ギリシャ語読み索引: ハ
ハ から始まる単語 64 語。
ハ から始まる単語 64 語。
ギリシャ語:παγκόσμιος
読み方:パゴズミオス・パゴーズミオス・パンゴズミオス・パンゴーズミオス
ラテン文字:pagkosmios
古代ギリシャ語の παγκόσμιος(全世界の、宇宙全体の)に由来。παγκόσμιος は、古代ギリシャ語の πᾶς(すべての)の連結形 παν- が κ の前で παγ- になり、κόσμος(世界、宇宙)と結びついた形。
πᾶς は印欧祖語で「すべて」を表す語に、κόσμος は「整える、秩序づける」を表す語根にさかのぼる。κόσμος が「秩序ある全体」として宇宙や世界を指すため、παγκόσμιος は「世界全体に関わる」「宇宙全体に関わる」という意味になる。
宇宙や物理の「万有の、宇宙全体の」という意味は、フランス語 univers(宇宙、全体)に対応する意味借用としても用いられる。παγκόσμια έλξη は「万有引力」、ο νόμος της παγκόσμιας έλξης は「万有引力の法則」を指す。
副詞に παγκοσμίως / παγκόσμια(世界的に、世界中で)がある。近い語に διεθνής(国際的な)があるが、διεθνής は国と国の間の関係を言うのに対し、παγκόσμιος は世界全体の規模や広がりを言う。関連語に κόσμος(世界、宇宙)、σύμπαν(宇宙、全体)、παγκοσμιοποίηση(グローバル化)など。
ギリシャ語:παγωτό
読み方:パゴト・パゴトー
ラテン文字:pagoto
古代ギリシャ語 πάγος(氷)に形容詞・分詞語尾 -ωτός(〜化された、〜状態の)の中性形 -ωτόν をつけて παγωτόν の形をカサレヴサ(公用語的な文語体)が新たに造り出した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。意味の組み立てはイタリア語 gelato(凍ったもの、動詞 gelare「凍らせる」の過去分詞由来)の構造をそのまま訳し移した翻訳借用(μεταφραστικό δάνειο)でもある。
純然たる外来語を避け、ギリシャ語内部の素材で造語するカサレヴサ運動の方針のもとで παγωτόν が定着した。同じ πάγος から動詞 παγώνω(凍らせる、凍る), 形容詞 παγωμένος(凍った、冷えた), 名詞 παγετός(霜、極寒), παγωνιά(厳しい寒さ、冷気)が派生する。
派生に παγωτατζής(アイスクリーム売り、口頭で使う形), παγωτομηχανή(アイスクリーム製造機)。関連の凍菓を表す語に γρανίτα(グラニータ、シャーベット状の凍菓), παρφέ(パルフェ、フランス語 parfait からの借用)。
ギリシャ語:παγόνι
読み方:パゴニ・パゴーニ
ラテン文字:pagoni
ヘレニズム期ギリシャ語の πάων(ラテン語 pavo からの借用)の指小形である中世ギリシャ語の παόνιον に由来。母音の連続を避けるために [γ] が挿入されて παγόνι となった。または、古イタリア語の pagone(< ラテン語 pavo)を経由したとする説もある。
キジ目の中で最も体が大きく、鮮やかで光沢のある多色の羽毛と長い尾羽を持つ鳥を指す。オスは繁殖期の求愛行動として、美しい尾羽を扇状に広げて誇示する。
英語の peacock とはラテン語 pavo を通じて語源を共有する。peacock の pea- は古英語 pēa を経てラテン pavo に遡る部分。
Ταώς(くじゃく座)の名は古代ギリシャ語の ταώς(クジャク)から来ており、こちらは別系統の語。
異綴りに παγώνι(オメガ)があり、Wiktionary などはこちらを主見出しに採る。発音は同じ [paγóni]。
ギリシャ語:παγώνω
読み方:パゴノ・パゴーノ
ラテン文字:pagono
中世ギリシャ語 παγώνω を継承。
古代ギリシャ語 παγῶ(凍る、固まる)が中世に παγώνω の形に整えられて受け継がれた。πάγος(霜、氷、硬いもの)と同じく「固まる」を核とする語群で、もとは液体が冷えて氷に変わることを表した。
「恐怖や驚きで体が凍りつく、動けなくなる」という比喩的な用法は、フランス語 geler、glacer、英語 freeze からの意味借用で近代に広まった。
派生語に παγωνιά(厳しい寒さ、凍てつき)、παγωμένος(凍った、冷えた)、παγωτό(アイスクリーム)、ξεπαγώνω(解凍する)などがある。共通の語源を持つ関連語に πάγος(氷)などがある。
ギリシャ語:Πάσχα
読み方:パスハ・パースハ
ラテン文字:pascha
ヘレニズム期ギリシャ語 Πάσχα(過越祭、← ヘブライ語 פֶּסַח pesah「過越、過越祭」, アラム語 פִּסְחָא pisḥā)からギリシャ語に入った外来借用(δάνειο)。紀元前 3 世紀の七十人訳聖書(Septuagint)でユダヤ教の過越祭の名前として翻訳・取り入れられて以来、ギリシャ語のキリスト教文化の中核を成す宗教用語として現代まで継承されている。
源にあるヘブライ語 pesah は、動詞 פָּסַח pasaḥ(過ぎ越す、跳び越える)の派生で、出エジプト記 12 章のエジプトの初子皆殺しの夜に、ユダヤ人の家を「過ぎ越した」(pasaḥ)出来事に由来する祭の名。ユダヤ教の最重要祭の一つで、エジプトからの解放と神との契約を記念する春の祭りとして、現在もユダヤ教徒によって祝われている。
新約聖書のギリシャ語では Πάσχα が、最初はユダヤ教の過越祭を指していたが、キリスト教の発展とともに「キリストの受難と復活」と過越祭の象徴的な結びつきが強調され、4 世紀のニカイア公会議(325 年)でキリスト教の復活祭の名前として正式に採用された。「キリストは我らの過越」(Παντὶ καιρῷ καὶ πάσῃ ὥρᾳ Πάσχα Χριστὸς ἡμῶν, パウロ、コリント前書 5:7)の神学的解釈が、この語の意味の中心移動の根拠となった。
ヨーロッパ各語の「復活祭」語彙では、ラテン語 Pascha(イースター)が、フランス語 Pâques, スペイン語 Pascua, イタリア語 Pasqua, ポルトガル語 Páscoa, ドイツ語 Ostern(別系統、ゲルマンの春の女神 Ēostre 由来), 英語 Easter(同じくゲルマン語起源)として広まり、ロマンス諸語と東方教会・正教会では Pascha 系、ゲルマン諸語では Ostern / Easter 系という二つの系譜が並走する。
派生・関連語族として πασχάζω(過越祭・復活祭を祝う、書きことば), πασχαλιά(復活祭、口語、← μσν. πασχαλία), πασχαλινός(復活祭の、形容詞), πασχαλιάτικος(復活祭向きの、復活祭の時期の、口語), πασχάλιος(復活祭の、書きことば), πασχαλίτσα(てんとう虫、口語、← パスハに飛ぶ虫の意), Λαμπρή(復活祭の口語形、← λαμπρός「輝かしい」、復活祭の祝いの「輝き」を強調)。
ギリシャの東方正教会では、復活祭は最大の宗教行事で、独特の慣習と祝祭文化を持つ:聖週間(Μεγάλη Εβδομάδα), 聖金曜日(Μεγάλη Παρασκευή)の Επιτάφιος 行列, 復活の夜(土曜深夜から日曜未明)の Ανάσταση 礼拝、復活の蝋燭(λαμπάδα), 赤い卵(κόκκινα αβγά), 子羊の丸焼き(αρνί στη σούβλα), 復活祭のパン(τσουρέκι)など、宗教・食・家族・地域共同体が一体となった祭典として祝われる。
挨拶では、復活祭前後に Καλό Πάσχα(よい復活祭を), Χριστός Ανέστη!(キリストは復活された!), Αληθώς ανέστη!(まことに復活された!)が交わされ、宗教文化と日常生活が密接に結びついた語として機能する。
ギリシャ語:πασχαλιά
読み方:パスハリャ・パスハリャー
ラテン文字:paschalia
ギリシャ語:μπάσο
読み方:バソ・バーソ
ラテン文字:baso
ギリシャ語:βάζω
読み方:バゾ・バーゾ・ヴァゾ・ヴァーゾ
ラテン文字:vazo
中世ギリシャ語の βάζω を継承。
古代ギリシャ語の動詞 βιβάζω(上げる、乗せる)が音変化を経た形で、βιβάζω は βαίνω(行く、進む)から作られた使役形。
完結相過去形 έβαλα は別系統。古代の βάλλω(投げる、置く)に由来し、非完結相と完結相で語源の異なる語幹が組み合わさっている。
ギリシャ語:πανταλόνι
読み方:パダロニ・パダローニ・パンダロニ・パンダローニ
ラテン文字:pantaloni
παντελόνι の別綴り。意味は同じ。
ギリシャ語:πατίνι
読み方:パティニ・パティーニ
ラテン文字:patini
イタリア語 pattino からの借用。もとはフランス語 patin(スケート、滑走具)から入り、さらに patte(足、足先)に由来する。
ギリシャ語ではイタリア語の複数形 pattini が中性単数のように受け取られて πατίνι になったとされる。-ίνι で終わる他のイタリア語借用語に引かれて、強勢が最後から2番目に置かれた可能性もある。
関連語に τροχοπέδιλο(ローラースケート)や παγοπέδιλο(アイススケート)など。連語に ηλεκτρικό πατίνι(電動キックボード)。成句 κάνω τη ζωή κάποιου πατίνι は、相手をひどく振り回す意味で使われる。
ギリシャ語:πατέρας
読み方:パテラス・パテーラス
ラテン文字:pateras
古代ギリシャ語 πατήρ(父、属格 πατρός、対格 πατέρα)の対格 πατέρα を主格として再形成し、中世ギリシャ語 πατέρας を経て現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。印欧祖語の「父」を表す語根に由来する根源語の一つで、ラテン語 pater, 英語 father, ドイツ語 Vater, サンスクリット pitár- など、印欧語族の「父」語彙はみな同じ語根に属する。
英語 paternal(父方の), paternity(父性、父子関係), patriarch(家長、総主教), patronage(後援、庇護)は πατήρ 由来のラテン語系統経由で広まったもの。「医学の父 ヒポクラテス」のように学問・運動の創始者を指す比喩用法は、フランス語 père からの意味借用(σημασιολογικό δάνειο)。
派生に πατερούλης(お父ちゃん、親愛の指小形), πατρικός(父親の、父方の), πατερικός(教父の、教父学の), πατρότητα(父性), πατριά(一族、種族), πατρίδα(祖国、πατήρ + 接尾辞 -ίδα)。類義語に μπαμπάς(パパ、お父さん。家庭の中で使う親しみのある語), γενάρχης(一族の祖、開祖。書きことばの語), ιδρυτής(創始者、設立者。客観的な創設者を指す)。πατέρας はこれらの中で標準的・社会的な「父親」の語として広く用いる。
ギリシャ語:παντελόνι
読み方:パデロニ・パデローニ・パンデロニ・パンデローニ
ラテン文字:panteloni
παντελόνι は、古代ギリシャ語の人名 Πανταλέων(パンタレオン)に由来するヴェネツィア方言の Pantalone を遠い起点に持つ。Pantalone はイタリア喜劇 commedia dell'arte の登場人物で、特徴的な長ズボンをはいていたことから、まずフランス語の pantalon が衣類名として定着した。そこからイタリア語の複数形 pantaloni が広まり、ギリシャ語ではその形が中性単数として取り入れられて παντελόνι になった。
別綴りに πανταλόνι(ズボン、パンツ) があり、こちらは借用元に近い母音を保つ形。指小語 παντελονάκι(小さなズボン、短めのズボン)は、小さなズボンや短めのズボンを言うときに使う。
ρούχο(布製品、服、衣類) の中でも、左右の脚を別々に包み、腰で留めて下半身を覆う衣類を指す。素材や形、用途に応じた複合表現が多く、ふだん着から乗馬用、迷彩柄のものまで広く言える。
主な意味は「ズボン、パンツ」。革、コーデュロイ、ジーンズのように素材で言い分けたり、καμπάνα(ベルボトム、裾広がり)や σωλήνας(パイプ型、細身)のようにシルエットで種類を言い分けたりする。裾の筒、折り返し、ポケットなど各部位の話にもそのまま使う。
ギリシャ語:Παναγία
読み方:パナイア・パナイーア・パナギア・パナギーア
ラテン文字:panagia
ヘレニズム期ギリシャ語の Παναγία(すべて聖なる女性、聖母マリア)に由来。これは πανάγιος(すべて聖なる、きわめて聖なる)の女性形が名詞化した語である。πανάγιος は παν-(すべて、まったく)と άγιος(聖なる)からなる。
形としては Παναγία と Παναγιά がある。Παναγιά は、Παναγία の母音の連続が縮まった形で、呼びかけや慣用表現にもよく現れる。
キリスト教の文脈では、Χριστός(キリスト)の母である聖母マリアを指す呼び名として使われる。類義的な称号には Θεοτόκος(神を産んだ方、生神女)、Θεομήτωρ(神の母)、Παρθένος(乙女、処女)、Μεγαλόχαρη(大きな恵みを持つ方)などがある。
関連語には Χριστός(キリスト)、θεός(神)、ναός(神殿、聖堂、教会堂)、προσευχή(祈り)、θαύμα(奇跡)、ζώνη(帯)、φυλαχτό(お守り)など。指小形には Παναγίτσα、民間語的な形には Παναΐτσα がある。
ギリシャ語:πανάκεια
読み方:パナキア・パナーキア
ラテン文字:panakeia
古代ギリシャ語の παν-(すべて)と ἄκος(治療, 救済)からなる πανάκεια(万病を治す薬)を継承。神話ではパナケイア(Πανάκεια)が医神アスクレピオスの娘として万病を治す女神の名にもなる。現代の「万能の解決策」の比喩的用法はフランス語 panacée, 英語 panacea からの意味借用で輪郭が整った。
同じ ἄκος の語族に ακέομαι(癒す), ακεσώδυνος(鎮痛の)。現代の日常で「治す, 治療する」は θεραπεύω が担い, ἄκος 語族は文語や古い医術文献に残る。
英語 panacea もラテン語 panacea を経て同じ語源。パナケイアの姉妹にはヒギエイア(Ὑγίεια, 健康の女神, 英語 hygiene の語源)もおり, アスクレピオスの娘たちは医術の各側面を司るとされる。
ギリシャ語:μπανάνα
読み方:バナナ・バナーナ
ラテン文字:banana
英語 banana(バナナ)からの外来借用(δάνειο)(イタリア語 banana を経由した可能性も)。ウエストポーチ・電気部品・髪型の意味では、フランス語 banane を経た形でも使われる。
英語・スペイン語 banana のさらにルーツは、西アフリカのウォロフ語または同系の言語で「バナナ」を意味する語に由来し、大航海時代以降のヨーロッパ・新世界の貿易の中で広まった国際語。Tri は「アメリカ先住民の言語から」と注記するが、これは大西洋を渡って新世界の植民地経由で逆方向に流入したという誤解を反映する古い見解で、現代の言語学的な定説はアフリカ起源説。同じ語源から英語 banana, スペイン語 banana / plátano, ポルトガル語 banana, フランス語 banane, ドイツ語 Banane, イタリア語 banana など、ヨーロッパ各語の「バナナ」語彙が広まった。
果物の「バナナ」が中心義で、そこから「バナナ味の食品(μιλκ σέικ μπανάνα, παγωτό μπανάνα)」「細長い形状や黄色い色から連想される物(バナナボート、ウエストポーチ、バナナプラグ、バナナシニヨン)」など、多彩な比喩用法へ意味が広がっている。
派生・関連語族として μπανανιά(バナナの木、女性名詞), μπανανίτσα, μπανανούλα(小さなバナナ、指小形)。複合表現として μπανάνα σπλιτ(バナナスプリット), μπανάνα τσιπς(バナナチップス), δημοκρατία της μπανανίας(バナナ共和国、← 英 banana republic、政治的・経済的に不安定で外資依存の国を皮肉る表現)。類義語的にトロピカルフルーツの語族として πορτοκάλι(オレンジ), μάνγκο(マンゴー), ανανάς(パイナップル), ακτινίδιο(キウイ)が並ぶ。
ギリシャ語:Παναγιά
読み方:パナヤ・パナヤー
ラテン文字:panagia
Παναγία(聖母マリア、パナギア)の母音の連続が縮まった別形。意味の中心は同じで、呼びかけや慣用表現にも現れる。
ギリシャ語:πανηγύρι
読み方:パニイリ・パニイーリ・パニギリ・パニギーリ
ラテン文字:panigyri
中世ギリシャ語の πανηγύρι(ν) を継承。
古代ギリシャ語の πανήγυρις(みんなの集まり、祭典)に由来。これは πᾶς(すべての)と ἄγυρις(集まり。ἀγείρω「集める」より)を合わせて作られた語。
中世の πανηγύριον が音変化を経て現在の形になった。
派生語には πανηγυρίζω(祝う、はしゃぐ)や πανηγυρισμός(祝賀)などがある。関連語として πανηγυρικός(祝典の、讃辞)なども挙げられる。
ギリシャ語:πανικός
読み方:パニコス・パニコース
ラテン文字:panikos
古代ギリシャ語の形容詞 πανικός(牧神パンに関する、パンの)を、近代以降に書き言葉から再導入し、名詞化して「突然の制御不能な恐怖、パニック」の意味で使うようになった学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。
源にある古代の πανικός は、ギリシャ神話の Πάν(パン、半人半獣の牧神、山野・牧畜の神)の名前から派生した形容詞で、文字どおり「パンの、パンに関する」を意味した。古代ギリシャ・ローマでは、山や谷で聞こえる原因不明の物音、家畜が突然恐怖に駆られて逃げ惑う現象などを、パン神の仕業に帰す信仰があり、πανικὸς φόβος(パンの恐怖、原因のわからない突発的な恐怖)の表現が定着した。やがて形容詞 πανικός 単独で「パン神由来の恐怖、突発的・集団的な恐怖」を指す名詞として使われるようになり、近代以降の心理学・社会学・経済学の用語として国際的に広まった。
ラテン語 panicus を経て、英語 panic, panicky, フランス語 panique, ドイツ語 Panik, イタリア語 panico, スペイン語 pánico など、ヨーロッパ各語の「パニック」関連語彙の源となった。現代ではパニック障害(διαταραχή πανικού), パニック発作(κρίση πανικού), パニック・ボタン(μπουτόν πανικού), モラル・パニック(ηθικός πανικός)など、心理学・医学・社会学の専門用語として広く用いられる。
派生・関連語族として πανικοβάλλω(パニックに陥れる), πανικόβλητος(パニックに襲われた、慌てふためいた), πανικοβάλλομαι(パニックに陥る)。類義語に τρόμος(恐怖、より個人的・持続的), φρίκη(戦慄、おぞましさ), αγωνία(不安、苦悶)。πανικός は集団的・突発的・制御不能なニュアンスに焦点があり、原因が漠然としていて理性的な対処が困難な恐怖状態を指す中心語。
ギリシャ語:μπάνιο
読み方:バニョ・バーニョ
ラテン文字:banio
イタリア語 bagno(風呂、浴室、入浴)から中世末期から近世にかけて入った αντιδάνειο(返り借用)。イタリア語 bagno は後期ラテン語 bannium、古典ラテン語 balneum / ballineum を経て、源は古代ギリシャ語 βαλανεῖον(浴場、公衆浴場)にさかのぼる。すなわち古代ギリシャ語が古典ラテン語・後期ラテン語・イタリア語を回って現代ギリシャ語に戻ってきた、出発点と到着点が同じ言語にある対称的な経路を持つ語。
源にある古代の βαλανεῖον は古代ギリシャ・ローマ世界の公衆浴場(テルマエ)の語彙の一つで、βάλανος(どんぐり、栓、頭部の丸いもの、ペッサリーなど)の派生形と見られるが、語源的なつながりは確実ではない。古代の公衆浴場文化が古代ローマで balneum としてラテン化され、中世以降のヨーロッパに広まった。
ラテン語 balneum 由来の英語 balneology(浴用学、温泉療法の学問), balneotherapy(温泉療法)など、近代の温泉・療養文化の用語に痕跡を残している。
派生・関連語族として μπανάκι(小さなお風呂、ベビーバス、指小形), μπανιέρα(バスタブ、← イタリア語 bagnera), μπανιστήρι(覗き見、別系統だが同形), μπανιερό(水着), μπανιάρω(入浴させる、洗う)。類義語に λουτρό(風呂、書きことば、← 古代 λουτρόν「洗うこと」), ντους(シャワー、← フランス語 douche 経由)。「家での入浴・浴室」「海水浴・水浴び」「温泉場(複数形 μπάνια)」「水泳一般」と意味の射程が広く、夏のギリシャ生活文化の中心語の一つ。
ギリシャ語:πανεπιστήμιο
読み方:パネピスティミオ・パネピスティーミオ
ラテン文字:panepistimio
近代以降に作られた学術借用+翻訳借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο + μεταφραστικό δάνειο)。古代ギリシャ語の素材 παν-(全部の、すべての)+ ἐπιστήμη(学問、知識)+ -ιον 場所接尾辞 を組み合わせた構造で、中世ラテン語 universitas(学者の連合体、大学)の翻訳借用として作られた近代造語。Tri は基となるヘレニズム期形容詞 πανεπιστήμων(万学に通じた、博識の)を出発点として記す。19 世紀のギリシャ独立後の近代教育制度の整備とともに、ヨーロッパの大学概念をギリシャ語の素材で表現する形で確立された語。
源にある古代の παν-(全部の、すべての、← πᾶς, πᾶσα, πᾶν「すべての」)は、印欧祖語の「すべて、全体」を表す語根に由来し、極めて生産的な造語要素として近代の国際造語要素 pan-(汎、全体的な)の語源となった:英語 panorama(パノラマ), pandemic(パンデミック), pantheon(パンテオン), pantomime(パントマイム), panacea(万能薬), pandemonium(大混乱)など、世界的な国際語の中核を成す造語要素の一つ。
源にある古代の ἐπιστήμη(属格 ἐπιστήμης、知識、科学、技能、← ἐπίσταμαι「知る、理解する、上に立って見る」)は、古代ギリシャ哲学の中核概念で、プラトン、アリストテレスの認識論の中心語:ἐπιστήμη(科学的知識、ロゴスに基づく確かな知)と δόξα(意見、信念、漠然とした知)を対置する古典的二分法は、現代の認識論・科学哲学の基礎概念。同じ語族からは現代まで広範な派生語族が継承される:επιστήμη(科学、学問), επιστήμων / επιστήμονας(科学者、学者), επιστημονικός(科学的な、学問的な), επιστημολογία(認識論、← 英 epistemology)。
中世ラテン語 universitas(連合体、組合、共同体)は、もとは「全体、団体、組合」を意味し、中世ヨーロッパで「学者と学生の組合」(universitas magistrorum et scholarium「教師と学生の連合」)として教育機関の意味が確立された。最古の大学とされるボローニャ大学(1088 年創立), パリ大学(1150 年頃), オックスフォード大学(1167 年), ケンブリッジ大学(1209 年), パドヴァ大学(1222 年)の系譜が、近代の大学制度の起源となる。
ギリシャの近代大学の歴史は、ギリシャ独立(1830 年)後の 1837 年に最初のアテネ国立カポディストリアン大学(Εθνικό και Καποδιστριακό Πανεπιστήμιο Αθηνών、最初の名は Othonian University)が設立されたことに始まる。その後、テッサロニキのアリストテレス大学(1925 年), パトラス大学(1964 年), クレタ大学(1973 年), ヨアニナ大学(1970 年)など、各地に近代大学が設立され、現代ギリシャの高等教育制度の中核を成している。
派生・関連語族として πανεπιστημιακός(大学の、形容詞), πανεπιστημιακή κοινότητα(大学共同体), πανεπιστημιακή έδρα(大学講座), πανεπιστημιακό αμφιθέατρο(大講堂), πανεπιστημιούπολη(大学キャンパス、← πανεπιστήμιο + -ούπολη), φοιτητής(学生、男性形), φοιτήτρια(学生、女性形), καθηγητής(教授), σχολή(学部), τμήμα(学科), πτυχίο(学士号), μεταπτυχιακό δίπλωμα(修士号), διδακτορικό(博士号)。
ギリシャの大学制度では、ESHE(Ελληνικό Σύστημα Ανώτατης Εκπαίδευσης「ギリシャ高等教育システム」)の中で、ΑΕΙ(Ανώτατα Εκπαιδευτικά Ιδρύματα「最高教育機関」, 大学)と ΤΕΙ(Τεχνολογικά Εκπαιδευτικά Ιδρύματα「技術教育機関」, 旧高等専門学校、現在は ΑΕΙ に統合)の二系統が、近代以降のギリシャ高等教育の中核を成してきた。EU のボローニャ・プロセス(1999 年以降の高等教育の国際標準化)に従って、現在は学士・修士・博士の三段階の学位体系が整備されている。
近代国際社会の知の中核機関として、πανεπιστήμιο はギリシャの文化・科学・経済・社会の発展の中核を担う、近代国家の象徴的な制度として位置づけられる。古代ギリシャの ἐπιστήμη(科学的知識)の概念が、中世ヨーロッパの universitas(学者連合)を経て、近代の大学制度として再活性化された、概念史の典型例。
ギリシャ語:χάνω
読み方:ハノ・ハーノ
ラテン文字:chano

中性名詞
施設・建物 
水
温度 
形容詞
社会
宇宙
物理
スポーツ 
食べ物 
動物
鳥 
天気
動詞 
季節
春
信仰・神話
植物 
玩具 
音楽
道具
情報・メディア 
動作 
主食類
野菜 
衣類 
乗り物 
家族 


人 
身体・健康
神秘 
果物
余暇 

喜び・楽しさ 
恐怖 
住居 

勝敗