ギリシャ語表記索引: π
π から始まる単語 187 語。
π から始まる単語 187 語。
ギリシャ語:πάγκος / μπάγκος
読み方:パンゴス・パンゴース / バンゴス・バンゴース
ラテン文字:pangos / bangos
イタリア語 banco(台、腰掛け、商人の台)からの借用。現代ギリシャ語では πάγκος と μπάγκος の形がある。
banco の語根は、古高ドイツ語 bank などゲルマン系の「長い腰掛け、台」を表す語。英語 bench(ベンチ)も同じゲルマン系の語に属する。
英語 bank(銀行)も、もとは両替商や商人が使う台を表すイタリア語 banca / banco に由来。家具や台を表す語が、商取引の場を経て金融機関の意味へと発展した。
πάγκος は作業台、店のカウンターや陳列台、複数人が座る長い腰掛けなどを指す。指小形 παγκάκι は、公園などにある「ベンチ」を指す語として一般的。
海事の文脈では、船の航行を妨げる砂地や岩場の浅瀬を指すこともある。この意味もイタリア語 banco の「浅瀬、砂州」に対応している。
関連語は、τραπέζι(テーブル)、πάγκος κουζίνας(キッチンカウンター)、πάγκος εργασίας(作業台)、πάγκος πωλητή(売り手の台)、παγκάκι(ベンチ)など。
ギリシャ語:παγκόσμιος
読み方:パゴズミオス・パゴーズミオス・パンゴズミオス・パンゴーズミオス
ラテン文字:pagkosmios
古代ギリシャ語の παγκόσμιος(全世界の、宇宙全体の)に由来。παγκόσμιος は、古代ギリシャ語の πᾶς(すべての)の連結形 παν- が κ の前で παγ- になり、κόσμος(世界、宇宙)と結びついた形。
πᾶς は印欧祖語で「すべて」を表す語に、κόσμος は「整える、秩序づける」を表す語根にさかのぼる。κόσμος が「秩序ある全体」として宇宙や世界を指すため、παγκόσμιος は「世界全体に関わる」「宇宙全体に関わる」という意味になる。
宇宙や物理の「万有の、宇宙全体の」という意味は、フランス語 univers(宇宙、全体)に対応する意味借用としても用いられる。παγκόσμια έλξη は「万有引力」、ο νόμος της παγκόσμιας έλξης は「万有引力の法則」を指す。
副詞に παγκοσμίως / παγκόσμια(世界的に、世界中で)がある。近い語に διεθνής(国際的な)があるが、διεθνής は国と国の間の関係を言うのに対し、παγκόσμιος は世界全体の規模や広がりを言う。関連語に κόσμος(世界、宇宙)、σύμπαν(宇宙、全体)、παγκοσμιοποίηση(グローバル化)など。
ギリシャ語:παγόνι
読み方:パゴニ・パゴーニ
ラテン文字:pagoni
ヘレニズム期ギリシャ語の πάων(ラテン語 pavo からの借用)の指小形である中世ギリシャ語の παόνιον に由来。母音の連続を避けるために [γ] が挿入されて παγόνι となった。または、古イタリア語の pagone(< ラテン語 pavo)を経由したとする説もある。
キジ目の中で最も体が大きく、鮮やかで光沢のある多色の羽毛と長い尾羽を持つ鳥を指す。オスは繁殖期の求愛行動として、美しい尾羽を扇状に広げて誇示する。
英語の peacock とはラテン語 pavo を通じて語源を共有する。peacock の pea- は古英語 pēa を経てラテン pavo に遡る部分。
Ταώς(くじゃく座)の名は古代ギリシャ語の ταώς(クジャク)から来ており、こちらは別系統の語。
異綴りに παγώνι(オメガ)があり、Wiktionary などはこちらを主見出しに採る。発音は同じ [paγóni]。
ギリシャ語:παγώνω
読み方:パゴノ・パゴーノ
ラテン文字:pagono
中世ギリシャ語 παγώνω を継承。
古代ギリシャ語 παγῶ(凍る、固まる)が中世に παγώνω の形に整えられて受け継がれた。πάγος(霜、氷、硬いもの)と同じく「固まる」を核とする語群で、もとは液体が冷えて氷に変わることを表した。
「恐怖や驚きで体が凍りつく、動けなくなる」という比喩的な用法は、フランス語 geler、glacer、英語 freeze からの意味借用で近代に広まった。
派生語に παγωνιά(厳しい寒さ、凍てつき)、παγωμένος(凍った、冷えた)、παγωτό(アイスクリーム)、ξεπαγώνω(解凍する)などがある。共通の語源を持つ関連語に πάγος(氷)などがある。
ギリシャ語:παγωτό
読み方:パゴト・パゴトー
ラテン文字:pagoto
古代ギリシャ語 πάγος(氷)に形容詞・分詞語尾 -ωτός(〜化された、〜状態の)の中性形 -ωτόν をつけて παγωτόν の形をカサレヴサ(公用語的な文語体)が新たに造り出した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。意味の組み立てはイタリア語 gelato(凍ったもの、動詞 gelare「凍らせる」の過去分詞由来)の構造をそのまま訳し移した翻訳借用(μεταφραστικό δάνειο)でもある。
純然たる外来語を避け、ギリシャ語内部の素材で造語するカサレヴサ運動の方針のもとで παγωτόν が定着した。同じ πάγος から動詞 παγώνω(凍らせる、凍る), 形容詞 παγωμένος(凍った、冷えた), 名詞 παγετός(霜、極寒), παγωνιά(厳しい寒さ、冷気)が派生する。
派生に παγωτατζής(アイスクリーム売り、口頭で使う形), παγωτομηχανή(アイスクリーム製造機)。関連の凍菓を表す語に γρανίτα(グラニータ、シャーベット状の凍菓), παρφέ(パルフェ、フランス語 parfait からの借用)。
ギリシャ語:παιδί
読み方:ペディ・ペディー
ラテン文字:paidi
印欧祖語で「少ない, 幼い」を表す語根にさかのぼり, ラテン語 puer(子供)やサンスクリット putrá(息子)と同源の語族に連なる古代ギリシャ語 παῖς(子供, 少年)の指小形 παιδίον(小さな子)から, 中世ギリシャ語 παιδίν を経て今に至る継承。英語の接頭辞 ped(o)-(pedagogy「教育学」, pediatrics「小児科学」)はこの παῖς/παιδ- からラテン語・新ラテン語を経由して入った学術借用。
類義語に τέκνο(子、子女。公的・文芸の文脈で「子孫」のニュアンスを帯びる硬い形), βρέφος(乳児), μωρό(赤ちゃん), νεογέννητο(新生児)。派生に παιδάκι(小さな子、お子さん。指小形), παιδαρέλι(若造), παίδαρος(立派な体格の青年), παιδικός(子供の、子供らしい)。合成語に παιδότοπος(子供の遊び場), εκπαίδευση(教育), εκπαιδευτικός(教育の、教育関係者)。関連語に παιδεία(教育、教養), παίδευση(教育、鍛錬)。
ギリシャ語:παιδιά
読み方:ペディア・ペディアー
ラテン文字:paidia
動詞 παίζω(遊ぶ)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 παιδιά(遊び, 楽しみ)に由来。背景には παιδί の古い形 παῖς(子供)がある。現代ギリシャ語では書き言葉やスポーツ用語として残り, 話し言葉では παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ)がふつうに使われる。
同じ παῖς の語族に παιδί(子供), παίζω(遊ぶ, プレーする), παιχνίδι(遊び, ゲーム, おもちゃ), παιδικός(子供の, 子供じみた), 合成語 αθλοπαιδιά(球技, スポーツ), γυμνοπαιδίες(古代スパルタの少年競技)。
παιχνίδι が「遊び, ゲーム, おもちゃ」までまとめて受けるのに対し, παιδιά は εντός παιδιάς(プレー中), εκτός παιδιάς(プレー外)のような定型表現や, 組織的な競技を言うときに使うことが多い。英語 pedagogy, pediatric も παῖς を含むギリシャ語合成語から入った。
ギリシャ語:παιδικός
読み方:ペディコス・ペディコース
ラテン文字:paidikos
古代ギリシャ語 παιδικός(子供の、子供のための、← παῖς「子供」+ -ικός)を、近代以降に書き言葉から再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。「子供じみた、幼稚な」の蔑称的用法は、フランス語 infantile(幼児的な、未熟な)の意味用法を取り入れた意味借用(σημασιολογικό δάνειο)として加わった層。
源にある παιδί(子供、現代)の古代形 παῖς(属格 παιδός、子供、しもべ、奴隷の若者)は、印欧祖語の「子供、若者」を表す語根に由来し、ラテン語 puer(少年), paucus(少ない、若い)と関連する。同じ古代の παῖς から派生した重要語に παιδεία(教育、文化、← 古代以来「子供を育てる、人間を形成する」の意味で発達), παιδαγωγός(教師、← 「子供を導く者」), παιδιατρική(小児科), ορθοπαιδική(整形外科、← ὀρθο-「まっすぐ」+ παῖς), εγκυκλοπαίδεια(百科事典、← ἐν κύκλῳ παιδεία「全方位の教養」)など、近代ヨーロッパの教育・医学・学問の中核語彙に深く浸透している。
英語 pedagogy(教育学), pediatrics(小児科), encyclopedia(百科事典), orthopedics(整形外科), pedophilia(小児性愛)など、近代医学・教育の専門用語の語幹となっている。
派生・関連語族として παιδί(子供), παιδιά(子供たち、複数), παιδικά(子供らしく、副詞), παιδαριώδης(子供じみた), παιδιάστικος(幼稚な), παιδικός σταθμός(保育所、幼稚園), παιδική χαρά(遊び場、公園), παιδική ασθένεια(小児疾患), βρεφικός(乳児の), νηπιακός(幼児の), εφηβικός(思春期の), νεανικός(若者の)。類義語のうち παιδαριώδης / παιδιάστικος が「幼稚な、子供じみた」の蔑称的なニュアンスを強く持つのに対し、παιδικός は本来の「子供の」という客観的な用法が中心。
ギリシャ語:παίζω
読み方:ペゾ・ペーゾ
ラテン文字:paizo
印欧祖語で「少ない, 幼い」を表す語根にさかのぼる名詞 παῖς(子供)から派生した古代ギリシャ語の動詞 παίζω(子供らしくふるまう, 遊ぶ)を継承。現代の「相場が推移する」「メディアで流れる」などの意味はフランス語 jouer, 英語 play からの意味借用で整った。
同じ語根にラテン語 puer(少年), paucus(少ない), pauper(貧しい), 英語 few が並ぶ。英語には παῖς を直接含む合成語として pediatrics(小児科学、παῖς + ἰατρός), pedagogue(教育者、παῖς + ἀγωγός), encyclopedia(百科事典、ἐγκύκλιος παιδεία「全般の教育」から)がある。
派生に παιχνίδι(おもちゃ、遊び、試合、駆け引き), παίκτης(プレーヤー、選手), παίγνιο(遊び、もてあそび), εμπαίζω(あざける、ばかにする)。
ギリシャ語:παίκτης
読み方:ペクティス・ペークティス
ラテン文字:pektis
ギリシャ語:παίρνω
読み方:ペルノ・ペールノ
ラテン文字:pairno
中世ギリシャ語の παίρνω を継承。
古代ギリシャ語の ἐπαίρω(持ち上げる。ἐπί「〜に」+ αἴρω「持ち上げる」)に由来。語頭の弱い ε が脱落して現在の形になった。
非完結相(現在形 παίρνω、非完結過去形 έπαιρνα など)は παίρν- の語幹を使うが、完結相に切り替わると語幹が大きく変わって πάρ-/πήρ- になる(完結相過去 πήρα、完結相未来 θα πάρω、完結相命令 πάρε など)。これは、古代の ἐπαίρω の完結形 ἐπῆρα/ἐπάρω が、現在形と同じく ε- を脱落させて受け継がれた形。
ギリシャ語:παιχνίδι
読み方:ペフニディ・ペフニーディ
ラテン文字:paichnidi
中世ギリシャ語 παιγνίδι(< παιγνίδιον「小さな遊び、おもちゃ」、← 古代 παίγνιον「遊び、おもちゃ」の指小形)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。中世期に [γ > x] への音変化が動詞 παίχτης(プレーヤー、← 古代 παίκτης の中世形)からの類推(αναλογική επίδραση)で起こり、現代の標準綴り παιχνίδι が定着した。古い綴りを残した形 παιγνίδι もまれに口語に残る。
源にある古代の παίγνιον(遊び、おもちゃ、戯れ、見世物)は、動詞 παίζω(遊ぶ、戯れる、楽器を奏でる、演じる、← παῖς「子供」由来)の派生で、もとは「子供が遊ぶように戯れること、子供の遊び道具」を意味した。同じ語族からは παιχνιδιάρης(遊び好きの、いたずら好きの), παιδιά(遊び戯れ、書きことば), παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)が出ている。
源にある古代の παῖς(子供、息子、娘、奴隷の若者)は、印欧祖語の「子供、若い者」を表す語根に由来し、ラテン語 puer(少年、子供), 英語 few と関連する古層語。古代ギリシャ語の παῖς からは、古代以来の派生語族として、παιδί(子供、現代の継承形), παιδεία(教育、教養、書きことば), παιδαγωγός(教育者、← παῖς + ἄγω「導く」、英 pedagogue), παιδιατρική(小児科), パイドス(pedagogy, paedophilia などの語幹)が広く出ている、教育・子供に関する語彙の根幹をなす語族。
派生・関連語族として παιχνιδάκι(小さなおもちゃ、たやすいこと、指小形), παιχνιδιάρης(遊び好きの、いたずらっぽい、形容詞), παιχνιδίζω(戯れる、ふざける、動詞), παιχνιδίσματα(戯れごと、複数形), παίζω(遊ぶ、演奏する、演じる、動詞), παίκτης(プレーヤー、選手)。複合表現では ηλεκτρονικά παιχνίδια(電子ゲーム、← 英 video games の翻訳借用), παιχνίδι ρόλων(ロールプレイ、← 英 role-playing game), ομαδικό παιχνίδι(チームゲーム)のような近代造語が広く使われる。
意味の領域は古代以来一貫して幅広く、子供のおもちゃ、ルールのある遊びやゲーム、スポーツの試合、運任せの賭け事、人を振り回す駆け引き、政治の裏工作、光や色の戯れまで、「遊び」の意味の連続体として体系化されている。比喩用法も豊富で、παίζω διπλό παιχνίδι(二重スパイ的に振る舞う), παιχνίδι νεύρων(神経戦), τα παιχνίδια της τύχης(運命のいたずら)など、人間関係・政治・運命の語彙にも深く入り込んでいる。
ギリシャ語:παίχτης
読み方:ペフティス・ペーフティス
ラテン文字:pextis
παίκτης(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:παίχτρια
読み方:ペフトゥリア・ペーフトゥリア
ラテン文字:pextria
παίκτρια(プレーヤー、賭け事をする人、選手)の別綴り。kt が xt に変わった日常寄りの形で、意味は同じ。
ゲームの参加者、賭け事をする人、チーム競技の選手を指し、口語では「やり手」の意味にもなる。
ギリシャ語:παλάμη
読み方:パラミ・パラーミ
ラテン文字:palami
古代ギリシャ語の παλάμη(手のひら)を継承。ホメロスにすでに現れ、印欧祖語で「平たい、広い」を表す語根に続く。ラテン語 palma(手のひら、棕櫚)と語源を共有し、英語 palm, フランス語 paume はラテン語を経由して同じ語根に連なる。
同じ語根からギリシャ語内に πλατύς(広い), πλάγιος(斜めの), πλάξ(平板), πέλαγος(広い海原、外海)が派生。古英語 folm(手), 古アイルランド語 lám(手)も同じ語根に続く。
別形に απαλάμη(手のひら)。派生に παλαμάκια(拍手), παλαμίζω(手で触る、撫でる), παλαμοειδής(掌状の)。手全体は χέρι で、παλάμη は手首から指の付け根までの内側にかぎって使う。
ギリシャ語:παλτό
読み方:パルト・パルトー
ラテン文字:palto
イタリア語 palto(コート、外套)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。源にあるイタリア語 palto は、さらにフランス語 paletot(コート、外套、ガウン)の借用で、フランス語 paletot は中世フランス語 palletoque, palletot(外套、長い上着、← オランダ語 paltrok「巡礼者の長衣」, ← palt「ぼろ布」+ rok「上着」)にさかのぼる、ゲルマン語起源の中世の衣類語。
源にあるオランダ語 paltrok(巡礼者の長衣、ぼろぼろの長着)は、巡礼や旅人の上に羽織る簡素な長衣を指す中世西欧の衣類語で、フランス語に入った後、近代の都会的な「コート」のイメージへと意味の中心が移った。19 世紀のパリで paletot は男性の正式な外套として流行し、その語が地中海・ヨーロッパ各地に広まった経緯がある。
イタリア語 palto は、フランス語 paletot を音韻的に短縮した形で、イタリア語の音韻にあわせた借用形。ギリシャ語にはイタリア語経由で入り、現代ギリシャ語の不変化中性名詞 παλτό として定着した。同じパターンの不変化外来語として、κασκόλ(マフラー、← 仏 cache-col), μπαρ(バー), ταξί(タクシー、← 仏 taxi), μενύ(メニュー、← 仏 menu)が並び、近代以降のフランス語・イタリア語からの借用が中性で不変化扱いになる典型例。
ヨーロッパ各語の「コート」語彙では、英語 paletot(古語、現代では coat / overcoat が一般), ドイツ語 Paletot(古語), スペイン語 paletó(コート), ポルトガル語 paletó(ジャケット)が並走し、19 世紀フランスのファッション文化の遺産として、各国語に残っている。現代の英語では coat(コート、← 古フランス語 cote)が主流で、paletot は古風な響きを持つ。
派生・関連語族として παλτουδιά(厚手のコート、口語の増大形、← παλτό + -ουδιά), παλτό-βεστόνι(短めのコート風ジャケット、複合語), ζεστό παλτό(暖かいコート), βαρύ παλτό(重いコート), μάλλινο παλτό(ウールのコート), καμπαρντίνα(トレンチコート、← イタリア語 gabardina < 古フランス語)。
同じ防寒・上着の領域には、より重く正装的な マントー(μαντό、外套), 短めのジャケットの σακάκι(上着、ジャケット), スーツの κουστούμι(スーツ), トレンチコートの καμπαρντίνα(トレンチコート), セーターの πουλόβερ(プルオーバー、← 英 pullover), アノラックの ανοράκ(アノラック、← イヌイット語)が並び、形・用途・季節で言い分けられる。
ギリシャの冬の生活文化では、παλτό は χειμώνας(冬)の象徴的な衣類で、雪の少ないギリシャ南部でも 12–2 月の冷え込みに対応する必須アイテムとして位置づけられる。慣用句では Φόρεσε το παλτό σου(コートを着なさい)が母親や年長者の優しい注意の定型句として日常会話に頻出し、家族の気遣いと寒さの実用性が結びついた表現として機能する。
ギリシャ語:Παναγία
読み方:パナイア・パナイーア・パナギア・パナギーア
ラテン文字:panagia
ヘレニズム期ギリシャ語の Παναγία(すべて聖なる女性、聖母マリア)に由来。これは πανάγιος(すべて聖なる、きわめて聖なる)の女性形が名詞化した語である。πανάγιος は παν-(すべて、まったく)と άγιος(聖なる)からなる。
形としては Παναγία と Παναγιά がある。Παναγιά は、Παναγία の母音の連続が縮まった形で、呼びかけや慣用表現にもよく現れる。
キリスト教の文脈では、Χριστός(キリスト)の母である聖母マリアを指す呼び名として使われる。類義的な称号には Θεοτόκος(神を産んだ方、生神女)、Θεομήτωρ(神の母)、Παρθένος(乙女、処女)、Μεγαλόχαρη(大きな恵みを持つ方)などがある。
関連語には Χριστός(キリスト)、θεός(神)、ναός(神殿、聖堂、教会堂)、προσευχή(祈り)、θαύμα(奇跡)、ζώνη(帯)、φυλαχτό(お守り)など。指小形には Παναγίτσα、民間語的な形には Παναΐτσα がある。
ギリシャ語:Παναγιά
読み方:パナヤ・パナヤー
ラテン文字:panagia
Παναγία(聖母マリア、パナギア)の母音の連続が縮まった別形。意味の中心は同じで、呼びかけや慣用表現にも現れる。
ギリシャ語:πανάκεια
読み方:パナキア・パナーキア
ラテン文字:panakeia
古代ギリシャ語の παν-(すべて)と ἄκος(治療, 救済)からなる πανάκεια(万病を治す薬)を継承。神話ではパナケイア(Πανάκεια)が医神アスクレピオスの娘として万病を治す女神の名にもなる。現代の「万能の解決策」の比喩的用法はフランス語 panacée, 英語 panacea からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ἄκος の語族に ακέομαι(癒す), ακεσώδυνος(鎮痛の)。現代の日常で「治す, 治療する」は θεραπεύω が担い, ἄκος 語族は文語や古い医術文献に残る。
英語 panacea もラテン語 panacea を経て同じ語源。パナケイアの姉妹にはヒギエイア(Ὑγίεια, 健康の女神, 英語 hygiene の語源)もおり, アスクレピオスの娘たちは医術の各側面を司るとされる。
ギリシャ語:πανεπιστήμιο
読み方:パネピスティミオ・パネピスティーミオ
ラテン文字:panepistimio
近代以降に作られた学術借用+翻訳借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο + μεταφραστικό δάνειο)。古代ギリシャ語の素材 παν-(全部の、すべての)+ ἐπιστήμη(学問、知識)+ -ιον 場所接尾辞 を組み合わせた構造で、中世ラテン語 universitas(学者の連合体、大学)の翻訳借用として作られた近代造語。Tri は基となるヘレニズム期形容詞 πανεπιστήμων(万学に通じた、博識の)を出発点として記す。19 世紀のギリシャ独立後の近代教育制度の整備とともに、ヨーロッパの大学概念をギリシャ語の素材で表現する形で確立された語。
源にある古代の παν-(全部の、すべての、← πᾶς, πᾶσα, πᾶν「すべての」)は、印欧祖語の「すべて、全体」を表す語根に由来し、極めて生産的な造語要素として近代の国際造語要素 pan-(汎、全体的な)の語源となった:英語 panorama(パノラマ), pandemic(パンデミック), pantheon(パンテオン), pantomime(パントマイム), panacea(万能薬), pandemonium(大混乱)など、世界的な国際語の中核を成す造語要素の一つ。
源にある古代の ἐπιστήμη(属格 ἐπιστήμης、知識、科学、技能、← ἐπίσταμαι「知る、理解する、上に立って見る」)は、古代ギリシャ哲学の中核概念で、プラトン、アリストテレスの認識論の中心語:ἐπιστήμη(科学的知識、ロゴスに基づく確かな知)と δόξα(意見、信念、漠然とした知)を対置する古典的二分法は、現代の認識論・科学哲学の基礎概念。同じ語族からは現代まで広範な派生語族が継承される:επιστήμη(科学、学問), επιστήμων / επιστήμονας(科学者、学者), επιστημονικός(科学的な、学問的な), επιστημολογία(認識論、← 英 epistemology)。
中世ラテン語 universitas(連合体、組合、共同体)は、もとは「全体、団体、組合」を意味し、中世ヨーロッパで「学者と学生の組合」(universitas magistrorum et scholarium「教師と学生の連合」)として教育機関の意味が確立された。最古の大学とされるボローニャ大学(1088 年創立), パリ大学(1150 年頃), オックスフォード大学(1167 年), ケンブリッジ大学(1209 年), パドヴァ大学(1222 年)の系譜が、近代の大学制度の起源となる。
ギリシャの近代大学の歴史は、ギリシャ独立(1830 年)後の 1837 年に最初のアテネ国立カポディストリアン大学(Εθνικό και Καποδιστριακό Πανεπιστήμιο Αθηνών、最初の名は Othonian University)が設立されたことに始まる。その後、テッサロニキのアリストテレス大学(1925 年), パトラス大学(1964 年), クレタ大学(1973 年), ヨアニナ大学(1970 年)など、各地に近代大学が設立され、現代ギリシャの高等教育制度の中核を成している。
派生・関連語族として πανεπιστημιακός(大学の、形容詞), πανεπιστημιακή κοινότητα(大学共同体), πανεπιστημιακή έδρα(大学講座), πανεπιστημιακό αμφιθέατρο(大講堂), πανεπιστημιούπολη(大学キャンパス、← πανεπιστήμιο + -ούπολη), φοιτητής(学生、男性形), φοιτήτρια(学生、女性形), καθηγητής(教授), σχολή(学部), τμήμα(学科), πτυχίο(学士号), μεταπτυχιακό δίπλωμα(修士号), διδακτορικό(博士号)。
ギリシャの大学制度では、ESHE(Ελληνικό Σύστημα Ανώτατης Εκπαίδευσης「ギリシャ高等教育システム」)の中で、ΑΕΙ(Ανώτατα Εκπαιδευτικά Ιδρύματα「最高教育機関」, 大学)と ΤΕΙ(Τεχνολογικά Εκπαιδευτικά Ιδρύματα「技術教育機関」, 旧高等専門学校、現在は ΑΕΙ に統合)の二系統が、近代以降のギリシャ高等教育の中核を成してきた。EU のボローニャ・プロセス(1999 年以降の高等教育の国際標準化)に従って、現在は学士・修士・博士の三段階の学位体系が整備されている。
近代国際社会の知の中核機関として、πανεπιστήμιο はギリシャの文化・科学・経済・社会の発展の中核を担う、近代国家の象徴的な制度として位置づけられる。古代ギリシャの ἐπιστήμη(科学的知識)の概念が、中世ヨーロッパの universitas(学者連合)を経て、近代の大学制度として再活性化された、概念史の典型例。
ギリシャ語:πανηγύρι
読み方:パニイリ・パニイーリ・パニギリ・パニギーリ
ラテン文字:panigyri
中世ギリシャ語の πανηγύρι(ν) を継承。
古代ギリシャ語の πανήγυρις(みんなの集まり、祭典)に由来。これは πᾶς(すべての)と ἄγυρις(集まり。ἀγείρω「集める」より)を合わせて作られた語。
中世の πανηγύριον が音変化を経て現在の形になった。
派生語には πανηγυρίζω(祝う、はしゃぐ)や πανηγυρισμός(祝賀)などがある。関連語として πανηγυρικός(祝典の、讃辞)なども挙げられる。
ギリシャ語:πανικός
読み方:パニコス・パニコース
ラテン文字:panikos
古代ギリシャ語の形容詞 πανικός(牧神パンに関する、パンの)を、近代以降に書き言葉から再導入し、名詞化して「突然の制御不能な恐怖、パニック」の意味で使うようになった学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。
源にある古代の πανικός は、ギリシャ神話の Πάν(パン、半人半獣の牧神、山野・牧畜の神)の名前から派生した形容詞で、文字どおり「パンの、パンに関する」を意味した。古代ギリシャ・ローマでは、山や谷で聞こえる原因不明の物音、家畜が突然恐怖に駆られて逃げ惑う現象などを、パン神の仕業に帰す信仰があり、πανικὸς φόβος(パンの恐怖、原因のわからない突発的な恐怖)の表現が定着した。やがて形容詞 πανικός 単独で「パン神由来の恐怖、突発的・集団的な恐怖」を指す名詞として使われるようになり、近代以降の心理学・社会学・経済学の用語として国際的に広まった。
ラテン語 panicus を経て、英語 panic, panicky, フランス語 panique, ドイツ語 Panik, イタリア語 panico, スペイン語 pánico など、ヨーロッパ各語の「パニック」関連語彙の源となった。現代ではパニック障害(διαταραχή πανικού), パニック発作(κρίση πανικού), パニック・ボタン(μπουτόν πανικού), モラル・パニック(ηθικός πανικός)など、心理学・医学・社会学の専門用語として広く用いられる。
派生・関連語族として πανικοβάλλω(パニックに陥れる), πανικόβλητος(パニックに襲われた、慌てふためいた), πανικοβάλλομαι(パニックに陥る)。類義語に τρόμος(恐怖、より個人的・持続的), φρίκη(戦慄、おぞましさ), αγωνία(不安、苦悶)。πανικός は集団的・突発的・制御不能なニュアンスに焦点があり、原因が漠然としていて理性的な対処が困難な恐怖状態を指す中心語。
ギリシャ語:πανσές
読み方:パンセス・パンセース
ラテン文字:panses
フランス語 pensée(パンジー、思想、考え)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。借用の過程で、フランス語の女性形 pensée を、ギリシャ語の男性名詞語尾 -ές(μενεξές「スミレ」のような他のフランス・トルコ語起源の花の名前のパターン)に整えて、πανσές の形に定着した。
源にあるフランス語 pensée(思想、考え、パンジー)は、ラテン語 pensāre(考える、よく考える、← pendō「秤にかける」)の動詞由来名詞で、「思想、考え」と「パンジーの花」の二つの意味を持つ多義語。「パンジー」の名前の由来は、フランスの民間伝承で、この花の独特の顔のような花弁の模様が「物思いに沈む人の顔」を連想させることから「pensée(考え、物思い)」と呼ばれるようになった、という解釈が広く知られる。シェイクスピアの『ハムレット』第 4 幕第 5 場でオフィーリアが「ローズマリー、これは思い出のため。お願い、覚えていてね、最愛の人。それからパンジー、これは考えのため」(And there is pansies, that's for thoughts)と語る有名な場面でも、英語 pansy の語源が pensée(考え)に由来することが暗示されている。
ヨーロッパ各語の「パンジー」語彙は、すべてフランス語 pensée 系の系譜:英語 pansy(← 古フランス語 pensee, 16 世紀), スペイン語 pensamiento(パンジー、思想), イタリア語 viola del pensiero(思想のスミレ), ドイツ語 Stiefmütterchen(小さな継母、別系統だが面白い民間語源)が並ぶ。「考える花」の比喩がヨーロッパ各語で共有されている、文化的な命名の典型例。
植物学的には Viola tricolor var. hortensis(ガーデンパンジー、Viola × wittrockiana)で、スミレ科(Violaceae)の Viola 属の園芸品種。野生のヨーロッパ原産のサンシキスミレ(Viola tricolor)から、19 世紀初頭にイギリスで交配・選抜されて作られた近代の園芸品種で、大きな花びらと多様な色彩(紫、黄、白、青、ピンク、赤、黒、混色)が特徴。世界で最も人気のある園芸花の一つとして、春・秋の花壇・鉢植え・寄せ植えの中核を担う。
派生・関連語族として πανσέδες(複数形), πανσές μωβ(紫のパンジー), πανσές πολύχρωμος(多色のパンジー), πανσές κίτρινος(黄色のパンジー), φυτεύω πανσέδες(パンジーを植える), πανσέ (女性名) など、ギリシャの女性名(パンセ)としても使われる。
近い概念として、より小型のスミレ族の βιολέτα(スミレ、← 伊 violetta), μενεξές(スミレ、← トルコ語), ίον(スミレ、書きことばの古典形)が並走する。πανσές はパンジー(園芸品種、大きな花), βιολέτα は野生のスミレ(小さな花、香りが良い), μενεξές はトルコ・東地中海の伝統的なスミレの呼称、と棲み分けがある。
ギリシャの園芸文化では、πανσέδες は秋から春にかけての主要な花壇・鉢植えの花として、家庭・公園・市役所の街路装飾で広く使われる。色彩豊かな模様(特に「猫の顔」「子供の顔」のような特徴的な花弁の模様)が、子供にも親しまれる愛らしい花として、贈答・誕生日・春の象徴の中核を担う。
文学・詩・象徴の領域では、フランス語 pensée の二重の意味から、πανσές は「思いを伝える花」「物思いに沈む花」「思い出の花」のロマンティックな象徴として、特に春の出会いと別れの場面で文学的モチーフとして使われる、感性豊かな語。

中性名詞
施設・建物
道具
住居
仕事
地形 
形容詞
社会
宇宙
物理
スポーツ 
動物
鳥 
水
温度 
天気
動詞 
食べ物 
玩具
余暇 
人間関係
家族
人 
年齢
性格 
音楽 
動作 
身体・健康
数量 
衣類
季節
冬 
信仰・神話 
神秘 

喜び・楽しさ 
恐怖 
植物
花