ギリシャ語:γη
読み方:イ・イー・ギ・ギー
ラテン文字:gi
イ から始まる単語 104 語。
イ から始まる単語 104 語。
ギリシャ語:γη
読み方:イ・イー・ギ・ギー
ラテン文字:gi
ギリシャ語:ίασπις
読み方:イアスピス・イーアスピス
ラテン文字:iaspis
古代ギリシャ語の ἴασπις(色のある不透明な石)から。語源不詳の借用語で、エジプト語や西アジアの諸言語との関係が指摘される。
ラテン語 iaspis、古フランス語 jaspre を経て、英語 jasper(碧玉)の語源にもなった。碧玉は石英の不透明な変種で、赤、黄、茶、緑など、さまざまな色を持つ。一方、現代ギリシャ語の ίασπις は翡翠の訳語としても使われるため、英語 jasper とは指す石がずれる。
翡翠は νεφρίτης(軟玉)や ιαδεΐτης(硬玉)などの総称。νεφρίτης は νεφρός(腎臓)に由来し、腎臓の病に効く石とされたことにちなむ。ιαδεΐτης はスペイン語 piedra de ijada(脇腹の石)からフランス語 jade を経て入った語で、こちらも体の脇腹や腎臓の痛みに効く石という発想を背景にしている。
ギリシャ語:υγεία
読み方:イイア・イイーア・イギア・イギーア
ラテン文字:ygeia
古代ギリシャ語の ὑγίεια(健康)が, ヘレニズム期に縮まった ὑγεία の形で現代ギリシャ語に入った学術借用。古典形 ὑγίεια は長く文語形として残ったが, 今は短い ὑγεία の形で日常にも公的な場にも現れる。動詞 ὑγιαίνω(健康である)と同じ語根から作られ, 形容詞 ὑγιής(健康な)と対をなす名詞。
同じ語根から出た兄弟語に動詞 υγιαίνω(健康である), 形容詞 υγιής(健康な, 健全な), 形容詞 υγιεινός(健康によい, 衛生的な), 名詞 υγιεινή(衛生学, 衛生)。υγεία を元にした合成語には υγειονομείο(衛生検査所), υγειονομικός(衛生の), υγειονόμος(衛生官), υγειολογία(健康学)が並ぶ。口語では短縮形 υγειά が並行して使われ, さらに縮めた γεια が挨拶の γεια σου / γεια σας(やあ, さようなら)に入っている。
対になる語は「病気」を表す ασθένεια(疾病)と αρρώστια(病気)。英語 hygiene, フランス語 hygiène, ドイツ語 Hygiene はどれも形容詞 ὑγιεινός(健康によい)から経由した語族。公的な場では δημόσια υγεία(公衆衛生)、Παγκόσμια Οργάνωση Υγείας(世界保健機関, WHO)や Εθνικό Σύστημα Υγείας(国民保健制度)のように制度名にそのまま入る。乾杯の Εις υγείαν や, 誕生日・祝日の Και του χρόνου με υγεία(来年も元気でこの日を迎えられますように)のような決まり文句もこの語を中心にしている。
ギリシャ語:γέννηση
読み方:イェニシ・イェーニシ・ゲニシ・ゲーニシ
ラテン文字:gennisi
動詞 γεννώ / γεννάω(産む, 生む)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γέννησις(誕生, 出生)を経て, 中世ギリシャ語の γέννηση を継承。古代 -σις が -ση に変わった形が中世から定着した。
派生に γεννητικός(生殖の), γεννητούρια(出産祝い), γεννησιά(誕生の時, 生まれ)。同じ語族に γέννα(出産), γεννήτορες(両親), γενέθλια(誕生日), γενιά(世代, 一族), γένος(種族, 性)。
誕生日を指すときは γενέθλια を使う。
ギリシャ語:γεννήτρια
読み方:イェニトゥリア・イェニートゥリア・ゲニトゥリア・ゲニートゥリア
ラテン文字:gennitria
ヘレニズム期ギリシャ語の γεννήτρια(母、生む者)に由来。γεννήτρια は γεννάω / γεννώ(生む、発生させる)に女性の行為者名詞を作る接尾辞 -τρια が付いた形。さらに γεννάω は γένος(種、家系)や γίγνομαι(生じる、なる)と同じ語族で、印欧祖語で「生む、発生させる」を表す語根に遡る。
発電機を指す意味は、フランス語 génératrice(発電機、生成するもの)からの意味借用で定着した。フランス語 génératrice はラテン語 generare(生む、作り出す)に由来し、発想としては γεννάω の語族と対応している。
関連語に γέννηση(誕生、発生)、γεννάω / γεννώ(生む、発生させる)、ηλεκτρογεννήτρια(発電機)、δυναμό(ダイナモ、直流発電機)、εναλλακτήρας(交流発電機)、κινητήρας(モーター、エンジン)などがある。
ギリシャ語:γένια
読み方:イェニャ・イェーニャ・ゲニャ・ゲーニャ
ラテン文字:genia
古代ギリシャ語 γένειον(顎、顎ひげ、← γένυς「顎、頬」の指小形)が、中世ギリシャ語の γένι(ν) を経て現代の γένι(単数)/ γένια(複数)になった継承語(κληρονομιά)。中世期に語尾の整理と母音融合(συνίζηση)を経て、現代では複数形 γένια が「ひげ全般」を指す中心語、単数形 γένι が「顎ひげ」を指す形として使われる。
源にある古代の γένυς(属格 γένυος、顎、頬)は印欧祖語の「顎、頬、口」を表す語根に由来し、ラテン語 gena(頬、頬骨), 英語 chin(顎、< 古英語 cinn), ドイツ語 Kinn, サンスクリット hánu(顎)など、印欧語族の「顎・頬」語彙の中核を成す。ラテン語 gena 由来の英語 genyoplasty(あご形成術), ギリシャ語由来の解剖学用語 γενειακός(あごの)など、医学・解剖学に痕跡が残る。
なお、綴りは同じだがストレス位置が異なる γενιά(世代、一族、← 古代 γενεά「生まれ、血筋」)はまったく別系統の語で、混同に注意。
派生・関連語族として γένι(顎ひげ、単数形), γενάκι(短い顎ひげ、ちょびひげ、指小形), γενειάδα(長く伸ばしたひげ、書き言葉寄り), γενειοφόρος(ひげを生やした、形容詞), αγένειος(ひげのない、若い、← ἀ-「否定」+ γένειος), σπανός(ひげが薄い・生えない男)。類義語に μούσι(顎部分のひげ), μουστάκι(口ひげ), φαβορίτες(もみあげ)。古代以来の文化的に意味の重い記号として、ひげを伸ばすことは喪に服す印, 哲学者・聖職者の象徴, 思春期の到来の徴など、多様な含意を持つ。
ギリシャ語:γενιά
読み方:イェニャ・イェニャー・ゲニャ・ゲニャー
ラテン文字:genia
古代ギリシャ語 γενεά(生まれ、血筋、世代、家系)が、中世期に母音融合(συνίζηση)で χασμωδία(hiatus)を避けて γενιά になり、現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。源にある古代の γενεά は、動詞 γίγνομαι(生まれる、生じる)の語幹 γεν- に集合・抽象を表す接尾辞 -εά がついた抽象名詞で、もとは「生まれること、出生」「同じ祖先から生まれた人々」「同時期に生まれた集団」を意味した。
古代の γεν- 語幹は印欧祖語の「生む、生まれる」を表す語根に由来し、印欧語族の中核語彙の一つ。ラテン語 genus(種類、生まれ), gens(一族、氏族), genitor(父、産む者), generō(生む), さらに英語 gene, genus, genesis, generation, gender, genuine, genealogy, generic, genocide, genitive など、ヨーロッパ語の「生命・誕生・系統」関連語彙の中核を担う。同じ語根からサンスクリット jánati(生む), ジャーティ(種、カースト), 英語 kin, kind なども派生している。
なお、綴りは同じだがストレス位置が異なる γένια(ひげ、← 古代 γένειον「顎、ひげ」)はまったく別系統の語で、混同に注意。
派生・関連語族として γένος(属格 γένους、種、種族、文法上の性、書き言葉寄り), γέννα(出生、誕生), γέννηση(誕生、ジェネシス), γενετική(遺伝学), γενεαλογία(系図学), γενετικός(遺伝の、形容詞), γενιές και γενιές(何世代もの強調表現)。類義語に σόι(家系・一族、トルコ語 soy 由来の口語), φάρα(一族・徒党、口語), οικογένεια(家族)。「ジェネレーション・ギャップ」「ロスト・ジェネレーション」のように、近代社会学的な含意を伴う表現も国際的な使い方として定着している。
ギリシャ語:γενναίος
読み方:イェネオス・イェネーオス・ゲネオス・ゲネーオス
ラテン文字:gennaios
ギリシャ語:γέφυρα
読み方:イェフィラ・イェーフィラ・ゲフィラ・ゲーフィラ
ラテン文字:gefyra
古代ギリシャ語の γέφυρα(橋)を継承。起源は印欧系ではなく、ギリシャ以前からこの地で話されていた古い言語、あるいは小アジアのアナトリア諸語からの借用とする説が有力。古代ギリシャ内にも方言差があり、ボイオティアでは βέφυρα、クレタでは δέφυρα、ラコニア(スパルタ周辺)では δίφουρα と呼ばれた。
古アルメニア語 kamurǰ(橋)、ハッティ語 ḫamuruwa(梁)などとも比較される。
船の艦橋、歯科のブリッジ、ネットワーク機器のブリッジといった使い方は、イタリア語 ponte、英語 bridge からの意味借用によって近代に加わった。
派生語に γεφυρώνω(橋を架ける、橋渡しをする)、γεφύρι(小さな橋)など。複合語には πεζογέφυρα(歩道橋)、αερογέφυρα(空輸)、σιδηροδρομική γέφυρα(鉄道橋)がある。
ギリシャ語:γεύση
読み方:イェフシ・イェーフシ・ゲフシ・ゲーフシ
ラテン文字:gefsi
動詞 γεύομαι(味わう)から派生した古代ギリシャ語の女性名詞 γεῦσις(味わうこと, 味覚)に由来。語尾 -σις が -ση に変わって現代ギリシャ語の γεύση の形になった。
派生に γευστικός(味覚の, 味のある, おいしい), γευστικότητα(味の良さ)。同じ語族に άγευστος(味のない), αγευσία / αγευστία(味覚消失)。合成語に γευσιγνωσία(鑑味, テイスティング), γευσιγνώστης(鑑味家, テイスター)。
ギリシャ語:ιεραρχία
読み方:イェラルヒア・イェラルヒーア
ラテン文字:ierarchia
ヘレニズム期ギリシャ語の ἱεραρχία(天使の階級的秩序、聖なる支配)に由来。ἱεραρχία は ἱεράρχης(高位の聖職者、大祭司)に、抽象名詞を作る接尾辞 -ία が付いた語。形の上では、ἱερός(聖なる)と ἀρχή(支配、始まり、原理)からなる語として理解できる。
現代の「組織内の階層、上下関係」や「価値・存在の階層的秩序」の意味は、フランス語 hiérarchie からの意味借用によって整えられた。hiérarchie は中世ラテン語 hierarchia を経て、同じ ἱεραρχία に遡る。
英語 hierarchy(階層、ヒエラルキー)は、古フランス語 ierarchie / jerarchie、中世ラテン語 hierarchia を経て、古代ギリシャ語 ἱεραρχία に遡る。英語ではもともと天使や聖職者の階級秩序を指し、のちに一般的な階層構造にも使われるようになった。
宗教の文脈では、Ιεραρχία は正教会の高位聖職者団、つまり教会の統治に関わる主教層を指す。関連語には ιερέας(司祭、神父)、ιεράρχης(高位聖職者)、ιερό(聖域、神殿、至聖所)などがある。
社会や組織の文脈では、στρατιωτική ιεραρχία(軍の階層)、υπαλληλική ιεραρχία(職員組織の階層)、κοινωνική ιεραρχία(社会的ヒエラルキー)のように使われる。
ギリシャ語:γέλιο
読み方:イェリョ・イェーリョ・ゲリョ・ゲーリョ
ラテン文字:gelio
動詞 γελώ(笑う)の語幹に中性語尾 -ιο がついて造られた中世ギリシャ語 γέλιο(笑い、笑い声)が、逆形成(αναδρομικός σχηματισμός)でつくられ、現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。古代ギリシャ語の対応語 γέλως(属格 γέλωτος、笑い、書きことばの古典形)と並ぶ二形が現代も生きている。
源にある古代の動詞 γελάω / γελῶ(笑う)は印欧祖語の「光り輝く、笑う」を表す語根に由来し、サンスクリット háras-(光線、輝き)と関連する系統。古代の「光り輝く、ぱっと表に現れる」の意味から「笑い顔がぱっと開く」の連想で「笑う」の意味へ展開したと見られる。
同じ γελώ から派生した重要語に γελοίος(滑稽な、馬鹿げた、英語 ridiculous の意味展開と類似), καταγέλαστος(笑いものになるほど馬鹿げた), χαμόγελο(微笑、← χαμό-「低く」+ γέλιο), γελωτοποιός(道化師、コメディアン)など、笑い・滑稽の概念領域の中核を成す語族。
派生・関連語族として γελώ(笑う、現代の動詞), γελαστός(陽気な、笑顔の), γελάκι(小さな笑み、ちょっとした笑い、指小形), γέλωτας(笑い、書きことばの古典形), γελοιοποίηση(笑いものにすること、揶揄)。類義語に χαρά(喜び、感情そのもの), κέφι(上機嫌、陽気な気分), χαμόγελο(微笑、声を伴わない静かな表情), μειδίαμα(微笑、書きことば), σαρκασμός(皮肉、嘲笑), χλεύη(あざけり), καγχασμός(高笑い、嘲笑)。複数形 γέλια では「大笑い、爆笑、笑いの連続」を指し、πεθαίνω από τα γέλια(笑い死にしそう), ξεκαρδίζομαι στα γέλια(笑い転げる)など、誇張表現で広く使われる。
ギリシャ語:Γερμανία
読み方:イェルマニア・イェルマニーア・ゲルマニア・ゲルマニーア
ラテン文字:germania
古代ギリシャ語の Γερμανία(ゲルマン人の地)に由来。元はラテン語 Germania からの借用で、古代ローマが中欧のゲルマン諸族の居住地を呼んだ地名。
派生語には Γερμανός(ドイツ人男性)、Γερμανίδα(ドイツ人女性)、γερμανικός(ドイツの)、γερμανικά(ドイツ語)などがある。元素の γερμάνιο(ゲルマニウム)は 19 世紀にこの国名から作られた名前。
英語の Germany も同じラテン語の Germania から。
ギリシャ語:ιερέας
読み方:イェレアス・イェレーアス
ラテン文字:iereas
ヘレニズム期ギリシャ語 ἱερεύς(属格 ἱερέως、対格 ἱερέα、祭司、犠牲を捧げる者、← 古代 ἱερός「神聖な、聖別された」+ -εύς 行為者を表す名詞接尾辞)を、近代以降に書きことばから再導入した学術借用(λόγιο διαχρονικό δάνειο)。古代の対格 ἱερέα を主格として固定化したパラダイム再編(μετάπλαση)を経て現代の ιερέας の形になった。古代の意味は「犠牲を捧げる祭司」だったが、ヘレニズム期の七十人訳聖書の翻訳でヘブライ語 כֹּהֵן kohen(祭司)の訳語として使われたことで、ユダヤ教・キリスト教の宗教語彙として意味の中心が「神に仕える聖職者」へと移った、意味借用(σημασιολογικό δάνειο)の側面を併せ持つ。
源にある古代の ἱερός(神聖な、聖別された、聖なる)は、印欧祖語の「強い、活力のある、神聖な」を表す語根に由来し、サンスクリット iṣirá-(活力ある、聖なる)と同族。古代ギリシャ語の ἱερός は、宗教・神話・聖地・典礼の中核語で、現代ギリシャ語にも書きことばで広く生きており、Ιερά Σύνοδος(聖シノドス、正教会の最高決定機関), Ιερά Μητρόπολη(聖大主教座), ιερό βιβλίο(聖典), ιεραρχία(聖職者の階級制、ヒエラルキー、英 hierarchy の語源), ιεροσύνη(聖職)が並ぶ、極めて生産的な宗教語彙の中核。
接尾辞 -εύς は、古代ギリシャ語以来の生産的な動作主名詞接尾辞で、職業・行為者を表す男性名詞をつくる。同じパターンで作られた語族には、βασιλεύς(王), ποιητής → ποιητεύω → ποιητής(詩人), γραμματεύς(書記、秘書), αλιεύς(漁師), ξυλουργός / ξυλουργεύς(大工), ιατρός / ιατρεύς(医師、書きことば)が並ぶ、古代の職業・社会的役割の名詞造語の中核。
七十人訳聖書(Septuagint)の翻訳で、ἱερεύς はヘブライ語 כֹּהֵן kohen(祭司、特にレビ族・アロン家の祭司)の訳語として使われたことで、ユダヤ教の祭司制度の語彙として確立され、後のキリスト教ギリシャ語にも継承された。新約聖書ではキリスト教の聖職者の名前として用いられ、後の東方正教会・ローマ・カトリック教会の聖職者名(仏 prêtre, 英 priest, 独 Priester、ラテン語 presbyter「長老」由来)とは別系統だが、東方教会では ιερεύς / ιερέας が中核語として継承されている。
派生・関連語族として ιερέως(属格、書きことば), ιερωσύνη(聖職、書きことば), ιεροσύνη(聖職), ιερωτέρως / ιερωσύνη(聖職位階), ιεροδιάκονος(補祭、← ιερός + διάκονος「奉仕者」), αρχιερέας(高位の聖職者、大主教、← αρχι-「最高の」+ ιερέας), πατριάρχης(総主教), μητροπολίτης(府主教), επίσκοπος(主教、← επι-「上に」+ σκοπέω「見る」, 英 bishop, episcopal の語源), διάκονος(補祭、執事), μοναχός(修道士), ηγούμενος(修道院長)が並び、東方正教会の聖職者位階の体系を形成する。
ギリシャの東方正教会の聖職者制度では、ιερέας は教区の司祭として、洗礼(βάπτιση), 結婚式(γάμος), 葬儀(κηδεία), 聖体礼儀(θεία λειτουργία), 復活祭(Πάσχα)など、人生・地域・年中行事の典礼を担う中核的な役割を担う。修道士の聖職者は ιερομόναχος(修道司祭), 既婚の在俗聖職者は έγγαμος ιερέας(既婚司祭、家庭を持つ司祭)など、東方正教会の独自の聖職制度の語彙が広く使われる。
意味の領域では、近代の日常文脈ではキリスト教の正教会司祭を指す場面が中心だが、文脈によっては古代ギリシャ・ローマの祭司、ユダヤ教の祭司、ヒンドゥー教・仏教・他宗教の祭司一般を広く指すこともできる、宗教学・比較宗教の用語としての普遍性を持つ。日常会話では παπάς(パパス、神父、口語の親しみのある呼称)も並走し、書きことばの ιερέας と口語の παπάς が文脈で使い分けられる。
ギリシャ語:γελώ
読み方:イェロ・イェロー・ゲロ・ゲロー
ラテン文字:gelo
ギリシャ語:ιερό
読み方:イェロ・イェロー
ラテン文字:iero
古代ギリシャ語の形容詞 ἱερός(聖なる)の中性形 ἱερόν から。ἱερόν は「聖なるもの、聖なる場所」を指し、神殿や祭儀の場を意味した。
ἱερός は印欧祖語で「聖なる」を表す語根につながるとされる。現代ギリシャ語の ιερός(聖なる)もこの語を直接受け継いでいる。
キリスト教、とくに正教会では、聖堂の奥で司祭が奉神礼を行う ιερό βήμα / Άγιο Βήμα(至聖所)を指す。関連語に ναός(神殿、聖堂)、άδυτο(内陣)、άβατο(立ち入り禁止の場所)など。
英語 hierarchy は古代ギリシャ語 ἱεραρχία(聖職者の序列)に由来。hieroglyph の hiero- も、同じ ἱερός に由来する。
ギリシャ語:ιερός
読み方:イェロス・イェロース
ラテン文字:ieros
古代ギリシャ語の ἱερός(聖なる、神に属する)に由来。さらに印欧祖語で「聖なる、強い、活力ある」を表す語根に遡るとされる。
英語 hierarchy(階層、聖職階級)、hieroglyph(象形文字)、hieratic(神官の、神聖文字の)などに含まれる hiero- も、古代ギリシャ語 ἱερός に由来。
中性形 ιερό は名詞として「聖域、神殿、至聖所」を指す。派生語や関連語には ιερέας(司祭、神父)、ιεραρχία(聖職者の階級制、ヒエラルキー)、ιεροσύνη(聖職)などが挙げられる。
類義語には άγιος(聖なる、聖人の)、θεϊκός(神の、神的な)、όσιος(敬虔な、聖者の)などがある。比喩的には、強い尊重や義務を伴うものにも使われる。
ギリシャ語:γέρος
読み方:イェロス・イェーロス・ゲロス・ゲーロス
ラテン文字:geros
中世ギリシャ語 γέρος(老人、← 古代 γέρων「老人、長老」のパラダイム再編 μετάπλαση、-ος 語尾化)が現代まで受け継がれた継承語(κληρονομιά)。古代ギリシャ語 γέρων は、属格 γέροντος、対格 γέροντα という不規則な格変化を持つ -ων 語幹名詞だったが、中世期に -ος 語尾の規則名詞へと再形成された。同じパラダイム再編のパターンは、Χάρων > Χάρος(カロン、死神), δράκων > δράκος(竜)に共通する、中世ギリシャ語の名詞活用整理の典型例。
源にある古代の γέρων(老人、長老、年配者、議員)は、印欧祖語の「老いる、すり減る」を表す語根に由来し、サンスクリット járant-(老いた), アヴェスタ語 zarθa- と同族。古代ギリシャでは、長老政治・議会制(γερουσία「元老院」)の中核概念として、社会的権威と知恵を象徴する語だった。同じ語根からは、γερουσία(元老院、書きことば、← スパルタ・ローマの元老院), γέρας(名誉、特権、← 古代の長老への贈与), γέροντας(長老、僧侶長、書きことば), γερασμός(老化), γηράσκω(老いる、書きことば), γήρας(老齢)が並ぶ、社会・倫理・医学の語彙の中核を成す系譜。
書きことばの古典形 γέροντας(長老、僧侶長、書きことば)は、現代ギリシャ語にも並走しており、特に教会・修道院文化の文脈で「霊的指導者の長老」を意味する重い語として使われる。アトス山の修道士の長老(γέροντας Παΐσιος, γέροντας Πορφύριος)の伝統が、現代ギリシャの宗教・霊性文化の中で生きている。
派生・関連語族として γέροντας(長老、書きことば), γριά(老婆、女性形、← γρία < γραῖα、古代 γραῖα「老婆」の継承形), γερόντισσα(女性の長老、修道院長), γερόντιο(老人の傾向、書きことば), γερόντειος(老人らしい、形容詞), γεροντοπαλίκαρο(年配の独身男), γεροντοκόρη(オールドミス), γεροντικός(老齢の、形容詞), γεροντόπαππους(年老いた祖父), γεράκος(小さな老人、指小形、軽い口語), γεροντίστικος(老人くさい、口語), γερόνταρος(がっしりした老人、増大形)。
形容詞 γερός(健康な、丈夫な)は別系統の語で、古代 ὑγιηρός(健康な、← ὑγιής)から *υγηρός > ελνστ. γερός(語頭脱落 + 母音同化 [ir > er])を経た継承語。発音は γέρος(老人)と γερός(丈夫な)でアクセント位置と意味がはっきり異なる。同形異義の対が現代ギリシャ語に共存している。
意味の領域では、書きことば寄りの γέροντας が「権威ある長老、教会の指導者」を中心義とするのに対し、口語の γέρος は「年老いた人、老人」を直接指す日常語として機能する。ηλικιωμένος(高齢の、書きことば)は中立的な敬意を保つ言い方で、γέρος は親しみや率直さを含む口語表現。
口語的な家族用法では、所有代名詞を添えた ο γέρος μου(うちの父親、← 文字どおり「私の老人」)が、年配の父親や夫を呼ぶ親しい呼称として広く使われる。同類の表現に ο πατέρας μου(私の父), ο μπαμπάς μου(パパ), ο άντρας μου(夫)が並ぶが、ο γέρος μου は年配の親しい家族を指す独特の口語ニュアンスを担う。
ギリシャ語:οικισμός
読み方:イキズモス・イキズモース
ラテン文字:oikismos
古代ギリシャ語の動詞 οἰκίζω(住まわせる, 入植させる)から派生した οἰκισμός(入植, 集落)を継承。οἰκίζω は οἶκος(家, 家屋)から作られた動詞。
同じ οἶκος の語族に οικογένεια(家族), οικία(住居, 住宅), οικιστικός(居住の, 都市計画の), οικιστής(入植者, 居住者), 合成語 συνοικισμός(合併集落), συνοικία(地区, 近隣), παροικία(在外ギリシャ人社会), κατοικία(住居)。関連動詞 οικίζω(住まわせる), κατοικώ(住む, 居住する)。
英語 economy(経済), ecology(生態学), ecumenical(全地球規模の)もラテン語を経由してこの οἶκος の語族に連なる。
ギリシャ語:οίκτος
読み方:イクトス・イークトス
ラテン文字:oiktos
古代ギリシャ語の οἶκτος(憐れみ、哀れみ)に由来。さらに前の語源は確定していない。
οίκτος は、苦しんでいる人や非常に悪い状況にある人に対して抱く、悲しみと同情の感情を指す。ただし、単に温かい思いやりだけでなく、相手を下に見るような憐れみや、軽蔑の混じった同情を表すこともある。
類義語には λύπη(悲しみ、同情)、συμπάθεια(同情、好意)、συμπόνια(同情、憐れみ)、έλεος(慈悲、憐れみ)など。関連語には οικτίρω(憐れむ)、οικτρός(哀れな、惨めな)などの語がある。対照的に、他人の不幸ではなく成功や幸福に向かう否定的感情には φθόνος(妬み)が挙げられる。
ギリシャ語:υγρασία
読み方:イグラシア・イグラシーア
ラテン文字:ygrasia
古代ギリシャ語の ὑγρασία(湿り気)に由来。形容詞 ὑγρός(湿った、液状の → υγρός)に抽象名詞を作る -ασία を付けた形。
同じ語根の語に υγραίνω(湿らせる)、υγροποίηση(液化)、υγροσκοπικός(吸湿性の)。対義語は ξηρασία(乾燥)。
英語 hygrometer(湿度計)、hygroscopic(吸湿性の)、hygrograph(湿度記録計)は古代ギリシャ語 ὑγρός をもとにした学術造語で、同じ語源につながる。
ギリシャ語:υγρός
読み方:イグロス・イグロース
ラテン文字:ygros
印欧祖語で「濡れる」を表す語根の子孫で, 物質が液体であることや物が濡れていることを言う古代ギリシャ語の形容詞 ὑγρός(液体の, 湿った)を継承。文法用語の υγρά σύμφωνα(液音)はフランス語 liquide からの意味借用で, ヘレニズム期の ὑγρά στοιχεῖα(液体の文字群)の言い方を受けつつ, 近代の文法概念として整えられた。ふつうは λ(ラムダ)と ρ(ロー)を指す。
同じ ὑγρός から派生した語に動詞 υγραίνω(湿らせる), 名詞 ύγρανση(湿らせること, 加湿), 形容詞 υγραντικός(保湿の), 名詞 υγρασία(湿気, 湿度), υγρότητα(湿り気, 液状性)。合成語では υγραέριο(液化ガス), υγρόφιλος(親水性の), υγροποίηση(液化), υγρομετρία(湿度測定), υγρογράφος(湿度記録計)が並ぶ。
「水」そのものを言うには νερό(水)か ύδωρ(水)を使い, 中性形の υγρό は水に限らず液体全般を指す。英語 hygrometer(湿度計), hygroscopic(吸湿性の), hygrograph(湿度記録計)は ὑγρός から経由した語族。ラテン語 ūmor(湿り気), ūmidus(湿った), 英語 humid(湿った), humidity(湿度)も同じ印欧語根の子孫とされる。