ギリシャ語:φόρος
読み方:フォロス・フォーロス
ラテン文字:foros
古代ギリシャ語の動詞 φέρω(運ぶ、もたらす)から派生した φόρος(貢ぎ、納付)に由来。共同体や支配者に差し出す納付物を古代から表した。現代の「税、税金」の意味は、フランス語 taxe、英語 tax からの意味借用で整えられた。
派生語に φορολογία(税制、課税), φοροδιαφυγή(脱税), αφορολόγητος(非課税の)。関連語に δασμός(関税)。
せ から始まる単語 61 語。
せ から始まる単語 61 語。
ギリシャ語:φόρος
読み方:フォロス・フォーロス
ラテン文字:foros
古代ギリシャ語の動詞 φέρω(運ぶ、もたらす)から派生した φόρος(貢ぎ、納付)に由来。共同体や支配者に差し出す納付物を古代から表した。現代の「税、税金」の意味は、フランス語 taxe、英語 tax からの意味借用で整えられた。
派生語に φορολογία(税制、課税), φοροδιαφυγή(脱税), αφορολόγητος(非課税の)。関連語に δασμός(関税)。
ギリシャ語:ιερό
読み方:イェロ・イェロー
ラテン文字:iero
古代ギリシャ語の形容詞 ἱερός(聖なる)の中性形 ἱερόν から。ἱερόν は「聖なるもの、聖なる場所」を指し、神殿や祭儀の場を意味した。
ἱερός は印欧祖語で「聖なる」を表す語根につながるとされる。現代ギリシャ語の ιερός(聖なる)もこの語を直接受け継いでいる。
キリスト教、とくに正教会では、聖堂の奥で司祭が奉神礼を行う ιερό βήμα / Άγιο Βήμα(至聖所)を指す。関連語に ναός(神殿、聖堂)、άδυτο(内陣)、άβατο(立ち入り禁止の場所)など。
英語 hierarchy は古代ギリシャ語 ἱεραρχία(聖職者の序列)に由来。hieroglyph の hiero- も、同じ ἱερός に由来する。
ギリシャ語:ακριβής
読み方:アクリヴィス・アクリヴィース
ラテン文字:akrivis
古代ギリシャ語の ἀκριβής(正確な、厳密な)に由来。
同じ語から副詞 ακριβῶς が作られ、今の ακριβώς(正確に、ちょうど、まさに)につながった。
現代ギリシャ語の会話では相手の言ったことを受けて「その通り」と答える相槌などでも使われる。
ギリシャ語:ψαλμωδία
読み方:プサルモディア・プサルモディーア
ラテン文字:psalmodia
古代ギリシャ語の ψαλμῳδία(竪琴の伴奏に合わせた歌)に由来。ψαλμός(竪琴の伴奏付きの歌, 賛美歌)と ᾠδή(歌)からできた語で, 聖書翻訳とキリスト教典礼を通じて詩篇や聖歌の詠唱を指すようになった。現代ギリシャ語の用法は, フランス語 psalmodie, 英語 psalmody の意味配置と重なって整った。
英語 psalmody, フランス語 psalmodie はラテン語 psalmodia を経て同じ語源。ψαλμός と ᾠδός(歌い手)からできた並行する合成語 ψαλμωδός(詩篇歌い, 詠唱者)も同じ語族。派生に ψαλμωδικός(詠唱の), ψαλμωδώ(詠唱する)。
ύμνος(賛美歌, 賛歌)や άσμα(歌)は世俗の歌も指すのに対し, ψαλμωδία は教会の典礼で歌う場面に使うことが多い。
ギリシャ語:αιώνας
読み方:エオナス・エオーナス
ラテン文字:aionas
古代ギリシャ語の αἰών(一生, 生涯, 永劫)を継承。
同じ語族に αιώνιος(永遠の), αιωνιότητα(永遠性), διαιωνίζω(永続させる), μεσαίωνας(中世), μεσαιωνικός(中世の), προαιώνιος(太古の)。
英語 eon, aeon(永劫)もラテン語経由で同じ語源。
類義語の εκατονταετία がきっかり100年の長さを指すのに対し, αιώνας は時代区分や「ひどく長い時間」の比喩にも使う。
ギリシャ語:μητρόπολη
読み方:ミトゥロポリ・ミトゥローポリ
ラテン文字:mitropoli
ヘレニズム期および中世ギリシャ語 μητρόπολις(母都市、府主教座、管区)が現代まで続く意味の層と、近代以降に書きことばから再導入された学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)の層、さらにフランス語 métropole の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の層が重なる、多層構造の語。基本的な「母都市・正教会の管区」の意味は古代ギリシャ語からの継承(κληρονομιά)で、「巨大都市・宗主国」の現代的意味は近代に仏 métropole から取り入れた拡張用法。
源にある古代の μητρόπολις(母都市)は、μήτηρ(母)と πόλις(都市、市民共同体)の合成語で、古代ギリシャ世界で植民都市(αποικία)を建設した母体となる本国の都市国家を指した。コリント、ミレトス、メガラのような植民活動を行った都市国家が「μητρόπολις」と呼ばれ、植民地の側はそれに対する「子都市」と位置づけられた。古代ギリシャの植民活動の語彙の中核を成す概念。
中世以降は、東方正教会の組織用語として取り入れられ、総主教(πατριάρχης)の下にある府主教(μητροπολίτης)が統括する管区を意味するようになった。「母なる都市」の比喩から、「中心となる教会組織を持つ街」「府主教の座所のある街」へと意味が転じ、現代ギリシャ語でも正教会の組織用語として生きている。管区の中心にある大聖堂(μητροπολιτικός ναός)や、府主教の官邸(μητροπολιτικό μέγαρο)も同じ語で呼ばれる。
源にある μήτηρ(母)は印欧祖語の「母」を表す語根に由来し、ラテン語 mater, サンスクリット mātṛ-, 英語 mother, ドイツ語 Mutter と同族。ギリシャ語の派生語族には μητέρα(母、現代の継承形), μητρικός(母の、母性の), μητριά(継母), μητρότητα(母性), μητρόπολη(大都市、母都市)が出ており、家族・社会・地理の語彙の根幹をなす。
ラテン語経由の系譜では、ラテン語 metropolis を介してフランス語 métropole(首都、宗主国、大都市), 英語 metropolis(大都市、メトロポリス), ドイツ語 Metropole が並走し、近代的な「巨大都市」「植民地に対する宗主国」の意味が定着した。現代ギリシャ語の μητρόπολη はこの仏 métropole の意味用法を取り込んだ意味借用の層を持っており、「ハリウッドは映画のメトロポリス」のような比喩用法もここに連なる。
派生・関連語族として μητροπολίτης(府主教、男性形), μητροπολιτικός(府主教の、大都市の、形容詞), μητροπολιτικός ναός(大聖堂、府主教座聖堂), μητροπολιτικό μέγαρο(府主教館), μεγαλούπολη(巨大都市、← 英 megalopolis 由来の αντιδάνειο), υπερπόλη(超大都市、新造語), αποικία(植民地、対義語)。同じ「都市の規模・性格」の領域には、村の χωριό, 町の κωμόπολη, 都市の πόλη, 主要都市の μητρόπολη が並び、規模と機能の連続体として体系化されている。
ギリシャ語:καθαρός
読み方:カサロス・カサロース・カタロス・カタロース
ラテン文字:katharos
古代ギリシャ語の καθαρός(清らかな、汚れのない)を継承。名詞 κάθαρση(浄化)は英語 catharsis(カタルシス)の語源となった。
ギリシャ語:αστερισμός
読み方:アステリズモス・アステリズモース
ラテン文字:asterismos
古代ギリシャ語の ἀστερισμός(星のまとまり、星座)を継承。αστέρας(恒星)に相当する古代形 ἀστήρ に -ισμός を付けた名詞で、もとから星々が一定の形に見えるまとまりを表した。現代の天文学で星座を体系的に言うときの使い方はフランス語・英語 constellation からの意味借用で定着した。
関連語に αστερίσκος(小さな星、アスタリスク)、αστερίας(ヒトデ、属)、αστρονομία(天文学)、αστρολογία(占星術)など。「勢力圏、陣営」の比喩用法は現代の言い回しで、星座を枠組みに見立てた延長線上にある。
英語 asterism(星群、三つ星の光学現象、※記号)も同じ古代ギリシャ語をもとにした語。
ギリシャ語:βίβλος
読み方:ヴィヴロス・ヴィーヴロス
ラテン文字:vivlos
古代ギリシャ語の βίβλος(パピルス, 巻物, 書物)から。フェニキアの港町 Βύβλος(現レバノンのジュベイル)がパピルスの交易地だったことから, そこで扱われた素材の名がギリシャ語に入った。指小形 βιβλίον の複数 τὰ βιβλία はヘレニズム期以降のキリスト教でギリシャ語訳聖書を指すようになり, ラテン語 biblia を経て英語 Bible になった。
同じ βίβλος の語族に βιβλίο(本), βιβλιάριο(小冊子, 通帳), βιβλιοθήκη(図書館, 本棚), βιβλιοπωλείο(書店), βιβλιογραφία(書誌学, 参考文献目録), βιβλικός(聖書の), βιβλιόφιλος(愛書家), βιβλιοδεσία(製本)。ふつうの「本」には βιβλίο を使い, βίβλος は先頭大文字 Βίβλος の聖書と, λευκή βίβλος「白書」のような硬い公文書名に限られる。
λευκή βίβλος「白書」, κυανή βίβλος「青書」, μαύρη βίβλος「黒書」のような色+βίβλος の公文書名は英語 White Paper, Blue Paper, フランス語 Livre Noir からの翻訳借用。英語 Bible, bibliography(書誌学), bibliophile(愛書家)もこの βιβλίον・βίβλος の語族。
ギリシャ語:κληρικός
読み方:クリリコス・クリリコース
ラテン文字:klirikos
ヘレニズム期ギリシャ語の κληρικός(聖職者に属する、聖職者)に由来。これは κλῆρος(くじ、割り当て、相続分、聖職者層)に、形容詞を作る接尾辞 -ικός が付いた語。
κλῆρος は、くじで割り当てられたものや相続分を指し、キリスト教の文脈では聖職者層も指すようになった。現代ギリシャ語の κλήρος にも「聖職者層」の意味がある。
英語 cleric は、後期ラテン語 clericus を経て古代ギリシャ語 κληρικός に由来する。英語 clergy や clerk も同じ語源につながる。
類義語には ιερέας(司祭、神父)、ιερωμένος(聖職者)、παπάς(神父、司祭)などがある。対義語は λαϊκός(平信徒、俗人)。関連語には ιεραρχία(聖職者階級、ヒエラルキー)、εκκλησία(教会)などがある。
ギリシャ語:νους
読み方:ヌス
ラテン文字:nous
古代ギリシャ語の νόος(心, 知性)から短縮された νοῦς を継承。前ソクラテス期の哲学で中心概念となり, アナクサゴラスは νοῦς を宇宙を統べる理性として位置づけた。現代の「精神, 心, 理性」の用法はフランス語 esprit, 英語 mind, ドイツ語 Geist からの意味借用で輪郭が整った。
同じ νοῦς の語族に νόηση(知覚, 思考), νοητικός(知的な), νοημοσύνη(知能), νοήμων(知性ある), διάνοια(思考能力, 知性), 合成語 εννοώ(意味する, 理解する), κατανοώ(把握する), παρανοώ(誤解する), δυσνόητος(理解しづらい)。
思考する主体を言うのは νους, 感情の「心」は καρδιά(心臓, 心), 魂や生命の「心」は ψυχή(魂), πνεύμα(霊)が担い, それぞれ英語の psyche, spirit に対応する。頭の働きを気軽に言うときは μυαλό(頭, 頭脳)が一般的。英語 noetic, noesis もこの νοῦς の語族からラテン語経由で入った。
ギリシャ語:πνεύμα
読み方:プネヴマ・プネーヴマ
ラテン文字:pnevma
古代ギリシャ語の πνεῦμα(息, 風, 気息)に由来。印欧祖語で「吹く」を表す語根に続く πνέω(吹く)から, 結果を表す接尾辞 -μα を付けて作られた語。「吹くこと」「呼吸」から, 目に見えない生命力, 精神, 霊へと意味が広がり, のちに文法用語の「気息記号」も指すようになった。「法の精神」「文章の趣旨」のように字面の裏にある真意を指す用法は, フランス語 esprit からの意味借用で整った。
英語 pneumatic(空気圧の), pneumonia(肺炎)も同じ語源。同じ語根から πνεύμονας(肺), πνοή(息, 息吹)も派生。派生に πνευματικός(精神の, 空気圧の), πνευματιστής(心霊主義者), πνευματισμός(心霊主義)。
心を扱う語では, 感情は καρδιά(心臓, 心), 思考や理性は νους(精神, 理性), 魂や生命全体は ψυχή(魂)。πνεύμα は知性, 集団や時代の理念, 霊性の側面を扱う。
ギリシャ語:βραχνάς
読み方:ヴラフナス・ヴラフナース
ラテン文字:vrachnas
中世ギリシャ語 βαρυχνάς が、子音 [r] のメタテシス(音位転換)を経て *βαρχνάς となり、母音調整を経て現代の βραχνάς になった継承語(κληρονομιά)。源にあるのは、古代ギリシャ語 βαρύς(重い)と ὕπνος(眠り)の合成語 *βαρυ-υπνάς「重い眠りに落ちた者、深く眠っている者」で、語中の連続した母音と子音の整理([pn > fn > xn] の音変化、つまり ὕπνος の語幹 [pn] が摩擦音化)を経て、最終的に βραχνάς の形に至った。
源にある古代の ὕπνος(眠り)はラテン語 somnus(眠り、英語 somnambulism「夢遊病」, insomnia「不眠症」の語源)と同系統で、印欧祖語の「眠る」を表す語根に由来する。同じ ὕπνος から英語 hypnosis(催眠), hypnotic(催眠の), hypnotism(催眠術)など、近代の心理学・医学用語が広まっている。
もとは「金縛り、悪夢、睡眠中の胸の圧迫感」を指す具体的な体験を表していたが、現代では比喩的に「精神的な重圧、厄介事、深刻なストレス源」を広く指す中心語となった。同じ意味展開は英語 nightmare(夜の悪夢 → 比喩的に「悪夢のような状況」)にも見られる平行例。
派生・関連語族として βραχνιάζω(しわがれ声になる、別語源だが同形), βραχνάδα(しわがれ声、声の不調、別語源だが同形)。なお、βραχνάς(重圧、悪夢)と βραχνός(しわがれた、声の不調)は同形で混同されやすいが、後者は古代 βραγχνός「しわがれた」由来の別系統。類義語に εφιάλτης(悪夢、← 古代の悪夢の擬人化された神 Ἐφιάλτης), μπελάς(厄介事、← トルコ語 belâ), πίεση(プレッシャー、心理的圧力), στενοχώρια(憂慮、悩み)。
ギリシャ語:λαγνεία
読み方:ラグニア・ラグニーア
ラテン文字:lagneia
古代ギリシャ語の λαγνεία(性交、みだらさ、好色)に由来。これは λαγνεύω(性交する、みだらな行いをする)に、抽象名詞を作る接尾辞 -ία が付いた語である。λαγνεύω は λάγνος(好色な、みだらな)から作られた。
λάγνος のさらに前の由来は確定していないが、λαγαρός(ゆるい、締まりのない)や λαγαίω(ゆるめる)と関係づけ、ラテン語 laxus(ゆるい)や英語 slack と同じ印欧祖語の語根に結びつける説がある。
類義語には φιληδονία(快楽への愛着、享楽)、έρωτας(恋愛、性愛)、πόθος(欲望、あこがれ)などが挙げられる。七つの大罪の教会系の一覧では、近い領域の語として πορνεία(性的な不品行)が使われることもある。
キリスト教神学の七つの大罪(επτά θανάσιμα αμαρτήματα)では、λαγνεία が「色欲」にあたる語として使われる。対応する美徳としては σωφροσύνη(節制、慎み、貞潔)が挙げられる。
英語の -lagnia / -lagniac は、古代ギリシャ語 λαγνεία に由来し、医学・心理学系の語で性的嗜好や性愛に関わる要素として使われる。
ギリシャ語:αιθρία
読み方:エスリア・エスリーア・エトゥリア・エトゥリーア
ラテン文字:aithria
古代ギリシャ語の αἰθρία(晴天、澄みきった空)に由来。古代の動詞 αἴθω(燃える、輝く)から派生した αἰθήρ(エーテル、晴れ渡った上層の空)と同じ語族で、印欧祖語で「燃える、輝く」を表す語根に起源を持つ。同じ語根からは英語 ether(エーテル、ギリシャ語 αἰθήρ から)も来ている。
現代では文語的で、ほぼ慣用句 κεραυνός εν αιθρία(青天の霹靂、直訳「晴天の中の雷」)の中でしか使わない。一般の「晴れ」は ξαστεριά、καλοκαιρία など。
ギリシャ語:κεραυνός εν αιθρία
読み方:ケラヴノス エン エスリア・ケラヴノース エン エスリーア・ケラヴノス エン エトゥリア・ケラヴノース エン エトゥリーア
ラテン文字:keravnos en aithria
ギリシャ語:μαθητής
読み方:マシティ・マシティー・マティティ・マティティー
ラテン文字:mathitis
古代ギリシャ語の μαθητής(学習者)を継承。動詞 μανθάνω(学ぶ、理解する)に「〜する人」を表す接尾辞 -τής がついた形。英語 mathematics や polymath(博学者)、現代ギリシャ語の μαθηματικά(数学)も同じ語根から作られた語。
派生語に μάθημα(授業、科目)、μάθηση(学習)、現代ギリシャ語の動詞 μαθαίνω(学ぶ、教える)など。女性形は μαθήτρια でヘレニズム期以降に作られた形。指小形に μαθητάκος(男)、μαθητριούλα(女)。
ギリシャ語:μαθήτρια
読み方:マシトゥリア・マシートゥリア・マティトゥリア・マティートゥリア
ラテン文字:mathitria
μαθητής(生徒、弟子)の女性形。
ギリシャ語:κόμμα
読み方:コマ・コーマ
ラテン文字:komma
古代ギリシャ語の κόμμα(切り取られた部分、切片、刻印、文の一句)に由来。動詞 κόπτω(切る、打ち切る)から作られた名詞で、古代では切り分けられた物の一片、貨幣に打たれた刻印、修辞で文の短い一句といった使い方があった。現代の「政党」としての使い方はフランス語 parti からの翻訳借用、句読点の「コンマ」としての使い方はフランス語 virgule からの意味借用で、近代にそれぞれ定着した。
派生語・関連語に κόβω(切る)、κομμάτι(一片、部分)、κομματικός(政党の、党派的な)、κομματιάζω(ばらばらに切る、小分けにする)、αποκόπτω(切り離す)。関連語に κράτος(国家)、κοινωνία(社会)。
ギリシャ語:μπρούντζος
読み方:ブルドゾス・ブルドーゾス・ブルンドゾス・ブルンドーゾス
ラテン文字:mprountzos
中世ギリシャ語 μπρούντζος(青銅)が現代まで受け継がれた語で、源はイタリア語 bronzo(青銅)にある外来借用(δάνειο)。借用の過程で、唇音 [b] の影響を受けた母音変化 [o > u](μπρόντζο > μπρούντζο)と、母音間の鼻音 [n] の脱落(αποβολή)を経て、現代ギリシャ語の μπρούντζος の形に整えられた。
源にあるイタリア語 bronzo は、語源について複数の説が論じられる、興味深い語族:(a)ペルシア語 پرنج berenj / pirinj(黄銅、青銅、← おそらく中世ペルシア語 bring「青銅・銅合金」)からアラビア語 برنز bironz, 後期ラテン語 bronzium / brundium を経た東洋経由説、(b)イタリアの都市 Brundisium(ブリンディシ、現プーリア州ブリンディシ、古代の重要な青銅器の生産地)に由来する説、(c)ラテン語 aes brundisinum(ブリンディシの青銅)の短縮説、(d)ゲルマン語 brunni(褐色、輝く、← ゴート語 brann-「燃える」)に由来する説など、定説がない。
近代以降のヨーロッパ各語の「青銅」語彙は、すべて bronze 系の系譜:英語 bronze, フランス語 bronze, スペイン語 bronce, イタリア語 bronzo, ドイツ語 Bronze, ロシア語 бронза bronza が並ぶ、近代金属工学・芸術の国際語の中核。19 世紀の考古学者・歴史学者によって「青銅器時代」(Εποχή του Χαλκού / Bronze Age)の概念が確立され、人類史の重要な時代区分として現代まで使われている。
書きことばの古典形 χαλκός(銅、青銅、← 古代 χαλκός)は、現代ギリシャ語にも並走しており、特に化学元素名(χαλκός = 銅、元素記号 Cu), 楽器(χάλκινα όργανα「金管楽器」), 古代史用語(χαλκολιθική εποχή「銅石器時代」)の文脈で使われる。古代ギリシャ語の χαλκός は最初は「銅」と「青銅」の両方を意味していたが、近代以降は「銅」を中心義とし、「青銅」は μπρούντζος で言い分けるようになった、近代金属学の用語整備の結果。
派生・関連語族として μπρούντζινος(青銅製の、ブロンズの、形容詞), μπρούντζος-ορείχαλκος(青銅と真鍮の合金), μπρούντζινο μετάλλιο(銅メダル、ブロンズメダル、ただし実際は銅含有率の高い合金で、純粋な銅ではないことから「ブロンズ」の名を冠する), άγαλμα από μπρούντζο(ブロンズ像), μπρούντζινο αντικείμενο(青銅製品、青銅器), αρχαία μπρούντζα(古代の青銅器), σκληρός μπρούντζος(硬質青銅)。
冶金学・歴史学的には、青銅は銅と錫を主成分とする合金(一般的に錫 5-20%)で、純粋な銅より硬く、加工しやすく、耐食性に優れることから、紀元前 3300 年頃から人類の道具・武器・装飾品の主要な金属となった。古代ギリシャ・ミケーネ文明の青銅器(剣、ヘルメット、装飾品), 古代ギリシャ・ローマの彫刻(リヤカイの御者、青銅の馬、ヘラクレス像), 中世ヨーロッパの教会の鐘、近代の硬貨・メダル・芸術作品まで、人類の物質文化の中核を成す素材。
オリンピックの三位入賞者に与えられる μπρούντζινο μετάλλιο(ブロンズメダル)は、古代ギリシャの青銅器文化の象徴的継承として、近代スポーツの中核儀礼に位置づけられる。ギリシャ・地中海・ヨーロッパの彫刻芸術では、ブロンズ像が古代から現代まで主要な彫刻素材として使われ、博物館・公共広場・記念碑の中核を成す。
同じ金属の領域には、近い概念として χαλκός(銅、化学元素), κασσίτερος(錫、青銅の主要成分), ορείχαλκος(真鍮、← 古代「山の銅」, 銅と亜鉛の合金), σίδερο(鉄), ατσάλι(鋼), αλουμίνιο(アルミニウム), χρυσός(金), ασήμι(銀)が並び、人類史・産業・装飾・科学の各領域で使われる金属語彙の体系を形成する。
文化的な象徴として、青銅は「永続性、力、古代性、誇り高さ」を表す素材として、彫刻・記念碑・メダルの中核に位置づけられる。色合いとしては「ブロンズ色」が、髪・肌・布・装飾品の色語として広く使われ、暖かみのある赤褐色から金茶色までの幅で展開する、文化的に豊かな語。
ギリシャ語:κρατέρωμα
読み方:クラテロマ・クラテーロマ
ラテン文字:krateroma
ヘレニズム期ギリシャ語の κρατέρωμα(銅と錫の合金)に由来。さらに深い語源は不明。カサレヴサ系の文語で使われる。日常的は μπρούντζος(青銅、ブロンズ)が用いられる。
材料は χαλκός(銅)と κασσίτερος(錫)の合金。銅と亜鉛の合金である真鍮(ορείχαλκος)としばしば混同される。
ギリシャ語:ιερός
読み方:イェロス・イェロース
ラテン文字:ieros
古代ギリシャ語の ἱερός(聖なる、神に属する)に由来。さらに印欧祖語で「聖なる、強い、活力ある」を表す語根に遡るとされる。
英語 hierarchy(階層、聖職階級)、hieroglyph(象形文字)、hieratic(神官の、神聖文字の)などに含まれる hiero- も、古代ギリシャ語 ἱερός に由来。
中性形 ιερό は名詞として「聖域、神殿、至聖所」を指す。派生語や関連語には ιερέας(司祭、神父)、ιεραρχία(聖職者の階級制、ヒエラルキー)、ιεροσύνη(聖職)などが挙げられる。
類義語には άγιος(聖なる、聖人の)、θεϊκός(神の、神的な)、όσιος(敬虔な、聖者の)などがある。比喩的には、強い尊重や義務を伴うものにも使われる。
ギリシャ語:κυβέρνηση
読み方:キヴェルニシ・キヴェールニシ
ラテン文字:kyvernisi
古代ギリシャ語 κυβέρνησις(属格 -εως、舵取り、船の操縦、城邦の統治、← 動詞 κυβερνάω「舵を取る、導く、統治する」+ -σις 抽象名詞接尾辞)を、近代以降に書きことばから再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)で、語末は古代の -σις が中世以降のパターン -ση に音変化した形。さらに、近代の「政府、政権」の意味は、イタリア語 governo(政府、← ラ gubernātio「統治」, ← gubernō「舵を取る」, ← 古代ギリシャ語 κυβερνάω からの古い借用)の意味用法を取り込んだ意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の側面を併せ持つ。
源にある古代の動詞 κυβερνάω / κυβερνῶ(舵を取る、操縦する、統治する、導く)は、印欧祖語に確実な対応が見出されない地中海・前ギリシャ語基層の語とされる。古代ギリシャ語の κυβερνάω は、もともと船の舵取りを意味する航海語彙だったが、プラトンの『国家』『ポリティコス』, アリストテレスの『政治学』で「国家を舵取りする」という比喩から「統治する」の意味が確立された。古代ギリシャの政治哲学の中核概念として、近代政治学の語彙の根幹となった。
古代ギリシャ語の κυβερνήτης(舵手、操縦者、統治者)は、ラテン語 gubernātor(舵手、統治者、属州知事)として借用され、フランス語 gouverneur, スペイン語 gobernador, ポルトガル語 governador, 英語 governor, ドイツ語 Gouverneur, イタリア語 governatore として、ヨーロッパ各語の「総督・知事・知事・経営者」の語彙の中核となった。同じ系譜から、英語 govern(統治する), government(政府), governance(統治、ガバナンス), gubernatorial(知事の)が広まった。
近代の重要な国際造語語族に、英語 cybernetics(サイバネティクス、サイバー、← 仏 cybernétique, 数学者 Norbert Wiener が 1948 年に提唱、← 古代ギリシャ語 κυβερνήτης「舵手」)がある。20 世紀の制御工学・コンピュータ科学・情報理論の中核概念で、近代の cyber-(サイバー、← 古代ギリシャ語 κυβερνάω)の国際造語要素の語源となった。Cyber-, cyborg, cyberspace, cybernetic, cyberbullying など、現代のコンピュータ・インターネット時代の中核語彙が、古代ギリシャ語の「舵取り」の概念に発する。古代の「舵を取って船を導く」の比喩が、現代の「情報を制御してシステムを動かす」へと意味の継承を果たした、興味深い概念史。
派生・関連語族として κυβερνώ(統治する、動詞), κυβερνήτης(操縦士、首相、書きことば), κυβερνητικός(政府の、政治の、形容詞), κυβερνητικά μέτρα(政府の措置), κυβερνητική πολιτική(政府の政策), κυβερνώντα κόμματα(与党), αντικυβερνητικός(反政府の), διακυβέρνηση(統治、ガバナンス、← 英 governance の翻訳借用), διακυβερνητικός(政府間の、← 英 intergovernmental), αυτοδιοίκηση(自治)。
近代政治の用語としての κυβέρνηση は、近代国家の政治制度の中核概念で、立法府(νομοθετική εξουσία), 司法府(δικαστική εξουσία)と並ぶ三権分立の行政府を指し、首相(πρωθυπουργός), 大臣(υπουργός)の職位を含む組織体として機能する。ギリシャ第二共和制(1974 年以降のミタナポリーの共和制)の政治語彙の中で、中核的な役割を担う。
意味の領域では、組織としての政府(η ελληνική κυβέρνηση「ギリシャ政府」), 特定の政権(η κυβέρνηση Καραμανλή「カラマンリス政権」), 統治の行為(καλή κυβέρνηση「良い統治」), 連立政権(κυβέρνηση συνασπισμού), 政権交代(αλλαγή κυβέρνησης)など、近代政治の中核語彙の体系を形成する。
ギリシャ語:οργανισμός
読み方:オルガニズモ・オルガニズモー
ラテン文字:organismos
古代ギリシャ語に稀に見られる ὀργανισμός(道具、装置)と同形だが、現代の語はフランス語 organisme(仏 organe = όργανο「道具、器官」に -isme が付いた形)からの借用。
「生物、有機体」と「組織、機関」の意味は、フランス語 organisme や organisation、英語 organism からの意味借用で広がった。
同じ όργανο から派生した動詞 οργανώνω(整える、組織化するなど)や名詞 οργάνωση(組織、組織化)も同系統。英語 organism も同じ語源を持つ。
ギリシャ語:τετράγωνο
読み方:テトゥラゴノ・テトゥラーゴノ
ラテン文字:tetragono
古代ギリシャ語の τετράγωνον(正方形、四角いもの)から。τετρα-(四)と γωνία(角)からなる形容詞 τετράγωνος(四つの角をもつ)の中性形が名詞化したもの。
図形としての正方形を指すほか、数学では「二乗」の意味でも用いられる。フランス語の carré が四角形と二乗の両方を表すのと同様、近代的な概念を反映した意味借用といえる。
οικοδομικό τετράγωνο は、道路で囲まれた街の一区画(ブロック)を指す表現。日常会話では οικοδομικό を省略し、単に τετράγωνο と呼ぶことも多い。
関連語には γωνία(角、角度)や τρίγωνο(三角形)、小さな四角やマス目を意味する τετραγωνάκι など。動詞の τετραγωνίζω は、幾何学で「等面積の正方形を作る」ことや、数学で「二乗する」ことを表す。
ギリシャ語:Παναγία
読み方:パナイア・パナイーア・パナギア・パナギーア
ラテン文字:panagia
ヘレニズム期ギリシャ語の Παναγία(すべて聖なる女性、聖母マリア)に由来。これは πανάγιος(すべて聖なる、きわめて聖なる)の女性形が名詞化した語である。πανάγιος は παν-(すべて、まったく)と άγιος(聖なる)からなる。
形としては Παναγία と Παναγιά がある。Παναγιά は、Παναγία の母音の連続が縮まった形で、呼びかけや慣用表現にもよく現れる。
キリスト教の文脈では、Χριστός(キリスト)の母である聖母マリアを指す呼び名として使われる。類義的な称号には Θεοτόκος(神を産んだ方、生神女)、Θεομήτωρ(神の母)、Παρθένος(乙女、処女)、Μεγαλόχαρη(大きな恵みを持つ方)などがある。
関連語には Χριστός(キリスト)、θεός(神)、ναός(神殿、聖堂、教会堂)、προσευχή(祈り)、θαύμα(奇跡)、ζώνη(帯)、φυλαχτό(お守り)など。指小形には Παναγίτσα、民間語的な形には Παναΐτσα がある。
ギリシャ語:Παναγιά
読み方:パナヤ・パナヤー
ラテン文字:panagia
Παναγία(聖母マリア、パナギア)の母音の連続が縮まった別形。意味の中心は同じで、呼びかけや慣用表現にも現れる。