャ語:κερασένιος
読み方:ケラセニョス・ケラセーニョス
ラテン文字:kerasenios
ギリシャ語:κεράσι
読み方:ケラシ・ケラーシ
ラテン文字:kerasi
ヘレニズム期の κεράσιον(サクランボ)から、中世ギリシャ語の κεράσι(ν)(サクランボ)を経て現代ギリシャ語の κεράσι になった。
果実の木は κερασιά。指小語 κερασάκι は小さなサクランボを表すほか、サクランボの γλυκό του κουταλιού、つまり果実をシロップで煮たスプーンスイーツも指す。
主な意味はサクランボで、春に熟す小ぶりで丸い果実を指す。つやのある赤い皮と、甘く香りのよい果肉のイメージから、赤くふっくらした唇をたとえる言い方にも使われる。
ことわざでは、大きな話や大きな約束をすぐ信じず慎重に受け取る態度を表す。指小語 κερασάκι を使った定型表現では、なくてもよい余計なおまけを指す言い方がある。
ギリシャ語:κερασί
読み方:ケラシ・ケラシー
ラテン文字:kerasi
κεράσι(サクランボ)に由来する口語の不変化語。サクランボのような赤みを帯びた色を表し、形容詞としても名詞としても使われる。
同じサクランボ色を表す語に κερασένιος がある。κερασί は不変化語として形容詞にも名詞にも使えるのに対し、κερασένιος は語尾変化する形容詞。
比較対象として βυσσινί、κεραμιδί、μπορντό が挙がる。
口語で、サクランボのような赤みを帯びた色合いを表す。形容詞として名詞の後ろに置かれ、名詞では色そのものを指す。
ギリシャ語:κεραυνός
読み方:ケラヴノス・ケラヴノース
ラテン文字:keravnos
ギリシャ語:κερδίζω
読み方:ケルディゾ・ケルディーゾ
ラテン文字:kerdizo
中世ギリシャ語で κέρδος(利益、得)に -ίζω を付けてできた動詞。古代ギリシャ語の同系の動詞は κερδαίνω。
ギリシャ語:κερί
読み方:ケリ・ケリー
ラテン文字:keri
中世ギリシャ語の κερίν(ろう、蝋)に由来する。語源欄では語末子音を括弧に入れて示すこともある。
同じ語では、μελισσοκέρι(蜜蝋)や αγιοκέρι(教会に供えるろうそく)のような複合語がある。比較語として κηρίο(巣房、蜂の巣の板)や λαμπάδα(長いろうそく)が挙げられ、素材名としては παραφίνη(パラフィン)や στεατίνη(ステアリン)の語も合わせて現れる。
主な意味は「ろう、蝋、ワックス」で、μέλισσα(ミツバチ)が巣を作るときに分泌する蜜蝋のような天然のろうから、合成ワックスや脱毛用ワックス、その商品としてのろうそくまで含む。別の意味では、αυτί(耳)にたまる耳あかも κερί と言う。指小語の κεράκι(小さなろうそく、ろうそく形の小型電球)は、特に誕生日用の小さなろうそくや、ろうそく形の小型電球に使われる。
ギリシャ語:κεφάλι
読み方:ケファリ・ケファーリ
ラテン文字:kefali
古代ギリシャ語 κεφαλή(頭)を継承。ヘレニズム期の指小形 κεφάλιον(小さな頭)が中世ギリシャ語の κεφάλιν を経て, 語末の -ν が脱落して現代ギリシャ語の κεφάλι の形になった。
派生に κεφαλιά(頭突き, ヘディング), κεφαλάκι(小さな頭, 指小形), κεφάλα(大きな頭, 増大形), κεφάλας(大頭の人)。同じ語族に κεφάλαιο(資本, 章), κεφαλαίος(大文字の), κεφαλικός(頭の), κέφαλος(ボラ)。合成語に κεφαλόδεσμος(鉢巻), κεφαλοκλείδωμα(ヘッドロック), κεφαλόποδα(頭足類), περικεφαλαία(兜), πονοκέφαλος(頭痛)。
ギリシャ語:κεφάτος
読み方:ケファトス・ケファートス
ラテン文字:kefatos
κέφι(上機嫌、ノリ、意欲)に、形容詞を作る接尾辞 -άτος が付いた語。
χαρούμενος(嬉しい)は単に気分が明るいことを広く言えるのに対し、κεφάτος は内側から湧くようなノリの良さや活気を強く含む。ευδιάθετος(機嫌の良い)よりもくだけた語で、社交的な楽しさのニュアンスが強い。
主な意味は「陽気な、上機嫌な」。人や集団の状態だけでなく、話や音楽のように人を楽しい気分にさせるものにも使う。
ギリシャ語:κέφι
読み方:ケフィ・ケーフィ
ラテン文字:kefi
トルコ語の keyif(楽しみ、気晴らし。方言では kef)から入った語で、さらにその背景にはアラビア語系の語がある。
χαρά も「喜び」を表すが、κέφι は単なる喜びよりも動きのある語で、内側から湧く上機嫌さ、ノリの良さ、何かをしたくなる勢いを表す。パーティーや音楽で場が盛り上がっているときや、何かに熱中する気分を言うときによく使う。
主な意味は、上機嫌で陽気な気分。また、何かをしたいという意欲や気分も指す。複数形 κέφια では、そのときどきの機嫌や調子をまとめて言うこともある。
ギリシャ語:κεχριμπάρι
読み方:ケフリバリ・ケフリバーリ・ケフリンバリ・ケフリンバーリ
ラテン文字:kechrimpari
ペルシャ語 kahrubā(藁を引きつけるもの)に由来する。琥珀は擦ると静電気を帯び、藁のような軽いものを引きつける性質があり、その性質がそのまま名前になった。ペルシャ語からトルコ語 kehribar(琥珀)を経て、ギリシャ語に κεχριμπάρι として入った。
古代ギリシャ語では琥珀を ἤλεκτρον(エーレクトロン)と呼んだ。現代ギリシャ語にもそこから ήλεκτρο(琥珀)の形で残るが、日常的には κεχριμπάρι のほうが一般的に使われる。
天然樹脂の化石である琥珀の日常的な名称。宝石としての琥珀のほか、透き通った黄色を形容する表現としても用いられる。
ギリシャ語:κηδεία
読み方:キディア・キディーア
ラテン文字:kideia
古代ギリシャ語の κηδεία(世話、気づかい、弔い、葬儀)に由来。動詞 κηδεύω(世話をする、特に死者を弔う)の行為名詞で、κῆδος(心配、世話、とりわけ親族や死者への気づかい)にさかのぼる。古代には親族や友への広い「世話」をも言ったが、後古典期以降は「死者の世話」の方に意味が絞られ、現代ギリシャ語では葬儀・葬送の場そのものを指す語として定着した。
派生語・関連語に κηδεύω(葬る、弔う)、κηδεμόνας(保護者、後見人)、κηδεμονία(後見、保護)、νεκροθάφτης(墓掘り人)、νεκροταφείο(墓地)。
ギリシャ語:κήτος
読み方:キトス・キートス
ラテン文字:kitos
ギリシャ語:κιθάρα
読み方:キサラ・キサーラ・キタラ・キターラ
ラテン文字:kithara
古代ギリシャ語の κιθάρα(竪琴に似た弦楽器)に由来。形はそのままで、現代の「ギター」の意味はイタリア語 chitarra からの意味借用で加わった。
古代の κιθάρα はギリシャ先住の言語から来たとされ、さらに古い起源としてフルリ・ウラルトゥ語の kinnar(竪琴、ハープ)につながるとする説もある。この語形はラテン語 cithara、中世アラビア語 qītāra、イタリア語 chitarra へと渡り、その過程で楽器そのものが今のギターに近い形へと変わっていった。現代ギリシャ語はこの新しい意味だけをイタリア語から取り込み、形は古代のまま残した往復借用の語。英語 guitar もスペイン語 guitarra を経て同じ系統から来ている。
派生語に κιθαρίστας(ギター奏者)、指小形の κιθαρούλα。関連語に μουσική(音楽)、動詞 παίζω(演奏する)。
ギリシャ語:κίνημα
読み方:キニマ・キーニマ
ラテン文字:kinima
動詞 κινέω(動かす)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 κίνημα(動き, 運動)を継承。「社会運動」の用法はフランス語 mouvement からの訳語借用。英語 cinema は κίνημα と γράφω(書く)から作られた κινηματογράφος(映画機)をもとにした語。
関連語に κίνηση(動き、動作)、κινητικός(運動の)、κινηματογράφος(映画)。
ギリシャ語:κίνηση
読み方:キニシ・キーニシ
ラテン文字:kinisi
動詞 κινώ / κινέω(動かす)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 κίνησις(動き)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の κίνηση の形になった。現代の用法の一部はフランス語 mouvement からの意味借用。英語 kinetic(運動の)や cinema(元は κίνημα と γράφω を組み合わせた cinematograph の略)も同じ κινώ にさかのぼる。
同じ語族に κίνημα(動き, 映画作品), κίνητρο(動機), κινητήρας(エンジン), κινητός(動く, 携帯の), κινηματογράφος(映画, 映画館), ακινησία(不動, 静止)。合成語に ανακίνηση(撹拌, 蒸し返し), διακίνηση(流通), εκκίνηση(出発, 起動), επανεκκίνηση(再起動), μετακίνηση(移動), παρακίνηση(動機づけ), συγκίνηση(感動), υποκίνηση(扇動), ηλεκτροκίνηση(電動), πετρελαιοκίνηση(ディーゼル駆動)。
ギリシャ語:κιτρινωπός
読み方:キトゥリノポス・キトゥリノポース
ラテン文字:kitrinopos
κίτρινος(黄色い、黄色の) に、古代ギリシャ語 ὤψ(目、顔)に由来する -ωπός(〜色を帯びた)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、完全な黄色ではなく、黄みがかった色を言う。
κίτρινος(黄色い、黄色の) がはっきりした黄色を言うのに対して、κιτρινωπός はその黄色が少し混じって見える状態を言う。λεμονής(レモン色の、薄黄色の) が明るい淡黄色を指すのに対して、κιτρινωπός はくすみや土気も含めて言いやすい。
意味は黄色がかった、黄みを帯びた。紙、肌、空、水、石などの微妙な色合いに使いやすい。
ギリシャ語:κίτρο
読み方:キトゥロ・キートゥロ
ラテン文字:kitro
ギリシャ世界では古くから知られている柑橘のひとつ。ヘレニズム期のギリシャ語 κίτρον(キトロン)から来ており、κίτρον はラテン語 citrum(シトロンの木)からの借用。英語の citron(シトロン)や citrus(柑橘類)も同じ語に由来する。
このラテン語 citrus 自体が古代ギリシャ語の κέδρος(ヒマラヤスギ) から来ており、針葉樹の名がラテン語で柑橘の名に変わり、ギリシャ語に戻ってきた往復借用にあたる。
シトロンの木(κιτριά)の果実を指す。日本語では丸仏手柑(まるぶしゅかん)とも呼ばれる。
ギリシャ語:κλαδί
読み方:クラディ・クラディー
ラテン文字:kladi
ギリシャ語:κλάμα
読み方:クラマ・クラーマ
ラテン文字:klama
古代ギリシャ語の κλαῦμα(泣くこと、嘆き)を継承。動詞 κλαίω(泣く)に行為・結果を表す接尾辞 -μα が付いた中性名詞で、中世ギリシャ語で発音 [klavma] の子音連続が同化して [klamma] となり、二重子音が単純化して [klama] に落ち着いた。古代の κλαίω は印欧祖語に確実な同根語が見当たらず、アルバニア語 qaj(泣く)と結び付く可能性のほか、先ギリシャ語基層からの継承や擬音的な起源も想定されている。
類義語に θρήνος(嘆き、哀歌。儀礼的・公的な嘆きを指す古代由来の硬い形), οδυρμός(号泣、嘆き悲しむ声。書き言葉の硬い形), λυγμός(むせび泣き、しゃくり), δάκρυ(涙のしずく。一滴一滴の涙そのものを指す)。κλάμα は涙を流して泣く行為や泣き声そのものを指す形として、子供のぐずりから大人の悲嘆まで幅広く使う。関連語に κλαίω(泣く。動詞、κλάμα の元の動詞), κλαψιάρης(泣き虫。κλαψ- 系の派生), κλαψουρίζω(めそめそ泣く)。
ギリシャ語:κλειδί
読み方:クリディ・クリディー
ラテン文字:kleidi
印欧祖語で「鍵, 閉じる道具」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 κλείς(鍵, かんぬき)の指小形 κλειδίον(小さな鍵)を経て, 中世ギリシャ語の κλειδί(ν) を継承。語末の -ν が脱落して現代ギリシャ語の κλειδί の形になった。
派生に κλείδα(鎖骨, 鍵), κλειδάκι(小さな鍵, 指小形), κλειδαράς(錠前師), κλειδαριά(錠, 鍵穴), κλειδώνω(鍵をかける)。合成語に αντικλείδι(合鍵), γαντζόκλειδο(鉤爪レンチ), κλειδαμπαρώνω(しっかり閉ざす), κλειδάριθμος(PIN コード), κλειδοκύμβαλο(クラヴィコード, 鍵盤楽器), κλειδομαντεία(鍵占い), μπουλονόκλειδο(ボックスレンチ), μπουζόκλειδο(プラグレンチ)。
ギリシャ語:κλέφτης
読み方:クレフティス・クレーフティス
ラテン文字:kleftis
κλέφτης(泥棒)は、中世ギリシャ語の κλέφτης(泥棒)に由来する。
別形に κλέπτης(泥棒)があり、女性形は κλέφτρα(女の泥棒)。
近い語に διαρρήκτης(空き巣)や ληστής(強盗)がある。κλέφτης は盗みを働く者を広く指し、ληστής はより暴力や脅しを伴う文脈で使われる。
主な意味は「泥棒」。日常の盗人から特定の品を専門に盗む者まで幅広く指す。歴史文脈では主に複数形で山岳地帯の武装集団の一員を表し、植物では風に乗って運ばれる綿毛状の種もいう。
ギリシャ語:κλήμα
読み方:クリマ・クリーマ
ラテン文字:klima
ギリシャ語:κοινή λογική
読み方:キニロイキ・キニーロイキ・キニロギキ・キニーロギキ
ラテン文字:koini logiki
κοινός(共通の)と λογική(論理)からなる連語。ギリシャ語では「共通の論理」と表現するが、英語の common sense やフランス語の sens commun、ドイツ語の Gemeinsinn など、多くのヨーロッパ言語では「共通の感覚」と表現する。
この違いのもとには、アリストテレスが五感の情報を統合・判断する能力として提唱した「共通感覚(κοινή αἴσθησις)」という概念がある。もともとは個人の感覚的な能力を指していたが、時代を経て、社会全体で共有される知識や判断力という意味に変わった。ラテン語で sensus communis と訳されたことで、西欧諸語には「感覚(sense)」の語が定着した。一方、現代ギリシャ語では λογική(論理)が選ばれ、κοινή λογική の形になった。
κοινός νους(共通の知性)も同義で使われる。近い語には γνώμη(意見)、φρόνηση(分別、思慮)がある。
主な意味は「常識」。深く考えるまでもなく、経験や知識から自然にわかる判断力を指す。そこから、ある社会や集団で広く共有されている考え方や慣習としての「社会通念」も表す。
ギリシャ語:κοινός
読み方:キノス・キノース
ラテン文字:koinos
古代ギリシャ語の κοινός(共通の、公共の)に由来。対義的な語に ίδιος(自分の、固有の)など。
主な意味は「共通の」「共同の」「一般的な」。人々が集団で共有する性質や、複数の人が一緒に使うもの、あるいは特別な特徴のない平凡なものを指す。
副詞形は κοινώς / κοινά で、「一般に」「俗に」の意味になる。また κοινός を含む固定表現も多く、言語、世論、市場、病名などを表す連語に広く使われる。
ギリシャ語:κοινότητα
読み方:キノティタ・キノーティタ
ラテン文字:koinotita
古代ギリシャ語の κοινότης(共通性、共通のもの、共同体)に由来。
κοινός(共通の)に抽象名詞を作る接尾辞 -της を付けた語で、現代ギリシャ語では古代の対格形 κοινότητα がそのまま主格として使われている。古代では「共通であること」そのものや財の共有などを指した。
現代の「地域共同体、コミュニティ」の意味はフランス語 communauté から、学校や自治体の区画としての使い方はフランス語 commune からの意味借用によってそれぞれ整えられた。
派生語に κοινοτικός(共同体の、地域の)、κοινωφελής(公益の、共同体のためになる)など。共通の語源を持つ関連語に κοινωνία(社会)、κράτος(国家)がある。
ギリシャ語:κοινωνία
読み方:キノニア・キノニーア
ラテン文字:koinonia
古代ギリシャ語の κοινωνία(共有、交わり、結びつき)に由来。
κοινός(共通の)から派生した κοινωνός(共に持つ者、仲間)を抽象化した名詞で、動詞 κοινωνέω(分かちあう、共にする)と対になる。
古代では財・祭祀・生活を共にする結びつきを広く表し、キリスト教では「聖体拝領、交わり」の専門語としても使われた。
現代ギリシャ語で「社会」の意味の基本語として使われるのは、フランス語 société からの意味借用で近代に整えられたもの。
派生語に κοινωνικός(社会的な、人付き合いのよい)、κοινωνιολογία(社会学)、κοινωνικοποίηση(社会化)。共通の語源を持つ関連語に κοινωνός(共にあずかる者)、κοινότητα(共同体)、κράτος(国家)。
ギリシャ語:κόκκινος
読み方:コキノス・コーキノス
ラテン文字:kokkinos
ヘレニズム期ギリシャ語の κόκκινος(赤い、深紅の)を継承。古代ギリシャ語の κόκκος(粒、種、ケルメス=赤い染料をとる虫)に形容詞を作る接尾辞 -ινος を付けた形で、もとは κόκκος で染めた深紅を指した。英語 coccus(球菌。球形の細菌)は、この κόκκος からラテン語を経て入った学術借用。
類義語に ερυθρός(赤の、紅の。公式・学術や文芸の文脈で使う硬い形), πορφυρός(深紅、王侯の赤紫), άλικος(鮮やかな赤)。派生に κοκκινάδα(赤み、赤らみ), κοκκινάδι(頬紅、口紅), κοκκινέλι(コキネリ。薄口の赤ワイン), κοκκινάκι(赤色。指小形), κοκκινίζω(赤くなる、赤くする), κοκκινιστός(トマトソースで煮込んだ), κοκκινωπός(赤みがかった)。合成語に σκουροκόκκινος(暗赤色の), βαθυκόκκινος(深紅の), ροδοκόκκινος(バラのように赤い), κοκκινοπίπερο(赤ピーマン、パプリカ), κοκκινοφάσουλο(赤インゲン), κοκκινολαίμης(ヨーロッパコマドリ), Κοκκινοσκουφίτσα(赤ずきん)。関連語に中性形 κόκκινο(赤色、赤信号)。
:::vocab
- κόκκινη γραμμή(レッドライン。譲れない一線)
- κόκκινη κάρτα(レッドカード。退場、拒絶)
- κόκκινη ζώνη(レッドゾーン。立ち入り禁止区域)
- κόκκινο πανί(赤い布。比喩:人を激怒させるもの、目の敵)
- κόκκινο χαλί(レッドカーペット)
- κόκκινος συναγερμός(レッドアラート。最大警戒)
- κόκκινα δάνεια(不良債権。返済が滞っているローン)
- κόκκινος πλανήτης(赤い惑星。火星)
- Κόκκινος Στρατός(赤軍。ソ連軍)
:::
ギリシャ語:κοκκινωπός
読み方:コキノポス・コキノポース
ラテン文字:kokkinopos
κόκκινος(赤い、赤色の) に、古代ギリシャ語 ὤψ(目、顔)にさかのぼる -ωπός(〜色を帯びた)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、完全な赤ではなく、赤みを帯びた色を言う。
κόκκινος(赤い、赤色の) がはっきり赤い色を言うのに対して、κοκκινωπός はその赤が少し差して見える状態を言いやすい。顔色や肌では ροδαλός(ほんのり赤い、バラ色の)に近づくこともあるが、κοκκινωπός はもっと一般に「赤っぽい」を言える。
意味は赤みがかった、赤っぽい。空、肌、石、液体などの微妙な色合いに使いやすい。
ギリシャ語:κοκόρι
読み方:ココリ・ココーリ
ラテン文字:kokori
古代ギリシャ語の κίκκος(鶏の鳴き声の擬声語)または κόκκος(粒)に関連するとされる κόκορας(雄鶏)の指小形。擬声語的な響きを持つ言葉から、中世を経て、親しみや小ささを表す指小辞 -ι が付いた κοκόρι という形が定着した。
κοκόρι は基本的には「小さな雄鶏、若鶏」を指す。κόκορας が一般的な「雄鶏」を指す標準的な語であるのに対し、κοκόρι は口語的、あるいは日常的で親しみを込めたニュアンスが強い。さらなる指小形に κοκοράκι がある。ニワトリ、鶏全般を広く表す語は κοτόπουλο。
主な意味は「小さな雄鶏、若鶏」で、一般的に食用や家畜としての若い鶏を指す際に使われる。また、比喩的な表現やことわざの中で、運の良さ、早朝の時間帯、喧嘩っ早い様子などを表すために多用される。
ギリシャ語:κόλαση
読み方:コラシ・コーラシ
ラテン文字:kolasi
動詞 κολάζω(罰する)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 κόλασις(罰, 懲戒)から。ヘレニズム以降キリスト教の文脈で死後の罰を受ける場所を表すようになり, そこから「地獄」の意味が定着した。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の κόλαση の形になった。
同じ語族に κολάζω(罰する), κολαστήριο(拷問室, 責め苦の場), κολασμένος(呪われた, 地獄に落ちた)。
ギリシャ語:κολοκύθι
読み方:コロキシ・コロキーシ・コロキティ・コロキーティ
ラテン文字:kolokythi
中世ギリシャ語の κολοκύθι を継承。
古代ギリシャ語 κολοκύνθη(ひさご、瓜)の指小形として後古典期に誕生した κολοκύνθιον(小さなひさご)に由来。これが音変化を経て中世に入った形で、指小の意味は抜け、瓜・ひさご類を広く指す基本形となった。近代以降に入ってきたズッキーニにもこの語が当てられ、今は日常ではズッキーニを指すことが多い。
κολοκύνθη は前ギリシャ語の基層語からの借用と見られる。地中海一帯で栽培された瓜類の古い名にさかのぼる。
派生語に κολοκυθιά(瓜やズッキーニの株、つる)、κολοκυθάκι(ズッキーニ、κολοκύθι の指小形)、κολοκυθόπιτα(ズッキーニのパイ)、κολοκυθόσπορος(瓜類・かぼちゃの種、パンプキンシード)などがある。
ギリシャ語:κολύμπι
読み方:コリビ・コリービ・コリンビ・コリーンビ
ラテン文字:kolympi
κολύμπι は現代ギリシャ語の動詞 κολυμπώ / κολυμπάω(泳ぐ)を土台にした日常的な名詞で、「泳ぐこと」「泳ぎ」を表す。背後には古い κολυμβάω(潜る、泳ぐ)にさかのぼる語群があり、現代ギリシャ語では動詞に近い口語的な形として κολύμπι がよく使われる。
より形式的・競技的な言い方では κολύμβηση(水泳)も使われるが、日常会話では κολύμπι のほうが「泳ぎそのもの」や泳げるかどうかの話に乗りやすい。
μπάνιο(風呂、入浴、水浴び、水泳)は、海やプールに入って楽しむこと全体をやわらかく言える語で、水浴びや海水浴にも広く触れられる。これに対して κολύμπι は、実際に泳ぐ行為そのものや泳ぎの技量に重心がある。
κολύμπι は πισίνα(プール)や θάλασσα(海)と結びつきやすく、κολύμπι στην πισίνα(プールで泳ぐこと)、κολύμπι στη θάλασσα(海で泳ぐこと)のように使う。競技の文脈では、自由形、平泳ぎ、背泳ぎのように各泳法名と組み合わさって「その泳ぎ方」を表す。
主な意味は、水の中を進む行為としての「泳ぎ」「水泳」。趣味や余暇としての泳ぎにも、泳げるかどうかの能力の話にも使う。スポーツでは、自由形や平泳ぎなど個別の泳法名を添えて、その種目・泳ぎ方を表すこともある。
ギリシャ語:κόμη
読み方:コミ・コーミ
ラテン文字:komi
古代ギリシャ語の κόμη(頭髪、葉の茂み)に由来。起源は特定できず、ギリシャ先住の言語から来たとする説や、アッカド語 qimmatum(毛束、冠)などセム語族の系統とする説もある。日常語では μαλλιά(髪)を使い、κόμη は文語寄りに残る。
彗星の尾を流れる髪に見立てて、ἀστήρ κομήτης(髪の長い星)と呼ばれた。この ἀστήρ が省かれ、κομήτης だけで「彗星」を言うようになり、現代ギリシャ語 κομήτης にそのまま続く。ラテン語 cometa、英語 comet、フランス語 comète も同じ語源。天文学で彗星を取り巻くガス雲を κόμη と呼ぶのは、英語 coma、フランス語 chevelure からの意味借用で加わった用法。
派生語に κομήτης(彗星)、κομμωτής(美容師)。星座 Κόμη της Βερενίκης(かみのけ座)は、女王ベレニケーが夫の無事を願って捧げた髪が天に上げられた、という神話に由来する名。
ギリシャ語:Κόμη της Βερενίκης
読み方:コミティスヴェレニキス・コーミティスヴェレニキス
ラテン文字:komi tis verenikis
κόμη(髪)と人名 Βερενίκη(ベレニケ)からなる連語で「ベレニケの髪」を言う。紀元前3世紀、プトレマイオス3世の王妃ベレニケ2世が、夫の無事を祈ってアフロディーテに髪を奉納したところ神殿から消えた。宮廷天文学者コノンがこれを「女神が空に上げた」と解して、一群の星に結びつけたとされる。ラテン語形は Coma Berenices で、英語名もそのまま入った。別形 Κόμη Βερενίκης(属格だけで並べた形)も使う。
ギリシャ語:κομήτης
読み方:コミティス・コミーティス
ラテン文字:komitis
古代ギリシャ語の κομήτης(長い髪を持つもの)を継承。κόμη(髪)に「〜を持つ者」を表す接尾辞 -της を付けた形で, 人名としてミケーネ期から用例がある。古代の天文書で使った κομήτης ἀστήρ(長い髪を持つ星)という言い方が縮まり, κομήτης 単独で「彗星」を言うようになって, ラテン語 cometa を経由したフランス語 comète, 英語 comet と同じ道筋をたどって今に続く。
元となる名詞は κόμη(髪)で, 動詞 κομάω(髪を長く伸ばす)が兄弟の古い語としてあった。κομήτης 自体から派生する語は限られ, 形容詞 κομητικός(彗星の)が天文学の文脈で使われる程度。
天体の総称は αστέρι(星)で, 流れ星や隕石は μετέωρο(流星, 隕石)。κομήτης はその中で, 尾を引いて見える彗星を指す特定の語。英語 comet, フランス語 comète, イタリア語 cometa, スペイン語 cometa はどれもラテン語 cometa を経由した同じ古代ギリシャ語からの語族。
ギリシャ語:κόμμα
読み方:コマ・コーマ
ラテン文字:komma
古代ギリシャ語の κόμμα(切り取られた部分、切片、刻印、文の一句)に由来。動詞 κόπτω(切る、打ち切る)から作られた名詞で、古代では切り分けられた物の一片、貨幣に打たれた刻印、修辞で文の短い一句といった使い方があった。現代の「政党」としての使い方はフランス語 parti からの翻訳借用、句読点の「コンマ」としての使い方はフランス語 virgule からの意味借用で、近代にそれぞれ定着した。
派生語・関連語に κόβω(切る)、κομμάτι(一片、部分)、κομματικός(政党の、党派的な)、κομματιάζω(ばらばらに切る、小分けにする)、αποκόπτω(切り離す)。関連語に κράτος(国家)、κοινωνία(社会)。
ギリシャ語:κοράκι
読み方:コラキ・コラーキ
ラテン文字:koraki
古代ギリシャ語の κόραξ(カラス)の指小辞である、ヘレニズム時代の κοράκιον に由来する。もともとは「小さなカラス」にあたる形だったが、現代ギリシャ語ではカラスを指す最も一般的な語として定着した。英語の raven や crow、ラテン語の corvus とも同じ語源につながる。
より形式的な言い方や古風な表現では κόρακας も使われる。派生語の κορακί は、カラスの羽のような深い黒色を表す。
主な意味はカラスで、そこから黒い服の葬儀屋、弱い者に群がる詐欺師、さらに非常に勉強熱心で頭の切れる生徒を指す比喩にも広がる。
ギリシャ語:κόρη
読み方:コリ・コーリ
ラテン文字:kori
古代ギリシャ語の κόρη(少女、娘)を継承。古くは κούρη の語形もあり、ミュケナイ時代の線文字 B に ko-wa として記録が残る。印欧祖語で「養う、育てる」を表す語根につながり、同じ語根の動詞 κορέννυμι(満たす、充足させる)が古代ギリシャ語にあった。
瞳孔の意味は、μάτι(目)を覗きこんだときにそこに映る小さな人影を「娘」に見立てた古代の比喩から。近代に入って、西洋考古学で英語 kore、フランス語 korê、ドイツ語 Kore として使われた学術用語の意味借用で、古拙期の女性立像を κόρη と呼ぶ用法も加わった。対になる男性像は κούρος。
ギリシャ語:κορυφή
読み方:コリフィ・コリフィー
ラテン文字:koryfi
ギリシャ語:κόσμημα
読み方:コズミマ・コーズミマ
ラテン文字:kosmima
印欧祖語で「告げる, 整える」を表す語根にさかのぼり, ラテン語 cēnseō(評定する, 査定する)やサンスクリット śaṃsati(褒め称える)と同源の語族に連なる古代ギリシャ語の中性名詞 κόσμημα(飾り, 装飾品。κόσμος「秩序, 装飾」から派生した動詞 κοσμέω「整える, 飾る」に結果を表す接尾辞 -μα を付けた形)を継承。κόσμος はもとは「秩序」「調和」の意で, そこから「世界の秩序」としての「宇宙」と「整え飾ること」としての「装飾」の二方向に意味が分かれ, κόσμημα は後者の系譜に属する。英語 cosmos(宇宙), cosmetic(化粧品)は κόσμος からラテン語・フランス語を経由して入った学術借用で, κόσμημα と語根を共有する。
類義語に στολίδι(飾り、装飾品。飾り全般を指す), μπιζού(アクセサリー。フランス語 bijou からの外来借用で、主にファッション小物や安価な装飾品を指す)。κόσμημα は貴金属や宝石を用いた芸術的・金銭的価値の高い宝飾品を指す形として使う。派生に κοσμηματάκι(小さな宝飾品。指小形), κοσμηματοπώλης(宝飾商), κοσμηματοπωλείο(宝飾店), κοσμηματοθήκη(ジュエリーケース)。関連語に κόσμος(世界、宇宙), κοσμέω(整える、飾る), κοσμικός(世俗の、社交界の)。
ギリシャ語:κότα
読み方:コタ・コータ
ラテン文字:kota
ギリシャ語:κοτόπουλο
読み方:コトプロ・コトープロ
ラテン文字:kotopoulo
語源は、古代ギリシャ語の「κόττος(鶏)」に由来する「κότα(メンドリ)」と、指小辞の「-πουλο(〜の子、雛)」が組み合わさったもの。中世ギリシャ語の「κοττόπουλλον」を経て、現代ギリシャ語の「κοτόπουλο」となった。もともと若鶏を指したが、現代では「ニワトリ」や「鶏肉」を広く表す語として使われる。
接尾辞の「-πουλο」は、ラテン語の「pullus(若い動物)」と同じ印欧祖語で「若い動物」を意味する語根に遡る。この pullus は古フランス語を経て、英語の「pullet(若鶏)」や「poultry(家禽)」の語源ともなっている。
現代ギリシャ語では連結母音を伴った「-όπουλο」の形で、動物の子どもを表す接尾辞として使われる(例: γατόπουλο = 子猫、αρνόπουλο = 子羊)。
κοτόπουλο のほか、ニワトリには性別や成長段階に応じたさまざまな呼称がある。
オンドリとメンドリにはそれぞれ別の語がある。
:::vocab
- κόκορας(オンドリ。最も一般的な語)
- κότα(メンドリ。κοτόπουλο の語源でもある)
- πετεινός(オンドリ。文語的。新約聖書のペトロの否認の場面で知られる)
- αλέκτορας(オンドリ。古代ギリシャ語 ἀλέκτωρ に由来する古語・文語)
- κοκόρι(若いオンドリ)
- πετεινάρι(大きなオンドリ。πετεινός の指大語)
:::
古代ギリシャ語 ὄρνις(鳥)に由来する語群で、文語・方言的にニワトリを指す。
:::vocab
:::
κοτόπουλο 自体がもともと「メンドリの子」の意だが、さらに幼い段階を指す語もある。
:::vocab
- κλωσόπουλο(孵ったばかりのヒヨコ。κλωσσώ〈抱卵する〉+ -όπουλο)
- κοτοπουλάκι(κοτόπουλο の指小語)
- κοκοράκι(κόκορας の指小語。小さなオンドリ)
:::
主な意味は、食用として飼育される若鶏。また、その肉である鶏肉や鶏肉料理を指す。比喩的には、疲れや眠気でふらふらになっている状態を表す際にも使われる。
ギリシャ語:κουζίνα
読み方:クジナ・クジーナ・クズィナ・クズィーナ
ラテン文字:kouzina
κουζίνα は、意味ごとに別の借用経路が重なってできた語。家の中の「台所、キッチン」という意味はヴェネツィア語の cusina から入り、オーブンつきの「コンロ」という意味はフランス語の cuisinière から、国や地域の「料理、料理法」という意味はフランス語の cuisine から入った。現代ギリシャ語では、それらがひとつの形にまとまり、調理する場所、器具、料理の伝統をまとめて表せるようになっている。
器具の意味で近いのは φούρνος(オーブン、かまど、パン屋、工業炉)だが、φούρνος が焼くための炉やオーブンを中心に指すのに対し、κουζίνα は上部に火口があり下にオーブンが付いた一体型の調理器具を指しやすい。台所まわりでは μαχαίρι(ナイフ、包丁、メス、刃)のような語と結びついて μαχαίρι της κουζίνας(台所の包丁)と言い、器具の部位では μάτι(目、視線、穴、邪視)を使って μάτι της κουζίνας(コンロの火口)とも言う。料理の意味では φαγητό(食べ物、料理、食事)が皿の上の食べ物そのものを指しやすいのに対し、κουζίνα は料理様式や店・地域の持ち味を言う。業務用の調理場には μαγειρείο(調理場、まかない場)が近く、食文化全体をやや堅めに言うなら γαστρονομία(ガストロノミー、美食文化)のほうが向いている。
κουζινάκι(小さな台所、ミニキッチン)は小さな台所やミニキッチンを指す。κουζινέτο(小型コンロ、簡易調理台)は第2義の延長で、小型の調理台や簡易コンロを言うときに使いやすい。κουζινούλα(小さな台所、小さなコンロ)と κουζινίτσα(小さな台所、小さなコンロ)は、台所やコンロを小さくかわいらしく言う形で、どちらも第1義と第2義にかかる。
主な意味は、家や店の中で料理をする場所としての台所、火口とオーブンを備えた調理器具としてのコンロ、そして国・地域・店ごとの料理や料理法。ひとつの語で空間、器具、食のスタイルまでをまとめて言える。
ギリシャ語:κούκλα
読み方:ククラ・クークラ
ラテン文字:koukla
κούκλα(人形、マリオネット、マネキン、美人、巻き玉)は、近代ヨーロッパ語の kukla 系の人形語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、まず遊ぶ人形や飾り人形を言い、そこから美しい人への呼びかけにも広がった。
中心の意味は人形。さらに、糸で操る人形、店頭のマネキン、美しい人へのくだけたほめ言葉、そして糸やひもを巻いた玉も表すことがある。
ギリシャ語:κουνέλι
読み方:クネリ・クネーリ
ラテン文字:kouneli
κουνέλι(ウサギ)は、古代ギリシャ語の κύνικλος(ウサギ) / κόνικλος(ウサギ)、ラテン語 cuniculus(ウサギ)、イタリア語 coniglio と重なり合う系統の中で、中世ギリシャ語の κουνέλι(ウサギ)が現れ、現代ギリシャ語の κουνέλι(ウサギ)へ続いた語と考えられている。
κουνέλι は、長い後ろ脚を持ち λαγός(ノウサギ)に似た動物として意識されるが、ふつうは飼育されるウサギやその野生化したものを指しやすい。雌を明示するなら κουνέλα(雌ウサギ)、小さい個体や親しみをこめた言い方なら κουνελάκι(子ウサギ、小さなウサギ)、まれに男性形 κούνελος(雄ウサギ)も使う。
主な意味は「ウサギ、兎」。長い後ろ脚、やわらかい毛、短いふさふさした尾を持つ動物を指し、野生のもの、白ウサギ、ペット、繁殖用の個体などに広く使う。そこから料理では κρέας(肉、肉体)としてのウサギ肉や、その料理名にもなる。
ギリシャ語:κουράγιο
読み方:クライオ・クライーオ・クラギオ・クラギーオ
ラテン文字:kouragio
イタリア語の coraggio に由来する。借用の過程で語頭の o が u に寄り、現代ギリシャ語の κουράγιο になった。
近い語に θάρρος(勇気、胆力)や τόλμη(大胆さ、思い切り)がある。既存ページのある ψυχή(魂、心、勇気)も「勇気、不屈の精神」を表せるが、ψυχή が内面の強さやガッツを言うのに対して、κουράγιο は苦しい状況をしのぐ気力や、人を励ますときの「元気を出して」に自然に寄る。
主な意味は、苦しい状況に向き合うための気力や精神的な持久力。そこから、真実を言ったり相手に言い返したりするだけの勇気や度胸も表す。呼びかけの κουράγιο! は「気をしっかり」「頑張って」のような励ましにもなる。
ギリシャ語:κουτάλι
読み方:クタリ・クターリ
ラテン文字:koutali
ヘレニズム期の κώταλις(くぼみのある器, ひしゃく)の指小形として中世ギリシャ語に κουτάλι(ν) が作られ, 指小の意味は抜けて「スプーン」を指す語になった。もとの κώταλις は現代に伝わらず, 同じ語群から派生した κουτάλα(お玉, 大さじ)が大ぶりの道具の名として残っている。
現代ギリシャ語では食卓のスプーンそのものに加えて、そこから派生した「一さじ分」の量も表す。
派生語に κουταλάκι(小さなスプーン、ティースプーン)、κουταλιά(一さじ分)などがある。
ギリシャ語:κρασί
読み方:クラシ・クラシー
ラテン文字:krasi
古代ギリシャ語の κρᾶσις(混合)を継承。動詞 κεράννυμι(混ぜる)の語幹に状態・結果を表す接尾辞 -σις を付けた形で、もとは κρᾶσις οἴνου(ワインの混合)と言って水で割ったワインを指した表現が、やがて οἴνου を省いて κρᾶσις 単独でワインそのものを指すようになり、中世ギリシャ語 κρασίν を経て今の形に落ち着いた。英語 crater(火口、酒を混ぜる器が原義)や idiosyncrasy(気質、体質。ἴδιος「自分の」+σύν「共に」+κρᾶσις「混合」から)もこの κεράννυμι 系譜からラテン語を経由して入った学術借用。
類義語に οίνος(ワイン。古代ギリシャ語由来でラベル表記や詩歌・文芸の文脈で使う硬い形)。英語 wine や oenology(ワイン学)は οίνος から入った借用で、κρασί と同じワインを指すが語源は別系統。κρασί はワインを指すふつうの形として広く使う。派生に κρασάκι(一杯のワイン、愛称。指小形), κρασάς(ワイン好き、酒飲み), κρασάτος(ワインで煮込んだ、ワイン色の), κρασωμένος(ワインで酔った)。合成語に κρασοβάρελο(ワイン樽), κρασοπότηρο(ワイングラス), κρασοπότι(ワイングラス、盃)。
ギリシャ語:κρατέρωμα
読み方:クラテロマ・クラテーロマ
ラテン文字:krateroma
ヘレニズム期ギリシャ語の κρατέρωμα(銅と錫の合金)に由来。さらに深い語源は不明。カサレヴサ系の文語で使われる。
日常的な同義語は μπρούντζος(青銅、ブロンズ)。材料は χαλκός(銅)と κασσίτερος(錫)の合金で、銅と亜鉛の合金である真鍮(ορείχαλκος)としばしば混同される。
ギリシャ語:κράτος
読み方:クラトス・クラートス
ラテン文字:kratos
古代ギリシャ語の κράτος(力、支配、最高権)に由来。古代では人や神の持つ「力、優越、支配力」を表した語で、政治体としての「国家」そのものを指す使い方はフランス語 état、ドイツ語 Staat からの意味借用で近代に定着した。「国家権力」の側面では古代からの「支配力」の核がそのまま響いている。合成語末の -κρατία(〜支配)も同じ系列で、δημοκρατία(民主主義)、αριστοκρατία(貴族政)、γραφειοκρατία(官僚主義)などに現れる。
派生語・関連語に κρατώ(保つ、持つ、統治する)、κρατικός(国家の、公的な)、κρατικοποίηση(国有化)、υπερκράτος(超国家、超大国)。関連語に κοινωνία(社会)、δημόσιος(公の、公共の)。
ギリシャ語:κρέας
読み方:クレアス・クレーアス
ラテン文字:kreas
ギリシャ語:κρεβάτι
読み方:クレヴァティ・クレヴァーティ
ラテン文字:krevati
古代ギリシャ語の κράββατος(粗末な寝床)に由来する。中世ギリシャ語の κρεβάτιον(κράββατος の指小形)を経て、現代ギリシャ語の一般的な「ベッド」を指す語となった。
類義語に κλίνη(寝台、病床)がある。κλίνη はより格式まった表現で、医療や文章語の文脈に出やすい。一方、κρεβάτι は日常のベッドを指すふつうの語として広く使われる。
主な意味は、人が眠ったり休息したりするためのベッドや寝床。そこから、病院やホテルで人を収容できる単位としての「ベッド、床数」も指す。結婚式の前に、新婚夫婦のベッドへ客人がお金を投げ入れる伝統儀式を指す用法もある。
指小語 κρεβατάκι は「小さなベッド」を表す。
ギリシャ語:κρεμ
読み方:クレム・クレーム
ラテン文字:krem
ギリシャ語:κρεμμύδι
読み方:クレミディ・クレミーディ
ラテン文字:kremmydi
κρεμμύδι は、古代ギリシャ語の κρόμμυον(タマネギ)がコイネー期の κρέμμυον(タマネギ)、中世ギリシャ語の κρεμμύδιν(タマネギ)を経て受け継がれた語である。語尾がしだいに簡略化されて、現在の形に落ち着いた。
口語では κρομμύδι(タマネギ)という形もあり、こちらは古い段階の /o/ の響きをより強く残した言い方として並んで使われる。
σκόρδο(ニンニク)は、κρεμμύδι と同じく鱗茎を食べる近い野菜で、料理でも並んで現れやすい。λαχανικό(野菜)という広い分類の中では、κρεμμύδι はとくに香味野菜としてよく意識される。
指小語の κρεμμυδάκι(小さな玉ねぎ、若い玉ねぎ)は、小ぶりなものを指すのに使われる。増大語の κρεμμύδα(大きな玉ねぎ)は、大ぶりの玉ねぎを指す言い方である。
主な意味はタマネギ。植物全体を指すこともあるが、日常的には食材としての球根を指すことが多い。黄色、赤、白の品種があり、乾燥させたもの、みずみずしい新しいもの、葉つきの若いものまで、ふだんの料理の中で幅広く使われる。
生でサラダやギュロスに添えるほか、炒める、揚げる、焼くといった調理でも基本の食材になる。輪切りにしたオニオンリングのように、切り方そのものを言い分ける表現も多い。
ギリシャ語:κριάρι
読み方:クリアリ・クリアーリ
ラテン文字:kriari
中世ギリシャ語の κριάρι(雄羊。語末子音を伴う形もある)に由来する語。現代ギリシャ語では、雄羊を表す基本語として定着している。
羊全般の基本語は πρόβατο(羊)。そのうち雄を特に言うときが κριάρι(雄羊)、雌は προβατίνα(雌羊)、子は αρνί(子羊)で、さらに小ささや親しみを込めた形に αρνάκι(小さな子羊、乳飲み仔羊)がある。
同義語に κριός(雄羊)がある。日常語では κριάρι が普通で、κριός はやや文語的な形として現れる。先頭を大文字にした Κριός(牡羊座、おひつじ座)は、星座そのものの名。口語で、その星座の人を κριάρι と呼ぶ用法がここから生まれている。
近い語として τράγος(雄ヤギ)もあり、こちらは羊ではなくヤギの雄を指すので区別される。
主な意味は雄羊、牡羊。角のある成獣の雄を指す。口語では、星占いでおひつじ座の人を指すのにも使われる。星座名そのものは Κριός という。指小語の κριαράκι(小さな雄羊)はその小さい形を表す。
ギリシャ語:κρίνο
読み方:クリノ・クリーノ
ラテン文字:krino
語源は不詳の借用語とみられる古代ギリシャ語 κρίνον(ユリ)を継承。古代ギリシャ語にはすでに中性形 κρίνον と男性形 κρίνος の両形があり, 中性形では語尾 -ον が脱落して現代ギリシャ語の κρίνο となり, 男性形 κρίνος と並んで使われている。
派生に κρινάκι(小さなユリ, 指小形), κρινένιος(ユリのような, ユリ色の), κρινώδης(ユリ状の)。合成語に αγριόκρινο(野生のユリ), νερόκρινο(水生のユリ), κρινολούλουδο(ユリの花), ροδόκρινο(バラ色のユリ), κρινάνθι(ユリの花), κρινόριζα(ユリの球根), κρινόλαδο(ユリの油)。
ギリシャ語:κριός
読み方:クリオス・クリオース
ラテン文字:krios
古代ギリシャ語の κριός(雄羊)を継承。ふつうは κριάρι(雄羊)を使う。攻城用の破城槌の用法は、雄羊が角で突き当たる姿から。
先頭大文字の Κριός(おひつじ座、牡羊座)は、金毛の雄羊クリソマロス(Χρυσόμαλλος)にちなむ。継母に命を狙われたプリクソスとヘレを背に乗せて空を飛び、コルキスまで運んだ雄羊。プリクソスが到着後に犠牲として捧げた毛皮が「金羊毛」となり、アルゴー船の英雄たちが求めに行ったという話。ゼウスが雄羊を星にした姿。
ギリシャ語:κροκόδειλος
読み方:クロコディロス・クロコーディロス
ラテン文字:krokodeilos
古代ギリシャ語 κροκόδιλος(クロコディロス)に由来する。κρόκη(小石)と δρῖλος(ミミズ、虫)の合成語とされ、トカゲが日当たりの良い石の上を這い回る様子に基づいた命名と考えられる。
ラテン語の crocodilus を経て、英語の crocodile(クロコダイル)などへ波及した。
綴り違いの κροκόδιλος も見られるが稀で、κορκόδιλος は誤記にあたる。女性形の κροκοδειλίνα は主に口語で使われる。近縁種を表す αλιγάτορας(アリゲーター)という語もあるが、厳密な区別が必要でなければアリゲーターも含めてワニ全般を κροκόδειλος と呼ぶのが一般的。
熱帯の河川や湖、沼地に生息する大型の肉食爬虫類を指す。
ギリシャ語:κρόκος
読み方:クロコス・クローコス
ラテン文字:krokos
古代ギリシャ語の κρόκος(サフラン、クロッカス、卵の黄身)を継承。元はセム語族からの借用と見られ、アッカド語 kurkanū、ヘブライ語 karkom、アラビア語 kurkum と同じ語根を共有する。卵の黄身の意味は、サフランの黄色との連想から古代ギリシャ語後期に加わった。
κρόκος はラテン語 crocus を経て西欧諸語へ広まり、英語 crocus、フランス語 crocus もこの系譜。調味料や染料としてのサフランは ζαφορά や σαφράν とも呼ばれ、こちらはアラビア語 zaʿfarān から来た別系統。
派生語に κροκάδι(卵黄)、δίκροκος(黄身が二つある)、κροκάτος(サフラン色の)。
ギリシャ語:κροτίδα
読み方:クロティダ・クロティーダ
ラテン文字:krotida
カサレヴサの κροτίς(対格 κροτίδα)に由来。古代ギリシャ語 κρότος(破裂音、轟音)に指小接尾辞 -ίς を付けた形で、対格形が主格形として定着して今に至る。
類義語に βαρελότο(大型の爆竹), στρακαστρούκα(クラッカー、かんしゃく玉)。関連語に βεγγαλικό(手持ち花火、ベンガル花火), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾)。
ギリシャ語:κρύο
読み方:クリオ・クリーオ
ラテン文字:kryo
ギリシャ語:κρύος
読み方:クリオス・クリーオス
ラテン文字:kryos
中世ギリシャ語の κρύος(冷たい)を受け継いだ語。現代では、気温や飲み物、食べ物、部屋、手足の温度が低いことを表す基本語として広く使われる。比喩的な「冷淡な」「寒い冗談」の広がりには、フランス語 froid の用法も重なっている。
温度の対義語には ζεστός(温かい、熱い)と θερμός(温かい、熱い)がある。近い語には ψυχρός(冷たい、冷ややかな)、χλιαρός(ぬるい)、παγερός(凍てつくような)があり、人や態度についての対義語としては εγκάρδιος(心のこもった)が並ぶ。
主な意味は、物が冷たい、天気が寒い、体や機械がまだ温まっていないということ。そこから、人や対応のよそよそしさ、冗談のしらけた感じにも広がる。固定表現では χρώμα(色)に κρύα(冷たい)を添えて寒色を表したり、χέρια(手)と καρδιά(心、心臓)を対比する言い方にも残る。
ギリシャ語:κρύσταλλο
読み方:クリスタロ・クリースタロ
ラテン文字:krystallo
κρύσταλλος の中性名詞形。
ギリシャ語:κρύσταλλος
読み方:クリスタロス・クリースタロス
ラテン文字:krystallos
古代ギリシャ語の κρύσταλλος(澄んだ氷、水晶)に由来。現代の「結晶」「ガラス製品」の意味はフランス語 cristal、英語 crystal からの意味借用で広がった。英語 crystal もラテン語 crystallus を経て同じ語源。
現代ギリシャ語では主に男性名詞で、まれに女性名詞としても使う。同じ意味の中性名詞 κρύσταλλο の形もある。
ギリシャ語:κτίριο
読み方:クティリオ・クティーリオ
ラテン文字:ktirio
古代ギリシャ語の οἰκητήριον(住居、住む場所)が起源。οἶκος(家)から派生した動詞 οἰκέω(住む)に、場所を表す接尾辞 -τήριον がついた語で、もとは「人が住む場所」を意味していた。
中世ギリシャ語の時代に、「建てる、築く」を意味する動詞 κτίζω に似ているとして結びつけられ、κτίριον という形に変わった。この現象は語源俗解と呼ばれ、本来の語源とは異なるが音の似た語に引きずられて語形が変化するもの。κτίζω から実際に派生した κτίσμα(建造物)とは成り立ちが異なるが、現代では意味の近い語として並んでいる。κτίριον の語末の -ν が落ちて、現在の κτίριο になった。
語源にある οἶκος は英語にも痕跡を残しており、economy(経済。もとは「家の管理」の意)や ecology(生態学。もとは「住む環境についての学問」)の eco- がこれにあたる。
κτίριο は英語の structure(構造物)や edifice(大建築物)にあたり、単なる「家」を指す σπίτι よりも、公共施設やオフィスビルなど規模の大きな建築物を指すことが多い。近い語に、より抽象的な「建造物」を意味する κτίσμα や、住居としての「住宅」を指す κατοικία がある。
居住、仕事、娯楽など、さまざまな目的で建てられた建物やビルを意味する。
ギリシャ語:κτιριολογία
読み方:クティリオロイア・クティリオロイーア・クティリオロギア・クティリオロギーア
ラテン文字:ktiriologia
κτίριο(建物)の古い形 κτίριον に、体系的な学問や論理を意味する接尾辞 -λογία(英語 -logy の語源)が組み合わさった語で、学術的な表現として用いられる。κτίριον は古代ギリシャ語の οἰκητήριον(住む場所)が縮まった形で、中世にかけて κτίζω(建てる)と結びつけて理解されるようになった。英語の building science や building technology に相当する。
κτίσμα(建造物)は κτίζω から直接派生した語で、κτίριο とは成り立ちが異なるが、現代では意味の近い語として並んでいる。建築関連の学問には、意匠や設計に重点を置く αρχιτεκτονική(建築学)と、施工や技術に重点を置く οικοδομική(建築工学、建築術)がある。κτιριολογία はこの οικοδομική の一分野にあたる。
主に建築工学の一分野を指す。
ギリシャ語:κυανό
読み方:キャノ・キャノー
ラテン文字:kyano
形容詞 κυανός(青い)の中性単数形。色名として名詞的に用いられる。
青、青色を指す色名。
ギリシャ語:κυανός
読み方:キャノス・キャノース
ラテン文字:kyanos
古代ギリシャ語で「濃い青色」を指した形容詞 κυανοῦς(キュアヌース)が起源。現代ギリシャ語の口語(ディモティキ)の形容詞変化に合わせて語尾が -ός に変化し、現在の形になった。英語の「シアン(cyan)」や、色を指す接頭辞「cyano-」はこの語に由来し、化学用語の κυανιούχος(キャニューホス、シアン化物を含んだ)もここから派生した。
一般的な「青」を指す μπλε(ブレ)や、空色の γαλάζιος と比べて、より文語的・学術的な響きを持つ。
κυανόλευκος(キャノレフコス、青と白の)はギリシャ国旗の配色を指す際によく使われる合成語。
「青」を指す文語的な形容詞。中性単数形 κυανό は色名としても用いられる。
ギリシャ語:κυβέρνηση
読み方:キヴェルニシ・キヴェールニシ
ラテン文字:kyvernisi
κυβέρνηση(政府、政権、統治)は、古代ギリシャ語 κυβερνάω / κυβερνώ(舵を取る、導く)に由来する語である。もともとの「舵取り」の感覚から、現代ギリシャ語では国家を導く政府や統治を表す。
英語の cybernetics は、この語族と同じ κυβερνήτης(舵手、統率者)にさかのぼる。
υπουργός(大臣、長官) が政府を構成する個々の役職を言うのに対して、κυβέρνηση はその全体としての政府や政権を言う。
意味は政府、政権、統治。組織としての政府にも、政治を運営する行為にも使える。
ギリシャ語:κύκλος
読み方:キクロス・キークロス
ラテン文字:kyklos
古代ギリシャ語の κύκλος(円、輪、車輪)を継承。周期、シリーズ、人の輪、範囲、循環といった現代の抽象的・専門的な用法の多くはフランス語 cycle, cercle、英語 cycle からの意味借用で広がった。
修辞学には、一文の冒頭と末尾に同じ語を置いて円を描くように閉じる技法があり、これを κύκλος と呼ぶ。たとえば新約聖書『ピリピ人への手紙』4章4節の Χαίρετε ἐν Κυρίῳ πάντοτε· πάλιν ἐρῶ, χαίρετε(常に主にあって喜べ。もう一度言う、喜べ)は、冒頭と末尾が χαίρετε(喜べ)で閉じられている。
英語 cycle もラテン語 cyclus を経て同じ語源。印欧祖語の「回る」を表す語根から来た語で、英語 wheel も同じ語根を共有する。
ギリシャ語:κυκλώνας
読み方:キクロナス・キクローナス
ラテン文字:kyklonas
英語 cyclone から入った語。cyclone は19世紀半ばに気象学者ヘンリー・ピディントンが古代ギリシャ語の κυκλῶν(回転する)をもとに作った語。ギリシャ語から英語を経て再びギリシャ語に戻ってきた語にあたる。もとは κύκλος(円、車輪)。関連語に気象分野の τυφώνας(台風)。
ギリシャ語:Κύνες Θηρευτικοί
読み方:キネスシレフティキ・キーネスシレフティキ・キネスティレフティキ・キーネスティレフティキ
ラテン文字:kynes thireftikoi
κύων(犬)の複数形 κύνες と θηρευτικός(狩りの)の複数形 θηρευτικοί からなる連語で「狩りの犬たち」を言う。17世紀にポーランドの天文学者ヘヴェリウスが設定した星座で、新しい星座なので神話はない。もとは中世アラビア語・ラテン語の翻訳過程で「こん棒」が「犬」と取り違えられた流れを、ヘヴェリウスがそのまま星座名に取り入れたとされる。二匹の犬には Αστερίων(北)と Χαρά(南)の名がついている。ラテン語形は Canes Venatici で、英語名もそのまま入った。
ギリシャ語:κυπαρίσσι
読み方:キパリシ・キパリーシ
ラテン文字:kyparissi
古代ギリシャ語 κυπάρισσος(イトスギ)の指小形 κυπαρίσσιον を経て, 中世ギリシャ語の κυπαρίσσι(ν) を継承。語末の -ν が脱落して現代ギリシャ語の κυπαρίσσι の形になった。英語 cypress, フランス語 cyprès もラテン語 cupressus を経て同じ κυπάρισσος にさかのぼる。
派生に κυπαρισσάκι(小さなイトスギ, 指小形), κυπαρισσένιος(イトスギ材の), κυπαρισσί(イトスギ色の, 濃緑色の), κυπαρισσώνας(イトスギ林)。合成語に κυπαρισσέλαιο(イトスギ油), κυπαρισσόμηλο(イトスギの実), κυπαρισσόξυλο(イトスギ材)。
ギリシャ語:κυρία
読み方:キリア・キリーア
ラテン文字:kyria
ヘレニズム期ギリシャ語の κυρία を継いだ学術借用(διαχρονικό δάνειο)。もとは古代ギリシャ語の形容詞 κύριος(主権を持つ、権威のある)の女性形。女性への敬称として使う今の用法は、フランス語 madame やイタリア語 signora の呼称を写した意味借用(σημασιολογικό δάνειο)が重なって定着した。もとの κύριος は古代ギリシャ語 κυριακόν(主の家)を経由して、英語 church(教会。ラテン語 ecclesia とは別にゲルマン語系統を経て入った借用)にも連なる。
類義語に κυρά(おかみさん。親しみのある呼びかけ), νοικοκυρά(主婦、家の女主人), λαίδη(レディ。英語 lady からの借用), δεσποινίς(~嬢。未婚女性の敬称)。関連語に男性形 κύριος(〜氏、紳士), κυριακή(日曜日。「主の日」から)。
ギリシャ語:κύριος
読み方:キリオス・キーリオス
ラテン文字:kyrios
古代ギリシャ語の κύριος(権限を持つ者、支配者)に由来。κῦρος(権威、力)に -ιος が付いてできた語。男性への丁寧な敬称・呼びかけとしての用法は、中世ギリシャ語を経てフランス語 monsieur、イタリア語 signore からの意味借用で広まった。「紳士」としての用法は英語 gentleman からの意味借用で加わった。
派生した κυριακόν(主の家)は、ゲルマン語を経て英語 church(教会)の語源になった。「キリエ・エレイソン(主よ、憐れみたまえ)」の Kyrie は呼格 κύριε にあたる。
女性形は κυρία(女性への敬称)。
ギリシャ語:κύτταρο
読み方:キタロ・キータロ
ラテン文字:kyttaro
古代ギリシャ語の κύτταρον(小部屋、くぼみ、蜂の巣の一房)に由来。もとは κύτος(うつろな空間)から作られた語で、生物の「細胞」の意味はフランス語 cellule からの意味借用で定着した。
ギリシャ語:κωδικός
読み方:コディコス・コディコース
ラテン文字:kodikos
名詞 κώδικας(コード、台帳)から作られた語。κώδικας はラテン語 codex(板、写本、法典)が古代末期のギリシャ語で κῶδιξ となり、対格 κώδικα を経てできた形。英語 code も同じラテン語 codex が源。
Λ
ギリシャ語:λάβα
読み方:ラヴァ・ラーヴァ
ラテン文字:lava
イタリア語 lava から入った借用語。現代ギリシャ語では、火山の噴火で火口から外へ流れ出る溶けた岩石を指す語として使われる。
火山の文脈では、έκρηξη(爆発、激発、急増)が噴火や爆発そのもの、στάχτη(灰、灰燼)が火山灰を指し、λάβα は噴出して流れ出た溶融岩そのものを指す。
流れのまとまりを強調するときは、ποταμός(河川、大量に流れるもの、非常に長いもの)の複数形を使って「溶岩の河」といった言い方をすることもある。
主な意味は溶岩。地質学では火山から噴出した高温の溶融岩を指し、文学的な比喩では、έρωτας(恋愛、恋人、セックス)や πάθος(情熱、激情)が抑えきれずあふれ出る勢いにも重ねられる。
ギリシャ語:Λαγωός
読み方:ラゴオス・ラゴオース
ラテン文字:lagoos
古代ギリシャ語の λαγωός(野ウサギ)に由来。ホメロスなど叙事詩で使われる形で、同じ古代ギリシャ語でもふつうは λαγώς、現代ギリシャ語では λαγός と言う。
プトレマイオスの48星座にも含まれる古い星座。北の Ωρίων(オリオン座)とその猟犬の Μέγας Κύων(おおいぬ座), Μικρός Κύων(こいぬ座)に追われる野ウサギの姿、という見立てがある。
ギリシャ語:λαδής
読み方:ラディス・ラディース
ラテン文字:ladis
ギリシャ語:λαδί
読み方:ラディ・ラディー
ラテン文字:ladi
形容詞 λαδής(オリーブ色の)の中性単数形が、色名として名詞的に用いられるようになったもの。
オリーブ油のような、黄みを帯びたくすんだ緑色そのものを指す。
ギリシャ語:λάδι
読み方:ラディ・ラーディ
ラテン文字:ladi
λάδι(油)は中世ギリシャ語の λάδι(油)を受け継ぐ語。基本は食べ物としての「油」で、とくにオリーブの実から取る油を指しやすい。そこから現代では、植物油、化粧用や機械用のオイル、燃料用の油、さらに油彩作品までをまとめて言える。
料理の脂としては、固形寄りの βούτυρο(バター)と対比されやすく、λάδι は液体の油全般を指しやすい。文脈だけでオリーブ油を表すことも多く、λαδο-(油の)という連結形で λαδόξιδο(油と酢を合わせたドレッシング)のような語をつくる。指小語 λαδάκι(小さな油、食用油のやわらかい言い方)は食用油の意味でやわらかく言う形。
主な意味は食用油。とくにオリーブ油が中心だが、植物油全般や、化粧品・薬品・機械・燃料に使う油性の液体にも広がる。口語では美術作品の「油絵」を省略して λάδι と言うこともある。
成句では、φωτιά(火)と結びついた ρίχνω λάδι στη φωτιά(火に油を注ぐ)や、βγάζω κάποιον λάδι(誰かをおとがめなしに済ませる)、χάνει λάδια(オイルが漏れる / 様子がおかしい)のような言い方が目立つ。
ギリシャ語:λαζουλίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazoulitis
ペルシア語の lāžaward(青色)から中世ラテン語 lazulum(青)を経て、フランス語 lazurite としてギリシャ語に入った。λάπις λάζουλι(ラピスラズリ)の λάζουλι と同じ語源だが、指す鉱物は異なる。英語の lazulite(天藍石)や azure(紺碧)も同じペルシア語に由来する。
語尾の -ίτης は鉱物や「〜に関連するもの」を表す接尾辞で、英語の -ite に対応する。
マグネシウムや鉄を含むリン酸塩鉱物で、美しい青色が特徴。
ギリシャ語:λαζουρίτης
読み方:ラズリティス・ラズリーティス
ラテン文字:lazouritis
ペルシア語の lāžward(ラピスラズリ)から、アラビア語 lāzaward(青い石)、中世ラテン語 lazur を経て、フランス語 lazurite としてギリシャ語に入った。英語の lazurite(ラズライト)や azure(紺碧)も同じペルシア語に由来する。
鮮やかな青色が特徴の珪酸塩鉱物を指す。名前の似た λαζουλίτης(天藍石)とは別の鉱物。
ギリシャ語:λάθος
読み方:ラソス・ラーソス・ラトス・ラートス
ラテン文字:lathos
動詞 λανθάνω(気づかれずに過ぎる, 忘れられる)から派生した古代ギリシャ語の名詞 λάθος(見落とし, 誤り)を継承。ギリシャ神話の忘却の川 Λήθη(レテ)や英語の lethargy(無気力)も同じ語根。
ギリシャ語:λακκούβα
読み方:ラクヴァ・ラクーヴァ
ラテン文字:lakkouva
スラヴ系の語からの借用。ギリシャ語にある λάκκος(穴、坑)との連想で、kk の重子音で綴られるようになった。
ギリシャ語:λάμπα
読み方:ラバ・ラーバ・ランバ・ラーンバ
ラテン文字:lampa
λαμπάς(松明、たいまつ) にさかのぼる語群が、ラテン語 lampas、フランス語 lampe、イタリア語 lampa を経て現代ギリシャ語に入った借用語。現代ギリシャ語では、油や灯油を燃やす古いランプから、電気で光る電球やランプまで、人工の光源を広く指す。
灯りそのものは φως(光、明かり)と言うことが多く、λάμπα は光を出す器具や球そのものを指しやすい。スイッチを入れて点灯させるときは ανάβω(火をつける、つける、点火する)を使い、電球が切れたと言うときには καίω(燃やす、焼く、焦がす)から来た Κάηκε η λάμπα(電球が切れた)のような言い方もする。
指小語には λαμπίτσα(小さなランプ、小さな電球)がある。小さな表示灯や豆電球のようなものには λαμπάκι(小さなランプ、表示灯)も使われる。
主な意味はランプや電球。燃料で灯す昔ながらのランプにも、電気で光る電球やランプにも使える。また、器具全体を指して卓上ランプやフロアランプのように言うこともある。照明以外にも、加熱用ランプ、紫外線ランプ、日焼け用ランプのような使い方がある。
ギリシャ語:λαμπάδα
読み方:ラバダ・ラバーダ・ランバダ・ランバーダ
ラテン文字:lampada
λαμπάδα(ろうそく、細長い蝋燭)は、古代ギリシャ語の λαμπάς(松明、たいまつ) と同じ語群に属する。核にあるのは「燃えて光るもの」という発想で、むき出しの火を持つ松明から、長い蝋燭を表す語へと移ってきた。
λάμπα(ランプ、電球) は現代的な照明器具の語で、λαμπάς(松明、たいまつ) は古い火の光源を表す。λαμπάδα はその中間で、炎をともす細長い蝋燭を指す語として見やすい。
さらに、古いギリシャ語名 Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) も同じ語群に属する。
現代ギリシャ語では、教会や復活祭の文脈で λαμπάδα がとてもよく現れる。特に復活祭に手に持つ長い蝋燭は代表的な用法である。
主な意味はろうそく、細長い蝋燭。特に教会行事や復活祭で手に持つ長いキャンドルを指しやすい。
ギリシャ語:Λαμπαδίας
読み方:ラバディアス・ラバディーアス・ランバディアス・ランバディーアス
ラテン文字:Lampadias
古代ギリシャ語の λαμπαδίας(たいまつのように燃えるもの, 彗星)を継承。λαμπάς(松明, たいまつ)に性質を表す -ίας が付いた形で, 動詞 λάμπω(輝く, 光る)の語族に属する。たいまつや彗星のように強く光るものを呼ぶ語だったが, おうし座の明るい赤い星アルデバランをたいまつの火に見立てた古い呼び名として伝わる。
Αλντεμπαράν(アルデバラン)の古いギリシャ語名として Ταύρος(おうし座)の文脈で現れる。同じおうし座周辺の Υάδες(ヒアデス星団), Πλειάδες(プレアデス星団, すばる)とあわせて位置づけを見るとわかりやすい。
同じ λαμπάς の語族に λάμπα(ランプ, 電球), λαμπάδα(ろうそく, 長い蝋燭), 合成語 λαμπαδηδρομία(トーチリレー, たいまつ競走), λαμπαδηφόρος(たいまつを持つ者)。
ギリシャ語:λαμπάς
読み方:ラバス・ラバース・ランバス・ランバース
ラテン文字:lampas
古代ギリシャ語の λαμπάς(松明, たいまつ)を継承。動詞 λάμπω(輝く, 光る)に -άς が付いた語で, 火を手に持って燃やす光源を指す古い語。ラテン語 lampas もここから入り, そこから Romance 経由で英語の lamp や現代ギリシャ語の λάμπα(ランプ, 電球)につながった。
同じ λάμπω の語族に λαμπάδα(ろうそく, 奉献用の長い蝋燭), 合成語 λαμπαδηδρομία(トーチリレー, たいまつ競走), λαμπαδηφόρος(たいまつを持つ者)。おうし座の明るい赤い星アルデバランの古名 Λαμπαδίας も, たいまつの火に見立てた呼び名でこの語族に連なる。
儀式や競技の場面では λαμπάς が手に持つたいまつを受け, ろうそくや奉献用の長い蝋燭は λαμπάδα, 家庭用のランプや電球は λάμπα と使い分ける。
ギリシャ語:λαμπερός
読み方:ラベロス・ラベロース・ランベロス・ランベロース
ラテン文字:lamperos
中世ギリシャ語の λαμπερός を継承。
動詞 λάμπω(輝く、光る)に、形容詞を作る接尾辞 -ερός を付けてできた語。古代には存在せず、中世期に現れた形である。
古代からある λαμπρός(輝かしい、見事な)も現代に残っている。λαμπερός はものの表面の光や輝きを言うことが中心で、日常会話でよく使う。一方 λαμπρός は視覚の輝きに加えて「見事な経歴、輝かしい業績」のような比喩にも広がり、改まった文脈で使われる。
共通の語源を持つ関連語に λάμπω(輝く)、λάμψη(輝き、きらめき)、λαμπρός(輝かしい、華々しい)、λαμπίκος(ピカピカの、くもりのない)、λαμπαδηδρομία(聖火リレー)などがある。
ギリシャ語:λαμπυρίζω
読み方:ラビリゾ・ラビリーゾ・ランビリゾ・ランビリーゾ
ラテン文字:lampyrizo
この語は、古代ギリシャ語の λάμπω(光る、輝く)を語根とする語群に属し、ヘレニズム時代のコイネーに見られる λαμπυρίζω(きらめく、またたく)に由来する。
英語の lamp(ランプ)や lantern(ランタン)も、ギリシャ語の λαμπάς(たいまつ)や λαμπτήρ(灯火)を経た同じ語群に属する。
λάμπω が力強く継続的に光る様子を表すのに対し、λαμπυρίζω は断続的に小さくまたたくことや、きらきらと光を反射する様子を指す。派生語には λαμπυρίδα(ホタル)がある。
主な意味は、小さく断続的に光を放つこと。星や水面の反射、宝石の輝きなどに対して用いられる。
ギリシャ語:λάμπω
読み方:ラボ・ラーボ・ランボ・ラーンボ
ラテン文字:lampo
印欧祖語で「輝く」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の λάμπω(輝く、光る)を継承。派生形 λαμπάς(たいまつ)はラテン語 lampas、フランス語 lampe を経て英語 lamp の語源になった。
派生・関連語は光源や光のイメージに関わるものが多い。λάμπα(ランプ、電球), λαμπάδα(ろうそく), λαμπάς(たいまつ), λαμπτήρας(電球), λαμπυρίδα(ほたる)など。形容詞 λαμπερός(輝かしい、明るい), 名詞 λάμψη(輝き)もこの動詞の語群。復活祭の呼び名 Λαμπρή もここから。星名 Λαμπαδίας(アルデバランの古いギリシャ語名)は λαμπάς(たいまつ)からの派生。
ギリシャ語:λάμψη
読み方:ラムプシ・ラームプシ
ラテン文字:lampsi
中世ギリシャ語の λάμψις(輝き、光の放射)を受け継ぐ語。現代ギリシャ語でもまず、光が放たれたり反射したりして見える輝きや閃光を表す。
近代にはフランス語の éclat や lueur と重なる意味領域でも使われ、物理的な光だけでなく、色の冴えや華やかさをいう語としても定着している。
φως(光)が光そのものや明かりを指すのに対し、λάμψη はその光が見せるきらめき、反射、ひらめきを指す。星や太陽、宝石のようなものが放つ輝きにも、一瞬だけ走る光にも使える。
対照的な側には σκοτάδι(暗闇)がある。暗い空間の中で見える閃光や、空に走る光の筋をいうときにも自然に用いられる。
主な意味は、光の輝きや表面のつや。そこから色の鮮やかさ、肌や髪の自然なつやにも広がる。さらに比喩的に、αλήθεια(真実)が明るみに出ること、希望のきらめき、祭りや都市が放つ栄華や華やかさも表す。
ギリシャ語:λαός
読み方:ラオス・ラオース
ラテン文字:laos
古代ギリシャ語の λαός(民衆, 人々, 軍勢)を継承。もとは「武装した人々」を指したとされ, 印欧祖語で「軍事行動」を表す語根に連なる説と, ギリシャ語以前の基層から来たとする説がある。現代の「国民, 民族, 庶民」の用法はフランス語 peuple からの意味借用で輪郭が整った。
派生に λαϊκός(庶民の, 民俗の, 世俗の), λαογραφία(民俗学), λαοθάλασσα(人の海, 群衆), λαοσυναξία(大衆の集まり)。英語 lay(俗人の), laity(俗人階層), liturgy(典礼)も, λαός を含むギリシャ語合成語(λαϊκός, λειτουργία)からラテン語経由で入った。
類義語 έθνος は歴史, 言語, 文化を共有する「民族, 国民」を指すのに対し, λαός は国民, 民衆, 庶民までを幅広く受ける。πληθυσμός は統計的な「人口」を指す。κόσμος は会話で「人々, 大勢の人」を表すときに使い, κοσμάκης は同情や軽い卑下を込めた「庶民, 民草」を指す。
ギリシャ語:λάπις λάζουλι
読み方:ラピス ラズリ・ラーピス ラズリ
ラテン文字:lapis lazouli
ラテン語の lapis(石)と、ペルシア語に由来するアラビア語 lāzaward(鮮やかな青)を組み合わせた中世ラテン語 lapis lazuli に由来する。「青い石」を意味する。フランス語・英語を経由して現代ギリシャ語に入った借用語で、英語の lapis lazuli も同じ中世ラテン語から来ている。
ラピスラズリの主成分にあたる鉱物は λαζουρίτης(青金石)と呼ばれる。名前の似た λαζουλίτης(天藍石)は別の鉱物で、リン酸塩からなる青い石を指す。顔料としての青色は ουλτραμαρίνα(ウルトラマリン)と呼ばれる。
鮮やかな青色をした半貴石を指す。性・数で語形が変化せず、男性名詞としても中性名詞としても使われる。
ギリシャ語:λάσπη
読み方:ラスピ・ラースピ
ラテン文字:laspi
中世ギリシャ語の λάσπη を継承。
それ以前の語源は定かではなく、中世期から土と水が混じった泥を指す語として文献に現れる。
比喩で相手の評判を汚す「中傷、悪口」を表す使い方は、フランス語 boue(泥)からの意味借用とされる近代的な用法。λασπολογία(中傷合戦、誹謗中傷の応酬)のような合成語でもこの感覚が生きている。
派生語に λασπώδης(泥のような、ぬかるんだ)、λασπώνω(泥まみれにする、泥をはねる)、λασπωμένος(泥まみれの)、λασπολογία(中傷合戦)、λασποτόπι(ぬかるみの地)などがある。
ギリシャ語:λάστιχο
読み方:ラスティホ・ラースティホ
ラテン文字:lasticho
λάστιχο は、国際語 elastic に連なる近代語から入った語で、現代ギリシャ語ではゴムや弾力のある素材を指す形に定着している。素材そのものを言うだけでなく、その素材でできた製品名にも広がりやすい。
ποδήλατο(自転車) ではタイヤの意味で、ποτίζω(水をやる、灌漑する) に関わる場面では散水ホースの意味で出やすい。用途によって何を指すかが決まる語である。
主な意味は「ゴム」。そこから、車や自転車のタイヤ、水道や庭仕事のホースを言うのにも使われる。
ギリシャ語:λαχανί
読み方:ラハニ・ラハニー
ラテン文字:lachani
ギリシャ語:λαχανικό
読み方:ラハニコ・ラハニコー
ラテン文字:lachaniko
λάχανο(キャベツ)に、「〜に関するもの」を表す接尾辞 -ικό が付いた形。語源をたどると、古代ギリシャ語の λάχανον(野生のハーブ、野菜)に行き着く。
古代ギリシャ語では λάχανον が食用植物全般を意味していたが、λάχανο が「キャベツ」に意味を狭めた一方で、λαχανικό が「野菜」全般を引き継いだ。ヘレニズム期の λαχανικός は「野菜税」の文脈で使われており、現在の「野菜」とは異なる用法だった。
類義語として ζαρζαβατικό(トルコ語由来。庭で採れるような野菜を指す口語)があるが、λαχανικό のほうが標準的で広い概念を指す。
食用となる草本植物、特に菜園で栽培されるものを指す。通常は複数形 λαχανικά で用いられる。
ギリシャ語:λάχανο
読み方:ラハノ・ラーハノ
ラテン文字:lachano
古代ギリシャ語の λάχανον(掘り起こされたもの、食用植物)から。中世ギリシャ語の λάχανον を経て、現代ギリシャ語ではおもに「キャベツ」を指すようになった。
英語の植物学用語で使われる接頭辞 lachano-(野菜の〜)も、この古代ギリシャ語に由来する。
類義語として μάπα(丸いキャベツ)がある。また、学術的・専門的な呼称として κράμβη(アブラナ属、ケール等)が使われることもある。
λαχανο- は「野菜の、キャベツの」を意味する接頭辞で、λαχανικό(野菜)の語源でもある。
主な意味は植物の「キャベツ」。複数形 λάχανα は青物や葉物野菜を指すのにも使われる。料理名や日常的な比喩表現、ことわざにも頻繁に登場する。
ギリシャ語:λεβάντα
読み方:レヴァダ・レヴァーダ・レヴァンダ・レヴァーンダ
ラテン文字:levanta
λεβάντα(ラベンダー)は、ラテン語 lavanda 系の流れを後ろに持ち、イタリア語 lavanda に連なる語から入った借用語である。洗うことや香りづけに結びついた名として広がった。
英語 lavender も同じラテン語系の流れに属する。
λεβάντα は観賞用の花としても、香りのよいハーブとしても意識される。乾燥花を袋に入れて香りづけに使ったり、香りそのものを連想させたりしやすい。
意味はラベンダー。紫がかった花をつける植物で、香りのよいハーブとしても知られる。
ギリシャ語:λειρί
読み方:リリ・リリー
ラテン文字:leiri
古代ギリシャ語で「ユリ(百合)」を意味する λείριον を起源とする。中世ギリシャ語の λειρίον を経て、現代ギリシャ語の λειρί となった。鶏のトサカの形がユリの花弁に似ていることから、この名称で呼ばれるようになった。
英語の lily も、このギリシャ語 λείριον を借用したラテン語 lilium に由来しており、語源を共有している。
ケイトウ(トサカケイトウ)の通称 λειρί του κόκορα(オンドリのとさか)の前部要素でもある。ニワトリ、鶏全般を広く表す語は κοτόπουλο。
主な意味は「トサカ」。比喩的に、トサカのように突き出たものや、うぬぼれた態度を指すこともある。
ギリシャ語:λειρί του κόκορα
読み方:リリトゥココラ・リリートゥココラ
ラテン文字:leiri tou kokora
ギリシャ語:λείριον
読み方:リリオン・リーリオン
ラテン文字:lirion
古代ギリシャ語の λείριον(ユリ、とくに白ユリ、スイセン属の花など)に由来。東地中海の言語からの借用語とみられ、ラテン語 lilium を経て英語 lily の語源にもなった。古代では κρίνον がユリ全般を指し、λείριον はとくにマドンナリリー(Lilium candidum)を指すことが多かった。現代ギリシャ語では κρίνος が一般的で、λείριον はより学術的・文学的。
λείριον から派生した λειρί は、オンドリの頭にある赤い肉質のとさかを指す。花の形がとさかに似ていることからの意味転用。
トサカケイトウ(とさか状の花序をもつ Celosia argentea の cristata 品種)はλειρί του κόκορα(オンドリのとさか)と呼ばれる。学名 Celosia のギリシャ語転記 σελόσια も広く使われる。
ギリシャ語:λεμονάδα
読み方:レモナダ・レモナーダ
ラテン文字:lemonada
北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 limonada(レモンの飲み物)からの直接借用。
イタリア語 limone(レモン)に「〜の飲み物」を表す -ada が付いた形で、近世のヴェネツィア交易圏を通じてギリシャ語に入った。
同様の構成を持つ πορτοκαλάδα(オレンジ飲料)などと並び、柑橘系の飲み物名の系列に属する。
共通の語源を持つ関連語に λεμόνι(レモン)、λεμονιά(レモンの木)、λεμονάτος(レモン風味の、レモン汁で調味した)、λεμονοστύφτης(レモン絞り器)などがある。
ギリシャ語:λεμονάτος
読み方:レモナトス・レモナートス
ラテン文字:lemonatos
λεμονάτος(レモン色の、レモンのような)は、λεμόνι(レモン) からできた形容詞である。現代ギリシャ語では、レモンを思わせる明るい黄みや香りの印象を言う。
λεμονής(レモン色の、薄黄色の) が定着した色名として使われやすいのに対して、λεμονάτος は「レモンらしい」感じを含んで、色以外にも香りや味の印象に広がりやすい。κίτρινος(黄色い、黄色の) よりも軽くさわやかな黄みに近い。
意味はレモン色の、レモンのような。淡い黄色や、レモンを思わせる明るい感じに使いやすい。
ギリシャ語:λεμονής
読み方:レモニス・レモニース
ラテン文字:lemonis
λεμονής(レモン色の、薄黄色の)は、λεμόνι(レモン) から色を表す形容詞語尾が付いてできた形容詞である。レモンの色合いをもとに、現代ギリシャ語では薄い黄色を表す。
不変化形の λεμονί(レモン色の、薄黄色の、レモン色) が広く使われるのに対して、λεμονής は変化する形の男性形として位置づけられる。女性形は λεμονιά(レモンの木) と同形になる。
意味はレモン色の、薄黄色の。レモンの皮や果肉を思わせる淡い黄色を言う。
ギリシャ語:λεμόνι
読み方:レモニ・レモーニ
ラテン文字:lemoni
アラビア語やペルシャ語の līmūn(レモン)が地中海交易を通じてヨーロッパの諸言語に入り、中世ギリシャ語では λεμόνιον(レモン)の形で定着した。ここから現代の λεμόνι になった。同じ語源からイタリア語の limone、英語の lemon も生まれた。
レモンの木は λεμονιά と呼ぶ。類義語に λάιμ(ライム)、κίτρο(シトロン)、μοσχολέμονο(ベルガモット)がある。
合成語の要素 λεμονο- や -λέμονο としても使われ、λεμονόκηπος(レモン園)などをつくる。
主にレモンの果実やその果汁、香りを指す。調理や製菓の材料、加工食品や香料としても広く使われる。σαν λεμόνι(レモンのように)の形で比喩的にも用いられる。
指小語 λεμονάκι は「小さなレモン」や、親しみを込めた「レモンちゃん」の意味で使われる。
ギリシャ語:λεμονί
読み方:レモニ・レモニー
ラテン文字:lemoni
λεμόνι(レモン)に接尾辞 -ί を付けた色名で、果物のレモンの色に由来する。変化形として男性形 λεμονής、女性形 λεμονιά もあるが、不変化形の λεμονί が広く使われる。なお女性形 λεμονιά はレモンの木を意味する名詞と同形。
類義語の κίτρινος(黄色の)が黄色全般を表すのに対し、λεμονί はレモンのような薄い黄色に限られる。派生語に λεμονάδα(レモネード)、λεμονάτος(レモン風味の)がある。
主な意味は「レモン色の、薄黄色の」。形容詞のほか、中性名詞として色そのものも指す。恐怖による顔面蒼白を強調する文脈でも使われる。
ギリシャ語:λεμονιά
読み方:レモニャ・レモニャー
ラテン文字:lemonia
λεμόνι(レモン)に果樹を表す接尾辞 -ιά を付けた女性名詞。
レモンの木を指す。
ギリシャ語:λέξη
読み方:レクシ・レークシ
ラテン文字:lexi
λέξη(単語、語)は、古代ギリシャ語 λέξις(言い方、語句)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、文の中で一つの語として数える単位を言う基本語として定着している。
φράση(句、フレーズ、言い回し) が複数の語のまとまりを言うのに対して、λέξη はその一つ一つの語を言う。σημασία(意味、意義) は、その語が何を表すかという側を受け持つ。
意味は単語、語。言語学の説明でも、日常の「この単語は難しい」のような言い方でも使える。
ギリシャ語:λεπτό
読み方:レプト・レプトー
ラテン文字:lepto
λεπτό は中世ギリシャ語の λεπτόν(細かいもの、小単位)を受け継いだ語で、現代では時間の「分」、ユーロや旧ドラクマの補助単位、角度の「分」に使われる。時間や角度を細かく区切る小単位として日常語にも専門語にもまたがっている。
ώρα(時間、時刻)は「1時間」や時計の時刻を表し、λεπτό はその ώρα を60に割った単位を表す。χρόνος(時間、時、期間、年、時制、タイム、拍)はより広い「時間」全体や長さを言えるが、λεπτό は数えて測る短い単位に使う。
角度では μοίρα(度)をさらに60に分けた単位を表す。口語では λεφτό(同語の口語綴り)と綴ることもあり、指小形 λεπτάκι / λεπτούλι(かわいく言う「ちょっと」「ちょっとだけ」)は「ちょっと待って」のような柔らかい言い方で使われる。
主な意味は「分」。そこから「ほんの短い時間」「セント硬貨の単位」「角度の分」へ広がる。日常会話では待ち時間や所要時間を表すほか、料金、携帯電話の無料通話分、黙祷、実況のような分刻みの進行でもよく使う。
ギリシャ語:λευκός
読み方:レフコス・レフコース
ラテン文字:lefkos
古代ギリシャ語の λευκός(明るい、輝く、白い)に由来。印欧祖語で「光、明るい」を表す語根に起源を持ち、ラテン語 lux(光)、英語 light、lucid なども同じ語根から。
ふつうは άσπρος を使う。λευκός は公的な文書や専門用語、慣用表現に多く、接頭辞 λευκο- として合成語も作る(λευκόσαρκος「白身の」、λευκοκύτταρα「白血球」)。
派生語に動詞 λευκαίνω(白くする、漂白する)、名詞 λευκότητα(白さ)。中性形の λευκό(白色、白票)は名詞として使い、複数 λευκά はリネン類やチェスの白駒。木の名 λεύκα(ポプラ)は白っぽい葉裏から。対義語は μαύρος(黒い)。
ギリシャ語:λευτεριά
読み方:レフテリア・レフテリアー
ラテン文字:lefteria
古代ギリシャ語 ἐλευθερία(自由)から3つの音変化を経て生まれた口語形。まず語末の -ερία が -εριά に縮約して母音の連続を避け、アクセントが最終音節に移った。次に ευθ の発音 [fθ] で摩擦音が2つ続くのを嫌い、θ が破裂音の τ に変わった。最後に語頭のアクセントのない ε- が脱落して、現在の λευτεριά の形になった。
ελευθερία(自由)の口語的な形であり、民衆語(ディモティキ)や文学的な文脈で用いられる。より感情的、情熱的な響きを持つ。
ギリシャ語:λέων
読み方:レオン・レーオン
ラテン文字:leon
ギリシャ語:λεωφορείο
読み方:レオフォリオ・レオフォリーオ
ラテン文字:leoforeio
λεωφορείο は、1863年にフランス語 omnibus(乗合馬車、乗合バス)の訳語として作られた語。古いアッティカ形 λεώς(民衆。現代の λαός(民衆、人々)にあたる)をもとにした λεω-(民衆を表す要素)と、φορείο(運ぶための乗り物、運搬具)を組み合わせてできた。
ふつうの λαός ではなく古い λεώς が選ばれたのは、同じ語源をもつ λεωφόρος(大通り、並木道)という語がすでに使われていたためで、語の響きをそろえる意図があったとされる。英語の bus も、同じ omnibus を短くした形にあたる。
都市内の電線式バスを指す τρόλεϊ(トロリーバス)や、観光・長距離移動に使う πούλμαν(コーチ、観光バス)と比べると、λεωφορείο は市内路線、学校送迎、空港連絡、都市間移動まで含めて広く使える基本語である。
主な意味は、多くの乗客を乗せて運ぶ大型の車両としての「バス」。市内バス、急行バス、スクールバス、連節バス、都市間バスまで広く言える。定期運行のバスを表すときは γραμμή(線、路線、回線、方針)との組み合わせ λεωφορείο της γραμμής(定期バス)がよく使われる。指小語の λεωφορειάκι(小型バス、ミニバス)も日常的に使われる。
ギリシャ語:ληστής
読み方:リスティス・リスティース
ラテン文字:listis
古代ギリシャ語の λῃστής(強盗, 盗賊)を継承。動詞 λῄζομαι(略奪する)に行為者を作る -της が付いた語。
同じ語族に ληστεία(強盗罪, 略奪), ληστεύω(強盗する), ληστρικός(強盗の, 略奪の), 合成語 λήσταρχος(盗賊団の頭領, ἀρχός「長」を合わせた形), λησταρχείο(盗賊団の根城), ληστοκρατία(盗賊支配)。
類義語 κλέφτης(泥棒)や διαρρήκτης(空き巣)が忍び込んで盗む者を指すのに対し, ληστής は暴力や脅しを伴う強盗で使うことが多い。もっと広く「犯罪者」全般を言うときは κακοποιός。歴史の文脈では武装した盗賊団の一員も ληστής と言う。
ギリシャ語:λίθος
読み方:リソス・リーソス・リトス・リートス
ラテン文字:lithos
古代ギリシャ語の λίθος(石)に由来。起源はよくわかっていない。英語の接尾辞 -lith, -lite(〜石)や litho-(lithography「石版画」、lithosphere「岩石圏」、monolith「一枚岩」など)、元素名 lithium(リチウム)はこの語から。
現代ギリシャ語は文語的な語で、ふつうは πέτρα を使う。λίθος は地質学や医学、建築の文脈、歴史的な慣用句に残る。男性名詞のほか、λυδία λίθος(試金石)や φιλοσοφική λίθος(賢者の石)のような固定表現では女性名詞として使う。派生語に形容詞 λίθινος(石の)、合成語の ασβεστόλιθος(石灰岩)、λιθόσφαιρα(岩石圏)など。
ギリシャ語:λιλά
読み方:リラ・リラー
ラテン文字:lila
フランス語の lilas(ライラック、ライラック色)からの借用語。英語の lilac も同じ借用系列に属する。フランス語では花木としてのライラックとその花の色の両方を指し、この語はさらにアラビア語の līlak を経て、ペルシア語系の語にさかのぼる。
現代ギリシャ語では外来の色名として定着し、性・数・格によって語形が変化しない不変化形容詞として使われる。名詞としても同じ形でライラック色そのものを表す。
淡い紫、薄い紫を指す語で、日常的な紫色全般を広くカバーする μοβ(紫色の、紫色)よりも、明るくやわらかい色合いを指す。近い語として βιολετί(バイオレット)、ιώδες(すみれ色の、文語・学術寄り)、μελιτζανί(茄子色)、μενεξεδί(すみれ色)がある。
花やアイシャドー、服などに使う明るい紫、ライラック色を表す。形容詞として名詞を修飾するほか、名詞として色名そのものも指す。
ギリシャ語:λιμάνι
読み方:リマニ・リマーニ
ラテン文字:limani
λιμάνι(港、港湾)は、中世ギリシャ語 λιμάνι(港)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、船が出入りし荷物や人を扱う港を指す日常語である。
πλοίο(船)が乗り物そのものを言うのに対して、λιμάνι はその発着する場を言う。陸上交通の σταθμός(駅、停留所、ステーション) に近い位置づけで使える。
意味は港、港湾。小さな港にも大きな港湾施設にも使える。
ギリシャ語:λιοντάρι
読み方:リョダリ・リョダーリ・リョンダリ・リョンダーリ
ラテン文字:liontari
λιοντάρι(ライオン、獅子)は、古代ギリシャ語の λέων(ライオン、獅子) からできたヘレニズム期の λεοντάριον(小さなライオン)を経て、中世ギリシャ語の λιοντάρι(ライオン、獅子)に続いた語である。
現代ギリシャ語では、その指小形がむしろ日常の基本語として定着し、ふつうにライオンをいうときは λιοντάρι を使う。
λέων(ライオン、獅子)は古い語形を保った、やや文語的・古風な言い方である。それに対して λιοντάρι は、会話でも文章でも自然な日常語として広く使われる。
女性形には λιονταρίνα(雌ライオン)がある。形容詞 λιονταρίσιος(ライオンのような、ライオンらしい)は、ライオンに似た強さや荒々しさを表す。
主な意味はライオン、獅子。比喩では、勇敢な人、堂々とした人をたとえることもある。
ギリシャ語:λογαριασμός
読み方:ロガリアズモス・ロガリアズモース
ラテン文字:logariasmos
中世ギリシャ語の λογαριασμός(計算、勘定)を継承。
中世期の動詞 λογαριάζω(計算する、考慮する)に行為名詞を作る接尾辞 -μός を付けた形で、古代ギリシャ語 λόγος(言葉、理、数え上げ)の系列にさかのぼる。
現代の「口座」「請求書」としての使い方は、フランス語 compte、英語 account・bill などからの意味借用で近代に整えられた。
共通の語源を持つ関連語に λογαριάζω(計算する、見積もる、当てにする)、λογιστής(会計士)、λογιστική(会計学)、λογιστήριο(経理部、会計室)などがある。
ギリシャ語:λογική
読み方:ロイキ・ロイキー・ロギキ・ロギキー
ラテン文字:logiki
古代ギリシャ語の λογική(論理, 論理学)に由来。形容詞 λογικός(言葉に関する, 理にかなった)の女性形が名詞化した語で, 背景には λόγος(言葉, 理性, 理論)がある。もとは λογική τέχνη(論理の技法)として古代の哲学や修辞で使われた。現代の「論理, ロジック, 常識」の用法はフランス語 logique, 英語 logic からの意味借用で輪郭が整った。
同じ λόγος の語族に λογικός(理にかなった, 論理的な), λογικά(論理的に, 合理的に), λογικότητα(合理性), λογισμός(計算, 勘定), ορθολογισμός(合理主義), παραλογισμός(不合理)。
類義語 μυαλό(頭, 頭脳)や νους(精神, 知性)が思考する主体や能力を指すのに対し, λογική は筋道立った考え方や推論の枠を指す。対義的な語は παράλογο(不条理, 不合理), παραλογισμός(不合理)。英語 logic, logical, logician もこの λογικός の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:λόγος
読み方:ロゴス・ローゴス
ラテン文字:logos
λόγος は古代ギリシャ語の λέγω(集める、選ぶ、話す)に由来する名詞。古代から「言葉」「話」「理性」「根拠」「計算」などを広く表し、現代ギリシャ語でもその多義性を引き継いでいる。
英語の logic は、λόγος から派生した古代ギリシャ語 λογική(論理学)を経て伝わった語。-logy も λόγος を含む -λογία に由来し、「〜についての学」「論」をつくる。λόγος は現代ギリシャ語の日常語であると同時に、英語の学術語にも痕跡を残している。
通常の複数は λόγοι だが、具体的な「言葉、発言」を表すときは λόγια がよく使われる。λόγια は古代の λόγιον(託宣、キリストの言葉)に由来する形で、現代ギリシャ語では口語的な「言葉、話」として広く現れる。
ομιλία(演説、スピーチ)は、まとまった話を指しやすい。κουβέντα(日常のおしゃべり、会話)は、よりくだけた会話に寄る。派生語には、ちょっとした言葉を表す λογάκι(ちょっとした言葉)や、短くつまらない演説を皮肉っぽく言う λογύδριο(短くつまらない演説)がある。
主な意味は「言葉」「話」「理性」「理由」。人間の話す能力、具体的な発言、演説、評判、命令や約束、説明責任や理由、理性的な判断、神学上の「ロゴス」、数学的な比率まで、非常に広い範囲をカバーする。
さらに口語では του λόγου (σου/του...) の形で、「あなた様」「彼自身」のように、やや丁寧または親愛をこめて人を指すことがある。こうした言い方は、日常の呼びかけや定型句にも残っている。
ギリシャ語:λουλούδι
読み方:ルルディ・ルルーディ
ラテン文字:louloudi
中世ギリシャ語の λουλούδι(ν) に由来する。古代ギリシャ語の ἄνθος(花)が、中世以降にアルバニア語あるいはラテン語の lulus(花)の影響を受けて変化したという説がある。現代ギリシャ語において、最も一般的かつ日常的な「花」を表す言葉である。
代替語形として λούλουδο(口語的・文学的)、まれに民俗詩などで λελούδι とも言われる。派生語に αγριολούλουδο(野の花)、νεκρολούλουδο(供え花)、νυχτολούλουδο(夜に咲く花)がある。
類義語の άνθος は公式・学術的な文脈で用いられる語で、日常会話では λουλούδι が一般的。φιόρο はベネチア語由来の類義語で、主にイオニア諸島で使われる。
主な意味は植物の「花」。そこから転じて、花が咲いた枝や、花をつける草木・低木そのものも指す。比喩的には、愛らしい人物(主に子供)への親称として、あるいは皮肉を込めて「ろくでなし」といった意味でも使われる。
λουλουδάκι は小さな花、または愛情を込めた呼びかけ。
英語 flower children(1967年)からの借用で、ヒッピーを指す。
ギリシャ語:λύκος
読み方:リコス・リーコス
ラテン文字:lykos
古代ギリシャ語の λύκος(狼)を継承。印欧祖語の「狼」を表す語根から続き、ラテン語 lupus、英語 wolf、サンスクリット vṛka、スラヴ祖語 vьlkъ と共通する。英語 lycanthrope(狼男)もラテン語 lycanthrōpus を経て同じ語源で、古代ギリシャ語の合成語 λυκάνθρωπος(λύκος と ἄνθρωπος)から。
派生語に λύκαινα(雌狼)、指小形に λυκάκι、λυκόπουλο(いずれも子狼)、合成語に λυκόφως(薄暮、「狼の光」)など。σκύλος(犬)、αλεπού(狐)、πρόβατο(羊)、αρνί(子羊)と並んで成句や寓話によく登場する。
旧式銃の撃鉄を指すのは、ヘレニズム期ギリシャ語の λύκος にあった「打ち金、てこ」の用法に、フランス語で銃の部品を chien(犬)と呼ぶ慣用が重なったため。同じ用法の類義語に κόκορας(雄鶏)。先頭大文字の Λύκος は南天のおおかみ座で、Κένταυρος(ケンタウルス座)が狙う獣とされる。
ギリシャ語:λύρα
読み方:リラ・リーラ
ラテン文字:lyra
古代ギリシャ語の λύρα(リラ)を継承。古代ギリシャ語より前の語源は定かでなく, 外来の借用語と見る説もある。古代の竪琴から, のちに弓で弾くギリシャ伝統の擦弦楽器にも同じ名が使われるようになった。先頭を大文字にした Λύρα(こと座)は, この楽器の形に見立てた星座名がそのまま継承された形。
派生に λυρικός(リラの, 叙情的な, 抒情詩の), λυρισμός(叙情性), λυράρης, λυριτζής(リラ奏者)。ラテン語 lyra を経由して英語 lyre, フランス語 lyre, 英語 lyric, lyricism もこの語族に連なる。
弓で弾くリラはクレタ(κρητική λύρα), ポントス(ποντιακή λύρα)などの地方伝統音楽で中心的な楽器として使われる。撥弦楽器の系統では κιθάρα(ギター, 古代のキタラ)が別にあり, λύρα とは別の系統に位置する。
Μ
ギリシャ語:μαγαζί
読み方:マガジ・マガジー・マガズィ・マガズィー
ラテン文字:magazi
μαγαζί はヴェネツィア語系の *magazin に由来し、さらにアラビア語 mahāzin(店の倉庫、保管場所)にさかのぼる。ギリシャ語では語末の n が落ちて現在の形になり、もとの「保管する場所」から、商品を並べて売る「店」を表す日常語として定着した。
同じアラビア語源は英語 magazine にもつながる。
買い物の場を表す近い語には αγορά(市場、購買、アゴラ)がある。κατάστημα(店舗)という言い換えもあり、指小語 μαγαζάκι(小さな店、こぢんまりした店)は親しみをこめた形として使われる。
最も基本的には、商品を並べて売る個々の店を指す。そこから、歌手が出演するような娯楽の店、くだけた言い方では事業や役所、さらに複数形では商店街にも広がる。営業しているかどうかの文脈では ανοιχτός(開いている、営業している)と対で現れやすい。
ギリシャ語:μαγγανεία
読み方:マガニア・マガニーア・マンガニア・マンガニーア
ラテン文字:magganeia
ギリシャ語:μαγεία
読み方:マイア・マイーア・マギア・マギーア
ラテン文字:mageia
古代ペルシア語 magu-(祭司階級の呼び名)からギリシャ語に入った μάγος(魔術師)に接尾辞 -εία(〜の業)が付いた古代ギリシャ語の女性名詞 μαγεία(魔術)を継承。ラテン語 magia を経て, 英語 magic もここから。現代の「魅力, 魅惑」の意味は, フランス語 magie(魔法, 魅惑)からの意味借用で広がった。
派生語に動詞 μαγεύω(魅了する、魔法をかける)、形容詞 μαγικός(魔法の、不思議な)、中性複数 τα μάγια(具体的な魔術行為やまじない)など。μάγος の女性形は μάγισσα(魔女)。
近い語に μαγγανεία(害意のあるまじない、いかがわしい術策)があり、古代ギリシャ語の別語 μάγγανον(まじないの仕掛け)から派生した語。呪文の文句は επωδή や ξόρκι、民間のまじないは γητειά、害意のある呪いは κατάρα、悪霊祓いの儀式は εξορκισμός。
ギリシャ語:μάγειρας
読み方:マイェラス・マーイェラス・マゲラス・マーゲラス
ラテン文字:mageiras
動詞 μάσσω(こねる)にさかのぼる古代ギリシャ語 μάγειρος(料理人, 肉をさばく人)を継承。語幹 μάγειρ- に男性名詞語尾 -ας が付いて中世ギリシャ語で μάγειρας の形になった。
派生に μαγειρεύω(料理する), μαγειρικός(料理の), μάγειρισσα(女性の料理人), μαγειρική(料理法), μαγειρείο(厨房, 飲食店)。合成語に εκλογομάγειρας(選挙結果を操作する人, 選挙のコック)。
ギリシャ語:μαγεύω
読み方:マイェヴォ・マイェーヴォ・マゲヴォ・マゲーヴォ
ラテン文字:magevo
古代ギリシャ語の μαγεύω(魔術を行う、魔法をかける)を継承。
μάγος(マギ、魔術師)に動詞を作る接尾辞 -εύω が付いてできた形で、古代ではペルシャ由来のマギたちが行う魔術、占い、秘儀の行いを広く指した。
現代ギリシャ語の「人の心を魅了する、心をつかむ」という比喩的な使い方は、フランス語 enchanter からの意味借用により近代に広まったもの。同様の表現は英語の enchant やドイツ語の bezaubern にも共通している。
派生語に μαγεμένος(魅了された、魔法にかけられた)、共通の語源を持つ関連語に μάγος(魔術師)、μάγισσα(魔女)、μαγεία(魔法、魔術)、μαγικός(魔法の)、類義語に γοητεύω(魅了する)などがある。
ギリシャ語:μαγιά
読み方:マヤ・マヤー
ラテン文字:magia
トルコ語の maya(酵母)に由来する。パンや酒類を膨らませたり発酵させたりする物質を指すほか、チーズやヨーグルトを固める凝乳酵素なども含む。比喩的には、何かが始まるための核や元手を意味する。
綴りが同じでストレス位置が異なる μάγια は、魔法やレオタードを意味するまったく別の語。
主な意味は、パンやビール、乳製品の発酵や凝固を引き起こす物質としての「酵母、発酵の種」。比喩的には、物事の核や素地、初期資本も指す。
ギリシャ語:μάγια
読み方:マヤ・マーヤ
ラテン文字:magia
綴りは同じだが語源の異なる二つの語がある。
魔法の意味の τα μάγια(中性・複数のみ)は、中世ギリシャ語でヘレニズム期の形容詞 μάγιος(魔術の)が名詞化したもの。語源は μάγος(魔法使い)で、μαγεία(魔法、魔術)と同じ語根を持つ。μαγεία が概念としての魔法を表すのに対して、τα μάγια は具体的な魔術行為やまじないの手段、それによってもたらされる効果を指す。
レオタードの意味の η μάγια(女性・単数)は、フランス語の maillot(網目、編み物)に由来すると推測される。
なお、ストレス位置が異なる μαγιά(女性)はトルコ語 maya に由来するまったく別の語で、酵母を意味する。
主な意味は、魔術行為やまじないの手段、およびそれによる効果としての「魔法」。比喩的に、人を惹きつける魅力も表す。まったく別の語として、レオタードの意味もある。
ギリシャ語:μαγνόλια
読み方:マグノリャ・マグノーリャ
ラテン文字:magnolia
μαγνόλια(マグノリア、モクレン)は、近代ヨーロッパ語 magnolia から入った借用語である。現代ギリシャ語では、大きな花をつける木の名として使われる。
μαγνόλια は草花ではなく、花を観賞する木として意識されやすい。庭木や街路樹として目に入ることが多い。
意味はマグノリア、モクレン。大ぶりの花をつける木をいう。
ギリシャ語:μάγος
読み方:マゴス・マーゴス
ラテン文字:magos
古代ギリシャ語の μάγος(ペルシアの祭司、魔術師)を継承。古代ペルシア語 maguš(祭司階級の呼び名)からギリシャ語に入った語で、ヘレニズム期に「魔術師」の意味が加わった。ラテン語 magus を経て、英語の magic や magician もここから。現代の「名手、奇術師」の意味は、フランス語 magicien、英語 magician からの意味借用で広がった。
女性形は μάγισσα(魔女)で、中世ギリシャ語で生まれた形。東方の祭司や三博士には当てない。派生語に動詞 μαγεύω(魅了する、魔法をかける)、形容詞 μαγικός(魔法の、不思議な)、抽象名詞 μαγεία(魔法、魔術)、中性複数 τα μάγια(具体的な魔術行為)など。
ギリシャ語:μάγουλο
読み方:マグロ・マーグロ
ラテン文字:magoulo
後期ラテン語の magulum(顎、口)がヘレニズム期ギリシャ語に入って μάγουλον となり、中世ギリシャ語を経て今の形に落ち着いた外来借用。magulum 自体は語源不確定で、ラテン語 māla(頬骨、顎)と関係づける説もあるがはっきりしない。
類義語に παρειά(頬。古代ギリシャ語由来で解剖や文芸の文脈で使う硬い形)。μάγουλο は頬を指すふつうの形として広く使う。派生に μαγουλάκι(小さな頬、可愛い頬。指小形), μαγούλα(頬、大きな頬), μαγουλάς(頬の大きい男), μαγουλού(頬の大きい女), μαγουλάδες(おたふくかぜ)。合成語に ροδομάγουλος(バラ色の頬の)。
ギリシャ語:μαθητής
読み方:マシティ・マシティー・マティティ・マティティー
ラテン文字:mathitis
古代ギリシャ語の μαθητής(学習者)を継承。動詞 μανθάνω(学ぶ、理解する)に「〜する人」を表す接尾辞 -τής がついた形。英語 mathematics や polymath(博学者)、現代ギリシャ語の μαθηματικά(数学)も同じ語根から作られた語。
派生語に μάθημα(授業、科目)、μάθηση(学習)、現代ギリシャ語の動詞 μαθαίνω(学ぶ、教える)など。女性形は μαθήτρια でヘレニズム期以降に作られた形。指小形に μαθητάκος(男)、μαθητριούλα(女)。
ギリシャ語:μαϊντανός
読み方:マイドゥノス・マーイドゥノス・マインドゥノス・マーインドゥノス・マイドゥノス・マーイドゥノス
ラテン文字:maintanos
もとはビザンツ期のギリシャ語 μακεδονήσιον(パセリ)にさかのぼる語とされる。この語がアラビア語の maʕdūnis(パセリ)、オスマン・トルコ語の maydanos(パセリ)を経て、現代ギリシャ語の μαϊντανός に入った。
別表記として μαϊδανός もある。
英語の parsley は、古代ギリシャ語の πετροσέλινον(岩のセリ、パセリ)に由来する。一方、現代ギリシャ語の日常語としては μαϊντανός が一般的である。
主な意味は「パセリ」。料理に欠かせない名脇役としての語感から、皮肉を込めて、あちこちに顔を出す人を指す比喩にも使われる。
ギリシャ語:μαλλί
読み方:マリ・マリー
ラテン文字:malli
古代ギリシャ語の μαλλός(一房の羊毛、髪のひと房)の指小形 μαλλίον が、ヘレニズム期から中世にかけて指小辞の意味を失って羊毛・髪を指す形として日常で用いられ、中世ギリシャ語の μαλλίν を経て今の μαλλί に落ち着いた継承語。古代の μαλλός は印欧祖語に確実な同根語が見当たらず、先ギリシャ語基層からの借用、あるいはアラビア語・アルメニア語との古い接触からの借用とする説もある。
類義語に τρίχα(毛、髪の毛一本。一本ずつの毛を指す), κόμη(豊かな髪、髪型。文学的・古風な形), τούφα(一房、ひと束。まとまった髪・羊毛の一束), γένια(あごひげ)。μαλλί は単数形で羊毛や素材としての毛を指し、複数形 μαλλιά で人の頭髪を指す形として広く使う。派生に μαλλάκι(やわらかな髪、産毛。指小形), μαλλιαρός(毛深い、毛むくじゃらの), μάλλινος(羊毛の、ウールの), μαλλιάζω(毛だらけになる、毛が伸びる)。
ギリシャ語:μάνα
読み方:マナ・マーナ
ラテン文字:mana
μάνα は古代ギリシャ語の μάμμα(乳房、お母さん)にさかのぼる。そこから子音異化によって m-m が m-n となって μάνα となり、中世ギリシャ語では μάννα(お母さん)の形が見られる。そこを経て現在の μάνα に至った。
同じ「母親」を表す μητέρα は、よりフォーマルで書き言葉寄りの語。これに対して μάνα は、感情のこもった日常的な響きを持つ。
指小辞には μανούλα(お母ちゃん)、μανουλίτσα(大好きなお母さん)、μανίτσα(お母ちゃん)がある。いずれも親しみや愛情を込めた言い方で、μανίτσα は口語的で民俗的な響きを持つ。
最も基本的には「母親」を表す。そこから比喩的に、他人の面倒を見る人、あることの名人、書類の原本、遊びや賭け事での親・陣地・胴元・開始地点の駒なども指す。民俗的、詩的には豊かな水の湧く場所という意味でも用いられる。
ギリシャ語:μανιτάρι
読み方:マニタリ・マニターリ
ラテン文字:manitari
ヘレニズム時代のギリシャ語 ἀμανίτης(キノコ)を起源とする。この語に縮小接辞が付いた αμανιτάριν から、中世ギリシャ語で語頭の無アクセント母音が脱落し、μανιτάριν を経て現在の μανιτάρι に至った。
語源の ἀμανίτης は、テングタケ属の学名 Amanita の由来でもある。
派生語に、指小辞の μανιταράκι(小さなキノコ)がある。
日常的にキノコを指す場合は μανιτάρι が一般的で、μύκητας(菌類)は生物学や医学の文脈で用いられることが多い。
主な意味は「キノコ」。湿った土壌に自生し、傘のような形をした菌類を指す。比喩的には、短期間で爆発的に増える様子や、核爆発による雲の形を表すのにも用いられる。
ギリシャ語:μαργαρίτα
読み方:マルガリタ・マルガリータ
ラテン文字:margarita
イタリア語 margarita(真珠、デイジー)からの借用。
ヘレニズム期の古代ギリシャ語 μαργαρίτης(真珠)がラテン語 margarita を経て中世・近世のイタリア語に伝播し、白い花びらが真珠を思わせるヒナギクの名にもなった。
それが近世にギリシャ語へ戻り、花の名として μαργαρίτα が定着した。これは「再借用(αντιδάνειο)」の一例にあたる。
共通の語源を持つ関連語に μαργαρίτης(古代ギリシャ語の真珠)、μαργαριτάρι(真珠)などがある。英語 marguerite(マーガレット)、フランス語 marguerite、イタリア語 margherita も同じ系列。人名 Μαργαρίτα(マルガリータ、マルガレーテ)も語根を同じくする。
ギリシャ語:μαργαριτάρι
読み方:マルガリタリ・マルガリターリ
ラテン文字:margaritari
ヘレニズム時代のギリシャ語 μαργαρίτης(真珠)に指小辞 -άριον が付いた、中世ギリシャ語の μαργαριτάρι(ο)ν(真珠)に由来する。指小辞は小ささを表す接尾辞だが、μαργαριτάρι ではその意味合いは失われている。μαργαρίτης 自体は東洋言語からの借用語と考えられており、同じ語からヒナギクを指す μαργαρίτα も派生している。
主な意味は「真珠」で、貝の中で形成される有機宝石を指す。白く輝く形状から、涙や歯など真珠に似たものの比喩にも用いられる。また、皮肉的に文章や発言における「ひどい間違い」を指すこともある。
ギリシャ語:μάρμαρο
読み方:マルマロ・マールマロ
ラテン文字:marmaro
古代ギリシャ語の男性名詞 μάρμαρος(光輝, 光る石, 印欧祖語で「輝く」を表す語根にさかのぼる説がある)が女性形を経て中性 μάρμαρον(大理石)となり, 語尾 -ον が脱落して現代ギリシャ語の μάρμαρο に至った。同じ語根に動詞 μαρμαίρω(輝く, きらめく)もある。英語 marble はラテン語 marmor を経て同じ μάρμαρος にさかのぼる。
派生に μαρμάρινος(大理石の), μαρμαρένιος(大理石の, 大理石のように冷たい), μαρμαράς(大理石職人), μαρμαράδικο(大理石加工場), μαρμαρώνω(大理石にする, 凍りつかせる), μαρμαρυγή(きらめき, 輝き), μαρμαρόσκονη(大理石の粉)。合成語に μαρμαρογλύπτης(大理石彫刻家), μαρμαρογλυπτική(大理石彫刻), μαρμαρόστρωση(大理石舗装), καλλιμάρμαρος(美しい大理石の)。
ギリシャ語:μαρούλι
読み方:マルリ・マルーリ
ラテン文字:marouli
ラテン語で「苦い」を意味する amārus の縮小形 amarula(苦い植物)が語源。この語が中世ギリシャ語に μαρούλιν(maroúlin)として取り入れられ、語頭の a- が落ちて現在の μαρούλι になった。レタスの苦味に由来する名前。
より広い「野菜」を指す λαχανικά のほか、特定の品種を表す άισμπεργκ(アイスバーグレタス)や λόλα(ロロレタス)がある。また、野生の苦いレタスを指す πικρομάρουλο という合成語もある。
キク科アキノノゲシ属の植物で、学名は Lactuca sativa。生食のほか、ギリシャ料理では煮込み料理の具材としても一般的に使われる。
ギリシャ語:μάρτυρας
読み方:マルティラス・マールティラス
ラテン文字:martyras
中世ギリシャ語 μάρτυρας に由来し、さかのぼると古代ギリシャ語 μάρτυς/μάρτυρος(証人、証言する人)にいたる。古くは見聞きしたことを公に明らかにする人を広く指した語で、ヘレニズム期から初期キリスト教の文脈で、信仰の真実を命をかけて証しした人、すなわち殉教者の意味も加わった。現代の苦しみを受ける人という比喩的な使い方はフランス語 martyr の影響で近代に整えられた。英語 martyr も同じギリシャ語にさかのぼる。
派生語・関連語に μαρτυρία(証言、証拠)、μαρτυρώ(証言する、証しする)、μαρτύριο(殉教、苦しみ)、μάρτυρας κατηγορίας(検察側証人)。関連語に δικαστήριο(裁判所、法廷)。
ギリシャ語:μαρτύριο
読み方:マルティリオ・マルティーリオ
ラテン文字:martyrio
名詞 μάρτυς(証人)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 μαρτύριον(証言, 証拠)から。ヘレニズム期以降キリスト教の文脈で信仰を証しして死ぬこと, すなわち殉教を表すようになった。その意味はカサレヴサ(学術的な書き言葉)を経て現代ギリシャ語 μαρτύριο に受け継がれ, さらに肉体的・精神的な激しい苦しみ全般も指すようになった。
同じ語族に μάρτυρας(証人, 殉教者), μαρτυρία(証言, 供述), μαρτυρώ(証言する, 殉教する), μαρτυρικός(証言の, 殉教の)。英語 martyr, martyrdom はラテン語 martyr を経て同じ μάρτυς にさかのぼり, 考古学で使う martyrium(殉教者記念礼拝堂)も同じ語族から取り入れられた。
βασανιστήριο(拷問, 拷問具)が加えられる行為や道具を指し, ταλαιπωρία(苦労, 労苦)が一般的な苦労を指すのに対し, μαρτύριο は信仰や忍耐を伴う逃れがたい苦難という含みを帯びる。
ギリシャ語:μάτι
読み方:マティ・マーティ
ラテン文字:mati
印欧祖語で「目」を表す語根にさかのぼり, 英語 eye と同じ語根を共有する古代ギリシャ語の ὄμμα(目)の指小形 ὀμμάτιον(小さな目)から, 中世ギリシャ語 μάτι(ν) を経て今に至る継承。冠詞つきの το ομμάτιον が τομμάτιν と再分節され, 先頭の音が落ちて今の形に落ち着いた。
類義語に οφθαλμός(目。医学や公式な文脈で使う硬い形), βλέμμα(眼差し)。英語の接頭辞 ophthalmo-(ophthalmology「眼科学」)はこの οφθαλμός から新ラテン語を経由して入った学術借用。派生に ματάκι(小さな目。指小形。のぞき穴や赤ちゃん用の魔除けも指す), ματιά(視線、一瞥), ματιάζω(邪視をかける), μάτιασμα(邪視), ξεματιάζω(邪視を解く)。合成語に ματόκλαδο(まつ毛), ματόχαντρο(邪視よけのビーズ)。
ギリシャ語:ματιά
読み方:マティア・マティアー
ラテン文字:matia
ギリシャ語:μαύρος
読み方:マヴロス・マーヴロス
ラテン文字:mavros
古代ギリシャ語の μαῦρος / μαυρός(暗い, くすんだ)を継承。形容詞 ἀμαυρός(暗い, 不鮮明な)の語頭母音が落ちた形が古代から使われ, そのまま受け継がれている。
同じ μαύρος の語族に μαυρίζω(黒くする, 日焼けする), μαυρίλα(黒さ, 暗闇), μαυριδερός(黒ずんだ), μαυράκι, μαυράδι(愛称, 指小形), 名詞化の μαύρο(黒色, 反対票)。合成語 κατάμαυρος(真っ黒な), μαυρομάτης(黒い目の), μαυρόασπρος(白黒の), μαυραγορίτης(闇市の商人)。複数形 μαύρα は喪服やチェスの黒い駒を指す。
類義語 σκούρος は「色の濃い」一般を指し, μελαμψός, μελαχρινός は肌や髪が浅黒いことを言う。対義語は άσπρος(白い), λευκός(白い)。連語 μαύρη αγορά(闇市)は英語 black market, フランス語 marché noir からの翻訳借用で, μαύρη οικονομία(地下経済)も同じ系統の比喩表現として現代ギリシャ語に入った。
ギリシャ語:μαχαίρι
読み方:マヘリ・マヘーリ
ラテン文字:maxairi
古代ギリシャ語 μάχαιρα(刃物, 刀剣)の指小形 μαχαίριον(小さな刃物)から。中世ギリシャ語の μαχαίρι(ν) を経て, 語末の -ν が脱落して現代ギリシャ語の μαχαίρι の形になった。
派生に μαχαιράκι(小さなナイフ, 指小形), μαχαιράς(ナイフ使い), μαχαιρένιος(ナイフの, 鋭い), μαχαιριά(刺し傷, 一撃), μαχαίρωμα(刺すこと), μαχαιρώνω(刺す)。合成語に μαχαιροπίρουνο(ナイフとフォーク, カトラリー), μαχαιροποιός(ナイフ職人), μαχαιροβγάλτης(刃物を抜く荒くれ者), τραπεζομάχαιρο(食卓ナイフ), κοντομάχαιρο(短剣), χασαπομάχαιρο(肉切り包丁)。
σουγιάς(折りたたみ式の小刀), νυστέρι(医療用メス), λεπίδι(刃, 刃先), εγχειρίδιο(短剣)はそれぞれ特定の刃物を指す。
ギリシャ語:μαχαιριά
読み方:マヘリア・マヘリアー
ラテン文字:maxairia
μαχαίρι から作られた派生語。語尾の -ιά が付いて、刃物による一撃や傷を表す名詞になった。発音の上では母音が続くのを避ける形が定着している。
主な意味は「ナイフによる一撃」「ナイフによる傷」。そこから比喩的に、胸を刺すような辛い言葉や出来事も表す。
ギリシャ語:μάχη
読み方:マヒ・マーヒ
ラテン文字:machi
μάχη は古代ギリシャ語から受け継がれた語で、「戦う」を意味する印欧祖語の語根に由来する。この語根から英語の接尾辞 -machy(〜戦、〜闘争)が生まれ、logomachy(言葉の争い)などに使われている。ギリシャ神話の人名 Andromache(アンドロマケー)も、ἀνήρ(男)と μάχη を組み合わせた「男と戦う者」を意味する名前である。
派生語には μάχομαι(戦う)、μαχητής(戦士)、μαχητικός(戦闘的な)などがある。
類義語として πόλεμος(戦争)があるが、πόλεμος が国家間の長期にわたる武力紛争全体を指すのに対し、μάχη はより限定的な場所や時間で行われる具体的な戦闘や衝突を指す。また、αγώνας(競技、闘争、努力)とも近い意味を持つが、μάχη はより激しい対立や、勝敗がはっきり分かれる局面に重きが置かれる。
主な意味は、軍隊間の戦闘。そこから転じて、スポーツや政治などの競争・対決や、病気や困難に立ち向かう懸命な努力を指す。
ギリシャ語:Μεγάλη Άρκτος
読み方:メガリアルクトス・メガーリアルクトス
ラテン文字:megali arktos
μεγάλος(大きい)の女性形 μεγάλη と άρκτος(クマ)からなる連語で「大きなクマ」を言う。アルテミスに仕えたニンフのカリストが、ゼウスに愛されて子を宿したことから、嫉妬したヘラにクマの姿に変えられた。成長した息子アルカスが狩りの最中に母と知らずに射ようとしたので、ゼウスは二人を天に上げ、母を大きなクマとして空に置いたという神話。子のアルカスは Μικρή Άρκτος(こぐま座)、もしくはうしかい座になったとされる。ラテン語形は Ursa Major で、英語名もそのまま入った。日常の「クマ」は αρκούδα を使うことが多い。
ギリシャ語:μεγάλος
読み方:メガロス・メガーロス
ラテン文字:megalos
古代ギリシャ語の μέγας(大きい、偉大な)が起源。中世ギリシャ語で μεγάλος の形が定着し、現代ギリシャ語では活用で現れる語幹 μεγαλ-(大きさを表す語幹)を土台にした現在の形として使われている。
対義語は μικρός(小さい)。ややくだけた μεγαλούτσικος(やや大きい、けっこう大きい)は軽い言い方で、連結形 μεγαλο-(大きな、巨大な)は μεγαλούπολη(巨大都市)のような複合語にも現れる。
μεγάλος の中心には「平均より大きい」という感覚がある。そこから、量や程度が多いこと、ηλικία(年齢)が上であること、感情や出来事が激しいこと、さらに人や出来事が重要で偉大であることまで表すようになった。
固有名や定型名にもよく現れ、グレートブリテンや聖週間のような呼び名をつくる。比喩では καρδιά(心)と結びついて「寛大な心」を、κεφάλι(頭)と結びついて「とても頭のいい人」を表す言い方もよく使う。
ギリシャ語:μεγαλούπολη
読み方:メガルポリ・メガルーポリ
ラテン文字:megaloupoli
英語の megalopolis(メガロポリス)に由来する借用語で、学術的な文脈で用いられる。連結形 megalo-(巨大な)と古代ギリシャ語の πόλις(都市)を組み合わせた語で、現代ギリシャ語では πόλη の派生形 -ούπολη(〜の街)の形に整えられた。megalo- も pólis もギリシャ語の要素だが、英語で合成された megalopolis が現代ギリシャ語に取り入れられた。
英語の metropolis(メトロポリス)と重なる概念で、特に現代社会における巨大な都市集積を指す。
ギリシャ語:Μέγας Κύων
読み方:メガスキオン・メーガスキオン
ラテン文字:megas kyon
μέγας(大きい)と κύων(犬)からなる連語で「大きな犬」を言う。古代ギリシャでは狩人オリオンの猟犬のひとつと見なされ、天ではオリオンのあとに続いて隣のうさぎ座を追う姿に読まれた。別の伝承では、ゼウスがエウロペに贈った猟犬ライラプス(獲物を逃さない犬)が天に上げられたものともされる。星座でいちばん明るい恒星 Σείριος(シリウス)は「焼きつく」の意味の語から来た名。ラテン語形は Canis Major で、英語名もそのまま入った。近くに Μικρός Κύων(こいぬ座)。日常の「犬」は σκύλος を使うことが多い。
ギリシャ語:μεζές
読み方:メゼス・メゼース
ラテン文字:mezes
ペルシア語の maze(味, 軽い食べ物)に由来するオスマン・トルコ語の meze から入った語。もともとは「味わうもの」「ちょっとつまむもの」という感覚を持ち, 現代ギリシャ語では酒と一緒に出す小皿料理やつまみを表す語として定着している。
この語は単数より複数形 μεζέδες(複数のメゼ)で目にすることが多い。飲み物に応じた複合語もあり、κρασομεζές(ワインに合うメゼ)や ουζομεζές(ウーゾに合うメゼ)という形がある。指小形 μεζεδάκι(小さなメゼ、ちょっとしたつまみ)は、小ぶりな一皿や軽いつまみを親しみをこめて言う形である。
主な意味は、少量ずつ出される塩気のある小皿料理や酒のつまみ。そこから、食べ物のほんのひと口やごくわずかな取り分も言うようになり、さらに口語では「相手にならないほど楽なもの」「軽く片づく相手」という比喩にも広がる。
ギリシャ語:μέλι
読み方:メリ・メーリ
ラテン文字:meli
古代ギリシャ語の μέλι(蜂蜜)を継承。印欧祖語で蜂蜜を表す語根から続き、ラテン語 mel、ゴート語 miliþ、古アルメニア語 mełr と共通する。ミケーネ期の線文字Bに me-ri として記録がある。英語 mellifluous(甘美な)はラテン語 mel + fluere(流れる)から。
派生語に μέλισσα(ミツバチ)、μελίσσι(ミツバチの巣、群れ)、指小形 μελάκι、合成語に υδρόμελι(蜂蜜酒)、ροδόμελι(バラの蜂蜜)、μελίμηλον(蜂蜜のリンゴ)など。英語 marmalade(マーマレード)は μελίμηλον がラテン語・ポルトガル語を経てできた語。古代ギリシャ語の属格 μέλιτος は ταξίδι του μέλιτος(新婚旅行)、μήνας του μέλιτος(蜜月期)のような決まった言い方に残る。
ギリシャ語:μελί
読み方:メリ・メリー
ラテン文字:meli
μελί(蜂蜜色の、ハニー色の)は、μέλι(蜂蜜、ハチミツ) からそのまま色名として使われるようになった語である。現代ギリシャ語では、黄色と薄茶の間にあるやわらかい色を言う。
不変化形容詞として名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞として蜂蜜色そのものも指す(το μελί(蜂蜜色))。
λεμονής(レモン色の、薄黄色の) よりも、μελί は黄みの中に茶色や琥珀色が混じりやすい。もっと甘い茶色に寄る場面では καραμελί(キャラメル色の)とも近づくが、μελί は蜂蜜らしい透明感を保ちやすい。
意味は蜂蜜色の、ハニー色の、蜂蜜色。髪、木、布、石の色に使いやすい。
ギリシャ語:μέλισσα
読み方:メリサ・メーリサ
ラテン文字:melissa
ギリシャ語:μελιτζάνα
読み方:メリジャナ・メリジャーナ
ラテン文字:melitzana
中世ギリシャ語 μελιτζάνα を継承。
アラビア語 بَاذِنْجَان(bādinjān)からの借用で、さらにもとはペルシャ語 بادنگان(bâdengân)、サンスクリット由来にさかのぼる東方起源の食材名。ギリシャ語は中世期に入った古い形(μαντζιτζάνιν)が、中世イタリア語 melanzana の影響で現在の μελιτζάνα の形に整えられた。
地中海沿岸の食文化とともに各言語に広まった語で、西欧にもナスを表す近い形が多く残っている。
派生語に μελιτζανάκι(小ナス)、μελιτζανοσαλάτα(ナスのディップ)、μελιτζανί(ナス色、濃い紫)などがある。
ギリシャ語:μελιτζανί
読み方:メリジャニ・メリジャニー
ラテン文字:melitzani
μελιτζανί(ナス色の、茄子色の、ナス色)は、μελιτζάνα(ナス)から派生した色名である。不変化形容詞として立ち、ナスの皮のような濃い紫を言う。名詞としては το μελιτζανί(ナス色)とも使う。
βιολετί(すみれ色の、青紫の、すみれ色) や μοβ(モーブ、紫)よりも、μελιτζανί はもっと深く暗い紫を指す。
意味はナス色の、茄子色の、ナス色。濃い紫系の色合いをいう。
ギリシャ語:μέλος
読み方:メロス・メーロス
ラテン文字:melos
古代ギリシャ語の μέλος(手足、歌)に由来。現代ギリシャ語の「組織の構成員」の意味は、フランス語 membre、英語 member からの意味借用で広がった。
派生語に διαμελισμός(バラバラにすること、切断)、合成語に μελόδραμα(メロドラマ)、μελοποίηση(曲づけ)など。古代ギリシャ語 μελῳδία(歌、節)からラテン語 melodia を経て英語 melody や melisma が生まれた。
ギリシャ語:μελτέμι
読み方:メルテミ・メルテーミ
ラテン文字:meltemi
トルコ語の meltem に由来する。古代ギリシャ語では同じ風を ετησίαι(年ごとの風。ετήσιος「年ごとの」から)と呼んでいた。現代ギリシャ語での類義語は ετησίες。
指小語の μελτεμάκι は穏やかなエテジアン、心地よい夏のそよ風を指す。
夏季の東地中海、とくにエーゲ海で日中に吹く乾燥した強い季節風。北からの風。
:::vocab
- ισχυρό μελτέμι(強いエテジアン)
- καλοκαιρινά μελτέμια(夏のエテジアン)
:::
:::example
- Πέφτουν τα μελτέμια.
- エテジアンが弱まる。
- The meltemis are dropping. :::
ギリシャ語:μενεξεδής
読み方:メネクセディス・メネクセディース
ラテン文字:menexedis
μενεξές(すみれ)に色の形容詞をつくる接尾辞 -εδής が付いた語。μενεξές はトルコ語 menekşe(すみれ)からの借用で、トルコ語はさらにペルシア語の بنفشه(banafše、すみれ)に由来する。別綴りに μενεξελής がある。
文語的な色彩語で、日常会話では μοβ(モーブ)や βιολετί(バイオレット、すみれ色)のほうが一般的に使われる。βιολετί に語尾変化を持たせた βιολετής という形もある。同義語に ιώδης(すみれ色の)もある。
いずれもすみれ色を指すが、語源の経路が異なる。μενεξεδής はペルシア語からトルコ語を経てギリシャ語に入った μενεξές が元になっている。βιολετής・βιολετί はラテン語 viola(すみれ)からイタリア語やフランス語を経た西欧経由の語。ιώδης は古代ギリシャ語の ίον(すみれ)から派生した、ギリシャ語固有の系統にあたる。μοβ はフランス語 mauve(ゼニアオイの花の色)からで、厳密にはやや異なる色合いだが、すみれ色と近い範囲で使われる。
すみれの花のもつ紫がかった色合いを表す。
中性形 μενεξεδί は名詞として、すみれ色そのものを指す。無変化名詞で、別綴りに μενεξελί がある。
:::vocab
- το μενεξεδί του ηλιοβασιλέματος(夕焼けのすみれ色)
:::
ギリシャ語:μέντας
読み方:メダス・メーダス・メンダス・メーンダス
ラテン文字:mentas
μέντας(ミント色の、淡い緑の)は、μέντα(ミント)からできた色名である。現代ギリシャ語では、白や青が少し混じったような軽い緑を言う。
φυστικί(ピスタチオ色の、薄い黄緑の)が黄みを含むやわらかな緑を指すのに対して、μέντας はもっと冷たく、青みのある淡緑を言いやすい。πράσινος(緑の、緑色の) よりも軽く淡い色合いに向く。
意味はミント色の、淡い緑の。壁、服、包装、小物の明るい緑に使いやすい。
ギリシャ語:μέρα
読み方:メラ・メーラ
ラテン文字:mera
古代ギリシャ語の ἡμέρα(日、昼間。ἦμαρ「日」の長母音形)を継承。冠詞つきの την ημέρα, της ημέρας などで語頭の無アクセント η- が脱落し、中世ギリシャ語を経て今の μέρα の形に落ち着いた。古形 ημέρα もそのまま ημέρα として学術借用で残り、書き言葉や公式の文脈で用いられる。英語 ephemeral(短命な、一日限りの)は古代ギリシャ語 ἐπί(〜の上に)と ἡμέρα から成る ἐφήμερος(一日限りの)をラテン語経由で受け継いだ学術借用で、μέρα と語根を共有する。
類義語に ημέρα(日。古形を保った硬い形で、書き言葉や公式の文脈で使う), εικοσιτετράωρο(24 時間、一日)。μέρα は日・昼間を指すふつうの形として広く使う。派生に μερούλα(短い一日、愛称。指小形), ημερήσιος(一日の、日次の), καθημερινός(日常の、毎日の), μεροκάματο(日当、日給), μεροδούλι(日雇い仕事)。合成語に καλημέρα(おはよう、こんにちは), σήμερα(今日), ολημέρα(一日中), μεσημέρι(正午), ξημέρωμα(夜明け)。
ギリシャ語:μέσα
読み方:メサ・メーサ
ラテン文字:mesa
古代ギリシャ語の形容詞 μέσος(真ん中の, 中間の)の中性複数形 μέσα が副詞として使われて定着し, 「中に, 内側に」の意味を担うようになった。子音や母音の前では語末が省略されて μες となることがある。
同じ語族に μέσος(真ん中の), μέση(真ん中, 腰), μεσαίος(中間の), μεσαίωνας(中世), μέσον(手段, 媒体, 複数 μέσα = メディア), μεσημέρι(正午, 「真ん中の日」), μεσόγειος(地中海の, 「陸の中間の」)。英語の接頭辞 meso-(中間の)も同じ μέσος にさかのぼり, Mesopotamia は μέσος と ποταμός(川)の合成で「川の間の地」を表す。
類義語の εντός(内に)は改まった響きで, 会話ではふつう μέσα を使う。対義語は έξω(外に), εκτός(〜を除いて, 外に)。
ギリシャ語:μεσάνυχτα
読み方:メサニフタ・メサーニフタ
ラテン文字:mesanychta
古代ギリシャ語の μέσος(まんなかの)と νύξ(夜)からなる複合語がもとになり、中世ギリシャ語の μεσάνυκτον(真夜中)を経て、現在の μεσάνυχτα につながった。文字どおり「夜のまんなか」という発想の語。
後半の νύξ は現代ギリシャ語の νύχτα(夜)につながる語で、英語の night やドイツ語の Nacht とも同じインドヨーロッパ語系の語源をもつ。
文語寄りの別形に μεσονύκτιο(真夜中)があり、やや口語寄りの形として μεσονύχτι(真夜中)も使われる。
βράδυ(晩、夕方、夜)が日没から夜の前半を広く言えるのに対し、μεσάνυχτα は夜のかなり遅い時点に焦点がある。νύχτα は夜全体を指せるが、μεσάνυχτα はそのなかでも午前0時前後、またはそれ以降の深い時間帯に限って使う。
主な意味は「真夜中」。きっかり午前0時そのものを指すほか、そこから夜明け前までの深い夜を広く言うこともある。現代ギリシャ語では複数形だけで使うのが普通で、定刻としても時間帯としても言える。
ギリシャ語:μεσημέρι
読み方:メシメリ・メシメーリ
ラテン文字:mesimeri
μεσημέρι(正午、昼どき)は、中世ギリシャ語の μεσημέρι(正午、昼どき)に由来し、そのもとにはヘレニズム期の形容詞 μεσημέριος(正午の、昼の)がある。形容詞の中性形が名詞化して、一日の中央にあたる時刻やその前後の時間帯を表す語になった。
μέρα(日、昼間)が日全体を広く言うのに対して、μεσημέρι はその中央の時間帯に焦点がある。βράδυ(晩、夕方、夜)や νύχτα(夜)はその後に続く時間帯で、μεσημέρι はそこへ向かう前のもっとも明るい時間を切り出す語である。
指小語の μεσημεράκι(昼下がり、ちょっとした昼どき)は、昼のやわらかい感じを親しみを込めて言う形である。派生語には μεσημεριανός(昼の、昼食の)、μεσημεριάτικος(真っ昼間の)がある。
主な意味は「正午」。そこから、正午のあと二、三時間の昼どき、さらに朝寝坊したときなどに感じる「もう昼じゃないか」という遅い朝の時間にも使われる。
ギリシャ語:μέταλλο
読み方:メタロ・メータロ
ラテン文字:metallo
古代ギリシャ語 μέταλλον(鉱山, 採掘場)から。そこから採掘される鉱物や金属に意味が移り, 語尾 -ον が脱落して現代ギリシャ語の μέταλλο の形になった。英語 metal はラテン語 metallum を経て同じ μέταλλον にさかのぼる。
派生に μεταλλικός(金属の, 金属質の), μετάλλινος(金属製の), μεταλλώνω(金属化する), μετάλλιο(メダル), μετάλλευμα(鉱石, 鉱物), μεταλλείο(鉱山), μεταλλουργία(冶金学), αμέταλλο(非金属)。合成語に μεταλλοβιομηχανία(金属工業), μεταλλογνωσία(金属学), μεταλλόφωνο(鉄琴), μεταλλωρυχείο(鉱山)。
ギリシャ語:μετάφραση
読み方:メタフラシ・メターフラシ
ラテン文字:metafrasi
μετάφραση(翻訳、訳文)は、古代ギリシャ語由来の文語的な μετάφρασις(翻訳)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、ある言語の内容を別の言語へ移し替えることにも、その結果できた訳文にも使う。
λέξη(単語、語) 一語の対応を考えることもあれば、φράση(句、フレーズ、言い回し) 全体をまとめて訳すこともある。どちらの場合でも、移す中心になるのは元の σημασία(意味、意義)である。
意味は翻訳、訳文。行為にも結果にも使える。
ギリシャ語:μετέωρο
読み方:メテオロ・メテーオロ
ラテン文字:meteoro
古代ギリシャ語の形容詞 μετέωρος(空中に吊るされた、高い所にある)の中性形複数 τά μετέωρα(天体現象)から。これが中世ラテン語 meteora を経てフランス語 météore となり、そこから現代ギリシャ語に逆輸入された。英語の meteor(流星)や meteorology(気象学)も同じ起源から生まれた。
派生語には気象学を意味する μετεωρολογία や気象予報士の μετεωρολόγος がある。
宇宙から飛来した小さな岩体は、大気圏に入る前の段階では μετεωροειδές(流星体)と呼ばれる。それが大気圏に突入して光を放つ現象が μετέωρο であり、燃え尽きずに地表に到達した物質は μετεωρίτης(隕石)にあたる。
日常会話で「流れ星」と言うときは、πέφτω(落ちる)と αστέρι(星)の合成語である πεφταστέρι が最もよく使われる。μετέωρο はやや学術的な響きがあり、文語では διάττων αστήρ(流れ星)とも言う。
広義には大気中の現象全般を指すが、現代の日常会話では主に流星や流れ星を指す。
ギリシャ語:μέτριος
読み方:メトゥリオ・メートゥリオ
ラテン文字:metrios
古代ギリシャ語の μέτριος(ほどよい、度を越さない)に由来。名詞 μέτρον(μέτρο, 尺度)からできた形容詞で、「尺度に合った」が本来の意味。
ギリシャ語:μετρό
読み方:メトゥロ・メトゥロー
ラテン文字:metro
フランス語 métro からの借用。
19世紀末のパリで (chemin de fer) métropolitain(首都鉄道)を略した métro が都市地下鉄の呼び名として広まり、20世紀初頭に英語 metro、ギリシャ語 μετρό へと入った。
元の métropolitain(首都の)はギリシャ語 μητρόπολις(母都市、首都)にさかのぼる語で、これは「再借用(αντιδάνειο)」の一例にあたる。
共通の語源を持つ関連語に μητρόπολη(大都市、母都市)、μητροπολιτικός(首都の、都会の)などがある。
ギリシャ語:μέτρο
読み方:メトゥロ・メートゥロ
ラテン文字:metro
古代ギリシャ語の μέτρον(尺度、はかり方)を継承。印欧祖語で「はかる」を表す語根から来た古い語。メートル法の長さの単位としての意味は、フランス語 mètre からの意味借用で近代に定着した。英語 meter、metric、音楽用語の metronome(メトロノーム)も、ラテン語 metrum を経て同じ μέτρον からきた語。
ギリシャ語:μη με λησμόνει
読み方:ミメリズモニ・ミメリズモーニ
ラテン文字:mi me lismoni
μη(〜するな), με(私を), λησμονώ(忘れる)の命令形 λησμόνει からなる連語で、「私を忘れないで」の意。フランス語 ne m'oubliez pas, ドイツ語 Vergissmeinnicht からの翻訳借用で、ワスレナグサ属(Myosotis)の草本植物を指す。
学名 Myosotis は古代ギリシャ語 μυοσωτίς に由来し、μῦς(ネズミ)の属格 μυός と οὖς(耳)の語幹の合成。葉の形がネズミの耳に似ることにちなむ命名。
ギリシャ語:μήλο
読み方:ミロ・ミーロ
ラテン文字:milo
古代ギリシャ語 μῆλον(果実全般)を継承。古代にはリンゴのほかマルメロや桃など木の実全般を指したが, 現代ギリシャ語ではリンゴに意味が絞られ, 語尾 -ον が脱落して μῆλο / μήλο の形になった。英語 melon は μῆλον と πέπων(熟したウリ)の合成語 μηλοπέπων がラテン語 melopepo を経て変化したもので, 同じ μῆλον にさかのぼる。
派生に μηλιά(リンゴの木), μηλίτης(リンゴ酒, シードル), μήλινος(リンゴ色の, 淡黄緑色の), μηλιώνας(リンゴ園)。合成語に μηλόπιτα(リンゴのパイ), μηλομαρμελάδα(リンゴジャム), μηλόκρασο(リンゴ酒), μηλοχυμός(リンゴジュース), μηλοπέπονο(カンタロープ), μηλοκύδωνο(マルメロ), ξινόμηλο(酸っぱいリンゴ), μηλολόνθη(コガネムシ)。
ギリシャ語:μήνας
読み方:ミナス・ミーナス
ラテン文字:minas
μήνας(月)は古代ギリシャ語の μήν(月、月の周期)に由来し、中世ギリシャ語の μήνας(月)を経て現代ギリシャ語の形に至った。
もともと月の満ち欠けで時間を測る感覚と結びついた語で、英語の month や moon とも同じ古い起源にさかのぼる。
χρόνος(時間、年)が時間全般や長い年月を広く言うのに対して、μήνας は一年を十二に区切った単位としての「月」に焦点がある。χρονιά(年、一年)は一年単位のまとまり、ώρα(時、時間)はもっと短い区切りなので、μήνας はその中間にある暮らしの単位としてよく使われる。
日常では Καλό μήνα(よい月を)というあいさつで非常によく現れる。派生語には μηνιαίος(月ごとの、月次の)、μηνιάτικο(月給や家賃の一か月分)、μηνιάτικος(月払いの)がある。
主な意味は「月」。そこから、一か月ほどの期間、さらに口語では給与や家賃などの「ひと月ぶん」を指すこともある。
ギリシャ語:μήνυμα
読み方:ミニマ・ミーニマ
ラテン文字:minyma
ギリシャ語:μητρόπολη
読み方:ミトゥロポリ・ミトゥローポリ
ラテン文字:mitropoli
古代ギリシャ語の μήτηρ(母)と πόλις(都市)の合成語 μητρόπολις から。もとは「母都市」で、古代ギリシャ世界において植民都市の母体となった都市国家を指した。
中世には正教会の組織用語として取り入れられ、府主教が管轄する管区を意味するようになった。管区の拠点となる大聖堂や、府主教の官邸もこの語で呼ばれる。現代ギリシャ語ではフランス語 métropole の影響を受け、植民地に対する宗主国や巨大都市を指す用法も加わった。英語 metropolis も同じ語源。
ギリシャ語:μηχανάκι
読み方:ミハナキ・ミハナーキ
ラテン文字:michanaki
μηχανή(機械、エンジン、バイク)に指小辞 -άκι が付いた形。
もともと口語では μηχανή 自体がオートバイを指すことがあり、その指小形 μηχανάκι は特に小型のスクーターや原付を指すようになった。大型のオートバイ全般には μοτοσικλέτα を使う。
共通の語源を持つ関連語に μηχανικός(機械の、技師)などがある。
ギリシャ語:μηχανικός
読み方:ミハニコス・ミハニコース
ラテン文字:michanikos
古代ギリシャ語の μηχανικός(機械や仕掛けに関わる)に由来。μηχανή(機械, 装置, 仕掛け)に形容詞を作る -ικός が付いた形で, もとは仕掛けや装置に関わる性質を表した。現代の「技師, エンジニア, 整備士」の用法はフランス語 mécanicien, ingénieur, machinal, 英語 mechanical からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μηχανή の語族に μηχανική(機械工学, 力学), μηχανισμός(機構, 仕掛け), μηχάνημα(機械, 装置), μηχανάκι(スクーター, 原付), 合成語 πολιτικός μηχανικός(土木技師), ηλεκτρολόγος μηχανικός(電気技師), αρχιμηχανικός(主任技師)。
英語 mechanic, mechanical, machine もこの μηχανή からラテン語 machina 経由で入った語。
ギリシャ語:Μικρή Άρκτος
読み方:ミクリアルクトス・ミクリーアルクトス
ラテン文字:mikri arktos
μικρός(小さい)の女性形 μικρή と άρκτος(クマ)からなる連語で「小さなクマ」を言う。神話では、アルテミスに仕えたニンフのキノスラが、幼いゼウスを隠して育てたお礼に天に上げられて、こぐま座になったという伝承がある。別説では、Μεγάλη Άρκτος(おおぐま座)となった母カリストの息子アルカスがこの姿になったともされる。北極星 Πολικός Αστέρας は、この星座の尾の先の星。ラテン語形は Ursa Minor で、英語名もそのまま入った。日常の「クマ」は αρκούδα を使うことが多い。
ギリシャ語:Μικρός Κύων
読み方:ミクロスキオン・ミクロースキオン
ラテン文字:mikros kyon
古代ギリシャ語の μικρός(小さい)と κύων(犬)からなる連語「小さな犬」に由来。古代から狩人オリオンに従う二匹の犬の小さな方と見なされ、おおいぬ座とともにオリオンのそばに配された。星座でいちばん明るい恒星 Προκύων(プロキオン)は προ-(〜の前に)と κύων(犬)からなる名で、シリウスより先に昇ることから「犬に先んじて昇る」と名づけられた。ラテン語形は Canis Minor で、英語名もそのまま入った。近くに Μέγας Κύων(おおいぬ座)。日常の「犬」は σκύλος を使うことが多い。
ギリシャ語:μισθός
読み方:ミスソス・ミスソース・ミストス・ミストース
ラテン文字:misthos
ギリシャ語:μνήμη
読み方:ムニミ・ムニーミ
ラテン文字:mnimi
古代ギリシャ語の動詞 μνάομαι(思い出す、心に留める)から派生した μνήμη(記憶、追憶)に由来。英語 amnesia(記憶喪失)も同じ語源。
ギリシャ語:μοβ
読み方:モヴ・モーヴ
ラテン文字:mov
フランス語の mauve(モーヴ)からの借用語で、英語の mauve と同じ語源を持つ。フランス語の mauve はラテン語の malva(ゼニアオイ)に由来し、もともとはアオイ科の植物を指していた。薄紫色の花を咲かせるこの植物から、その花の色も mauve と呼ばれるようになった。ギリシャ語では以前 μωβ と綴られていたが、現在は μοβ が標準的な綴り。μπλε(青)や γκρι(グレー)と同様、性・数・格で変化しない不変化形容詞として使われている。指小辞は μοβάκι。
紫系の色を表すギリシャ語は豊富で、βιολετί(バイオレット、イタリア語・フランス語由来)、μενεξεδί(スミレ色、μενεξές(スミレ)から)、λιλά(ライラック色、フランス語 lilas から)、μελιτζανί(茄子色、μελιτζάνα(ナス)から)、σικλαμέν(シクラメン色)、ιώδες(スミレ色、古代ギリシャ語 ἴον(スミレ)から派生した学術的な語)などがある。μοβ はこれらのなかで特定の色合いに限定されず、紫色全般をカバーする日常語として最も広く使われる。
紫色を表す形容詞として使われるほか、名詞として紫色そのものや紫色の衣服も指す。
ギリシャ語:μοίρα
読み方:ミラ・ミーラ
ラテン文字:moira
古代ギリシャ語の μοῖρα(分前、運命)を継承。動詞 μείρομαι(分配を受ける)から作られた語で、「割り当てられたもの」がもとの意味。印欧祖語で分配・割り当てを表す語根から続き、英語 merit(功績)もラテン語 mereō(値する)を経て同じ語源。
ギリシャ神話では Μοίρες(運命の三女神)が人の生死や境遇を定める存在として語られる。
軍の部隊名(大隊、飛行隊)と角度の「度」には、それぞれフランス語 escadron と degré からの意味借用が入って定着した。
派生語に μοιράζω(分ける、配る), μοιραίος(運命的な、致命的な), μοιρασιά(分け前、取り分)。合成語に κακόμοιρος(不幸な、かわいそうな), μεμψίμοιρος(文句の多い、不平を言う)。
類義語に τύχη(運命、幸運)。τύχη は偶然や巡り合わせを指し、μοίρα はあらかじめ定められた運命を指す。
ギリシャ語:μοκέτα
読み方:モケタ・モケータ
ラテン文字:moketa
フランス語の moquette(厚みのあるパイル織りの織物、敷き詰めカーペット)からの外来借用。19世紀以降、フランスのパイル織り技術が広まる中で住宅・劇場・列車内装材としての敷き詰めカーペットを指す国際語となり、ギリシャ語にもこの語形のまま入った。フランス語 moquette 自体は毛足の長いパイル織物を指す古い職人言葉に由来し、明確な近縁の同族語は他言語に残っていない。同じフランス語からイタリア語 mochetta, スペイン語 moqueta, 英語 moquette も入っている。
類義語に χαλί(絨毯、敷物。トルコ語 halı 由来の外来借用で、床に置く取り外し自在な絨毯全般を指す), τάπητας(絨毯、織物。古代ギリシャ語 τάπης 由来で、行政・公式・装飾文化の硬い文脈で使う), κιλίμι(キリム。トルコ語 kilim 由来の外来借用で、毛足のない平織り絨毯)。μοκέτα は壁から壁まで床面に固定して敷き詰めるロール状のカーペットを指す形として広く使い、車のフロアマットも指す。
ギリシャ語:μόλυβδος
読み方:モリヴドス・モーリヴドス
ラテン文字:molyvdos
古代ギリシャ語の μόλυβδος(鉛)に由来。ミケーネ期の粘土板にも mo-ri-wo-do の形で残る古い語で、ギリシャ語以前のアナトリア方面の言語から入った。リディア語の mariwda(暗い)と同じ系統で、鉛の暗い色につながる。
化学記号 Pb はラテン語 plumbum(鉛)から。現代ギリシャ語で科学用語として定着した背景にはフランス語 plomb(鉛)の影響がある。
日常会話では μολύβι(鉛筆、口語で鉛)を使い、μόλυβδος は鉱物学・化学・工業の文脈で出る語。μέταλλο(金属)の一つ。
派生語に μολυβένιος(鉛製の), αμόλυβδος(無鉛の), μολυβδίαση(鉛中毒)。合成語に μολυβδοσωλήνας(鉛管), χαλκομόλυβδος(銅鉛鉱)。
ギリシャ語:μολύβι
読み方:モリヴィ・モリーヴィ
ラテン文字:molyvi
μολύβι は古代ギリシャ語の μόλυβδος(鉛)につながり、中世ギリシャ語の μολύβιν(鉛)と μολύβι(鉛)を経た語。もともとは鉛そのもの、あるいは鉛を使ったものを指し、そこから芯を持つ細長い筆記具にも意味が広がった。近代にはフランス語 crayon(鉛筆、クレヨン)の意味的な影響も重なり、現代ギリシャ語の μολύβι では「鉛筆」がもっとも基本の意味になっている。
日常語で「鉛筆」と言うときは μολύβι が基本で、化学や金属の文脈で「鉛」をはっきり言うときは μόλυβδος のほうが改まった言い方になる。ペンシル型の化粧品も同じ語で呼ばれ、μάτι(目)、χείλος(唇)、φρύδι(眉)の輪郭を取る道具を表す。
指小語の μολυβάκι(小さな鉛筆、小ぶりのペンシル)は、小さな鉛筆や短い鉛筆、また化粧用のペンシルをやわらかく言う形としてよく使われる。
主な意味は「鉛筆」。そこから、アイライナーやリップライナーのようなペンシル型コスメ、口語の「鉛」や「弾丸」、さらに鉛のように重く沈む感覚へと意味が広がっている。χαρτί(紙)と並ぶと、計算やメモを始める具体的な道具立てを表しやすい。比喩では βαρύς(重い)の形容詞的な感覚と重なりやすい。
ギリシャ語:μοναξιά
読み方:モナクシア・モナクシアー
ラテン文字:monaxia
古代ギリシャ語の μόνος(ただ一つの, 独りの)から派生した μοναξία(独りでいること)を継承。母音の衝突を避ける音変化を経て今の形になり現代に至る。
同じ μόνος の語族に μοναχός(修道士, 孤独な), μοναχικός(孤独の, 独り好きの), μοναχικότητα(独居の性質), μονήρης(独居の), 合成語 μοναστήρι(修道院), μονάζω(独居する)。英語 mono-, monk, monastery もラテン語を経由してこの μόνος の語族に連なる。
類義語 ερημιά は場所の荒涼や人けのなさが前に出るのに対し, μοναξιά は独りでいる人の状態や内面の寂しさを指すことが多い。
ギリシャ語:μόριο
読み方:モリオ・モーリオ
ラテン文字:morio
古代ギリシャ語の μόριον(全体の一部、小片)に由来。「分け前、割り当て」を表す語根からできた語で、同じ語根の仲間には μέρος(部分)と μοῖρα(運命、分け前)もある。古代の「部分」という意味から、現代では化学の分子、文法の不変化辞(να, θα, δε など)に使う。試験や評価の「点数」は後からの用法で、この意味での語源ははっきりしない。派生形容詞に μοριακός(分子の)、合成語に γραμμομόριο(モル、化学の単位)と μακρομόριο(高分子)。英語 molecule はラテン molecula(塊 moles の縮小形)からで μόριο とは語源が別だが、化学の「分子」の訳語として対応している。
ギリシャ語:μοσχάρι
読み方:モスハリ・モスハーリ
ラテン文字:moschari
μοσχάρι(子牛、子牛肉、仔牛革)は、後期古代の μοσχάριον(子牛)に由来する。そこから語尾が縮まり、現代ギリシャ語の μοσχάρι になった。民間的・口語的な形に μοσκάρι(子牛)もある。
牛をまとめて言う総称には βοοειδή(牛類、家畜のウシ)がある。その中で μοσχάρι は αγελάδα(雌牛、乳牛)の子を指す基本語で、成獣になる前の段階を表す。成獣の去勢牛は βόδι(去勢牛)、繁殖用の雄は ταύρος(雄牛)という。近い語の δαμάλι(若い牛)は、子牛より育った若い牛を意識するときに使われる。
主な意味は子牛。そこから転じて、その肉や革も同じ語で表す。比喩では、太っていて動きの鈍い人、あるいは無神経で無作法だったり、意志が弱く愚かだったりする人を罵って言うこともある。
ギリシャ語:μουντός
読み方:ムドス・ムドース・ムンドス・ムンドース
ラテン文字:mountos
μουντός(くすんだ、薄暗い、どんよりした)は、スラブ系の *mutn-(濁った、暗い)に結びつくとされ、中世形を経た語である。現代ギリシャ語では、光や鮮やかさが足りない感じを広く言う。
σκούρος(濃い色の、暗い色の) が色の濃さを言うのに対して、μουντός は光がなくくすんで見える感じを出しやすい。
意味はくすんだ、薄暗い、どんよりした。色にも、空や一日の雰囲気にも使える。
ギリシャ語:μουσείο
読み方:ムシオ・ムシーオ
ラテン文字:mouseio
詩神 Μοῦσα から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 Μουσεῖον(ムーサたちに属する場所, 学問の場)に由来。ラテン語 museum, イタリア語 museo を経て再輸入される形で現代ギリシャ語 μουσείο の語形に定着し, 「博物館」の意味に結びついた。英語 museum も同じラテン語 museum にさかのぼる。
同じ語族に Μούσα(ムーサ, 詩神), μουσική(音楽), μουσικός(音楽の)。派生に μουσειακός(博物館の), μουσειολογία(博物館学)。
ギリシャ語:μουσική
読み方:ムシキ・ムシキー
ラテン文字:mousiki
古代ギリシャ語の μουσική(ムーサたちに属する芸術)に由来。ムーサ(Μούσα)は音楽や詩、学芸をつかさどる女神たちで、古代では歌われる詩や学芸を広く含む語だったが、現代ギリシャ語では「音楽」が中心の意味に。英語 music もラテン語 musica を経て同じ語源にさかのぼる。
ギリシャ語:μουσταρδί
読み方:ムスタルディ・ムスタルディー
ラテン文字:moustardi
μουσταρδί(からし色の、マスタード色の)は、μουστάρδα(マスタード、からし)からできた色名である。現代ギリシャ語では、マスタードを思わせる黄土寄りの黄色を表す。
不変化形容詞として名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞としてからし色そのものも指す(το μουσταρδί(からし色))。
ώχρα(黄土色、オーカー) が土っぽい黄土色を言うのに対して、μουσταρδί はもう少し鮮やかで、からしの黄色を指す。光沢や明るさのある金寄りの黄色では χρυσαφένιος(黄金色の、金色の) のほうが近い。
意味はからし色の、マスタード色の、からし色。服、布、小物、壁の色に使いやすい。
ギリシャ語:μπάλα
読み方:バラ・バーラ
ラテン文字:bala
μπάλα は中世ギリシャ語の μπάλα(ボール)にさかのぼる語で、英語の ball やフランス語の balle と並ぶ同系の語として扱われる。古い綴りには μπάλλα(古い綴り)もある。
スポーツの文脈では、μπάλα は物としてのボールだけでなく、競技としてのサッカーそのものを指すこともある。比喩的な言い方では、στρογγυλή(丸い) θεά(女神)という表現でサッカーやサッカーボールを言うこともある。
中心にあるのは、遊びやスポーツで使う球体のボールという意味。そこから、ボールを使う競技としてのサッカー、丸めた生地やアイス、飾り玉のような球状のものへ意味が広がる。古い用法では、囚人につける鎖付きの鉄球や、大砲の砲弾も指した。
ギリシャ語:μπαλόνι
読み方:バロニ・バローニ
ラテン文字:baloni
μπαλόνι(風船、バルーン)は、イタリア語方言 ballon(e)(風船)から入った借用語である。現代ギリシャ語では、薄い素材を空気やガスでふくらませた風船を言うのが基本になる。
φούσκα(泡、ふくらみ、水ぶくれ、バブル) も膨らんだものを言えるが、μπαλόνι は玩具や飾りとしての風船をよりはっきり指しやすい。αέρας(空気) は、実際に風船をふくらませる中身として自然に結びつく。
基本の意味は風船、バルーン。そこから、丸くふくらんだものをたとえて言うことや、気球を言うこともある。
ギリシャ語:μπανάνα
読み方:バナナ・バナーナ
ラテン文字:banana
果物、バナナ味のもの、バナナボートの意味では、イタリア語と英語の banana(バナナ)を通って現代ギリシャ語に入った。ウエストポーチ、電気部品、髪型の意味では、フランス語の banane(バナナ)を経た形で使われている。
果実がなる植物は μπανανιά(バナナの木、バナナの株)と呼ばれる。指小語には μπανανίτσα(小さなバナナ)と μπανανούλα(小さなバナナ)があり、小さなバナナや親しみを込めた言い方に使う。
主な意味はトロピカルフルーツのバナナ。そこから、バナナで作ったものやバナナ味の食品を表す形容的な使い方が生まれ、さらに細長い形や黄色い見た目の連想から、海上で遊ぶバナナボート、腰に巻くポーチ、バナナプラグや小型ワイヤレスマイク、巻き上げた髪型も指すようになった。
複合語では、見かけだけ民主的で実質的には不安定な国家を指す δημοκρατία της μπανανίας(バナナ共和国)がよく知られる。別形の δημοκρατία της μπανάνας(バナナ共和国)も使われる。食品名では μπανάνα σπλιτ(バナナスプリット)や μπανάνα τσιπς(バナナチップス)も定着している。
ギリシャ語:μπάνιο
読み方:バニョ・バーニョ
ラテン文字:banio
古代ギリシャ語の βαλανεῖον(浴場、浴室)が起源。そこからラテン語の balneum / ballineum、後期ラテン語の bannium、イタリア語の bagno を経て、現代ギリシャ語の μπάνιο になった。
基本の意味は、家で体全体を洗う入浴や風呂。その延長で、家の中の浴室そのものも指す。さらに、海や川、プールに入る水浴びや海水浴にも広く使われ、口語では「泳ぎ」の意味でも言う。複数形の μπάνια(温泉場、保養地)は、療養のために行く温泉場や保養地を指すことがある。
夏場には θάλασσα(海)や παραλία(海岸、ビーチ)の文脈で、「泳ぎに行く」「水浴びする」という意味でよく使う。複数形では、治療や保養のために行く温泉施設のまとまりを指す言い方にもなる。
指小語の μπανάκι(小さなお風呂、ベビーバス)は、親しみをこめた「お風呂」や小さなお風呂を表す形。特に μωρό(赤ん坊)を洗うための小さなたらいやベビーバスも指す。
ギリシャ語:μπίρα
読み方:ビラ・ビーラ
ラテン文字:bira
イタリア語の birra に由来する外来語。穀類を発酵させて作る酒を指す語として定着し、現代ギリシャ語では日常的な「ビール」の呼び名になっている。
本来の綴りは μπίρα とされるが、現代では μπύρα(ビール)という綴りも広く使われる。発音と意味は同じで、表記の違いとして扱われる。
酒類全般は ποτό(飲み物、酒)と言い、κρασί(ワイン)はワインを指す。μπίρα はその中でもビールを表す語で、同義語として ζύθος(ビール)もある。
主な意味は、麦芽を中心とする穀類を発酵させ、ホップと水を加えて作るアルコール飲料としての「ビール」。そこから換喩的に、瓶や缶に入った一本分、一缶分のビールも指す。ノンアルコールのものにも使われる。
指小語には μπιρίτσα(ちょっとしたビール)があり、まれに μπιρούλα(ちょっとしたビール)という形も使われる。
ギリシャ語:μπλε
読み方:ブレ・ブレー
ラテン文字:ble
ギリシャ語:μπλε ανοιχτό
読み方:ブレアニフト・ブレアニフトー
ラテン文字:ble anoichto
μπλε(青)に ανοιχτός(開いた、明るい)の中性形 ανοιχτό を添えた言い方。反対は μπλε σκούρο(濃い青)。
ギリシャ語:μπλε σκούρο
読み方:ブレスクロ・ブレースクロ
ラテン文字:ble skouro
μπλε(青)に σκούρος(暗い、濃い)の中性形 σκούρο を添えた言い方。反対は μπλε ανοιχτό(薄い青)。
ギリシャ語:μπορντό
読み方:ボルド・ボルドー・ボルンド・ボルンドー
ラテン文字:bordo
μπορντό(ボルドー色の、深い赤紫の)は、フランスの地名 Bordeaux とそのワイン名に関わる色名から入った語である。現代ギリシャ語では、濃い赤に紫みや茶みが差した色を言う。
不変化形容詞として名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞としてボルドー色そのものも指す(το μπορντό(ボルドー色))。
κόκκινος(赤い、赤色の) よりも、μπορντό は暗く深い赤紫を指す。紫みが前に出る場面では μελιτζανί(ナス紺の、茄子色の) に近づくが、μπορντό はワイン色らしい赤みを保ちやすい。
意味はボルドー色の、深い赤紫の、ボルドー色。服、口紅、家具、内装の色などで使いやすい。
ギリシャ語:μπουμπούκι
読み方:ブブキ・ブブーキ・ブンブキ・ブンブーキ
ラテン文字:boumpouki
語源は確定していないが、古代ギリシャ語の βομβύκιον(蚕の繭)にさかのぼるとする説がある。これは βόμβυξ(カイコ)をもとにした語形で、そこから現代ギリシャ語の μπουμπούκι になったと考えられている。
この説明では、語中の [mb] のような唇音の影響で母音が [u] に寄ったことが、現在の音形につながったとされる。
λουλούδι(花)や άνθος(花)は開いた花そのものを指すのに対し、μπουμπούκι はまだ開いていない段階を指す。οφθαλμός(芽、眼)は植物学で「芽」を表す、より技術的な言い方。
最も基本的には、まだ開いていない花や、まだ伸びきっていない植物の芽を指す。比喩では、まだ成長の途中にあるきれいな少女を言うことがあり、皮肉を込めると、ずるくてろくでもない人物も指す。
指小語に μπουμπουκάκι(小さなつぼみ、愛称形)がある。
ギリシャ語:μπουνάτσα
読み方:ブナツァ・ブナーツァ
ラテン文字:bounatsa
中世ギリシャ語の μπο(υ)νάτσα を継承。もとは北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 bonazza(海の凪)からの借用で、ラテン語の bonus(よい)をもとにした「よい天気」の意。
類義語に νηνεμία(無風、凪)。νηνεμία は風がないこと全般、μπουνάτσα はとくに海の穏やかさを言う。反対は φουρτούνα(時化)、θαλασσοταραχή(海のしけ)。
ギリシャ語:μπράτσο
読み方:ラトゥソ・ラートゥソ
ラテン文字:bratso
イタリア語 braccio(腕)からの外来借用で、ギリシャ語を源とするイタリア語を経て再びギリシャ語に戻った再借用(αντιδάνειο)。イタリア語 braccio はラテン語 bracchium から、ラテン語 bracchium は古代ギリシャ語の βραχίων(腕。βραχύς「短い」の比較級から、前腕より「短い方」の意)から入った借用。古代ギリシャ語の βραχύς は印欧祖語で「短い」を表す語根にさかのぼり、英語 brace(補強具、つなぎ), embrace(抱きしめる), brachial(腕の、上腕の)はこの bracchium 系譜からラテン語・古フランス語を経由して入った借用で、μπράτσο と語根を共有する。
類義語に χέρι(手、腕。手先から腕全体まで広く指す), βραχίονας(腕、上腕。同じ βραχίων から継いだ学術借用で、解剖や公式の文脈で使う硬い形)。μπράτσο は肩から肘までの上腕や腕の力を指す形として広く使う。派生に μπρατσάκι(小さな腕、子どもの腕、水泳用のアームリング。指小形), μπρατσαράς(太く力強い腕の持ち主), μπρατσωμένος(筋骨たくましい), ξεμπρατσώνομαι(腕をまくる)。
ギリシャ語:μπρούντζος
読み方:ブルドゾス・ブルドーゾス・ブルンドゾス・ブルンドーゾス
ラテン文字:mprountzos
μπρούντζος は、近代ヨーロッパ語 bronze に連なる語から入った借用語である。現代ギリシャ語では、銅と錫を中心にした合金としての青銅、ブロンズを指す。
χαλκός(銅、青銅) が銅そのものや古い意味での青銅を広く含みうるのに対して、μπρούντζος は合金としてのブロンズをより具体的に指しやすい。κασσίτερος(錫) はその代表的な構成金属の一つである。
主な意味は「青銅」「ブロンズ」。金属材料にも、ブロンズ像やブロンズ色にも使う。
ギリシャ語:μυαλό
読み方:ミアロ・ミアロー
ラテン文字:myalo
古代ギリシャ語 μῠελός(骨髄、髄)が起源。もとは骨の中の「髄」全般を指していたが、ヘレニズム期に μυαλός(髄)の形が生まれ、中世ギリシャ語では μυαλόν(脳)と中性化した。これは κεφάλι(頭)などの中性名詞の語尾に引かれたものとされる。現代ギリシャ語では μυαλό の形で定着している。
やがて頭蓋骨の中にある「脳」を主に指すようになり、さらに「知性」や「考え方」の意味も表すようになった。英語の myeloid(骨髄性の)や myelin(ミエリン)と語源を共有する。
類義語の νους(精神、理性)に比べ、μυαλό はより日常的で具象的な表現に用いられる。
主な意味は物質としての「脳」で、食用の動物の脳も指す。そこから思考の拠点としての「知性」「精神」、さらに「思慮」「分別」「正気」も表す。
ギリシャ語:μύγα
読み方:ミガ・ミーガ
ラテン文字:myga
μύγα は、古代ギリシャ語の μυῖα(ハエ)にさかのぼる語。さらに古い印欧語の「飛ぶ小虫」を表す語群につながり、ラテン語 musca(ハエ)とも同じ起源を持つ。中世・ビザンツ期の綴りの揺れを経て、現代ギリシャ語の μύγα になった。
指小語には μυγίτσα(小さなハエ、ハエちゃん)と μυγούλα(小さなハエ、ハエちゃん)があり、小さなハエや、うっとうしい小虫をややくだけて言うときに使える。複合語では、άλογο(馬)を含む αλογόμυγα(アブ)や κρεατόμυγα(ニクバエ)、φρούτο(果物)を含む μύγα των φρούτων / του ξιδιού(ショウジョウバエ)のような言い方がある。ισπανική μύγα(スペインバエ)は定着した呼び名だが、実際にはハエではなくカンタリスを指す。
主な意味は、家の中や食べ物のまわりに現れる身近なハエ。とくにイエバエが念頭に置かれやすいが、地中海ミバエやオリーブミバエのような種類名にも広がる。そこから、ボクシングのフライ級を表す言い方にもなり、成句では、べったり張りつくこと、暇を持て余すこと、ちょっとしたことを大げさにすること、大勢が群がることなどを表す。
ギリシャ語:μύθος
読み方:ミソス・ミーソス・ミトス・ミートス
ラテン文字:mythos
古代ギリシャ語の μῦθος(言葉, 話, 物語)を継承。現代の「神話, 寓話, 筋書き」の用法はドイツ語 Mythos, フランス語 mythe, 英語 myth からの意味借用で輪郭が整った。
同じ μῦθος の語族に μυθικός(神話的な, 伝説的な), μύθευμα(作り話), μυθώδης(神話のような, 伝説のような), 合成語 μυθολογία(神話学, 神話体系), μυθιστόρημα(小説), μυθοπλασία(フィクション, 創作), μυθομανία(虚言癖), μυθοποιός(神話を作る, 神話化する)。
類義語 θρύλος は歴史的事実を核に伝承がついた「伝説」, παραμύθι は子ども向けに語られる「おとぎ話」を指すのに対し, μύθος は世界の成り立ちや神々・英雄を扱う構造のある物語で使う。英語 myth, mythology, mythical もこの μῦθος の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:μύκητας
読み方:ミキタス・ミーキタス
ラテン文字:mykitas
古代ギリシャ語の μύκης(キノコ、またはキノコのような形の病的な隆起)を語源とし、対格形の -ητα を経て現代ギリシャ語の μύκητας となった。
英語の mycology(菌類学)や、抗生物質の streptomycin(ストレプトマイシン)に含まれる -mycin などは、このギリシャ語を語源に持つ。
派生語に、形容詞の μυκητιακός(菌の、真菌性の)や、菌による疾患を指す μυκητίαση(真菌症、水虫など)がある。
日常的にキノコを指す場合は μανιτάρι(キノコ)が一般的で、μύκητας は生物学や医学の文脈で用いられることが多い。
主な意味は「菌類」。広義にはキノコからカビ、酵母などの微生物までを含む。生物学では葉緑素を持たず寄生生活を送る生物群(菌界)を指し、五界説(動物、植物、菌、原生生物、モネラ)の一つに数えられる。
ギリシャ語:μυρίζω
読み方:ミリゾ・ミリーゾ
ラテン文字:myrizo
名詞 μύρον(香油, 芳香油)に動詞化の -ίζω がついた古代ギリシャ語の動詞 μυρίζω(香油を塗る, 香りがする)を継承。古代は「香油を塗る」と「香りがする」の二つの意味があったが, 現代では前者の意味は失われ, 「においがする, においをかぐ」の意味に集約された。同じ μύρον から派生した μυρωδιά(におい、香り)と μυρώνω(香油を塗る、聖別する)が同族の語で、μυρίζω との合成語に μοσχομυρίζω(とてもよい香りがする)がある。名詞 μυρωδιά は άρωμα(香水、芳香)より意味が広く、よい香りにも嫌なにおいにも使いやすい。元の μύρον はセム語からの借用とする見方が有力で、英語 myrrh(没薬)も同じ源泉からラテン語経由で別ルートで入った親戚にあたる。
ギリシャ語:μυρμήγκι
読み方:ミルミギ・ミルミーギ・ミルミンギ・ミルミーンギ
ラテン文字:myrmigi
中世ギリシャ語 μυρμήγκι(ν) を継承。
古代ギリシャ語 μύρμηξ(蟻)の指小形 μυρμηκίον が、中世に中性名詞 μυρμήγκι(ν) の形に整えられて受け継がれた。μύρμηξ は蟻を表す印欧祖語の語根をもとにした語。
派生語に μυρμηγκιά(蟻の巣、蟻の大群、しびれ)、μυρμήγκιασμα(しびれ、ちくちくする感じ)、μυρμηγκοφωλιά(蟻の巣)などがある。共通の語源を持つ関連語に、ラテン語 formica、サンスクリット vamrá- などがある。
ギリシャ語:μυρουδιά
読み方:ミルディア・ミルディアー
ラテン文字:myroudia
μυρωδιά(におい、匂い、香り、少量)の口語的な綴り。
μυρωδιά と同じく、日常的なにおい全般から、比喩的な気配、口語での「ほんの少し」まで幅広く使われる。
ギリシャ語:μυρωδιά
読み方:ミロディア・ミロディアー
ラテン文字:myrodia
中世ギリシャ語の μυρωδία(におい、香り)に由来する。現代ギリシャ語では、鼻で感じる「におい」全般を広く指す日常語として使われている。
同じ「香り」でも、άρωμα(香り、風味、香水)は、よい香りや風味、香水を言うときに使いやすい。これに対して μυρωδιά(におい、匂い、香り)は、心地よい香りにも嫌な臭いにも広く使える、ふつうの「におい」の語である。
やや硬めの οσμή(におい、臭気)という語もある。強い悪臭には βρόμα(悪臭、臭み)、δυσοσμία(悪臭)、μπόχα(ひどい臭い)といった言い方が使われる。口語では μυρουδιά(におい、香り)という綴りも見られる。
主な意味は、物や場所から漂うにおい、匂い、香り。よい香りにも嫌な臭いにも使え、複数形 μυρωδιές(さまざまなにおい、香り)では、さまざまなにおいや季節の香りをまとめて言うことも多い。比喩では、その場や季節の気配を表し、口語では「ほんの少し」の意味にも広がる。
ギリシャ語:μυστήριο
読み方:ミスティリオ・ミスティーリオ
ラテン文字:mystirio
古代ギリシャ語の動詞 μύω(閉じる)から派生した μυστήριον(儀式、秘密の教え)が起源。μύω は「口を閉じる」「目を閉じる」の意で、ここから μυστήριον は選ばれた者だけに明かされる事柄を指すようになった。ヘレニズム期以降、キリスト教の「秘跡」としての語義が定着し、現代ギリシャ語の μυστήριο に至る。
英語の mystery もこの語に由来する。
現代ギリシャ語では、理屈では説明できない不思議な現象や推理小説的な「謎」の意味で日常的に使われる。そのほか、キリスト教の秘跡や宗教上の教義、古代ギリシャの密儀、中世の宗教劇(神秘劇)の意味もある。
ギリシャ語:μυστικισμός
読み方:ミスティキズモス・ミスティキズモース
ラテン文字:mystikismos
フランス語の mysticisme からの借用語。フランス語 mysticisme は、ギリシャ語由来のフランス語 mystique(神秘的な、秘儀の)に、-isme(〜主義、〜論)が加わったもの。英語の mysticism と語源を共有する。
近い語に μυστήριο(秘跡、謎、密儀)や μυστικό(秘密、神秘)がある。どちらも「秘儀」「神秘」「秘密」の領域に近い語だが、μυστικισμός は思想や態度としての神秘主義を指す。
また、近い領域の語に αποκρυφισμός(オカルティズム)や εσωτερισμός(秘教)がある。αποκρυφισμός が超感覚的な力に関する知識や実践に寄り、εσωτερισμός が入門者だけに共有される教義体系に寄るのに対し、μυστικισμός は直感や脱魂を通じた絶対者・神性との合一に重点がある。
派生語には μυστικιστής(神秘主義者)、μυστικιστικός(神秘主義的な)がある。
主な意味は「神秘主義」。感覚や理性を介さず、直感や脱魂(エクスタシー)を通じて絶対者や神性との合一を目指す思想や態度を指す。そこから、隠微なものや神秘的なものに過度に惹かれる傾向、あるいは物事を秘密にしようとする性質を指すこともある。
ギリシャ語:μυστικό
読み方:ミスティコ・ミスティコー
ラテン文字:mystiko
動詞 μύω(口を閉ざす)から派生した古代ギリシャ語の名詞 μύστης(秘儀参入者), その形容詞形 μυστικός(秘儀に関する, 神秘の)を継承した現代ギリシャ語の形容詞 μυστικός の中性形 μυστικό が名詞化した語。「秘密」の意味は近代にフランス語・英語 secret の訳語として定着した。英語 mystery, mystic, mysticism も同じ μύω の語族にさかのぼる。
同じ語族に μυστικός(神秘の, 秘密の), μυστήριο(秘儀, 秘跡, 謎), μυστικότητα(秘匿性, 神秘性), μύηση(入信, 秘儀参入), μυστικιστής(神秘主義者)。
類義語に απόρρητο(機密), αίνιγμα(謎, 難問)。αίνιγμα は解き明かすべき謎を指し, μυστικό は隠されている事柄や神秘を指す。
ギリシャ語:μυστικός
読み方:ミスティコス・ミスティコース
ラテン文字:mystikos
古代ギリシャ語の μυστικός(秘儀に属する、秘密の)に由来。名詞 μύστης(秘儀の入門者)に形容詞語尾 -ικός を付けた語。μύστης は動詞 μύω(目や口を閉じる)に由来し、秘儀で口を閉ざす入門者の姿が語のもとにある。
フランス語 secret, mystique や英語 mystic からの意味借用が入り、宗教的な文脈を離れた「秘密の、内密の」にも使われるようになった。
同じ語根の名詞に μυστήριο(謎、秘儀、秘跡), μυστικισμός(神秘主義), μύστης(秘儀の入門者、神秘家)。派生語に μυστικά(副詞、ひそかに), 中性名詞の μυστικό(秘密)。
英語 mystic もラテン語 mysticus を経て同じ語源。mystery, mysterious は μυστήριο からきた語。
ギリシャ語:μύτη
読み方:ミティ・ミーティ
ラテン文字:myti
古代ギリシャ語の μύτις(吻、鼻先。もとはタコ・イカの肝や墨袋を指した語)を継承。中世ギリシャ語の μύτη を経て、人や動物の「鼻」を指す形として今に落ち着いた。鼻にまつわる古い同根の語族には鼻水を表す μύξα や鼻孔を表す μυκτήρ もあり、μύτη はこの語族のなかで日常の「鼻」を担う形として広まった。古代のもう一つの「鼻」 ῥίς は今は接頭辞 ρινο- としてのみ生き、ρινίτιδα(鼻炎), ρινοπλαστική(鼻形成術)など医学・解剖の硬い形に残る。英語 rhinoceros(サイ)の rhino- もこの ῥίς からラテン語経由で入った学術借用で、μύτη とは別系統。
類義語に ῥίς(鼻。古代ギリシャ語由来で、今は単独では用いず接頭辞 ρινο- としてのみ医学・解剖の文脈に残る)。μύτη は鼻を指すふつうの形として広く使う。派生に μυτίτσα, μυτούλα(小さな鼻、可愛らしい鼻。指小形), μυτάρα(大きな鼻。増大形), μυτιά(鼻でひと突き、ひと嗅ぎ), μυτερός(先の尖った), μυτίζω(先を尖らせる), ξεμυτίζω(外に顔を出す)。合成語に κουτσομύτης(鼻の欠けた人), σουβλομύτης(とがり鼻の人), στραβομύτης(鼻の曲がった人), ψηλομύτης(お高くとまった人), πλατσομύτης(鼻ぺちゃの人), μυτοτσίμπιδο(鼻先用ピンセット)。
ギリシャ語:μωρό
読み方:モロ・モロー
ラテン文字:moro
古代ギリシャ語で「愚かな、鈍い」を意味した μωρός(モロス)が語源。中世ギリシャ語では中性形 μωρόν(モロン)が「分別のない者」から転じて幼い子供を指すようになり、現代ギリシャ語で「赤ん坊」を意味する μωρό として定着した。
英語の moron(馬鹿)は同じ古代ギリシャ語 μωρός に由来する。
類義語には、より医学的な νεογνό(新生児)や νήπιο(幼児)がある。
主な意味は「赤ん坊、乳児」で、動物の子にも使われる。比喩的に、大人でありながら子供じみた振る舞いをする人を指すこともある。
μωράκι、μωρουδάκι、μωρουδέλι のような愛称でも呼ばれる。μωρό μου は子供や恋人への呼びかけとして広く使われ、口語では魅力的な人を褒める表現にもなる。
Ν
ギリシャ語:ναρκισσισμός
読み方:ナルキシズモス・ナルキシズモース
ラテン文字:narkissismos
フランス語 narcissisme からの借用。素材は古代ギリシャ語の人名 Νάρκισσος(ナルキッソス)に「〜であること、〜主義」を作る接尾辞 -ισμός を付けた形で、ドイツの精神科医ネッケが1899年に造語し、フロイトが精神分析に取り込んで各国に広まった。神話のナルキッソスは水面に映った自分の姿に恋して花になった若者で、この神話にちなんで過度の自己愛を言う語として定着した。Νάρκισσος 自体は花の名にもなっており、語源は印欧語族より古い先ギリシャ層に遡ると見られる。英語 narcissism、ドイツ語 Narzissismus も同じ造語の流れで生まれた語。
ギリシャ語:νάρκισσος
読み方:ナルキソス・ナールキソス
ラテン文字:narkissos
古代ギリシャ語の νάρκισσος(スイセン)を継承。古代から地中海沿岸に自生する花の名で, νάρκη(しびれ, 麻酔)と同じ語根に連なる説があり, 花の香りや有毒性との結びつきが想定されている。水面に映った自分に見とれて死んだ美少年 Νάρκισσος の神話が早くから伝わり, 現代の「うぬぼれの強い人」の用法はフランス語 narcisse, 英語 narcissus と, 心理学用語のドイツ語 Narzissmus, 英語 narcissism からの意味借用で輪郭が整った。
同じ νάρκισσος の語族に ναρκισσιστής(ナルシスト), ναρκισσισμός(ナルシシズム), ναρκισσεύομαι(うぬぼれる), 固有名詞 Νάρκισσος(神話のナルキッソス)。ギリシャ語内の関連では νάρκη(しびれ, 麻酔), ναρκωτικό(麻酔薬, 麻薬)も同じ語根につながるとされる。
ラテン語 narcissus を経由して英語 narcissus, フランス語 narcisse が入り, 学名 Narcissus もそのままラテン化された形。
ギリシャ語:νεκρός
読み方:ネクロス・ネクロース
ラテン文字:nekros
古代ギリシャ語の νεκρός(死んだ)を継承。印欧祖語で「滅びる」を表す語根から続き、名詞 νέκυς(死体)に形容詞語尾 -ρός を付けて作られた。
フランス語 mort, 英語 dead からの意味借用が入り、「死語」「死文」「死角」のような比喩の言い回しが近代以降に加わった。
反対語は ζωντανός(生きている)。近い語に θάνατος(死), ζωή(命、生命)。
派生語に νεκρικός(葬儀の、陰気な), νεκρώνω(死なせる、麻痺させる), νέκρωση(壊死)。合成語に νεκροταφείο(墓地), νεκρολογία(追悼記事), νεκρομαντεία(死霊術)。
英語 necrosis, necromancy の necro- は同じ語源。ラテン語 nex(殺害)も同じ印欧祖語の語根から続く。
ギリシャ語:νερό
読み方:ネロ・ネロー
ラテン文字:nero
古代ギリシャ語の形容詞 νηρός(湿った、新鮮な)を継承。νηρός 自体は νεαρός(若い、新鮮な)の縮約で、νηρόν ὕδωρ(新鮮な水)のように ὕδωρ(水)を修飾する形容詞だったが、名詞が省略されて νηρόν だけで「水」を指すようになり、コイネーの νηρόν、中世ギリシャ語 νερό(ν) を経て今の形になった。
接頭辞 νερο- として νερομπογιά(水彩絵の具), νεροποντή(豪雨)などの合成語を作る。指小形 νεράκι、派生の動詞 νερώνω(水で薄める), 形容詞 νερουλός(水っぽい), 名詞 νερουλάς(水売り)。
同じ「水」を表す ύδωρ は、かしこまった場面や Ε.ΥΔ.Α.Π.(水道局)のような公的な名称に限られ、日常では νερό が一般的。
ギリシャ語:νεροποντή
読み方:ネロポディ・ネロポディー・ネロポンディ・ネロポンディー
ラテン文字:neroponti
νερό(水)と -ποντή からできた合成語で、-ποντή は ποντίζω(水に沈める、水没させる)からの逆形成。ποντίζω はさらに古代ギリシャ語の πόντος(海、深い水)に動詞化の -ίζω がついてできた語で、「水浸しにする、叩きつけるような水」のイメージがもとになっている。元の πόντος は「道、通り道」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、同じ語根からラテン語 pons(橋)と、その派生の英語 pontoon(浮橋)が生まれた。激しく落ちてくる雨という意味はここから来る。雨一般は βροχή、風まじりの雨は ανεμόβροχο と言う。
ギリシャ語:νερουλός
読み方:ネルロス・ネルロース
ラテン文字:neroulos
中世ギリシャ語の νερουλός からの語で、νερό(水)に接尾辞 -ουλός がついた形容詞。-ουλός はラテン語 -ulus(指小辞)由来で、指小のほかに「〜っぽい、〜のような」という性質を作る働きもあり、ここでは後者の用法で「水っぽい、水のような」を表す。元の νερό は古代ギリシャ語の言い回し νεαρὸν ὕδωρ(新鮮な水)で名詞 ὕδωρ が落ち、形容詞 νεαρόν の中性形が独立して名詞化し、音韻変化を経て今の形になった。νεαρός は νέος(新しい、若い)と同根。派生に νερουλιάζω(水っぽくなる)がある。
ギリシャ語:νεροχύτης
読み方:ネロヒティス・ネロヒーティス
ラテン文字:nerochytis
中世ギリシャ語 νεροχύτης を継承。
νερό(水)と古代ギリシャ語の χύνω(流す、注ぐ)に、行為者を表す -της が付いてできた合成語。文字どおりには「水を流すもの」で、中世以降、家屋の流しや洗い場を指す語として使われてきた。言葉を水のようにだらだら流し続ける人を指す比喩は、現代の口語で加わった用法。
共通の語源を持つ関連語に χύτρα(鍋)などがある。
ギリシャ語:νεύρα
読み方:ネヴラ・ネーヴラ
ラテン文字:nevra
νεύρα は語形としては νεύρο(神経)の複数形で、その底には古代ギリシャ語の νεῦρον(腱、神経、弓の弦)がある。そこから現代ギリシャ語では、νεύρο の複数形として νεύρα が保たれている。
英語の neuron(ニューロン)や接頭辞 neuro-(神経の)も、同じ古代ギリシャ語にさかのぼる。
現代ギリシャ語で「神経が張りつめた状態」「そこから来るいらだちや怒り」を表すこの言い方は、フランス語 nerfs(神経、神経過敏)の影響を受けて広まったとされる。身体の器官としての神経そのものより、感情がぴりついて落ち着かない状態を言うことが多い。
θυμός(怒り)はもっと広く一般的な「怒り」を言え、οργή(激しい怒り、憤怒)はより重く強い怒りを表す。これに対して νεύρα はもっと口語的で、神経が逆立っている感じ、不機嫌さ、ぴりぴりした怒りをまとめて言う。
主な意味は、神経が張りつめている状態や、そのせいで起こるいらだち、怒り。この意味ではほぼ複数形で使い、τα νεύρα μου(私の神経、つまり「いらいら」)のように定冠詞や所有代名詞と結びつきやすい。口語では指小形の νευράκια(ちょっとしたいらだちを軽く言う形)も使われる。
ギリシャ語:νέφος
読み方:ネフォス・ネーフォス
ラテン文字:nefos
古代ギリシャ語の νέφος(雲、雲の群れ)を継承。「雲、霧」を表す印欧祖語の語根から続き、同じ語根からラテン語 nebula(霧)、英語 nebula(星雲)、ドイツ語 Nebel(霧)などの仲間がある。派生に νέφωση(曇ること、医学では混濁)、同族の νεφέλη(雲、詩や文章で使う形)から νεφελώδης(雲の多い、比喩で漠然とした)と νεφέλωμα(星雲)が続く。日常の「雲」は σύννεφο と言い、νέφος は気象や天文、物理の文脈のほか、大気汚染・スモッグを指すのに使うことが多い。アテネのスモッグを指す νέφος της Αθήνας は20世紀後半から定着した用法で、英語 cloud(of smoke/pollution)の用法をなぞったもの。
ギリシャ語:νεφρίτης
読み方:ネフリティス・ネフリーティス
ラテン文字:nefritis
古代ギリシャ語の νεφρός(腎臓)から派生した形容詞 νεφρῖτις(腎臓の)に由来する。もとは νεφρῖτις λίθος(腎臓の石)の形で使われ、この石が腎臓の病を治すと信じられていたことに基づく名前。中世から近代にかけて鉱物名として定着した。
英語の nephrite も同じギリシャ語が語源にあたる。同じ νεφρός から派生した語に νεφρίτιδα(腎炎)があり、英語の nephritis(腎炎)もこの語根を共有する。
ίασπις(翡翠)を構成する2鉱物のひとつで、もう一方の ιαδεΐτης(ジェダイト、硬玉)とは鉱物学的に区別される。
翡翠のうちの軟玉にあたる鉱物で、半貴石として珍重される。
ギリシャ語:νηνεμία
読み方:ニネミア・ニネミーア
ラテン文字:ninemia
古代ギリシャ語の νηνεμία(無風、凪)に由来。否定の接頭辞 νη-(〜がない)と άνεμος(風)に名詞化の -ία がついてできた形で、字義は「風がないこと」。νη- は ἀ-/ἀν- と並ぶ古い否定辞で、英語の un-, in- にあたる。άνεμος は「息をする」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、同じ語根からラテン語 animus(心、精神), anima(息、魂)、英語 animate(生き生きとさせる)、animal(動物)が生まれた。関連語に νήνεμος(無風の、静かな)という形容詞がある。海の静けさでは μπουνάτσα(凪)や γαλήνη(静けさ、平穏)が近く、νηνεμία はまず風がない状態そのものを指し、海だけでなく空気が動かない静かな状態にも使う。
ギリシャ語:νησί
読み方:ニシ・ニシー
ラテン文字:nisi
νησί(島)は、古代ギリシャ語 νῆσος(島)の指小形 νησίον(小島)にさかのぼり、それが中世ギリシャ語 νησίν(島)を経て、現代ギリシャ語の基本語として定着したものだ。
文語や地名では、古い形を受け継ぐ νήσος(島)も今なお見られる。日常会話では νησί が普通で、古い語形はより書きことば寄りである。
θάλασσα(海)は海そのもの、πέλαγος(外洋、海、沖合)はより広い海域や沖合を指しやすい。νησί はその水の中に切り出された陸地という位置づけで、海の語と強く結びついている。
指小語の νησάκι(小島)は、地図や旅行の話だけでなく、愛着を込めて小さな島影を言うときにもよく使われる。
意味の中心は「島」。海や湖、川の水に囲まれた陸地を言い、文脈によっては「自分の故郷の島」のように、その人にとってなじみ深い島を指すこともある。
ギリシャ語:νηστεία
読み方:ニスティア・ニスティーア
ラテン文字:nisteia
古代ギリシャ語の νηστεία(断食)に由来。形容詞 νῆστις(食べていない)から作られた抽象名詞で、νῆστις は否定の νη- と動詞 ἐσθίω(食べる)の語根からなる。ἐσθίω は英語 eat、ラテン語 edere(食べる)と同じ印欧祖語の語根に続く。
動詞は νηστεύω(断食する), 形容詞に νηστίσιμος(断食中でも食べられる)。近い語に αφαγία(絶食)= α-(否定)+ φαγεῖν(食べる)の合成。関連する行為に προσευχή(祈り)。
ギリシャ語:νίκη
読み方:ニキ・ニーキ
ラテン文字:niki
古代ギリシャ語の νίκη(勝利)を継承。
古代ギリシャでは勝利の女神 Νίκη の名でもあり、翼を持つ姿で描かれた。ルーヴル美術館のサモトラケのニケ像(Η Νίκη της Σαμοθράκης)や、アテネのアクロポリスに立っていたアプテロス・ニケ神殿(Ναός της Απτέρου Νίκης、「翼なきニケの神殿」)がこの女神と結びつく。スポーツブランド Nike もこの女神の名から。
人名 Nicholas は古代ギリシャ語の Νικόλαος から。νίκη(勝利)と λαός(民衆)の合成で、「民衆の勝利」の意。Nicole, Nicola も同じ系統。女性名 Βερενίκη(Berenice)は φέρω(運ぶ)+ νίκη で「勝利をもたらす者」。都市名 Θεσσαλονίκη は「テッサリアの勝利」の意で、マケドニア王フィリッポス2世の娘の名に由来する。
派生語に νικώ(勝つ), νικητής(勝者), νικηφόρος(勝利をもたらす), ανίκητος(不敗の), επινίκιος(祝勝の)。対義語に ήττα(敗北), ηττημένος(敗者、敗れた)。
ギリシャ語:νοημοσύνη
読み方:ノイモシニ・ノイモシーニ
ラテン文字:noimosyni
νοημοσύνη(知能、知性)は文語的に、νοήμων(知的な、分別のある)に抽象名詞を作る接尾辞 -οσύνη(〜であること、〜さを表す接尾辞)が付いてできた語。現代ギリシャ語では、人の頭の働きや知的能力をやや硬い言い方でまとめて表す。
近い語では、ευφυΐα(聡明さ、機転のよさ)が生まれつきの才気やひらめきの鋭さを言いやすい。日常会話で「頭のよさ」を言うなら、μυαλό(脳、頭)のほうがくだけた言い方として出やすい。
同じ語族に νόηση(認知、知性作用)や νους(精神、心、理性)がある。νόηση が理解や認知の働きそのものを指しやすいのに対し、νοημοσύνη はそうした働きを支える能力や頭のよさを言うときに使いやすい。
主な意味は「知能」「知性」。心理学では、知覚、記憶、連想、想像、注意、思考といった認知能力の総体を指し、とくに新しい状況への適応や、類似・差異・関係を見分ける力を含めていう。知能検査、知能指数、人工知能のような硬い表現でもよく使われる。
ギリシャ語:νόηση
読み方:ノイシ・ノーイシ
ラテン文字:noisi
名詞 νόος(精神)から派生した動詞 νοέω / νοώ(考える, 理解する), さらにそこから派生した古代ギリシャ語の女性名詞 νόησις(理解, 知的把握)から。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の νόηση の形になった。
同じ語族に νους(精神, 理性, νόος の縮約形), νοώ(考える, 理解する), νόημα(意味, 意図), νοήμων(知的な, 理解のある), νοητικός(認知の, 知的な), νοητός(思念される)。合成語に διανόηση(思索), κατανόηση(理解), επινόηση(発明, 考案), παρανόηση(誤解)。
ギリシャ語:νόμος
読み方:ノモス・ノーモス
ラテン文字:nomos
古代ギリシャ語の νόμος(割り当て、慣習、掟)に由来。動詞 νέμω(割り当てる、分配する)からできた名詞で、印欧祖語の「割り当てる」を表す語根に続く。「割り当てられたもの」から「慣習」「掟」を経て、法律や法則の意味に広がった。現代の法律・法則としての用法は、フランス語 loi, ドイツ語 Gesetz, 英語 law からの意味借用で整った。
英語 economy は古代ギリシャ語 οἰκονομία(οἶκος「家」+ νόμος、「家の管理」)から、astronomy, autonomy の -nomy も νόμος を語源とする。
ストレスの位置だけが違う νομός(県)も動詞 νέμω から派生した語で、こちらは「割り当てられた土地」から行政区画の意味に分かれた。
派生語に νομικός(法律の、法律家), νόμιμος(合法の), νομοθεσία(立法)。対義語は άνομος, παράνομος(違法の、無法な)。
ギリシャ語:νοσοκόμα
読み方:ノソコマ・ノソコーマ
ラテン文字:nosokoma
νοσοκόμα は、νόσος(病気)に関わる古い複合語形成に由来する。現代ギリシャ語では、病院や診療所で患者の世話や看護を担う職業を指す。
主な意味は「看護師」「ナース」。現代の職業名としては男女を問わず使われることもあるが、形そのものは女性形である。
ギリシャ語:νοσοκομείο
読み方:ノソコミオ・ノソコミーオ
ラテン文字:nosokomeio
古代ギリシャ語の νοσοκομεῖον(病人の世話をする場所)から。現代ギリシャ語では、診療や入院を行う病院を指す基本語である。
νοσοκόμα(看護師、ナース) が病院で働く看護職を言い、γιατρός(医師、医者)が診療する人を言うのに対して、νοσοκομείο はその場となる施設を言う。
意味は病院。総合病院にも地域の病院にも使える。
ギリシャ語:νόσος
読み方:ノソス・ノーソス
ラテン文字:nosos
ギリシャ語:νοτιοανατολικά
読み方:ノティオアナトリカ・ノティオアナトリカー
ラテン文字:notioanatolika
νοτιοανατολικός(南東の)の中性複数形。νότιος(南の)の接頭辞 νοτιο- と ανατολικός(東の)が合わさった形容詞の中性複数形で、方角名・方向ラベルとして一語で立つ。
南東から吹く風の名には σιρόκος と εύρος がある。σιρόκος はイタリア語由来の地中海の航海語で、εύρος は古代ギリシャ語に由来する名称。
方角としての南東を表す。名詞として「南東部」、副詞として「南東へ」の用法もある。
:::example
- στα νοτιοανατολικά της χώρας
- 国の南東部に
- in the southeast of the country :::
:::example
- Κατευθύνεται νοτιοανατολικά.
- 南東へ向かっている。
- Heading southeast. :::
ギリシャ語:νοτιοδυτικά
読み方:ノティオディティカ・ノティオディティカー
ラテン文字:notiodytika
νοτιοδυτικός(南西の)の中性複数形。νότιος(南の)の接頭辞 νοτιο- と δυτικός(西の)が合わさった形容詞の中性複数形で、方角名・方向ラベルとして一語で立つ。
南西から吹く風の名には γαρμπής と λίβας がある。γαρμπής はイタリア語由来の地中海の航海語で、λίβας は古代ギリシャ語に由来する名称。
方角としての南西を表す。名詞として「南西部」、副詞として「南西へ」の用法もある。
:::example
- στα νοτιοδυτικά της χώρας
- 国の南西部に
- in the southwest of the country :::
:::example
- Κατευθύνεται νοτιοδυτικά.
- 南西へ向かっている。
- Heading southwest. :::
ギリシャ語:νότιος
読み方:ノティオス・ノーティオス
ラテン文字:notios
古代ギリシャ語の νότιος(南の、湿った)に由来。名詞 νότος(南、南風)に形容詞語尾 -ιος が付いた派生形。南風が湿った空気を運ぶことから、古代には「湿った」の意味も担ったが、現代ギリシャ語では方角の「南の」で使う。
類義語に μεσημβρινός。μεσημβρία(正午)からの派生で、北半球では正午に太陽が南に来るところから「正午の」が「南の」へと意味が広がった。天文・地理では μεσημβρινός κύκλος(子午線)のような用法もある。
天文の合成語に Νότιος Σταυρός(Σταυρός του Νότου とも、みなみじゅうじ座), Νότιο Σέλας(南極光), Νότιος Δεσμός της Σελήνης(月の軌道の降交点、ドラゴンテイル)。
文語では νότιος が男性名詞としても使われ、南風の意。日常は νοτιάς、地中海の航海語では όστρια。中性複数形 νότια は副詞「南へ」や名詞「南部」にも使う。対義語は βόρειος(北の)。
ギリシャ語:νότος
読み方:ノトス・ノートス
ラテン文字:notos
古代ギリシャ語の νότος(南, 南風)を継承。古代ギリシャ語より前の語源は定かでない。先頭を大文字にした Νότος は古代神話で擬人化された南風の神の名でもある。
同じ νότος の語族に νότιος(南の, 南からの), νοτιάς(南風), νοτιάδα(南風の雨), 合成語 νοτιοανατολικός(南東の), νοτιοδυτικός(南西の), νοτιοευρωπαϊκός(南欧の)。νότιος の中性複数形 νότια は副詞で「南へ, 南に」, 方向ラベルで「南方向」を指す。
対義語は βορράς(北)。南風の名としては νοτιάς が一般的で, 地中海・航海語寄りに όστρια もある。
ギリシャ語:νους
読み方:ヌス
ラテン文字:nous
古代ギリシャ語の νόος(心, 知性)から短縮された νοῦς を継承。前ソクラテス期の哲学で中心概念となり, アナクサゴラスは νοῦς を宇宙を統べる理性として位置づけた。現代の「精神, 心, 理性」の用法はフランス語 esprit, 英語 mind, ドイツ語 Geist からの意味借用で輪郭が整った。
同じ νοῦς の語族に νόηση(知覚, 思考), νοητικός(知的な), νοημοσύνη(知能), νοήμων(知性ある), διάνοια(思考能力, 知性), 合成語 εννοώ(意味する, 理解する), κατανοώ(把握する), παρανοώ(誤解する), δυσνόητος(理解しづらい)。
思考する主体を言うのは νους, 感情の「心」は καρδιά(心臓, 心), 魂や生命の「心」は ψυχή(魂), πνεύμα(霊)が担い, それぞれ英語の psyche, spirit に対応する。頭の働きを気軽に言うときは μυαλό(頭, 頭脳)が一般的。英語 noetic, noesis もこの νοῦς の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:νούφαρο
読み方:ヌファロ・ヌーファロ
ラテン文字:noufaro
中世ギリシャ語 νενούφαρο(ν) から、語頭の ν- の脱落で短くなった形。元をたどるとサンスクリット नीलोत्पल(nīlotpala、青い蓮)で、青を表す nīla と「蓮」を表す utpala からなる語。これがペルシア語 nīlōpal を経てアラビア語 نينوفر(nīnūfar)になり、中世ギリシャ語に入った。同じアラビア語源がラテン語 nenuphar に受け継がれ、英語 nenuphar、フランス語 nénuphar、スペイン語 nenúfar もこの流れ。現代ギリシャ語には植物学の正式な名として νυμφαία もあり、こちらは古代ギリシャ語 νύμφη(ニンフ)から来た語で、ラテン語 Nymphaea を経由した別系統。
ギリシャ語:ντομάτα
読み方:ドマタ・ドマータ
ラテン文字:domata
ナワトル語の tomātl(トマト)がスペイン語 tomate、フランス語 tomate を経てギリシャ語に入った外来借用で、女性名詞を作る -α を付けて 1818 年ごろから使われるようになった。書き言葉では τομάτα という形も併用される。英語 tomato も同じ Nahuatl tomātl からスペイン語 tomate 経由で入った借用で、ギリシャ語 ντομάτα と語源を共有する。
ντομάτα は食用果実としてのトマトをふつうに指す形として広く使う。派生に ντοματάκι(ミニトマト、小さなトマト。指小形), ντοματίνι(ミニトマト。指小形), ντοματούλα(小さなトマト、かわいらしいトマト), ντοματιά(トマトの株、トマトの木)。合成語に ντοματοσαλάτα(トマトサラダ), ντοματοσάλτσα(トマトソース), ντοματόσουπα(トマトスープ), ντοματοχυμός(トマトジュース), ντοματόζουμο(トマトジュース), ντοματοπελτές(トマトペースト)。
ギリシャ語:ντροπαλός
読み方:ドゥロパロス・ドゥロパロース
ラテン文字:ntropalos
ντροπή(恥、気後れ)からできた形容詞。中世ギリシャ語 ἐντροπαλός にさかのぼり、語頭の無強勢 ε- が脱落している。ντροπή は古代ギリシャ語 ἐντροπή(内へ向かうこと、顧慮、恥)からの語で、ἐν-(中へ)と τρέπω(向きを変える)からできた ἐντρέπω(内へ向ける、顧みる、恥じる)に名詞化の -ή が付いた形。「他人の目の前で身を引く」感覚が「恥ずかしさ」となり、さらに性格の形容として定着した。同じ源の ἐντροπή から英語の熱力学用語 entropy(エントロピー)も生まれた。関連語に動詞 ντρέπομαι(恥じる、恥ずかしがる)があり、派生には名詞 ντροπαλότητα(内気さ)、副詞 ντροπαλά(恥ずかしそうに)がある。
ギリシャ語:ντροπή
読み方:ドゥロピ・ドゥロピー
ラテン文字:dropi
古代ギリシャ語の ἐντροπή(内へ向くこと、尊敬)が起源。ἐν(内へ)と τροπή(向きを変えること)からなり、もとは他者への敬意を含む語だったが、やがて「恥じらい」の意味が中心になった。中世ギリシャ語で語頭の母音が消失し、現在の ντροπή の形になった。
英語の entropy(エントロピー)も同じ ἐντροπή に由来する。ただし19世紀に熱力学の用語として「内的変化」の意味で再導入されたもので、「恥」の意味とは無関係。
ντροπή には類義語として αιδώς(畏敬の念を伴う恥じらい)があるが、ντροπή のほうが日常的な語で、社会的不名誉や決まりの悪さにも使う。
主な意味は「羞恥心」。自分の過ちを恥じる気持ちから、屈辱、汚名、恥さらしの対象、そして人目をはばかる内気さまで、さまざまな「恥」の感覚を表す。
ギリシャ語:νυφίτσα
読み方:ニフィツァ・ニフィーツァ
ラテン文字:nyfitsa
中世ギリシャ語 νυφίτσα を継承。
古代ギリシャ語 νύμφη(花嫁、若い女性、ニンフ)に指小辞 -ίτσα が付いた νυμφίτσα(小さな花嫁、娘)がもとの形で、中世に μ が落ちて νυφίτσα になった。
細身でしなやかに動くこの小動物に若い娘の優雅さを重ねた民俗的な命名で、ヨーロッパの他言語でもイタリア語 donnola(小さな貴婦人)のように「花嫁」「娘」のイメージでイタチを呼ぶ例が並行して見られる。
共通の語源を持つ関連語に νύφη(花嫁、嫁)、νυφικό(婚礼衣装)などがある。
ギリシャ語:νύχτα
読み方:ニフタ・ニーフタ
ラテン文字:nychta
印欧祖語で「夜」を表す語根にさかのぼり, 古代ギリシャ語の νύξ(夜。属格 νυκτός, 対格 νύκτα)を継承。中世ギリシャ語で対格 τὴν νύκτα が主格として再分析され, 子音連続 [kt] が [xt] に変化して今の νύχτα の形に落ち着いた。ラテン語 nox(夜), 英語 night, ドイツ語 Nacht, フランス語 nuit と語根を共有する。
類義語に βράδυ(晩。日没から就寝までの時間帯を指し、夜全体よりも前半に重心がある), βραδιά(一晩。特定の晩の出来事や雰囲気に焦点を当てた言い方)。νύχτα は日没から日の出までの暗い時間全体を指すふつうの形として広く使い、より深い時間帯のニュアンスを含む。派生に νυχτώνω(日が暮れる), νυχτιά(一晩、夜分)。関連語に νυχτερινός(夜の、夜間の。古代 νυκτερινός 由来), νυχτερίδα(コウモリ。古代 νυκτερίς 由来), νυχτερεύω(夜更かしする、徹夜する)。合成語に μεσάνυχτα(真夜中), καληνύχτα(おやすみ), ολονύχτιος(一晩中の), ημερονύχτιο(24時間、昼夜), νυχτοπούλι(夜行性の鳥、夜型の人), νυχτοκάματο(夜なべ仕事、夜勤手当), νυχτοφύλακας(夜警), ξενύχτι(夜更かし)。
ギリシャ語:νυχτερινός
読み方:ニフテリノス・ニフテリノース
ラテン文字:nychterinos
Ξ
ギリシャ語:ξανθός
読み方:クサンソス・クサンソース・クサントス・クサントース
ラテン文字:xanthos
古代ギリシャ語の ξανθός(金色の、ブロンドの)に由来。χρυσαφένιος(黄金色の)が金の輝きや光沢を含むのに対し、ξανθός は色調としての金色やブロンドを表す。
ギリシャ語:ξαφνικός
読み方:クサフニコス・クサフニコース
ラテン文字:xafnikos
中世ギリシャ語の ξαφνικός を継承。古代ギリシャ語の副詞 ἐξαίφνης(突然に)が έξαφνος を経て、形容詞として定着した。ἐξαίφνης は ἐξ(〜から)と ἄφνω(不意に)からできた副詞で、前ぶれなく起こる動きを表す。副詞 ξαφνικά(突然に)や中性名詞 ξαφνικό(突然の出来事)も並んで使われる。
派生語・関連語に ξαφνικά(突然に、副詞)、ξαφνικό(突然の出来事)、ξάφνου(突然に、やや古風)、αιφνίδιος(突然の、不意の、文語)、έξαφνα(突然に、古風)。
ギリシャ語:ξενοδοχείο
読み方:クセノドヒオ・クセノドヒーオ
ラテン文字:xenodocheio
古代ギリシャ語の ξενοδοχεῖον(旅人を受け入れる場所)から。現代ギリシャ語では、旅行者が泊まるホテルや宿泊施設を指す。
αεροδρόμιο(空港) や σταθμός(駅、停留所、ステーション) が移動の出発点や到着点であるのに対して、ξενοδοχείο は滞在の場を言う。
意味はホテル。大きなホテルにも小さな宿にも使える。
ギリシャ語:ξένος
読み方:クセノス・クセーノス
ラテン文字:xenos
古代ギリシャ語の ξένος(よその人、客人、外国の)を継承。現代の「外国の」「外国人」の使い方は、フランス語 étranger、英語 foreigner からの意味借用で広がった。
派生語に ξενίζω(もてなす、変だと感じる)、ξενικός(外来の)、ξενιτιά(異郷、異国暮らし)。合成語に ξενοδοχείο(ホテル、直訳「客を受け入れる所」)、ξενοδόχος(ホテル経営者)、ξεναγός(旅行ガイド)、φιλοξενία(ホスピタリティ)、φιλόξενος(もてなし好きの)、ξενοφοβία(外国人嫌悪)。
旅人をもてなす ξενία は聖なる義務とされ、Ζεὺς Ξένιος(客人の守護神ゼウス)がその守護者だった。英語 xenophobia(外国人嫌悪)、xenogenesis(異種生殖)、化学元素の xenon(キセノン、「よそ者」の意でギリシャ語から造られた名)は同じ語源につながる。
ギリシャ語:ξενύχτι
読み方:クセニフティ・クセニーフティ
ラテン文字:xenychti
ギリシャ語:ξηρασία
読み方:クシラシア・クシラシーア
ラテン文字:xirasia
古代ギリシャ語の ξηρασία(乾き、乾燥状態)を継承。形容詞 ξηρός(乾いた)から動詞 ξηραίνω(乾かす、乾く)を経て作られた名詞。現代の「干ばつ」の意味はフランス語 sécheresse からの意味借用で広がった。
派生語に ξηρός(乾いた), ξηραίνω(乾かす), ξηρότητα(乾燥度、素っ気なさ)。近い語に ανυδρία, αβροχιά, ανομβρία(どれも「雨・水の不足」)。反対は υγρασία(湿気、湿度)。ギリシャ語の ξηρός は英語の xero- にも入って、xerography(乾式複写、「Xerox」の語源), xerophyte(乾生植物)などを作る。
ギリシャ語:ξηρός
読み方:クシロス・クシロース
ラテン文字:xiros
古代ギリシャ語の ξηρός(乾いた)に由来。中世以降の音変化を経た ξερός が一般の形として使われ、ξηρός は古い綴りのまま並んで残った。辛口ワインの ξηρός οίνος、ドライアイスの ξηρός πάγος、乾電池の ξηρό στοιχείο など現代ギリシャ語の定型表現の多くは、フランス語 sec / sèche の対応形に倣って加わった。
派生語に ξηρασία(乾燥、干ばつ)、ξηραίνω(乾燥させる)、ξηρότητα(乾燥度)。合成語に ξηροθερμικός(高温乾燥の)、ξηρόμυαλος(ドライな頭脳の、理屈っぽい)。対義語は υγρός(湿った、液体の)。
英語 xerophyte(乾生植物)、xerostomia(口腔乾燥症)、xerography(乾式電子写真、複写機 Xerox の由来)は古代ギリシャ語 ξηρός をもとにした学術造語で、同じ語源につながる。
ギリシャ語:ξινό
読み方:クシノ・クシノー
ラテン文字:xino
形容詞 ξινός(酸っぱい、すえた、気難しい)の中性単数形が名詞として用いられるようになったもの。
ξινό は、味覚では「酸味」を表す名詞として使われる。味を対比して言うときには、το γλυκό(甘味)、το πικρό(苦味)、το ξινό(酸味)、το αλμυρό(塩味)が並ぶ。
料理や製菓の文脈では、ξινό が κιτρικό οξύ(クエン酸)をくだけて指すことがある。ただし、物質名としての正式な言い方は κιτρικό οξύ(クエン酸)。
主な意味は味覚としての酸味や、口に残るすっぱい後味。そこから、料理まわりの口語ではクエン酸を指すこともある。
ギリシャ語:ξινός
読み方:クシノス・クシノース
ラテン文字:xinos
古代ギリシャ語 ὄξινος(酸っぱい、酢のような)から。中世ギリシャ語では語頭の母音が落ちて ξινός(酸っぱい)となり、そのまま現代ギリシャ語に受け継がれた。
ξινός は味を表す基本語のひとつで、γλυκός(甘い)、πικρός(苦い)、αλμυρός(塩辛い、しょっぱい)と並ぶ。複合語の γλυκόξινος(甘酸っぱい)にもこの語が入る。
ξινό(酸味、クエン酸)は中性形の名詞用法で、甘味や苦味と対比して味そのものを言う形。料理や製菓では、口語で κιτρικό οξύ(クエン酸)を指すこともある。指小形の ξινούτσικος(やや酸っぱい)は υπόξινος(やや酸っぱい)に近い意味で使われる。複数形の τα ξινά(柑橘類)は、レモンやオレンジのような酸味の強い果実の総称になる。
主な意味は、酢やレモンのような酸っぱい味。そこから、傷んで酸っぱくなった食品や飲み物、さらに比喩で不機嫌そうな顔つきや気難しい人柄も表す。
ギリシャ語:ξιφίας
読み方:クシフィアス・クシフィーアス
ラテン文字:xifias
古代ギリシャ語の ξιφίας(メカジキ)を継承。ξίφος(剣)に「〜のような, 〜を持つ」を表す接尾辞 -ίας を付けた形で, もとは「剣を持つもの」「剣のようなもの」。長く突き出た吻を剣に見立てた魚名。中世ギリシャ語では ξιφιός の形も使われ, 現代でも並行して残る。
同じ ξίφος の語族に ξιφήρης(抜き身の剣を持った), ξιφομαχία(剣闘), ξιφολόγχη(銃剣), ξιφίδιο(短剣)。
ふつう「魚」を言うのは ψάρι(魚)で, ξιφίας はその中の種名。学術・文語的には ιχθύς(魚)も並ぶ。学名 Xiphias gladius は古代ギリシャ語 ξιφίας にラテン語 gladius(剣)を足したもので, ギリシャ・ラテン両系統から「剣の魚」を二重に言っている。英語 xiphoid(剣状の), xiphoid process(剣状突起, 胸骨下端の骨)も同じ ξίφος の系統を引く。
ギリシャ語:ξόρκι
読み方:クソルキ・クソールキ
ラテン文字:xorki
お祓いをする、追い払うを意味する動詞 ξορκίζω から生まれた名詞で、ξορκίζω 自体は古代ギリシャ語の ἐξορκίζω(誓わせる、追い払う)に由来する。もとは悪霊や災いを退けるための儀式的な言葉を指していたが、現代ギリシャ語では広く「呪文」として使われる。英語の exorcism(悪魔祓い)と語源を共有する。
派生語の εξορκισμός は、悪霊を祓う儀式としてのエクソシズムを指す。
επωδή も「呪文」を意味するが、文語的・学術的な響きがある。ξόρκι は日常的に使われ、呪文を指す語としてはもっとも一般的。
悪霊や災いを追い払うための呪文。現代ギリシャ語では広義に呪文やまじないを指す。
ギリシャ語:ξυλάνθρακας
読み方:クシランスラカス・クシラーンスラカス・クシラントゥラカス・クシラーントゥラカス
ラテン文字:xylanthrakas
古代ギリシャ語の ξύλον(木)と ἄνθραξ(炭、石炭)を組み合わせて作られた学術借用で、フランス語 charbon de bois(木炭)の意味を写した翻訳借用。アカデミー辞書は「επίσημο(正式)」と扱い、化学や工業の文脈によく出る。
類義語に ξυλοκάρβουνο(木炭、炭。話し言葉で日常的に使う)。関連語に άνθρακας(炭素、炭疽、炭疽病)。英語の anthracite(無煙炭)や anthrax(炭疽)も、この ἄνθραξ を起源とする。
ギリシャ語:ξύλο
読み方:クシロ・クシーロ
ラテン文字:xylo
古代ギリシャ語の ξύλον(切られた木、棒、木材)から。古代から現代に至るまで、植物としての木そのものではなく、材料としての木材や、それで作られた棒を指す語として発達した。英語の xylophone の xylo- も、この ξύλον を語源としている。
木そのものは δέντρο(木、樹木)で言うことが多く、材木や木材工業の文脈では ξυλεία も使われる。接頭辞 ξυλο-(木製の、打撃の)は、ξυλουργός(大工)や ξυλοδαρμός(殴打)のように、多くの語を作る。
:::vocab
- τίμιο ξύλο / άγιο ξύλο(聖なる木、十字架の断片)
- σομφό ξύλο(辺材、白太) :::
主な意味は木材。樹木の幹や枝の硬い組織や、それを材料にしたものを指す。比喩では殴打やお仕置き、寒さなどで体が硬くなった状態にも使われる。複数形 ξύλα は、燃料としての薪を指すことも多い。
Ο
ギリシャ語:οδηγός
読み方:オディゴス・オディゴース
ラテン文字:odigos
古代ギリシャ語の ὁδός(道)と ἄγω(導く)からなる ὁδηγός(導く人, 案内人)を継承。現代の「運転手, ガイド」の用法はフランス語 conducteur, guide, 英語 driver からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὁδηγός の語族に οδηγώ(運転する, 導く), οδήγηση(運転, 操縦), οδηγία(指示, 指令), οδηγίες(取扱説明書, マニュアル), 合成語 αμαξοδηγός(馬車の御者), μηχανοδηγός(機関士), συνοδηγός(助手席の同乗者), εργοδηγός(現場監督)。
ギリシャ語:οδύνη
読み方:オディニ・オディーニ
ラテン文字:odyni
古代ギリシャ語の ὀδύνη(痛み、苦しみ)を継承。「噛む、刺す」を表す印欧祖語の語根から続き、痛みが体を食いさいなむ感覚をつかんだ名詞と言われる。同族に ὀδύρομαι(嘆く)や ὠδίς(産みの苦しみ)があり、他言語では古アイルランド語 idu(産みの苦しみ)やリトアニア語 úodas(蚊、刺す虫)などが仲間。派生に οδυνηρός(苦痛の、痛みをもたらす)、合成要素 -ώδυνος を含む語に ανώδυνος(痛みのない)、επώδυνος(苦しい、苦痛を伴う)がある。英語の医学用語 -odynia(coccydynia「尾骨痛」、pleurodynia「胸膜痛」など)も同じ語幹から。類義語 πόνος(痛み、苦痛)より重く、文学や法律の文脈でよく使う。法律では ψυχική οδύνη が精神的損害を指す。同じく重い語感の άλγος(痛み、苦悩)と近い。
ギリシャ語:οθόνη
読み方:オソニ・オソーニ・オトニ・オトーニ
ラテン文字:othoni
古代ギリシャ語の ὀθόνη(麻布、帆、幕)を継承。現代の「画面、スクリーン」の意味は、英語 screen、フランス語 écran からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:οικισμός
読み方:イキズモス・イキズモース
ラテン文字:oikismos
古代ギリシャ語の動詞 οἰκίζω(住まわせる, 入植させる)から派生した οἰκισμός(入植, 集落)を継承。οἰκίζω は οἶκος(家, 家屋)から作られた動詞。
同じ οἶκος の語族に οικογένεια(家族), οικία(住居, 住宅), οικιστικός(居住の, 都市計画の), οικιστής(入植者, 居住者), 合成語 συνοικισμός(合併集落), συνοικία(地区, 近隣), παροικία(在外ギリシャ人社会), κατοικία(住居)。関連動詞 οικίζω(住まわせる), κατοικώ(住む, 居住する)。
英語 economy(経済), ecology(生態学), ecumenical(全地球規模の)もラテン語を経由してこの οἶκος の語族に連なる。
ギリシャ語:οικογένεια
読み方:イコイェニア・イコイェーニア・イコゲニア・イコゲーニア
ラテン文字:oikogeneia
コイネーの οἰκογενής(家で生まれた奴隷。οἶκος「家」+ γένος「生まれ」の形容詞)に抽象名詞化の接尾辞 -εια が付いた οἰκογένεια に由来。古代から中世にかけては「家で生まれた奴隷」を指し、購入奴隷と区別する証明書などに用いられた。
現代の「家族」の意はイタリア語 famiglia / フランス語 famille からの意味借用で、生物分類の「科」の意はラテン語 familia の意味借用。英語 economy(ギリシャ語 οικονομία「家の管理」経由)や ecology の eco- も同じ οἶκος を起源とする。
類義語に φαμίλια(家族、くだけた言い方), νοικοκυριό(世帯), οίκος(家名、王家), γένος(一族、門地)。派生に οικογενειακός(家族の、家庭的な), οικογενειάρχης(一家の長), υποοικογένεια(亜科), ενδοοικογενειακός(家庭内の), οικογενειακώς(家族ぐるみで)。
ギリシャ語:ολοκίτρινος
読み方:オロキトゥリノス・オロキートゥリノス
ラテン文字:olokitrinos
κίτρινος(黄色い、黄色の)から、全体性を表す接頭辞 ολο-(まるごと、全面的に)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、全体が黄色一色に見えることを言う。
κιτρινωπός(黄色がかった、黄みを帯びた) が「やや黄色がかった」のような含みを持ちやすいのに対して、ολοκίτρινος ははっきり黄色で、全体がその色に見えることを言いやすい。
意味は全体が黄色い、真っ黄色な。花、壁、顔色、衣服などが一面黄色いときに使える。
ギリシャ語:ολοκόκκινος
読み方:オロコキノス・オロコーキノス
ラテン文字:olokokkinos
κόκκινος(赤い、赤色の) から、全体性を表す接頭辞 ολο-(まるごと、全面的に)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、全体が赤一色に見えることを言う。
κατακόκκινος(真っ赤な、真紅の) が赤さの鮮やかさを押し出しやすいのに対して、ολοκόκκινος は「どこも赤い」という全体性を言う。
意味は全体が赤い、真っ赤な。顔、服、果実、風景などが一面赤いときに使える。
ギリシャ語:ολόλευκος
読み方:オロレフコス・オローレフコス
ラテン文字:ololefkos
λευκός(白い、白色の、淡い、潔白な) から、全体性を表す接頭辞 ολο-(まるごと、全面的に)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、全体が白一色に見えることを言う。
κατάλευκος(真っ白な、純白の) が白さの強度を押し出しやすいのに対して、ολόλευκος は「どこもかしこも白い」という全体性を言う。
意味は全体が白い、真っ白な。雪景色や衣服、建物などが一面に白いときに使いやすい。
ギリシャ語:ολόμαυρος
読み方:オロマヴロス・オローマヴロス
ラテン文字:olomavros
μαύρος(黒い、黒色の、非常に濃い、暗い) から、全体性を表す接頭辞 ολο-(まるごと、全面的に)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、全体が黒一色に見えることを言う。
κατάμαυρος(真っ黒な、漆黒の) が黒さの強さを押し出しやすいのに対して、ολόμαυρος は「全体が黒で覆われている」というまとまりを言う。
意味は全体が黒い、真っ黒な。衣服、髪、雲、煙などが一面黒いときに使いやすい。
ギリシャ語:ολοπράσινος
読み方:オロプラシノス・オロプラーシノス
ラテン文字:oloprasinos
πράσινος(緑の、緑色の) に全体性を表す接頭辞が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、全体が緑で覆われていること、緑一色に見えることを言う。
καταπράσινος(真っ緑な、青々と緑の) が色の強さや鮮やかさを前に出しやすいのに対して、ολοπράσινος は「どこを見ても緑」という全体性を言う。
意味は全体が緑の、緑一色の。山や畑、服などが一面に緑であることに使える。
ギリシャ語:ομάδα
読み方:オマダ・オマーダ
ラテン文字:omada
古代ギリシャ語 ὁμάς(群れ、集まり)の対格 ὁμάδα が受け継がれて、現代ギリシャ語の ομάδα の形になった。ὁμάς は ὁμός(同じ、共通の)の系列に属し、もとは同じ場所に集まる人や動物の群れを指した。
現代のスポーツチームや作業班、グループといった用法は、フランス語 groupe、équipe からの意味借用で近代に整えられた。
派生語に ομαδικός(団体の、集団の)、ομαδικά(集団で)、ομαδοποιώ(グループ化する)、ομαδάρχης(班長、チームリーダー)などがある。
ギリシャ語:ομιλία
読み方:オミリア・オミリーア
ラテン文字:omilia
副詞 ὁμοῦ(共に)に -ιλος が付いた名詞 ὅμιλος(集団, 群れ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 ὁμιλία(交際, 付き合い)に由来。のちに「講話, 語り」の意味が加わり, 現代の「話しことば, スピーチ」の用法は英語 speech やフランス語 parole からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὁμιλία の語族に ομιλώ(話す, 口語形は μιλάω), ομιλητής(話し手, 演説者), ομιλητικός(話し好きの), 合成語 συνομιλία(会話), συνομιλητής(対話者), συνομιλώ(会話する)。
関連語の διάλεκτος(方言)は地域ごとの話し方, φράση(句, フレーズ)は個々の言い回し, λόγος(言葉, 話, 理性)は言葉そのものの単位。英語 homily(説教, 講話)もラテン語 homilia を経て同じ語源。
ギリシャ語:ομίχλη
読み方:オミフリ・オミーフリ
ラテン文字:omichli
古代ギリシャ語 ὀμίχλη(霧、もや)を継承。
雲や霧を表す印欧祖語の語根にさかのぼる古い語で、サンスクリット megha(雲)、古スラヴ語 mьgla(霧)も同じ語根の系列に連なる。視界や頭の中のぼやけを言う比喩的な用法も古くから自然に見られた。
派生語に ομιχλώδης(霧の多い、ぼんやりした)、ομιχλομέτρης(視程計)などがある。
ギリシャ語:ομορφιά
読み方:オモルフィア・オモルフィアー
ラテン文字:omorfia
古代ギリシャ語の εὐμορφία(形の良さ)が起源。εὐ-(良い)と μορφή(形)から成る語で、中世ギリシャ語では εμορφία(形の良さ)となった。そこから、形容詞 όμορφος(美しい)の影響で語頭の e が o へ変わり、ομορφία(形の良さ)を経て、母音の連続を避ける音節短縮によって現代ギリシャ語の ομορφιά に至った。
この過程で [vm] が [mm] へと同化し、さらに単一の [m] へと簡略化された。
英語で使われる接頭辞 eu-(良い)や morph-(形)も、ομορφιά のもとになったギリシャ語の要素と同じ語源から来ている。
類義語には、より文語的な ωραιότητα(美しさ、麗しさ)がある。対義語は ασχήμια(醜さ)で、肉体的なものについては δυσμορφία(異形、醜形)が用いられる。
主な意味は「美しさ」。視覚的な美しさだけでなく、内面的な美徳や、風景の素晴らしさを指すのにも使われる。複数形 ομορφιές は、美しさによって際立っている場所や風景も表す。
ギリシャ語:όνειρο
読み方:オニロ・オーニロ
ラテン文字:oneiro
古代ギリシャ語の ὄνειρον(夢)から。古い時代から眠っているあいだに見る夢を表す語として使われ続け、現代ギリシャ語でもその中心的な意味を保っている。
英語の oneiric(夢のような)や oneirology(夢の研究)に見える oneir- / oneiro- も、この古代ギリシャ語に由来する。
ύπνος(眠り、睡眠)が夢を生む状態そのものを表すのに対して、όνειρο はその間に現れる内容を指す。悪夢として強い不快感や圧迫感を前面に出すときは εφιάλτης(悪夢、悪夢のようなもの)が自然に立つ。
派生語には、現実離れした考え方をする ονειροπολώ(夢想する)、そうした人を言う ονειροπόλος(夢見がちな)、夢占いの本を表す ονειροκρίτης(夢判断の本)がある。語の中心には、眠りの中の映像から、そこからふくらむ想像や願いへ広がる流れがある。
主な意味は「夢」。そこから、心に思い描く理想や願望、さらに「夢のようにすばらしい」「現実離れしている」と感じる物事にも使われる。
ギリシャ語:όνομα
読み方:オノマ・オーノマ
ラテン文字:onoma
古代ギリシャ語の ὄνομα(名前)を継承。印欧祖語で「名前」を表す語根に続き、ラテン語 nōmen, サンスクリット語 nā́man, 英語 name, アルメニア語 anun などと同じ語源。語頭の ο- を外した -νομα に、ラテン nōmen, 英語 name に通じる n…m の骨格が見える。
英語の接尾辞 -onym(synonym 同義語, antonym 反意語, homonym 同音異義語, pseudonym 偽名)は ὄνομα から。onomatopoeia(擬声語)も ὄνομα + ποιέω(作る)からなる合成語 ὀνοματοποιία に由来し、「名を作ること」の意。
動詞は ονομάζω(名づける、呼ぶ), μετονομάζω(改名する)。形容詞に ονομαστικός(名の、主格の), ονομαστός(名高い), ανώνυμος(無名の)。合成語に ονοματεπώνυμο(氏名), ονοματοδοσία(命名)。姓を指すのは επώνυμο。
ギリシャ語:οπάλιο
読み方:オパリョ・オパーリョ
ラテン文字:opalio
サンスクリット語の upala(宝石)を語源とする説があり、古代ギリシャ語の ὀπάλλιος(オパリオス)を経て、現代ギリシャ語では綴りが簡略化され οπάλιο となった。英語の opal と語源を共有する。
派生語に οπαλίνα(乳白色のガラス、オパリンガラス)がある。
現代ギリシャ語では中性名詞 οπάλιο のほかに男性名詞 οπάλιος の形もある。中性形が基本形とされるが、宝石店や鉱物情報サイトでは男性形もよく使われる。鉱物名には男性形(-ος)と中性形(-ο)の両方が並存するものが少なくなく、意味の違いはない。
非晶質のシリカからなる鉱物で、遊色効果を持つ貴石として知られる。
ギリシャ語:όπλο
読み方:オプロ・オープロ
ラテン文字:oplo
古代ギリシャ語 ὅπλον(道具、装備、武器)に由来する語で、現代ギリシャ語の όπλο になった。古くは道具や装備を広く指す語だったが、複数形 ὅπλα が武装・武具を表すところから武器の意味が前に出た。核兵器や化学兵器、生物兵器などの複合語的な使い方はフランス語 arme の影響で近代に整えられた。
派生語・関連語に οπλισμός(武装、軍備)、οπλίζω(武装する)、οπλίτης(重装歩兵)、άοπλος(武器を持たない)、οπλοστάσιο(武器庫)。関連語に στρατιώτης(兵士、軍人)、επίθεση(攻撃、襲撃)。
ギリシャ語:όργανο
読み方:オルガノ・オールガノ
ラテン文字:organo
古代ギリシャ語 ὄργανον(道具、器具)を継承。ὄργανον は「働く、作る」を表す印欧祖語の語根(ἔργον「仕事」と同根)からなる「働きをする道具」を指し、古代から楽器、器官、機関など広い対象に使われてきた。現代の楽器の意味はイタリア語 organo、身体の器官や国家機関の意味はフランス語 organe の影響で近代に整えられた。
派生語・関連語に οργανικός(有機の、器官の)、οργανισμός(生物、組織、機関)、οργάνωση(組織化、組織)、οργανώνω(組織する)、ανόργανος(無機の)。関連語に πιάνο(ピアノ)。
ギリシャ語:οργή
読み方:オルイ・オルイー・オルギ・オルギー
ラテン文字:orgi
印欧祖語で「働く, 動く」を表す語根の子孫で, ἔργον(仕事)や ἐνέργεια(働くこと)と同じ語族にあたる古代ギリシャ語の女性名詞 ὀργή(気質, 衝動, 怒り)を継承。現代では「激しい怒り」に絞り込まれた。
英語 orgasm は ὀργή から派生した動詞 ὀργάω の名詞形 ὀργασμός に由来。orgy も同じ語族の ὄργια(ディオニュソスの秘儀)から。同じ語根に英語 energy, organ, work も連なる。
類義語に θυμός, 文語で μήνις(神々の怒り)。派生語に οργίζομαι(怒る), οργισμένος(怒った)。
ギリシャ語:ορείχαλκος
読み方:オリハルコス・オリーハルコス
ラテン文字:oreichalkos
古代ギリシャ語の ὀρείχαλκος(黄銅、山の銅)に由来。もとはアッカド語 ēru/wēru(銅)と χαλκός(銅)からなる合成語で、両要素とも「銅」。ギリシャ語話者は後に第1要素を ὄρος(山)の与格 ὄρει- と結びつけ直し、「山の銅」の語として定着した。
プラトンの『クリティアス』では、ὀρείχαλκος がアトランティスの宝物として金銀に次ぐ貴重な金属と語られる。ラテン語に入った orichalcum はさらに aurum(金)と結びつけ直されて「金色の神秘の合金」として伝承に残り、スペイン語 oricalco, フランス語 orichalque, イタリア語 oricalco もここから。
χαλκός が銅や青銅(銅・錫)を広く言うのに対し、ορείχαλκος は銅・亜鉛の真鍮に限定して使う。別合金のブロンズは μπρούντζος。派生語 ορειχάλκινος(真鍮製の), ορειχαλκουργός(真鍮職人), ορειχαλκώνω(真鍮メッキをする)。
ギリシャ語:ορίζοντας
読み方:オリゾダス・オリーゾダス・オリゾンダス・オリーゾンダス
ラテン文字:orizontas
古代ギリシャ語の ὅρος(境界)から派生した動詞 ὁρίζω(境界を定める)の現在分詞 ὁρίζων(境界を定めるもの)が起源。もとは ὁρίζων κύκλος(視界を区切る円)という天文学的な表現の一部で、天球と地表が接して見える仮想の円を指していた。この分詞が名詞化して「地平線」そのものを表すようになり、現代ギリシャ語の ορίζοντας に至る。
ラテン語に horizon として借用され、英語の horizon や horizontal(水平の)の語源にもなっている。
ορίζοντας γεγονότων(事象の地平線)は、ブラックホールを囲む仮想の境界で、光さえも脱出できない領域を指す物理学用語。χρονικός ορίζοντας(タイムホライズン)は、目標達成までに設定する期間のことで、βραχυπρόθεσμος(短期的)や μακροπρόθεσμος(長期的)と組み合わせて使う。υδροφόρος ορίζοντας(帯水層)は、地下水を含む地層を指す。
主な意味は「地平線」「水平線」で、観察者から見た空と大地や海面の境界線を指す。ここから、精神的な「視野」や「知見」、将来の「展望」や「見通し」にも使われる。天文学では天球上の基準面として、地質学では地層中の特定の層を指す専門用語にもなっている。
ギリシャ語:όριο
読み方:オリオ・オーリオ
ラテン文字:orio
名詞 ὅρος(hóros, 境界石, 境界標)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 ὅριον(hórion, 境界)に由来。ὅρος はもともと土地の境を示す石や杭を指し, そこから「境界, 限界」を表す ὅριον が作られた。語源的には ὄρος(óros, 山)とも関連があり, 山が自然の境界として機能していたことと結びつく。
英語の horizon(地平線、水平線)は、ὅρος から派生した動詞 ὁρίζω(horízō、境を定める)の分詞 ὁρίζων(限界を定めるもの)を起源とし、視界の限界線を意味する。同様に aphorism(格言、箴言)も、ἀφορίζω(区切る、定義する)から派生した ἀφορισμός(定義)に由来し、考えを簡潔に区切り出したものという意味を持つ。
γραμμή(線)が物理的な線としての連続性を強調するのに対し、όριο はそれが区切りとして機能する面に焦点を当てる。
主な意味は「境界、限界」。国境や敷地の境界線のような空間的な区切りから、善悪の境界や社会階層の壁のような比喩的な区切り、人間の耐性や忍耐の限界、速度制限のような上限・下限、さらに数学における極限値や物理学の限界点にも用いられる。
ギリシャ語:όρνιθα
読み方:オルニサ・オールニサ・オルニタ・オールニタ
ラテン文字:ornitha
古代ギリシャ語の ὄρνις(鳥、雌鶏、属格 ὄρνιθος)を継承。古代の対格 ὄρνιθα が中世以降に主格として定着して今の形になった。
派生に ορνιθολογία(鳥類学), ορνιθοτροφείο(鶏舎、養鶏場)。英語 ornithology の ornitho- も同じ ὄρνις から。
日常で雌鶏を指すのは κότα、όρνιθα は生物学や文学、神話(Στυμφαλίδες όρνιθες=ステュムパーロスの鳥)などの場面に出る。
ギリシャ語:ορνίθι
読み方:オルニシ・オルニーシ・オルニティ・オルニーティ
ラテン文字:ornithi
古代ギリシャ語で「鳥」を意味する ὄρνις の指小辞 ὀρνίθιον に由来する。ὀρνίθιον はもともと「小鳥」や「家禽」を指し、中世を経て現代ギリシャ語の ορνίθι となり、「ニワトリ、鶏」を表すようになった。英語の ornithology(鳥類学)などの接頭辞 ornitho- も、共通の語源である古代ギリシャ語 ὄρνις に遡る。
ορνίθι は口語や方言、あるいは特定の料理の文脈で使われることが多い。最も一般的に「ニワトリ、鶏」を表す語は κοτόπουλο である。
主な意味は「ニワトリ、鶏」。
ギリシャ語:όρος
読み方:オロス・オーロス
ラテン文字:oros
古代ギリシャ語の ὅρος(境界、限界、定義)と ὄρος(山)に由来。
男性名詞のもとになった ὅρος は、もともと土地の境界を示す標石を指した。そこから論理学の「項」や「定義」の意味が生まれ、さらに「条件」「用語」へと広がった。同じ語源の動詞 ὁρίζω(境界を定める)は、英語 horizon(地平線)の語源でもある。
中性名詞 ὄρος は古代から一貫して「山」を意味する。現代ギリシャ語では文語的・地理学的な語で、日常的には βουνό が使われる。
現代ギリシャ語では気息記号が廃止され、どちらも όρος と書かれるが、文法上の性で区別が残り、男性名詞 ο όρος が条件や用語を、中性名詞 το όρος が山を表す。
ギリシャ語:ορυκτό
読み方:オリクト・オリクトー
ラテン文字:orykto
ορυκτό は、動詞 ορύσσω(掘る、採掘する)に由来する形容詞 ορυκτός(掘り出された)が名詞化した語である。現代ギリシャ語では、地中から採れる鉱物を指す一般名になっている。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が個々の石を言うのに対して、ορυκτό はより広い分類としての鉱物を言う。μέταλλο(金属) は鉱物の一部をなす分類として結びつく。
主な意味は「鉱物」。地質学や博物展示、採掘資源の説明で使われる。
ギリシャ語:ουρά
読み方:ウラ・ウラー
ラテン文字:oura
古代ギリシャ語の οὐρά(尻尾)を継承。印欧祖語で「尾、尻」を表す語根に続く。現代の「列、キュー」の意味は英語 tail, queue からの意味借用で整った。
英語 squirrel はラテン語 sciurus 経由で古代ギリシャ語 σκίουρος から。σκίουρος は σκιά(影)+ οὐρά の合成として「尾で影を作るもの」と伝統的に解釈されている。動物分類の Anura(無尾目、カエル類)は ἀ-(無)+ οὐρά の合成。
派生語に ουρίτσα(小さい尻尾), ουραγός(しんがり、最後尾を行く人)。合成に πιάνο με ουρά(グランドピアノ、尻尾のあるピアノ)。「順番待ちの列」には γραμμή も使う。
ギリシャ語:ουρανής
読み方:ウラニス・ウラニース
ラテン文字:ouranis
ουρανός(空)に、形容詞をつくる接尾辞 -ής が付いた語。古代ギリシャ語の οὐρανός(空)に由来し、英語の Uranus(天王星)や uranium(ウラン)と語源を共有する。「空のような」という意味合いから、明るい青色を表す形容詞になった。
同じ ουρανός から ουράνιος(天の、天空の)も派生しているが、こちらは色ではなく「天に属する」という意味で用いられる。
形容詞形には、語尾変化する ουρανής(-ιά, -ί)と、不変化の ουρανί の2種類がある。口語では不変化の ουρανί が名詞の性・数に関わらず広く使われる。中性形 ουρανί は名詞としても用いられ、空色そのものを指す。
明るい青色、いわゆるスカイブルーを表す形容詞として使われる。
ギリシャ語:ουράνιος
読み方:ウラニョス・ウラーニョス
ラテン文字:ouranios
古代ギリシャ語の οὐράνιος(空の, 天の)を継承。ουρανός(空, 天)に形容詞の語尾 -ιος を付けた形。
ουρανός の語族に Ουρανός(ウラノス神, 天王星), ουρανίσκος(口蓋, ベッドの天蓋), 合成語 επουράνιος(天上の, 至高の), ουρανοξύστης(摩天楼), ουράνιο τόξο(虹, もとは「天の弓」), ουράνιος θόλος(大空, 天蓋), ουράνια σφαίρα(天球)。
英語 Uranus(天王星)は神話のティタン神 Οὐρανός から新ラテン語を経て命名された。元素の uranium(ウラン)も Uranus にちなむ。
ギリシャ語:ουρανός
読み方:ウラノス・ウラノース
ラテン文字:ouranos
古代ギリシャ語の οὐρανός(空, 天)を継承。神話では「空」を擬人化したティタン神 Οὐρανός が同名で, クロノスの父にあたる。現代の「ベッドや乗り物の天蓋」の用法はフランス語 ciel de lit(ベッドの空)からの翻訳借用。惑星名 Ουρανός は神名 Οὐρανός から新ラテン語 Uranus を経て入った。
同じ οὐρανός の語族に ουράνιος(空の, 天の), ουρανίσκος(口蓋, 天蓋), επουράνιος(天上の), 合成語 ουρανοξύστης(摩天楼), ουράνιο τόξο(虹, もとは「天の弓」)。宗教文脈では複数形 ουρανοί が「天, 天国」の意味でよく出てくる。
英語 uranium(ウラン)は天王星 Uranus にちなむ元素名で, 神名 Οὐρανός に連なる。「天国」では παράδεισος(楽園, パラダイス, ペルシア語起源)も近く, ουρανοί が神の住まう天を広く指すのに対し, παράδεισος は祝福された者が至る楽園を指す。
ギリシャ語:οφθαλμός
読み方:オフサルモス・オフサルモース・オフタルモス・オフタルモース
ラテン文字:ofthalmos
古代ギリシャ語の ὀφθαλμός(眼)に由来。古代以前の由来は諸説あり、印欧祖語で「目」を表す語根に結びつける説もある。
日常の「目」は μάτι。οφθαλμός は医学や文語で使う。
派生語に οφθαλμία(眼炎), οφθαλμικός(眼の、眼科の)。合成語 οφθαλμίατρος(眼科医), οφθαλμολογία(眼科学), οφθαλμοσκόπιο(検眼鏡)。英語の医学用語 ophthalmology(眼科学), ophthalmic(眼科の)も ὀφθαλμός をもとにした造語。
ギリシャ語:όφις
読み方:オフィス・オーフィス
ラテン文字:ofis
印欧祖語で「ヘビ」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の ὄφις(ヘビ)に由来。サンスクリット語 áhi(ヘビ)と同じ語源。
ふつうのヘビは φίδι。όφις は文語的な語。隣の星座 Ὀφιοῦχος(へびつかい座)は「ヘビを持つ者」の意で、ὄφις + ἔχω(持つ)からなる合成名。
派生語・合成語に οφιόδηκτος(ヘビに噛まれた), οφιολάτρης(ヘビ崇拝者), οφιοειδής(ヘビ形の、波打つ)。英語の動物学用語 ophidian(ヘビ類の), ophiology(蛇類学)も ὄφις をもとにした造語。
ギリシャ語:οχιά
読み方:オヒャ・オヒャー
ラテン文字:ochia
古代ギリシャ語の ἔχις(エキス:蛇、クサリヘビ)に由来する。現代ギリシャ語では οχιά の形で定着した。
ἔχις からは ἐχίδνα(エキドナ:毒蛇)も派生した。ギリシャ神話に登場する半人半蛇の怪物エキドナの名はこの語から来ており、英語の echidna(ハリモグラ)もこの神話上の怪物にちなんで名づけられた。
一般に「ヘビ」を指す φίδι に対し、οχιά はクサリヘビ科の毒蛇に限定される。類義語に、より学術的・文語的な έχειδνα(エキドナ)や、地域的な呼び名の όχεντρα がある。
οχιά διμούτσουνη(両頭のクサリヘビ)は、二枚舌の人間、つまり表裏のある卑怯者を指す表現。
主な意味はクサリヘビ科の毒蛇。比喩的に、陰険で悪意に満ちた人物を指すのにも使われる。
Π
ギリシャ語:παγκάκι
読み方:パガキ・パガーキ・パンガキ・パンガーキ
ラテン文字:pagkaki
παγκάκι(ベンチ、腰掛け)は、πάγκος(台、長い台、カウンター)からできた指小形である。現代ギリシャ語では、公園や広場などに置かれた小さな腰掛け、ベンチを言う。
πλατεία(広場、広場空間) が場所そのものを言うのに対して、παγκάκι はその中に置かれた座るための設備を言う。
意味はベンチ、腰掛け。公園、通り、広場などにある簡単な座席を表す。
ギリシャ語:παγώνω
読み方:パゴノ・パゴーノ
ラテン文字:pagono
中世ギリシャ語 παγώνω を継承。
古代ギリシャ語 παγῶ(凍る、固まる)が中世に παγώνω の形に整えられて受け継がれた。πάγος(霜、氷、硬いもの)と同じく「固まる」を核とする語群で、もとは液体が冷えて氷に変わることを表した。
「恐怖や驚きで体が凍りつく、動けなくなる」という比喩的な用法は、フランス語 geler、glacer、英語 freeze からの意味借用で近代に広まった。
派生語に παγωνιά(厳しい寒さ、凍てつき)、παγωμένος(凍った、冷えた)、παγωτό(アイスクリーム)、ξεπαγώνω(解凍する)などがある。共通の語源を持つ関連語に πάγος(氷)などがある。
ギリシャ語:παιδί
読み方:ペディ・ペディー
ラテン文字:paidi
印欧祖語で「少ない, 幼い」を表す語根にさかのぼり, ラテン語 puer(子供)やサンスクリット putrá(息子)と同源の語族に連なる古代ギリシャ語 παῖς(子供, 少年)の指小形 παιδίον(小さな子)から, 中世ギリシャ語 παιδίν を経て今に至る継承。英語の接頭辞 ped(o)-(pedagogy「教育学」, pediatrics「小児科学」)はこの παῖς/παιδ- からラテン語・新ラテン語を経由して入った学術借用。
類義語に τέκνο(子、子女。公的・文芸の文脈で「子孫」のニュアンスを帯びる硬い形), βρέφος(乳児), μωρό(赤ちゃん), νεογέννητο(新生児)。派生に παιδάκι(小さな子、お子さん。指小形), παιδαρέλι(若造), παίδαρος(立派な体格の青年), παιδικός(子供の、子供らしい)。合成語に παιδότοπος(子供の遊び場), εκπαίδευση(教育), εκπαιδευτικός(教育の、教育関係者)。関連語に παιδεία(教育、教養), παίδευση(教育、鍛錬)。
ギリシャ語:παιδιά
読み方:ペディア・ペディアー
ラテン文字:paidia
動詞 παίζω(遊ぶ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 παιδιά(遊び, 楽しみ)に由来。背景には παιδί の古い形 παῖς(子供)がある。現代ギリシャ語では書き言葉やスポーツ用語として残り, 話し言葉では παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ)がふつうに使われる。
同じ παῖς の語族に παιδί(子供), παίζω(遊ぶ, プレーする), παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ), παιδικός(子供の, 子供じみた), 合成語 αθλοπαιδιά(球技, スポーツ), γυμνοπαιδίες(古代スパルタの少年競技)。
παιχνίδι が「遊び, ゲーム, おもちゃ」までまとめて受けるのに対し, παιδιά は εντός παιδιάς(プレー中), εκτός παιδιάς(プレー外)のような定型表現や, 組織的な競技を言うときに使うことが多い。英語 pedagogy, pediatric も παῖς を含むギリシャ語合成語から入った。
ギリシャ語:παιδικός
読み方:ペディコス・ペディコース
ラテン文字:paidikos
παιδικός(女性 παιδική、中性 παιδικό)は、古代ギリシャ語の παῖς(子供)から派生した παιδικός に由来する。現代ギリシャ語でも、παιδί(子供) と同じ語源につながる語として、子供に関するもの、子供のためのものを表す。
関連語には、βρεφικός(乳児の)、νηπιακός(幼児の)、εφηβικός(思春期の)、νεανικός(若者の)がある。類義語の παιδαριώδης(子供じみた)や παιδιάστικος(幼稚な)に比べ、παιδικός は本来の「子供の」という客観的な用法が中心である。
主な意味は「子供の」「子供向けの」。子供に関する活動、施設、身体的特徴、表現、児童文学や子供向けメディア、スポーツ・医療・心理学の専門的な表現まで広く使われる。大人の思考や行動について、蔑称的に「幼稚な、未熟な」を表すこともある。
副詞形 παιδικά は「子供らしく、子供のように」を表す。παιδικός σταθμός(保育所、幼稚園)、παιδική ασθένεια / αρρώστια(小児疾患)のような固定表現もある。
ギリシャ語:παίζω
読み方:ペゾ・ペーゾ
ラテン文字:paizo
印欧祖語で「少ない, 幼い」を表す語根にさかのぼる名詞 παῖς(子供)から派生した古代ギリシャ語の動詞 παίζω(子供らしくふるまう, 遊ぶ)を継承。現代の「相場が推移する」「メディアで流れる」などの意味はフランス語 jouer, 英語 play からの意味借用で整った。
同じ語根にラテン語 puer(少年), paucus(少ない), pauper(貧しい), 英語 few が並ぶ。英語には παῖς を直接含む合成語として pediatrics(小児科学、παῖς + ἰατρός), pedagogue(教育者、παῖς + ἀγωγός), encyclopedia(百科事典、ἐγκύκλιος παιδεία「全般の教育」から)がある。
派生に παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き), παίκτης(プレーヤー、選手), παίγνιο(遊び、もてあそび), εμπαίζω(あざける、ばかにする)。
ギリシャ語:παίκτης
読み方:ペクティス・ペークティス
ラテン文字:pektis
ギリシャ語:παίρνω
読み方:ペルノ・ペールノ
ラテン文字:pairno
中世ギリシャ語の παίρνω を継承。古代ギリシャ語の ἐπαίρω(持ち上げる、ἐπί「〜に」+ αἴρω「持ち上げる」)から続き、弱い ε が落ちて今の形になった。完結相過去形は πήρα(古代形 ἐπῆρα から)。
ギリシャ語:παιχνίδι
読み方:ペフニディ・ペフニーディ
ラテン文字:paichnidi
中世ギリシャ語の παιγνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)に由来する。現代ギリシャ語では発音に沿った綴りとして παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)が標準形になり、古い形を保った παιγνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き)もまれに口語で見られる。
指小語の παιχνιδάκι(小さなおもちゃ、たやすいこと)は、小さなおもちゃの意味でも、何かがたやすいことの意味でも使われる。複合表現では ηλεκτρονικά παιχνίδια(電子ゲーム)や παιχνίδι ρόλων(ロールプレイ)のように、英語を受けた言い方も定着している。
子供向けのおもちゃや遊具、ルールのある遊びやゲーム、スポーツの試合が基本の意味。そこから、誰かに振り回される立場、裏の駆け引き、光のゆらめきまで広がる。遊びやゲームでは参加者を παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)と言う。
ギリシャ語:παίχτης
読み方:ペフティス・ペーフティス
ラテン文字:pextis
παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:παίχτρια
読み方:ペフトゥリア・ペーフトゥリア
ラテン文字:pextria
παίκτρια(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:παλάμη
読み方:パラミ・パラーミ
ラテン文字:palami
古代ギリシャ語の παλάμη(手のひら)を継承。ホメロスにすでに現れ、印欧祖語で「平たい、広い」を表す語根に続く。ラテン語 palma(手のひら、棕櫚)と語源を共有し、英語 palm, フランス語 paume はラテン語を経由して同じ語根に連なる。
同じ語根からギリシャ語内に πλατύς(広い), πλάγιος(斜めの), πλάξ(平板), πέλαγος(広い海原、外海)が派生。古英語 folm(手), 古アイルランド語 lám(手)も同じ語根に続く。
別形に απαλάμη(手のひら)。派生に παλαμάκια(拍手), παλαμίζω(手で触る、撫でる), παλαμοειδής(掌状の)。手全体は χέρι で、παλάμη は手首から指の付け根までの内側にかぎって使う。
ギリシャ語:παλτό
読み方:パルト・パルトー
ラテン文字:palto
ギリシャ語:πανάκεια
読み方:パナキア・パナーキア
ラテン文字:panakeia
古代ギリシャ語の παν-(すべて)と ἄκος(治療, 救済)からなる πανάκεια(万病を治す薬)を継承。神話ではパナケイア(Πανάκεια)が医神アスクレピオスの娘として万病を治す女神の名にもなる。現代の「万能の解決策」の比喩的用法はフランス語 panacée, 英語 panacea からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ἄκος の語族に ακέομαι(癒す), ακεσώδυνος(鎮痛の)。現代の日常で「治す, 治療する」は θεραπεύω が担い, ἄκος 語族は文語や古い医術文献に残る。
英語 panacea もラテン語 panacea を経て同じ語源。パナケイアの姉妹にはヒギエイア(Ὑγίεια, 健康の女神, 英語 hygiene の語源)もおり, アスクレピオスの娘たちは医術の各側面を司るとされる。
ギリシャ語:πανικός
読み方:パニコス・パニコース
ラテン文字:panikos
古代ギリシャ語の Πάν(牧神パン)に由来する形容詞 πανικός が語源で、「パンの」を意味する。パン神は山野に棲む半人半獣の神で、突然の叫び声で家畜や人間を恐怖に陥れるとされた。この神話から πανικός φόβος(パンの恐怖)のように恐怖を形容する表現が生まれ、やがて πανικός だけで突然の制御不能な恐怖を意味する名詞としても定着した。フランス語の panique や英語の panic も同じ古代ギリシャ語に由来し、日本語の「パニック」もここから広まった外来語である。
類義語に τρόμος(恐怖)があるが、πανικός は集団的な混乱や制御不能な状態に重点が置かれる。
精神医学では διαταραχή πανικού(パニック障害)や κρίση πανικού(パニック発作)のように用いられる。社会学の ηθικός πανικός(道徳的パニック)は、メディアなどが特定の事象に過剰に反応し、社会の結束を脅かすような不合理な恐怖を煽る現象を指す。日常語としても μπουτόν πανικού(パニックボタン。κουμπί πανικού とも)や μπάρα πανικού(パニックバー、緊急脱出用の押し棒式ハンドル)のように使われる。
πανικός は主に二つの意味で用いられる。ひとつは個人や集団に突然襲いかかる制御不能な恐怖。もうひとつは大きな動揺や無秩序、収拾のつかない騒ぎである。
ギリシャ語:πανταλόνι
読み方:パダロニ・パダローニ・パンダロニ・パンダローニ
ラテン文字:pantaloni
παντελόνι の別綴り。意味は同じ。
ギリシャ語:παντελόνι
読み方:パデロニ・パデローニ・パンデロニ・パンデローニ
ラテン文字:panteloni
παντελόνι は、古代ギリシャ語の人名 Πανταλέων(パンタレオン)に由来するヴェネツィア方言の Pantalone を遠い起点に持つ。Pantalone はイタリア喜劇 commedia dell'arte の登場人物で、特徴的な長ズボンをはいていたことから、まずフランス語の pantalon が衣類名として定着した。そこからイタリア語の複数形 pantaloni が広まり、ギリシャ語ではその形が中性単数として取り入れられて παντελόνι になった。
別綴りに πανταλόνι(ズボン、パンツ) があり、こちらは借用元に近い母音を保つ形。指小語 παντελονάκι(小さなズボン、短めのズボン)は、小さなズボンや短めのズボンを言うときに使う。
ρούχο(布製品、服、衣類) の中でも、左右の脚を別々に包み、腰で留めて下半身を覆う衣類を指す。素材や形、用途に応じた複合表現が多く、ふだん着から乗馬用、迷彩柄のものまで広く言える。
主な意味は「ズボン、パンツ」。革、コーデュロイ、ジーンズのように素材で言い分けたり、καμπάνα(ベルボトム、裾広がり)や σωλήνας(パイプ型、細身)のようにシルエットで種類を言い分けたりする。裾の筒、折り返し、ポケットなど各部位の話にもそのまま使う。
ギリシャ語:παπαγάλος
読み方:パパガロス・パパガーロス
ラテン文字:papagalos
アラビア語 ببغاء(擬音起源)を中世ギリシャ語が παπαγάς(オウム)として取り入れ、そこから派生したイタリア語 pappagallo が現代ギリシャ語に再導入された語。語の反復音はオウムの鳴き声を思わせる。
同義に ψιττακός。指小形の παπαγαλάκι は小型のオウムのほか、情報を流す工作員や情報の運び屋をくだけて言う。派生動詞 παπαγαλίζω(機械的に繰り返す), 形容詞 παπαγαλίστικος(オウム的な)がある。
ギリシャ語:παπούτσι
読み方:パプツィ・パプーツィ
ラテン文字:papoutsi
παπούτσι は中世ギリシャ語の παπούτσιον(靴)から来た語で、そのもとにはトルコ語 papuç / pabuç(靴、スリッパ)がある。借用語として定着したのち、現代ギリシャ語で日常的な「靴」の基本語になった。
指小語 παπουτσάκι(小さな靴、子ども向けの靴)もある。
衣類全体を指す ρούχο(服、衣類)に対して、παπούτσι は足に履く靴そのものをいう。ふつうは足首を大きく越えない靴を広く指し、より高さのある履き物は別語で言い分けることが多い。
主な意味は「靴、シューズ」。紳士靴、婦人靴、子ども靴、革靴、ひも靴、夏用の靴、整形外科用の靴、安全靴、作業靴、運動靴のように幅広く使える。サイズが合うかどうか、きついか、靴ずれするかといった言い方にもよく現れる。
スポーツでは χρυσό παπούτσι(ゴールデンシュー)が得点王表彰の名として使われる。成句では、貧しさ、引退、相手を強く支配すること、相手を気にも留めないことなどを表す。
ギリシャ語:παππούς
読み方:パププス・パププース
ラテン文字:pappous
παππούς(祖父、おじいさん)は、親族を呼ぶ幼児語に由来する形がそのまま続いた語である。現代ギリシャ語では、家族の中の祖父を言うほか、親しみをこめて年配の男性を呼ぶ言い方にもなる。
γιαγιά(祖母、おばあさん) が祖母を言うのに対して、παππούς は祖父を言う。家族内で自然に対になる語である。
意味は祖父、おじいさん。血縁の祖父にも、親しい年配男性への呼びかけにも使える。
ギリシャ語:παράδεισος
読み方:パラディソス・パラーディソス
ラテン文字:paradeisos
古代ペルシア語の pairi-daēza(周囲を囲われた場所、庭園)に由来する。古代ギリシャ語に借用された当初は、ペルシア貴族の狩猟園や公園を指していた。ヘレニズム期に七十人訳聖書でヘブライ語の「エデンの園」にあたる語として採用され、宗教的な意味を帯びるようになった。新約聖書を経てキリスト教的な「天国」の意味が定着し、現代ギリシャ語でもこの宗教的な意味が中心になっている。
「素晴らしい場所」「理想的な活動拠点」といった世俗的な語義は、フランス語 paradis からの翻訳借用による。英語の paradise も同じ語源から来ている。
対義語はκόλαση(地獄)。
新約聖書における「天国」、旧約聖書における「エデンの園」のほか、比喩的に美しく心地よい場所や、特定の活動にとって理想的な場所も表す。宗教的な意味では先頭大文字の Παράδεισος、比喩的な意味では小文字の παράδεισος と書き分ける。
ギリシャ語:παράθυρο
読み方:パラシロ・パラーシロ・パラティロ・パラーティロ
ラテン文字:parathyro
古代ギリシャ語 παρά(傍らに、沿って)と θύρα(戸、ドア)からの中世ギリシャ語 παράθυρον を継承。もとは「ドアの横にある開口部」の意。
派生に παραθυρόφυλλο(鎧戸、雨戸), παραθυράκι(小窓、抜け穴), εκπαραθυρώνω(追い出す、放逐する), ψευδοπαράθυρο(偽窓、機能しない窓)。関連語に φινιστρίνι(舷窓、船の丸窓)。
ギリシャ語:παραλία
読み方:パラリア・パラリーア
ラテン文字:paralia
古代ギリシャ語の παράλιος(海岸の、海辺の)から。παρά(〜のそば)と ἅλς(海)からなる形容詞で、もとは παραλία χώρα(海岸地方)のように名詞を伴っていたが、παραλία 単独で名詞として定着した。派生語に παραλιακός(海岸の、沿岸の)。
類義語の ακτή は地形としての海岸線を指し、崖や岩場も含む。παραλία は人が歩ける砂浜や海岸通りに使われることが多い。
ギリシャ語:παράξενος
読み方:パラクセノス・パラークセノス
ラテン文字:paraxenos
παράξενος(奇妙な、変わった、見慣れない)は、παρά(わきへ、通常から外れて)と ξένος(よその、見知らぬ)からできた語である。もともとの「外れている」「よその感じがする」という感覚が、今の「変だ」「奇妙だ」という意味につながっている。
ξένος(外国の、見知らぬ、外国人、よそ者) が外部から来たものや見知らぬ人を言うのに対して、παράξενος はそこから一歩進んで、普通ではない、妙だという評価を帯びやすい。
意味は奇妙な、変わった、見慣れない。人、出来事、音、雰囲気などに広く使える。
ギリシャ語:παρατηρώ
読み方:パラティロ・パラティロー
ラテン文字:paratiro
古代ギリシャ語の παρατηρῶ(傍らで見張る、監視する)を継承。παρά(傍らに)と τηρέω(見守る、見張る)を合わせた動詞。現代の「観察する、気づく、指摘する」の意味は、フランス語 observer、remarquer からの意味借用で広がった。派生に παρατήρηση(観察、指摘)、παρατηρητής(観察者)、παρατηρητικός(観察力のある)。
ギリシャ語:παρέα
読み方:パレア・パレーア
ラテン文字:parea
παρέα は中世ギリシャ語 παρέα(仲間、一緒にいること)に由来する。現代ギリシャ語では、気の合う仲間の集まりや、だれかと一緒に過ごすことを表す語として使われる。
主な意味は「仲間」「連れ」。そこから、一緒にいて寂しくないことや、付き添いとして同席することも表す。
ギリシャ語:παρέλαση
読み方:パレラシ・パレーラシ
ラテン文字:parelasi
παρέλαση は、動詞 παρελαύνω(行進して通る、閲兵する)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、祝祭や国民的記念日に行われるパレードや行進を指す。
τελετή(儀式、式典、セレモニー) が式典全般を言うのに対して、παρέλαση は人々が隊列を組んで進む行進形式の行事を指す。
主な意味は「パレード」「行進」。軍の閲兵式や学校の記念行進にも使う。
ギリシャ語:παρθένος
読み方:パルセノス・パルセーノス・パルテノス・パルテーノス
ラテン文字:parthenos
古代ギリシャ語の παρθένος(乙女、処女)に由来。印欧祖語で「胸」を表す語根に続き、もとは母となる前の若い女性を指したとされる。転じて形容詞で「手つかずの、純粋な」の意味でも使う。
アテネのアクロポリスの神殿 Παρθενών(パルテノン)は、処女神 Αθηνά Παρθένος を祀ることから παρθένος をもとに名づけられた。星座名として使うときは先頭を大文字にした Παρθένος(おとめ座)と書き、一般名詞と区別する。英語には παρθένος を含む合成語として parthenogenesis(単為生殖、+ γένεσις「誕生」), parthenocarpy(単為結実、+ καρπός「果実」)がある。
派生に παρθενία, παρθενιά(純潔、処女性), παρθενικός(処女の), παρθενογένεση(単為生殖), εκπαρθενεύω(純潔を奪う)。女性形の παρθένα(乙女、処女)は中世ギリシャ語から続く形で、日常では παρθένα のほうをよく使う。
ギリシャ語:παρουσία
読み方:パルシア・パルシーア
ラテン文字:parousia
古代ギリシャ語の παρουσία(居合わせること、存在)を継承。動詞 πάρειμι(居合わせる、παρά「傍らに」+ εἰμί「〜である」)から作られた名詞。現代の「存在、出席、臨席」の意味は、フランス語 présence、英語 presence からの意味借用で広がった。派生に παρουσιάζω(提示する、紹介する)、παρουσίαση(発表、プレゼンテーション)、παρουσιαστής、παρουσιάστρια(司会者、プレゼンター)。
ギリシャ語:Πάσχα
読み方:パスハ・パースハ
ラテン文字:pascha
ギリシャ語:πασχαλιά
読み方:パスハリャ・パスハリャー
ラテン文字:paschalia
中世ギリシャ語の πασχαλία(復活祭の時期)に由来し、さらにさかのぼると πάσχα(復活祭)に関わる語群につながる。先頭大文字の Πασχαλιά(復活祭)は、この古い「復活祭の時期」という意味を口語的に受け継いだ形である。
植物名の πασχαλιά は、復活祭のころに咲く花木を指す語として定着した。現在は、おもに香りのよい花を咲かせる観賞用の低木、ムラサキハシドイ属のライラックを表す。
植物としては θάμνος(低木、灌木)に属する観賞用の花木で、花の色から連想される λιλά(ライラック色、薄紫色)とも結びつきやすい。復活祭を口語で言うときは Πασχαλιά とも呼び、同じく民間的な呼び名に Λαμπρή(復活祭、晴れの祝日)もある。
主な意味は、紫や白の香り高い花をつけるライラックと、先頭大文字で書かれる口語の「復活祭」。同じ形でも、小文字では植物名、大文字では祝祭名として使い分ける。
ギリシャ語:πατέρας
読み方:パテラス・パテーラス
ラテン文字:pateras
古代ギリシャ語の πατήρ(父)に由来する。対格(目的語の形)πατέρα をもとに、中世ギリシャ語を経て現代の πατέρας となった。
印欧祖語で「父」を意味する語から派生しており、英語の father、ラテン語の pater と同じ起源を持つ。英語の paternal(父親の)や patriarch(家長)もこの語根に由来する。
日常的には μπαμπάς(パパ、お父さん)が使われるが、πατέρας はよりフォーマルな響きを持つ。「父親」という存在そのものや、社会的・宗教的な役割を指す場合に適している。
派生語には πατερούλης(お父ちゃん、親愛の情を込めた指小語)、πατρικός(父親の、父方の)、πατερικός(教父の、教父学の)、πατρίδα(祖国)がある。
基本義は「父親」。そこから祖先、動物の種牡、学問の創始者、キリスト教における神や聖職者への尊称、初期教会の教父など、さまざまな意味で用いられる。
ギリシャ語:πέλαγος
読み方:ペラゴス・ペーラゴス
ラテン文字:pelagos
古代ギリシャ語の πέλαγος(海、外洋)に由来。印欧祖語で「平らに広がる」を表す語根に続くとされる。
ラテン語 pelagus と語源を共有する。英語 archipelago は中世イタリア語 arcipelago を経て古代ギリシャ語の ἀρχιπέλαγος(主たる海)に連なり、もとはエーゲ海を指した。エーゲ海には島が多いため、のちに「多島海、列島」の意味でも使われるようになった。
同じ語根からギリシャ語内に πλατύς(広い), πλάγιος(斜めの), πλάξ(平板), παλάμη(手のひら)が派生。派生に πελάγιος(外洋の), πελαγικός(外洋性の), πελαγίζω(水びたしになる), πελαγώνω(途方に暮れる)。合成に αρχιπέλαγος, αρχιπέλαγο(群島、列島), βαθυπελαγικός(深海の)。海全般には θάλασσα を使い、πέλαγος は沖合の広い海域にかぎって使う。大洋は ωκεανός で区別する。
ギリシャ語:πεπόνι
読み方:ペポニ・ペポーニ
ラテン文字:peponi
中世ギリシャ語の πεπόνι(メロン)は、後期ギリシャ語の πεπόνιον(メロン)にさかのぼる。現代ギリシャ語でもほぼ同じ形で受け継がれ、果物のメロンを指す基本語として使われている。
英語の melon(メロン)はこの語そのものから出た形ではないが、古代ギリシャ語の μηλοπέπων(果物のようなウリ)をラテン語経由で受け継いだ語で、語源的には近いところにある。
果実がなる植物は πεπονιά(メロンの株、植物体)という。夏の果物としては καρπούζι(スイカ)と並べて言うことが多い。
主な意味はメロン。丸い、またはやや楕円形で、黄みや緑みのある皮を持ち、甘く水分の多い果肉と小さな種を中に持つ果実を指す。比喩では κεφάλι σαν πεπόνι(メロンのような頭)と言って、頭が細長いことを表す。
ギリシャ語:περηφάνια
読み方:ペリファニャ・ペリファーニャ
ラテン文字:perifania
περηφάνια は、古代ギリシャ語の ὑπερηφανία(高慢さ、誇り)に由来する。これは ὑπερήφανος(高慢な、誇り高い)からできた抽象名詞で、語の土台には ὑπέρ(上に、越えて)と φαίνω(現れる、見える、輝く)につながる要素がある。もともとの芯には「人より上に見える」「高く出る」という感覚があり、そこから高慢さと誇りの両方を言える語になった。現代ギリシャ語では、語頭が落ちた日常的な形として περηφάνια が定着している。
χαρά(喜び)が広くうれしさそのものを言うのに対し、περηφάνια は自分自身、家族、国、達成と結びついた誇らしさを表しやすい。ντροπή(羞恥心、恥)が自分を縮ませる感情だとすれば、περηφάνια は自分を立たせる側の感情で、そこから尊厳にも高慢にも傾きうる。
別綴りに περηφάνεια(旧綴り)と υπερηφάνεια(文語形)がある。意味の中心は同じで、日常語では περηφάνια が最もふつう。
主な意味は、自分や自分の側にあるものを誇らしく思う気持ち。そこから、失いたくない尊厳や自尊心も指し、さらに悪い意味では思い上がりや高慢にもなる。人や成果を「誇り」と呼ぶ言い方にも広がる。
ギリシャ語:περιστέρι
読み方:ペリステリ・ペリステーリ
ラテン文字:peristeri
古代ギリシャ語の περιστερά(ハト)から。中世ギリシャ語で περιστέριν となり、現代ギリシャ語の περιστέρι に至った。もともとは「小さなハト」を意味する指小辞だったが、時代を経て指小の意味合いは薄れ、ハトを指す最も一般的な語となった。
ギリシャ語にはハトを表す語として περιστερά(ペリステラー)もある。日常的にはもっぱら περιστέρι が使われるが、περιστερά は格式高い文語的な表現にあたり、宗教的な文脈や象徴的な意味合いで好まれる。キリスト教で聖霊を象徴する鳩やノアが放った鳩にも用いられる。
アクセントの位置だけが異なる περιστέρα(ペリステラ)という語もある。περιστερά が末尾の -ά にアクセントを置くのに対し、περιστέρα は -έ- にアクセントを置く。こちらは口語でメスのハトを指すほか、女性への愛称や、平和を支持する政治家を指す比喩としても使われる。
ハトのヒナを指す πιτσούνι もよく使われる語で、口語では子供や恋人への親愛を込めた呼びかけにもなる。複数形 πιτσούνια は熱愛中のカップルを指すこともあり、からかいのニュアンスを帯びることもある。指小形の πιτσουνάκι やその複数形 πιτσουνάκια も同様に、仲睦まじいカップルの愛称として使われる。
主な意味はハトで、中程度の大きさの体と比較的小さな頭を持ち、つがいで生活する鳥の総称。野生のものも飼いならされたものもいる。言論や芸術表現では平和、無垢、純潔の象徴として、キリスト教では聖霊の象徴としても用いられる。
指小語として περιστεράκι も用いられる。
ギリシャ語:Περσεύς
読み方:ペルセフス・ペルセーフス
ラテン文字:persefs
ギリシャ語:πέστροφα
読み方:ペストゥロファ・ペーストゥロファ
ラテン文字:pestrofa
ギリシャ語:πεταλούδα
読み方:ペタルダ・ペタルーダ
ラテン文字:petalouda
基本の「蝶」を表す πεταλούδα は、中世ギリシャ語 πεταλούδα の形で現れ、現代ギリシャ語でもそのまま日常語として使われている。さらに古い前史には揺れがあり、πέταλον(葉、花びら)に由来するという見方や、πετηλίς(バッタの一種)との関係をみる説がある。
競泳の「バタフライ」は、英語 butterfly の影響を受けて加わった意味である。カオス理論でいう φαινόμενο της πεταλούδας(バタフライ効果)も、英語 butterfly effect に対応する言い方として広がった。
羽を大きく開いた蝶の姿から、πεταλούδα は似た形のものにも広く使われる。競技では κολύμπι(水泳、泳ぎ、泳法)の泳法名になり、道具では μαχαίρι(ナイフ、包丁、メス、刃)の一種や自動車部品、釣り具を指すことがある。さらに、淡水の ψάρι(魚、騙されやすい人、新兵、無口な人)の一種の名にもなっている。
主な意味は「蝶」。そこから競泳のバタフライ、羽のように開く形のもの、医療用のバタフライ針、さらにフナ属の淡水魚まで指す。
ギリシャ語:πετεινός
読み方:ペティノス・ペティノース
ラテン文字:petinos
動詞 πέτομαι(飛ぶ)から派生した古代ギリシャ語の形容詞 πετεινός(翼のある, 飛べる)を継承。のちに名詞に転じて雄鶏を指すようになった。
派生の指小形に πετεινάρι(若い雄鶏)。合成語に λυροπετεινός(クロライチョウ)。日常で雄鶏を指すのは κόκορας で、πετεινός は文学や伝統的な言い回しに出る。
πέτομαι の印欧祖語の語根は「飛ぶ、翼を広げる」を表す。同じ語根からラテン語 penna(羽)が生まれ、英語 pen(もとは羽ペン)はこれを経て入った。
ギリシャ語:πέτρα
読み方:ペトゥラ・ペートゥラ
ラテン文字:petra
古代ギリシャ語の πέτρα(岩, 岩盤)を継承。「大きな岩」から「石」全般へ意味が広がった。
英語の人名 Peter, ペテロ は同根の Πέτρος(男性形, 岩)から。新約聖書マタイ 16:18 でイエスが弟子シモンをそう呼んだことに由来する。英語 petroleum(石油)は πέτρα とラテン語 oleum(油)からの合成で「石の油」, petrify(石にする, 恐怖で固まらせる)も同じ系統。
指小形に πετρούλα, πετραδάκι(小石)。派生に πέτρινος(石の), πετρώνω(石化する)。合成に πετρέλαιο(石油), πετρογραφία(岩石学)。λίθος も同じ「石」を指す古代由来の語で, 現代ギリシャ語では鉱物学, 医学, 合成語に残る。ふつうの「石」には πέτρα を使う。
ギリシャ語:πετριχώρ
読み方:ペトゥリホル・ペトゥリホール
ラテン文字:petrichor
英語 petrichor からの借用。1964年にオーストラリアの科学者ベアとトーマスが古代ギリシャ語の πέτρα(石)と ἰχώρ(神々の体液)を合わせて名づけた語で、ギリシャ語には再借用として入った。
ギリシャ語:πηγή
読み方:ピイ・ピイー・ピギ・ピギー
ラテン文字:pigi
古代ギリシャ語の πηγή(泉, 湧き出る場所)に由来。現代の「光源」「情報源」「史料」などの用法はフランス語 source からの意味借用で整った。解剖学の「泉門」はフランス語 fontanelle に対応する用法。
派生に πηγαίος(もとからの, 自然に湧き出る), πηγάδι(井戸), πηγούλα(小さな泉)。合成に θερμοπηγή(温泉), θειοπηγή(硫黄泉), πετρελαιοπηγή(油井)。学術の文脈では複数形 πηγές が βιβλιογραφία(参考文献)と近い。
ギリシャ語:πιάτο
読み方:ピアト・ピアート
ラテン文字:piato
πιάτο は古代ギリシャ語の πλατύς(広い、平たい)につながる語で、俗ラテン語、イタリア語 piatto を経て中世ギリシャ語に戻ってきた。いったんギリシャ語から外へ出た語が別のかたちで戻ってきた反借用語である。
英語の plate も同じ πλατύς に由来するので、πιάτο と plate は遠いところで同じ「平たいもの」の感覚を共有している。
もっとも近いのは φαγητό(食べ物、料理)で、πιάτο はそれを載せる皿でもあり、載った一皿の料理でもある。τραπέζι(テーブル、食卓)や μαχαίρι(ナイフ)と並んで、食卓の基本語の一つとして使われる。
指小語の πιατάκι(小皿、受け皿)は小皿、受け皿、ソーサーのような小さめの皿を表す。大きさだけでなく、ちょっとした軽い感じや親しみも出せる形である。
主な意味は「皿」。そこから、一皿に盛られた量、その料理自体、さらに皿に似た形をした物へと意味が広がる。
ギリシャ語:πίεση
読み方:ピエシ・ピーエシ
ラテン文字:piesi
古代ギリシャ語の動詞 πιέζω(押す、圧迫する)から派生した名詞 πίεσις(圧縮、圧力)が起源。古代ギリシャ語の名詞語尾 -σις(-シス)が -ση(-シ)に変化する一般的な流れを経て、現代ギリシャ語の πίεση になった。類義語に ζούληγμα(強く握ること、つぶすこと)がある。
英語の piezoelectric(圧電)に含まれる接頭辞 piezo- は、この πιέζω に由来する。フランス語の pression や英語の pressure も同じ「押す力」という概念を表すが、こちらはラテン語 pressūra からの語で、ギリシャ語とは別の系統になる。
物理的に押す力から、物理学上の圧力、精神的なプレッシャー、医学的な血圧まで、何かが力を及ぼしている状態を広く指す。ατμοσφαιρική πίεση(大気圧)、ονομαστική πίεση(公称圧力)、πίεση σφυγμού(脈圧)のように、科学や工学、医学の専門用語にも使われる。
ギリシャ語:πικραλίδα
読み方:ピクラリダ・ピクラリーダ
ラテン文字:pikralida
πικραλίδα(タンポポ)は、πικρός(苦い)に由来する形が続いた語である。現代ギリシャ語では、黄色い花をつけるタンポポを指し、名の中には葉や茎の苦みを思わせる感覚が残っている。
αγριοράδικο(野生のチコリー、野草のラディキ) は食べる野草として言われやすいのに対して、πικραλίδα は花の名として言う場面が立ちやすい。
意味はタンポポ。野原や道ばたに生える、黄色い花の草をいう。
ギリシャ語:πικρός
読み方:ピクロス・ピクロース
ラテン文字:pikros
古代ギリシャ語の πικρός(苦い)を継承。印欧祖語で「刺す, 刻む」を表す語根に続き, 鋭い感覚から味の苦みへ転じたとされる。
同じ語根から ποικίλος(色とりどりの, 多様な)も派生。英語 picric(ピクリン酸の), picrate(ピクリン酸塩)は πικρός をもとにした語。
派生に πικραίνω(苦くする, つらくする), πίκρα, πικρία(苦さ, 辛さ), πικραμένος(心に傷を抱えた), πικρά(副詞で苦く, つらく), πικρούτσικος(少し苦い)。合成に πικρόγλυκος(ほろ苦い), πικραμύγδαλο(苦扁桃, ビターアーモンド)。反対は γλυκός(甘い)で, 同じく味を表す形容詞に ξινός(酸っぱい), αλμυρός(塩辛い)。
ギリシャ語:πιπέρι
読み方:ピペリ・ピペーリ
ラテン文字:piperi
さらに古い段階では、サンスクリット語 pippalī(長胡椒)などのインド・アーリア系の語が想定される。この語は中期インド語やペルシア語などを介して古代ギリシャ語の πέπερι(コショウ)に入り、ヘレニズム期には並行形の πίπερι(コショウ)も使われた。そこから中世ギリシャ語の指小形 πιπέρι(ον)(コショウの指小形)を経て、現代ギリシャ語の πιπέρι に至った。
同じ流れから、ラテン語 piper(コショウ)、古英語 pipor(コショウ)を経て、英語の pepper も生まれた。
πιπέρι は、粉末や粒状にした香辛料全般を指す。トウガラシ属由来の κόκκινο πιπέρι(赤コショウ、パプリカ)のような言い方もあり、πιπέρι からは、植物やその実を指す πιπεριά(ピーマン、パプリカ、トウガラシ)も作られる。
主な意味は調味料としての「コショウ」。熱帯植物の小さく暗色の球状の果実を、粉末または粒の状態にして調味料として使うものを指す。
成句では、βάζω πιπέρι στο στόμα κάποιου の形で、汚い言葉や悪口を言った人、特に子供を罰する言い方にも使われる。
ギリシャ語:πιπεριά
読み方:ピペリア・ピペリアー
ラテン文字:piperia
サンスクリット語 pippalī(長胡椒)を源とする古代ギリシャ語 πέπερι(コショウ)から、中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の πιπέρι(コショウ)へと変化した。そこに、植物やその実を指す接尾辞 -ιά が付いて πιπεριά が成立した。
現代ギリシャ語で「コショウ」を指す πιπέρι とは明確に区別される。πιπέρι はコショウなどの香辛料を指し、πιπεριά はナス科トウガラシ属の植物やその果実を指す。
主な意味は、食用となる果実としての「ピーマン、パプリカ、トウガラシ」。同じ果実を実らせる植物の総称としても使われる。
指小語 πιπερίτσα は、小さなピーマンや、可愛らしいトウガラシを指す。
ギリシャ語:πισίνα
読み方:ピシナ・ピシーナ
ラテン文字:pisina
πισίνα はイタリア語 piscina から入った借用語。現代ギリシャ語でもほぼ同じ形のまま、水泳や飛び込みのための人工の水槽を指す語として使われている。
基本の意味は、水泳や飛び込みができるように造られた人工のプール。ホテルや別荘に付いた私用のものから、子ども用、屋内外のもの、競技用の大きなものまで広く言える。そこから、容器そのものではなく中に張られた水をまとめて指すこともある。
泳ぐ、水浴びするという日常表現では μπάνιο(風呂、入浴、水浴び、水泳)の文脈に入りやすく、κάνω μπάνιο στην πισίνα(プールで泳ぐ)と言う。また、プールに入っている νερό(水)をまとめて指して πισίνα と言うこともある。
指小語の πισινούλα(小さなプール)は、小さめのプールやかわいらしいプールをやわらかく言う形。
ギリシャ語:πίστη
読み方:ピスティ・ピースティ
ラテン文字:pisti
古代ギリシャ語の動詞 πείθω(説得する)から派生した名詞 πίστις(信頼、確信)が起源。もとは「説得されて信じること」で、現代ギリシャ語で πίστη となった。
英語 faith(信仰)はラテン語 fidēs(信頼)から古フランス語を経て入った語で、fidelity(忠実さ)や fealty(忠誠)、スペイン語 fe(信仰)も同じ fidēs から。ギリシャ語 πίστις とこれらは「信じる」を意味する同じ印欧語根を共有する。
ギリシャ語:πιστοποιητικό
読み方:ピストピイティコ・ピストピイティコー・ピストピギティコ・ピストピギティコー
ラテン文字:pistopoiitiko
πιστοποιητικό(証明書)は、πιστοποιώ(証明する、確認する)に由来する形からできた語である。現代ギリシャ語では、公的・私的な証明書類を広く指す。
ταυτότητα(身分証明書、IDカード) が本人確認の身分証明書を言うのに対して、πιστοποιητικό は出生、婚姻、在学、健康状態など、ある事実を証明する書類を広く言う。領収の証拠としての απόδειξη(領収書、レシート) とも役割が違う。
意味は証明書。行政手続きや学校、病院などで出される証明文書に使える。
ギリシャ語:πιτσιλιά
読み方:ピツィリャ・ピツィリャー
ラテン文字:pitsilia
古代ギリシャ語の πίτυλος(水の跳ね、櫂が水を打つ音)に由来する。ヘレニズム期のコイネーを経て綴りが変化し、動詞 πιτσιλίζω(はねかける、まだらにする)が成立した。この動詞に女性名詞をつくる接尾辞 -ιά がついて πιτσιλιά となった。もとは水しぶきの痕を意味し、そこから染みや斑点全般を指すようになった。
口語では πιτσίλα と短くした形もよく使われる。
πιτσιλιά は λεκές(染み)や κηλίδα(しみ)と同義だが、液体が跳ねた痕や小さく散った斑点のニュアンスがある。肌のしみの文脈では φακίδες(そばかす)や πανάδες(日焼けのしみ)と並ぶ。πιτσιλιά から派生した形容詞 πιτσιλωτός(まだらの)は、動物の毛色などの描写に使う。
液体の跡やよごれの染みのほか、日光による肌のしみや動物の毛の斑点も指す。
ギリシャ語:πλαστικό
読み方:プラスティコ・プラスティコー
ラテン文字:plastiko
古代ギリシャ語の πλαστικός(形づくる、成形できる)から。現代ギリシャ語では πλαστική ύλη(塑性材料)という言い方を背景に、中性形 πλαστικό が独立して名詞化し、素材としてのプラスチックを指すようになった。
γυαλί(ガラス) や μέταλλο(金属) と同じく、材質を言うときに並びやすい語である。容器、部品、日用品の材質を説明するときに πλαστικό かどうかを区別する言い方が多い。
主な意味は素材としての「プラスチック」。そこから、その素材でできた物や部品をまとめて指すのにも使う。
ギリシャ語:πλάτανος
読み方:プラタノス・プラータノス
ラテン文字:platanos
古代ギリシャ語の πλάτανος(プラタナス)を継承。形容詞 πλατύς(広い、平たい)と結びつけて、広い葉にちなむ名と古くから説明されてきた。元は女性名詞(ἡ πλάτανος)だったが、-ος で終わる名詞の多くが男性であることにつられて、中世以降は男性名詞として使われるようになった。口語では中性形の πλατάνι もある。
英語 plane tree もラテン語 platanus を経て同じ語源。
ギリシャ語:πλάτη
読み方:プラティ・プラーティ
ラテン文字:plati
ギリシャ語:Πλειάδες
読み方:プリアデス・プリアーデス
ラテン文字:Pleiades
古代ギリシャ語の Πλειάδες(プレアデス)に由来。πλέω(航海する)と結びつけて説明されることが多く, 出没が地中海世界の航海シーズンの目安だったことによるとされる。πέλεια(鳩)の複数形からとする別解もある。神話ではアトラスの娘たちの名としても知られるが, 娘たちより先に星団の名があったとする見方が多い。
英語 Pleiades はラテン語 Pleiades を経て同じ語源。Ταύρος(おうし座)の領域に見え, Αλντεμπαράν(アルデバラン)はその後を追うように昇ることから「従う者」と呼ばれる。同じおうし座の領域には Υάδες(ヒアデス星団)があり, アルデバランの古いギリシャ語名は Λαμπαδίας。
ギリシャ語:πλευρά
読み方:プレヴラ・プレヴラー
ラテン文字:plevra
古代ギリシャ語の πλευρά(脇, 脇腹, 肋骨)に由来。形も意味も古代からほとんど変わらないが, 現代の「側面」「陣営」「観点」などの比喩的な用法はフランス語 côté, 英語 side からの意味借用で輪郭が整った。英語 pleura(胸膜)もラテン語経由でこの語から入った医学用語。
派生に πλευρικός(側の, 肋骨の), πλευρίτιδα(胸膜炎), πλευρίτσα, πλευρούλα(指小形)。合成語に δίπλευρος(二辺の), ισόπλευρος(等辺の), τρίπλευρος(三辺の), πολύπλευρος(多面的な), αμφίπλευρος(両面の)。中性並行形 πλευρό も同じ語族で, 肋骨を言うときによく使う。
話し言葉で「側, 面」と言うときは μεριά もよく使う。πλευρά は幾何学や形式的な場面, 身体の部位(肋骨), 抽象的な「側面」や議論の「陣営」で選ばれる。立方体のような立体の面を πλευρές と呼ぶこともあるが, 幾何学の厳密な用語では面は έδρα にあたる。
ギリシャ語:πλημμύρα
読み方:プリミラ・プリミーラ
ラテン文字:plimmyra
古代ギリシャ語の πλήμυρα(満潮、洪水)を継承。動詞 πίμπλημι(満たす)と同じ語根から生まれた語で、印欧祖語で「満たす」を表す語根に由来する。のちに πλήν(除いて)と μύρομαι(流れる)の合成と見なされて -μμ- の綴りが定着し、アクセントも後ろに移って今の形になった。
派生語に πλημμυρίζω(洪水になる、あふれさせる)、πλημμυρίδα(満潮)。
ギリシャ語:πληρώνω
読み方:プリロノ・プリローノ
ラテン文字:plirono
古代ギリシャ語の πληρόω(満たす、いっぱいにする)に由来する。中世ギリシャ語で現在の πληρώνω の形になり、ヘレニズム期にはすでに「払い終える、弁済する」の意味が現れていた。もとの「満たす」から、勘定や義務を満額にして済ませることを言うようになり、現代の「払う」へつながった。
基本は χρήμα(金、お金、通貨、貨幣) を渡して代金や請求を済ませることを言う。そこから、人に金を渡して動かす「買収する」、さらに罪や失敗や勝利のために何かを失う「代償を払う」まで意味が広がっている。受け身の πληρώνομαι(支払いを受ける、給料をもらう)もよく使う。
日常の会計、家賃や税金の支払い、賃金の支給、買収、報復、つけを払うことまで幅広く言える動詞である。成句では、πληρώνω από την τσέπη μου(自腹で払う)、πληρώνω τα σπασμένα(他人の失敗のしわ寄せを受ける)、πληρώνω κάποιον με το ίδιο νόμισμα(同じやり方でやり返す)などがよく使われる。
ギリシャ語:πλοίο
読み方:プリオ・プリーオ
ラテン文字:ploio
古代ギリシャ語の動詞 πλέω(航海する、浮く)から派生した πλοῖον(航海するもの)に由来する。現代ギリシャ語で πλοίο の形になった。
πλοίο は公式な響きを持ち、大型の船舶を指すニュアンスがある。日常会話では καράβι がより一般的に使われ、σκάφος はボートや小型船舶を含めた「艇」全般を指す。
指小辞を付けた πλοιάριο(形式的な表現)や πλοιαράκι(口語的な表現)もある。
主な意味は「船」。比喩的には Το πλοίο της ερήμου(砂漠の船)としてラクダの別称にも使われる。
ギリシャ語:πνεύμα
読み方:プネヴマ・プネーヴマ
ラテン文字:pnevma
古代ギリシャ語の πνεῦμα(息, 風, 気息)に由来。印欧祖語で「吹く」を表す語根に続く πνέω(吹く)から, 結果を表す接尾辞 -μα を付けて作られた語。「吹くこと」「呼吸」から, 目に見えない生命力, 精神, 霊へと意味が広がり, のちに文法用語の「気息記号」も指すようになった。「法の精神」「文章の趣旨」のように字面の裏にある真意を指す用法は, フランス語 esprit からの意味借用で整った。
英語 pneumatic(空気圧の), pneumonia(肺炎)も同じ語源。同じ語根から πνεύμονας(肺), πνοή(息, 息吹)も派生。派生に πνευματικός(精神の, 空気圧の), πνευματιστής(心霊主義者), πνευματισμός(心霊主義)。
心を扱う語では, 感情は καρδιά(心臓, 心), 思考や理性は νους(精神, 理性), 魂や生命全体は ψυχή(魂)。πνεύμα は知性, 集団や時代の理念, 霊性の側面を扱う。
ギリシャ語:ποδόσφαιρο
読み方:ポドスフェロ・ポドースフェロ
ラテン文字:podosfairo
πούς(足、属格 ποδός)と σφαίρα(球)を合わせた複合語。英語 football を翻訳借用するかたちで、19世紀末にカサレヴサ(公用語的な文語体)で作られた。
σφαίρα は英語 sphere の元になった語。
ギリシャ語:ποίηση
読み方:ピイシ・ピーイシ
ラテン文字:poiisi
古代ギリシャ語の ποίησις(作ること、創造すること)から。もともとは広く「何かを作り出すこと」を意味したが、しだいに韻文や文学的な創作を指す語として使われるようになり、現代ギリシャ語の ποίηση に至った。
ラテン語の poesis、フランス語の poésie、英語の poetry や poesy も同じ語源から来ている。ποίηση は、ギリシャ語の中で受け継がれてきた語であると同時に、西欧語の「詩」という語ともそのままつながっている。
近い語に ποίημα(個別の詩作品、詩)がある。ποίημα が一つひとつの作品を指しやすいのに対し、ποίηση は「詩という芸術」「詩作」という抽象的な意味でも、作品群全体をまとめて言う意味でも広く使われる。
派生語には ποιώ(作る)、ποιητής(詩人)、ποιητικός(詩的な)がある。ποίησις がもともと「作ること」を意味したため、詩だけでなく創作一般につながる語族が周辺に残っている。
主な意味は「詩」「詩作」。散文の πεζογραφία(散文文学)と対比される文学芸術の一分野を指すほか、個別の詩作品、特定の時代や作者による詩作品群、さらには風景や感情に宿る「詩情」「情趣」を表すのにも使われる。
ギリシャ語:ποινή
読み方:ピニ・ピニー
ラテン文字:poini
古代ギリシャ語の ποινή(賠償、罰、仕返し)に由来。古くは殺傷や加害に対する償い・賠償金を指していたが、のちに不利益を科すこと全般にも使われるようになり、現代ギリシャ語では法の刑罰・罰に用法が絞られた。派生語に ποινικός(刑事の、刑法の)。
英語 pain、penalty、punish はすべてラテン語 poena を経て同じ語源。
ギリシャ語:πόλεμος
読み方:ポレモス・ポーレモス
ラテン文字:polemos
古代ギリシャ語の πόλεμος(争い, 戦闘)を継承。起源は明らかでない。ギリシャ語以前の基層言語に由来する可能性と, 「揺する, 打つ」を表す πάλλω(振り回す), πελεμίζω(震わせる)などと同じく印欧祖語の語根「打つ, 押す」に続くとする説がある。ラテン語 pello(押す, 打ち負かす)や英語 feel との結びつきも示唆されるが, いずれも定説ではない。「派閥の戦い」「麻薬撲滅運動」のような比喩・キャンペーンの用法は, 英語 war, フランス語 guerre からの意味借用で加わった。
英語 polemic(論争的な), polemics(論争術)も同じ語源。派生に πολεμώ(戦う), πολεμικός(戦争の, 軍事の), πολεμιστής(戦士), πολεμοχαρής(好戦的)。
μάχη(戦闘)は個々の戦い, πόλεμος はより長期にわたる全体の戦いを指す。σύγκρουση(衝突, 対立)は物理的な衝突から意見対立まで指し, πόλεμος より広い。対義語は ειρήνη(平和)。
ギリシャ語:πόλη
読み方:ポリ・ポーリ
ラテン文字:poli
古代ギリシャ語の πόλις(都市、都市国家)を継承。古典の主格 πόλις、属格 πόλεως の形が、中世ギリシャ語以降に主格 πόλη として整えなおされ、属格 πόλης / πόλεως, 複数 πόλεις, πόλεων と古典の屈折を一部残した形で日常語として今に至る。古代の πόλις は「要塞、城砦」を表す印欧祖語の語根にさかのぼり、サンスクリット語 pur, pura(城砦、町), リトアニア語 pilis(城)と同根。英語 politics(政治), policy(政策), metropolis(首都、大都市), acropolis(アクロポリス), necropolis(墓地), cosmopolitan(世界市民の)はいずれも πόλις からラテン語経由で入った学術借用。
類義語に άστυ(街、市街地。古代ギリシャ語由来で書き言葉の硬い形、住居や街並みの物理的側面を指す), πολιτεία(国家、政体、市民社会。同じ πόλις 系で政治的なまとまりを指す), δήμος(自治体、市。行政単位としての市を指す), χωριό(村), κωμόπολη(町、小都市)。πόλη は人口や建物が集まった居住地を指すふつうの形として広く使い、固有名的に大文字 Πόλη だけでコンスタンティノープルを指す用法が中世から続く。関連語に πολίτης(市民、住民), πολιτική(政治), πολιτικός(政治の、政治家), πολιτισμός(文明、文化), πολίτευμα(政体), πολεοδομία(都市計画), πολιούχος(町の守護神、守護聖人), πόλισμα(小集落、町)。合成語に μητρόπολη(首都、大都市、府主教座), ακρόπολη(アクロポリス、上の街), μεγαλούπολη(巨大都市), κωμόπολη(小都市、町), νεκρόπολη(墓地、死者の町), υπερπόλη(超巨大都市)。
ギリシャ語:πολίτης
読み方:ポリティス・ポリーティス
ラテン文字:politis
古代ギリシャ語の πολίτης(ポリスの自由市民)に由来。πόλη(都市)の古代形 πόλις に「〜に属する人」を表す -ίτης が付いた形。現代の「国民, 市民」の用法はフランス語 citoyen からの意味借用で輪郭が整った。中世には Πολίτης が「コンスタンティノープル住民」の呼び名として固有名化した。
同じ πόλις・πόλη の語族に πολιτεία(国家, 市民権), πολιτεύομαι(政治に携わる), πολιτικός(政治の, 政治家), πολιτισμός(文明), πολιτογράφηση(帰化), 合成語 συμπολίτης(同郷人, 同胞), κοσμοπολίτης(コスモポリタン), μητροπολίτης(首都出身者, 大主教)。
英語 politics(政治), policy(政策), cosmopolitan(世界市民)もラテン語を経由してこの πόλις の語族に連なる。κάτοικος(住民)が住んでいる事実を指すのに対し, πολίτης は権利と義務を持つ市民の立場を指す。
ギリシャ語:πολλά
読み方:ポラ・ポラー
ラテン文字:polla
古代ギリシャ語の形容詞 πολύς(多い、多くの)の中性複数形 πολλά を継承。πολύς は印欧祖語の「満ちる、多い」を表す語根から続き、英語 poly-(多くの)もこの語根から入った。
ギリシャ語:πολύχρωμος
読み方:ポリフロモス・ポリーフロモス
ラテン文字:polychromos
古代ギリシャ語 πολύχρωμος(多色の)を継承。πολύ-(多くの)と χρώμα(色)からなる複合語。
現代ギリシャ語で日常的な形容詞として定着した背景には、フランス語・英語の polychrome の影響もある。
対義語に μονόχρωμος(単色の、モノクロの)。英語 polychrome は πολύς と χρώμα のギリシャ語要素から作られた語。
ギリシャ語:πονοκέφαλος
読み方:ポノケファロス・ポノケーファロス
ラテン文字:ponokefalos
古代ギリシャ語の πόνος(苦痛、労苦)と κεφαλή(頭)に由来する。現代ギリシャ語でも πόνος(痛み)と κεφάλι(頭)を合わせた語として読み取れる。
英語の cephalgia(頭痛)や encephalon(脳)は、κεφαλή(頭)と同じ語源に連なる語。
医学的な「頭痛」は κεφαλαλγία とも言い、κεφαλόπονος は「頭の痛み」を表す。関連語に ημικρανία(片頭痛)がある。
主な意味は物理的な「頭痛」。比喩的に、問題、不快な出来事、疲れさせるような仕事や人についても使われ、英語の headache とほぼ同じように「悩みの種」「厄介ごと」を表す。
ギリシャ語:ποντίκι
読み方:ポディキ・ポディーキ・ポンディキ・ポンディーキ
ラテン文字:pontiki
中世ギリシャ語の ποντίκιν を継承。古代ギリシャ語の形容詞 ποντικός(ポントスの、黒海の)と μῦς(ネズミ)を合わせた ποντικὸς μῦς(黒海のネズミ)から続き、μῦς が落ちて形容詞が名詞化したあと、指小形 ποντίκιον を経て今の形になった。古代ギリシャ人はネズミが黒海沿岸から来たと考えていたためにこの名が付いたといわれる。現代の「コンピュータのマウス」の意味は、英語 mouse、フランス語 souris からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:πόντος
読み方:ポドゥトス・ポードゥトス・ポンドゥトス・ポーンドゥトス
ラテン文字:pontos
現代ギリシャ語の πόντος には二つの起源がある。日常で使う「センチメートル, 得点, 編み目」の πόντος はヴェネツィア語 ponto(点)からの借用で, 元はラテン語 punctum(刺された点)。文学的な「大海, 外海」を指す πόντος は古代ギリシャ語の πόντος(海上の通路, 大海)を継承したもの。
ヴェネツィア語経由の πόντος の語族は英語側に多い。point(点, 得点), punctuation(句読点), puncture(穴, 穿孔), appointment(約束)もラテン語 punctum の子孫。「センチメートル」の正式な語は εκατοστό だが, 日常では πόντος が使われることが多い。
古代ギリシャ語の πόντος はもと「渡る通路」の意味で, 同じ語源からラテン語 pons(橋), 英語 pontoon(浮き橋), pontiff(教皇, もとは「橋を架ける者」)が出ている。海の意味では θάλασσα(海全般), πέλαγος(外海, 沖合)が日常を担い, πόντος は文学や古風な表現に残る。
ギリシャ語:πόρτα
読み方:ポルタ・ポールタ
ラテン文字:porta
印欧祖語で「通り抜ける」を表す語根にさかのぼるラテン語 porta(門, 通路)からヘレニズム期ギリシャ語の πόρτα に入り, 中世ギリシャ語を経て今に至る継承。古代ギリシャ語の θύρα(扉, 門)に代わって, 中世以降は扉や門を指す語として定着した。
英語の portal(ポータル、入り口)はラテン語 porta から中世ラテン語 portāle、古フランス語を経由して入った同源語。port の「舷門、コンピュータのポート」の意味も同じ porta から。「港」の port は姉妹語のラテン語 portus にさかのぼり、同じ印欧祖語の語根を共有する。
類義語に θύρα(扉、公式の場や書き言葉で使うことが多い), πύλη(より大きな門や、比喩的な入り口)。派生に πορτιέρης(ドアマン、ボーイ)。指小語に πορτάκι, πορτέλο, πορτίτσα, πορτούλα。合成語に αυλόπορτα(中庭の門), γκαραζόπορτα(ガレージの扉), εξώπορτα(玄関の扉), καγκελόπορτα(鉄格子の門), μπαλκονόπορτα(バルコニーへの扉), τζαμόπορτα(ガラスの扉)。
ギリシャ語:πορτοκαλάδα
読み方:ポルトカラダ・ポルトカラーダ
ラテン文字:portokalada
πορτοκάλι(オレンジ)に、ジュースや料理を表す接尾辞 -άδα が付いた語。
オレンジを使って作る飲み物を指し、瓶入りの清涼飲料や炭酸入りのオレンジソーダなどがこれに当たる。生搾りのオレンジジュースは χυμός πορτοκαλιού と呼んで区別される。
-άδα は λεμονάδα(レモネード)、βυσσινάδα(サワーチェリージュース)などの果汁飲料のほか、φασολάδα(豆スープ)、μακαρονάδα(パスタ料理)といった料理名にも付く。
ギリシャ語:πορτοκαλής
読み方:ポルトカリス・ポルトカリース
ラテン文字:portokalis
πορτοκάλι(オレンジ)から派生した色名で、オレンジの実の色を表す。πορτοκάλι の語源はイタリア語の portogallo(ポルトガル)で、オレンジがポルトガル経由でヨーロッパに伝わったことにちなむ。
語尾が変化する形(πορτοκαλής(男性形)、πορτοκαλιά(女性形)、πορτοκαλί(中性形))と、不変化形 πορτοκαλί の両方がある。口語では不変化形が一般的に使われる。
中性形の πορτοκαλί は名詞としても使われ、オレンジ色そのものを指す。
関連語に πορτοκαλιά(オレンジの木)、πορτοκαλάδα(オレンジジュース、特に炭酸入りや加糖のもの)がある。
赤と黄の中間に位置する暖色を表す。
ギリシャ語:πορτοκάλι
読み方:ポルトカリ・ポルトカーリ
ラテン文字:portokali
語源はオレンジの初期の導入国であるポルトガルの国名。イタリア語ではポルトガルを Portogallo と呼び、そこから来た甘いオレンジも portogallo と呼ばれるようになった。ギリシャ語にはおそらく南イタリア方言の portocallo(オレンジ)を通じて入り、その複数形 portocalli が中性単数形として解釈されて現在の πορτοκάλι の形になった。
派生語に πορτοκαλιά(オレンジの木)、πορτοκαλάδα(オレンジジュース)がある。また、オレンジ色を表す形容詞 πορτοκαλί もこの語から派生した。
オレンジの木の実で、球形で果汁が多い。
ギリシャ語:πορτοκαλί
読み方:ポルトカリ・ポルトカリー
ラテン文字:portokali
形容詞 πορτοκαλής(オレンジ色の)の中性形が名詞として用いられるようになったもの。
オレンジ色そのものを指す。
ギリシャ語:πορτοκαλιά
読み方:ポルトカリャ・ポルトカリャー
ラテン文字:portokalia
πορτοκάλι(オレンジ)に果樹を表す接尾辞 -ιά を付けた女性名詞。
オレンジの木を指す。
ギリシャ語:πορφυρός
読み方:ポルフィロス・ポルフィロース
ラテン文字:porfiros
古代ギリシャ語の πορφυροῦς / πορφύρεος(貝紫色の。πορφύρα「貝紫染料、ムラサキガイ」由来)からの学術借用(διαχρονικό δάνειο)で、語末の屈折型を現代ギリシャ語の -ός 型形容詞に整えなおして πορφυρός の形に落ち着いた。πορφύρα 自体は動詞 πορφύρω(波が逆巻く、湧き立つ)に由来する古層の語で、ヘキサプレックス科の巻貝(ツロツブリガイ、シリアツブリガイ)から取れる紫染料と、その色をした貝そのものを指した。プリニウスが「凝固した血の色」と形容したように赤と紫の境界にあたる深い色で、古代から中世にかけて高貴さの象徴となり、ビザンツ帝国では皇帝の子が πορφυρογέννητος(紫室生まれの)と呼ばれた。古代の πορφύρα はラテン語 purpura を経て、英語 purple(紫), porphyry(斑岩), ロシア語 порфира(皇帝の紫衣), ルーマニア語 porfiră(紫染料)の源になった。
類義語に βαθυκόκκινος(深紅の。βαθύς「深い」+ κόκκινος の合成), μοβ(紫の。フランス語 mauve 由来の外来借用で、日常の「紫」を指す), κόκκινος(赤の。日常の赤の総称), βυσσινί(えんじ色の、サワーチェリー色)。πορφυρός は古代由来の文学的・格式高い語で、夕日や王衣のような赤と紫の境界にある深い色を指す書き言葉の形として使う。派生に πορφυρό(中性形を名詞化したもの。貝紫色そのものを指す)。関連語に πορφύρα(貝紫染料、紫衣、ムラサキガイ), πορφυρογέννητος(紫室生まれ、皇帝の血筋の。ビザンツ皇族の称号), καταπόρφυρος(全身紫色の。κατά- 強調の合成)。
ギリシャ語:ποσοστό
読み方:ポソスト・ポソストー
ラテン文字:pososto
古代ギリシャ語の ποσόν(どれだけ、量)と序数接尾辞 -οστός(〜番目、〜分の一)から作られた語で、フランス語 pourcentage、tantième を写した訳語。
ギリシャ語:ποταμός
読み方:ポタモス・ポタモース
ラテン文字:potamos
古代ギリシャ語の ποταμός(川)を継承。印欧祖語で「走る, 流れる」を表した語根から出た語。名詞にハイフンでつなげて「非常に長い〜」を表す合成表現(ταινία-ποταμός など)はフランス語 fleuve(大河)からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ποταμός の語族に ποτάμι(ふだんの会話で使う形), ποταμάκι(小さな川), ποταμίσιος(川の, 川沿いの), παραπόταμος(支流), 合成語 ιπποπόταμος(カバ, もとは「川の馬」), ποταμόψαρο(川魚), ποταμόπλοιο(川船), ποταμόκολπος(河口湾)。
英語 hippopotamus(カバ), potamology(河川学)もこの古代ギリシャ語 ποταμός から入った。日常では ποτάμι が広く使われ, ποταμός は地理や文学, 比喩表現で使うことが多い。
ギリシャ語:ποτήρι
読み方:ポティリ・ポティーリ
ラテン文字:potiri
古代ギリシャ語の ποτήριον(飲み物を入れる器、杯)から。現代ギリシャ語でも、飲み物を注いで飲むための器を指す基本語としてそのまま残っている。
ποτό(飲み物、酒)が中身を言いやすいのに対して、ποτήρι はまず器そのものを表す。ただし、νερό(水)や κρασί(ワイン)のような語と結びつくと、ποτήρι νερό(コップ一杯の水)、ποτήρι κρασί(グラス一杯のワイン)のように量の意味にも自然に広がる。
指小語の ποτηράκι(小さなグラス、ちょっとした一杯)は小さなグラス、ショットグラス、ちょっとした一杯を表す。文語的な ποτήριον は教会語や定型表現に残っており、現代の ποτήρι と地続きの関係にある。
主な意味は「コップ、グラス」。そこから、中に入っている一杯分の量、さらに一杯の酒そのものも指す。
ギリシャ語:ποτίζω
読み方:ポティゾ・ポティーゾ
ラテン文字:potizo
古代ギリシャ語の ποτίζω(水をやる、飲ませる)を継承。名詞 πότος(飲み物)に動詞化の -ίζω が付いてできた語で、πότος は πίνω(飲む)と同じ語根から出ている。
派生語に ποτιστήρι(じょうろ)、πότισμα(水やり)、ποτιστικός(灌漑用の)。
英語 potable(飲める)、potion(薬剤、飲み物)もラテン語を経て同じ語根につながる。
ギリシャ語:ποτό
読み方:ポト・ポトー
ラテン文字:poto
古代ギリシャ語の ποτόν(飲み物)から。動詞 πίνω(飲む)に関連する名詞でもある。
英語の potable(飲料に適した)や potion(一服、水薬)、フランス語の poison(毒。もとは飲み物の意)も、印欧祖語で「飲む」を意味する語根から来たラテン語を経由しており、ποτό と起源を共有している。
文脈によっては飲み物全般を指すが、αναψυκτικό(清涼飲料水)や οινόπνευμα(アルコール)と使い分けられる。口語や俗語では πιοτό という形もあり、親しみを込めた指小語には ποτάκι(ちょっとした一杯、お酒)がある。
:::vocab
- ενεργειακό ποτό(エナジードリンク)
- λευκά ποτά(ホワイトスピリッツ)
- ισοτονικά ποτά(アイソトニック飲料、スポーツドリンク) :::
主な意味は飲料だが、現代の日常生活では特に酒類、アルコール飲料を指すことが多い。そこから、習慣的な飲酒や酒に頼る状態を指すこともある。
ギリシャ語:πουκάμισο
読み方:プカミソ・プカーミソ
ラテン文字:poukamiso
πουκάμισο はラテン語 camisia にさかのぼる語群に属する。そこから文語的な καμίσιον(シャツ)や、中世ギリシャ語の πουκάμισον(シャツ)を経て、現代ギリシャ語の πουκάμισο になった。
現代ギリシャ語では、上半身に着て前で留めるシャツを指す日常語として定着している。
衣類全般を広く言うのは ρούχο(布製品、服、衣類)で、πουκάμισο はその中でも、前をボタンで留めるえり付きのシャツを指すことが多い。
そこから意味が広がって、正教会で崇敬の対象になる聖像であるイコンを覆う銀の被せ飾りや、φίδι(ヘビ、蛇)が脱皮して残す皮も言う。
主な意味はシャツ。とくに長袖や半袖で前開きのものを指し、素材や色を添えて具体的に言うことが多い。別の意味では、イコンにかぶせる銀の覆いと、ヘビの抜け殻も表す。
指小語 πουκαμισάκι(小さなシャツ)は、小さなシャツや小ぶりのシャツを言うときに使う。
成句では、πουκάμισο は中身のないものや、つまらないことでの争い、相手を次々取り替えることのたとえにもなる。
ギリシャ語:πουλί
読み方:プリ・プリー
ラテン文字:pouli
ラテン語で「動物の子供、小鳥、雛」を意味する pullus に由来する。コイネーの時代にギリシャ語へ πούλλος として入り、その指小形 πουλλίον を経て中世ギリシャ語で πουλλί となった。中世後半の音韻変化で λλ が λ に簡略化され、現在の形になった。
英語の pullet(若鶏)や poultry(家禽)も同じラテン語 pullus から来ている。
同じ「鳥」を表す πτηνό という語もあるが、πτηνό は学術的・フォーマルな表現で、日常的には πουλί が使われる。
主な意味は鳥全般で、小さな鳥や鶏の雛を指すこともある。親しみを込めた呼びかけや比喩にも使われ、成句にもよく登場する。
指小形の πουλάκι もよく使われる。
ギリシャ語:πούπουλο
読み方:プープロ・プーープロ
ラテン文字:poupoulo
北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 pùpoła からの借用。シチリア語 puppula、イタリア語 puppola も同じ語で、方言のイタリア語 puppolo はミミズクを指すといい、ミミズクの柔らかい羽毛が名の由来とみられる。一般の羽や翼は φτερό で言う。
ギリシャ語:πράγμα
読み方:プラグマ・プラーグマ
ラテン文字:pragma
古代ギリシャ語の πρᾶγμα(物, 事, 事業)に由来。πράττω(行う, する)の名詞形で, 「行われたこと, 扱われる物・事」の意味から出ている。現代の抽象的な「こと, 情勢, 現実」の用法はフランス語 chose, ドイツ語 Ding からの意味借用で輪郭が整った。
くだけた形の πράμα / 複数 πράματα は中世の段階で子音連続 γμ が同化・単純化して生まれた別形で, ふだんの会話や俗な言い回しでよく出てくる。小さく言う πραγματάκι / πραματάκι も同じ場面で使う。
同じ πρᾶγμα の語族に πραγματικός(現実の), πραγματικότητα(現実), πραγματεία(論考), πραγματεύομαι(扱う, 論じる), πραγματοποιώ(実現する)。意味の受け皿が広く, はっきり「問題, 困りごと」を指したいときは πρόβλημα(問題, 課題)のほうが明確。
ギリシャ語:πρασινάδα
読み方:プラシナダ・プラシナーダ
ラテン文字:prasinada
ギリシャ語:πράσινος
読み方:プラシノス・プラーシノス
ラテン文字:prasinos
古代ギリシャ語の πράσινος(西洋ネギ色の)を継承。πράσον(西洋ネギ)+ -ινος(…色の, …製の)からできた語で, 西洋ネギのような淡い緑色が出発点。古代では χλωρός(青々とした)が緑全般に使われることが多かったが, 現代ギリシャ語では πράσινος がそれに代わり, χλωρός は植物の青々とした様子や「生の, みずみずしい」の意味で残る。
英語の鉱物名 prase(淡緑水晶)も同じ語源。英語 chlorophyll(クロロフィル, 葉緑素)は χλωρός から。派生に πρασινίζω(緑になる), πρασινάδα(緑, 緑地), 指小形の πρασινούτσικος(やや緑がかった)。「環境保護の緑, 緑の党」の意味は, ドイツ語 die Grünen からの意味借用で加わった。中性形 πράσινο は名詞として「緑色」「青信号」「緑の党員」を指す。
ギリシャ語:πρασινωπός
読み方:プラシノポス・プラシノポース
ラテン文字:prasinopos
πράσινος(緑の、緑色の) に、古代ギリシャ語 ὤψ(目、顔)にさかのぼる -ωπός(〜色を帯びた)が付いてできた形容詞である。現代ギリシャ語では、完全な緑ではなく、緑がかった色を言う。
πράσινος(緑の、緑色の) が明確な緑を言うのに対して、πρασινωπός はその緑が少し見えるだけの色合いを言いやすい。黄みのある淡い方向では λεμονής(レモン色の、薄黄色の) と近づくこともあるが、πρασινωπός には緑の気配が残る。
意味は緑がかった、緑っぽい。水面、肌、鉱物、古い紙などの微妙な色合いに使いやすい。
ギリシャ語:προάστιο
読み方:プロアスティオ・プロアースティオ
ラテン文字:proastio
古代ギリシャ語の προάστιον(郊外)から。これは「〜の前、外」を意味する接頭辞 προ- と、「都市、町」を意味する ἄστυ(アスチュ)が組み合わさった語で、「都市の前面にあるもの」を表していた。
英語の suburb は、ラテン語の sub(下に)と urbs(都市)から成り、「都市の下(周辺)」という構成になっている。一方、ギリシャ語の προάστιο は「都市の前面」という構成で、同じ「郊外」を指しながら空間の捉え方が異なる。
類義語に περίχωρα(ペリホラ、周辺地域)があるが、こちらはより広い範囲を指すことが多い。προάστιο は大都市に隣接し、居住などの都市機能の一部を担う特定の地区や集落を指す。
主な意味は「郊外」で、大都市の外側に位置しながら非常に近い距離にある居住区を表す。
ギリシャ語:πρόβατο
読み方:プロヴァト・プローヴァト
ラテン文字:provato
動詞 προβαίνω(進む, 歩み出る)から派生した古代ギリシャ語の πρόβατον(羊)に由来。
現代ギリシャ語では、羊全般の基本語が πρόβατο で、雄を特に言うときは κριάρι、雌を特に言うときは προβατίνα、子を言うときは αρνί を使う。日常語では αρνάκι も、小さな子羊や料理の名前としてよく現れる。
主な意味は羊、ヒツジ。家畜として群れで飼われ、μαλλί、γάλα、肉のために飼育される。比喩では、自分で考えず集団に従う人や、気弱で害のない人を指すこともある。
成句では、集団の中で浮いて受け入れられにくい人を μαύρο πρόβατο と言う。英語の black sheep に近い使い方で、「一家の厄介者」のような響きがある。
ギリシャ語:πρόβλημα
読み方:プロヴリマ・プローヴリマ
ラテン文字:provlima
古代ギリシャ語の πρόβλημα(前に差し出されたもの, 課題)に由来。πρό(前に)+ βάλλω(投げる, 置く)からできた προβάλλω(前に出す, 差し出す)の名詞形で, 突き出た地形や防御物, 検討用の課題など複数の意味が重なる。現代ギリシャ語の「問題, 不具合」「学問上の設題」の用法は, フランス語 problème, 英語 problem の意味配置と重なって整った。
英語 problem, フランス語 problème, ドイツ語 Problem もラテン語 problema を経て同じ語源。派生に προβληματικός(問題のある, 疑わしい), προβληματίζω(悩ませる, 考えさせる), προβληματισμός(熟考, 問題意識)。
ζήτημα(事項, 案件)は話し合うべき事柄, θέμα(テーマ, 話題)は主題や話題を言うことが多い。πρόβλημα は対処や解決を要する困難や不具合を指すことが多い。
ギリシャ語:προσευχή
読み方:プロセフヒ・プロセフヒー
ラテン文字:prosefchi
古代ギリシャ語で「願う、祈る」を意味する動詞 εὔχομαι に、方向を示す接頭辞 πρός(〜に向かって)が付き、「神に祈る」を意味する動詞 προσεύχομαι が生まれた。その名詞形が προσευχή で、新約聖書が書かれたコイネーの時代から現代に至るまで、一貫して「神への祈り」を意味している。
類義語の δέηση(請願、祈願)が何かを「乞う」ニュアンスが強いのに対し、προσευχή は礼拝、感謝、神との対話を含む、より広い意味での「祈り」を指す。
祈りの行為そのもの、つまり人間が神に対して崇拝や感謝を表し何かを願うコミュニケーションを指すほか、祈祷文や祈りの特定のテキストを指すのにも使われる。
ギリシャ語:προσκύνημα
読み方:プロスキニマ・プロスキーニマ
ラテン文字:proskynima
古代ギリシャ語の動詞 προσκυνέω(ひれ伏して敬意を示す)は、προσ-(〜に向かって)と κυνέω(口づけする)から成る。その名詞形 προσκύνημα は拝礼や敬意の表明を指し、中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語に至る。現代の動詞形は προσκυνώ(礼拝する、ひれ伏す)。
英語の proskynesis(古代の拝礼の儀式を指す歴史用語)は同じ語源から来ている。
単なる旅行ではなく、宗教的・精神的な行為を表す語。宗教的な崇拝の現れとしての礼拝や、故人への敬意の表明が基本的な意味で、信者が参拝する聖地や巡礼地そのものも指す。比喩的に、感情的な結びつきがある場所を訪れることにも使われる。歴史的には、支配者に対する帰順の意味もあった。
ギリシャ語:πρόσωπο
読み方:プロソポ・プローソポ
ラテン文字:prosopo
古代ギリシャ語の πρόσωπον(顔、人、前面)から。
現代ギリシャ語の「人物」「登場人物」「自然人・法人」のような抽象的な意味には、ヘレニズム期以来の用法を文語的に引き継いだ面がある。とくに「人」まわりの意味ではフランス語 personne や personnage、「外観」の意味ではフランス語 face の影響も加わっている。
口語で「表」「正面」を表す使い方には、φάτσα(顔つき、面)に引かれた意味の広がりも見られる。
主な意味は「顔」だが、そこから「人物」「本性や身元」「面目」「法律上の主体」「物語の登場人物」「文法上の人称」「物事の様相や外観」へと広がっている。具体的な顔つきから抽象的な人格や表れ方まで、一つの語で大きくカバーする語である。
表現では κατά πρόσωπο(面と向かって)や πρόσωπο με πρόσωπο(顔を合わせて)がよく使われる。γη(大地)や θεός(神)と結びついた成句もあり、文字どおりの「顔」から離れて、対面性や面目、消息の有無まで表す。
ギリシャ語:πρόταση
読み方:プロタシ・プロータシ
ラテン文字:protasi
πρόταση(文、提案)は、προτείνω(差し出す、提案する)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、文法上の文にも、会議などで出される提案にも使われる。
φράση(句、フレーズ、言い回し) が短い表現のまとまりを言うのに対して、πρόταση はより完結した文を言いやすい。仕事の場では συνάντηση(会議、打ち合わせ)で出される提案の意味にもなる。
意味は文、提案。言語の単位にも、差し出された案にも使える。
ギリシャ語:πρύμνη
読み方:プリムニ・プリームニ
ラテン文字:prymni
古代ギリシャ語の πρύμνη / πρύμνα(船尾)に由来。古代の形容詞 πρυμνός(最後尾の, 奥の)が女性単数形で名詞化した語。現代ギリシャ語では πρύμνη が標準形, πρύμνα は文語的, πρύμη は別綴り。対義語は πλώρη(船首)。派生に πρυμνήσια(船尾綱)。
大文字の Πρύμνη(とも座)はラテン語 Puppis(船尾)を訳した星座名。18世紀にフランスの天文学者ラカイユが巨大な星座 Αργώ(アルゴ船)を三つに分けたときに生まれた, 船尾にあたる部分。元の Αργώ はイアーソーンが金羊毛を求めて航海した伝説の船。
ギリシャ語:πρωί
読み方:プロイ・プロイー
ラテン文字:proi
ギリシャ語:πρωινή δόξα
読み方:プロイニドクサ・プロイニードクサ
ラテン文字:proini doksa
πρωινός(朝の)の女性形 πρωινή と δόξα(栄光)からなる連語で、「朝の栄光」の意。英語 morning glory からの翻訳借用で、ヒルガオ科の花、とくにマルバアサガオ(Ipomoea purpurea)を指す。δόξα πρωινού の語順でも使う。
同じ植物を πρωινή χαρά(朝の喜び), χωνάκι(円錐形の容器の意), 学名 Ipomoea の転記 ιπομέα(ιπομοία, ιπόμαια とも)とも呼ぶ。
ギリシャ語:πρωτεύουσα
読み方:プロテヴサ・プロテーヴサ
ラテン文字:protevousa
動詞 πρωτεύω(第一位である、主導する)の現在分詞の女性形に由来する。πρωτεύω は古代ギリシャ語の πρῶτος(第一の、最初の)から派生した動詞で、πρωτεύουσα は「第一位にある」を意味する分詞として使われていた。女性形をとるのは πόλις(都市)が女性名詞であるためで、もとは πρωτεύουσα πόλις(第一の都市)のように用いられていたものから πόλις が落ち、πρωτεύουσα だけで「首都」を意味するようになった。
フランス語の ville capitale(首都)やドイツ語の Hauptstadt(首都)の意味借用によって、行政の中心地を指す用法が定着した。
もとの πρῶτος(第一の)は、英語の principal(主要な)や prototype(原型)と共通する語源で、いずれも「第一の」から派生している。
行政上の中心都市としての「首都」を指すほか、特定の分野で中心的な役割を果たす都市を指すのにも使われる。
ギリシャ語:Πτηνόν Παραδείσιον
読み方:プティノンパラディシオン・プティノーンパラディシオン
ラテン文字:ptinon paradision
πτηνόν(鳥)と παραδείσιον(楽園の)を合わせた連語で、「楽園の鳥」の意味。17世紀にオランダの航海士ケイザーとハウトマンが南天で観測した鳥類を記録し、プランシウス(プランキウスとも)が星座として定めた。新しい星座なので神話はない。英語名 Apus は古代ギリシャ語の ἄπους(脚のない、ἀ-「〜ない」+ πούς「脚」)から来ており、ヨーロッパに持ち帰られたゴクラクチョウの剥製は脚が取り除かれていたため、脚のない鳥と誤って考えられていた。ふつうの「鳥」は πουλί で言う。
ギリシャ語:πυγολαμπίδα
読み方:ピゴラビダ・ピゴラビーダ・ピゴランビダ・ピゴランビーダ
ラテン文字:pygolampida
ギリシャ語:πυξίδα
読み方:ピクシダ・ピクシーダ
ラテン文字:pyxida
古代ギリシャ語でツゲの木を意味する πύξος に由来する。ツゲで作られた小箱は πυξίς と呼ばれ、中世以降に磁針を収める箱としてこの名が用いられるようになった。現代ギリシャ語では主に方位磁石を指すが、考古学用語としてもその名を留めている。
英語の box や pyxis(ピクシス:星座の羅針盤座や解剖学・考古学用語)と語源を共有する。
類義語に μπούσουλας があり、イタリア語 bussola(羅針盤)に由来する口語的な表現。合成語としては ραδιοπυξίδα(無線方位測定機)がある。
主な意味は方位磁石・コンパス。比喩的に人生や行動の指針を表すのにも使われる。古代の小箱を指す考古学用語としても残る。なお、日本語で同じく「コンパス」と呼ばれる製図用の円を描く道具は、ギリシャ語では διαβήτης という別の語になる。
ギリシャ語:πυρ
読み方:ピル
ラテン文字:pyr
古代ギリシャ語の πῦρ(火)に由来。印欧祖語で「火」を表す語根に続く語で, 英語 fire, ドイツ語 Feuer, ヒッタイト語 paḫḫur も同じ語根の仲間。英語 pyre(火葬の薪), pyro-(火の〜), pyromania(放火癖)はこの語からラテン語経由で英語に入った。
射撃や砲火を指す用法は, フランス語 feu, 英語 fire からの意味借用で加わった。派生に πυρά(篝火, 砲火), πυρετός(熱, 熱病), πυροσβέστης(消防士), πυροβόλο(大砲)。
ふだん「火」と言うときは φωτιά, πυρ は軍事や宗教, 哲学の文脈や慣用句に使うことが多い。
ギリシャ語:πυρετός
読み方:ピレトス・ピレトース
ラテン文字:pyretos
古代ギリシャ語の πυρετός(燃えるような熱, 熱病)を継承。πυρ(火)に状態を表す -ετός が付いた語で, 体が燃えるように熱くなる状態から発熱や熱病を指す。比喩の「熱狂, 興奮」の用法は, フランス語 fièvre からの意味借用で加わった。
英語 pyretic(熱病の)は同じ語族の仲間。派生に πυρετικός(熱病の), πυρετούλης(微熱)。同じ πυρ- の語族には πυρέσσω(熱病にかかる)から作られた πυρεξία(発熱状態), さらにその派生 υπερπυρεξία(過高熱)。
医学の同義語に πυρεξία。θερμότητα(熱, 熱さ)は物理的な熱エネルギーや温度の高さを指し, πυρετός の病的な発熱とは区別される。関連に υποθερμία(低体温症), υπερθερμία(高体温症)。
ギリシャ語:πυροδοτώ
読み方:ピロドト・ピロドトー
ラテン文字:pyrodoto
古代ギリシャ語の πῦρ(火)と δίδωμι(与える)を πυρο- + -δοτώ の形で組み合わせた学術借用で、19 世紀中頃に作られた。フランス語 mettre le feu(〜に火をつける、爆発装置に点火する)の意味を写した翻訳借用で、「爆発装置を作動させる」の語義はここから定着した。
類義語に πυρπολώ(火を放つ、放火する)。派生に πυροδότηση(起爆、点火), πυροδότης(起爆装置、引き金となる人・要因), πυροδότρα(女性の起爆者), πυροδοτικός(起爆用の), αναπυροδοτώ(再起爆する), αποπυροδοτώ(起爆解除する)。
ギリシャ語:πυροτέχνημα
読み方:ピロテフニマ・ピロテーフニマ
ラテン文字:pyrotechnima
古代ギリシャ語の πυρο-(πῦρ「火」から)と τέχνημα(工芸品、技術で作られたもの。τέχνη「技術、芸術」から)を組み合わせて作られた学術借用で、フランス語 feu d'artifice(花火。直訳「技の火」)の意味を写した翻訳借用(μεταφραστικό δάνειο)。語頭の πυρο- は πυρκαγιά(火災)や πυροδοτώ(起爆する)にも現れる合成要素。
類義語に βεγγαλικό(花火、ベンガル花火)。βεγγαλικό は打ち上げ・手持ちの両方を含む花火全般をふつうに指す形で、πυροτέχνημα はやや硬い語。関連語に花火・爆薬の類語として βαρελότο(爆竹), κροτίδα(クラッカー、爆竹), σκορδάκι(かんしゃく玉), φωτοβολίδα(照明弾、信号弾)。英語の pyrotechnics(花火術)は同じ πῦρ と τέχνη から新ラテン語 pyrotechnicus、フランス語 pyrotechnique を経由して入った学術借用で、πυροτέχνημα と語構成を共有する。
Ρ
ギリシャ語:ραδιόφωνο
読み方:ラディオフォノ・ラディオーフォノ
ラテン文字:radiofono
英語 radiophone からの借用語。radio- はラテン語 radius(光線)から、-phone は古代ギリシャ語の φωνή(声、音)に由来。後半の -phone はギリシャ語に由来する要素が英語を経由して再び取り入れられた形にあたる。
派生語に ραδιοφωνικός(ラジオの)、ραδιοφωνία(ラジオ放送)など。映像も送る τηλεόραση(テレビ)と並ぶ放送媒体の名。
英語 radio は同じ radius から、telephone は同じ φωνή からできた語。
ギリシャ語:ρίζα
読み方:リザ・リーザ
ラテン文字:riza
古代ギリシャ語の ῥίζα(根)を継承。印欧祖語で「根」を表す語根に続く語で, 植物の地中部分を指すところから, 土台や出どころを指す比喩にも使う。語学の「語根」, 数学の「根」, 化学の「基」という専門用法は, フランス語 racine とドイツ語 Wurzel からの意味借用で加わった。
英語 root(古ノルド語 rót 経由), ラテン語 radix(→ radical, radish), ドイツ語 Wurzel は同じ印欧祖語の語族の仲間。英語の接頭辞 rhizo-(根の〜, rhizome 根茎, rhizosphere 根圏)はこの語からラテン語経由で英語に入った。派生に ριζικός(根源的な, 徹底的な), ριζώνω(根を張る), ξεριζώνω(根こそぎにする)。
χορτάρι(草)や κλήμα(ブドウの木)の地下部分を指す具体的な用法のほかに, 人の出自や文化のルーツなど, 目に見えない土台も指すことが多い。
ギリシャ語:ροδάκινο
読み方:ロダキノ・ロダーキノ
ラテン文字:rodakino
ροδάκινο(モモ、桃)は、ラテン語 duracinum(桃)を経て、中世ギリシャ語 ροδάκινον(モモ)から現代ギリシャ語に続いた語である。現在は、やわらかい果肉を持つ桃の実を言う基本語として定着している。
実は ροδάκινο、木は ροδακινιά(モモの木) と言い分ける。果実名と木の名がきれいに対応する型である。
意味はモモ、桃。生の果実にも、缶詰やコンポートにする桃にも使える。
ギリシャ語:ροδαλός
読み方:ロダロス・ロダロース
ラテン文字:rodalos
ροδαλός(ほんのり赤い、バラ色の)は、ρόδο(バラ)に関わる形からできた語である。現代ギリシャ語では、花びらや頬のようなやわらかい赤みを表す。
ροδακινί(桃色の、ピーチ色の) が黄みも感じるやさしい桃色に寄るのに対して、ροδαλός はもっと血色のある赤みを言いやすい。はっきりしない赤み全般では κοκκινωπός(赤みがかった、赤っぽい)とも近いが、ροδαλός は顔色や花の色でやわらかい印象を持ちやすい。
意味はほんのり赤い、バラ色の。頬、唇、朝焼け、花びらの色に使いやすい。
ギリシャ語:ρόδινος
読み方:ロディノス・ローディノス
ラテン文字:rodinos
古代ギリシャ語の ῥόδινος(バラ色の)に由来。ῥόδον(バラ)に形容詞を作る -ινος が付いた語で, バラの花びらを思わせるやわらかな赤みを表す。色から, 物事が好都合に進むことや先行きが明るいことを表す比喩にも使う。
英語 roseate(バラ色の), ラテン語 roseus(バラの, バラ色の)は ῥόδον の語族の仲間。元の名詞は ρόδο(バラ)で, 中性名詞化した ρόδινο(バラ色そのもの)が ρόδινος の派生。近い色名に ροδής(淡いバラ色の), τριανταφυλλής(バラ色の), τριανταφυλλένιος(バラのような色の), ροδαλός(血色のよい, バラ色の), ροδοκόκκινος(バラがかった赤の)。
ふだん「バラ」と言うときは τριαντάφυλλο が一般的で, ρόδινος はバラからの連想色を表す形容詞として文語や色名に使うことが多い。色味としては κόκκινος(赤い)より淡くやわらかい赤みで, 比喩の「順調な」は ευνοϊκός(好都合な)に近い。
ギリシャ語:ρόδο
読み方:ロド・ロード
ラテン文字:rodo
古代ギリシャ語の ῥόδον(バラ)から。
現代ギリシャ語では、日常的な「バラ」は τριαντάφυλλο(バラ)で表すのが一般的で、ρόδο(バラ)は文語的、文学的な響きをもつ語として使われる。
ρόδο(バラ)からは ροζ(ピンク)といった語も派生している。主な意味はバラの花で、美しさや若々しさの象徴として現れることもある。
主に文語的、文学的な表現でバラを指す語。
ギリシャ語:ροζ
読み方:ロズ・ローズ
ラテン文字:roz
ラテン語の rosa(バラ)にさかのぼるフランス語 rose(ピンク)から入った借用語。フランス語の rose は、もともとバラを意味する語から色名になったもので、現代ギリシャ語の ρόδο(バラ)とも同じ語源につながる。
現代ギリシャ語では、μπλε(青)や γκρι(グレー)と同じく、性・数・格で形が変わらない不変化語として定着している。
基本は、淡い赤を帯びた色としての「ピンク」。形容詞として色を表すだけでなく、名詞としてピンク色そのものやピンク色の服も指す。κόκκινο(赤)よりやわらかく、μοβ(紫)に寄りすぎない中間的な色合いを広くカバーする。
近い色名として、ροζέ(ロゼ色)、σομόν(サーモンピンク)、φούξια(フューシャ)なども並べられる。
そこから俗語的に、性的でいかがわしい内容をもつものを表す意味にも広がる。とくに ροζ ξενοδοχείο(ラブホテル)は、情事のために使うホテルを指す。
指小形には ροζάκι(小さめのピンク、かわいらしいピンク)、ροζουλί(やわらかいピンク)があり、どちらも小ささややわらかさを感じさせる「ピンク」の言い方として使われる。
成句では ροζ σύννεφο(ピンクの雲)が、現実を離れて理想化された夢見心地の状態を表す。また ροζ τηλέφωνα / ροζ γραμμή(有料のエロティックな電話サービス)は、性的な会話や録音メッセージを提供する回線を指す。
ギリシャ語:ρολόι
読み方:ロロイ・ロローイ
ラテン文字:roloi
ρολόι は、古代ギリシャ語の ὡρολόγος(時を扱う人、時を整えて読む人)にさかのぼる。ὡρολόγος は ὥρα(時間、時刻)と λέγω(並べる、整える)からできた語である。そこに、道具名や物の名を作る接尾辞 -ιον(道具名や物の名を作る語尾)が付いて ὡρολόγιον(時を示すもの、時計)という形になった。その後、語頭の ὡ-(語頭の要素)が落ち、現代ギリシャ語の ρολόι になった。
ώρα(時間、時刻)が時間そのものを言うのに対し、ρολόι はそれを示す機械や器具を指す。針は δείκτης(指針、指示棒、人差し指、指数、添字)と呼ばれ、壁掛け時計、腕時計、日時計、デジタル時計までまとめてこの語で言える。指小形 ρολογάκι(小さな時計、かわいく言う腕時計)は、小さな時計や腕時計をくだけて言うときに使う。
植物名では、つる性で目立つ花をつけるアサガオを指すことがある。この意味では ιπομέα(アサガオ、朝顔)のような呼び名と重なる。
主な意味は「時計」。そこから、町なかの時計台、水道や電気のメーター、車の計器類にも広がる。比喩的には βιολογικό ρολόι(体内時計)も言い、成句では「きっかり計る」「物事が順調に進む」「機械が正確に動く」といった意味にもなる。
ギリシャ語:ρούχο
読み方:ルホ・ルーホ
ラテン文字:roucho
ρούχο は中世ギリシャ語の ρούχον(布製品、衣類)に由来し、そのもとにはスラヴ語 ruho がある。もともとは布を裁って縫った品を広く指す語で、現代ギリシャ語でもその広がりを残している。
指小語 ρουχαλάκι(小さな服、赤ちゃんの服)と ρουχάκι(小さな服、赤ちゃんの服)は、どちらも小さな服や赤ちゃんの服を表す。
寝具や衣類のような縫製品全般を指せるが、日常語ではその中でも「服」「着るもの」の意味が中心になる。複数形 ρούχα(衣類一式、服)で衣類一式を言うことが多く、成句でもこの形がよく現れる。
成句では、着る物の有無から貧しさを言ったり、腹立ちや不機嫌さを表したりする。口語では έχει τα ρούχα της(月経中である)の形で、月経中であることを遠回しに言う表現にもなる。
ギリシャ語:ρυάκι
読み方:リアキ・リアーキ
ラテン文字:ryaki
ρυάκι は古代ギリシャ語の ῥύαξ(流れ、小川)に由来する。中世ギリシャ語では ρυάκιον(小川)の形が使われ、そこから現在の ρυάκι になった。
ποταμός(川)より小さい自然の水の流れを指す語で、ρεματάκι(小さな沢、小川)や ρείθρο(細い流れ、水路)に近い。いっぽう、αυλάκι(溝、水路)や χαντάκι(掘り溝、どぶ)のように人工の溝や掘られた溝をいう語とは少しずれる。
主な意味は、小さく流れる自然の水路としての「小川」。森や谷を流れる浅い流れによく合う語で、さらさら流れる様子も連想させる。そこから、水以外でも液体が細く続いて流れる筋をいうことがある。
ギリシャ語:ρυθμός
読み方:リスモス・リスモース・リトゥモス・リトゥモース
ラテン文字:rythmos
古代ギリシャ語の動詞 ῥέω(流れる)から派生した ῥυθμός(流れや動きの整い方)に由来。ラテン語 rhythmus を経て、英語 rhythm にもなった。現代ギリシャ語ではリズムやペースを表すほか、建築や芸術の様式を指すのにも使われる。
Σ
ギリシャ語:σάλτσα
読み方:サルツァ・サールツァ
ラテン文字:saltsa
イタリア語の salsa(塩味のついたもの、調味された汁)からの外来借用。中世以降にギリシャ語に入り、写本には σάρτσα のつづりも現れたが、子音連続を発音しやすくした σάλτσα の形が定着した。イタリア語 salsa はラテン語 salsus(塩で味付けされた)の女性形 salsa に由来し、ラテン語 sal(塩)にさかのぼる。「塩」を表す印欧祖語の語根を共有し、古代ギリシャ語の ἁλς, ἁλός(塩、海)も同じ語根からの継承で同根。ラテン語 sal からは英語 sauce(仏 sauce 経由), salad(仏 salade 経由), salsa(西 salsa), sausage(古仏 saussiche 経由), salt など料理関連の語が世界中に広まった。
類義語に σως(ソース。フランス語・英語 sauce 由来の外来借用で、西洋料理レストランや洋食メニューの硬い文脈で使う), άρτυμα(調味料、薬味。古代ギリシャ語由来で、調理に使う風味付けの素材一般を指す書き言葉の硬い形), έμβαμμα(つけだれ、ディップ。古代ギリシャ語の ἐμβάπτω「浸す」由来), ζωμός(煮汁、出汁。古代ギリシャ語由来)。σάλτσα はパスタ・肉料理・サラダなどに添える液状またはとろみのある調味された調理物全般を指す形として広く使う。派生に σαλτσούλα(小さなソース、ちょっとしたソース。指小形), σαλτσιέρα(ソース入れ、グレービーボート)。
ギリシャ語:σαμιαμίδι
読み方:サミアミディ・サミアミーディ
ラテン文字:samiamidi
中世ギリシャ語の σαμιαμίθι(ν)(サミアミティン)の指小形 σαμιαμίθιον(サミアミティオン)に由来する。語末が縮まり現在の形になった。θ を保った σαμιαμίθι の形も地域によって使われる。
σαμιαμίδι には μολυντήρι(モリンティリ)という別名もある。「汚すもの」を意味し、ヤモリが触れたものを汚すという迷信に基づく呼び名。
小型で素早いトカゲの一種。動物としての意味のほか、体が小さくきびきびした人、主に子供を指す口語的な比喩にも使う。
ギリシャ語:σαρδέλα
読み方:サルデラ・サルデーラ
ラテン文字:sardela
中世ギリシャ語 σαρδέλα を継承した語。イタリア語 sardella(sarda の指小形), フランス語 sardine と同じ流れで、ラテン語 sardus(サルデーニャの、サルデーニャの魚)に行き着く。英語 sardine もフランス語 sardine 経由の同源語。
指小形に σαρδελίτσα。近い小魚に γαύρος(アンチョビ), αντσούγια(塩蔵アンチョビ), παπαλίνα。軍の俗語では制服の階級章や線飾りを指し、σιρίτι(縁テープ)や γαλόνι(ガロン)と同じ文脈に出る。
ギリシャ語:σάρκα
読み方:サルカ・サールカ
ラテン文字:sarka
ギリシャ語:σατανάς
読み方:サタナス・サタナース
ラテン文字:satanas
ヘブライ語 שטן(śāṭān, 敵対者)がギリシャ語に Σατανᾶς の形で借用され, 七十人訳聖書・新約聖書を通じて悪魔の名として用いられ, そのまま現代ギリシャ語に受け継がれた。
同じ σατανάς の語族に σατανικός(悪魔的な), σατανικότητα(悪魔的な性質), σατανισμός(悪魔崇拝), σατανιστής(悪魔崇拝者), αρχισατανάς(大魔王)。
英語 Satan, フランス語 Satan も同じヘブライ語を源にし, ギリシャ語訳聖書を経由して各言語に入った。日常の慣用表現では διάβολος(悪魔, ギリシャ語で「中傷する者」)のほうが圧倒的に多く使われ, σατανάς は宗教的・格式高い文脈と, 「ずる賢い人」「いたずらっ子」の比喩で出てくる。
ギリシャ語:σβήνω
読み方:ズヴィノ・ズヴィーノ
ラテン文字:svino
σβήνω(消す、消える)は古代ギリシャ語の σβέννυμι(消す、消える)に由来し、中世ギリシャ語の σβήνω(消す、消える)を経て現代ギリシャ語に続く。火や光が消えることを表す古い動詞が、そのまま日常語として受け継がれた形である。
以前は σβύνω(古い綴りの形)という綴りも広く見られたが、現在は σβήνω が標準的である。反対の動きは ανάβω(火をつける、点ける)で、点火と消火、点灯と消灯を対で言うときによく並ぶ。
主な意味は φωτιά(火)や φως(光、明かり)を消すこと。そこから、機械や画面が止まること、文字やデータを消すこと、比喩で ελπίδα(希望)や ζωή(命、人生)、πίστη(信仰、確信)のようなものが失われること、さらに料理で仕上げに液体を加えることまで表す。
ギリシャ語:σβούρα
読み方:ズヴラ・ズヴーラ
ラテン文字:svoura
回転の音をまねた擬音起源とされる中世ギリシャ語 σβούρα をそのまま継承した語。指小形に σβουρίτσα、派生動詞 σβουρίζω(こま回しする), その名詞化 σβούρισμα(回転の動き)がある。休みなく動き回る人を比喩で言うほか、木工の回転刃機械も指す。
ギリシャ語:σειρά
読み方:シラ・シラー
ラテン文字:seira
古代ギリシャ語の σειρά(紐, 鎖, 列)に由来。もとは「紐, 鎖」の意味が中心で, 後に「列, 配列」にも使われるようになった。現代の「順序, シリーズ, 連続番組」の用法はフランス語 série, ordre, 英語 serial からの意味借用で輪郭が整った。
同じ σειρά の語族に σειριακός / σειραϊκός(連続の, 連番の), σειρούλα(小さな列), παλιοσειρά(古いシリーズ), 合成語 συμβολοσειρά(文字列), στοιχειοσειρά(文字組版)。軍隊では同期入隊の兵士集団を σειρά と呼び, くだけた呼びかけ「おい同期」としても使う(正式名称 ΕΣΣΟ: Εκπαιδευτική Σειρά Στρατευσίμων Οπλιτών)。
英語 series, serial, serialize もラテン語 serere(つなぐ, 編む)から生まれた語で, σειρά と共通の印欧語根に連なる。トルコ語 sıra(順番, 列)は中世ギリシャ語 σειρά からの借用。
ギリシャ語:σεισμός
読み方:シズモス・シズモース
ラテン文字:seismos
古代ギリシャ語の σεισμός(揺れ、震動、地震)を継承。σείω(揺さぶる)を名詞化した語で、古代では γῆς σεισμός(大地の揺れ)の略として地震を指していた。
英語 seismic(地震の), seismology(地震学)も同じ語源。派生語に μετασεισμός(余震), σεισμικός(地震の)。
ギリシャ語:σελήνη
読み方:セリニ・セリーニ
ラテン文字:selini
古代ギリシャ語の σελήνη(月)に由来。σέλας(輝き, 光)と同じ語族で, 印欧祖語で「輝く」を表す語根から作られた語。「明るく輝くもの」という見方から, 夜空で光る天体の月を指すようになった。ギリシャ神話では月の女神セレーネー(Σελήνη)の名でもある。
英語 seleno-(月の〜, selenology 月学, selenography 月面図)は σελήνη からの学術的な連結形。化学元素の σελήνιο(セレン, 原子番号34)は, 地球の随伴天体という意味合いで, 先に命名された τελλούριο(テルル, ラテン tellus「大地」)と対になるように, スウェーデンの化学者ベルセリウスが月の名から名づけた。派生に σεληνιακός(月の), πανσέληνος(満月), ημισέληνος(半月), σεληνοφώτιστος(月光に照らされた), σεληνιάζομαι(てんかん発作を起こす, 月憑きになる)。
日常会話で「月」を指すときは φεγγάρι が一般的で, σελήνη は天文用語や公式の場面に使うことが多い。
ギリシャ語:σελόσια
読み方:セロシア・セローシア
ラテン文字:selosia
学名 Celosia のギリシャ文字転記。σελόζια とも表記する。ケイトウ属(Celosia)の植物を指し、とくに Celosia argentea の各品種が栽培される。
トサカケイトウ(とさか状の花序をもつ cristata 品種)は λειρί του κόκορα(オンドリのとさか), 羽毛ケイトウ(羽毛状の花序をもつ plumosa 品種)は αλεποουρά(キツネの尻尾)とも呼ばれる。
学名 Celosia は古代ギリシャ語 κήλεος(燃える)に由来し、花の炎のような外見にちなむ命名。
ギリシャ語:σεντέφι
読み方:セデフィ・セデーフィ・センデフィ・センデーフィ
ラテン文字:sentefi
トルコ語の sedef(真珠層)に由来する。sedef はアラビア語の ṣadaf(貝殻)から来ており、トルコ語では貝殻の内側の光沢ある層を指すようになった。中世以降のギリシャ語で語末に -ι が付いて σεντέφι の形が定着した。
発音の変化により σιντέφι とも綴られる。非強勢の ε が ι に変わるのは、鼻音の前で母音が上昇する、ギリシャ語に広く見られる音変化による。
同じく真珠層を表す μάργαρο という語もあるが、日常的には σεντέφι が一般的で、μάργαρο はより学術的・古典的な文脈で用いられる。σεντέφι の層の中で形成される宝石は μαργαριτάρι(真珠)と呼ばれる。
主な意味は真珠層で、多くの軟体動物の貝殻の内側を覆う虹色に輝く物質のこと。装飾品や螺鈿細工の素材として古くから用いられてきた。比喩的に、真珠層のような白さや光沢を指すこともある。
ギリシャ語:σημαία
読み方:シメア・シメーア
ラテン文字:simaia
古代ギリシャ語の σῆμα(印、信号、目印)から派生したヘレニズム期ギリシャ語 σημαία(軍旗、信号旗)を中世ギリシャ語が公式・軍事の文脈で書き継ぎ、現代ギリシャ語に学術借用として戻って「旗」全般を指す形に落ち着いた。英語 semantic(意味論の), semaphore(手旗信号), semiotics(記号論)はいずれも同じ σῆμα からラテン語・フランス語を経由して入った学術借用で、σημαία と語根を共有する。
類義語に λάβαρο(幟。ローマ帝政期の軍旗 labarum 由来で、宗教儀式や式典の旗を指す硬い語), παντιέρα(旗。イタリア語 bandiera 由来の外来借用で、出帆や戦闘の場面で使うやや古風な語), μπαϊράκι(旗。トルコ語 bayrak 由来の外来借用で、くだけた俗な響き)。σημαία は国家・組織・思想の象徴としての旗を指すふつうの形として広く使う。派生に σημαιάκι, σημαιούλα(小さな旗。指小形)。合成語に σημαιοφόρος(旗手), σημαιοστολισμός(旗での飾り付け), σημαιοστολισμένος(旗で飾られた)。関連語に σήμα(印、信号、標章), σημείο(点、徴候、場所), σημαίνω(意味する、合図する), σημείωση(メモ、注記)。
ギリシャ語:σημαντικός
読み方:シマディコス・シマディコース・シマンディコス・シマンディコース
ラテン文字:simantikos
動詞 σημαίνω(意味する, しるしを与える)から派生した古代ギリシャ語の形容詞 σημαντικός(意味を持つ, 指し示す)に由来。現代の「重要な, 大事な」の意味は, フランス語 significatif, 英語 significant からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:σημασία
読み方:シマシア・シマシーア
ラテン文字:simasia
古代ギリシャ語の σημασία(しるし, 指し示し)に由来。σημαίνω(示す, 意味する)に抽象名詞を作る -ία が付いた語で, σημαίνω 自体は σῆμα(しるし)から作られた動詞。「語やしるしが表す内容」という用法はヘレニズム期にすでに見え, 英語 meaning の意味配置と重なって整った。「重要性, 意義」の用法は, 英語 significance からの意味借用で加わった。
英語 semasiology(意味論)はこの語から作られた学術語。派生に σημασιολογία(意味論), σημασιολογικός(意味論の)。σημαίνω(示す), σημαντικός(重要な, 意味のある), σῆμα(しるし)が同じ σημ- の語族の仲間。
λέξη(単語, 語)が語そのものを指すのに対し, σημασία はその語が表す内容を指す。μετάφραση(翻訳, 訳文)では, 元の語や文の σημασία を別の言語に移す。
ギリシャ語:σημείο
読み方:シミオ・シミーオ
ラテン文字:simeio
古代ギリシャ語 σῆμα(しるし)から派生した σημεῖον(目印、信号、図形)を起源とする。σημεῖον は物理的な目印から証拠や前兆のような抽象的な「しるし」まで広い意味で使われ、中世ギリシャ語を経て語尾が変化し、現代ギリシャ語の σημείο になった。
σημείο と同じ σῆμα から、σημαία(旗)、σημειώνω(記す)、σημαντικός(重要な)など多くの語が生まれた。英語の semiotics(記号論)、semantics(意味論)、semaphore(腕木通信)も同じ語源を持つ。
類義語に ίχνος(痕跡)、σύμπτωμα(症状)、όριο(限界)がある。
主な意味は「点」と「しるし」。物理的な場所を指す用法から、文章や計画の「箇所」、時間の流れにおける「段階」、質的な「程度」まで、あらゆる文脈で特定の一点を示すのに使われる。また、回復や疲労の「兆候」、句読点や数学記号などの「記号」、幾何学上の「点」も表す。
ギリシャ語:σίδερο
読み方:シデロ・シーデロ
ラテン文字:sidero
σίδερο は古代ギリシャ語 σίδηρος(鉄)に由来し、中世ギリシャ語 σίδερον(鉄)を経て現代ギリシャ語に至った語である。現代ギリシャ語では、中性形 σίδερο が日常的な形として定着している。
μέταλλο(金属) の一種としての鉄を言う基本語であり、ρούχο(布製品、服、衣類) の文脈では、しわを伸ばす道具としてのアイロンの意味にも広がる。
主な意味は「鉄」。そこから、熱して衣類のしわを伸ばすアイロンを言うのにも使う。
ギリシャ語:σιντέφι
読み方:シデフィ・シデーフィ・シンデフィ・シンデーフィ
ラテン文字:sintefi
σεντέφι の別綴り。意味は同じ。
ギリシャ語:σίφουνας
読み方:シフナス・シーフナス
ラテン文字:sifounas
古代ギリシャ語の σίφων(管、くだ、水を吸い上げる器具)を継承。対格 τὸν σίφωνα から主格が作り直されたうえ、[f] と [n] の影響で [o] が [u] に移って今の形になった。英語 siphon も同じ語源。近い語に ανεμοστρόβιλος(つむじ風、竜巻)。
ギリシャ語:σιωπή
読み方:シオピ・シオピー
ラテン文字:siopi
古代ギリシャ語の σιωπή(沈黙)を継承。ギリシャ語以前の古い層の語と考えられていて, 印欧祖語の語根までは確かな形で立っていない。話さないこと, 音がないこと, 口を閉ざすことを古代から一貫して表してきた。「音のない静けさ」「話題に触れない黙殺」まで含む広がりは, 英語 silence, フランス語 silence の意味配置と重なって整った。
英語 silence, フランス語 silence はラテン語 silentium(黙ること)に由来する別系統の語。派生に σιωπηλός(無言の, 寡黙な), σιωπώ / σιωπάω(黙る), σιωπηρός(暗黙の)。
似た意味の σιγή(沈黙)は由来が異なる別の語。ふだんの「沈黙, 静けさ」には σιωπή を使う。νύχτα(夜)や βράδυ(晩)と結びつきやすく, 夜の静けさには σιωπή を使うことが多い。
ギリシャ語:σκαθάρι
読み方:スカサリ・スカサーリ・スカタリ・スカターリ
ラテン文字:skathari
σκαθάρι は、古代ギリシャ語 κάνθαρος(甲虫や魚の名)から σκάνθαρος(甲虫名)が現れ、そこから中世ギリシャ語 σκανθάριον(小さな甲虫名)を経て現在の形になった語。現在の形では、語中の n と θ(ギリシャ文字)の並びが同化して単純化され、語頭の s- も冠詞と続けて発音される中で定着したと説明される。
虫の意味では κανθαρίδα(ツチハンミョウ)や σκαραβαίος(フンコロガシ、スカラベ)と近く、魚の意味では κάνθαρος(文語的な魚名・甲虫名)と重なる。車の意味でも σκαραβαίος(フンコロガシ、スカラベ)という呼び方がある。
主な意味はコウチュウ目の虫を広く指す語。そこから、地中海の ψάρι(魚)である Spondyliosoma cantharus の名にも、Volkswagen Beetle という αυτοκίνητο(自動車、車)の愛称にも使われる。
ギリシャ語:σκάω
読み方:スカオ・スカーオ
ラテン文字:skao
古代ギリシャ語 σχάζω(切り開く、流し出す)を継承。σχάζω には σχάω の別形もあり、[sx] が [sk] に変わって σκάζω/σκάω となった。中世以降、二形のうち σκάω の形が広く使われるようになり、σκάζω は同じ意味でまれに見られる。「破裂する、はじける」の意味は、フランス語 éclater(破裂する)、crever(破裂する、裂ける)からの意味借用による。
派生語に σκάσιμο(破裂、パンク)、σκασμένος(破裂した、ひどくへこんだ)、σκασίλα(悩み、憂さ、無関心)。合成には χολή(胆汁)と結んだ χολοσκάω(気を揉む、悩む)、ξε- を前に付けた ξεσκάω(気晴らしする、息抜きする)などがある。関連語に εκρήγνυμαι(爆発する)。折れる・割れる動きには σπάω を使う。
ギリシャ語:σκιά
読み方:スキャ・スキャー
ラテン文字:skia
古代ギリシャ語の σκιά(影, 日陰)を継承。印欧祖語で「影」を表す語根に続く語で, サンスクリット語 chāyā(光, 影)と同じ語族の仲間。「影絵芝居」「亡霊」「アイシャドウ」「比喩的な暗さ」など広い意味の使い分けは, フランス語 ombre, 英語 shadow, shade の意味配置と重なって整った。
派生に σκιερός(影の多い, 涼しい), σκιάζω(影をつくる, 怯えさせる), σκιάδιο(日よけ, バイザー)。合成語に σκιαγραφία(影絵, 素描), σκιαμαχία(影との戦い, 無意味な論争), σκιόφιλος(日陰を好む)。
日常の「影, 日陰」には同じ σκι- 語族の ίσκιος(男性名詞, 中世ギリシャ語 ἴσκιος 由来)のほうをよく使う。σκιά は一般的・抽象的な文脈に加え, 医学のレントゲン影やアイシャドウといった専門用語にも使う。光の一部が遮られてできる部分的な暗さを指し, 光が完全に遮断された σκοτάδι(暗闇)やその形容詞 σκοτεινός(暗い)とは焦点が異なる。反対概念は φως(光)で, 「φως και σκιά(光と影)」のように対で使うことも多い。
ギリシャ語:σκιάζω
読み方:スキャゾ・スキャーゾ・スカゾ・スカーゾ
ラテン文字:skiazo
古代ギリシャ語の σκιάζω から二つの道筋で現代ギリシャ語に入った語。「影を落とす, おおう」の意味は古代形がそのまま書き言葉に再び入った学術借用で, 「怖がらせる, ぎょっとさせる」の意味は中世ギリシャ語の σκιάζω(驚かす)を経て民間に継承された。いずれも σκιά(影, 日陰)に名詞から動詞を作る接尾辞 -άζω を付けた古い動詞で, 古代から影を落とすことも絵に陰影をつけることも言った。
同じ σκιάζω から派生した語に σκίαση(陰影, シェーディング), σκίασμα(影の効果), σκιάδι(日よけ, ひさし), 合成語 επισκιάζω(かすませる, しのぐ), γραμμοσκιάζω(ハッチングを入れる)。「怖がらせる」方の流れでは受動形 σκιάχτηκα(ぎょっとした, 驚いた)がよく出る。
絵画・写真の用語としての σκίαση は英語 shading, フランス語 ombrage に対応する概念を扱い, 比喩の επισκιάζω(かすませる, しのぐ)は英語 overshadow と同じ発想で物事を覆い隠す感じを言う。「怖がらせる」の意味では同じ方向の φοβίζω(怖がらせる), τρομάζω(怖がらせる, 怖がる)が並ぶが, σκιάζω のこの用法は影や物音にぎくりとする瞬間的な恐怖に結びついた言い方。
ギリシャ語:σκλαβιά
読み方:スクラヴィア・スクラヴィアー
ラテン文字:sklavia
中世ギリシャ語の σκλαβιά に由来する。もとは「スラブ人」を指す Σκλάβος から派生した語で、中世から近世にかけて「奴隷状態」を意味するようになった。英語の slave(奴隷)も、同じ Σκλάβος がラテン語を経て変化したもの。
σκλαβιά は状態を表す抽象名詞で、奴隷そのものを指す場合は σκλάβος(男性形)、σκλάβα(女性形)を用いる。
類義語に δουλεία(奴隷制度) があるが、δουλεία がより概念的・法的な用語であるのに対し、σκλαβιά は「残酷な」「耐え難い」といった感情的なニュアンスを伴うことが多い。歴史的な隷属を語る文脈で好まれる。対義語は ελευθερία(自由)。
主な意味は「奴隷の身分」「隷属状態」。民族や国家の支配について語る際に用いられるほか、比喩的に社会・経済的な「縛り」についても使われる。
ギリシャ語:σκόνη
読み方:スコニ・スコーニ
ラテン文字:skoni
古代ギリシャ語の κόνις(塵、粉)に由来し、中世ギリシャ語の σκόνη(埃、塵)を経て現在の形になった。細かな粒が舞い、積もるという核になるイメージは古くからほぼ変わっていない。
σκόνη は、空気中を舞ったり物の表面に積もったりする細かな粒子を言う語。χώμα(土、土壌、地面、土地)は地面や土壌そのものを指しやすく、乾いて細かく舞うときにだけ σκόνη に近づく。καπνός(煙、タバコ)とは καπνός και σκόνη(煙と塵)のように並びやすく、視界を曇らせたり息苦しさをもたらしたりする粒子状のものとして重なる。より強く舞い上がる粉塵や砂煙には κονιορτός(粉塵雲、砂煙)もある。
複合表現では αστρική / κοσμική / διαστημική σκόνη(宇宙塵)のように、宇宙空間を漂う微粒子にも使う。
最も基本の意味は「埃、塵」。そこから、食品、香辛料、薬、洗剤、消火剤のように粉状にしたもの全般も指す。
成句では、舞い上がった塵が視界を遮り、やがて収まって全体が見えるというイメージがよく使われる。κατακάθισε η σκόνη(塵が収まる)は「ひと騒動が収まる」、σηκώνω σκόνη(塵を巻き上げる)は文字どおり土ぼこりを立てるほか、比喩では意図的に騒ぎを起こすことも表す。
ギリシャ語:σκορπιός
読み方:スコルピオス・スコルピオース
ラテン文字:skorpios
古代ギリシャ語の σκορπίος(サソリ)を継承。母音の衝突を避ける音節の合体(シニゼーシス)で現代の σκορπιός の発音と形になった。先頭大文字の Σκορπιός は星座と占星術でさそり座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ σκορπίος の語族に σκορπίνα(カサゴ), σκορπαινίδης(カサゴ科), σκορπιώδης(サソリに似た形の)。魚の名として使うときの σκορπιός は σκορπίνα より小型で, 大きな頭部と鰓蓋の棘を持つ近縁種を指す。
英語 scorpion はこの語がラテン語 scorpius / scorpio を経て入ったもの。scorpionfish(カサゴ類の総称)も同じ語源で, 英語でもギリシャ語同様「サソリ」の語が魚の名にも使われている。
ギリシャ語:σκοτάδι
読み方:スコタディ・スコターディ
ラテン文字:skotadi
古代ギリシャ語の σκότος(闇)をもとに、中世ギリシャ語の σκοτάδι(闇)を経て現在の σκοτάδι になった。σκότος は現代ギリシャ語でも文語的・文学的な響きをもつ対応語として残っている。
反対語は φως(光)。一方で σκιά(影)は、何かが光を遮ってできる部分的な暗さを指し、σκοτάδι は光が届かず視界が利かない状態そのものを表す。
この語は物理的な暗さから、知識がないこと、事情が見えないこと、先行きの暗い社会状況や気分まで広く表す。πνευματικό σκοτάδι(精神的な無知)や πολιτικό σκοτάδι(政治的な暗黒)のような言い方があり、「誰かを闇の中に置く」「闇から出す」という比喩的な表現にも自然につながる。
主な意味は「暗闇」。そこから比喩的に、無知、不透明さ、陰鬱さも表す。成句では、死や失踪、極端な無知を表す言い方にも使われる。
ギリシャ語:σκοτεινός
読み方:スコティノス・スコティノース
ラテン文字:skoteinos
古代ギリシャ語の σκοτεινός(暗い, 不明瞭な)を継承。σκότος(暗闇)に形容詞を作る -εινός が付いた語で, 物理的な暗さから, 事情の見えにくさ, 邪悪さ, 不吉さまで古代から幅広い意味を持ってきた。「暗い色」「謎めいた」「陰険な」といった現代の使い分けは, フランス語 obscur, sombre, 英語 dark の意味配置と重なって整った。
派生に σκοτεινότητα(暗さ, 不透明さ), σκοτεινιάζω(暗くなる, 曇る), 指小形の σκοτεινούτσικος(少し暗い)。副詞の σκοτεινά(暗く, 暗い中で)は「手探りで, 見通しなく」の比喩にも使う。同じ σκοτ- の語族に σκοτάδι(暗闇), σκότος(暗闇, 盲目), σκοτίζω(暗くする, 悩ます)。
反対語は φωτεινός(明るい)で, 概念としては φως(光)と向き合う。σκιά(影, 日陰)は光が一部遮られてできる部分的な暗さで, σκοτεινός の全体的な暗さとは焦点が異なる。
ギリシャ語:σκουλαρίκι
読み方:スクラリキ・スクラリーキ
ラテン文字:skoulariki
中世ギリシャ語の σκουλαρίκιον(skularikion)から。これはさらに、宮廷警護兵を指す σχολάριος(scholarios)に指小辞がついた σχολαρίκιον(skolarikion)に由来する。当時、宮廷警護兵が耳飾りを着用する習慣があったことから、この名がついたとされる。
音韻の変化としては、[sx] から [sk] への異化(σχολ- → σκολα-)、および軟口蓋音 [k] と流音 [l] の影響による母音の変化([o] → [u])を経て現在の σκουλαρίκι となった。
σχολάριος は、後期ラテン語で「宮廷の近衛隊」を意味した schola から派生した scholaris(近衛兵)を起源とする。この schola のさらに古い源流は、古代ギリシャ語で「閑暇、講義」を意味した σχολή(scholē)であり、英語の school(学校)や scholar(学者)とも語源を共有している。
指小辞がさらについた σκουλαρικάκι(小さなイヤリング)という派生語もある。
花の形が垂れ下がったイヤリングに似ることから、σκουλαρικιά(フクシア)は σκουλαρίκι に植物を表す接尾辞 -ιά がついてできた語で、ギリシャ語ではこの通称が定着している。
主な意味は「耳に着用する装身具」で、イヤリングやピアスを指す。
ギリシャ語:σκουλαρικιά
読み方:スクラリキャ・スクラリキャー
ラテン文字:skoularikia
ギリシャ語で「イヤリング」を意味する σκουλαρίκι に、植物を表す接尾辞 -ιά が結合してできた語。花の形が垂れ下がるイヤリングのように見えることから、ギリシャ語ではこの名が定着した。英語では一般に fuchsia(フクシア)と呼ばれる。
観賞用植物の一種。
ギリシャ語:σκουπόξυλο
読み方:スクポクシロ・スクポークシロ
ラテン文字:skoupoxylo
σκούπα(ほうき)と ξύλο(木、棒)を合わせた複合語。
ギリシャ語:σκούρος
読み方:スクロス・スクーロス
ラテン文字:skouros
中世ギリシャ語の σκοῦρος(暗い, 陰った)を継承。もとはイタリア語 scuro(暗い)からの借用語で, scuro はラテン語 obscūrus(暗い, 陰った)の短縮形。
同じ σκούρος の語族に動詞 σκουραίνω(暗くする, 色を濃くする), αποσκουραίνω(暗くなる), 副詞形 σκούρα, 名詞 σκουράδα(暗がり, 陰り), 接頭辞 σκουρο- を用いた合成語 σκουροκόκκινος(暗い赤, 濃い赤), σκουροχρωματισμένος(濃い色に塗られた)。
μαύρος(黒い)が黒そのものを言うのに対し, σκούρος は青, 緑, 赤などを含めて「色合いが暗め, 濃いめ」を言う。反対側には ανοιχτόχρωμος(淡い色の, 明るい色の)が並ぶ。英語 obscure(はっきりしない, 暗い)も同じラテン語 obscūrus から出ている。
ギリシャ語:σκυλί
読み方:スキリ・スキリー
ラテン文字:skyli
中世ギリシャ語の σκυλί(ον) に由来する。さらに遡ると、古代ギリシャ語で「子犬」を意味した σκύλαξ と関連がある。もとは子犬を指す指小語だったが、現在は性別を問わず犬全般を指す口語として使われる。
類義語の σκύλος がより一般的・中立的な語であるのに対し、σκυλί は口語的で、親しみや比喩的な意味を含みやすい。子犬は κουτάβι と呼ぶ。
主な意味は犬。口語では「働き者」や「強靭な人・物」を指すのにも使われる。また比喩的に、外見や性格への蔑称、あるいは非常に苦しい状況を表す際にも使われる。
指小語の σκυλάκι は子犬、または親しみを込めた「ワンちゃん」。類義語に κουτάβι。σκυλί μονάχο は、非常に鍛え抜かれた人、あるいは極めて耐久性の高い機械を指す。
ギリシャ語:σκύλος
読み方:スキロス・スキーロス
ラテン文字:skylos
ギリシャ語:σμαραγδένιος
読み方:ズマラグデニョス・ズマラグデーニョス
ラテン文字:smaragdenios
σμαράγδι(エメラルド)の形容詞形で、古代ギリシャ語 σμάραγδος から派生した。古い形の σμαράγδινος(エメラルドの)から、現代ギリシャ語で一般的な -ένιος の語尾に置き換わり σμαραγδένιος となった。σμαράγδινος は古風な表現として残るが、現代ではまれ。英語の emerald と同じ語源にあたる。
エメラルドでできていることや、エメラルドのような鮮やかな緑色を表す。色としての類義語に βαθυπράσινος(深い緑の)がある。
ギリシャ語:σμαράγδι
読み方:ズマラグディ・ズマラーグディ
ラテン文字:smaragdi
古代ギリシャ語の σμάραγδος(エメラルド)から。σμάραγδος はオリエント諸語からの借用語とされる。後の時代に指小辞の付いた σμαράγδιον(smaragdion)を経て、現代ギリシャ語の σμαράγδι となった。英語の emerald も同じ語源で、俗ラテン語を経由する過程で語頭の s が脱落し、大きく形が変わった。
派生形容詞に σμαραγδένιος(エメラルド製の、エメラルド色の)がある。
深い緑色をした透明な貴石を指す。
ギリシャ語:σμήνος
読み方:ズミノス・ズミーノス
ラテン文字:sminos
ギリシャ語:σοδειά
読み方:ソディア・ソディアー
ラテン文字:sodeia
σοδειά(収穫、収穫高)は、中世ギリシャ語の農耕語 σοδειά(収穫、取り分)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、畑や木から得られたその年の収穫や出来高を指す。
φυτεύω(植える、栽培する) が育てる行為を言うのに対して、σοδειά はその結果として得られる収穫を言う。対象としては αμπέλι(ブドウの木、ブドウ畑) や果樹園の文脈と結びつきやすい。
意味は収穫、収穫高。その年にどれだけ取れたかという量にも寄る。
ギリシャ語:σοκολάτα
読み方:ソコラタ・ソコラータ
ラテン文字:sokolata
ギリシャ語:σοκολατί
読み方:ソコラティ・ソコラティー
ラテン文字:sokolati
σοκολατί(チョコレート色の、濃い茶色の)は、σοκολάτα(チョコレート)からできた色名である。現代ギリシャ語では、チョコレートのような深い茶色を表す。
不変化形容詞として名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞としてチョコレート色そのものも指す(το σοκολατί(チョコレート色))。
καφέ(茶色の、茶色) が茶色全般を広く言うのに対して、σοκολατί はもっと濃く甘い印象の茶色を指す。明るさのある茶色では μελί(蜂蜜色の、ハニー色の、蜂蜜色) のほうが近い。
意味はチョコレート色の、濃い茶色の、チョコレート色。服、家具、髪、小物の色に使いやすい。
ギリシャ語:σολομός
読み方:ソロモス・ソロモース
ラテン文字:solomos
σολομός(サケ、サーモン)は、ラテン語の salmo(サケ、サーモン)に由来する借用語で、中世ギリシャ語の *σολομός(サケ)を経て現代ギリシャ語の形になった。
日常語で広く「魚」を表す基本語は ψάρι(魚)で、σολομός はその中の具体的な魚名にあたる。文語的・学術的な文脈では ιχθύς(魚)も使われる。
同じサケ科の魚としては πέστροφα(マス、トラウト)と並べて扱われる。
誤った綴りとして σολωμός(サケ、サーモンの誤綴り)も見られるが、標準的な形は σολομός。
主な意味は、黒い斑点を持つ大型の回遊魚としての「サケ、サーモン」。魚そのものだけでなく、食材としてのサーモンや、その切り身、調理した料理にも使われる。
ギリシャ語:σουγιάς
読み方:スヤス・スヤース
ラテン文字:sougias
トルコ語の soya に由来する借用語。
μαχαίρι が包丁やナイフを広く指すのに対して、σουγιάς はポケットに入れて持ち歩ける小型の折りたたみ式の刃物を具体的に指す。
主な意味は「折りたたみ小刀、ポケットナイフ」。刃は一本のことが多く、まれに二本付いたものもある。指小語の σουγιαδάκι は、より小さなものやかわいらしく言う場合に使う。
ギリシャ語:σπηλιά
読み方:スピリャ・スピリャー
ラテン文字:spilia
ギリシャ語:σπίθα
読み方:スピサ・スピーサ・スピタ・スピータ
ラテン文字:spitha
動詞 σπιθίζω(火花を散らす、きらめく)から作られた名詞で、中世ギリシャ語の σπίθα を経て今に至る継承。
類義語に σπινθήρας(火花)。σπινθήρας は電気工学や物理の火花を指すのに使うことが多く、σπίθα は日常の火花のほか、きっかけ、残り火、頭の切れる人のような比喩でよく出る。
ギリシャ語:σπινθήρας
読み方:スピンシラス・スピンシーラス・スピンティラス・スピンティーラス
ラテン文字:spinthiras
古代ギリシャ語の σπινθήρ(火花)から。さらに、印欧祖語で「輝く、光る」を意味する語根につながると考えられている。英語の spinthari- や、放射線計測器の spinthariscope(スピンサリスコープ、閃光計)にも、同じ古代ギリシャ語の語根が見られる。
類義語に σπίθα(火花) がある。物理的な火花という意味ではほぼ同じだが、σπινθήρας のほうがより科学的・専門的な響きを持つ。
主な意味は火花。文語的な響きを持つことがあり、科学技術分野では電気的な火花にも使われる。比喩的には、物事の発端や原因、きらめきを指すこともある。
複合語では ηλεκτρικός σπινθήρας が電気火花を表す。現代のこの用法は、英語の spark やフランス語の étincelle の影響で広がったものと考えられる。異なる極性を持つ二つの電荷が結びつくときの発光を指し、英語の electric spark やフランス語の étincelle électrique に当たる。
ギリシャ語:σπίρτο
読み方:スピルト・スピールト
ラテン文字:spirto
σπίρτο はイタリア語の spirito(アルコール、スピリッツ)から入った借用語。もとの「アルコール」の意味は、現代ギリシャ語でも俗語としての「強い酒」や、化学の言い方の σπίρτο του άλατος(塩酸)に残っている。
現代の日常語では、そこから意味が大きく広がり、まず「マッチ」を指す語として定着している。さらに比喩では、ぱっと火がつく感じから、頭の回転が速い人を言うくだけた言い方にもなる。
火をつける道具としては、やや古風な言い方に πυρείο(マッチ、火打ち具)があり、現代の日常語では αναπτήρας(ライター) が対応する。比喩の「切れ者」という意味では、σπίθα(火花、きっかけ、残り火)も近い。
酒の語としては、ποτό(飲み物、酒、飲酒)が飲み物や酒全般を広く言えるのに対し、σπίρτο は俗に度数の強い酒やアルコールを荒っぽく指す。ワインのように酒の種類を限って言う κρασί(ワイン)とは守備範囲が違う。
主な意味はマッチ。そこから、くだけた比喩で「とても頭の切れる人」、俗語で「強い酒、アルコール」、固定した化学の言い方では「塩酸」も表す。
人を褒めて σπίρτο と言うと、頭の回転が速くて要領のいい人を表す。言い方によっては素直な称賛にも、軽い皮肉にもなる。
ギリシャ語:σπίτι
読み方:スピティ・スピーティ
ラテン文字:spiti
ラテン語の hospitium(もてなし、宿。hospes「客、主人」から)がヘレニズム期ギリシャ語に入って ὁσπίτιον となり、中世ギリシャ語 ὁσπίτιν を経て今に至る継承。冠詞 το と結びついて τὸ ὁσπίτιν が τὸ σπίτιν と再分節され、語頭の ο- が落ちて今の形に落ち着いた。英語 hospital(病院), hospitality(もてなし), hostel(ホステル), host(主人)はいずれも同じ hospes の系譜からラテン語・古フランス語を経由して入った借用で、σπίτι と語根を共有する。
類義語に κατοικία(住居。行政や公式の文脈で使う硬い語), οίκος(家、館。古代ギリシャ語由来で企業名や施設名に残る硬い語), νοικοκυριό(所帯、家政), σπιτικό(家庭、一家。建物よりも家庭生活の意味合いが強い)。σπίτι は住まいそのものをふつうに指す形として広く使う。派生に σπιτάκι(小さな家、物置、犬小屋。指小形), σπιταρόνα(大邸宅。増大形), σπιτικός(家庭の、自家製の), σπιτίσιος(家庭の〜), σπιτώνω(住まわせる、囲う)。合成語に ξυλόσπιτο(ログハウス), αγροτόσπιτο(農家), δεντρόσπιτο(ツリーハウス), σκυλόσπιτο(犬小屋), παράσπιτο(離れ), πυργόσπιτο(塔のある家), φτωχόσπιτο(貧しい家), χαμόσπιτο(あばら家)。関連語に σπιτάλι(病院。ヴェネツィア語 spedal 等から入った別系統の借用だが、同じ hospitium 語族から出る)。
ギリシャ語:σπόρος
読み方:スポロス・スポーロス
ラテン文字:sporos
古代ギリシャ語の σπόρος(種, 播かれたもの)を継承。印欧祖語で「まく, 散らす」を表す語根に続き, 「まく」を意味する動詞 σπείρω(口語では σπέρνω)に -ος が付いて作られた名詞。
派生に σποράκι(小さな種)。合成語に σποροπαραγωγή(種子生産), σπορόφυτο(胞子体)。同じ σπερ- / σπορ- の語族には σπείρω(まく), σπορά(播種, 散布), σπέρμα(精子, 種), σπορέας(種まく人)。
καρπός(果実, 実)が実り全体や成果を言うのに対し, σπόρος はその内側にあって次を生み出す種に焦点がある。μπουμπούκι(つぼみ, 芽)はまだ開いていない始まりの姿で, σπόρος はそこへ至る前の出発点を指す。
ギリシャ語:σπουργίτι
読み方:スプルイティ・スプルイーティ・スプルギティ・スプルギーティ
ラテン文字:spourgiti
後期ギリシャ語の πυργίτης(塔に住むスズメ)に遡り、中世ギリシャ語の σπουργίτης(スズメ)を経て現代ギリシャ語の σπουργίτι になった。14世紀ごろから、現在の中性形 σπουργίτι も文献に見られる。
男性形の σπουργίτης(スズメ)も同じ語を表す別形として使われる。類義的な τσιροπούλι(小鳥)は、特定のスズメというより小鳥一般を広く指す語である。
英語の sparrow とは、意味のうえでは対応するが、直接の語源的なつながりはない。分類学では Passer(スズメ属)に対応する名として扱える。
主な意味はスズメ。広くスズメ目の小鳥全般を指すこともある。指小語の σπουργιτάκι(小さなスズメ)は、小さなスズメや愛らしいスズメを表す。
ギリシャ語:σταγόνα
読み方:スタゴナ・スタゴーナ
ラテン文字:stagona
古代ギリシャ語の σταγών(しずく、滴)が起源。古い語では主格が σταγών だが、対格の σταγόνα に見える形がそのまま現代ギリシャ語の σταγόνα につながっている。
指小語の σταγονίτσα(小さなしずく、小滴)は、小さなしずくやほんの少量、滴剤を言うときに使う形。文語寄りの σταγονίδιο(小滴)は、小さなしずくを指すほか、比喩的には 1974 年の民政移管後にも軍や治安機関に残った 1967 年 4 月 21 日独裁政権の支持者を、影響力の小ささをこめて呼ぶ言い方にもなった。
主な意味は、小さな液体の滴。βροχή(雨)の雨粒、葉の上の露、δάκρυ(涙)や αίμα(血)のしずくのように、液体が丸くまとまって落ちたり残ったりする場面に広く使う。そこから、表面に落ちてできた小さな跡や染みも指す。
しずくは量の小ささを強く感じさせるので、成句でもよく使われる。ωκεανός(大洋)を使った σταγόνα στον ωκεανό(大海の一滴)は、全体に比べてあまりに小さく取るに足らないことを表す。η σταγόνα που ξεχείλισε το ποτήρι(コップをあふれさせた一滴)は、ついに我慢の限界を超えさせた最後の一件を指す。
ギリシャ語:σταθμός
読み方:スタスモス・スタスモース・スタトゥモス・スタトゥモース・スタスモス・スタスモース
ラテン文字:stathmos
古代ギリシャ語の σταθμός(宿場、停留所、兵や旅人が立ち止まる場所)に由来。動詞 ἵστημι(立つ、立たせる)と同じ語族の名詞。現代の「駅、放送局、観測所」のような拠点の意味は、フランス語 station、英語 station からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:Σταυρός του Νότου
読み方:スタヴロストゥノトゥ・スターヴロストゥノトゥ
ラテン文字:stavros tou notou
ギリシャ語:σταφύλι
読み方:スタフィリ・スタフィーリ
ラテン文字:stafyli
ヘレニズム期に古代ギリシャ語 σταφυλή(ブドウの一房)の縮小辞 σταφύλιον が作られ, 中世ギリシャ語の σταφύλιν を経て, 現代ギリシャ語の σταφύλι に至った。
派生語の σταφυλιά(スタフィリャ)はブドウの棚やブドウの木を指す。ブドウの木そのものは κλήμα(クリーマ)とも呼ばれ、κλήμα から派生した κληματαριά(クリマタリア)は枝を棚状に仕立てたブドウ棚を指す。αμπέλι(アンベリ)はブドウ畑やブドウ園を意味する。
主な意味はブドウの果実で、中央の茎から枝分かれして垂れ下がる粒の集合体を指す。
ギリシャ語:σταφυλιά
読み方:スタフィリャ・スタフィリャー
ラテン文字:stafylia
σταφύλι(ブドウ)に接尾辞 -ιά がついた形。
ブドウの棚、またはブドウの木そのものを指す。
ギリシャ語:στάχτη
読み方:スタフティ・スターフティ
ラテン文字:stachti
ヘレニズム時代の形容詞 στακτή(「滴下された」を意味する στακτός の女性形)に由来する。もとは灰を濾した液、つまり灰汁を指した語で、中世ギリシャ語の στάκτη(灰)を経て、調音の変化により kt が xt に変わり、現代ギリシャ語の στάχτη となった。この過程で意味も「灰汁」から「灰」そのものへ移った。
英語の static(静止した)や stay(留まる)と同じ、「立つ」を意味する印欧語の語根につながるとされ、もとは「沈殿したもの」というニュアンスを持つ。
類義語に τέφρα(灰)と σποδός(遺灰、遺骸)がある。τέφρα は学術的・文語的な語で、日常語としては στάχτη が一般的に使われる。
στάχτη からは色の形容詞 σταχτής(灰色の)が派生し、その中性形 σταχτί は名詞として灰色そのものを指す。
燃焼後に残る灰が基本の意味で、火山灰や遺灰にも使われる。さらに、火災や戦争で完全に破壊された状態を表す比喩にも使われ、「灰にする」「灰になる」の形で灰燼(かいじん)に帰すことを表す。「灰の中から」のように、壊滅からの再生を言う表現もある。
ギリシャ語:σταχτής
読み方:スタフティス・スタフティース
ラテン文字:stachtis
古代ギリシャ語の στακτή(滴るもの、油)を起源とし、中世ギリシャ語を経て「灰」を意味する στάχτη となった。ここから「灰の色の」を意味する形容詞 σταχτής が派生した。σταχτής(男性形)、σταχτιά(女性形)、σταχτί(中性形、不変化)の3形をもつ。
類義語の γκρι はフランス語由来の外来語で、名詞として「グレー」の色そのものを指す。形容詞には γκρίζος(グレ��の)がある。γκρι や γκρίζος が広く使われる現代的な語であるのに対し、σταχτής はより「灰の色」というニュアンスが強く、おもに口語で使われる。
中性形 σταχτί は名詞としても用いられ、灰色そのものを指す。
灰のような色を表す。おもに口語で用いられる。
ギリシャ語:στέγη
読み方:ステイ・ステーイ・ステギ・ステーギ
ラテン文字:stegi
古代ギリシャ語の στέγη(屋根)を継承。印欧祖語で「覆う」を表す語根に続く語で, 動詞 στέγω(覆う, 守る)に -η が付いた名詞。「住まい」「住宅」「宿」「保護の場」までの使い分けは, フランス語 toit(屋根), maison(家)の意味配置と重なって整った。
派生に στεγάζω(屋根をかける, 収容する), άστεγος(住む家のない)。στεγάζω からは στέγαση(住居の提供), στεγαστικός(住居に関する)。元の動詞 στέγω(覆う, 守る)とその派生 στεγανός(雨風を通さない)が同じ στεγ- の語族の仲間。
κάτω από την ίδια στέγη(同じ屋根の下で)は, 家族や共同生活の文脈でよく使う言い回し。
ギリシャ語:στεναχώρια
読み方:ステナホリア・ステナホーリア
ラテン文字:stenachoria
στενοχώρια(悲しみ、心痛、悩みごと)の別綴り。στενάχωρος(窮屈な、気が重い)の影響でこの形も広く使われる。
悪い出来事や不快なことによる悲しみや心痛を指し、主に複数形では悩みごとやつらい出来事も表す。
ギリシャ語:στενοχώρια
読み方:ステノホリア・ステノホーリア
ラテン文字:stenochoria
ヘレニズム期の στενοχωρία(狭い場所、窮屈さ)に由来する。もとは「狭い場所」を表した語で、そこから身動きがとれないような圧迫感を比喩的に表すようになり、現代では悪い出来事や不快なことのために心が締めつけられるような悲しみや気詰まりを指す語になった。現代では στενοχώρια の綴りが基本だが、στενάχωρος(窮屈な、気が重い)の影響で στεναχώρια(別綴り)という形も使われる。
λύπη(悲しみ)や θλίψη(悲哀)に近い語だが、στενοχώρια は何か悪いことや気がかりのために心がふさぐ感じを言いやすい。反対側の感情には χαρά(喜び)がある。
主な意味は、悪い出来事や不快なことから生じる「悲しみ、心痛」。また、主に複数形で、人を悩ませる具体的な「悩みごと、つらい出来事」も指す。
ギリシャ語:στέρηση
読み方:ステリシ・ステーリシ
ラテン文字:sterisi
動詞 στερέω(奪う, 欠かせる)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 στέρησις(奪われていること, 欠けていること)に由来。対格 τὴν στέρησιν から主格が作り直されて現代ギリシャ語の στέρηση の形になった。現代の用法は, フランス語 privation, 英語 deprivation からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:Στέφανος Νότιος
読み方:ステファノスノティオス・ステーファノスノティオス
ラテン文字:stefanos notios
στέφανος(冠、花輪)と νότιος(南の)を組み合わせた連語で、「南の冠」の意味。ラテン語の Corona Australis も「南の冠」を指す。プトレマイオスの48星座のひとつで、古代から知られる。古代ギリシャでは冠というより花輪とみなされ、τοξότης(いて座)の弓から落ちた環、あるいは Κένταυρος(ケンタウルス座)の冠という伝承が残る。北半球に対になる Στέφανος Βόρειος(かんむり座)がある。
ギリシャ語:στήθος
読み方:スティソス・スティーソス・スティトス・スティートス
ラテン文字:stithos
古代ギリシャ語の στῆθος(胸)を継承。印欧祖語までは確かな再建形は立っていない。
派生に指小形 στηθάκι(小さな胸, 乳房), 形容詞 στηθικός(胸の)。合成語 στηθοσκόπιο(聴診器)は στῆθος と σκοπέω(観察する)を組み合わせた語で, フランス語 stéthoscope, 英語 stethoscope の語源。他に στηθάγχη(狭心症), γυμνόστηθος(胸をあらわにした)。
στέρνο(胸骨)は胸の骨の部分を, μπούστο(バスト, 胴体)はイタリア語 busto 経由の借用で女性の上半身や衣服の胸回りを指し, どちらも στήθος の内側にある部分や側面を区切って言う。感情の宿る「胸, 心」の比喩では καρδιά(心臓)を使うことが多い。
ギリシャ語:στιγμή
読み方:スティグミ・スティグミー
ラテン文字:stigmi
古代ギリシャ語の στιγμή(点, しるし)に由来。動詞 στίζω(刺す, 点を打つ)に名詞を作る -μή が付いてできた語。「瞬間, 短い時間」と「その折, 時点」の使い分けはフランス語 moment の意味配置と重なって整い, 句点や活字のポイントといった技術的な用法は英語 point からの意味借用で加わった。
派生に στιγμιαίος(瞬時の), στιγμιαία(一瞬で), στιγμιότυπο(スナップショット)。同じ στιγ- の語族に στίζω(刺す, 点を打つ), στίγμα(しるし, 汚点), στίξη(句読点を打つこと)。英語 stigma はこの στίγμα から作られた学術借用語。
δευτερόλεπτο(秒)が時計で測れる単位なのに対し, στιγμή はもっと感覚的で「ちょっとのあいだ」「その瞬間」を指す。μεσημέρι(正午, 昼どき)のような時間帯より, はるかに小さい一点に焦点がある。
ギリシャ語:στοιχειό
読み方:スティヒョ・スティヒョー
ラテン文字:stoicheio
古代ギリシャ語の στοιχεῖον(構成要素、原理)から。ヘレニズム期には「黄道十二星座の符号」の意味を持ち、中世ギリシャ語の στοιχείον(悪霊、デーモン)を経て、母音衝突を避けるための音節短縮(シニゼーシス)が起こり、現代の στοιχειό の形に至った。
古代ギリシャ語の στοιχεῖον は、ラテン語に elementum(要素)として訳され、英語の element の語源にもなっている。
στοιχειό は、στοιχεῖον の本来の「構成要素」の意味を受け継いだ στοιχείο(要素、データ)とは同じ語源だが、アクセントの位置も意味も異なる別の語である。
類義語として φάντασμα(幽霊)があるが、στοιχειό は単なる死者の霊というよりも、特定の場所(家や橋など)に結びつき、そこを守護または支配する「土地の精霊」としてのニュアンスが強い。
主な意味は「守護霊」「精霊」で、特定の場所に結びつく超自然的な存在を指す。人魚など、超自然的な存在全般にも使われる。比喩的には、不気味なほど背が高く痩せた人を形容する際にも使われる。
ギリシャ語:στοιχείο
読み方:スティヒオ・スティヒーオ
ラテン文字:stoicheio
古代ギリシャ語の στοιχεῖον(列をなすもの、段階)から。転じて「物質の構成成分」「基本単位」「アルファベットの文字」を指すようになった。近代以降はフランス語の élément(要素)や principe(原理)の語義に対応する形で、科学、法学、社会学など幅広い分野で用いられる。
英語の element の語源はラテン語の elementum(要素)だが、これはギリシャ語の στοιχεῖον の概念を翻訳借用したものと考えられている。
同じ στοιχεῖον を起源とする στοιχειό(守護霊、精霊) とはアクセントの位置が異なる別の語である。
派生語に στοιχειώδης(初歩的な、基本的な)や στοιχειώνω(幽霊が出る、根付く)がある。
主な意味は「要素」「成分」で、物質や事柄を構成する最小単位を指す。比喩的に、人の性格、情報のデータ、あるいは自分が得意とする分野(本領)を指す際にも使われる。化学では元素(χημικό στοιχείο)、印刷では活字、哲学では四元素というように、幅広い分野でそれぞれ専門的な意味を持つ。文脈に応じて συστατικό(成分)や δεδομένα(データ)とも言い換えられる。
ギリシャ語:στολίδι
読み方:ストリディ・ストリーディ
ラテン文字:stolidi
古代ギリシャ語の στολή(装束、装備)から派生した動詞 στολίζω(飾る)に、接尾辞 -ίδι が付いた形。英語の stole(ストール)は στολή がラテン語 stola を経て借用されたもので、stall(失速する、もとは場所を整える意)も同じ語源から来ている。
古代ギリシャ語には形の似た στολίδιον(短いチュニック)という語があるが、現代の στολίδι とは意味のつながりがない。
「飾り」を意味する一般的な語で、装飾品から装身具までを指す。文脈により芸術的価値のない小物、あるいは派手な装身具というニュアンスを含む。比喩的には、優れた才能や高い質を備えた人や物を称えるのにも使われる。
ギリシャ語:στόμα
読み方:ストマ・ストーマ
ラテン文字:stoma
古代ギリシャ語の στόμα(口)を継承。印欧祖語で「口」を表す語根に続き, アヴェスタ語 staman(犬の口), ウェールズ語 safn(口, 顎), ヒッタイト語 ištāman-(耳)と同じ語族の仲間。「扶養すべき人」「話す人」「くちばし」「開口部」「気孔」まで含む使い分けは, フランス語 bouche, 英語 mouth の意味配置と重なって整った。
派生に指小形 στοματάκι(小さな口), 増大形 στοματάρα(大きな口), 形容詞 στοματικός(口の, 経口の)。合成語に στοματίτιδα(口内炎), στοματολογία(口腔医学), ξηροστομία(口の渇き), αθυρόστομος(口の悪い), εκστομίζω(口に出す, 言い放つ)。
ギリシャ語:στομάχι
読み方:ストマヒ・ストマーヒ
ラテン文字:stomachi
古代ギリシャ語の στόμαχος(胃、のど)から。コイネーの στομάχιον(小さな胃)を経て現在の形に至った。古い語形の στόμαχος は文語的な形として今も残る。さらに古代語では στόμα(口)とつながっており、食べ物の入口から奥へ続く器官として理解されていたことが見えやすい。
英語の stomach も、ラテン語を経て同じ古代ギリシャ語 στόμαχος に由来する。現代ギリシャ語の στομάχι は、日常語としての「胃」に定着した形。
基本の意味は「胃」「胃袋」。そこから、胃の具合、消化の持ちこたえ具合、食欲の出方にも使う。
ギリシャ語:στρακαστρούκα
読み方:ストゥラカストゥルカ・ストゥラカストゥルーカ
ラテン文字:strakastrouka
στρακαστρούκα は、τρακατρούκα(爆竹) を土台に、strak のような擬音的な響きや、ぶつかることを表す τρακάρω、イタリア語の scrocchio(パチパチという音)などの音感が重なって生まれた形と考えられる。
別表記に τρακατρούκα(爆竹) がある。複数形を冠詞と続けて発音するうちに、冠詞末尾の σ が語の一部として受け取られ、στρακαστρούκα という形が広まったと考えられる。
類義語には βαρελότο(より威力の強い爆竹) や κροτίδα(一般的な爆竹、クラッカー) がある。関連語としては βεγγαλικό(花火、手持ち花火) がある。
主な意味は、点火すると連続して破裂音を出す爆竹やかんしゃく玉。古代ギリシャ語に直接さかのぼる語ではなく、音の響きから生まれた名称でもある。日常的には複数形の στρακαστρούκες で使われることが多い。
ギリシャ語:στρατός
読み方:ストゥラトス・ストゥラトース
ラテン文字:stratos
印欧祖語の「広げる、伸ばす」を表す語根に起源を持ち、古代ギリシャ語の στρατός(軍、遠征軍)に由来。
派生語に στρατηγός(将軍), στρατηγική(戦略), στράτευμα(兵力), εκστρατεία(遠征、キャンペーン), στρατοκρατία(軍国主義)。関連語は στρατιώτης(兵士), άμυνα(防衛)。英語 strategy は στρατός と ἄγω(導く)の合成 στρατηγός を経て同じ語根からできた語。
ギリシャ語:στρογγυλός
読み方:ストゥロンイロ・ストゥロンイロー・ストゥロンギロ・ストゥロンギロー
ラテン文字:stroggylos
στρογγυλός(丸い、円形の)は、中世ギリシャ語の同形から続く語で、現代ギリシャ語でも「丸い、円形の」という基本の意味を保っている。
文語的な別形に στρογγύλος(文語的な「丸い」)がある。解剖学では Στρογγύλος μυς(円筋)や στρογγύλος σύνδεσμος(円索)のように、この形で現れる。
指小語に στρογγυλούτσικος(ほぼ丸い、丸っこい)があり、副詞形は στρογγυλά(丸く、丸めて)。
いちばん近い基本語は κύκλος(円、輪)で、στρογγυλός はその「円や輪のように丸い」という性質を述べる形容詞として使いやすい。より広く形を言うなら σχήμα(形、図形)が上位語になる。日常の「オーバル形」には οβάλ(楕円形、オーバル形)が自然で、幾何学の「楕円」なら έλλειψη(楕円)、卵形に寄るなら ωοειδής(卵形の)が近い。
主な意味は、物の形が丸い、円形である、球形であること。そこから、ワインの味わいがまろやかなことや、言い方が角の取れたものになっていることも表す。中性形の στρογγυλό(丸いもの)は、食品分野では牛・子牛のもも肉の一部位も指す。
ギリシャ語:συγκίνηση
読み方:シギニシ・シギーニシ・シンギニシ・シンギーニシ
ラテン文字:sygkinisi
古代ギリシャ語の συγκίνησις(動揺、かき乱し)から。現代ギリシャ語では名詞語尾が -ση(名詞語尾)の形に整えられている。
もともとの核は、心や状態が揺り動かされることにある。現代で「感動」や「感情の高ぶり」を広く表すようになったのは、フランス語 émotion の意味範囲の影響を受けたため。
素直な喜びを表す χαρά(喜び)よりも、συγκίνηση は何かに心を揺さぶられて胸が詰まる感じに寄る。έκπληξη(驚き)が不意を突かれた驚きを表しやすいのに対し、συγκίνηση は嬉しさでも悲しさでも起こりうる感情の高まりを言える。涙との結びつきも強く、δάκρυ(涙)が自然に連想される。
中心にあるのは、心が強く動かされること。美しいものや悲しい出来事に触れて深く胸を打たれる場合にも、刺激の強い体験で感情が高ぶる場合にも使える。単数では「感動」「感情の揺れ」、複数では「いろいろな感動体験」や「スリル」のようにも言う。
ギリシャ語:σύγκρουση
読み方:シググルシ・シーググルシ・シングルシ・シーングルシ
ラテン文字:sygkrousi
古代ギリシャ語の σύγκρουσις(互いにぶつかり合うこと)から。「共に」を意味する接頭辞 συν- と「打つ、叩く」を意味する動詞 κρούω が組み合わさったもので、もともとは物理的なぶつかり合いを表していた。
中世を経て現代ギリシャ語に至り、物理的な衝突だけでなく、意見や利益の対立、武力紛争、心理的な葛藤まで幅広く使われるようになった。動詞形は συγκρούομαι(衝突する、対立する)。
σύγκρουση と近い意味を持つ語もあるが、それぞれ用法の幅が異なる。πρόσκρουση は物体が固定物にぶつかる「衝撃」に重点を置く。τρακάρισμα は車の衝突事故を指す口語。αντιπαράθεση や διαμάχη は意見や立場の「対立・論争」に使われ、肉体的な衝突を含まないことが多い。
主な意味は、物体同士の物理的な衝突、意見や利益の対立、武力による紛争、そして心理的な葛藤。武力紛争については、πόλεμος(戦争)が組織的・長期的な紛争を指すのに対し、σύγκρουση は個々の衝突や散発的な小競り合いにも使われる。
σύγκρουση は σύγκρουση συμφερόντων(利益相反)や σύγκρουση των πολιτισμών(文明の衝突)のように、法律、政治学、心理学でも定着した複合表現に使われる。
ギリシャ語:συκιά
読み方:シキャ・シキャー
ラテン文字:sykia
συκιά(イチジクの木)は、古代ギリシャ語 συκῆ(イチジクの木)にさかのぼる語である。現代ギリシャ語では、実の σύκο(イチジク) に対して木の側を言う。
σύκο(イチジク) が果実を言うのに対して、συκιά はそれが実る木を言う。
意味はイチジクの木。野生の木にも栽培される木にも使える。
ギリシャ語:σύμβαση
読み方:シヴァシ・シーヴァシ・シムヴァシ・シームヴァシ
ラテン文字:symvasi
σύμβαση(協定、契約)は、συμβαίνω(合う、一致する、起こる)に関わる文語名詞 σύμβαση から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、当事者の合意や契約関係を指す。
συμβόλαιο(契約、契約書) が契約書そのものに寄ることがあるのに対して、σύμβαση は合意内容や契約関係を言いやすい。雇用なら εργοδότης(雇用主、使用者) と εργαζόμενος(働く人、被雇用者)のあいだの取り決めにもなる。
意味は協定、契約。法的な契約にも一般的な合意にも使える。
ギリシャ語:συμβόλαιο
読み方:シヴォレオ・シヴォーレオ・シムヴォレオ・シムヴォーレオ
ラテン文字:symvolaio
συμβόλαιο(契約、契約書)は、中世ギリシャ語 συμβόλαιον(契約文書)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、法的な契約内容そのものにも、それを書いた文書にも使う。
υπογραφή(署名、サイン) が個々のサインを言うのに対して、συμβόλαιο はそのサインが入る契約全体を言う。内容によっては απόφαση(決定、裁定)よりも当事者間の合意に重心がある。
意味は契約、契約書。売買、雇用、賃貸など広い場面で使える。
ギリシャ語:σύμβολο
読み方:シムヴォロ・シームヴォロ
ラテン文字:symvolo
古代ギリシャ語の σύμβολον(しるし、合図、符)から。もともとは、二つに割った札を合わせて本人確認のしるしにするような具体的な「符」の感覚を持っていた。
英語の symbol も同じ語源にさかのぼる。
μυστικός(神秘的な、秘密の、内密の) が隠された意味や秘められた領域を言いやすいのに対して、σύμβολο はその意味を目に見える形で示すしるしを言う。
意味は象徴、シンボル、記号。具体的なしるしにも、抽象的な象徴にも使える。
ギリシャ語:συμπάθεια
読み方:シバシア・シバーシア・シバティア・シバーティア・シンバシア・シンバーシア・シンバティア・シンバーティア
ラテン文字:sympatheia
古代ギリシャ語の συμπάθεια(共に感じること, 感情の共有)に由来。σύν(共に)と πάθος(受けた感情, 経験)からなる合成語で, 元の形容詞 συμπαθής(共に感じる)の抽象名詞。「好感」「好意」「お気に入り」「同情」までの現代の使い分けは, フランス語 sympathie, 英語 sympathy の意味配置と重なって整った。
同じ語族に, 語源になった形容詞 συμπαθής(愛すべき, 好ましい), そこから作られた動詞 συμπαθώ(好む, 同情する)と形容詞 συμπαθητικός(感じのよい)。対義の αντιπάθεια(反感)は αντί-(反する)を前に付けて作られた並行合成語。英語 sympathy, フランス語 sympathie はラテン語 sympathia を経て同じ語源で, 日本語「シンパシー」も同源。
同じ πάθος から作られた語は接頭辞でまったく違う意味に分かれる。απάθεια は α-(〜なし)と πάθεια で「無関心, 無感動」を指し, 英語 apathy の語源。εμπάθεια は εν-(中に)と πάθεια で, 古代には「強い情動」を指したが, 現代ギリシャ語では「悪意, 敵意」の意味が中心になった。英語 empathy はこの εμπάθεια をもとに作られた語で「相手の立場に入って感じる共感」を指すため, ギリシャ語と英語で意味が逆転している。この行き違いを避けるため, 英語 empathy の意味には, ギリシャ語では ενσυναίσθηση(共感)を充てる。英語の pathology(病理学), passion(情熱), pathos(悲壮感)も πάθος を素材にした語。
日本語の「共感」は広い場面で使うが, 心理学的な用法で見ると συμπάθεια に対応するのは「同情」のほうで, 相手の感情に寄り添いながらも自分は外側から見ている態度。英語 empathy とギリシャ語 ενσυναίσθηση は, 相手の立場に入り込んで同じ感情を自分のこととして感じる態度を指す。日本語では「同情」に哀れみの響きが強いため「共感」が sympathy の範囲まで吸収してしまっているが, ギリシャ語ではこの二つは別の語として分かれている。
συμπόνια(同情, 憐れみ)は σύν と πόνος(痛み)を合わせた語で, 英語 compassion(ラテン語 com + pati「共に苦しむ」)と構造が同じ。苦しみの共有に焦点があり, 相手の痛みを和らげたいという動機を伴う。συμπάθεια が好意にも同情にも使える広い範囲を持つのに対し, συμπόνια は苦痛の共有に限られる。
οίκτος(哀れみ)は相手の不幸に対して気の毒に思う感情で, 距離感を伴い哀れみや憐憫が前に出やすい。日本語の「同情」が持つ消極的な語感は οίκτος に近い。έλεος(慈悲)は宗教や司法で使うことが多く, 神の慈悲や裁判での温情のように「赦す」「大目に見る」側面が前に出る。ευσπλαχνία(深い慈しみ)は εὖ(良い)と σπλάχνα(内臓)からなる語で, 感情が体の奥底から湧き上がる発想。日本語の「はらわたが痛む」「断腸の思い」と通じる。κατανόηση(理解)は感情の共有ではなく, 相手の状況を知的に把握する態度を表す。
ギリシャ語:σύμπαν
読み方:シバン・シーバン・シンバン・シーンバン
ラテン文字:sympan
σύν(ともに)と πᾶς(すべて)からなる形容詞 σύμπας(全体の)の中性形を名詞として使った古代ギリシャ語の中性名詞 σύμπαν(全体, すべてを合わせたもの)に由来。「宇宙」の意味はフランス語 univers, 英語 universe からの意味借用で入った近代の用法。
同じ σύμπαν から派生した語に συμπαντικός(宇宙の), συμπαντολογία(宇宙論), συμπαντογένεση(宇宙創成)。
κόσμος(世界, 秩序, 宇宙)も宇宙を言うが, κόσμος が秩序ある全体に重心を置くのに対して, σύμπαν は存在するものの総体をまとめて言う。英語 universe, フランス語 univers, ドイツ語 Universum, イタリア語 universo はラテン語 universum(全体の)を経由した語族で, ラテン語の側もギリシャ語 σύμπαν と同じく「ひとつにまとまった全体」という発想から作られている。
ギリシャ語:συμπόνια
読み方:シボニャ・シボーニャ・シンボニャ・シンボーニャ
ラテン文字:symponia
συμπόνια は συν(共に)と πόνος(痛み)の合成語で、英語の compassion(ラテン語 com+pati=共に苦しむ)と構造を同じくする。
ただし現代ギリシャ語の συμπόνια は、名詞が直接作られたのではなく、動詞 συμπονώ(同情する、共感する)からの逆形成で今の意味が生まれた。中世ギリシャ語にも συμπονία という語はあったが、そちらは「協力」を意味しており、現代の「同情」とは直接つながらない。
συμπόνια と近い意味を持つ語はいくつかあるが、それぞれ感情の方向や深さが異なる。
συμπάθεια(好感、同情)は相手に対するポジティブな好意にも使える広い語で、日常的な「いいな」という気持ちから苦境への寄り添いまでをカバーする。それに対し、συμπόνια は苦痛の共有に限定される。相手の苦しみを感じるだけでなく、それを和らげたいという動機を伴う点が特徴。
同じ「同情」の周辺にも、宗教的・法的な文脈で使われる έλεος(慈悲)や、体の奥底から湧く深い情を表す ευσπλαχνία(慈愛)がある。
他者の苦しみや不幸に対し、共に痛みを感じ寄り添う感情を指す。単なる「可哀想」という反応ではなく、相手の痛みを自分のこととして引き受けるニュアンスがある。
ギリシャ語:συνάδελφος
読み方:シナデルフォス・シナーデルフォス
ラテン文字:synadelfos
συνάδελφος(同僚、仲間)は、συν-(共に)と αδελφός(兄弟)に由来する語である。もともとの「同じ仲間に属する人」という感覚が、現代ギリシャ語では同じ職場や同じ立場の人を表す語として残っている。
女性にもそのまま συνάδελφος の形で使われるので、文法上は男性名詞だが実際の用法は通性名詞として広い。
φίλος(友だち、友人、親しい人) が私的な親しさに寄るのに対して、συνάδελφος は同じ仕事や立場のつながりを中心に言う。
意味は同僚、仲間。同じ職場の人にも、同じ専門や団体の仲間にも使える。
ギリシャ語:συνάνθρωπος
読み方:シナンスロポス・シナーンスロポス・シナントゥロポス・シナーントゥロポス
ラテン文字:synanthropos
古代ギリシャ語の σύν(共に)と ἄνθρωπος(人間)を組み合わせた語で、ドイツ語の Mitmensch(同胞、仲間の人間)の翻訳借用として現代ギリシャ語に定着した。Mitmensch も mit(共に)と Mensch(人間)の合成語で、構造がそのまま対応する。後半の ἄνθρωπος は現代ギリシャ語の άνθρωπος と同じ語。
同胞や周りの人間、社会を構成する一員としての人間を指す。類義語に ο πλησίον(隣人)がある。
ギリシャ語:συνάντηση
読み方:シナディシ・シナーディシ・シナンディシ・シナーンディシ
ラテン文字:synantisi
συνάντηση(会合、打ち合わせ、出会い)は、συναντώ(出会う、会う)に由来する名詞である。現代ギリシャ語では、予定された会議にも、人との出会いにも使われる。
γραφείο(オフィス、事務所、机) が会う場所を言うことがあり、ομάδα(チーム、グループ) での打ち合わせなら συνάντηση がその会合になる。
意味は会合、打ち合わせ、出会い。仕事でも日常でも使える。
ギリシャ語:συνείδηση
読み方:シニディシ・シニーディシ
ラテン文字:syneidisi
古代ギリシャ語の συνείδησις(意識、良心)から。近代にはフランス語 conscience(良心、意識)の意味の影響も重なり、現代ギリシャ語では語尾が -ση(抽象名詞を作る現代的な語尾)の形に整えられた語として、古くからの「良心」に加えて「意識」「自覚」「職業的良心」「信条」といった周辺の用法も広く担うようになった。
哲学的な「意識」の意味はヘレニズム期の用法にさかのぼる。一方で、日常的な「自覚」や、社会的な文脈での「歴史意識」「階級意識」のような広がりは、近代以後の意味の押し広げ方を反映している。
主な意味は、心の働きとしての「意識」「自覚」と、道徳的な判断を支える「良心」。そこからさらに、意識のある状態、哲学用語としての意識、仕事への責任感、集団への帰属意識、個人の信条まで幅広く表す。
συνείδηση は固定表現の多い語でもある。たとえば καθαρή συνείδηση(清らかな良心)、κρίση συνειδήσεως(良心の葛藤)、επαγγελματική συνείδηση(職業的良心)、ιστορική συνείδηση(歴史意識)、αντιρρησίας συνείδησης(良心的兵役拒否者、良心的反対者)のように、個人の内面から社会的立場までを一語でまとめて言える。
ギリシャ語:συνεργασία
読み方:シネルガシア・シネルガシーア
ラテン文字:synergasia
古代ギリシャ語の σύν(共に)と ἔργον(仕事、活動)から成る合成語。ヘレニズム期のギリシャ語では職能組合やギルドを意味していたが、近代になってフランス語の collaboration(共同作業)や coopération(協力)の影響を受け、現在の「共同作業、協力」の意味が定着した。
英語の synergy(シナジー)は同じ σύν と ἔργον を語源に持つ。
類義語の σύμπραξη(共同行動)が一時的な行動を指すのに対し、συνεργασία は継続的な作業や体制を指す傾向がある。
主な意味は「共同作業」や「協力関係」。同じ分野で二人以上が共に働くことや、学術・報道における共同制作、寄稿、国家間や組織間の提携や協調も表す。
ギリシャ語:σύννεφο
読み方:シネフォ・シーネフォ
ラテン文字:sinefo
σύννεφο(雲)は、中世ギリシャ語の σύννεφο(雲)に由来し、そのもとにはヘレニズム期の形容詞 σύννεφος(曇った、雲に覆われた)がある。もともとは空が曇っている状態を言う形が、中性形で名詞化して「雲」そのものを表すようになった。
ουρανός(空)が雲の浮かぶ場所全体を指すのに対して、σύννεφο はそこに現れる雲そのものを言う。καπνός(煙)や σκόνη(ほこり、粉)は、空中に広がる様子から σύννεφο と比喩的に重なりやすい。
指小語の συννεφάκι(小さな雲)は、かわいらしい小さな雲を言う形で、子ども向けの言い方や情景描写で出やすい。派生語には συννεφόκαμα(蒸し暑い曇天)がある。
主な意味は「雲」。そこから、煙やほこりや虫の群れのように雲状に広がるもの、不安や災いの影のような暗い気配にも広がる。
ギリシャ語:συνοικία
読み方:シニキア・シニキーア
ラテン文字:synoikia
συνοικία(地区、町内、街区)は、συν-(共に)と οικία(家、住まい)に由来する語である。家が集まってできた場所という感覚から、現代ギリシャ語では町の一角や住宅地区を言う。
γειτονιά(近所、界隈) がもっと生活感のある近所を言いやすいのに対して、συνοικία は都市の地区、街区という少し広いまとまりに向きやすい。
意味は地区、町内、街区。都市の一部としての住宅地区や行政上の区画に使える。
ギリシャ語:σύντροφος
読み方:シドゥロフォス・シードゥロフォス・シンドゥロフォス・シーンドゥロフォス
ラテン文字:syntrofos
古代ギリシャ語の σύντροφος(ともに育てられた者, 仲間)を継承。σύν-(共に)と動詞 τρέφω(養う, 育てる)からできた合成語。「人生の伴侶」「恋人」「仲間」までの現代の使い分けは, フランス語 compagnon の意味配置と重なって整った。
派生に συντροφιά(連れ, 仲間の集まり), συντροφικός(仲間の, 同志の)。同じ τρέφω の語族には τροφή(食べ物, 栄養), τρόφιμος(寄宿生, 養子)。
ギリシャ語:σχήμα
読み方:スヒマ・スヒーマ
ラテン文字:schima
古代ギリシャ語の σχῆμα(形, 姿, ふるまい)に由来。ἔχω(持つ)のアオリスト語幹 σχ- に結果を表す -μα を付けて作られた語で, 持ち方・構えから形や姿へと意味が定まった。印刷の版型や書式を指す用法は, ドイツ語 Format の意味配置と重なって整った。図案や編成を指す用法は, フランス語 forme からの意味借用で加わった。インターネットの URL スキームやデータベースのスキーマは, 英語 scheme, schema を経由した専門用法。
英語 scheme, schema, フランス語 schéma, ドイツ語 Schema はラテン語 schēma を経て同じ語源。派生に σχηματίζω(形作る), σχηματισμός(形成, 編成), σχηματικός(概略の), μετασχηματίζω(変形する), μετασχηματιστής(変圧器)。
修道者の僧衣や位階を指す用法は, 中世ギリシャ語の σχῆμα を経て続いてきた宗教の語。古代の「姿, 身なり」から, 宗教生活における定まった身なりへと特殊化した。
ギリシャ語:σχολείο
読み方:スホリオ・スホリーオ
ラテン文字:scholeio
古代ギリシャ語の σχολή(講義, 学びの場)から派生したヘレニズム期の σχολεῖον(学ぶ場所, 学校)に由来する文語的な形。近代にはフランス語の école やドイツ語の Schule に対応する語としても意味が整えられ, 現代の「学校」を表す語になった。
母音が続く並びを発音しやすく読む中で、別形 σχολειό(学校)も使われる。意味の中心は σχολείο と同じである。
学校に通う人は μαθητής(生徒、弟子)と呼ぶ。σχολείο が制度や場を指すのに対して、μαθητής はそこに通う人を指す。
主な意味は「学校」。子供や青少年を教育する機関そのもの、そこが入る校舎、そこで行われる授業や学校生活、さらに生徒と職員を含めた学校全体まで指す。比喩的には、人が生きる上で必要なことを身につける場も言う。
Τ
ギリシャ語:ταινία
読み方:テニア・テニーア
ラテン文字:tainia
古代ギリシャ語の ταινία(帯, リボン, 鉢巻き)に由来。印欧祖語で「張る, 伸ばす」を表す語根に続く語で, 同じ語族に動詞 τείνω(張る, 伸ばす)。「映画フィルム」「磁気テープ」「映画作品」の意味は近代にフランス語 bande(帯, フィルム, テープ)の意味配置と重なって加わり, 「サナダムシ」の医学的な意味はすでにヘレニズム期にあり, ラテン語 taenia, フランス語 ténια, 英語 taenia の医学用語の語源にもなった。
派生に指小形 ταινιούλα(小さなリボン, 軽蔑的に「つまらない映画」), 形容詞 ταινιακός(テープ状の)。合成語に βιντεοταινία(ビデオテープ), μαγνητοταινία(磁気テープ), τηλεταινία(テレビ映画)。
映画作品を指すときにもっとも使われるのは ταινία。σινεμά はフランス語 cinéma 由来の借用で, 映画館のほか映画(芸術・産業全体)も指す。κινηματογράφος は κίνημα(動き)と γράφω(記録する)を合わせた語で, 映画館のほか映画という分野そのものも指す。単なる紐やリボンには κορδέλα(紐, リボン)を使い, 幅のある帯や鉢巻き, テープ類には ταινία。
ギリシャ語:ταξίδι
読み方:タクシディ・タクシーディ
ラテン文字:taxidi
古代ギリシャ語の τάξις(整列、隊列)をもとにした指小形 ταξίδιον(遠征)がヘレニズム期に現れ、中世ギリシャ語で ταξίδι になり、現代ギリシャ語の ταξίδι に続く。もとは軍事的な遠征を表した語だったが、のちに一般的な「旅、旅行」を指すようになった。
προσκύνημα(礼拝、聖地、巡礼地)は宗教的・精神的な目的を持つ訪問を指し、ταξίδι より用途が限られる。ταξίδι は観光、出張、長旅、宇宙旅行まで含めて広く使える。
主な意味は、ある場所から別の場所へ移り、しばらくそこに滞在する旅や旅行。そこから、戻らない旅として θάνατος(死)をやわらかく言ったり、想像の中で夢や未来へ移る心の旅、さらに幻覚剤によるトリップも表す。指小形 ταξιδάκι(ちょっとした小旅行)は、軽い響きで使われる。
挨拶では καλό ταξίδι(よい旅を)と言い、船乗りには καλά ταξίδια(よい航海を)と言う。ταξίδι του μέλιτος(新婚旅行)は定番の言い方で、το μεγάλο ταξίδι(最後の旅)は死をぼかして表す。
ギリシャ語:τάπητας
読み方:タピタス・ターピタス
ラテン文字:tapitas
古代ギリシャ語の τάπης(敷物、絨毯。属格 τάπητος、対格 τάπητα)からの学術借用(διαχρονικό δάνειο)で、対格 τὸν τάπητα を主格として再分析し、現代ギリシャ語の男性名詞 -ας 型に整えなおして τάπητας の形に落ち着いた。フランス語 tapis(絨毯)の意味から、表面を端から端まで覆うもの(舗装面・芝生など)を指す現代の比喩用法も意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として加わった。古代の τάπης 自体の起源は明確でなく、イラン語派(ペルシャ語 tanbase「絨毯」など)からの借用説と、先ギリシャ語基層からの語とする説が並ぶ。古代ギリシャ語の τάπης はラテン語 tapete を経て、フランス語 tapis(絨毯), イタリア語 tappeto(絨毯), 英語 tapestry(タペストリー), ドイツ語 Teppich(絨毯)の源になった。
類義語に χαλί(絨毯、敷物。トルコ語 halı 由来の外来借用で、置き敷きの絨毯全般を指す日常の形), μοκέτα(敷き詰めカーペット。フランス語 moquette 由来の外来借用), κιλίμι(キリム。トルコ語 kilim 由来の外来借用、毛足のない平織り)。τάπητας はやや硬い書き言葉で絨毯を指す形として、行政・公式・装飾文化や、表面を端から端まで覆うものの比喩(舗装面、競技場の芝生)で使う。派生に ταπητοστρώνω(絨毯を敷く), ταπητόστρωση(絨毯敷き), ταπητόστρωτος(絨毯敷きの), ταπητουργείο(絨毯工房), ταπητουργία(絨毯製造業), ταπητουργός(絨毯職人)。関連語に ταπί(一文無しの。賭場の毛織りテーブルクロス由来), ταπετσαρία(壁紙、室内張り), ταπετσάρω(壁紙を貼る、布張りする), ταπισερί(タペストリー店、壁掛織り)。合成語に ασφαλτοτάπητας(アスファルト舗装面)。
ギリシャ語:τάρανδος
読み方:タランドス・ターランドス
ラテン文字:tarandos
古代ギリシャ語の τάρανδος(トナカイ, 北方の鹿)を継承。もとはスキタイ語など北方言語からの借用と考えられている語で, アリストテレスの『動物誌』にも現れる。現代ギリシャ語ではそのままの形でトナカイを指す。
学名 Rangifer tarandus の種小名 tarandus はこの τάρανδος が入ったラテン語形。英語の reindeer とは系統が異なり, 動物学の学名の枠で τάρανδος の形が各国語に保たれている。
シカ科のうち, 広い意味で「鹿」を指すのは ελάφι, 中型のノロジカは ζαρκάδι, ダマジカは πλατόνι, 北極圏の大型種が τάρανδος にあたる。
「何度も浮気された人」の比喩は, 角が生える=寝取られるという発想から。ヨーロッパ圏で広く見られる表現で, 成句 κάνω κάποιον τάρανδο(誰かをトナカイにする)もこの比喩に連なる。
ギリシャ語:ταραξάκο
読み方:タラクサコ・タラクサーコ
ラテン文字:taraxako
ταραξάκο(タンポポ)は、学名 Taraxacum に連なる語形から入った植物名である。現代ギリシャ語では、タンポポを指すもう一つの呼び方として見られる。
πικραλίδα(タンポポ) が日常の花名として立ちやすいのに対して、ταραξάκο はより植物名らしい呼び方として見えやすい。
意味はタンポポ。黄色い花をつける草本植物をいう。
ギリシャ語:ταύρος
読み方:タヴロス・ターヴロス
ラテン文字:tavros
古代ギリシャ語の ταῦρος(雄牛)を継承。印欧祖語で「雄牛」を表した語と共通の語源を持ち, ラテン語 taurus(雄牛)も同じ語根から出ている。先頭大文字の Ταύρος は星座と占星術でおうし座, その期間に生まれた人を指す固有名的用法。
同じ ταῦρος の語族に指小形 ταυράκι(小さな雄牛), 形容詞 ταύρειος(雄牛の), 合成語 ταυρομαχία(闘牛), ταυρομάχος(闘牛士), ταυροκαθάψια(古代の牛跳び儀式), ταυροειδής(雄牛のような形の), ταυρόμορφος(雄牛の形をした)。
英語 Taurus(おうし座)はラテン語 taurus を経て入り, tauromachy(闘牛)は ταυρομαχία から。牛の語彙では βόδι(去勢牛)が去勢された使役・食用の牛を指すのに対し, ταύρος は繁殖用の去勢されていない雄牛を指す。
ギリシャ語:ταυτότητα
読み方:タフトティタ・タフトーティタ
ラテン文字:taftotita
ταυτότητα(身元、身分証明書)は、古代ギリシャ語由来の文語的な ταυτότης(同一性)から受け継がれた語である。現代ギリシャ語では、本人であることという抽象的な身元にも、身分証明書そのものにも使われる。
αίτηση(申請、申込) を出すときや άδεια(許可、休暇) を受ける手続きでは、ταυτότητα が本人確認書類として求められやすい。
意味は身元、身分証明書。抽象的な同一性より、日常では ID カードの意味が前に出やすい。
ギリシャ語:τάφος
読み方:タフォス・ターフォス
ラテン文字:tafos
古代ギリシャ語の τάφος(墓, 埋葬)を継承。印欧祖語で「埋葬する」を表す語根に続き, 同じ語族に動詞 θάπτω(埋葬する, 葬る), その動作名詞 ταφή(埋葬, 葬儀)。
派生に ταφικός(墓の, 葬儀の)。合成語に επιτάφιος(墓碑の, 墓前の), ταφόπλακα(墓石)。英語 epitaph, フランス語 épitaphe はこの επιτάφιος をもとにした学術借用語。英語 cenotaph(空墓, 慰霊碑)も κενός(空の)と τάφος から作られた語。
μνήμα(墓, 記念碑)は個々の墓を指して日常で多く使われ, τάφος は考古学や宗教の文脈, 比喩的な表現で強く残る。Πανάγιος Τάφος(聖墳墓, キリストの墓)はギリシャ正教の中心になる言い方。
ギリシャ語:ταχύτητα
読み方:タヒティタ・タヒーティタ
ラテン文字:tachytita
古代ギリシャ語の ταχύτης(速さ)から。現代ギリシャ語では語尾が -τητα に変わり、今の形になった。
ταχύς は英語の tachometer(タコメーター、回転速度計)の語源であり、接頭辞 tachy- として tachycardia(頻脈)などの医学用語にも使われている。
ギアの意味は、フランス語の vitesse(速度)がギアの意味でも使われることの影響で、ギリシャ語にも加わった。
類義語に γρηγοράδα(素早さ)、σβελτάδα(機敏さ)がある。対義語は βραδύτητα(遅さ)。
物理的な速度や、物事が進む速さ・ペースを表す。自動車や自転車の変速ギアの意味もある。
χύτρα ταχύτητας(直訳は「速さの鍋」)は圧力鍋のこと。短時間で調理できることからこの名がついた。
ギリシャ語:τελετή
読み方:テレティ・テレティー
ラテン文字:teleti
古代ギリシャ語の τελετή(入信儀礼, 秘儀)を継承。動詞 τελέω(成し遂げる, 実行する)から作られた名詞で, τέλος(終わり, 仕上げ, 料金)と同じ語根から出る。印欧祖語で「巡る, 動く」を表した語根の子孫。「式典, セレモニー」の広い意味は, フランス語 cérémonie からの意味借用で入った近代の用法。
同じ τελέω の語根から兄弟語に τέλεση(執行, 挙行), τέλος(終わり, 仕上げ, 料金)。τελετή 自体から作られた合成語には τελετουργία(儀式, 儀礼, τελετή に ἔργον を足した形), τελετουργικός(儀礼の, 典礼の)。
宗教儀礼に強い語は ιεροτελεστία(秘跡の挙行, 荘厳な儀式)で, 決まった手順を守って厳かに行う感じを前面に出す。比喩では料理やお茶の入れ方のように手順を守って厳かに行う行為にも使う。τελετή は世俗の式典(卒業式, 開会式, 結婚式)も含めて広く使える。英語 ceremony, フランス語 cérémonie, イタリア語 cerimonia はラテン語 caerimonia から経由した別系統の語で, 意味の上で τελετή と対応する。儀礼を担う ιερέας(司祭)がこの語の周辺で動く。
ギリシャ語:τελετουργία
読み方:テレトゥルイア・テレトゥルイーア・テレトゥルギア・テレトゥルギーア
ラテン文字:teletourgia
古代ギリシャ語の τελετή(儀式、秘儀)と ἔργον(仕事、行い)の合成語に由来。もとは「儀式を執り行うこと」で、ヘレニズム期から用いられ、現代ギリシャ語へと引き継がれた。同じ ἔργον に由来する接尾辞 -ουργία を含む語に λειτουργία(典礼、機能)があり、英語 liturgy も λειτουργία から来ている。形容詞は τελετουργικός(儀式的な、儀礼的な)、副詞は τελετουργικά(儀式に則って)。
語源に含む τελετή(式典、儀式)は卒業式や開会式のような世俗的な行事にも広く使えるのに対し、τελετουργία は宗教的な文脈に限られやすい。近い語に ιεροτελεστία(宗教的で厳かな儀式)、μυσταγωγία(秘儀への入門、秘跡)、έθιμο(慣習、しきたり)など。
ギリシャ語:τεμπέλης
読み方:テベリス・テベーリス・テンベリス・テンベーリス
ラテン文字:tempelis
τεμπέλης はトルコ語 tembel に由来する借用語。現代ギリシャ語では、人について「怠け者」「怠惰な」を表すのが中心で、仕事や用事を避けて時間をむだにする人を言う。その延長で、車内で腕を預けて楽な姿勢をとれる収納付きアクセサリーの呼び名にもなっている。
語形は男性形 τεμπέλης、女性形 τεμπέλα(女性形)、中性形 τεμπέλικο(中性形)。人を言うときは名詞としても形容詞としても使え、「怠けた人」「怠け癖のある人」という感覚を表す。
意味の中心には、δουλειά(仕事、労働、職)のようなものを避ける人、という感覚がある。近い語には ακαμάτης(怠け者)、ανεπρόκοπος(だらしなくぱっとしない人)、αργόσχολος(暇をもてあましている人)、οκνηρός(怠惰な)、φυγόπονος(骨折りを嫌う人)がある。きつめの言い方には κηφήνας(怠け者、寄生的な人)、τεμπελχανάς(ぐうたら)、τεμπελόσκυλο(この上なく怠けたやつ)があり、反対側には ακάματος(疲れを知らない)、εργατικός(働き者の)、φίλεργος(仕事好きの)、φιλόπονος(勤勉な)、δουλευταράς(よく働く人)が並ぶ。
指小語の τεμπελάκος(小さな怠け者、ぐうたら坊や)は、軽くからかうような言い方。反対に τεμπέλαρος(ひどい怠け者)は、だらしなさを強めて言う拡大形で、のっそりした怠け者という響きがある。さらに αρχιτεμπέλης(筋金入りの怠け者)も、強調形として使える。
主な意味は、人についての「怠け者」「怠惰な」。やるべきことを後回しにし、楽をしたがる人や態度を指す。そこから転じて、車の中で腕を置きつつ小物も入れられるひじ掛け兼収納も表す。
ギリシャ語:τετράγωνο
読み方:テトゥラゴノ・テトゥラーゴノ
ラテン文字:tetragono
古代ギリシャ語の τετράγωνον(正方形、四角いもの)から。語の形としては、数を表す τετρα-(四)と、γωνία(角)に対応する要素から成り、文字どおりには「四つの角をもつもの」という造りである。
現代ギリシャ語でも、図形としての「正方形」の意味はこの古い語からそのまま続いている。一方、数学で αριθμός στο τετράγωνο(数の二乗)のように使う意味は、フランス語の carré(四角形、二乗)に対応する近代的な用法である。さらに οικοδομικό τετράγωνο(街区、街の一区画)は、英語の square に対応する複合表現として使われる。
いちばん近い基本語は γωνία(角、角度)。正方形は四つの直角をもつ図形なので、語の芯もここにつながっている。図形としては τρίγωνο(三角形)と並べて覚えやすい。指小語の τετραγωνάκι(小さな四角、マス目)もよく使われ、布地の小さな四角模様、クロスワードのマス、チェック欄の小さな箱のような場面で出てくる。
主な意味は幾何学の「正方形」。そこから、正方形のマス目、数の二乗、道路に囲まれた街の一区画にも広がる。
ギリシャ語:τεχνικός
読み方:テフニコス・テフニコース
ラテン文字:technikos
古代ギリシャ語の τεχνικός(技巧の、技能に関わる)に由来。名詞 τέχνη(技術、技芸、技巧)に形容詞を作る -ικός をつけた語。英語 technical、フランス語 technique、ドイツ語 technisch もラテン語 technicus を経て同じ語源。名詞の「技術者」の用法は、フランス語 technicien、英語 technician からの意味借用で広がった。
ギリシャ語:τζάκι
読み方:ヅァキ・ヅァーキ
ラテン文字:tzaki
τζάκι はトルコ語の ocak に由来する借用語。現代ギリシャ語では、室内に造りつけられ、煙突につながって火を焚ける設備を指す語として定着している。
家全体を言うのは σπίτι(家、住居)で、実際に燃えている火そのものは φωτιά(火、炎)と言うことが多い。τζάκι は、その火を囲む造りつけの暖炉を指しやすく、そこから暖炉の中で燃えている火自体を言うこともある。
主な意味は暖炉。石や金属で作られた室内の火床で、暖を取ったり雰囲気を作ったりするために使う。比喩では、長く影響力を持つ οικογένεια(家族、一族)や家柄を指し、とくに政界や上流社会の名門をやや批判的に言うことがある。
ギリシャ語:τζιτζίκι
読み方:トゥジトゥジキ・トゥジトゥジーキ・トゥジトゥズィキ・トゥジトゥズィーキ・トゥズィトゥジキ・トゥズィトゥジーキ・トゥズィトゥズィキ・トゥズィトゥズィーキ
ラテン文字:tzitziki
ギリシャ語:τηλεόραση
読み方:ティレオラシ・ティレオーラシ
ラテン文字:tileorasi
フランス語 télévision の翻訳借用(カルク)で、τηλε-(遠い)と όραση(視覚、見ること)を合わせた語。フランス語が古代ギリシャ語由来の τηλε- とラテン語 videre(見る)からの vision を組み合わせた形を、今度はギリシャ語の素材だけで置き換えたかたち。
派生語に τηλεοπτικός(テレビの), τηλεθεατής(テレビ視聴者), τηλεχειριστήριο(リモコン), τηλεπαιχνίδι(テレビ番組ゲーム)。
ギリシャ語:Τηλεσκόπιον
読み方:テレスコピオン・テレスコーピオン
ラテン文字:tileskopio
ラテン語 telescopium(望遠鏡)をもとにした星座名で、古代ギリシャ語の τηλέ(遠く)と σκοπέω(見る)からできた形 Τηλεσκόπιον で呼ぶ。現代ギリシャ語で望遠鏡はふつう τηλεσκόπιο と言う。英語 Telescopium も同じラテン語から。
18世紀にフランスの天文学者ラカイユが考案した星座。新しい星座なので神話はない。
ギリシャ語:τηλεφωνώ
読み方:ティレフォノ・ティレフォノー
ラテン文字:tilefono
τηλεφωνώ は、フランス語 téléphoner または英語 telephone の影響を受けて近代ギリシャ語に入った文語的な動詞で、名詞 τηλέφωνο(電話)を土台にしている。英語の telephone や phone と同じ国際語系に属し、語の後半は φωνή(声)と同じ語根につながる。
語形には τηλεφωνώ と τηλεφωνάω(電話する)がある。口語では受動側の τηλεφωνιέμαι(電話で連絡し合う)が、誰から誰へ電話したかを立てずに「電話で連絡し合う」「電話で話す」のような相互的な意味でも使われる。
主な意味は「電話する」。相手の番号に電話をかけること、その電話で相手と話すこと、電話で何かを知らせることまでをまとめて言える。口語の受動形では、二人が電話でやりとりすることも表せる。
ギリシャ語:τιμή
読み方:ティミ・ティミー
ラテン文字:timi
古代ギリシャ語の τιμή(名誉, 評価, 値)を継承。印欧祖語で「価値づける, 敬う」を表す語根に続き, 動詞 τίω(敬う, 値をつける)から抽象名詞を作る -μή が付いてできた語。「名誉」「敬意」「値段」「料金」の現代の使い分けは, フランス語 honneur と valeur の意味配置と重なって整った。
派生に τίμιος(誠実な, 正直な, 価値ある), 動詞 τιμώ(敬う, 値段をつける), τιμητικός(名誉の)。合成語に ατιμία(不名誉。α- + τιμή + -ία), τιμοκατάλογος(価格表)。
κέρδος(利益, 利得)が売買の結果として残る儲けを指すのに対し, τιμή は売買の場でつく価格そのものを指す。人への敬意の意味では δόξα(栄光)と並び, 「τιμή και δόξα(名誉と栄光)」のように対で使う。
ギリシャ語:τιρκουάζ
読み方:ティルクアズ・ティルクアーズ
ラテン文字:tirkouaz
フランス語の turquoise に由来する。turquoise は pierre turquoise(トルコの石)を縮めたもので、この石がトルコを経由してヨーロッパに伝わったことからそう呼ばれた。英語の turquoise も同じ語源から来ている。
ギリシャ語には τιρκουάζ の形で借用されたが、母音の逆行同化により τουρκουάζ という形も生まれた。現代ギリシャ語ではどちらの形も使われる。
宝石としてのターコイズ(トルコ石)と、その石の色に由来する緑がかった明るい青色(ターコイズブルー)の両方を指す。名詞としても形容詞としても語形が変化しない不変化語で、形容詞的に用いるときもそのまま名詞の後ろに置く。
ギリシャ語:τοίχος
読み方:ティホス・ティーホス
ラテン文字:toichos
古代ギリシャ語の τοῖχος(家屋の壁, 船の側面)を継承。印欧祖語で「こねる, 形作る」を表す語根に続き, 粘土をこねて壁を築く行為から「壁」の名になった。英語 dough(生地), ラテン語 fingere(形作る)と figura(形)も同じ語族。
並行形の τείχος(城壁)も同じ語根からできた語で, τοίχος が家屋など建物の壁を指すのに対し, τείχος は都市や要塞を囲む城壁を指す。
派生に τοίχωμα(内壁, 隔壁, 細胞壁)。指小形に τοιχάκι, τοιχαλάκι。
ギリシャ語:τόνος
読み方:トノス・トーノス
ラテン文字:tonos
古代ギリシャ語の τόνος(張り, 音の高さ, アクセント)を継承。動詞 τείνω(張る, 伸ばす)から作られた名詞で, 印欧祖語で「張る」を表す語根に続く。ラテン語 tonus, 英語 tone も同じ語源。
音楽の音程, 声の調子, 文体や色のトーン, 機器の通知音といった現代の用法は, フランス語 ton と英語 tone からの意味借用で整った。
同じ綴りの τόνος には別の語源の語が重なる。重量単位の「トン」はフランス語 tonne からの借用。魚のマグロを指す τόνος(別綴り τόννος)はイタリア語 tonno からの借用で, その先はラテン語 thynnus, 古代ギリシャ語 θύννος(マグロ)に戻る。
派生に τονίζω(強調する, アクセントを置く), τονικός(トニックの)。合成語に ημιτόνιο(半音)。
ギリシャ語:τοξότης
読み方:トクソティス・トクソーティス
ラテン文字:toxotis
古代ギリシャ語の τοξότης(弓使い, 射手)を継承。τόξον(弓)に動作主を作る -της が付いてできた語で, 弓を扱う人を言う。
同じ τόξον の語族に τοξοβόλος(弓兵), τοξικός(弓術の, 毒性の), τοξικό(毒), 動詞 τοξεύω(弓を射る)。英語 toxic, toxin も, 古代ギリシャ語 τοξικόν(弓の矢に塗る毒)から入った語で, 同じ語族。
星座の Τοξότης は黄道十二星座の第九宮に当たる。ギリシャ神話で Τοξότης と結び付けられるのは, ケンタウロスの姿をした弓の射手, あるいは弓の発明者とされる森の精クロトスである。
ギリシャ語:τοπάζι
読み方:トパジ・トパージ・トパズィ・トパーズィ
ラテン文字:topazi
古代ギリシャ語の τοπάζιον(トパーズ)から。現代ギリシャ語でも、そのまま宝石名として使われている。
λίθος(石、宝石、試金石、結石) が宝石を広く言う文語的な語であるのに対して、τοπάζι は個別の宝石名である。
意味は基本的に「トパーズ」のみ。宝石としての石そのものや、その色名的な連想で現れる。
ギリシャ語:τουλίπα
読み方:トゥリパ・トゥリーパ
ラテン文字:toulipa
ペルシア語の dulband(ターバン)を後ろに持ち、オスマン語の tülbent / dülbent(ターバン、ターバン用の布)を経て、フランス語の tulipan、tulippe、tulipe を通り、現代ギリシャ語の τουλίπα に至った語。
この語源で興味深いのは、花そのものの本来の名前がペルシア語では lale(チューリップ)、トルコ語では lâle(チューリップ)だという点である。ヨーロッパ語の tulip / tulipe / tulipan 系は、16 世紀にオスマン帝国を訪れた外交官や植物愛好家の記録を通じて広がった形で、花をターバンに見立てた呼び方、あるいはその周辺で生じた呼称の取り違えが背景にあるとする説明が有力である。
英語の tulip も同じ流れに属し、イタリア語 tulipano やスペイン語 tulipán はより長い形を残している。植物学名の Tulipa もこの系統の語形を受け継いだもの。
主な意味はチューリップ。球根から育つ観賞用の λουλούδι(花)の一つで、長い茎と細長い葉を持ち、ふつうは鮮やかな色の杯形の花を一輪つける。
オランダは η χώρα της τουλίπας(チューリップの国)という言い方で呼ばれることがある。
ギリシャ語:τουρκουάζ
読み方:トゥルクアズ・トゥルクアーズ
ラテン文字:tourkouaz
τιρκουάζの母音の逆行同化による別形。
τιρκουάζ と同じく、宝石のターコイズおよびターコイズブルーの色を指す。
ギリシャ語:τούρτα
読み方:トゥルタ・トゥールタ
ラテン文字:tourta
中世のヴェネツィア・イタリアとの交易を通じて入った外来借用で、イタリア語の torta(円形のパン菓子、菓子)またはフランス語の tourte(パイ、円い菓子)が直接の借用元。これらはラテン語 torta(panis)(ねじったパン、円形のパン)にさかのぼり、もとは「ねじる」を意味する動詞 torqueō の語幹を持つ。古代ギリシャ語にもラテン語からヘレニズム期に入った τοῦρτα(焼き菓子の一種)があり、同じ系譜の早い借用として下地を作っていた。中世以降の伊仏のケーキ文化と結び付き、現代の τούρτα は祝事の華やかな飾り菓子を担う形に落ち着いた。英語 tart(タルト), torte(トルテ)はいずれも同じラテン語 torta から経由して入った借用で、τούρτα と語根を共有する。
類義語に κέικ(ケーキ。英語 cake からの外来借用で、パウンドケーキ等の素朴な焼き菓子を指す), πάστα(個別のショートケーキ、ペイストリー。イタリア語 pasta 由来), γλύκισμα(菓子全般を指す総称)。τούρτα はクリームや果物で飾った華やかなデコレーションケーキを指す形として広く使う。派生に τουρτίτσα(小さなケーキ。指小形)。
ギリシャ語:τραγούδημα
読み方:トゥラグディマ・トゥラグーディマ
ラテン文字:tragoudima
τραγούδι(歌)と同じ語族の名詞で、動詞 τραγουδώ(歌う)の行為をそのまま名詞化した形にあたる。語源の流れは τραγούδι のページでも触れている。
同じく歌う行為を表す並行形に τραγούδισμα(歌うこと、歌唱)がある。どちらも「歌」という作品より、歌うという動作や営みそのものを言うときに向く。
τραγούδημα(歌うこと、歌唱)は、歌うという行為そのものを表す語。個々の楽曲ではなく、歌っていること、歌唱という営みを指す。
ギリシャ語:τραγούδι
読み方:トゥラグディ・トゥラグーディ
ラテン文字:tragoudi
τραγούδι(歌)は、中世ギリシャ語の τραγούδι(歌)に由来する語で、動詞 τραγουδώ(歌う)から作られた名詞にあたる。動作を表す動詞から、その結果として生まれるものを表す名詞ができた形で、現代ギリシャ語でもそのまま「歌」を表す基本語になっている。
主な意味は、旋律にのせて歌われる詞や歌そのもの。そこから、一定の特徴をもつ歌のまとまりや歌の流派、歌う技術としての歌唱、さらに鳥や水が立てる旋律的な音にも使われる。
指小形 τραγουδάκι(小さな歌、子供向けの歌)は、子供向けの小さな歌をやわらかく言う形として使われるほか、できの悪い取るに足らない歌を軽く見て言うこともある。
歌うという行為そのものを名詞で言うときには、τραγούδημα(歌うこと、歌唱)や τραγούδισμα(歌うこと、歌唱)のような形も使われる。τραγούδι が「歌」という作品や曲そのものを指すのに対して、こちらは行為としての歌唱に重心がある。
歌う人を言うときには、τραγουδιστής(歌手、歌い手)と、その女性形の τραγουδίστρια(歌手、歌い手)を使う。こちらは作品としての「歌」ではなく、それを歌う人に焦点が移った形である。
ギリシャ語:τραγούδισμα
読み方:トゥラグディズマ・トゥラグーディズマ
ラテン文字:tragoudisma
τραγούδι(歌)と同じ語族の名詞で、動詞 τραγουδώ(歌う)の行為をそのまま名詞化した形にあたる。語源の流れは τραγούδι のページでも触れている。
同じく歌う行為を表す並行形に τραγούδημα(歌うこと、歌唱)がある。どちらも「歌」という作品より、歌うという動作や営みそのものを言うときに向く。
τραγούδισμα(歌うこと、歌唱)は、歌うという行為そのものを表す語。個々の楽曲ではなく、歌っていること、歌唱という営みを指す。
ギリシャ語:τραγουδιστής
読み方:トゥラグディスティ・トゥラグディスティー
ラテン文字:tragoudistis
τραγουδιστής(歌手、歌い手)は、中世ギリシャ語の τραγουδιστής(歌手、歌い手)に由来する語で、動詞 τραγουδώ(歌う)から接尾辞 -ιστής(〜する人を表す語尾)を使ってできた、行為者を表す名詞にあたる。τραγούδι(歌)と同じ語族で、現代ギリシャ語ではまず「歌う人」、とくに職業として歌う人を表す基本語になっている。
女性形は τραγουδίστρια(歌手、歌い手)。意味の中心は同じで、歌う職業人や歌い手を指す。
もっとも一般的には、上手に歌う人や、歌を仕事にする歌手を指す。そこから文語的・比喩的には、誰かや何かを詩や歌でたたえる人を表すこともある。
ギリシャ語:τραγουδίστρια
読み方:トゥラグディストゥリア・トゥラグディーストゥリア
ラテン文字:tragoudistria
τραγουδιστής(歌手、歌い手、詩歌でたたえる人)の女性形。
歌を仕事にする女性歌手や、歌う女性を指す。文語的・比喩的には、詩や歌で誰かや何かをたたえる女性についても使える。
ギリシャ語:τράπεζα
読み方:トゥラペザ・トゥラーペザ
ラテン文字:trapeza
古代ギリシャ語の τράπεζα(食卓, 両替台)を継承。τρι-(三)と πέζα(足, πούς「足」の語族)からなる合成語で, 「三本足の台」がもとの意味。両替商が台の上で金銭を扱ったことから「両替台」の意味が加わり, 現代の「銀行」の意味は英語 bank からの意味借用で整った。ミケーネ時代の線文字 B にも to-pe-za の形で現れる。
英語 trapeze(空中ブランコ), trapezoid(台形), trapezius(僧帽筋)はいずれも同じ τράπεζα から形の連想でできた語。
派生に τραπεζίτης(銀行家), τραπεζικός(銀行の), τραπέζι(テーブル。指小形からできた現代の語形)。
λογαριασμός(勘定, 口座, 請求書)が個別の口座や請求書を指すのに対し, τράπεζα は金融機関そのものを指す。κέρδος(利益, 儲け)は金融活動の結果として残るものを指す。
ギリシャ語:τραπέζι
読み方:トゥラペジ・トゥラページ・トゥラペズィ・トゥラペーズィ
ラテン文字:trapezi
古代ギリシャ語の τραπέζιον(卓、食卓)から。中世ギリシャ語の τραπέζιν を経て現代の形になった。
家具として並べるなら、καρέκλα(椅子、役職、権力の座)がもっとも自然な組み合わせになる。食事の意味では、整った言い方の γεύμα(食事、食事の席、会食)や、食べ物そのものを指す φαγητό(食べ物、料理、食事)と比べると、τραπέζι は「食卓に着くこと」「食事の席が設けられること」まで含みやすい。
主な意味は、ものを載せたり人が囲んだりするテーブル。そこから、料理が並ぶ食事の場そのものや、その場でとる会食にも広がる。さらに主に複数形では、双方が向き合って話し合う交渉や協議の席も表す。
指小語の τραπεζάκι(小さなテーブル、サイドテーブル)と τραπεζίδιο(小卓)は、家具としての小ぶりな机や卓をやわらかく言う形。固定表現では、στρογγυλό(丸い) τραπέζι / στρογγυλή τράπεζα(円卓会議、ラウンドテーブル討論)のように、形から転じて話し合いの形式そのものを言うこともある。
ギリシャ語:τραπουλόχαρτο
読み方:トゥラプロハルト・トゥラプローハルト
ラテン文字:trapoulocharto
ギリシャ語:τραυματισμός
読み方:トゥラヴマティズモス・トゥラヴマティズモース
ラテン文字:travmatismos
τραυματισμός(負傷、けが、外傷)は、τραύμα(傷、外傷)から τραυματίζω(傷つける)を経てできた名詞である。現代ギリシャ語では、傷つける行為そのものより、その結果として生じたけがや負傷を言う。
ατύχημα(事故、不運な出来事) が出来事全体を言うのに対して、τραυματισμός はその結果として人が受けた傷やけがに焦点を当てる。
意味は負傷、けが、外傷。軽いけがにも、重い負傷にも使える。
ギリシャ語:τρέλα
読み方:トゥレラ・トゥレーラ
ラテン文字:trela
τρέλα は、動詞 τρελαίνω(狂わせる、正気を失わせる)から逆成で生まれた名詞。
医学的な「精神疾患」を指すときは ψυχοπάθεια や ψυχική διαταραχή も使われるが、τρέλα は日常会話でずっと広い範囲をカバーする。文字どおりの「狂気」だけでなく、無鉄砲な行動、何かへの強い熱中、口語で「最高だ」と褒める言い方まで含む。
主な意味は「狂気」。そこから、一時の気の迷いや無分別な振る舞い、何かへの強いこだわり、精神的に追い込まれて気が変になりそうな感覚も表す。複数形 τρέλες では若気の至りやふざけた振る舞いを言い、指小語 τρελίτσα や拡大語 τρελάρα の形でも使われる。
ギリシャ語:τρέξιμο
読み方:トゥレクシモ・トゥレークシモ
ラテン文字:treximo
τρέξιμο は中世ギリシャ語の τρέξιμον(走ること)を受け継いだ語で、動詞 τρέχω(走る)にさかのぼる。現代ギリシャ語では、体を使って走ることを言う基本語として残り、日常のランニングから競技の走り方まで広く表す。
コンピュータの τρέξιμο του προγράμματος(プログラムの実行)は、英語 running の影響を受けた用法で、プログラムを動かすこと、実行することを表す。
主な意味は、体を使って走ること、そのためのランニング。そこから、用事や面倒ごとで走り回る慌ただしさ、コンピュータでの実行、まれに水の流れまで言える。複数形の τρεξίματα(奔走、雑事)は、とくに πρόβλημα(問題、課題、不具合)に追われる感じを出しやすい。
運動としての τρέξιμο は άσκηση(運動、練習)より具体的で、走る動作そのものを指す。ζέσταμα(準備運動、加熱)の一部として軽く走ることにも使われ、軽い走りでは τζόκινγκ(ジョギング)とも重なる。競技の文脈では αγώνας δρόμου(競走)や σπριντ(短距離走、スプリント)のような語と隣り合う。
ギリシャ語:τριαντάφυλλο
読み方:トゥリアダフィルロ・トゥリアダーフィルロ・トゥリアンダフィルロ・トゥリアンダーフィルロ
ラテン文字:triantafyllo
中世ギリシャ語の τριαντάφυλλον(三十枚の花びらを持つ花。τριάκοντα「三十」+ φύλλον「葉、花びら」の合成)を継承。多くの花弁を持つバラの形態を捉えた中世期のギリシャ語内合成で、古代の ῥόδον に代わってバラを指す形として広まった。古代の ῥόδον も今は ρόδο として詩歌や文芸の硬い文脈に残り、ラテン語 rosa を経由して英語 rose, ドイツ語 Rose, イタリア語 rosa などのバラを指す語の語源になった。英語 rhododendron(シャクナゲ。直訳「バラの木」)はこの ῥόδον からラテン語経由で入った学術借用で、τριαντάφυλλο とは別系統。τριαντάφυλλο 自体もバルカンや東欧の周辺言語に広がり、アルバニア語 trëndafil, ルーマニア語 trandafir, ブルガリア語 трендафил, ウクライナ語 троянда などの形で借用された。
類義語に ρόδο(バラ。古代ギリシャ語由来で詩歌・文芸の硬い形), γκιούλι(バラ。トルコ語 gül 経由でペルシャ語 gul「花」から入った外来借用で、くだけた話し言葉や方言で使う)。τριαντάφυλλο はバラを指すふつうの形として広く使う。派生に τριανταφυλλάκι(小さなバラ。指小形), τριανταφυλλιά(バラの木), τριανταφυλλένιος(バラ色の、バラのような), τριανταφυλλής(バラ色の), τριανταφυλλί(バラ色)。合成語に τριανταφυλλόνερο(バラ水、ローズウォーター), τριανταφυλλόξιδο(バラ酢)。
ギリシャ語:τριβή
読み方:トゥリヴィ・トゥリヴィー
ラテン文字:trivi
古代ギリシャ語の τριβή(摩耗, 経験, 猶予, 従事)に由来。動詞 τρίβω(こする, 摩耗させる)から抽象名詞を作る -ή が付いてできた語で, もとは「こすること」。印欧祖語で「こする」を表す語根に続き, ラテン語 tero(こする, すり減らす)も同じ語族。物理の「摩擦」の意味はフランス語 friction と frottement からの意味借用で整った。「経験, 習熟」の用法は, こすり続けるうちに身につく技という発想から育った。
同じ τρίβω の語族に名詞 τρίψιμο(こすり, 摩擦), διατριβή(論文。δια-「通して」+ τρίβω から)。英語 tribology(摩擦学), diatribe(辛辣な批判。もとの意味は「時間をすり減らす議論」)も同じ τρίβω の語族。
合成語に ανεργία τριβής(摩擦的失業。転職や求職活動の過渡期に生じる一時的な失業)。
ギリシャ語:τρίγωνο
読み方:トゥリゴノ・トゥリーゴノ
ラテン文字:trigono
古代ギリシャ語の τρίγωνον(三角形、三角の)から。語の形としては、数を表す τρι-(三)と、γωνία(角)と同じ系統の要素が合わさったもので、文字どおりには「三つの角をもつもの」という造りになっている。
現代ギリシャ語でも、幾何学の「三角形」という中心の意味はこの古い語からそのまま続いている。フランス語や英語の triangle は意味も形もよく対応するが、τρίγωνο 自体はそれらから来た語ではなく、古代ギリシャ語から受け継がれた語である。近代の複合表現には、フランス語や英語の triangle と重なる言い方も見られる。
いちばん近い基本語は γωνία(角、角度)。三角形は三つの角をもつ図形なので、語の意味の芯もここにつながっている。指小語の τριγωνάκι(小さな三角形)もあるが、これは小さな三角形や三角形の小物を指すときの軽い形で、通常は独立した説明を立てるほどではない。
主な意味は幾何学の「三角形」。そこから、三角形の物、体の部位名や星座名、町の一角の呼び名、菓子、楽器、角度を測る道具にも広がる。
ギリシャ語:Τρίγωνον Νότιον
読み方:トゥリゴノンノティオン・トゥリーゴノンノティオン
ラテン文字:trigonon notion
ギリシャ語:τρίχα
読み方:トゥリハ・トゥリーハ
ラテン文字:tricha
古代ギリシャ語 θρίξ(thríx、毛)の対格 τρίχα(trícha)に由来する。この対格形が一般化し、中世ギリシャ語を経て現代ギリシャ語の τρίχα として定着した。なお、英語の trichology(毛髪学)などに見られる接頭辞 tricho- も、θρίξ の語幹 τριχ- から来ている。
τρίχα は個別の「毛」を指すのが基本で、頭髪全体を指す μαλλιά とは区別される。ただし、髪の毛一本一本の質や状態に言及する際には τρίχα を使う。
動物やヒトの皮膚に生える毛のほか、植物の微細な繊維やブラシの毛のような毛状のものも指す。
ギリシャ語:τρομάζω
読み方:トゥロマゾ・トゥロマーゾ
ラテン文字:tromazo
古代ギリシャ語の動詞 τρομέω(震える, 怖がる)から派生した τρομάσσω(怖がる, 怖がらせる)が, 中世ギリシャ語で τρομάζω の形になった。名詞は τρόμος(恐れ, 震え)。
ギリシャ語:τρόμος
読み方:トゥロモス・トゥローモス
ラテン文字:tromos
印欧祖語で「震える」を表した語根にさかのぼる動詞 τρέμω(震える)から派生した古代ギリシャ語の名詞 τρόμος(震え, 恐怖)を継承。もとは体が震える感覚を指した。
同じ τρέμω の語族に τρομάζω(ぎょっとする), τρομάρα(恐ろしい体験), τρομερός(恐ろしい), τρομακτικός(ぞっとさせる), 副詞 τρομερά, τρομακτικά, 合成語 έντρομος(おびえた), περίτρομος(震え上がった)。
英語 tremor(震え), tremendous(巨大な, 恐ろしい), tremulous(震える)もラテン語 tremere を経て同じ語根の子孫。一般の恐れを言う φόβος(恐怖)に対し, τρόμος は体が震えるほどの激しい戦慄を指し, πανικός(パニック)に近い状態を言う。慣用句 ισορροπία τρόμου(恐怖の均衡)は英語 balance of terror からの翻訳借用で冷戦期の外交語として入った。
ギリシャ語:Τρόπις
読み方:トゥロピス・トゥローピス
ラテン文字:tropis
ギリシャ語:τρόπος
読み方:トゥロポ・トゥローポ
ラテン文字:tropos
古代ギリシャ語の τρόπος(向きを変えること, やり方, 態度)を継承。動詞 τρέπω(向ける, 回す)の名詞形で, もとは「向け方, 転じ方」。音楽の「旋法」の意味はフランス語 mode からの意味借用で輪郭が整った。
同じ τρέπω・τροπή の語族に ανατροπή(転覆), μετατροπή(変換), εντροπία(エントロピー), τροποποιώ(修正する), τροπολογία(修正条項), τροπόσφαιρα(対流圏), 合成語 ιδιότροπος(気まぐれな), πολύτροπος(多彩な), δύστροπος(扱いにくい)。
δρόμος(道, 方法, 競走)も比喩で「やり方」を表すが, 道筋・経路の感覚が残る。τρόπος はやり方そのものを指して広く使う。文語的な「生き方」を言う βίος(人生, 生き方)に対し, 日常の τρόπος ζωής は「生活様式」を言う。英語 trope(比喩, 常套的パターン), tropic(回帰線)もラテン語を経てこの τρόπος の語族。
ギリシャ語:τροχιά
読み方:トゥロヒャ・トゥロヒャー
ラテン文字:trochia
τροχιά は、古代ギリシャ語の τροχός(車輪、円)を起源とし、もともとは回転する輪や円のイメージをもつ語だった。ヘレニズム時代には「車輪の輪」を意味する語として使われたが、現代ギリシャ語で一般的な「車輪」は ρόδα という。近代に入ると、フランス語の orbite(軌道)の訳語として用いられて、現在の科学的な「軌道」の意味が定着した。
起源にある τροχός(車輪、円)は、英語の trochlea(滑車)や trochoid(トロコイド)とも同じ語源につながる。いずれも回転や円運動を思わせる語群で、τροχιά にもその名残がある。
近い語に πορεία があるが、こちらは「進路、過程、歩み」といった一般的な動きを指すことが多い。τροχιά はそれに対して、数学的・物理学的に描かれる軌道やカーブというニュアンスが強い。
主な意味は、天体や物体が移動するときに描く曲線である「軌道」。天体の公転軌道、発射体の弾道、数学で動点が描く軌跡を指すほか、比喩的に「歩み」「足跡」を表すこともある。さらに、鉄道のレールを指す用法もある。
ギリシャ語:τροχός
読み方:トゥロホス・トゥロホース
ラテン文字:trochos
古代ギリシャ語の τροχός(車輪、回転体)を継承。印欧祖語で「走る、引く」を表した語根の子孫で、動詞 τρέχω(走る)と同じ語根から出る。
派生語に τροχαλία(滑車)、τροχίσκος(小さな車輪、錠剤、円盤)、τροχαίος(交通の、交通関係の)。合成語に τροχιά(軌道、軌跡)、υδροτροχός(水車)、τροχοφόρος(車輪のついた、輪付きの乗り物)、τροχοπέδη(ブレーキ)。
車輪を言うもう一つの語に ρόδα(車輪)があり、τροχός は技術的な合成や比喩(歯車、ろくろ、運命の輪)で使う。英語 truck(もとは車輪付きの台車)、trochanter(解剖学の転子)はラテン語 trochus を経て τροχός と同じ語源に連なる。
ギリシャ語:τσάι
読み方:ツァイ・ツァーイ
ラテン文字:tsai
中国語の chá(茶)に由来する語が, ロシア語の tšay とトルコ語の çay(茶)を経て現代ギリシャ語に入った借用語。
英語の chai も同じ系統の語で、東方起源の「茶」を表す借用語の並びに属する。
日常語としては、茶葉そのものと、それをいれて飲むお茶の両方を広く表す。植物を煮出した温かい飲み物を表す ζεστό(ハーブティー、煎じ薬)とは少し役割が異なり、同じ温かい飲み物の καφές(コーヒー)と並んで日常会話でよく使われる。
主な意味は「茶葉」と「お茶」。そこから、定型句 τσάι του βουνού(山のお茶、シデリティス)ではギリシャの山地に生える香草の茶を指し、午後にお茶と菓子を囲む集まりも表す。親しみを込めた指小形 τσαγάκι(一杯のお茶、ちょっとしたお茶)は、とくに飲み物としての一杯のお茶について使われる。
ギリシャ語:τσακάλι
読み方:ツァカリ・ツァカーリ
ラテン文字:tsakali
τσακάλι はトルコ語の çakal から現代ギリシャ語に入った借用語。まずは野生動物のジャッカルを指す語として使われ、そこから、素早く抜け目のないイメージを人にも重ねる口語表現へ広がった。
ジャッカルは σκύλος(イヌ、犬、雄犬)や λύκος(狼、オオカミ)に近いイヌ科の動物として捉えられる。灰黄色の毛並み、細く高い脚、尖って立った耳、赤みを帯びたふさふさの尾を持つ夜行性の肉食獣として語られることが多い。
主な意味はジャッカル。そこから口語では、頭の回転が速く、有能で、要領よく立ち回れる人を褒めて言うこともある。
人についての τσακάλι は、褒め言葉としての σπίρτο(切れ者)や αστέρι(星、転じてスター・秀才)に近い。口語の近い語には γάτα(抜け目のない人、切れ者)や τσάκαλος(やり手、切れ者)があり、より要領のよさや世渡りのうまさを前に出すなら επιτήδειος(如才ない人、有能な人)、καπάτσος(抜け目のない人、世渡り上手)、τζιμάνι(切れ者、できるやつ)も近い。
指小形の τσακαλάκι(親しみを込めた「切れ者」)は、とくにこの比喩の意味で使われやすい。子どもや若い人に向かって「この切れ者」と軽く褒める響きにもなりやすい。
ギリシャ語:τσακώνομαι
読み方:ツァコノメ・ツァコーノメ
ラテン文字:tsakonomai
τσακώνω(捕まえる、つかまえる)の中動相・受動相から出た動詞で、「互いに捕まえ合う」から「言い争う、口げんかする」へ意味が分かれた。もとの動詞は中世ギリシャ語から続く語で、刃物を意味する中世ギリシャ語 τσακίον からきたと推定される。
ギリシャ語:τσιγάρο
読み方:ツィガロ・ツィガーロ
ラテン文字:tsigaro
北イタリアの海洋都市ヴェネツィアで話されたヴェネツィア語 cigaro からの借用。もとはスペイン語 cigarro から続く語。
派生語に αποτσίγαρο(吸い殻), τσιγαράδικο(たばこ店), τσιγαροθήκη(たばこケース), τσιγαρόβηχας(たばこ咳)。関連語は πούρο(葉巻)。英語 cigarette も同じ語源で、フランス語 cigarette(小さい cigare)から来ている。
ギリシャ語:τυρί
読み方:ティリ・ティリー
ラテン文字:tyri
古代ギリシャ語の τυρός(凝固した乳製品、チーズ)から、その指小形 τυρίον(小さなチーズ)を経て、中世ギリシャ語の τυρί(ν) となり、現代の形に至る。
古代ギリシャ語の τυρός は「凝固したもの」を広く指す語で、そこから派生した語は専門用語にも残る。化学用語のチロシン(tyrosine)は、チーズから初めて発見されたアミノ酸であることにちなむ。
主な意味はチーズ。また、Τι;(何?)に対し韻を踏んで返す皮肉な返答としても使われる。τυράκι は τυρί を親しみを込めて呼ぶ指小語。
ギリシャ語:τύχη
読み方:ティヒ・ティーヒ
ラテン文字:tychi
古代ギリシャ語の τύχη(偶然、運、神の意志)を継承。動詞 τυγχάνω(巡り合わせる、出会う、手に入れる)からできた名詞。「物事のその後、行方」を問う現代ギリシャ語の使い方は、フランス語 sort からの意味借用で広がった。
派生語に τυχαίος(偶然の)。合成語に ευ-(よい)を付けた ευτυχία(幸福)、δυσ-(悪い)を付けた δυστυχία(不幸)、ατυχία(不運)、τυχοδιώκτης(投機家、山師)。
類義語に μοίρα。μοίρα はもともと「分け前、取り分」を指し、定められて動かせない宿命を言う。τύχη は偶然の巡り合わせを指すことが多い。古代ギリシャの運命の女神テュケーは豊穣の角と舵を持つ姿で表され、英語でも Tyche の名で神話の文脈に残る。
Υ
ギリシャ語:Υάδες
読み方:ヤデス・ヤーデス
ラテン文字:Yades
Υάδες(ヒアデス、ヒアデス星団)は、古代ギリシャ語の Ὑάδες(ヒアデス)に由来する古い星団名である。いまのギリシャ語でも学術的・伝統的な名としてそのまま用いられる。
Ταύρος(雄牛、おうし座、牡牛座) の顔のあたりに見える有名な星の集まりで、Πλειάδες(プレアデス星団、すばる) と並んで、おうし座の話題ではよく対で現れる。
Αλντεμπαράν(アルデバラン) はこの Υάδες(ヒアデス)の近くに見える明るい星で、古いギリシャ語名 Λαμπαδίας(ランバディアス、アルデバランの古いギリシャ語名) として触れられることもある。
単独の星ではなく、星が集まって見えるまとまりなので、一般語の σμήνος(群れ、群、編隊) を知っていると、星の群れとして理解しやすい。
主な意味はヒアデス星団。おうし座の近くに見える、よく知られた星の集まりを指す。
ギリシャ語:υάκινθος
読み方:ヤキンソス・ヤーキンソス・ヤキントス・ヤーキントス
ラテン文字:yakinthos
ギリシャ以前の言語から入った古い語とされる古代ギリシャ語 ὑάκινθος(ヒヤシンス)を継承。確かな語源はわかっていない。古代には神話の名としても植物名としても使われた。
同じ ὑάκινθος から派生した形容詞に υακίνθινος(ヒヤシンス色の, 青紫の)がある。
ふつう「花」を言うのは λουλούδι(花)で, 改まった場や詩では άνθος(花)も並ぶ。υάκινθος はその中の特定の種名。色を指すときは藍色を言う λουλακί や, 紫がかった青を言う μαβί が近い色域を表す。英語 hyacinth, フランス語 jacinthe, スペイン語 jacinto はどれも同じ古代ギリシャ語を経由した語族。名の由来は神話の少年ヒュアキントスに結びつき, 太陽神アポロンが愛したこの少年の死から咲いた花とされる。
ギリシャ語:υγεία
読み方:イイア・イイーア・イギア・イギーア
ラテン文字:ygeia
古代ギリシャ語の ὑγίεια(健康)が, ヘレニズム期に縮まった ὑγεία の形で現代ギリシャ語に入った学術借用。古典形 ὑγίεια は長く文語形として残ったが, 今は短い ὑγεία の形で日常にも公的な場にも現れる。動詞 ὑγιαίνω(健康である)と同じ語根から作られ, 形容詞 ὑγιής(健康な)と対をなす名詞。
同じ語根から出た兄弟語に動詞 υγιαίνω(健康である), 形容詞 υγιής(健康な, 健全な), 形容詞 υγιεινός(健康によい, 衛生的な), 名詞 υγιεινή(衛生学, 衛生)。υγεία を元にした合成語には υγειονομείο(衛生検査所), υγειονομικός(衛生の), υγειονόμος(衛生官), υγειολογία(健康学)が並ぶ。口語では短縮形 υγειά が並行して使われ, さらに縮めた γεια が挨拶の γεια σου / γεια σας(やあ, さようなら)に入っている。
対になる語は「病気」を表す ασθένεια(疾病)と αρρώστια(病気)。英語 hygiene, フランス語 hygiène, ドイツ語 Hygiene はどれも形容詞 ὑγιεινός(健康によい)から経由した語族。公的な場では Παγκόσμια Οργάνωση Υγείας(世界保健機関, WHO)や Εθνικό Σύστημα Υγείας(国民保健制度)のように制度名にそのまま入る。乾杯の Εις υγείαν や, 誕生日・祝日の Και του χρόνου με υγεία(来年も元気でこの日を迎えられますように)のような決まり文句もこの語を中心にしている。
ギリシャ語:υγρασία
読み方:イグラシア・イグラシーア
ラテン文字:ygrasia
古代ギリシャ語の ὑγρασία(湿り気)に由来。形容詞 ὑγρός(湿った、液状の → υγρός)に抽象名詞を作る -ασία を付けた形。
同じ語根の語に υγραίνω(湿らせる)、υγροποίηση(液化)、υγροσκοπικός(吸湿性の)。対義語は ξηρασία(乾燥)。
英語 hygrometer(湿度計)、hygroscopic(吸湿性の)、hygrograph(湿度記録計)は古代ギリシャ語 ὑγρός をもとにした学術造語で、同じ語源につながる。
ギリシャ語:υγρός
読み方:イグロス・イグロース
ラテン文字:ygros
印欧祖語で「濡れる」を表す語根の子孫で, 物質が液体であることや物が濡れていることを言う古代ギリシャ語の形容詞 ὑγρός(液体の, 湿った)を継承。文法用語の υγρά σύμφωνα(液音)はフランス語 liquide からの意味借用で, ヘレニズム期の ὑγρά στοιχεῖα(液体の文字群)の言い方を受けつつ, 近代の文法概念として整えられた。ふつうは λ(ラムダ)と ρ(ロー)を指す。
同じ ὑγρός から派生した語に動詞 υγραίνω(湿らせる), 名詞 ύγρανση(湿らせること, 加湿), 形容詞 υγραντικός(保湿の), 名詞 υγρασία(湿気, 湿度), υγρότητα(湿り気, 液状性)。合成語では υγραέριο(液化ガス), υγρόφιλος(親水性の), υγροποίηση(液化), υγρομετρία(湿度測定), υγρογράφος(湿度記録計)が並ぶ。
「水」そのものを言うには νερό(水)か ύδωρ(水)を使い, 中性形の υγρό は水に限らず液体全般を指す。英語 hygrometer(湿度計), hygroscopic(吸湿性の), hygrograph(湿度記録計)は ὑγρός から経由した語族。ラテン語 ūmor(湿り気), ūmidus(湿った), 英語 humid(湿った), humidity(湿度)も同じ印欧語根の子孫とされる。
ギリシャ語:Ύδρα
読み方:イドゥラ・イードゥラ
ラテン文字:ydra
ギリシャ語:υδρογόνο
読み方:イドゥロゴノ・イドゥロゴーノ
ラテン文字:ydrogono
ギリシャ語:Ύδρος
読み方:イドゥロス・イードゥロス
ラテン文字:ydros
ギリシャ語:Υδροχόος
読み方:イドゥロホオス・イドゥロホーオス
ラテン文字:ydrochoos
Υδροχόος(みずがめ座、水瓶座)は、古いギリシャ語で「水を注ぐ人、水を運ぶ人」を表した語に由来する。水を表す υδρο-(水)と、注ぐ・そそぐ動作に関わる語要素が結びついた形が、黄道十二星座の名称として残った。
もとの語は一般に「水を運ぶ人、水を注ぐ人」という意味を持ち、星座名の Υδροχόος はその姿をそのまま固有名詞にした形である。
主な意味は、黄道十二星座のひとつである「みずがめ座、水瓶座」を指す固有名詞である。占星術では、その期間に生まれた人を指すこともある。
ギリシャ語:ύδωρ
読み方:イドル・イードル
ラテン文字:ydor
古代ギリシャ語の ὕδωρ(水)からの学術借用。ふだんの「水」は νερό(水)に譲り, 学術・公的・法的・宗教的な文脈の書き言葉に残る。印欧祖語で「水」を表した語根の子孫で, ヘレニズム期以降に νηρόν(新鮮な水)を縮めた νερό がふつうの水を指すようになり, ύδωρ は改まった場面に限られた。
同じ ὕδωρ の語族に派生形容詞 υδάτινος(水の, 水状の), υδατικός(水に関する), υδατώδης(水のような, 水っぽい)。合成語では υδρο- を冠する語が数十並び, υδρογόνο(水素), υδραυλικός(水道工, 水力の), υδροηλεκτρικός(水力発電の), υδροφόρος(給水の), υδρόβιος(水生の), υδατάνθρακας(炭水化物), υδροκέφαλος(水頭症の)などが続く。
ふだんの νερό に対し, ύδωρ は法令・科学・宗教の用語に現れる改まった語。複数形 ύδατα は水域や各種の水をまとめて言うときに使う。近代の言い方では βαρύ ύδωρ(重水), εσωτερικά ύδατα(内水), χωρικά ύδατα(領海)など, フランス語 eau lourde, 英語 inland waters, フランス語 eaux territoriales からの翻訳借用が並び, 専門用語の体系はこうして整った。英語 hydro-, hydrogen, hydraulic, hydrant, ラテン語 unda(波), 英語 water, ドイツ語 Wasser は同じ印欧語根の子孫。
ギリシャ語:ύμνος
読み方:イムノス・イームノス
ラテン文字:ymnos
古代ギリシャ語の ὕμνος(神や英雄を称える歌、賛歌)を継承。国歌や公的な頌歌の広い用途は、近代にフランス語 hymne、英語 hymn からの意味借用で入った。
派生語に υμνώ(賛美する)、υμνητής(賛美者)、合成語に υμνογραφία(賛歌の作詞)、υμνολογία(賛歌学、賛歌集)。
類義語に άσμα(歌)、ωδή(頌歌)、ψαλμός(詩編)。ψαλμός は旧約聖書『詩編』の賛美歌に限られ、ύμνος は宗教的な歌のほか世俗の称賛や国歌にも使う。英語 hymn、フランス語 hymne、イタリア語 inno はラテン語 hymnus を経て ὕμνος と同じ語源につながる。正教会の聖歌には Ακάθιστος Ύμνος(座らずに聴く賛歌)、Τρισάγιος Ύμνος(三度聖なる賛歌)、国家の公式歌は Εθνικός Ύμνος(国歌)。
ギリシャ語:υπάλληλος
読み方:イパリロス・イパーリロス
ラテン文字:ypallilos
古代ギリシャ語の ὑπάλληλος(互いの下にある、従属する)に由来。ὑπό(〜の下に)と ἀλλήλους(互いに)からなる形容詞で、句 ὑπ' ἀλλήλους から一語に融合した形。「職員、社員」の使い方は、フランス語 employé からの意味借用で加わった。
派生語に υπαλληλικός(職員の)、συνυπάλληλος(同僚)、υπαλληλία(職員身分、職員組織)。よく使う表現に δημόσιος υπάλληλος(公務員)、τραπεζικός υπάλληλος(銀行員)、υπάλληλος γραφείου(事務員)。
古代ギリシャ語 ἀλλήλων(互いに)は、παρά(〜のそばに)と結んで παράλληλος(並行の)を作る。これがラテン語 parallelus を経て英語 parallel(並行の、平行線)の語源につながり、ὑπάλληλος とは合成の型を共有する。
ギリシャ語:ύπαρξη
読み方:イパルクシ・イーパルクシ
ラテン文字:yparxi
古代ギリシャ語 ὕπαρξις(実在、存在)を継承。動詞 ὑπάρχω(存在する、成り立つ)から行為名詞を作る -σις が付いた形で、古代から哲学で「実在すること」を指した。抽象概念としての「存在、実在」という現代の使い方は、フランス語 existence からの意味借用で定着した。
派生語・関連語に υπάρχω(存在する、成り立つ)、ανυπαρξία(非存在、欠如)、υπαρκτός(実在する、ある)、υπαρξιακός(実存の、実存主義の)、υπαρξισμός(実存主義)。
ギリシャ語:υπερφυσικός
読み方:イペルフィシコス・イペルフィシコース
ラテン文字:yperfysikos
υπερ-(超えて)と φυσικός(自然の)の合成語。現代ギリシャ語において、フランス語の surnaturel(超自然的な)の訳語として定着した。ラテン語の super- とギリシャ語の υπερ- はどちらも「上に、超えて」を意味し、同じ語源から分かれた語で、英語の supernatural とも接頭辞と語の構造が一致している。
類義語に υπερκόσμιος(この世ならぬ、超俗的な)がある。並外れた規模の大きさを指す場合には τεράστιος(巨大な)も使われる。
同じ -φυσικός を含む語に μεταφυσικός(形而上学的な)や παραφυσικός(超心理学的な、パラノーマルな)がある。
自然法則を超えた事象や、科学的に説明不可能な出来事を表す。中性単数形 το υπερφυσικό は名詞として超自然的なものを指す。比喩的に、並外れた大きさや途方もない規模にも使われる。
ギリシャ語:ύπνος
読み方:イプノス・イープノス
ラテン文字:ypnos
古代ギリシャ語の ὕπνος(眠り)を継承。印欧祖語で「眠る」を表した語根から出た語で、ラテン語 somnus、サンスクリット語 svápna、英語 sweven(古語で「夢」)はすべて同じ語根の子孫。語頭の sw- が言語ごとに変化し、ギリシャ語では s が h に変わり w が落ちて ὕπνος、ラテン語では w が落ち p が m に同化して somnus、サンスクリット語は sv- のまま元の形を残した。
派生語に υπνάκος(うたた寝、昼寝)、υπνηλία(眠気)、υπνωτικό(睡眠薬)、υπνωτίζω(催眠にかける)。合成語に αϋπνία(不眠)、αφυπνίζω(目覚めさせる)。
類義語に κοίμηση(眠り、永眠)、ανάπαυση(休息)。κοίμηση は永眠や他界の含みも出る硬めの言い方。英語 hypnosis(催眠)、hypnotic(催眠の)は ὕπνος をもとにした学術造語。
ギリシャ語:υπογραφή
読み方:イポグラフィ・イポグラフィー
ラテン文字:ypografi
古代ギリシャ語の ὑπογραφή(下に書くこと, 署名)に由来。接頭辞 ὑπό-(下に)と動詞 γράφω(書く)からの動詞名詞で, もとは「下に書きつけること」を意味した。現代の「署名, サイン」の用法はフランス語 signature, 英語 signature からの意味借用で輪郭が整った。
同じ γράφω の語族に υπογράφω(署名する, 下書きする), υπογραφέας(署名者), συνυπογράφω(共同署名する), αντυπογραφή(副署)。合成語 ψηφιακή υπογραφή(電子署名)は英語 digital signature からの翻訳借用。書類や契約の場面で αίτηση(申請, 申込), συμβόλαιο(契約, 契約書)と組みになる。
ギリシャ語:υπολογιστής
読み方:イポロイスティス・イポロイスティース・イポロギスティス・イポロギスティース・イポロイスティス・イポロイスティース
ラテン文字:ypologistis
技術の意味では、英語 calculator / computer を受けて定着した語。現代ギリシャ語では「計算する装置」という感覚を保ちつつ、いまではコンピューター一般を指す基本語として使われる。日常的には ηλεκτρονικός υπολογιστής(電子計算機)の短い形としてもよく現れる。
人についての「打算的な人」は、フランス語 calculateur を受けた別の流れの用法。何よりも自分の利益を先に考え、利害で動く人をいう。女性については υπολογίστρια(女性の打算家)の形を使う。
この語は複合語でもよく使われ、προσωπικός υπολογιστής(パーソナルコンピューター)、φορητός υπολογιστής(携帯型コンピューター)、υπολογιστής-ταμπλέτα(タブレット型コンピューター)などの形をつくる。手のひらサイズの機種をいうときは、παλάμη(手のひら)を使った υπολογιστής παλάμης(手のひらサイズのコンピューター)や υπολογιστής χειρός(手持ち型コンピューター)とも言う。くだけた言い方では κομπιούτερ(コンピューター)も使われる。
主な意味はコンピューターで、デスクトップ型、携帯型、個人用、中央処理用の機種から、情報科学の複合語まで幅広く言える。別に、人については、損得を先に計算して動く打算的な人を表す。
ギリシャ語:υπουργός
読み方:イプルゴス・イプルゴース
ラテン文字:ypourgos
ὑπό(〜のもとで)と ἔργον(仕事)からなる古代ギリシャ語の男性名詞 ὑπουργός(助手, 仕える者)に由来。もとは「手伝って働く者」を言う語。「大臣」の意味は, かつて使われていたイタリア語借用 μινίστρος がフランス語 ministre にならう形で υπουργός に引き継がれ, 今の政治語として残った。文法上は男性名詞だが, 女性にもそのまま υπουργός の形で使い, 通性名詞として働く。
ὑπουργός から派生した語に υπουργείο(省庁), υπουργοποίηση(閣僚への登用)。合成語には πρωθυπουργός(首相, 直訳: 第一の大臣), υφυπουργός(副大臣, 政務官), υπερυπουργός(大臣級の大臣)が政治語として並ぶ。
ὑπουργός の第二成分 ἔργον は έργο(仕事, 作品)として別に残り, 第一成分 ὑπό は接頭辞として多くの合成語に入る。政府全体を言う κυβέρνηση(政府, 政権)の中で, υπουργός は特定の省を担当する閣僚。フランス語 ministre, 英語 minister, イタリア語 ministro, ドイツ語 Minister はラテン語 minister(下働き, 奉仕者)から経由した別系統の語で, 意味の上でだけ υπουργός と対応する。ヨーロッパ諸国が近代に政府制度を整えた時期, ギリシャ語では外来語 μινίστρος が退き, 古代語 ὑπουργός が新しい「大臣」の意味を担うようになった。
ギリシャ語:υποφέρω
読み方:イポフェロ・イポフェーロ
ラテン文字:ypofero
古代ギリシャ語 ὑποφέρω(下で支える、耐える)を継承。ὑπό(下で)と φέρω(運ぶ、担う)からできた合成語で、担いながら持ちこたえる動きから「耐える」「苦しむ」の意味に及んだ。現代の痛みや病気に苦しむ用法は、フランス語 souffrir の影響で定着した。
派生語・関連語に ανυπόφορος(耐えがたい、我慢ならない)、υποφερτός(耐えられる、まずまずの)、φέρω(運ぶ、担う)、υπομένω(耐え忍ぶ)。関連語に πόνος(痛み、苦しみ)、πάσχω(病む、苦しむ)。
ギリシャ語:υποχρέωση
読み方:イポフレオシ・イポフレーオシ
ラテン文字:ypochreosi
古代ギリシャ語の形容詞 ὑπόχρεος(借りのある、義務を負った)から作られた動詞 υποχρεώνω(義務づける)をもとに、抽象名詞を作る -ση を付けて作られた語。ὑπόχρεος は ὑπό(下に)と χρέος(借り、負い目)の合成。現代の「義務」の用法はフランス語 obligation の翻訳借用で広がった。
派生語に υποχρεώνω(義務づける), υπόχρεος(義務を負った、お世話になっている), υποχρεωτικός(義務の、強制の), υποχρεωτικά(必ず、強制的に)。対義語に δικαίωμα(権利)。
ギリシャ語:υφήλιος
読み方:イフィリョス・イフィーリョス
ラテン文字:yfilios
古代ギリシャ語の ὑπό(〜の下)と ἥλιος(太陽 → ήλιος)からなる ὑφήλιος(太陽の下のもの)に由来。もとは γη(大地)を修飾する形容詞だったが、修飾先の γη が省かれて名詞として独立し、-ος の語尾でも γη に合わせた女性形のまま残ったので冠詞は η が付く。
類義語に κόσμος(世界、宇宙)、γη(地球、大地)。κόσμος は秩序・宇宙・世界観を、γη は大地・地球そのものを、υφήλιος は「太陽の下のすべて」の発想で地球上・世界全土を言う。ミス・ユニバースのギリシャ語名 Μις Υφήλιος にもこの語が使われる。
英語の接頭辞 hypo-(下、過少)は ὑπό、元素名 helium(ヘリウム)は ἥλιος と同じ語源につながる。
Φ
ギリシャ語:φαγητό
読み方:ファイト・ファイトー・ファギト・ファギトー
ラテン文字:fagito
古代ギリシャ語 ἔφαγον(食べた)/ φαγεῖν(食べる、不定詞)の語幹 φαγ- に -ητόν を付けて作られた中世ギリシャ語 φαγητόν(食べ物)に由来する。この φαγ- は現代動詞 τρώω(食べる)の過去語幹として今も生きている。
日常寄りの φαΐ(食べ物、食事)に比べると少し整った響きで、料理された食べ物を指すことが多い。ごちそう寄りの語に έδεσμα(料理、ごちそう)。英語 -phagy(食性)や phagocyte(食細胞)も同じ φαγ- を起源とする。
派生の指小形に φαγητούλι(親愛の情を込めた「ごはん」、「おいしいごはん」)。
ギリシャ語:φαΐ
読み方:ファイ・ファイー
ラテン文字:fai
古代ギリシャ語 φαγεῖν(食べる、不定詞、完結相 ἔφαγον から)を継承。中世ギリシャ語 φαγί を経て今の形になった。この φαγ- は現代動詞 τρώω(食べる)の過去語幹として今も生きている。
同じ φαγ- を語幹にもつ φαγητό(食べ物、料理、食事)に比べると、φαΐ はくだけた響きで日常会話によく使う。派生の指小形に φαγάκι(ちょっとした食事、親愛を込めた「おいしいごはん」)。関連語に προσφάι(おかず、添え物)。
英語 sarcophagus(石棺、文字通り「肉を食う石」)や phagocyte(食細胞)の -phag- も同じ φαγ- から。
ギリシャ語:φάρμακο
読み方:ファルマコ・ファールマコ
ラテン文字:farmako
古代ギリシャ語 φάρμακον(薬, 毒薬)から。古代では治療薬と毒薬の両方を指したが, 今は「治療薬」の側が中心。近代にはフランス語 médecine, 英語 medicine からの意味借用が重なり, 「医薬品」「打開策」の意味でも使われる。
派生に φαρμάκι(毒, 苦さ, 辛さ), φαρμακώνω(毒を盛る, 苦しめる), φαρμακερός(毒のある)。同じ語族に φαρμακευτικός(薬の, 薬学の), φαρμακευτική(薬学)。合成語に φαρμακείο(薬局), φαρμακοποιός(薬剤師), φαρμακολογία(薬理学, 薬学), αντιφάρμακο(解毒剤, 対処薬)。
類義語の γιατρικό は「薬」の素朴な言い方。πανάκεια(万能薬)は理想化された「すべてを治す薬」の意味で区別される。
ギリシャ語:φεγγάρι
読み方:フェンガリ・フェンガーリ
ラテン文字:fengari
古代ギリシャ語の φέγγος(光、輝き)の指小形 φεγγάριον(小さな光)から、中世ギリシャ語 φεγγάρι(ν) を経て今に至る継承。「光るもの」の意から月を指す語として定着した。
類義語に σελήνη(月)。σελήνη は天文学や暦、公的・学術的な文脈で使うことが多く、φεγγάρι はふだんの月を指す形として広く定着している。派生に φεγγαράκι(小さな月。指小形), φεγγαράδα(月明かり), φεγγαριάτικος(月の〜), φεγγαρίσιος(月の〜), αφέγγαρος(月のない)。合成語に μισοφέγγαρο(半月), φεγγαροβραδιά(月の夜), φεγγαρόλουστος(月光を浴びた), φεγγαρόφωτο(月光), φεγγαροπρόσωπος(月のような顔の), φεγγαροφώτιστος(月光に照らされた)。関連語に φως(光), φέγγω(光る、輝く)。
ギリシャ語:φεγγαρόπετρα
読み方:フェンガロペトゥラ・フェンガローペトゥラ
ラテン文字:feggaropetra
ギリシャ語:φεγγαρόφωτο
読み方:フェンガロフォト・フェンガローフォト
ラテン文字:fengarofoto
ギリシャ語:φελί
読み方:フェリ・フェリー
ラテン文字:feli
ギリシャ語:φέτα
読み方:フェタ・フェータ
ラテン文字:feta
イタリア語の fetta(一切れ、薄切り)から入った語で、現代ギリシャ語では食べ物を切り分けた一片を表す日常語として定着している。
この語は、パンや果物、τυρί などの「一切れ」を表すほか、塩水に漬けて保存する白チーズの名称としても使われるようになった。
主な意味は食べ物の「一切れ、薄切り」。そこから、オレンジやマンダリンの房、ラジエーターの板状の部分、さらに大きなまとまりから切り取られた一部を指すのにも使われる。
τυρί はチーズ全般を指すふつうの語で、φέτα はその中でも塩水に漬けて保存する白チーズの種類名として使われる。
κόβω κάποιον φέτες、κάνω κάποιον φέτες は、相手をずたずたにする、ひどく痛めつけるという強い言い方。
ギリシャ語:φθινοπωρινός
読み方:フシノポリノス・フシノポリノース・フティノポリノス・フティノポリノース
ラテン文字:fthinoporinos
ギリシャ語:φθινόπωρο
読み方:フシノポロ・フシノーポロ・フティノポロ・フティノーポロ
ラテン文字:fthinoporo
古代ギリシャ語 φθινόπωρον(秋)から。φθίνω(衰える, 減っていく)と ὀπώρα(晩夏の果実, 実りの季節)の合成で, 果実が少なくなっていく季節を表した。語末の -ν が脱落して現代ギリシャ語の φθινόπωρο の形になった。
派生に φθινοπωρινός(秋の), φθινοπωριάτικος(秋の, 秋らしい), φθινοπωριάζει(秋になる, 非人称), φθινοπώριασμα(秋の兆し)。同じ意味の言い方に χινόπωρο(φ が落ちた形), μεθόπωρο / μετόπωρο(古風な形)がある。
ギリシャ語:φίδι
読み方:フィディ・フィーディ
ラテン文字:fidi
古代ギリシャ語の ὄφις(óphis, ヘビ)に由来する。ὄφις の指小辞形 ὀφίδιον(ophídion, 小さなヘビ)が中世ギリシャ語を経て語頭の ο が脱落し、現在の φίδι となった。英語の ophidian(ヘビ類の)や ophiology(蛇類学)はこの ὄφις から派生した学術語で、φίδι と語源を共有する。
類義語の όφις は古代ギリシャ語の ὄφις がそのまま現代ギリシャ語に残ったもので、学術的・文語的な響きを持つ。日常的にはもっぱら φίδι が使われる。
爬虫類としてのヘビを指すほか、悪意に満ちた狡猾な人物を比喩的に表すのにも使われる。
ギリシャ語ではヘビの種類ごとに ανακόντα(アナコンダ)、βόας(ボア)、κόμπρα(コブラ)、κροταλίας(ガラガラヘビ)、πύθωνας(ニシキヘビ)などの語がある。
ギリシャ語:φιλοξενία
読み方:フィロクセニア・フィロクセニーア
ラテン文字:filoxenia
φιλοξενία は、φίλος(愛する、親しい)と ξένος(よそから来た人、客、異邦人)からできた複合語である。現代ギリシャ語では、客を迎え入れて親切に扱うことを表す名詞として定着している。
ξένος(外国の、よその、異質な、異国風の) が外から来た人や異質なものを指すのに対して、φιλοξενία はそうした客人や訪問者を歓迎する側の態度や行為を言う。
主な意味は「もてなし」「歓待」「ホスピタリティ」。家庭での客あしらいにも、地域や業界の hospitality にも使える。
ギリシャ語:φίλος
読み方:フィロス・フィーロス
ラテン文字:filos
古代ギリシャ語の φίλος を継承。古代では形容詞「親愛な、愛しい」と名詞「友、味方」の両義を持ち、ホメロス詩ではしばしば「自分の、身近な」という所有・帰属のニュアンスでも用いられた(ἐμὰ φίλα τέκνα「わが子ら」)。印欧語の語源については諸説あり確定しないが、古アイルランド語 bil(善良な、穏やかな)や西ゲルマン系の「穏やかな、親切な」を意味する語と同根とみる説がある。Beekes は「愛しい」ではなく「自分に属する、伴う」がもとの意味だった可能性を指摘しており、ホメロスでの用法ともよく合う。
語頭の φιλο- と語尾の -φιλος は古代から現代まで続くきわめて生産的な合成要素で、「何かを愛する・好む・親しむ人」を表す合成語を数多く生み出してきた。人名の Θεόφιλος(テオフィロス「神の友」)、Φίλιππος(フィリポス「馬を愛する者」)をはじめ、φιλοσοφία(哲学「知を愛すること」)、φιλάνθρωπος(博愛の、人類愛の)、φιλελεύθερος(自由を愛する、自由主義的な)、βιβλιόφιλος(愛書家)など枚挙にいとまがない。この合成要素は西欧諸語にも取り入れられ、英語の philo-/-phile(philosophy、philanthropy、bibliophile など)はすべてこの φίλος に由来する。
親しみをこめた呼び方には φιλαράκι(親友、仲間)、φιλάρας(相棒)、くだけた会話では φίλε や φίλε μου(やあ君、友よ)があり、親しい関係そのものは名詞 φιλία(友情、友愛)、関係の土台になる好感は συμπάθεια(好意、親しみ)で言う。反対の位置を占めるのは εχθρός(敵)、αντίπαλος(対抗者、ライバル)、国家間の関係では εχθρικός(敵対的な)。
ギリシャ語:φιλοσοφία
読み方:フィロソフィア・フィロソフィーア
ラテン文字:filosofia
古代ギリシャ語の φιλεῖν(愛する)と σοφία(知恵)からなる φιλοσοφία(知を愛すること)に由来。英語 philosophy をはじめ、ヨーロッパ諸言語の「哲学」の語源でもある。
派生語に φιλόσοφος(哲学者)、φιλοσοφικός(哲学的な)、φιλοσοφώ(思索する、哲学する)がある。
主な意味は真理や知識の探究としての哲学だが、学問体系としての哲学、特定の原理や考え方、日常的な深い思考や人生観にも用いられる。
ギリシャ語:φιλώ
読み方:フィロ・フィロー
ラテン文字:filo
古代ギリシャ語の φιλέω-φιλῶ(愛する、親しむ、やがて「キスする」)を継承。φίλος(親しい、大切な、友)に状態を表す動詞接尾辞 -έω を付けて作った語。古典期には「愛する、親しむ」の意味が中心で、後に「キスをする」の意味が加わり、現代ではこちらが主流になった。
同じ φίλος から φιλία(友情)、φιλικός(友好的な)も作られている。φίλο- の形で多くの複合語を作り、φιλοσοφία(哲学、「知を愛する」)、φιλόλογος(言語学者、「ことばを愛する」)、Φίλιππος(フィリップ、「馬を愛する者」)、φιλάνθρωπος(人類愛の、慈善家)などが同じ語族。
名詞は φιλί(キス)。別形に φιλάω。
ギリシャ語:φλόγα
読み方:フロガ・フローガ
ラテン文字:floga
古代ギリシャ語の φλόξ(炎、対格 τὴν φλόγα)を継承。中世ギリシャ語 φλόγα を経て今に至る。印欧祖語で「燃える、光る」を表す語根から、英語の flame(ラテン語 flamma 経由)も同系。植物名の英語 phlox はこの φλόξ をそのまま借りた語で、花の色が炎のように鮮やかなことによる命名。
類義語 φωτιά(火、火災)に対し、φλόγα はとくに目に見える個々の炎や火の粉を指す。複数形 φλόγες では激しく燃え上がる火炎や火災そのものも表す。派生の指小形に φλογίτσα(小さな炎、かわいらしい火)。
ギリシャ語:φλοιός
読み方:フリオス・フリオース
ラテン文字:floios
古代ギリシャ語の φλοιός(樹皮、外皮)を継承。木や実を覆う固い皮を古代から表した。現代の地殻や大脳皮質のような外層を指す使い方は、フランス語 croûte(地殻)、cortex(皮質)からの意味借用で広がった。
日常で果物や野菜の皮を言うときは φλούδα のほうで、φλοιός は植物学・地質学・解剖学など専門的な文脈で使う。
ギリシャ語:φοβάμαι
読み方:フォヴァメ・フォヴァーメ
ラテン文字:fovamai
古代ギリシャ語の φοβοῦμαι(逃げ惑う、恐れる)に由来する。古代ギリシャ語では名詞 φόβος(恐怖、逃走)から動詞 φοβέω(怖がらせる)が派生し、その中動態 φοβοῦμαι が「恐れる」の意味で用いられた。中世を経て語形が φοβάμαι に変化し、現代ギリシャ語に至る。
英語の phobia(恐怖症)は同じ φόβος を語源とする。
似た意味の語に τρομάζω(怖がる、驚く)、ανησυχώ(心配する)、τρέμω(震える、ひどく恐れる)がある。派生語には ψιλοφοβάμαι(少し怖がる)、ευθυνόφοβος(責任を恐れる人)などがある。
「恐怖を感じる」という直接的な感情のほか、口語では「懸念する」「予感がする」という推測の意味にも使う。
ギリシャ語:φόβος
読み方:フォヴォス・フォーヴォス
ラテン文字:fovos
ギリシャ語:Φοίνιξ
読み方:フィニクス・フィーニクス
ラテン文字:foinix
古代ギリシャ語の φοῖνιξ を継承。古代ギリシャ語の段階ですでに「紫紅色」「ナツメヤシ」「ナツメの実」「不死鳥」「フェニキア製の弦楽器」と複数の意味を持ち、どれが先かは確定していない。ミケーネ期(紀元前13世紀ごろ)の線文字Bにすでに po-ni-ke の形が現れ、ナツメヤシを指すとされる。
有力な説では、西セム語で赤い染料(アカネ)を表す語からの借用で、「紫紅色」が出発点。フェニキアから運ばれた赤紫の染料が語義の中心にあり、フェニキア人(Φοίνικες)も「赤い染料を扱う人々」の意味から呼ばれたとされる。不死鳥の名も「紫紅色の鳥」「フェニキアの鳥」の感覚から生まれた可能性がある。
鳥とナツメヤシの結びつきには、木の名が鳥に付いたとする説と、鳥の名が木に付いたとする説の両方があり、決着していない。手がかりのひとつがエジプト語 bnw で、この語もまた聖鳥とナツメヤシの実の両方を表していた。
古代ギリシャ語ではナツメヤシの木もその実も同じく φοῖνιξ で言ったが、現代ギリシャ語では木は φοίνικας、φοινικιά、φοινικόδεντρο、実はアラビア語から入った χουρμάς と使い分ける。
星座「ほうおう座」は17世紀はじめに南天に新しく設けられた星座で、ラテン語 Phoenix、フランス語 phénix を経て古代ギリシャ語の Φοίνιξ が星座名として定着した。
関連語に φοίνικας(ナツメヤシ、フェニキア人)、φοινικιά、φοινικόδεντρο(ナツメヤシの木)、φοινικικός(フェニキアの)。英語 phoenix、Phoenician も同じ語族。
ギリシャ語:φόρεμα
読み方:フォレマ・フォーレマ
ラテン文字:forema
φόρεμα は動詞 φορώ(着る、身につける)からできた名詞で、もともとは「身につけること」と結びついた語。現在では、その意味から発展して、女性が一枚で着るドレスやワンピースを指す語として定着している。
衣類全般を広く言うのは ρούχο(布製品、服、衣類)で、φόρεμα はその中でも、上下一体になった女性用の服を指す。日常語では φουστάνι(ドレス、ワンピース)も近い言い方として使われる。
指小語 φορεματάκι(小さなドレス、かわいらしいワンピース)は、小さなドレスや、かわいらしさをこめて言うワンピースを表す。
主な意味は、女性が着る一枚仕立てのドレスやワンピース。丈、素材、場面、飾りを添えて細かく言い分けることが多い。口語ではそこから広がって、靴や制服などを身につけることも表す。
複合語では φόρεμα-μπλούζα(ブラウス風ワンピース)や φόρεμα-πουλόβερ(セーター風ワンピース)のような言い方もある。
ギリシャ語:φόρος
読み方:フォロス・フォーロス
ラテン文字:foros
古代ギリシャ語の動詞 φέρω(運ぶ、もたらす)から派生した φόρος(貢ぎ、納付)に由来。共同体や支配者に差し出す納付物を古代から表した。現代の「税、税金」の意味は、フランス語 taxe、英語 tax からの意味借用で整えられた。
派生語に φορολογία(税制、課税), φοροδιαφυγή(脱税), αφορολόγητος(非課税の)。関連語に δασμός(関税)。
ギリシャ語:φορτηγό
読み方:フォルティゴ・フォルティゴー
ラテン文字:fortigo
ギリシャ語:φούσκα
読み方:フスカ・フースカ
ラテン文字:fouska
古代ギリシャ語の φύσκη / φούσκα(詰めた腸、膀胱)を継承。薄い膜に空気や中身が入って丸くふくらんだ形を基本の感覚に、「泡、ふくらみ、水ぶくれ」へ続く。経済の「バブル」は英語 bubble からの意味借用。
派生語に φουσκώνω(ふくらむ、ふくらませる)、φούσκωμα(ふくらみ)、φουσκωμένος(ふくらんだ)、ξεφουσκώνω(しぼませる)、παραφουσκώνω(ふくらませすぎる)。合成語に σαπουνόφουσκα(シャボン玉)、τσιχλόφουσκα(ガムの泡)。玩具や飾りの風船は μπαλόνι(風船、バルーン)。
ギリシャ語:φούστα
読み方:フスタ・フースタ
ラテン文字:fousta
φούστα はイタリア語 fusta から入った借用語。現代ギリシャ語では、女性が腰から下に身につけるスカートを指す基本語として定着している。
衣類全般をいう ρούχο(布製品、服、衣類)より意味が狭く、φόρεμα(ドレス、ワンピース、着用)は上下一体の服を指すのに対して、φούστα は腰から下だけを覆う。
指小語 φουστάκι(小さなスカート、子ども用のスカート)と φουστίτσα(小さなスカート、かわいらしいスカート)も使われる。
主な意味は「スカート」。丈、広がり、素材、ひだ、ポケット、裾の形などを添えて細かく言い分ける。舞台衣装としてバレリーナのスカートを指したり、スコットランドのキルトをいうのにも使う。
成句では、母親のそばから離れられず、後ろに隠れるような子どもや人を表す言い方にも現れる。
ギリシャ語:φράουλα
読み方:フラウラ・フラーウラ
ラテン文字:fraoula
俗ラテン語の fragula(イチゴ)がイタリア語の fragola(イチゴ)になり、それが中世ギリシャ語の φράγουλα(イチゴ)を経て、現代ギリシャ語の φράουλα(イチゴ)になった。
果実がなる植物は φραουλιά(イチゴの株、イチゴの植物)と呼ばれる。指小語の φραουλίτσα(小さなイチゴ)は、小ぶりのイチゴや、親しみを込めた言い方に使う。関連語として αγριοφράουλα(野イチゴ)もある。
主な意味は、小さな赤い食用果実としてのイチゴ。表面に小さな粒が並び、上に緑のへたが付く。食品名ではイチゴ入りの菓子や飲み物を広く表し、植物学では、大粒で黄赤色の実をつける σταφύλι(ブドウ)の一品種も指す。
ギリシャ語:φραουλί
読み方:フラウリ・フラウリー
ラテン文字:fraouli
φράουλα(イチゴ)からできた色名である。イチゴの実の赤みとピンクみをあわせた色合いを表す。
現代ギリシャ語では不変化形容詞として、名詞の性・数にかかわらずそのまま使われるほか、中性名詞としていちご色そのものも指す(το φραουλί(いちご色))。
ροδακινί(桃色の、ピーチ色の) よりも、φραουλί はもっと赤みが強い。はっきりしない赤み全般では κοκκινωπός(赤みがかった、赤っぽい) に近づくこともあるが、φραουλί には果実らしい明るさが残る。
意味は、いちご色の、赤みのあるピンクの、いちご色。服や小物、化粧品の色に使いやすい。
ギリシャ語:φραουλιά
読み方:フラウリャ・フラウリャー
ラテン文字:fraoulia
ギリシャ語:φράση
読み方:フラシ・フラーシ
ラテン文字:frasi
動詞 φράζω(言う, 表現する)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 φράσις(言い表し, 表現)に由来。語尾 -ις が -η に変わって現代ギリシャ語の φράση の形になった。
同じ語族に動詞 φράζω(言う, 表現する), 形容詞 φραστικός(表現の)。合成語に έκφραση(表現, 言い方), μετάφραση(翻訳), παράφραση(言い換え, パラフレーズ), περίφραση(遠回しな表現), σύμφραση(前後の文脈)。
λέξη(単語, 語)は一語を指し, φράση は複数の語からなる短いまとまり, πρόταση(文, 提案)は完結した文を指す。
ギリシャ語:φρένο
読み方:フレノ・フレーノ
ラテン文字:freno
φρένο はイタリア語の freno(ブレーキ)に由来する。現代ギリシャ語では主に複数形 φρένα で用いられる。
工学・技術用語としての「制動装置」から、日常的な乗り物のブレーキ、比喩的な「抑制」まで幅広く使われる。類義語に τροχοπέδη(制動機)があるが、日常会話では φρένο が一般的。
関連する複合語に αερόφρενο(エアブレーキ)、ποδόφρενο(フットブレーキ)、σερβόφρενο(サーボブレーキ、倍力装置)、χειρόφρενο(ハンドブレーキ)がある。動詞形は φρενάρω(ブレーキをかける)。
主な意味は、移動中または回転中の物体、主に車両を減速・停止させるためのブレーキ。換喩として、急ブレーキをかける際に発生する摩擦音を指すこともある。比喩的には、何かを食い止めたり、制限したり、進行を遅らせたりする表現にも使われる。
ギリシャ語:φρούτο
読み方:フルト・フルート
ラテン文字:frouto
φρούτο(果物)はイタリア語の frutto(果物)から入った借用語。現代ギリシャ語では、食べ物としての果物を日常的に言うときの基本語として定着している。
καρπός(果実、実)が植物学的な果実や比喩的な成果まで広く指すのに対して、φρούτο は市場や食卓に並ぶ「果物」に寄った言い方として使いやすい。複数形の φρούτα(果物類、複数の果物)で、旬の果物、盛り合わせ、果物全般をまとめて言うことが多い。
複合語では、φρούτα της θάλασσας(シーフード、食用の貝や甲殻類)、φρούτο του πάθους(パッションフルーツ)、μύγα των φρούτων / του ξιδιού(ショウジョウバエ、果実バエ)のような言い方がある。θάλασσα(海)を含むこの表現は、字面では「海の果物」にあたる。指小語の φρουτάκι(小さな果物)は、小さな果物や親しみを込めた言い方として使える。
主な意味は、甘みのある食用の果物。とくに複数形 φρούτα で、季節ごとの果物や加工前の生の果物を広く指す。そこから比喩的には、癖の強い人や妙な代物を皮肉って言うこともある。
ギリシャ語:φτερό
読み方:フテロ・フテロー
ラテン文字:ftero
古代ギリシャ語の πτερόν(羽、翼)を継承。中世ギリシャ語で語頭の π- が φ- に変わり φτερό(ν) となった。πτερόν は印欧祖語で「羽、翼、飛ぶ」を表す語根から出た語で、動詞 πέτομαι(飛ぶ、今は πετώ)もこの語根から。英語 feather、ドイツ語 Feder も仲間。学術用語の pter-、-pter(pterodactyl「翼竜」、helicopter「ヘリコプター」)もここから。
飛行機の翼や自動車のフェンダーの意味は、フランス語 aile からの意味借用で定着した。
派生語に φτερούγα(翼、羽)、φτερωτός(翼のある)、φτεροκοπώ(羽ばたく)。
やわらかい綿毛は πούπουλο で言う。
ギリシャ語:φυλαχτό
読み方:フィラフト・フィラフトー
ラテン文字:filachto
動詞 φυλάσσω(守る、現代ギリシャ語では φυλάω)から派生した語。ヘレニズム時代に形容詞 φυλακτός(守られるべき、保存可能な)が生まれ、その中性形が名詞として独立した。中世に「守られるべきもの」から「身につけて守ってくれるもの」へと意味が移り、魔除けやお守りを指すようになった。
音韻面では、[kt] が [xt] へ摩擦音化して現代ギリシャ語の φυλαχτό になったが、古典回帰的な影響から元の綴り φυλακτό も併用される。
英語の prophylaxis(予防法)にも、同じ φύλαξ(番人)という語源が含まれている。
物理的な守護と精神的な支えの両方を意味する。魔除けやお守りとしての用法が中心で、比喩的に心の拠り所も表す。幸運をもたらす γούρι(縁起物)とは対照的に、災いから守るものを指す。
ギリシャ語:φύλλο
読み方:フィロ・フィーロ
ラテン文字:fyllo
印欧祖語で「葉」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 φύλλον(葉)を継承。ラテン語 folium(葉, 紙片), 英語 folio, foliage も同じ語族。
派生に φυλλάδιο(冊子, パンフレット), φυλλάριο(小葉, 薄片), φύλλωμα(葉の茂り, 樹冠), φυλλωσιά(葉の密生)。合成語は φυλλο- の形で作られ, φυλλοβολία(落葉), φυλλοβόλος(落葉性の)。接尾 -φυλλο を使った τριαντάφυλλο(バラ,「三十枚の花びら」の意)も同じ語族。
ギリシャ語:φύση
読み方:フィシ・フィーシ
ラテン文字:fysi
古代ギリシャ語 φύσις(フィシス、成長、本質)から。動詞 φύω(生じる、育つ)に由来し、もともとは「成長」や「生まれつきの性質」を意味していた。現代ギリシャ語では φύση の形で使われる。近代以降の「自然環境」という語義には、ラテン語 natura(自然)を経由したフランス語 nature の影響もある。
φύση のもとになった φύσις は、英語の physics(物理学)や physician(医師)、接頭辞 physio-(生理的な、自然の)の語源でもある。
類義語に χαρακτήρας(性格、性質)があるが、φύση はより根源的で先天的な「本性」を指す傾向がある。
主な意味は「自然界」と「本性」。自然環境や自然の力を指すほか、人間や事物が持つ根本的な性質や特徴も表す。
ギリシャ語:φυσική
読み方:フィシキ・フィシキー
ラテン文字:fysiki
古代ギリシャ語の φυσική を継承。形容詞 φυσικός(自然の、生まれつきの)の女性形を単独で使って名詞にした語で、φύσις(自然、本性)からの派生。アリストテレスの著作 τὰ φυσικά(自然に関する書)で、自然界を扱う学問分野の意味が生まれた。現代の「物理学」の意味は、フランス語 physique、英語 physics からの意味借用で近代に定着した。
φύσις は動詞 φύω(生やす、生ずる)から出た語で、印欧祖語で「育つ、生まれる」を表す語根から生まれた。ラテン語 fui(〜であった)、futurus(未来の)と同系。英語 be、future、physical、physician も同じ語族。ギリシャ語の仲間に φυτό(植物)、φυτρώνω(芽を出す、生える)。
派生語に φυσικός(自然の、物理の)、φυσικά(もちろん、自然に)、φυσιολογία(生理学)、φυσιολογικός(生理的な、正常な)。複合語に πυρηνική φυσική(原子核物理学)、κβαντική φυσική(量子物理学)、αστροφυσική(天体物理学)。
ギリシャ語:φυστικί
読み方:フィスティキ・フィスティキー
ラテン文字:fystiki
φυστικί(ピスタチオ色の、薄い黄緑の)は、φυστίκι(ピスタチオ)から色名として使われるようになった語である。現代ギリシャ語では、淡い緑に黄みが少し差した色を言う。
πράσινος(緑の、緑色の) よりも、φυστικί はもっと明るく、黄みのあるやわらかな緑を指す。もっと冷たく青みのある淡緑では μέντας(ミント色の、淡い緑の)とも近づくが、φυστικί はピスタチオらしい黄緑を保ちやすい。
意味はピスタチオ色の、薄い黄緑の。服、壁、小物、菓子の色に使いやすい。
ギリシャ語:φυτό
読み方:フィト・フィトー
ラテン文字:fyto
動詞 φύω(生長させる, 生む)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 φυτόν(植えられたもの, 植物)を継承。語尾 -ν が脱落して現代ギリシャ語の φυτό の形になった。英語の接頭辞 phyto-(植物の〜, phytochemical など)も同じ φυτόν にさかのぼる。
派生に φυτεύω(植える), φυτικός(植物の), φυτάριο(苗木, 指小語), φυτούλι(小さな植物, 指小語), φυτώριο(苗床, 苗圃), φύτουκλας(ガリ勉, 増大語)。合成語に φυτολογία(植物学), φυτοπαθολογία(植物病理学), φυτοφάρμακο(農薬), φυτόπλαγκτον(植物プランクトン)。
ギリシャ語:φώκια
読み方:フォキャ・フォーキャ
ラテン文字:fokia
φώκια は、古代ギリシャ語 φώκη(アザラシ)を土台にしつつ、フランス語 phoque(アザラシ)の影響も受けてできた現在の形とされる。古いギリシャ語の語を受け継ぎながら、近代語の接触の中で今の形に落ち着いた語である。
φώκια は海辺や沿岸で生きる ζώο(動物)を指す語で、日常的にも θάλασσα(海)と強く結びつく。水中と陸上の両方で生きる肉食の哺乳類として捉えられ、短くつやのある灰色がかった毛、ひれ状の四肢、体温を保つ皮下脂肪が特徴になる。
主な意味はアザラシ。とくに寒い海域で生きる海獣を指す基本語である。そこから転じて、口汚く女性の外見をけなす侮蔑語としても使われる。
複合表現では φώκια μονάχους(地中海モンクアザラシ)、μεσογειακή φώκια(地中海アザラシ)、まれに φώκια μοναχός(モンクアザラシ)が、Monachus monachus(地中海モンクアザラシ)を指す。希少で絶滅危惧の強い種として知られ、とくにギリシャの海で言及されやすい。
ギリシャ語:φωνάζω
読み方:フォナゾ・フォナーゾ
ラテン文字:fonazo
中世ギリシャ語の φωνάζω を継承。古代ギリシャ語の φωνέω / φωνῶ(声を出す、呼ぶ)に反復・強意を表す -άζω を付けた形で、φωνή(声)から作られた動詞。強く、または繰り返し声を出す感覚が出発点。
関連語に φωναχτός(声の大きい)、φωνασκώ(声を張り上げる)、εκφωνώ(はっきり発音する、読み上げる)、συμφωνώ(同意する)、διαφωνώ(意見が合わない)、άφωνος(声を失った、無言の)。
ギリシャ語:φωνή
読み方:フォニ・フォニー
ラテン文字:foni
古代ギリシャ語の φωνή(声、音)を継承。現代の社会的な抗議の声や世論の意味には、フランス語 voix、英語 voice からの意味借用も加わる。
派生語に指小形の φωνούλα, φωνίτσα(小さな声、かわいらしい声)、増大形の φωνάρα(よく通る立派な声)。英語 phone, telephone, symphony, phonetics など、phono-/phone- を使う語はいずれも同じ古代ギリシャ語から。
ギリシャ語:φως
読み方:フォス・フォース
ラテン文字:fos
古代ギリシャ語の φῶς(光)を継承。英語 photo-(photograph, photon など)はこの語の結合形 φωτο- に由来する。
類義語に λάμψη(輝き)、対義語に σκοτάδι(闇)など。指小語 φωτάκι は小さな光、小さなランプ。
主な意味は物理的な光や明かり。比喩的に「知識」「真相」「視力」なども意味する。また、愛する人への呼びかけとしても使われる。複数形 φώτα で知識・知恵を表す用法は、フランス語の lumière からの意味借用で、啓蒙思想(Les Lumières)の時代に「光=知」の比喩がギリシャ語に取り入れられた。
ギリシャ語:φωτοβολίδα
読み方:フォトヴォリダ・フォトヴォリーダ
ラテン文字:fotovolida
カサレヴサの φωτοβολίς に由来。古代ギリシャ語 φῶς(光)の接頭辞形 φωτο- と、コイネー βολίς(投げられたもの、矢、弾丸)の合成で、強い光を放って飛ぶものを指す。英語 photography や photon の photo- も同じ φῶς を起源とする。
観賞用の花火を指す πυροτέχνημα に対し、φωτοβολίδα は光を放つ信号弾・照明弾を指す。
ギリシャ語:φωτογραφία
読み方:フォトグラフィア・フォトグラフィーア
ラテン文字:fotografia
φωτογραφία は、近代にフランス語 photographie と英語 photograph / photography を受けて現代ギリシャ語に定着した語である。語の組み立て自体は φως(光)に連なる φωτο-(光)と -γραφία(記すこと、描き出すこと)によってできており、西欧語で広まった形がギリシャ語にも戻ってきた。
είδωλο(像、偶像、神像)も「像」を表すが、こちらは光学的な像や偶像まで広く言える語である。φωτογραφία は、人や物や場所をカメラなどで記録した写真を指す点が中心になる。
主な意味は「写真」。人物、物体、場所などをカメラで撮って残した一枚や、その写真データ、写真作品を指す。まれに、そうした像を写し取る方法や技術、あるいは写真という表現分野そのものも表す。
Χ
ギリシャ語:χαλάκι
読み方:ハラキ・ハラーキ
ラテン文字:chalaki
χαλί(絨毯)に指小辞 -άκι がついた形。
小さな絨毯のほか、玄関に置く靴拭き用のドアマットを指すのによく使われる。
ギリシャ語:χάλι
読み方:ハリ・ハーリ
ラテン文字:chali
トルコ語の hâl(状態、状況、有様)からの外来借用で、トルコ語自体はアラビア語 ḥāl(حال、状態)を語源とする。オスマン期にギリシャ語に入り、口語で「ひどい状態」「惨状」というネガティブな意味に偏って定着した。日常では複数形 χάλια の形で補語・副詞的に用いられ、「ボロボロだ」「気分が最悪だ」といった意味を表すことが多い。同綴の χαλί(絨毯)はアクセント位置(語末)も語源(トルコ語 halı < ペルシャ語 qālī)も異なる別語で、χάλι はアクセントが語頭にあり状態の悪さを指す側に分かれている。
類義語に κατάσταση(状態。古代ギリシャ語由来で中立的に状態を指し、悪い意味に限らない硬い文脈で広く使う), χαμός(混乱、騒動、惨状。χάνω「失う」由来), ρεζίλι(恥さらし、無様な様子。トルコ語 rezil 由来の外来借用), κουρέλι(ぼろ、ぼろ切れ。比喩的にぼろぼろの状態を指す)。χάλι は物理的な汚れから健康・経済・精神まで、あらゆる悪い状態をひっくるめて指す形として広く使う。
ギリシャ語:χαλί
読み方:ハリ・ハリー
ラテン文字:chali
トルコ語の halı(絨毯)からの外来借用で、トルコ語自体はペルシャ語 قالی(qālī、絨毯)を語源とする。オスマン期にギリシャ語に入った語で、絨毯文化と結び付いて家庭用の床敷物を指す形として定着した。同綴の χάλι(ひどい状態)はアクセント位置(語頭)も語源(トルコ語 hâl < アラビア語 ḥāl)も異なる別語で、χαλί はアクセントが語末にあり敷物を指す側に分かれている。
類義語に τάπητας(絨毯、織物。古代ギリシャ語 τάπης 由来で、行政・公式・装飾文化の硬い文脈で使う), μοκέτα(カーペット。フランス語 moquette 由来の外来借用で、壁から壁まで敷き詰める固定式の絨毯を指す), κιλίμι(キリム。トルコ語 kilim 由来の外来借用で、毛足のない平織り絨毯を指す)。χαλί は床に置く取り外し自在な絨毯全般を指すふつうの形として広く使う。派生に χαλάκι(小さな絨毯、玄関の靴拭きマット。指小形)。
ギリシャ語:χαλκός
読み方:ハルコス・ハルコース
ラテン文字:chalkos
古代ギリシャ語の χαλκός(銅、青銅)に由来。さらなる起源は確かでなく、印欧諸語の語彙よりもむしろギリシャ語以前の基層語に属するとされる。古代では銅製の釜や壺、銅貨の意味にも使われた。
χαλκός は銅(copper)を指すのが基本で、歴史的・考古学的な文脈では銅と錫の合金、青銅(bronze)の意味も残る。銅と亜鉛の合金である真鍮(brass)は ορείχαλκος(古代 ὀρείχαλκος「山の銅」、ὄρος「山」と χαλκός の合成)、銅と錫の合金、青銅そのものを指す語には文語的な κρατέρωμα(ヘレニズム期ギリシャ語からの学術借用)と日常的な μπρούντζος(イタリア語由来の借用語)がある。
派生語に χάλκινος(銅の)、χάλκωμα(銅製品)、χαλκιάς(銅細工師)、χαλκουργός(銅工)、χαλκείο(銅工房)、χαλκεύω(銅を鍛える)など。
英語 Chalcolithic(銅石器時代)、chalcopyrite(黄銅鉱)、chalcography(銅版画)、orichalcum(古代の伝説的合金;のち真鍮)も同じ古代ギリシャ語 χαλκός をもとにした語。
ギリシャ語:χαμένος
読み方:ハメノス・ハメーノス
ラテン文字:chamenos
ギリシャ語:χαμόγελο
読み方:ハモイェロ・ハモーイェロ・ハモゲロ・ハモーゲロ
ラテン文字:chamogelo
χαμόγελο は動詞 χαμογελώ(笑顔を見せる、ほほえむ)からできた名詞で、さらにさかのぼると χαμο-(下へ、低く、控えめに)と γελώ(笑う)に分かれる。χαμο- は古い複合語要素で、もともとは声を立てず、口元だけで静かに笑う動きが核にあったと考えられる。
この「低く笑う」「そっと笑う」という感覚から、現代ギリシャ語ではごく普通の「笑顔、ほほえみ」を表す基本語として定着した。名詞の χαμόγελο と動詞の χαμογελώ、形容詞の χαμογελαστός(ほほえんだ、笑顔の)は同じ語族をなす。
χαρά(喜び) が内側にある喜びそのものを指しやすいのに対し、χαμόγελο はそれが πρόσωπο(顔) に現れた表情を指す語である。口元だけに出る静かな表情なので、声や動きを伴いやすい γέλιο(笑い) よりも控えめな場面によく合う。見た目の動きとしては χείλος(唇) の端が持ち上がることが中心にあり、そこから比喩的に「喜び」そのものや、服の襟ぐり、整った歯並びまで意味が広がっている。
主な意味は「笑顔、ほほえみ」。そこから、その表情が示す「喜び」、横に広く開いた襟ぐり、見映えのよい白い歯並びも表す。指小語 χαμογελάκι(小さな笑み)は顔文字 :) や :-) を指すこともある。
ギリシャ語:χάνω
読み方:ハノ・ハーノ
ラテン文字:chano
ギリシャ語:χαρά
読み方:ハラ・ハラー
ラテン文字:chara
古代ギリシャ語の動詞 χαίρω(喜ぶ)から派生した χαρά(喜び)を継承。同じ χαίρω から古代ギリシャ語で χάρις(恵み)、さらに χάρισμα(恵みの賜物)が生まれた。χάρισμα は現代ギリシャ語にも残り、英語 charisma の語源にもなった。
類義語の ευχαρίστηση は満足感や楽しみを指し、χαρά よりも一時的な感情に近い。ενθουσιασμός は熱狂や熱意、ευτυχία はより持続的で深い幸福を表す。
対義語には θλίψη(悲哀)、λύπη(悲しみ)、στενοχώρια(悩み)がある。
主な意味は喜びという強い肯定的な感情。また、喜びをもたらす出来事や慶事も指す。複合語の παιδική χαρά は「子供の遊び場」を意味し、μια χαρά は「とても良い、順調」という副詞的な使い方もされる。指小辞の χαρούλα は「小さな喜び」。
ギリシャ語:χαρακτήρας
読み方:ハラクティラス・ハラクティーラス
ラテン文字:charaktiras
古代ギリシャ語の動詞 χαράσσω(刻む, 彫る)から派生した χαρακτήρ(刻みつけた印, しるし)から。
派生に動詞 χαρακτηρίζω(特徴づける, 性格づける)。同じ語族に χαρακτηρισμός(特徴づけ, レッテル貼り), χαρακτηριστικός(特徴的な), χαρακτηριστικά(特徴), αχαρακτήριστος(ひどすぎて言い表せない), χαρακτηρολογία(性格学)。
英語 character, ラテン語 character も同じ古代ギリシャ語にさかのぼる。
近い語に φύση(本性, 性質)と ιδιοσυγκρασία(気質, 体質)があり, φύση は生まれつきの「本性」, ιδιοσυγκρασία は細かい気質や体質を言い, χαρακτήρας は人や物に現れる特徴を広く指す。
ギリシャ語:χαρούμενος
読み方:ハルメノス・ハルーメノス
ラテン文字:charoumenos
中世ギリシャ語の χαρούμενος(喜んでいる)を継承。古代ギリシャ語の動詞 χαίρω(喜ぶ、楽しむ)の中受動相 χαίρομαι が中世ギリシャ語で口語化していく中で、現在受動分詞 χαιρούμενος の語幹が、同根の名詞 χαρά(喜び)の χαρ- に引っ張られて χαρούμενος の形に整いなおされ、形容詞として定着した。古代の χαίρω は印欧祖語の「望む、欲する」を表す語根に由来し、サンスクリット語 háryati(楽しむ), ラテン語 hortor(励ます、勧める)と同根。同じ χαίρω 系から派生した名詞 χάρις(恵み、優美、感謝)は、英語 charisma(カリスマ), charity(慈愛), eucharist(聖体拝領、感謝の典礼)など、品格・恵み・感謝を中心とする語族の源になった。
類義語に ευτυχισμένος(幸福な。古代 εὐτυχής 由来の継承で、より持続的・本質的な幸福感を指す), εύθυμος(陽気な、上機嫌の。古代 εὔθυμος「気分のよい」由来), ευδαίμων(幸せな、恵まれた。書き言葉の硬い形、古代 εὐδαίμων「神に祝福された」由来)。対義語に λυπημένος(悲しんでいる), στενοχωρημένος(落ち込んだ、悩んでいる), θλιμμένος(沈んでいる、嘆いている), θλιβερός(憂鬱な、悲惨な)。χαρούμενος は人・気分・表情・出来事・期間など、喜びを伴うあらゆる対象に使う形として広く使う。派生に χαρούμενα(楽しそうに。副詞)。関連語に χαρά(喜び。語幹を共有する名詞), χαίρω / χαίρομαι(喜ぶ。動詞), χάρις(恵み、優美、感謝), χαρωπός(陽気な、晴れやかな)。
ギリシャ語:χαρτί
読み方:ハルティ・ハルティー
ラテン文字:charti
古代ギリシャ語の χάρτης(パピルスの巻物、紙)の指小形 χαρτίον が、ヘレニズム期には指小辞の意味を失って紙そのものを指す形として日常で用いられ、中世ギリシャ語の χαρτίν を経て今の χαρτί に落ち着いた継承語。χάρτης 自体はエジプトでパピルス紙を指した語で、古代ギリシャから地中海各地にパピルスの製法とともに広まった。トランプの札の意味は、中世以降のイタリア語 carte(カード、トランプ)から入った意味借用(σημασιολογικό δάνειο)。古代の χάρτης はラテン語 charta を経て、英語 chart(海図), charter(憲章), card(カード、仏 carte 経由), cartoon(漫画), cartography(地図学), フランス語 carte(カード、地図), イタリア語 carta(紙、カード), スペイン語 carta(手紙、カード), 日本語のカルタ(ポルトガル語 carta 経由)など、世界中の「紙・カード」関連の語の源になった。
類義語に κάρτα(カード、ハガキ。同じ古代の χάρτης から伊 carta 経由で戻ってきた再借用で、プラスチック製のカードや回路基板を指す), σελίδα(ページ。書面の片面を指す)。χαρτί は工業製品としての紙、書類、トランプの札を指すふつうの形として広く使う。派生に χαρτάκι(小さな紙、メモ紙。指小形), χάρτινος(紙製の), χαρτόνι(厚紙、ボール紙), χαρτονένιος(厚紙の), χαρτιάζω(カード遊びをする)。関連語に χάρτης(地図、海図、憲章。同じ古代の χάρτης の素形を保った形で硬い意味で残る)。合成語に χαρτονόμισμα(紙幣), χαρτοφύλακας(書類入れ、ブリーフケース), χαρτοπαίκτης(カード賭博師), χαρτοπαιξία(カード遊び、賭博), χαρταετός(凧), γυαλόχαρτο(紙やすり), τραπουλόχαρτο(トランプの札), εφημεριδόχαρτο(新聞紙)。
ギリシャ語:χείλος
読み方:ヒロス・ヒーロス
ラテン文字:cheilos
古代ギリシャ語の χεῖλος(唇、縁、くちばし、岸)に由来。さらなる起源は確かでない。日常的な同義語に χείλι(唇)がある。
派生語に χειλικός(唇の)、χειλορραφία(口唇縫合)、χειλοσχιστία(口唇裂)、音声学の χειλοδοντικός(唇歯音)、χειλοϋπερωικός(唇軟口蓋音)など、医学・音声学の用語を多く作る語根。
英語 cheilitis(口唇炎)、cheiloplasty(口唇形成術)、cheiloschisis(口唇裂)も同じ古代ギリシャ語 χεῖλος をもとにした語。
ギリシャ語:χειμώνας
読み方:ヒモナス・ヒモーナス
ラテン文字:cheimonas
印欧祖語で「雪, 冬」を表す語根にさかのぼる古代ギリシャ語 χειμών(冬, 嵐)を経て, 中世ギリシャ語の χειμώνας を継承。ラテン語 hiems(冬), 英語 hibernate(冬眠する), サンスクリット Himalaya(「雪の住処」)も同じ語族。
派生に動詞 χειμωνιάζει(冬になる, 非人称), 形容詞 χειμωνιάτικος(冬の)。同じ語族に χειμερινός(冬季の, 改まった形), χειμέριος(冬の, 詩的), χειμάζομαι(冬を過ごす, 嵐に翻弄される), χειμαδιό(冬営地), χείμαρρος(急流, 激流)。合成語に διαχειμάζω(越冬する), ξεχειμωνιάζω(冬を過ごし終える), καταχείμωνο(真冬), βαρυχειμωνιά(厳しい冬)。
ギリシャ語:χελιδόνι
読み方:ヘリドニ・ヘリドーニ
ラテン文字:chelidoni
古代ギリシャ語の χελιδών(ツバメ)の指小形 χελιδόνιον(ヘレニズム期に「小さなツバメ」)が、中世ギリシャ語の χελιδόνι(ν) を経て、指小辞の意味を失って単に「ツバメ」を指す形として今に至る継承語。古代の χελιδών 自体は印欧祖語にさかのぼる確実な同根語が見当たらず、Beekes は語末の -ιδ- が非インド・ヨーロッパ語に多い形態であることから先ギリシャ語基層からの借用語と位置づけている。ラテン語 hirundō(ツバメ)も同じ地中海系基層語からの並行借用と考えられている。同じ χελιδόνιον は薬草の名としても古代から使われた。ツバメの到来とともに咲くとされたクサノオウ(Chelidonium majus)の古名で、植物学名 Chelidonium、英語 chelidonine(ケリドニン、クサノオウ由来のアルカロイド)の語源にもなった。
χελιδόνι は背中が黒く腹が白い、二股に分かれた尾を持つ小型の渡り鳥(Hirundo rustica)を指す形として広く使い、ある土地への到来が春の訪れの前兆とされる文化的シンボルでもある。派生に χελιδονάκι(小さなツバメ。指小形), χελιδόνισμα(春のツバメの渡来を祝う民俗的な歌謡), χελιδονοφωλιά(ツバメの巣)。関連語に χελιδόνα(古代 χελιδών の女性形を保った別形), χελιδών(古代由来の文語・学術形), άνοιξη(春。ツバメの到来と結びつく季節)。
ギリシャ語:χελώνα
読み方:ヘロナ・ヘローナ
ラテン文字:chelona
古代ギリシャ語 χελώνη(カメ)から。語尾 -η が -α に変わった。改まった形では χελώνη も残る。
派生に χελωνάκι(子ガメ, 小さなカメ), χελωνίτσα(子ガメ), χελωνίσιος(カメの)。合成語に θαλασσοχελώνα(ウミガメ), νεροχελώνα(ミズガメ, 淡水ガメ), χελωνοειδής(カメのような), χελωνόστρακο(カメの甲羅)。
英語 chelonia(カメ目), chelonian(カメの)も同じ古代ギリシャ語にさかのぼる。
ギリシャ語:χέρι
読み方:ヘリ・ヘーリ
ラテン文字:cheri
印欧祖語で「手」を表す語根にさかのぼり, 古代ギリシャ語の χείρ(手)を継承。ヘレニズム期の指小形 χέριον, 中世ギリシャ語の χέριν を経て, 語末の -ν が落ちた形で今に至る。英語の接頭辞 chiro-(chirography「筆跡」, chiropractic「カイロプラクティック」, chiromancy「手相占い」)はこの χείρ から新ラテン語を経由して入った学術借用。
類義語に μπράτσο(腕、特に上腕部の力強さを表すのに使う), παλάμη(手のひら), βραχίονας(解剖学の「腕」)。派生に χεριά(ひとかき、ひと掴み), χερούλι(取っ手、ハンドル), χεράκι(小さな手。指小形), χερούκλα(大きな手。拡大形), χερακώνω(手荒に扱う)。関連語に χειρ- 系の硬い形の語として χειρίζομαι(扱う、操作する), χειριστήριο(操作機器), δεξιόχειρας(右利き), αριστερόχειρας(左利き), εγχειρίδιο(手引き、マニュアル)。
ギリシャ語:χημεία
読み方:ヒミア・ヒミーア
ラテン文字:chimeia
フランス語 chimie からの借用。chimie は中世ラテン語の alchemia(錬金術)が短くなった語で、その alchemia はアラビア語 al-kīmiyāʾ から。もとは古代ギリシャ語の χυμεία(金属を溶かし合わせる技法、χέω「注ぐ」の派生)で、ギリシャ語からいったん外に出てアラビア語、ラテン語、フランス語を渡り、姿を変えて戻ってきた語。
関連語に αλχημεία(錬金術、同じ経路で入った別形で、アラビア語の定冠詞 al- を残している)。化学の下位分野には βιοχημεία(生化学)、γεωχημεία(地球化学)がある。
ギリシャ語:χήνα
読み方:ヒナ・ヒーナ
ラテン文字:china
古代ギリシャ語 χήν(ガチョウ, ガン)から。語尾に -α が加わって女性名詞の形になった。
派生に χηνάκι(子ガチョウ), χηνούλα(小さなガチョウ), χηνόπουλο(雛), χήνος(雄のガチョウ), χηνίσιος(ガチョウの)。合成語に αγριόχηνα(マガン, 野生のガン), χηνοβοσκός(ガチョウ飼い), χηνοτροφείο(ガチョウの飼育場), χηνοτροφία(ガチョウの飼育業)。
χήν は印欧祖語で「ガチョウ」を表す語根にさかのぼり, 英語 goose, ドイツ語 Gans, ラテン語 anser も同じ語族。
ギリシャ語:χιόνι
読み方:ヒョニ・ヒョーニ
ラテン文字:chioni
古代ギリシャ語の女性名詞 χιών(雪)に由来する。そこからヘレニズム期の指小形 χιόνιον(小さな雪、小さな雪片)が生まれ、中世ギリシャ語の χιόνι(雪)を経て、現代ギリシャ語の χιόνι(雪)に至った。今の形は、古い「雪」の語が指小形を経て日常語として定着したものにあたる。
χειμώνας(冬)が季節としての「冬」を指すのに対し、χιόνι はその時期に降る雪や積もった雪そのものを指す。βροχή(雨)が液体の雨なのに対して、χιόνι は大気中の凍った水分が結晶になって地上に降るものを言う。
指小語 χιονάκι(小雪、小さな雪片)は小雪や小さな雪片をやわらかく言う形。関連語 χιονιά(雪玉)もある。
基本の意味は「雪」。そこから、雪のような白さ、氷のような冷たさ、テレビ画面に出る白い砂嵐にも意味が広がる。
ギリシャ語:χλιαρός
読み方:フリャロス・フリャロース
ラテン文字:chliaros
ギリシャ語:χλόη
読み方:フロイ・フローイ
ラテン文字:chloi
古代ギリシャ語の χλόη(若い緑の芽、若草)を継承。古代ギリシャではデメテルの称号(Χλόη「若草のデメテル」)にも用いられた。印欧祖語の「緑、黄、生える」を表す根に由来し、近縁の χλωρός(青々とした、未熟な、生の)、χλοερός(青々と茂った)などと同系。
関連語に χορτάρι(草、牧草、芝生)、πόα(禾本科の草)、χλωρίδα(植物相)など。
英語の女性人名 Chloe(クロエ)は χλόη からそのまま入った語。化学・生物の chlorophyll(葉緑素)、chlorine(塩素)、chloride(塩化物)、chloroform(クロロホルム)は近縁の χλωρός をもとにした学術語で、いずれも「緑がかった、淡い黄緑」の色合いを核にしている。
ギリシャ語:χλωρός
読み方:フロロス・フロロース
ラテン文字:chloros
古代ギリシャ語の χλωρός(青々とした、みずみずしい、青白い)を継承。印欧祖語の「緑、黄、生える」を表す根に由来し、χλόη(若草、青草)は同じ根から生まれた姉妹語。
派生語・接頭辞に χλωρίδα(植物相)、χλώριο(塩素)、χλωρίνη(塩素系漂白剤)、χλωροφύλλη(葉緑素)、接頭辞 χλωρο-(緑の、塩素の)など。
英語 chlorophyll(葉緑素)、chlorine(塩素)、chloride(塩化物)、chloroform(クロロホルム)は同じ古代ギリシャ語 χλωρός をもとにした学術語で、「緑がかった、淡い黄緑」の色合いから名づけられた。英語の女性人名 Chloe(クロエ)は姉妹語の χλόη から。
ギリシャ語:χοιρινός
読み方:ヒリノス・ヒリノース
ラテン文字:choirinos
χοιρινός(豚の、豚肉の)は中世ギリシャ語の χοιρινός(豚の)に由来する文語的な形容詞で、語源上は χοίρος(豚)に形容詞語尾 -ινός(〜の、〜製の)が付いてできた形である。
これとは別に、ヘレニズム期の χοίρινος(豚の皮でできた)はその名の通り皮革に関わる意味を持っていた。現代の χοιρινός はこの語とは区別される系統として扱われる。
現代ギリシャ語で豚そのものを表す語として χοίρος(豚)がある。χοιρινός はこの語から派生した形容詞で、豚肉や豚由来のものについて使われる。
中性形の χοιρινό(豚肉)は名詞としても使われる。これは χοιρινό κρέας(豚肉)を省略した言い方。
主な意味は、豚の肉や皮、脂、加工品について「豚の」「豚肉の」と表すこと。名詞では、そのまま食材としての豚肉を指す。
ギリシャ語:χόμπι
読み方:ホビ・ホービ・ホンビ・ホーンビ
ラテン文字:chompi
χόμπι は英語 hobby に由来する借用語で、現代ギリシャ語では外来語らしく不変化の中性名詞として使うことが多い。古い綴りには χόμπυ(旧綴り)がある。
διασκέδαση(娯楽、楽しみ、気晴らし)が楽しんで過ごすことや娯楽一般を広く言えるのに対し、χόμπι は自由時間に自分で続ける個人の楽しみを指しやすい。たとえば μουσική(音楽)や園芸、釣りのような活動を、その人の「趣味」としてまとめて言える。
主な意味は、自由時間に楽しみとして続ける、職業ではない活動。スポーツ、園芸、模型作り、音楽、切手集めのように、長く続ける個人的な楽しみを表す。そこから、何かを楽しみのために行うことも表せる。
定番の言い方として、「私の趣味は...だ」「趣味で何かをする」「趣味を仕事にした」のような形がよく使われる。
ギリシャ語:χορός
読み方:ホロス・ホロース
ラテン文字:choros
印欧祖語にさかのぼるが起源には「つかむ, 囲う」「願う」など諸説のある古代ギリシャ語の χορός(輪になって踊ること, 踊り, 舞踏団, 踊る場)を継承。もとから輪になって踊ることを中心義としていた。
派生語に χορωδία(合唱団、コーラス)、χορεύω(踊る)、χορευτής / χορεύτρια(ダンサー)、χορογράφος(振付家)、χορογραφία(振付)、χοροστάσι(祝祭の踊りの場)など。
英語 chorus(合唱、コーラス)、choir(聖歌隊)、choreography(振付、コレオグラフィ)はラテン語 chorus 経由で同じ古代ギリシャ語から。ギリシャ神話の舞踏の女神 Terpsichore(テルプシコラ)は τέρψις(喜び)と χορός の合成で「踊りの喜び」を表す名。
ギリシャ語:χορταρί
読み方:ホルタリ・ホルタリー
ラテン文字:chortari
ギリシャ語:χόρτο
読み方:ホルト・ホールト
ラテン文字:chorto
ギリシャ語:χρήμα
読み方:フリマ・フリーマ
ラテン文字:chrima
古代ギリシャ語の動詞 χράομαι(使用する、必要とする)から派生した χρῆμα(必要なもの、物、財産)に由来。現代ギリシャ語では主に「金」「通貨」を表す。
類義語に λεφτά(より口語的・日常的)、παράδες(トルコ語由来、口語)、φράγκα(俗語的、元はフラン貨に由来)がある。これらが日常的な「お金」を指すのに対し、χρήμα は公式な文脈や経済用語として使われやすい。
派生語に χρηματικός(金銭の)、χρηματίζω(金銭を動かす、収賄する)、χρηματιστήριο(証券取引所)、χρηματαγορά(金融市場)がある。
形容詞と組み合わせて μαύρο χρήμα(ブラックマネー)、ζεστό χρήμα(現金、またはホットマネー)、ηλεκτρονικό χρήμα(電子マネー)、ψηφιακό χρήμα(デジタル通貨)、δημόσιο χρήμα(公金)など、経済や報道で使われる専門表現を多く作る。
主な意味は「金(かね)」「通貨」。経済用語としての公式な支払い手段から、日常的な現金、さらには富や権力の象徴としても使われる。複数形 χρήματα は「金額」「現金」の意味で用いられることが多い。
ギリシャ語:χρόνος
読み方:フロノス・フローノス
ラテン文字:chronos
古代ギリシャ語の χρόνος(時間、期間、時代、年)を継承。さらなる起源は確かでなく、古来さまざまな語との結びつけが試みられてきたが定説はない。
派生・複合語に χρονικός(時間の、年代記の)、χρονικό(年代記)、χρονολογία(年代学、年代順)、χρονόμετρο(クロノメーター、ストップウォッチ)、χρονοδιάγραμμα(スケジュール、工程表)、χρονοτριβή(時間の浪費、遅滞)、χρονογράφος(年代記作者、コラムニスト)、σύγχρονος(同時代の、現代の)、συγχρονίζω(同期させる)、διαχρονικός(通時的な、時代を超えた)、αναχρονισμός(時代錯誤)など。関連語に χρονιά(年、一年)、ώρα(時刻、1時間)。
英語 chronology(年代学)、chronological(年代順の)、chronic(慢性の)、chronicle(年代記)、chronometer(クロノメーター)、chronograph(クロノグラフ)、anachronism(時代錯誤)、synchronize / synchronous(同期する、同時の)、diachronic(通時的な)も同じ古代ギリシャ語 χρόνος をもとにした学術語。
ギリシャ語:χρυσαφένιος
読み方:フリサフェニョス・フリサフェーニョス
ラテン文字:chrysafenios
χρυσαφένιος(黄金色の、金色の)は、古代ギリシャ語 χρυσός(金)から中世以降の χρυσάφι(黄金、金)を経てできた形容詞である。現代ギリシャ語では、金属の金というより、その輝く色合いを言うことが多い。
χρυσαφής(黄金色の、金色の) と近いが、χρυσαφένιος はやわらかく口語的な言い方として使われやすい。ξανθός(金色の、ブロンドの) が髪や麦の穂のような自然の金色を言いやすいのに対して、χρυσαφένιος は光沢のある黄金色に使う。
意味は黄金色の、金色の。夕日、砂、布、装飾の色に使いやすい。
ギリシャ語:χρυσαφής
読み方:フリサフィス・フリサフィース
ラテン文字:chrysafis
古代ギリシャ語で「金」を意味する χρυσός(クリソス)に由来する。中世ギリシャ語で χρυσάφιον となり、現代ギリシャ語の名詞 χρυσάφι(金、黄金)へと変化した。χρυσαφής はこの名詞から派生した形容詞で、金の色合いそのものを表す。
英語の chrysanthemum(菊、「黄金の花」の意)や chrysalis(さなぎ、「金色に輝くもの」の意)なども、同じ χρυσός を語源に持つ。
似た形容詞に χρυσός があるが、χρυσός が「金製の」と材料を指すのに対し、χρυσαφής / χρυσαφί は「金色の、黄金色の」と色彩を指す。
主な意味は「黄金色の」。光り輝く色合いを表す際に用いられ、夕日の色などを描写するのにも使われる。
中性形の χρυσαφί は黄金色を指す名詞として使われるほか、他の名詞を性・数に関わらず直接修飾する用法もある。口語では語尾変化する χρυσαφής よりこちらが広く使われる。
ギリシャ語:χρυσάφι
読み方:フリサフィ・フリサーフィ
ラテン文字:chrysafi
古代ギリシャ語で「金」を意味する χρυσός から、ヘレニズム期に指小語 χρυσάφιον が生まれ、中世ギリシャ語で χρυσάφι(ν) を経て現代の形に至った。もとは χρυσός の縮小形だったが、指小の意味は失われ、日常的に「金」を指す語として定着した。χρυσός が学術的・公的な場面でも用いられるのに対し、χρυσάφι は口語的な響きを持つ。
英語の chrysalis(さなぎ)や chrysanthemum(菊)も同じ χρυσός を語源に持つ。
χρυσάφι からは色彩を表す形容詞 χρυσαφής(金色の)が派生した。その中性形 χρυσαφί(黄金色)は色の名詞としても使われ、χρυσάφι(金)と綴りは同じだがストレスの位置が異なる。
主な意味は金属としての金や金製品。そこから富や財産の象徴、比喩的に非常に価値のあるもの、親愛の情を込めた呼びかけにも使われる。
ギリシャ語:χρυσός
読み方:フリソス・フリソース
ラテン文字:chrysos
フェニキア語 ḥrṣ, ヘブライ語 חָרוּץ(ḥārūṣ), アッカド語 ḫurāṣum など, 古代西アジアのセム語系で「金」を表す語から借用した古代ギリシャ語 χρυσός(金, 金の)を継承。
形容詞の χρυσός は中世に古代形 χρυσοῦς(音約形)を一般的な -ός 型に整え直した形で続いている。日常的に「金」を指す名詞は χρυσάφι(ヘレニズム期の指小語 χρυσάφιον から)。色を表す語は χρυσάφι から派生した χρυσαφής(金色の)や中性名詞 χρυσαφί(黄金色)で、素材を表す χρυσός とは区別される。
派生・複合語に χρυσώνω(金メッキする)、χρυσοχόος(金細工師)、χρυσοχοείο(金細工店、宝飾店)、χρυσόφυλλο(金箔)、χρυσοθήρας(金探し)、χρυσάνθεμο(菊)、χρυσαλλίδα(さなぎ)、χρυσόψαρο(金魚)、χρυσαφικά(貴金属、宝飾品)など。
英語 chrysalis(さなぎ)は古代ギリシャ語 χρυσαλλίς(金色のもの)をもとにした語で、さなぎの殻が金色に輝くことから名づけられた。chrysanthemum(菊)は χρυσός と ἄνθεμον(花)の合成で「金の花」の意。クリソライト(貴橄欖石)、クリソプレーズ、金緑石などの宝石名(英語 chrysolite / chrysoprase / chrysoberyl)も同じ χρυσός をもとにした学術語。4世紀の「金口ヨハネ」を指す Chrysostom は χρυσός と στόμα(口)の合成で「金の口」つまり雄弁を表す名。
ギリシャ語:χρώμα
読み方:フロマ・フローマ
ラテン文字:chroma
名詞 χρώς(肌, 表面)から派生した古代ギリシャ語の中性名詞 χρῶμα(肌, 肌の色, 色)を継承。「表面に現れる色」を核にする語で, 古代ギリシャ語の時点ですでに音楽の半音階(色合いを帯びた音階)の意味も持っていた。
派生語に χρωματικός(色の、半音階の)、χρωματιστός(色のついた、カラーの)、χρωματισμός(着色、彩色)、απόχρωση(色合い、色調)、αποχρωματίζω(脱色する)など。
英語 chroma(彩度)、chromatic(半音階の、色彩の)、chromatography(クロマトグラフィー)、monochrome(単色)、polychrome(多色)は同じ古代ギリシャ語 χρῶμα をもとにした学術語。chromosome(染色体)は χρῶμα と σῶμα(体)の合成で「染色で見える体」から、chromium / chrome(クロム)は化合物の鮮やかな色合いから命名された。
ギリシャ語:χταπόδι
読み方:フタポディ・フタポーディ
ラテン文字:chtapodi
χταπόδι は中世ギリシャ語の οκταπόδι(タコ)に由来する。現代ギリシャ語では語頭の o が落ちた χταπόδι が日常形として定着している。
やや硬い文脈では οκτάπους(タコ)という形も見られる。まれに κταπόδι(タコ)という形も使われるが、ふつうは χταπόδι が最も自然で一般的である。
海の生き物を広くいう ψάρι(魚)に対して、χταπόδι は頭足類としてのタコを具体的に指す語。生息環境の語としては θάλασσα(海)と結びつきやすく、近い海産物として καλαμάρι(イカ)や σουπιά(コウイカ)も並ぶ。類義語として πολύποδας(タコ、ポリプ)もあるが、χταπόδι のほうが日常的で食卓の語としてもなじみやすい。
指小語の χταποδάκι(小さなタコ)は、小ぶりのタコや、やわらかく親しみをこめた言い方として使われる。
主な意味は、八本の腕を持つ海の動物としての「タコ」。食材としてもそのまま使われる。そこから、触手のように何本も伸びる形にたとえて、荷物を固定する伸縮ゴムひもや、車の排気マニホールドも χταπόδι と呼ぶ。
ギリシャ語:χυμός
読み方:ヒモス・ヒモース
ラテン文字:chymos
古代ギリシャ語の χυμός(汁、液体)から。χέω(注ぐ)からの派生で、もとは「注がれるもの」の意味。複数形 χυμοί で若々しい生気や活力も表す。ラテン語 chȳmus を経て英語 chyme(消化中の胃内容物)の語源にもなった。
ギリシャ語:χώμα
読み方:ホマ・ホーマ
ラテン文字:choma
古代ギリシャ語の動詞 χώννυμι(積み上げる、埋める)から派生した χῶμα(土手、盛り土)を継承。
近い語に γη(大地、地球)があるが、γη は「地球」「大地」「土地」まで含む、より広い意味をもつ。έδαφος は地質学的な「土壌」や足元にある「床」「地面」のニュアンスが強く、σκόνη は「埃」「粉末」を指す。χώμα も、非常に細かい乾いた土を言うときには「土埃」「粉塵」に近い意味で使われる。
主な意味は「土」。地球の表面を覆う細かい粒状の物質を指し、そこから「地面」「墓」「故郷の地」にも意味が広がる。キリスト教的な死生観では、人が土から生まれて土に還ることを表す語としても用いられ、比喩的には商才や死そのものを言うこともある。
複数形 χώματα は大量の土を表すほか、土をいじって遊ぶことや、土砂に埋もれることを言うときにもよく使われる。
ギリシャ語:χωνάκι
読み方:ホナキ・ホナーキ
ラテン文字:honaki
古代ギリシャ語 χώνη(漏斗、るつぼ)が中世ギリシャ語で χωνίον となり、現代ギリシャ語の χωνί(漏斗)へと変化した。χωνάκι はこの χωνί に指小辞 -άκι が付いた形で、もとは「小さな漏斗」。派生語に χωνοειδής(漏斗状の、円錐形の)。
ギリシャ語:χωράφι
読み方:ホラフィ・ホラーフィ
ラテン文字:chorafi
古代ギリシャ語の χώρα(場所、土地、国)の指小辞である、ヘレニズム期のギリシャ語 χωράφιον に由来する。古代ギリシャ語 χώρα は、英語の chorography(地誌学)などの接頭辞 choro- の語源でもある。
類義語として αγρός(農地、耕作地)があるが、χωράφι はより日常的で、特に一年生植物を育てる区画を指すことが多い。
一方、κατοικία(住居)や οίκος(家、家系)は居住空間を指す言葉であり、土地そのものを指す χωράφι とは区別される。
主な意味は「耕作地、畑」。一年生植物が栽培される土地を指す。比喩的には、個人の管轄範囲や、精通している専門分野などを指して用いられる。
ギリシャ語:χωρίο
読み方:ホリオ・ホリーオ
ラテン文字:chorio
古代ギリシャ語 χωρίον(場所, 箇所, 一節)に由来。χώρος(場所, 空間)の指小形で, 古代では「小さな場所」から「要塞地」「農地」「文章の箇所」まで指した。
χωριό(村)は日常の用法で χωρίον を受け継いだ形, χωρίο は文章の「一節」の意味で古代の形を改めて取り入れた形で, アクセント位置で区別される。
同じ語族に χώρα(国, 地域), χώρος(場所, 空間), χωρικός(土地の, 村の), χωροταξία(国土計画), χωρίζω(分ける, 隔てる)。
ギリシャ語:χωριό
読み方:ホリオ・ホリオー
ラテン文字:chorio
古代ギリシャ語 χωρίον(小さな場所, 区画)を経て, 中世ギリシャ語の χωριόν を継承。χωρίον は χώρα(場所, 土地, 国)の指小形で, 古代の「小さな場所」からヘレニズム期に「都市に対する農村地域」の意味で使われ, 中世以降に「村」として定着した。
文章の「一節」を指す χωρίο は同じ古代 χωρίον を改めて取り入れた形で, アクセント位置で区別される。
派生に χωριουδάκι(小さな村, 可愛い村), χωριανός(同郷の人)。同じ語族に χωριάτης(村人), χωρικός(村人, 農民), χωριάτικος(村の, 田舎風の), χωριατιά(野暮な振る舞い)。合成語に χωριατόσπιτο(田舎の家), χωριατόπαιδο(村の子)。接尾 -χώρι は βλαχοχώρι(ヴラフ人の村), κεφαλοχώρι(中心的な村)など多くの地名で使われる。
ギリシャ語:χώρος
読み方:ホロス・ホーロス
ラテン文字:choros
古代ギリシャ語の χῶρος(場所、空間、地方、国土)に由来。さらなる起源は確かでなく、印欧祖語の「あとに残す」を表す根(χήρα「未亡人」と同系)から「空けられた場所」の意とする説や、ギリシャ語以前の基層語とする説がある。χώρα(国、地方)は同じ根に属する姉妹語で、χωράφι(畑)もこの系統から来ている。
動詞 χωρώ(収める、収容する;古代 χωρέω)は χῶρος から派生した語で、派生・複合語に χωρικός(空間の)、χωροθεσία(空間配置)、χωροταξία(国土計画)、χωροχρόνος(時空)、χωρογραφία(地誌学)など。類義語に τόπος(場所、地点)があり、χώρος が広がりを持つ空間、τόπος が特定の地点を指す。
英語 anchorite(隠修士、世俗から退いた修道者)は古代ギリシャ語 ἀναχωρητής(退く者、ἀνα- + χωρέω)からラテン語経由で入った語で、ここに χῶρος が含まれる。chorography(地誌学)も同じ χῶρος をもとにした学術語。
Ψ
ギリシャ語:ψαλίδι
読み方:プサリディ・プサリーディ
ラテン文字:psalidi
ψαλίδι(はさみ、ハサミ)は、ヘレニズム期の ψαλίδιον(小さなはさみ)にさかのぼる語で、これは古代ギリシャ語 ψαλίς(はさみ)を小さくした形である。そこから中世ギリシャ語の ψαλίδι(はさみ)を経て、現代ギリシャ語でもほぼ同じ形で受け継がれた。
μαχαίρι(ナイフ、包丁)が一本の刃で切る道具を広く指すのに対して、ψαλίδι は二枚の刃が開閉して切る道具を具体的に指す。形が似ていることから、髪を整える器具や車の部材などにも意味が広がっている。
主な意味は「はさみ、ハサミ」。そこから、見た目や動きが似た器具や部材、さらに予算や給付の削減、スポーツや体操でのはさみのような動きも表す。指小語 ψαλιδάκι(小ばさみ)は、爪用の小ばさみや、脚や腕を交差させる運動の言い方としてよく使われる。
ギリシャ語:ψαλμός
読み方:プサルモス・プサルモース
ラテン文字:psalmos
古代ギリシャ語の ψαλμός(弦を弾くこと, 竪琴の歌)に由来。ψάλλω(弦を弾く, はじく)から結果を表す -μός を付けて作られた語で, 弦の演奏から竪琴の伴奏の歌へ, さらにヘレニズム期の聖書翻訳とキリスト教典礼を通じて賛美歌の意味に移った。現代ギリシャ語の用法は, フランス語 psaume, 英語 psalm の意味配置と重なって整った。
英語 psalm, フランス語 psaume, ドイツ語 Psalm はラテン語 psalmus を経て同じ語源。派生に ψαλμωδία(詠唱)。同じ ψάλλω(弦を弾く)を源に持つ仲間に ψάλτης(詠唱者), ψαλτήρι(詩篇集, 竪琴)。
ύμνος(賛美歌, 賛歌)や άσμα(歌)は世俗の歌も指すのに対し, ψαλμός は聖書由来の詩篇や典礼の詠唱に使うことが多い。
ギリシャ語:ψαλμωδία
読み方:プサルモディア・プサルモディーア
ラテン文字:psalmodia
古代ギリシャ語の ψαλμῳδία(竪琴の伴奏に合わせた歌)に由来。ψαλμός(竪琴の伴奏付きの歌, 賛美歌)と ᾠδή(歌)からできた語で, 聖書翻訳とキリスト教典礼を通じて詩篇や聖歌の詠唱を指すようになった。現代ギリシャ語の用法は, フランス語 psalmodie, 英語 psalmody の意味配置と重なって整った。
英語 psalmody, フランス語 psalmodie はラテン語 psalmodia を経て同じ語源。ψαλμός と ᾠδός(歌い手)からできた並行する合成語 ψαλμωδός(詩篇歌い, 詠唱者)も同じ語族。派生に ψαλμωδικός(詠唱の), ψαλμωδώ(詠唱する)。
ύμνος(賛美歌, 賛歌)や άσμα(歌)は世俗の歌も指すのに対し, ψαλμωδία は教会の典礼で歌う場面に使うことが多い。
ギリシャ語:ψάρι
読み方:プサリ・プサーリ
ラテン文字:psari
古代ギリシャ語の ὄψον(調理された食べ物、おかず)から、ヘレニズム時代の縮小辞 ὀψάριον(小さな魚、魚の切り身)が生まれ、さらに中世ギリシャ語の ψάρι(魚)を経て現在の ψάρι(魚)に至った。
この語群は古い段階では、とくに魚料理を指すこともあった。
現在の形になった背景には、το οψάριον(その魚、小さな魚)のように冠詞と続けて発音される中で、語頭の母音 ο(オミクロン)が落ちたとされる音変化がある。
古代ギリシャ語由来の ιχθύς(魚)は、現代では魚座や魚類のような硬い表現に残る。一方、日常会話で「魚」を表す基本語は ψάρι である。
派生語には ψαράκι(小さな魚)、ψαρούκλα(大きな魚)、ψαράκας(間抜けな人、新兵のような未熟者をからかって言う語)がある。数量や釣果を表す関連語に ψαριά(漁獲、漁獲量)がある。
主な意味は、水中に生息する脊椎動物としての「魚」。食材としての魚も同じ語で表す。比喩では沈黙や環境へのなじみにくさを表すことがあり、俗語では騙されやすい人や新兵、無口な人、歌の下手な人を指すこともある。
ギリシャ語:ψέμα
読み方:プセマ・プセーマ
ラテン文字:psema
古代ギリシャ語の動詞 ψεύδω(欺く)から派生した名詞 ψεῦσμα(嘘)を起源とする。子音群の簡略化による [s] の脱落を経てヘレニズム期に ψεῦμα となり、中世ギリシャ語において同化と簡略化([vm] > [mm] > [m])が起こり、現代の ψέμα に至った。
英語の pseudo-(偽の〜)もまた、ψεύδω から派生した形容詞 ψευδής(偽りの)がラテン語を経て英語に入った接頭辞で、ψέμα と語源を共有する。
ψέμα が日常的な「嘘」を表す語であるのに対し、αναλήθεια(不真実)は事実に反する性質を中立的に指す文語的な表現で、意図的な欺きのニュアンスを含まない。
αλήθεια(真実)の対義語であり、意図的な虚偽から、比喩的に「儚いもの」「幻想」の意味でも使われる。
ギリシャ語:ψήφος
読み方:プシフォス・プシーフォス
ラテン文字:psifos
古代ギリシャ語の ψῆφος(小石)を継承。古代では民会や法廷などの投票に小石を使ったため早くから「票」の意味にも広がり、近代にはフランス語 vote/voix の影響で投票制度の用語として意味が整った。
派生語に ψηφίζω(投票する)、ψηφοφορία(投票、採決)、ψηφοδέλτιο(投票用紙)、δημοψήφισμα(国民投票)。
ギリシャ語:ψυχή
読み方:プシヒ・プシヒー
ラテン文字:psychi
古代ギリシャ語の ψυχή(息, 呼吸)を継承。印欧祖語で「吹く」を表す語根に続く ψύχω(吹く, 冷やす)から結果を表す -η を付けて作られた語で, 息をすること = 生きていることから「生命, 魂」へと意味が移った。弦楽器の魂柱や鉄骨の芯を指す技術用語としての用法は, ドイツ語 Seele からの意味借用で加わった。
英語 psycho-(心理), psychology(心理学), psychiatry(精神医学)はこの語をもとにした語。派生に ψυχικός(魂の, 精神の), ψυχούλα(愛しい人), ψυχάκι(親しい人)。
心を扱う語では, 感情は καρδιά(心臓, 心), 思考や理性は νους(精神, 理性), 理念や霊性は πνεύμα(精神, 霊)。ψυχή は魂や生命全体としての「心」を扱う。
ギリシャ語:ψωμί
読み方:プソミ・プソミー
ラテン文字:psomi
古代ギリシャ語で「一口、ちぎった破片」を意味した ψωμός に由来する。ヘレニズム期(コイネー)にその指小辞 ψωμίον が「パンの一切れ」を指すようになり、中世以降、現在の「パン」という意味で定着した。ψωμάς(パン屋)などの派生語がある。
類義語に άρτος がある。ψωμί は日常的な話し言葉で使われるが、άρτος はより古風、あるいは宗教的・公式な文脈(聖体拝領のパン、日々の糧としてのパンなど)で好まれる。
主な意味は「パン」。小麦粉、水、塩、酵母を混ぜて焼いた主食を指す。転じて「生活の糧、生計」や、口語では比喩的に「利益、将来性」を意味することもある。
指小語 ψωμάκι は小さなパンを指すほか、口語の複数形 ψωμάκια は腰回りの脂肪の意味でも使われる。
Ω
ギリシャ語:ώθηση
読み方:オシシ・オーシシ・オティシ・オーティシ
ラテン文字:othisi
古代ギリシャ語の ὤθησις(押すこと)に由来。ωθώ(押す、突き動かす)に名詞化の -ση(古代は -σις)がついた形。現代の「推進、押す力、後押し」の意味は、フランス語 impulsion、英語 impulsion からの意味借用で広がった。同じ ωθώ から πρόωση(推進)、συνωθώ(押し寄せる)、παρωθώ(そそのかす)が派生している。
ギリシャ語:ωκεανός
読み方:オケアノス・オケアノース
ラテン文字:okeanos
古代ギリシャ語の ὠκεανός(大地を囲む大河, 大河の神)に由来。神話では大地を取り巻く一本の巨大な河であり, 同時にその河を擬人化したティタン神 Ὠκεανός の名でもある。現代の「大洋, 海洋」の用法はフランス語 océan, 英語 ocean, イタリア語 oceano からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ὠκεανός の語族に ωκεάνιος(大洋の, 広大な), 合成語 ωκεανογραφία(海洋学), ωκεανογράφος(海洋学者), ωκεανοπόρος(大洋を渡る)。神話の Ωκεανός はウラノスとガイアの息子で, 妻は姉妹のテテュス, 娘たちは海のニンフ オケアニデス。
英語 ocean もラテン語 oceanus を経て同じ語源。海全般を言う θάλασσα(海)や岸から離れた沖の πέλαγος(外洋, 沖)に対し, ωκεανός は太平洋や大西洋のような大陸を隔てる大水域に使う。
ギリシャ語:ώρα
読み方:オラ・オーラ
ラテン文字:ora
古代ギリシャ語の ὥρα(季節、時期、適切な時)を継承。印欧祖語で「年、季節」を表す語根に続き、ラテン語 hōra, 英語 hour と同じ語源。英語 year と古語 yore は、ラテン語を経由せずこの語根から直接続く。現代の「60分、時刻」の意味はフランス語 heure, 英語 time からの意味借用で整った。
派生語 ωραίος(美しい)は「その時にかなった」→「盛り」→「美しい」の流れ。ώριμος(熟した), ωρίμανση(熟成), ωράριο(スケジュール)も同じ語根から。英語 horoscope(星占い)は ὥρα + σκοπέω(観察する)で「時を観る者」, horology(時計学)は ὥρα + -λογία の造語。
ギリシャ語:ωραίος
読み方:オレオス・オレーオス
ラテン文字:oraios
古代ギリシャ語の ὡραῖος(ころあいのよい、旬の、時宜にかなった)に由来。ὥρα(時、季節、ころあい)に形容詞語尾 -ιος が付いた派生形。現代の「きれいな、すてきな」の意味は、フランス語 beau からの意味借用で広がった。元の ὥρα は印欧祖語の「年、季節」を表す語根から続き、現代ギリシャ語では ώρα と書く。英語 hour や year も同じ語根の仲間。
ギリシャ語:Ωρίων
読み方:オリオン・オリーオン
ラテン文字:orion
古代ギリシャ語の Ὠρίων(オリオン)に由来。ギリシャ神話の巨人の狩人で、アルテミスに愛されたが、サソリに刺されて死んだと伝えられる。天に上げられ、Σκορπιός(さそり座)と追いかけあう対角の位置に置かれたという神話。名前の語源ははっきりせず、アッカド語の Uru-anna「天の光」からという見方がある。近くの星座に Μέγας Κύων(おおいぬ座)と Μικρός Κύων(こいぬ座)があり、オリオンに従う猟犬とされる。
ギリシャ語:ώχρα
読み方:オフラ・オーフラ
ラテン文字:ochra

中性名詞
食べ物
生物 
動詞
感情
怒り 

形容詞 
信仰・神話 
知覚 
野菜 
動物
哺乳類
ウシ亜目 
天気 

神秘 
経済 
植物
花 
職業 

社会
スポーツ 


書類 
人 
家族
人間関係 

物質
住居 
物理
化学
身体・健康 
施設・建物
乗り物 
鳥
魚
天文
星座
元素 
生と死 


国名 

赤系の色
言葉 
様態
哲学・思考
法 

時 


空間 

虫 
地形 



道具 
イヌ亜目 

動作
飲み物 
宇宙 
力学 
金属 




軍事
論理 
温度 



方角
工学 

季節 


問題・課題
性格 




評価 
自意識
教育 


情報・メディア 

驚き 




副詞 








コンピュータ
嗜好品 





仕事 

夜
光と闇 

集落
事故
素材 

果物 

黄系の色 


行事 





余暇 




音楽 

















水 



夏
秋 

青系の色 



喜び・楽しさ 




























































































連語 























茶系の色 











緑系の色 





























































































































冬 












































































































